赤き力の世界にて

 

 

 

 

 

第24話「あかあお・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「ええーーーー!!アキトに赤竜の剣を渡した!?!」

「ええ、そうよ」

「そうよって・・・・姉ちゃん。そんないともあっさりと・・・・・」

 

 

まるで今晩のおかずはアキトのリクエスト通りにしました・・・と言わんばかりに軽い口調の姉ちゃん。

その口調とは裏腹に、やったことは天地がひっくり返るぐらいとんでもない・・・

 

 

「??そんなに凄いことなのか?たかが剣を渡しただけだろうが・・・・

まあ、かの『赤き竜神の騎士スィーフィード・ナイト』が使う『赤竜の剣』だから、騒ぎたい気持ちも分からんでもないが・・・」

 

 

私はゼルのあまりな言い方に唖然としてしまう・・・・

文字通り、開いた口がふさがらないっていう状況が改めて確認できた気分だ・・・・

 

 

「だぁーー!!事態はそんなに簡単なものじゃないの!

『赤竜の剣』ってのはね、『赤の竜神フレア・ドラゴン・スィーフィ−ド』の力によってできてるもんなのよ!」

 

「??だからどうしたって言うんだ?威力は凄くてもたかが剣だろうが」

 

 

今度はガウリイかい!おのれは!あれだけ痛い目見てもまだ分かってなかったんかい!

あんたはあれに手をだしてこんがり一歩手前ミディアムになるまで焼かれたでしょうが!!

 

 

「このきくらげ兄弟!あんた達まだ事の重大性がわかってないの!?」

「リナさん、『赤竜の剣』は赤竜の力でできてるんですよね・・・・」

「アメリアは分かったようね」

 

 

リナの返事に、自分の想像が当たっていることを察したのか、アメリアが目を大きく広げながら驚く。

ゼルも、アメリアが理解したのと同時に気づいたのか、はっとした表情で私を見る。

 

 

「なるほど・・・・そういうことか・・・・やっと解ったぞ・・・・

赤竜の剣は『赤の竜神フレア・ドラゴン・スィーフィード』の力が具現化したもの・・・

それをアキトが持つ・・・・それはつまり人が神の力を得るという事に他ならない・・・そうだな?リナ」

 

 

私はゼルの言葉にしっかりと肯く。

アキトが赤竜の剣を持つということは、人が神の力を授かるという意味合いを持つのだ。

 

 

「確かにリナが驚くことも納得できた・・・・が!

俺は『赤竜の剣』が『赤竜の力』でできているということは知らなかったんだぞ!」

 

「あれ?そうだっけ?」

「そうだ。そういうのは初耳だ。そもそも、赤竜の剣を見たことすらないんだからな」

「あれ〜?見せたことなかったっけ?姉ちゃん」

「まったく無いわよ。使う機会もなかったしね。私はてっきりリナから聞いているものだとばかり思ってたけど?」

「私はてっきり知っているものだとばかり思って・・・・てへっ☆」

「まったく・・・知らせてないくせに人を『きくらげ』だのガウリイの旦那と同類扱いしやがって・・・失礼な」

 

 

いや、ゼル・・・・そこまでキッパリと言い切るあんたもかなり失礼だと思うんだけど・・・・

 

 

「そうだぞリナ!失礼じゃないか」

 

 

あんたのことだろうが!怒る観点がずれているのにすら気づかんのか?!

それとも自覚しているのか・・・・こいつの場合はどっちもありそうだから怖いような気もするけど・・・

 

それにしても・・・・私にはどうにも納得できないというか、不可解な事が二つほどあるのだけど・・・・

 

 

「ねえ、姉ちゃん。『赤竜の剣』・・・・というか、『赤竜スィーフィードの力』は他人には扱えないっていってなかったっけ?

確か、姉ちゃんが以前、レミィさんにそう説明したような記憶があるんだけど・・・・」

 

「よく覚えてるわね、確かに言ったわ。この赤竜の力を受け入れるほどの器がないと扱いきれない・・・・ってね」

 

 

確かにそういった記憶はある・・・種族関係なく、器がないと受け入れられないと・・・・

 

 

「すると、アキトさんには、赤竜の力を受け入れるだけの器があったということなんですか?」

「結論から言えばそうなるわね」

「しかし・・・器っていったい何なんだ?魔力許容量キャパシティとかと関係でもあるのか?」

「関係はまったく無いわよ。器というのもモノの例えだから・・・・」

「じゃあいったい何なんだ?」

 

 

それはあたしも是非とも聞きたいところだ。

魔力許容量キャパシティという点においては、人をはるかに越えている竜族や、エルフ族でも不可能だといっていたのだ。

『器』・・・・赤竜の力を得られる条件はもっと別なものにあると思うべきだろう。

 

 

「人が・・・・いえ、命あるものがこの世に生まれたときに定められているもの・・・

肉体的ではなく、その内部にある精神の広さ・・・・力の受け皿・・・・・

簡単に言うのなら魂の許容量キャパシティというところかしら?」

 

 

はぁ〜〜〜・・・・まったくよく分からない・・・・というか、別次元的な話になってきたわ・・・・

私には魂だとか云々いわれてもわからないわ・・・・

これが魔力だとか言うのならもっとスッキリした気持ちになるんだろうけど・・・・・

 

