赤き力の世界にて

 

 

 

 

 

第20話「命を賭けた試合・・・・・《後半戦》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・・次は私達の番よ。リナにガウリイさん準備は良い?」

 

「できれば永久に欠番にしてほしい気分です」

「右に同じく」

 

「別に良いわよ?でもその場合、あの鉄球も半永久的にあなたの手から離れなくなるけどね」

 

 

私は姉ちゃんの言葉に本気を感じ、頬を引きつらせた。
                   マ ジ 
はっきり言って目が本気でこわひ・・・・

 

 

「それなら俺はペナルティはなさそうだから棄権しようかな?」

「あ!ずっこい!ガウリイ、あんたも地獄まで付き合いなさい!」

「大丈夫よ。もし棄権するというなら、ガウリイさんには異種格闘技戦をしてもらうから」

「異種格闘技?一体誰と?」
              ドラゴンズ・ピーク 
「とりあえず・・・・竜達の峰に住む竜達と素手で一対一の勝ち抜き戦、その後は海で・・・・」

 

 

異種は異種でも、種類の種じゃなくて、種族の種だったんかい!

              ドラゴンズ・ピーク
しかもいきなり 竜達の峰・・・・一体何百匹と闘わなくちゃならないかは予想もつかないし・・・・

その後の『海で』って・・・一体何と闘わされることなのやら・・・・・大王イカとでも闘えと?

 

 

「すみません。素直に闘わせていただきます」

「そう?面白そうだと思ったのに・・・・ちょっと残念」

 

 

冗談じゃない・・・・と私も思ったのだが・・・・

姉ちゃんと闘うのと異格闘技戦・・・・生存の確率が果てしなく均等のような気がするのは私の気のせいか?

 

 

「ま、冗談はさておき・・・・」

 

 

冗談なんかじゃない!絶対に本気だ!

いやだといった瞬間、ガウリイは竜とレスリング、

私は手足にそれぞれ鉄球をつけて湖に放りこむつもりだ!絶対にそうだ!

 

 

「何?そんな目で見て・・・・もしかして手加減無しで闘ってほしいとか?」

「いえいえいえいえいえいえいえ!!どうかお気になさらず説明をどうぞ!」

 

 

私は首がもげ落ちるのではないかと思うほど首を横に何度も振る。

おかげで意識が少しくらくらするが・・・お仕置きをまぬがれた代償と考えれば激安ものだ。

 

 

「そう?なら良いけど・・・・とにかく私達のルールを説明するわよ

リナとガウリイさんが気絶、もしくは大怪我をしたら私の勝ち。

対してリナ達は、私からこの剣を取り上げれば勝ち。別に叩き折っても構わないわ」

 

 

姉ちゃんは腰に下げてある剣を抜き放つ。

それはいつも使っている赤竜の剣ではなく、家から持ってきたバスタード・ソードだった。

 

 

「姉ちゃん?質問なんだけど・・・」

「何?」

「それって魔法の剣よね」

「お城にあった無名のヤツをもらったんだけど・・・・それがどうしたの?」
                          ブラスト・ソード
「そんなんじゃあガウリイの 妖斬剣 で一発だと思うんだけど?」

 

                           赤竜の力
「ああ、その事なら大丈夫!私の力も上乗せするからね。そう簡単には斬れないわ。

リナの混沌の力で創った刃でも受け止められるわよ。

ただし、不完全に具現化したものを短時間だけ・・・・という条件下だけどね。

さすがに完全なやつは赤竜の剣をもってしても受け止めるのは不可能でしょうけどね」

 

 

                           ラグナ・ブレード
それはある意味、完全版の 神滅斬 をもってしないと剣は切れないと明言しているようなものだ。

いきなり最初から最後の手を提示させられるとはね・・・・完全に手を読まれてるわ・・・・

 

私はこれからの試合が本気で命がけになることは実感した。

 

 

「じゃあ良いわね。始めるわよ」

 

 

それが・・・私がずっと敵わない存在だと思い続けていた姉ちゃんとの本気での戦いの開始合図だった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        ドラグ・スレイブ
「先手必勝!!いきなり 竜破斬 !!