 

「俺には話がよくわからんが・・・・要するに、アキトは人として桁外れだということなんだな?」

「おお!それはなんとも明快なお言葉!ガウリイにしては冴えてるじゃない!」

「それだけでなんだか納得してしまうのが怖いな・・・・」

「そうですね・・・でも、私はなんだか頭の中がスッキリした気分です」

 

 

アキトは今まで信じられないことばっかりやっているのだ。

今さら超常現象の一つや二つで驚くような存在じゃないってことは、皆もよく分かっている。

 

・・・・・アキトはどこまで人間離れしているのか・・・・

しかしまあ、元々会ったときから人間離れしてるし訳だし・・・・ま、いっか。

 

 

「みんな、なんだかひどい言いようね・・・・」

 

 

と言いつつも、姉ちゃん自身、あきれたかのように苦笑しているのみ。

何だかんだ言っても、一番驚いたのは姉ちゃんなのかもしれない・・・・

 

 

「それにしても・・・・なんでアキトさんにその器があると思ったんですか?」

 

「その気になって人を見れば大体はわかるからね。感情だとか、魔力の許容量キャパシティだとか・・・・

普段はそんな事はしないんだけど、偶々アキト君を見たらそれがわかってね」

 

 

魔力の許容量キャパシティはともかくとして・・・・感情はちょっとね・・・・

もしかして今まで偶に見ていたとか?そういえば昔から嘘をついても全部お見通しだったし・・・・・

・・・・・これから気をつけよう・・・・

 

 

「姉ちゃん。もう一つ質問があるんだけど?」

「もうそろそろ、あちらからの、何らかのリアクションがあってもおかしくない頃合いだから手短にね」

 

「凄く簡単で手短だと思うけど・・・・一体いつの間にアキトに剣を渡したの?

まったく気が付かなかったんだけど・・・アキトにもそんな様子はなかったし・・・・」

 

「リナ達の目の前で渡したわよ。この洞窟に入る前にね」

 

 

この洞窟に入る前??しかも私達の目の前で??

 

ゼロスにここの近くまで送ってもらってからこっち、一緒に居たけどそんな事はなかったし・・・

そもそも姉ちゃんとアキトが接触したのなんてあの時のみ・・・・あの時!?

 

 

「姉ちゃん・・・もしかしてあの時に・・・・」

「フフフッ」

 

 

姉ちゃんが悪戯いたずらに成功した子供のように笑っている。

やっぱり私の思った通り・・・・あの時に赤竜の剣・・・・いや、赤竜の力を渡したのか・・・・

 

 

「リナ、一体どういうことなんだ?あの時ってのはなんなんだ??」

「姉ちゃんが、この洞窟に入る前にアキトに接触したときのことよ」

「「あ・・・・・」」

 

 

ゼルとアメリアはわかったらしく、そろって顔を赤くする。

アメリアはともかく、ゼルは意外とこういう面において純情っぽい所がある。

 

ま、だからこそ二人の仲があまり進展しない訳なんだけど・・・

そこがアメリアとゼルらしいといえばそれまでなんだけどね。

 

 

「あ〜!わかったぞ!あの時アキトとルナさんがキスしたときだ!なんだそうだったんだ」

 

 

わざわざ口に出さなくてもいいことをズケズケと大きな声で言うガウリイ・・・・

しかも洞窟内だから音が反響して私の耳には『キス』という声が何回も聞こえてくる。

この男に恥じらいという類の言葉が頭の中にあるのか?

あってもすぐ忘れそうな気がするが・・・ちっとは周りの人の迷惑を考えんかい!

 

 

「はいはい!いつまでも話をしていない。どうやら中間地点に着いたみたいよ。

たくさんのお出迎えの人達が居るみたいだから気を引き締めなさい」

 

 

確かに、姉ちゃんの言う通り、洞窟の先に光が見えてきた。

けっして篝火や、魔法で明かりを灯したとは思えないほどの光量だが・・・・

洞窟の中であんなに光が発生するとでもいうのだろうか?

 

私は疑問を抱きつつ、光があふれる広間へと歩を進めていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

俺は突如として手の内に現れた赤い刃で創られた剣を見た・・・・

剣の長さは一メートル半・・・・『ソード』と定義される長さだろう。長剣ロング・ソードというには少々長さが足りない感じだ。

装飾などの類は、以前、見せてもらった時と、ほぼ同様といえる。

 

ただ、大きな違いが一つ・・・・以前、ルナさんが出したときには柄の中央で赤く輝いていた宝玉が、

何か特別な理由があるのか、今回は俺の昂氣の色と同じ、蒼銀の輝きをたたえていた。

 

 

「赤竜の剣か・・・・まさかそんな奥の手があったとはな・・・・」

 

 

やや驚いたような口調で言うニース・・・・実際は俺の方がもっと驚いているのだが・・・・

いきなり俺の手から剣が生えてきた感じだからな・・・・

今が戦闘中でなければ・・・・そしてこの剣が俺の命を救ってくれなければ・・・・

俺は少々取り乱していたかもしれない。

 