 

 

姉ちゃんに向かって赤い光が集束する!

しかし姉ちゃんはあせった様子もなく、手に持っている剣を軽く一薙ぎするのみ。

 

                     赤い閃光
それだけで私の放った呪文は真っ二つに切り裂かれ消滅した。

                    ドラグ・スレイブ
ただの受け身だけで 竜破斬 をしのぐ姉ちゃんだからこれくらいは予想していたが・・・・・

こうもあっさりとさばかれると、どうにも次の手が出しにくい・・・

 

 

「遊んでいるの?リナ。本気でこないと怪我だけじゃすまないわよ」

 

 

私は姉ちゃんの眼光に少しだけ腰が引ける。

これは幼い頃からしつけられたもので、すでに本能レベルで刷り込まれているので厄介だ。

 

その為か、私の膝は少し震えていた。

まるで隠している本心を物語っているかのように・・・・・

 

 

(ええい、いちいちこんな事で震えるな!私の膝!!)

「リナ、サポートを頼む!今度は俺が相手だ!!」

 

 

ガウリイが颯爽と姉ちゃんに斬りかかる。

姉ちゃんは焦りもせずその剣を受け止め、そのまま力任せに振り抜く。

 

 

「おっと!!」

 

 

ガウリイは吹き飛ばされる寸前に自分も後ろに跳び、衝撃を逃がしたようだ!

 

 

「そろそろ準備運動は終わった?」

「ええ、もう充分体が暖まったわ。姉ちゃん」

「そう?それならこちらからも攻撃するわよ」

 

 

姉ちゃんはそういうと同時に、剣を横薙ぎし、赤い衝撃波を放つ!!

 

 

「オリャァァァッッ!!!」

 

 

ガウリイも対抗するかのように黒い衝撃波を放つ!

 

 

ズガン!!

 

 

赤と黒の衝撃波は互いを相殺しあい、消滅した!

 

私も黙ってみているだけじゃあない!!

 

 

ブラスト・アッシュ
「黒妖陣!!」

 

 

姉ちゃんがいる空間を黒い霧が包み込む!

この程度で姉ちゃんがどうにかなるとは思ってはいない!

 

 

「ハッ!!」

 

 

姉ちゃんの軽いかけ声と共に黒い霧が文字通り霧散する!

姉ちゃんは何事もなかったかのような平然とした顔で私達をみている。

 

剣をもっていない手が真横に持ち上げられているところをみると、

剣で魔法を切り裂いたのではなく、腕の一振りで吹き飛ばしたようだ!

 

だが、こんな事で驚いてちゃあ姉ちゃんの妹がつとまりますか!!

それにあれの役目は倒すことではなく目くらまし!その役目は十分に果たしてくれた!!

 

 

  ダイナスト・ブレス
「覇王氷河烈!!」

 

 

ニースの時と同じアレンジ版!

しかもあの時と違い、私の魔力は格段に上がっている!

いくら姉ちゃんといえども、氷付けになれば身動きはとりづらい・・・・・・はず・・・・・たぶん・・・・

 

え〜い!こんな事で尻込みしてどーする!!私!!

 

 

姉ちゃんが足下に描かれた魔法陣に視線を落とした次の瞬間!

巨大な氷柱が出現し、姉ちゃんはその中に閉じ込められる!!

 

氷塊の中に閉じ込められた姉ちゃんの姿は何か幻想的な美しさを感じさせる。

我が姉の事ながら、その神秘的にも感じた美しさに一瞬心を奪われる。

 

が、所詮はいつも見ている姉の顔!

いつまでも眺めることでもないし、眺めるわけにもいかない!!

 

 

「ガウリイ!!」

「任せろ!!」

 

 

ガウリイは今の内に剣をどうにかすることを察してくれたのか、
ブラスト・ソード
 妖斬剣 を思いっきり振りかぶって突進する!!

 

 

 

 

ピシッ!!

 

 

 

 

何かがひび割れる微かな音が私の耳に届く!

 

それと同時に私は強烈に嫌な予感がした!

ガウリイも直感的に悟ったのか後一歩の所で後ろに跳びずさる。

 

 

 

ピシピシ・・・・ガキン!!