幸いなことに、ニースもいきなりの『赤竜の剣』出現に警戒したらしく、

攻撃の手を休め、大きく間合いを空けて様子をうかがっていた。

しかし、その目は昂氣刃を見たときと同様、面白そうに見てはいたが・・・・

 

 

「どうやら貴方も知らなかった様子だな」

「ああ、全く知らされてなかったよ。一体いつの間に渡したのかも気が付いてなかった」

 

 

そうは言いつつも、俺はいつ渡されたのかは薄々予想がついてはいたが・・・・

ニース戦っている相手に喋ることでもないし・・・何より気恥ずかしい気持ちが先に立つ。

 

 

「剣が手に馴染むまで待とうか?その方がより面白い気もするしな」

「なら、お言葉に甘えさせてもらうとするか」

 

 

俺は、剣の性能を知るために、あえてニースの提案に乗った。

ルナさんの力を疑うわけではないが、どんな能力があるのか分からないまま闘うのは危険極まりない。

俺は剣の切れ味を試すべく、地面に向かって軽く一振りしてみる。

腕に力は全くこもってはいない・・・・剣を振り子のように振っただけだ。

 

剣は・・・音もなく大地に刺さり、そのまま細い溝を付けながら再び大地から離れた。

まるで、今突き刺さっているのは大地ではなく、水や空気ではないのか?

という錯覚すらおこしそうなぐらい引っ掛かりもなく、手に伝わる感触も薄かった。

 

 

「威力はかなりのモノだな・・・それともこれが普通なのか?」

 

 

俺は威力はかなり高いものだろうとは思ってはいたが、これは予想以上だ!

斬れた大地の断面を見ても、それはまるで鏡のようになめらかな切り口だった。

 

次に、俺はルナさんやガウリイがやっているように、剣から衝撃波が出るかどうか試すことにした。

・・・・が、一体どうしたら・・・こういう魔法剣を持つなんて初めてだから扱い方がよく分からない。

 

(とりあえず・・・・DFSと同じ様な感覚で力を集めるような感じでいいのかな?)

 

俺は、少し離れたところにあった岩を目標にして、剣に力をこめるイメージをする。

幸いというかなんというか、俺とニースのぶつかり合った技や剣撃の余波で、

平らだった大地は傷つき、埋まってあった岩などがえぐられて地表に出てきたため、

的には事欠かない状況になっている。

 

 

ブンッ!!

 

 

軽い風切り音と共に一振りされる赤竜の剣。

その軌跡をなぞるかのように、三日月型の赤い衝撃波が目標であった岩に向かい放たれる!

 

俺の意志通りに放たれた衝撃波は、岩を砕き、

それによってできた小石などを巻き込みながら、そのまま空の彼方へと飛んでいった。

 

 

(思った通りには出た・・・が、ルナさんだったら岩は砕けずに、斬れていただろうな・・・・

使い方次第で戦闘を有利にはできる・・・が、決め手にはやや力不足・・・か。

必殺となるほどの力は無い・・・となれば、昂氣刃をメインにして赤竜の剣をサポートにするのがベストだな)

 

 

俺はこの手の中にある赤竜の剣には、今の衝撃波が限界だということをなんとなく感じた。

理屈云々などではなく、剣がこれ以上の力はないことを俺に教えているかのように理解できた。

 

この赤竜の剣は、俺の体の一部の様に重さも感じないし、握っていても不自然な感じがしない。

逆に、意識すればするほど、力が伝わってくるような気さえする。

 

 

「もういいか?」

「ああ、何回も待たせてすまないな」

「気にすることはない。これは私から言ったことだからな」

 

 

ニースは再び二刀の剣を自然体で構える。

身体から漂う赤い闘氣も、その意志に反応するように光を強くしていく!

 

俺もニースに対抗するかのように、昂氣でできた刃を持つDFSを右手に・・・・

新たに得た赤竜の剣を左手に持ち、いつでも動けるように構えた。

 

 

「今度は俺からいくぞ!」

 

 

俺はニースに一足飛びに斬りかかる!

ニースはそのまま待ちかまえ、俺の剣撃をそのまま受け止める!

そのまま密着した状態で、再び激しい斬り合いに移行した!

 

 

「接近戦では私が有利だということを忘れたのか?」

 

 

ニースの二本の赤い刃は、またもや共鳴し、剣を振った空間に残像を残し始める!

しかし!俺は二度も同じ手を喰うほど間抜けではない!

 

 

「残光刃!確かに密着戦ではかなり有利な技かもしれないが・・・・

俺が弱点に気がつかないとでも思ったのか!!」

 

 

俺はニースの正面から左側面に回り込むように位置を変える!

丁度、ニースの右手からの攻撃に自らつっこむ形になるが、お構いなしに強引に割り込む!

ニースも俺の意図を理解したのか、無理に攻撃を加えようとはせず、一旦間合いを測ろうとする!

俺は位置を変え、間合いを測ろうとするニースに逆に接近し、圧しきるように攻撃を加える!

 

まるで最初の闘いのように、場所を入れ替わり立ち替わり、縦横無尽に斬り合いを始める!