 

 

 

姉ちゃんを閉じ込めていた氷はガウリイが飛びのいた後、粉々に砕ける。

砕け散った氷の破片の影響で辺りに軽い冷気が漂い、薄い霧を形成する。

 

 

「後一歩だったわね」

「それはどっちの意味なの?姉ちゃんが?それとも私達が?」

 

「たぶんあなたの思っている通りよ」

 

 

私の額に汗が流れ落ちるのがわかる。

 

私の呪文を破ろうと思えばいつでも破れたのだ。

私が本気でやったのにも関わらず・・・・

いまのは姉ちゃんがわざと凍らされて、近づいてくるのを誘ったのだ。

 

策を仕掛けたつもりが逆手に取られたと言うことになる・・・・

もしあのまま、ガウリイが斬りかかっていれば今頃は戦闘不能になっていただろう。

 

 

(まったく・・・・ニースといい、うちの姉ちゃんといい、ついでにアキトといい・・・・

・・・どうしてとんでもないやつばっかり存在してるんだか・・・)

 

 

いつもなら・・・・精霊魔法を使ったりしているのだが、この結界の中では無意味。

 

むろん魔族との戦闘を想定しているので必要ではないが・・・・

使える呪文がひどく限定されているような気がしてどうにもやりにくい・・・・

 

いささか分が悪い・・・・・・なんて生やさしいものじゃないわね・・・・

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「アキトさん、この勝負の行方はどうなると思います?」

「どう・・・かなぁ・・・・『試合』に限るならリナちゃん達でも勝算はあるけどね」

「試合なら?これは試合じゃないのですか?」

 

「いいかい、ティシアちゃん。これは試合であって試合じゃない。確かにルールは試合のように思えるけど、

中身は命を賭けた真剣勝負。一歩間違えば死ぬことすらありえるよ」

 

「それは・・・・見ていてもわかります」

 

「ルナさんがいつまで力を抑えたままでいるのかはわからない・・・

でも、力を抑えたままの時にリナちゃん達は勝負をつけなければ勝ち目はない。

それは闘っている本人達が一番わかっているはずだよ」

 

 

俺の時と同様・・・ルナさんは一気に決めようと思えば決めることができるのだ。

 

ルナさんの目的は訓練などでは身に着けることができない、

生と死の狭間にまで追い込み、そこから這い上がるための力の爆発を引き出したいのだ。

 

身も蓋もない言葉にすれば『火事場の馬鹿力』ということになるが・・・・

ようは精神的に叩き上げることを目的としているのだ。

 

 

「どちらにしても・・・ここで手も足も出ないようなら・・・・

ひどいようだけどニースと相対する可能性がある次の戦いには不参加ということになるけどね」

 

 

そうは言うものの・・・・俺はリナちゃん達ならきっとやり遂げる・・・・

そんな思いも同時に抱いていた・・・

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「リナ、あなたにもわかってるんでしょ?あなたがどうすべきかは・・・・」

 

 

私は姉ちゃんの言葉に息を詰まらせる。

確かに・・・・剣を取り上げることが不可能なら折るしかない。

 

                ラグナ・ブレード
そして、折るには 神滅斬 を使うしかない。

 

勝負は一瞬でつくのだ。

 

私が隙をついて叩き切るか・・・・

それとも姉ちゃんが近づいてきた私を叩きのめすのか・・・・

 

 

「だけど・・・そんな概念にとらわれてちゃあ勝てるものも勝てないのよね」

「言うようになったわね」

 

 

姉ちゃんは私の言葉を聞いて、嬉しそうに微笑む。

私も自然に微笑みを返していた。

 

 

「じゃあ一丁やるか!」

「ええ、フォローは任せなさい。思いっきりやってきて!!」

「おう!!」

 

 

ガウリイは身を低くして突進した!!

 

私がいままで見た中でも最高の早さだ!!

 

 

「私からも行きます!!」

 

 

姉ちゃんもガウリイに向かって突進する!!

 

 

ガキン!!

 

 

最初の一撃はお互い一歩も譲らなかった!

その後、はじかれたように剣は離れ、激しい撃ち合いに移る!!

 

二人の剣撃は私の目には微かにしか見えない程の早さだった!!

 

これではフォローすらできないが・・・・いつかは均衡が崩れるはず。

 

 

私はその一瞬を見逃さないように二人に集中する。

 

 

 

二人の剣は激しく剣を撃ち合う!!

もし二人が持っているのが普通の剣だったら・・・・耐えきれず粉々になっていたかもしれない!

 

 

ガウリイは姉ちゃんの剣撃を何とかかいくぐり、反撃をくり返す!

だが、姉ちゃんはその攻撃を冷静な目つきで完全に防いでいる!

 

ガウリイの渾身の一撃も姉ちゃんは軽いバックステップだけで避ける!!

 

 

「ハァッ!!」

 

 

うまい!!

ガウリイは姉ちゃんが後ろに下がって避けることを読んでいたのか、

その避けた剣撃から黒い衝撃波が放たれ、姉ちゃんを襲う!!

 

 

「いい読みです!後の問題は衝撃波の威力ですね」

 

 

姉ちゃんはそう言うと、剣の一振りでガウリイの放った衝撃波を切り裂いた!

 

しかし、その衝撃波のすぐ後には、まるで放たれた矢の如く、ガウリイが疾走している!

 

 

「オオォォォッ!!」

 

 

ガウリイの剣が姉ちゃんの鉄壁の防御をかいくぐり、胴を薙ぐように斬りかかる!!

だが、後一歩の間合いが足りなかったのか服を斬るだけに終わってしまった!!

 

ガウリイは薙ぎ払った直後の体勢でかなり無防備になる!

 

姉ちゃんがそんなガウリイの隙を見逃すはずはなく、

上段から唐竹割りするかのようにバスタード・ソードを振り下ろす!!

 

 

「あぶなかっ―――――グオッ!!」

 

 

ガウリイは間一髪、後ろに跳び下がるが、

そこからさらに何かに弾き飛ばされたかのように吹き飛んだ!!

 

光などが見えなかったことからおそらくは純粋な剣圧か衝撃波だろう。

いくらダメージはないとはいえ、衝撃までは相殺してはくれない。

 

たとえて言うなら、普通の剣でボールを斬ることはできなくとも、

ただ単に切れないだけであって、その衝撃によってボールは遠くまで跳んでいくのだ。

 

身も蓋もない言い方をすれば、鉄の棍棒も鋼の剣も、この結界内であれば大差ないということになる。

衝撃が強い分、棍棒の方が強いかもしれないが・・・・

 

 

私はガウリイが何とか身をおこしているのを横目で見ながら

姉ちゃんを足止めするために唱えておいた呪文を解き放つ!!

 

 

  ダイナスト・ブラス
「覇王雷撃陣!!」

 

 

私の『力ある言葉』に答えて私のかざした手の真正面に五紡星の魔法陣が宙に描かれる

見た目としては姉ちゃんに向かって魔法陣が描かれているような感じになる!

 

本来は相手のいる場所に魔力で魔法陣を描き、

その魔法陣の中心にいる相手に向かって五紡星の頂点より放たれた雷が攻撃する。

・・・と言うようなものなのだが、これは完全に私がアレンジした別物。

 

 

「GO!!」

 

 

私の合図と共に、宙に描かれた五紡星の頂点から放たれた雷撃は

一つに絡まりあいながら姉ちゃん向かってゆく!!

 

 

「なかなか考えたわね!でもこの程度の威力ではびくともしないわよ」

 

 

姉ちゃんは私に向けてバスタード・ソードを突き出す。

ただそれだけで雷撃は剣に切り裂かれて二つに別れる!

 

しかし足止めになれば十分!!

 

             ダイナスト・ブラス
私はこのまま覇王雷撃陣を維持し続けるだけでいい!!

 

 

「なるほど。確かにこのままでは私は身動きはとれないわね。

その間にガウリイさんに剣を切らせる。なかなかいい手かもね・・・・」

 

 

姉ちゃんは横目でガウリイの接近をとらえている!

 

しかもあの余裕!

私の直感が警告を発する!!