 

 

「これで残光刃は使えなくなったな!」

「たった数回でよく気がついた。それに、例えその事に気がついたとしても、実行に移すのは難しいからな!」

「持っている剣が一本だけだったら、無茶だったかもしれなかったがな!」

 

 

残光刃の弱点・・・それは弱点と言うより欠点というべきなのだろう・・・・

一度発動させた残光刃は、剣の軌道をなぞる事しかできない。

どんなに威力があろうとも、残像は残像なのだ。何もないところに発生するわけでも、作り出せるわけでもない。

そして、それが特性であるために、いくらニースでも、残像の軌道を曲げるということはできないのだろう。

 

故に、場所を移動しない斬り合いならば、残光刃の効果は何倍にも・・・時には何十倍にもなる。

しかし、移動しながらの斬り合いになればどうなるか・・・

結果は・・・・既にそこには相手がいないのだ。魔力で創りだした残像の刃が、なにもない空間を斬るのみ・・・・

 

それならばまだいい。

俺やニースがやっているような高速戦闘となると、

間違って自分のが作り出した残光刃の軌道に入りでもすれば、逆に自分の身が危なくなる。

 

ニースもそれには気がついている・・・だからこそ、相手に逃げる隙を与えない剣術を使うのだろう。

俺も先程はそれで命が危うくなったのだが・・・・

今の俺の手の中には強力な剣が二本ある。

一本なら防ぎきれなかった攻撃の嵐にも幾分か余裕ができた。

 

だからこそ、強引に場所を移動させることができたのだ。

 

 

「ならばこういう手はどうかな?」

 

 

ニースは剣を共鳴させながら後ろに向いて跳ぶ!

その後には残光刃のみが、取り残されたような形で残されている!

 

何もしないまま特攻でもすれば、ニースにたどり着く前に体がバラバラになるかもしれない!

 

(あえて危険を冒し、俺の行動範囲を狭めさせたつもりか!ならば!!)

 

俺はDFSに集中し、昂氣刃が一際大きくなり、輝きを強める!

 

 

「オォォッッ!!」

 

 

俺はDFSを縦に一閃させる!

昂氣刃から放たれた蒼銀の剣閃は、真っ直ぐにニースに向かって飛び、進路上の残光刃をうち砕く!

 

しかし、蒼銀の剣閃はニースまで届くことはなく、手前にある魔力の刃を相殺すると共に消えた!

だが俺の狙い通り、進路上の邪魔な障害物はもう何もない!!

 

 

(ニースまでの道はできた!一気に勝負をつける!!)

 

 

俺は蒼銀の剣閃が作った、ニースへの進路を全力で駆け抜ける!

 

 

(二刀流での輝竜八閃高速八連撃!これで・・・・・)

 

 

ゾクッ!!

 

 

ニースまで後一足飛び・・・・その距離まで近づいた時、俺は背筋が凍るような悪寒を感じた!

 

ニースは腕を眼前で交差させた構えをとっている!

魔剣も共鳴によって強い光を発し、既に技を放てる状態にはいっていた!!

 

今までに見せてきた技なら、今の俺には完全に防ぐことができるし、

そのまま反撃に移れる自信さえある。

しかし、俺は自分の直感を信じ、最後の一足飛びのために溜めていた力を強引に方向転換に用いる!

俺は左手にあった岩に向いて跳び、さらにその岩を蹴ることによってニースとの間合いを広げる!

 

ニースの魔剣がさらに眩く輝き、技が発動するのと、俺が岩を蹴るのがほぼ同時だった!

 

ニースの放った技は、遮蔽物となった岩を微塵に斬り裂き、

その勢いを寸分も失わないまま、なおも俺に襲いかかる!!

 

 

(―――――ッ!こいつはやばい!!)

 

 

後ろに向かって跳んでいた最中なので体勢が不安定だ!

迎撃するにも空中なので踏ん張りが効かない!

 

俺は咄嗟にディストーション・フィールド発生装置に手を伸ばし、起動させる!

俺の周りに発生した空間の歪みディストーション・フィールドとニースの技と接触し、閃光を放つ!

 

しかし、受け止めることができたのはほんの一、二秒だった!

ニースの放った無数の魔力刃空間の歪みディストーション・フィールドさえも容易たやすく切り裂く!!

 

 

「洒落にならないぞ!!」

 

 

ディストーション・フィールドを張ることによって着地、体勢の立て直しはできた・・・が、

とてもじゃないが迎撃する技も時間もない!!

苦肉の策で致命傷だけは避けるべく、赤竜の剣とDFSを真正面に構えて盾代わりにする!

 

 

(微塵切りは避けられるかもしれないが・・・五体満足というわけにはいかないかもな!!)

 

 

 

キィィィーーーーン!

 

 

 

突如として澄んだ音を発する赤竜の剣!

蒼銀の宝玉が一瞬煌めくと、刀身が赤い光を発し、輪郭が不鮮明になる!

俺がその事を認識した瞬間には、それはすでに、剣ですらなくなっていた。

 

 

『赤竜の盾』

 

 

そう形容するべきなのだろうか・・・

蒼銀の宝玉を中央にたたえ、華麗な装飾をされた赤い盾が、俺の手の内に現れ、握られていた!

 

 

(変化した!?これならいけるのか!!)

 

 

俺は変化した赤竜の剣を気にするよりも、

迫りくる魔力刃の群に対抗するべく、盾を握る手に力をこめる!!