 

私は急いで魔法を解除しようとしたが、

 

 

「憶えていなさい。私やニースならこんな芸当もやってのけるわよ!」

 

 

姉ちゃんの剣が赤い光を纏ったと同時に剣は雷撃を切り裂くのをやめ、

代わりに刀身に電撃がまとわりつくように帯電する!!

 

まるで逆に急激にエネルギーを引き抜かれているような錯覚を私はおこした!

事実、魔法陣は力を失うように雷撃を出し尽くし、かき消える!

 

                      ダイナスト・ブレス
私の脳裏に、ニースに覇王氷河烈を返されたときの光景がよぎる!

 

 

姉ちゃんは雷撃の宿った刃をガウリイの方に向かって横薙ぎする!!

 

 

「ウォリャァッッ!!」

 

 

ガウリイは飛んできた雷を纏った赤い衝撃波を真正面から切り裂いた!!

 

だが完全には断ち切れなかったのか、

魔力の籠もった衝撃と雷撃の残滓でガウリイは浅い傷を身体のあちこちにかなり負ってきた。

 

ガウリイは傷の痛みのためか膝を・・・・・落とそうとした瞬間、

何かを察知したのかいきなり真横に跳ぶ!

 

 

ザンッ!!

 

 

一瞬前までガウリイのいたところに姉ちゃんのバスタード・ソードが突き刺さる。

あの後すぐに投げたのだろう。

 

私はチャンスと思い姉ちゃんの方に視線を戻そうと・・・・

 

 

「ダメよ、リナ。戦闘中に気を散らしたら」

 

 

間近で聞こえた姉ちゃんの声!

私は飛びずさろうとしたが、

 

 

「グハッッ!!!」

 

 

いきなり私のお腹に衝撃が走る!

そこにはいつの間近づいたのか、私のお腹のあったあたりに掌底をつきだしている姉ちゃんがいた。

 

 

「相手が剣を持っていたからと言っても油断したらダメよ。

その気になったら手足だって充分な凶器になるんだから」

 

 

それは私がいま一番理解していると思う・・・・・・

 

私はうずくまったまま、痛みと息ができない苦しみに耐えていた。

 

 

何とか視線を戻すと、姉ちゃんが投げた剣に向かって手をかざしていた。

すると剣はひとりでに宙に浮き、忠犬が主の元に真っ直ぐ戻ってゆくかのように、

姉ちゃんの手の中に戻った。

 

ガウリイは・・・・傷の痛みのためか、ようやく立ち上がったところだ。

 

 

「武器を手放したときは何らか別の攻撃手段を持っているはずよ。

油断して一気に決めようとすれば手痛い反撃を喰うわよ。気をつけなさい」

 

 

姉ちゃんは私とガウリイから少し離れた所まで歩いて移動した。

 

 

「これで最後にするわ。あなた達の全力をもってきなさい!!」

 

 

姉ちゃんは全身に纏っていた赤い光をさらに輝かせながら宣言する。

姉ちゃんが発した殺気によって私の肌がビリビリと震えている!

 

私はその様子を見て腹をくくった。くくらざるをえないと言うべきか・・・・

後の事は一切何も考えずに・・・・・全力でぶつかる!!

 

 

「リナ、大丈夫か?」

 

 

私の近くまできたガウリイは心配すると言うよりも、確認するといった感じで話しかけてきた。

 

 

「もちろんよ。それよりあんたの傷を治すのが先決よ」

 

 

    リザレクション
私は 復活 を唱え、ガウリイの傷を癒す。

一つ一つは傷は軽いが、数が多いため、総合的には重傷の一歩手前に近い。

 

 

「どうだ?何かいい手はあるか?」

「ある!と言いたいところだけど・・・・正直言ってないから頭が痛いわ」

 

 

正確には一つはあるのだが・・・・

先に考えた通り、私の剣の腕では剣を切る前に逆に私が叩きふせられる。

 

 

「ならどうする?いっそのこと当たって砕けるか?」

「・・・・・・・・それもそうね。どうせなら思いっきり砕けてやろうじゃないの!!」

「よし!それでこそリナだ」

「いいガウリイ、まず私が・・・・・・」

「わかった。本当に当たるだけだな・・・・」

「勝負は一瞬、タイミングと運だけよ」

「わかった!」

 

「作戦は決まったみたいね」

「ええ、勝つか負けるか・・・・これでハッキリと決まるわ」

「なら来なさい。私もそれ相応の力で相手になるわ」

 

 

姉ちゃんの剣気が私を貫く!

 

私の肌は鳥肌が立ちまくっている。

気を抜けばその場に座り込んで立ち上がることができないだろう・・・・・

 

 

パァン!!

 

 

私はそんな自分を叱咤するかのように両手で頬を叩く!

 

ヨッシャァッ!後は野となれ山となれ!

元々姉ちゃんとやりあうこと自体が無茶の極みなのだ。今さら無茶の一つや二つ、どおってことはない!!

 

 

「いくわよガウリイ!!」

「よっしゃぁっ!!」

 ファイアー・ボール
「火 炎 球!!」

 

 

            ファイアー・ボール
私のはなった 火炎球 が姉ちゃんに向かって飛ぶ!!

 

 

「目くらましのつもり?」

 

 

姉ちゃんは私の目的を悟り、剣で切り捨てようとする!!

そう来ることは先刻承知!伊達に人外ばかりと戦ってきたわけではない!!

 

 

「ブレイク!!」

 

 

              ファイアー・ボール
私の合図と共に、火炎球 の元である光球が剣の届く前に爆発する!!

それにより発生した大量の爆炎が姉ちゃんの視界を遮る!!

 

 

「目的の目くらましは成功ね。次はどうするのかしら?」

 

 

姉ちゃんの言葉に思わずニヤリとする私。

これの目的はそれだけじゃない!

視界を遮ることによって姉ちゃんは私の位置を気配と耳で探るだろう。

姉ちゃんにとって爆風などは夏の微風ぐらいにしかならない。

爆音にいたっても同じ事、姉ちゃんの聴覚にはまったく影響はないだろう。

 

しかし、そんな事は予想済み!

 

私はわざと呪文の詠唱を高らかに唱える!

 

 

                                    うつろ
「空の戒め解き放たれし 凍れる黒き虚無の刃よ

    我が力 我が身となりて 共に滅びの道を歩まん  神々の魂すらもうち砕き」

 

 

私は呪を唱えながら姉ちゃんの右側面にまわる。

きっと姉ちゃんも気がついているだろう。

 

私の位置と、唱えている呪文があの魔法であり、しかも不完全であることが!

 

 

  ラグナ・ブレード
「神滅斬!!」

 

 

私は持てる力のすべてを振り絞り、姉ちゃんに斬りかかる!

しかし姉ちゃんは余裕をもってその一撃一撃を受け止めた!

 

 

「不完全なもので何をしているの?

もしかして何回もやって剣を叩き折るつもりなの?」

 

 

おしい!私の考えはもうちょっとせこい!

私はしゃがみ込み、残る力と全身のバネを使って切り上げる!!

 

 

「今のあなたの全力できても剣は切れないわよ」

 

 

姉ちゃんは私の虚無の刃を押さえつけるように振り下ろす!

     ラグナ・ブレード
私の 神滅斬 の方が威力で勝っているのか、姉ちゃんの剣に虚無の刃がホンの少しだけくい込む!

だが、これでははっきりいって私が不利なのは変わりはない!!

 

私は押し返されそうなのを必死に耐える!!

 

 

「そんなのは百も承知!!ガウリイ!!」

「おう!!」

 

 

静まりつつある煙の中から気配を消していたガウリイが飛びだす!!

構えていた剣を私と姉ちゃんの刃が交差している位置に思いっきり振り下ろす!!

 

 

 

 

「ウオオオォォッッ!!」

 

 

          おたけ                       ブラスト・ソード
ガウリイの雄叫びに呼応するかの如く、妖斬剣 が強い光を纏う!!

 

 

 

ガキン!!

 

 

                                   ブラスト・ソード
不完全とはいえ、虚無の刃と伝説の 妖斬剣 の圧力の前に、

姉ちゃんの力を上乗せしていた無名の魔力剣は、無惨にも半ばから真っ二つになった。

 

 

「よっしゃーーー!!」

「俺達の勝利だ!!」

 

 

私とガウリイはやっとの事で得た勝利に歓喜する!