それに応じて、盾から発せられた赤い光が天蓋のように俺を覆う!

 

 

ズガン!!

 

 

それは既に、無数の魔力の刃というよりも衝撃波に近い攻撃だった!!

踏みしめた大地が、俺の受けた衝撃を吸収しきれずにえぐれてゆく!!

 

俺は盾を持ったまま、大きく後ろに押されはしたものの、何とか受け止めることができた。

 

 

「魔影二式 奥義 霧幻刃むげんじん・・・・

剣を盾に変えたとはいえ、よくぞ受け止めた。

間合いギリギリだということを差し引いても、驚愕に値するぞ」

 

 

確かに・・・ニースの技によって切り裂かれた、いや、えぐられた大地は、

俺が元いた場所より一メートルほど後ろで止まっている。

ただし、そこから先は枝分かれしたように、大地に爪痕を残していたが・・・・

 

 

(間合いギリギリであれか・・・もし、あのまま突っ込んでいれば跡形もなかったな)

 

 

よく見れば、盾の表面も無数の傷がついている。というより、傷ついていない所の方が少ない。

盾のおかげで、俺は何とか無傷ですんだのか・・・

 

その盾の傷も、見ている端から徐々に傷がふさがってゆく。

 

 

(おかげで命が助かった。ルナさんには感謝しきれないな・・・・)

 

「結構隠し手が多いな。その分では、まだまだありそうだが?」

「別に隠しているわけでは無いがな・・・それに隠し手とは最後に出すからこそ隠し手だ」

 

 

それはつまり、自分はまだ全ての技を出してはいないという事だ。

俺も出しているわけではないが・・・それを差し引いても分が悪い。

だが、俺のそんな心情とは裏腹に、口からでたのは楽しそうな言葉だった。

 

 

「それは楽しみだな」

「最後まで見てゆくといい。代金は・・・貴方の命になりかねないがな」

「そいつは勘弁だな。後味悪いが踏み倒すことにしようか!!」

 

 

そういって、右手に持っていたDFSに再び昂氣の刃を発生させる。

左手に持っていた盾も、俺の意志に従い、元の剣状に戻ってゆく。

 

 

「私の取り立ては厳しいぞ?」

 

 

ニースは面白そうに俺の悪態に付き合う。

魔剣も、持ち主の意志に応じて再び赤黒い光を纏いはじめる。

 

 

(さて・・・・そうは言ったものの・・・どうするか・・・・

ある程度、間合いを測りながら闘うのは不可だ。再びあれを防ぐのは容易ではない。

接近戦闘は・・・ダメだな。奴は今の技を『二式 奥義』といった。となれば『一式 奥義』も予想がつく)

 

 

ニースがいっていた『魔影二式』・・・・おそらくは中遠距離系の技なのだろう。

その過程でいくとすれば、『魔影一式』というのは近距離・・・剣の間合いと考えるのが筋だろう。

 

それに、今の一番の問題は、あまり勝負を長引かせるわけにはいかない事だ・・・

昂氣で刃を作りだすという事は、体力を削り続けているのと同様・・・・・

ホンの少しずつとはいえ、その消耗が長時間になると馬鹿にならない。

 

 

(ならば・・・・範囲外からの高エネルギー攻撃!!)

 

 

俺は左手に持っていた赤竜の剣を大地に突き刺し、両手でDFSを持ち直す。

 

 

「ハァァァ・・・・・・」

 

 

俺の身体から発せられていた蒼銀の昂氣が爆発的に輝きを増す!!

それは俺の意志に応じ、すべてDFSの刃へと集結する!

 

蒼銀の刃が、今までにないほどの大きさとなり、燦然と輝き始める!!

 

 

「面白い!!そちらがその気なら、私もそれ相応の技で答えよう!!」

 

 

ニースは再び腕を交差させ、先程と同じ構えをとる。

しかし、魔剣は前と違う反応を見せている。

 

剣が共鳴している・・・・そこまでは同じだが、今回はさほど輝きが増しているわけではない。

その代わり、赤黒い光の色がさらに暗く、濃くなってゆく!

 

 

(ニースから感じる威圧感が格段に強くなった!)

 

 

俺は対抗するかのように、蒼銀の昂氣をさらに発する!!

昂氣刃は、既に直視できないほどに光輝いている!!

 

「咆えろ!内なる竜よ!!」

 

「我が手にある二振りの魔剣よ・・・その力一つとなりて全てを砕け!!」

 

 

 

「秘剣 咆竜斬!!」

 

「魔影三式 神魔壊塵撃!!」

 

 

 

 

俺のDFSから放たれた銀の爪と牙を持つ蒼き竜と、

ニースの魔剣より放たれた、赤黒い超巨大な魔力弾がぶつかり合う!!

 

 

 

カッ!!

 

 

 

二つの高エネルギーがぶつかり合った瞬間、目を焼くほどの閃光を発し、

周囲の大地ごと、跡形もなく消滅する!!

 

最初にぶつかり合った飛竜翼斬の時以上に、衝撃波が吹き荒れると思い身構えていたが、

それすらも消滅したのか、衝撃波は吹き荒れることはなかった。

 

 

(クソッ!咆竜斬でもダメなのか・・・・・正直言って無効化されるとは思わなかったぞ)

 

 

俺の身体を軽い虚脱感が襲う。昂氣を使った咆竜斬は、思った以上に体力を消耗させるようだ。

せいぜい、闘いの余力を考えても後一回が限界といったところだろう。

 

 

「もう何度目になるだろう・・・・貴方には驚かされることばかりだ。

魔影三式までもが相殺されるとはな・・・・かなり力を使ったぞ・・・・」

 

「俺も似たようなものだ・・・・」

 

 

例え竜王牙斬でも、同じような結果になることは予想に難くない。

そうなれば・・・・後は少々不利を覚悟して、接近戦しかない。

 

俺は再びDFSを右手で持ち、昂氣の刃を発生させる。

左手には、大地に突き刺していた赤竜の剣を持った。

 

ニースも、俺が接近戦をしかけることがわかったのか、軽く足を広げ、剣を構えている。

 

俺に絶対的な決定打がない以上、無駄に技を使って体力を消耗するわけにはいかない。

使うとすれば零距離で使うか、完全に決まると思ったときでなければ、逆に命取りになる。

 

 

 

俺は剣を構えたまま、ただ静かにニースを睨んでいる。

一瞬の隙を付くべく、体内に満ちている氣をいつでも発揮できるように練り上げながら・・・・・

 

ニースも俺に合わせているのか、それとも何らかの意図があるのか、同じように睨んでいる。

その身に纏う赤い力を静かに輝かせながら・・・・・

 

 

ダンッ!!

 

 

俺とニースの足を踏み込んだ音が一致する!!

常人では、俺達の姿がかき消えたように見えたかもしれない。

 

俺達は高速に移動しながら激しく斬り合う!!

剣を交わすたびに、今までにないほどの衝撃波が発生する!!

 

ニースは魔剣の共鳴を、残光刃として使うことなく、純粋に威力を高めるという方法をとったようだ!

一撃一撃から感じる威力が今までよりはるかに高い!

 

俺が避けたときに、岩が後ろにあった場合、斬られた後に威力の余波で粉々に砕けていた!

 

もし、DFSが昂氣刃ではなく、ディストーション・フィールドの集束したものだったら、

ニースの魔剣の威力に耐えきれず、霧散していたかもしれない!!

今の俺が身に纏っている程度の昂氣では、防御はおろか、余波を防げるかどうかでも怪しいだろう!

 

 

「ハァッ!!」

 

 

俺のDFSによる刺突がニースの防御をかいくぐり、ニースの肩口に浅い傷を負わせる!!

しかし、俺も同時に脇腹にかすり傷を負う!

明らかに、俺の方が傷の度合いが僅かながら深い!

 

 

(即席の二刀流では、やはりニースには後一歩届かない・・・・どうする?

昂氣を使った最大攻撃でもニースには通用しなかった。赤竜の剣では圧倒的に力不足・・・何か手はないか・・・)

 

 

「考え事か?随分と余裕だな」

(しまった!俺としたことが!!)

 

 

俺が次の手を思案していた間に、ニースは技を放つ隙を得てしまったようだ!!

 

ニースは双剣を天に向かって真っ直ぐに掲げている!

二つの魔剣は共鳴により魔力を増幅、その増幅された赤い力はお互いに結びつき、

10メートルを越す一本の大きな剣と化していた!!

 

 

「魔影三式 神魔裂光斬!!」

 

 

ニースは、まるで天と地を切り裂けと言わんばかりに巨大な魔力の刃を振り下ろす!

俺にはその光景が、落ちてくる断首台の刃のようにも見える!

 

 

「―――――クッ!!」

 

 

俺がその場から飛び移ったのと、振り下ろされたのがほぼ同時だった!

避け遅れたDFSの昂氣の刃が激しい衝撃と共に半ばから斬られる!!

 

昂氣刃は幸いながらエネルギー供給型。すぐに刃は元に戻ったが・・・・

はっきりいって防御はほぼ不可能と思ってもいい。

もし、どうしても受けようとするなら、それ相応に力を溜めなくてはならないだろう。

 

俺はニースより間合いをとり、今度は注意をそらさずに次の手を考える。

 

 

(こっちは手が無いというのに・・・・相手はまだまだ余裕だな・・・

あの剣を素手で受け止められるのならまだ勝機はあったが・・・どうする・・・・

ブローディアで闘っているのなら、DFSのサポートにフェザーを使うんだが・・・・ん?サポート?

DFSの威力を増加させるためにフェザーがある・・・

では昂氣に何を足す?氣か?いや、それではもう一歩足りない。ではどうする?)

 

 

俺の視線は、自然と左手に持つ、赤竜の剣に移っていた。

確かに・・・赤竜の力を足すことができれば威力は上がるかもしれない・・・・できるか?