もしかして魔王に勝ったときよりも嬉しいかもしれない!!

 

 

「確かに私の負けね。まさかあんな手で来るとは・・・・無茶もいいところね」

 

 

姉ちゃんは手に持っていた半分の剣をみて苦笑していた。

 

 

「負けちゃいましたね。ルナさん」

「ふふふっ、そうね。でもまあ、ようやく及第点というところよ」

「あんなに苦労して・・・・決死の覚悟までして及第点」

「それはそうでしょ?手加減したままだし・・・その上、危ない橋を渡りすぎ」

「そうだね、リナちゃん。特に最後のはかなり運に頼りすぎたみたいだからね」

「仕方がないでしょ?あんな賭でもしないかぎりは勝てる要因は見つからなかったわけだし・・・・」

 

 

そうは自分で言っているものの、確かに最後のはアキトの言うとおり、運と賭けが大半だった。

 

         ラグナ・ブレード
一番目に 神滅斬。わざと不完全であることを知らせておいて斬り合いに持ち込んだのはいいけど、

姉ちゃんが用心して斬り合いに持ち込まないという可能性もあったし、

待機しているガウリイの存在がなかったら二、三回の手合わせで私はやられていたかもしれない。

 

二番目に最後の剣を斬るとき。あそこでもし姉ちゃんの剣が後三十秒も耐えていれば、

私の体力と魔力は尽き、上から落ちてくる剣で私は死んでいたかもしれない。

 

 

後、考えると色々あるのだが大きな運だけでもかなりある。

よくまあ生きていたもんだ。

 

 

 

「でもまあ、ガウリイが姉ちゃんと斬り合っていたとき、

後一歩でも間合いをつめていたらこんな事にはならなかったのにね」

 

「リナ、それは違うぞ」

「へ?何が?」

「あれは斬ったんじゃない。斬らされたんだ」

「ということは・・・・・」

「俺はまんまと策略に引っ掛かったってわけだ」

 

 

その言葉を聞き、私はがっくりと肩を落とす。

 

あれがわざととは・・・・服一枚の単位で見切るか?普通・・・・・・

いや、普通じゃないっていうことはわかっていたつもりだが・・・非常識すぎるんでないかい?うちの姉ちゃん・・・・

 

 

「何はともあれ・・・・リナ、よく頑張ったわね」

「姉ちゃん・・・・」

「明日から・・・・・両手に鉄球で許してあげるわ」

 

 

ズッターーン!!!

 

 

私はその場で思いっきり地面にダイブした・・・・おいこらまてい!!

 

 

「まだまだ基礎体力が不安だからね。

とくに最後のあれ、それなりに力量さえあれば私の剣を単独で切れてたかもしれないし」

 

「はうっっ」

「もし負けていたら両手足に二つずつつける予定だったんだけどね」

 

 

それは私に死ねとでも・・・・と言うか冗談じゃない!!

そうなったら明日から旅にでて帰ってこないぞ!!

 

 

「まあまあルナさん。リナちゃん達は勝ったんですからいいじゃないですか」

「まあそうだけど・・・・まあ、いっか。アキト君がそういうなら」

 

 

ナイス、アキト!さすが我が義兄!!(私の中では確定事項)

 

 

「じゃあ今日はこれまでにして・・・・家に帰って食事にしましょうか?

リナちゃん達も頑張ったことだし。パーティーでもしましょうか。ガイウスさんとレニスさんもどうです?」

 

 

すでにその二人以外はここ最近ずっとアキトの料理を食べに来ていたりする。

これでいいのかこの国の行政は!?