 

俺は手の内にある剣を、体の中に戻るように念じる。

 

赤竜の剣は、柄の宝玉が輝くと共に手の内より消える。

だが、今の俺には『赤竜の力』が体内にあることをしっかりと認識できた。

もう一度念じると共に、再び俺の手の中に剣は現れる。

 

 

(感覚は何とか分かった。できるかどうかはやってみてからだ)

 

 

赤竜の剣を再び体内に戻すと同時に、DFSの蒼銀の刃も消す。

準備は整った。後は・・・・・運にまかせるだけだな

 

 

「どうやら覚悟を決めたようだな。次で最後にするつもりか?」

 

「ああ・・・・正直言ってこのままでは俺は勝てない。剣技ではお前の方が上手だからな。

余力があるうちに決着をつけないと、どんどん不利になるだけだ」

 

「謙遜だな・・・貴方の剣の腕は闘いの最中でも向上している。

このまま闘い続ければ、いずれ負けるのは私の方だと思っているがな」

 

「それこそ謙遜というんだ」

 

 

剣技というのは訓練によって身に付け、闘いによって磨き上げ、そして洗練されてゆくもの。

神と魔の入り乱れる戦乱を、剣の腕一つで生き抜いてきたニースの技の冴えは、

確実に俺よりも研ぎ澄まされている。

 

 

「そうか?まあいい。決着をつけるというのに、私も異存はない。

私のすべてを・・・・全力を出して最後の一撃を受けてたとう」

 

 

ニースの剣の共鳴が高まってゆく・・・体からも赤き闘氣が溢れ出し、剣に集束する!!

二振りの魔剣はその影響を受け、さらに大きく、そしてより鋭角的に変化して行く!

 

本当に余力を考えていない・・・・最後の一撃にするつもりだ。

 

俺は・・・両手でDFSを握り、正眼に構える。

体の中にある二つの力を同時に発動する為、目を瞑り、気持ちを落ち着ける。

 

赤と蒼銀・・・二つの色が俺の体内なかで一つになり、新たなるちからへと昇華する!!

 

 

「オオォォォオオオーーー!!」

 

 

雄叫びと共に頭上に掲げたDFSに、光り輝く紫銀の刃が現れる!!

ニースも、赤く、黒い光をたたえる二刀の魔剣を重ね合わせるみたいに並べて持ち、刺突の構えをとっている!

 

 

 

「秘剣 紫竜皇牙斬!!」

 

「魔影三式 奥義 神魔裂砕牙!!」

 

 

 

神と人の力が混ざることにより誕生した、気高き紫銀の竜が・・・・・

人が御する魔の力・・・・その力を、全てを貫く矢の如く凝縮した一条の赤い閃光が・・・・

 

 

それぞれの意志・・・・自分たちの力の全てを賭けてぶつかり合う!!

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

紫銀の竜と赤き閃光・・・・二つの力は辺りに衝撃波と閃光をまき散らしながら己を主張しあう!!

 

紫銀の竜は、その顎をもちて、赤き閃光を喰らおうとする!!

赤き閃光は、主の意志のままに、紫銀の竜を貫こうとする!!

 

アキトとニースは、技の維持に全力をそそいでいる!

この時点で、技の威力よりも、この二人の精神力で勝敗が決まると言っても過言ではない!!

 

 

「神も魔も・・・・この世の全てを貫け!我が牙よ!!」

 

 

ニースが、今まで誰にも見せたことのない程の感情を込めて叫ぶ!!

赤き閃光はさらに輝きを増しながら、より鋭角的なものへと変化する!!

 

 

「俺は生き抜いてみせる!!帰りを待ってくれる人がいる限り!!

 

 

アキトは生き抜く意志を持ちて、雄々しく吠え猛る!!

竜もアキトの意志と呼応し、天に轟く咆哮をあげる!!

 

その咆哮により、勢いを弱めさせられた赤き閃光は、吠え猛る竜の牙により、微塵にうち砕かれる!!

 

もはやなんの障害もなくなった紫銀の竜はニースに向かって飛翔する!!

ニースは、そんな状況になってもなお、戦う意志を失っていないのか、

二本の魔剣を使って竜を真正面から斬りつける!!

 

 

「この身が滅するその時まで!私は戦い抜く!!」

 

 

しかし、もはや微かにしか力が残っていない魔剣では、

神と人の力が生み出した紫銀の竜を受けることすらできず、澄んだ音を出して砕け散った・・・・・

 

ニースは剣の砕けた時に発生した衝撃をまともに喰らい、

大きく後ろにはじき飛ばされ、大岩に激突する!!

 

 

「―――――グハッ!!」

 

 

受け身すらとれず、まともに岩に叩きつけられるニース。

そのあまりの衝撃に内臓を痛めたのか、吐血すらしている。

 

紫銀の竜は口を開け、ニースを飲み込もうとしたが、その途中で大きく上昇し、天に向かって飛翔していった。

 

 

「俺の勝ちだ・・・・」

 

 

体中に走る痛みと、力の使いすぎによる強い虚脱感をこらえてニースが顔を上げたそのすぐ先には、

赤竜の剣を突き付けているアキトの姿があった。

 

 

「どうして・・・はずしたのか・・・・情けでもかけたのかと思ったが・・・・違うようだな」

 

 

ニースは言葉を吐くのも苦しそうに言いながら、アキトの腕を見やり、何やら納得したような目をした。

よく見れば、アキトが持つ赤竜の剣は、重いものでも持っているかのように震えていた。

決して持ち主には重さを感じないはずの赤竜の剣が・・・・

 

 

「認めよう。私の負けだ。しばらくは動けそうもないしな・・・・

・・・・・・・持っているだけでも辛いのだろう?剣を下ろしたらどうだ?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

アキトはしばらく無言のまま、ニースに剣を突き付けていたが、

軽く溜息をつくと腕の力を抜いた。

もはや持っているのも辛いのか、指の力も抜け、赤竜の剣は乾いた音を立てて地に落ちる。

手から滑り落ちた赤竜の剣は、役目が終わったことを悟ったのか、

赤い光の球体となり、アキトの体内へと戻っていった。

 

 

「力の逆流か・・・そんな腕でよく剣を持てたものだ」

「あの場で決着をつけないと俺の負けだからな。無茶は承知の上だ」

 

 

表面上・・・アキトの腕はなんの異常もないように見える。

しかし、中身にいたってはボロボロも良いところで、腕を上まで持ち上げることですら困難な状態だった。

もし、これがエステバリスであったのなら、修理よりも腕を丸ごと取り替えた方が早いと言われるだろう。

それぐらい、ひどい有様といえた。

 

 

「その奇妙な武器DFSでは貴方の力を受けきることができなかったのだろうな。

全く無茶をする・・・その程度で済んだのはまさに僥倖だ」

 

「そこまでしないと勝てないと思ったからな・・・腕二本とDFSで命が助かったのなら安い方だ」

 

 

実は先程、アキトがニースに刃を突き付けようとしたとき、

本当はDFSの刃を突きつけるつもりだったのだが・・・・どうあっても刃が発生しなかったのだ。

エネルギーはまだ全て使い切っていないのに関わらずである・・・・

 

 

今まで、アキトが使っていた昂氣の刃、それと紫銀の刃はDFSを介して刃を作っていた。

起動もさせず、ただ介していただけなら負担はかからないのではないか?というとそうでもない。

アキトは今まで、ディストーション・フィールドを集束している部位を利用して、刃を作りだしていたのだ。

過去に、アキトはDFSを介さず、無手で刃を成せるのか試したところ、

上手く集束せず、レーザーのように飛んでゆくことはあっても、刃となることはなかった。

 

今回、アキトが使った紫銀の力は、DFSの回路の許容量を大幅に過ぎていたのだ。

アキトが、初めて咆竜斬を使ったときの現象と同じ様なものと思ってもらいたい。

結果、漏れだしたエネルギーは逆流、アキトの腕を傷つけるということとなってしまった。

 

 

「ふっ・・・そうか・・・・そこまで全力を出してくれたのは光栄と思うべきなのだろうな・・・・

それにしても・・・こうしてお互いに生き残るとはな・・・約束通り、話を聞くか?」

 

「聞かせてもらおうか。腕の治療にも時間がかかるだろうからな。

このままでは足手まといだからな」

 

「それは都合がいい。多少・・・長い話になるだろうからな」

 

 

 

そうして・・・アキトはニースの知る限りのことを教えてもらった。

 

かつて・・・神と人間が犯した過ちから始まった、とある男の復讐劇の話を・・・・

 

 

 

 

(二十五話に続く・・・・・)

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、ディアちゃんで〜す!

とうとうアキト兄とニースの決着が付いたね!でも、アキト兄は辛勝。満身創痍だよ・・・・

しかも、DFSまで壊れるし・・・直す部品なんか無いのにどうするのかな?お蔵入り?

 

え〜・・・次回は、パートが変わって、ルナ姉達の方になる予定だって。

事の真相は、最後の最後で、謎の男が語るって・・・なんだか王道・・・というかお約束だね。

 

北での戦いも、残すところ後六話(予定)。おちゃらけとかはなくなるけど、見捨てないでね!

 

最後に・・・・K・Oさん、カインさん、ほたてさん、12式さん、T氏さん、watanukiさん。

下屋敷さん、YU−JIさん、ホワイトさん、森乃音さん、失敗作さん、蒼夜さん、皇咲さん。

屍さん、音威神矢さん。感想、ありがとうございま〜す!!

 

では、第二十五話『過去からの使者』(仮)であいましょうね〜!

 

 

 

 

代理人の感想

うむ、決着。

爽快感が漂う結末でしたね。←ぢつはニースがお気に入りの人

 

んで・・・揚げ足を取るようでなんですが時ナデアキトって二刀流にそれなりに通じてますよ?

ブラックサレナ対ダリアの初戦闘からDFS二刀流を披露しましたし、

生身でもDとの決戦で二刀流を披露しています。

 

後、スレイヤーズ世界での「ロングソード」がどんなものかははっきりとはわかりませんが

一般的なファンタジーの常識に照らすとちょっと違和感のある部分が一つ。

 

>ロングソードと言うには長さが足りない

ロングソードと言うのは普通片手剣で、大体刃渡りが90cmくらいまでの物を指すようです。

スレイヤーズ世界でもガウリィのイラストを見る限り大差は無いようですね。

(長編一巻でリナはガウリィの剣を「ロングソード」と表現している)

つーか、取り合えず1m半もあれば普通は両手で使うサイズなんですが。(苦笑)

長さがわかりにくければ…そうですね、標準サイズの日本刀って柄を含めても1mあるかなしかです。