 

まあしっかりしているから私がとやかくいえた義理じゃないんだけどね・・・・

国ほっぽりだして特訓しているお姫様がここにいるし・・・・・

 

 

「いいのか?俺達なんにもしていないが」

 

 

何もしていないとレニスは言うものの、護衛である四騎士は闘いの最中、

女王様達に流れ弾とか余波が押し寄せても対処できるように気を使っていたのだ。

これで何もしていないと言うのであれば、世の中にいる苦労人と呼ばれる人が半分以下に減るだろう。

 

 

「いいじゃねぇか、気にすんな。アキト!うちの家族もいいか?」

 

「ええ、いいですよね?ルナさん」

「かまわないわ。連れていらっしゃい」

「だそうですよ。じゃあ俺は先に帰ってますから」

「私も一緒に帰るわ。リナ達は疲れてるでしょ?休んでから帰ってきなさい」

「そうする」

 

 

 

こうして・・・・私達の試験は終わった。

冗談じゃなく疲れたけど・・・・・まあちょっとは自信はついたつもりだ。ほんのちょっとだけど・・・・

 

後はニースとの戦いの時にどれだけ通用するか・・・・

それは・・・・そう遠くないような気がする・・・・・

 

もしかしてそれはニース相手に振るうことはないかもしれないが・・・・

修行によって得た力は、これからの魔族との闘いに役に立つだろう。

 

私はいつか来る魔族との激戦を想像し・・・・体が震えた。

 

 

 

 

 

数日後・・・・その戦いを告げる使者が家に来た。とんでもない大物を連れて・・・・

 

 

 

 

 

 

(第二十一話に続く)

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも〜!最近出番がないからこれからあとがきにちょくちょく出てくるディアちゃんで〜す☆

私が出番がないのは作者の所為と機体の修復のために頑張っている所為なんだけど・・・・

いくらなんでも出番が無さすぎるっていうのはひどすぎない?

 

感想をくれる人の中にも

『ディア達の出番はないのですか?』

と言ってくれる人は少ないし・・・・私は影で健気に頑張っているのにこんな仕打ち・・・・

まあ、その憂さはあのへたれ作者のパソコンデータを壊すことで晴らすとして・・・・

 

え?そんな事をしたら次の話が遅くなる?

 

大丈夫!壊すのはゲームのデータのみだから!

あの作者のパソコンはそうゆうのばっかり占領してるからね・・・少しはスッキリするから感謝されるでしょ!

 

 

さて・・・話を本筋に戻して・・・・

今回のルナ姉・・・前回のアキト兄よりも圧倒的すぎるね。

まあ、リナ達の限界を知っていて、なおかつアキト兄よりもあの世界の闘いになれてるからなんだろうけど・・・

 

あの作者曰く・・・ルナ姉は最強じゃないと!!だって・・・

 

次回はなんだか異様に人気が高いあいつが登場・・・・ゲストも出演するそうで・・・・

誰かは秘密らしいけど・・・・賢明なみんなはもうわかってるよね?

 

 

最後に・・・ほたてさん、音威神矢さん、T氏さん、K・Oさん、刹那さん、Akihiroさん。

相田さん、十二式さん、川嶋さん、森乃音さん、皇咲さん、悠久さん、霞那岐さん。

takaakiさん、がんがんさん、watanukiさん。

 

感想どうもありがとうね〜!!作者に代わって感謝しま〜す!

みんなも可愛い女の子に感謝された方がいいよね?

 

あ、それと作者からの遺言、もとい伝言・・・前回の代理人さんのつっこみなんだけど・・・

質問のメールをくれた人にはちゃんと回答をしましたのであしからず・・・・

そのうちに質問を答えるような話を作るから、他のみんなは待ってて・・・・だってさ。

 

私にはただの言い逃れにしか聞こえないんだけどね・・・・・

 

ではみんな!次の話のあとがきでまたあおうね〜!!って本編にも出たいよー!!

 

 

 

 

 

ブロス「ディアはいいじゃない・・・僕なんて台詞ここだけ・・・・次回からは目立ってやる!!」

 

 

 

 

代理人の感想

おう、シェーラの剣を叩き折ったときのことを思い出しましたよ。

あの時はリナのラグナ・ブレードとルーク(管理人の連載を参照の事)のルビーアイ・ブレードで

挟んで折ったんですよね。

次回のゲスト・・・・スレイヤーズ世界でもある意味最強の「あの人」ですか?

なんつーかこう、迫力ではルナより上かも、というあのお方(笑)。