赤き力の世界にて

 

 

 

 

第33話「知人来訪?」

 

 

 

 

 

 

 

ゼフィーリアに帰って半月・・・・

朝焼けがおさまらぬ時刻・・・・・そんな早朝に、アキトはふとした寝苦しさを感じ、目を覚ました。

それが、この日に巻き起こされる、災いが始まった瞬間でもあった・・・・・・

 

 

「う、うう〜ん・・・・・・・??・・・・・なんだ?」

 

 

アキトは、自分の体が動かない事に気がつき、目を覚ました。

 

(身体が動かない・・・・・というか、何かが締め付けている?)

 

アキトは、唯一自由に動く首を曲げ、自分の体を見ようとした。

そこには、明らかに何か居ますと言わんばかりに盛り上がった、布団のふくらみがあった。

 

(おかしいな・・・・疲れていたにしろ、誰かが入ってきたら気がつきそうなものなんだが・・・・・・)

 

アキトは、腕の治療のため、毎夜寝る前に、氣功術によって、体の治癒力を促進させているのだ。

その所為で、熟睡することが多いのだが・・・・

アキトやルナといった強さを持つものであれば、見知らぬ人間が部屋に入れば・・・

否、家に入ろうとすれば、瞬時にして意識が覚醒するだろう。

 

それなのに、アキトは今、姿の見えない人物に布団に潜り込まれ、

あまつさえ抱きつかれて身動きがとれない状態になっている。

それは、もし敵であったのなら、アキトは今頃、気がつくこともなく死んでいたということだ。

 

(俺が熟睡して気がつかなかったにしても、ルナさんやニースにも気づかれなかったっていうのか?

それだけで、充分驚異に値するな・・・・それにしても、この『氣』は以前どこかで・・・・・・)

 

アキトは、まだ見ぬ侵入者の氣を感じた瞬間、以前にも会った感じを受けたのだ。

相手の氣を明確に読めるようになったアキトなら、このくらいは造作もない・・・・のだが・・・・

 

(懐かしい感じはあるが・・・・・思い出せないな。

もしかして、俺がガイウスさんから氣功術を学ぶ前に出会った人なのか?)

 

氣に憶えはないが、懐かしい感じはする・・・・ということは、氣を明確に読めるまでに出会った人達・・・・

という、図式が成り立つ。つまり、布団の中の人物は、ゼフィーリアに来る前までに出会った人物ということになる。

 

もちろん例外もある・・・親しい人や、特徴のある氣の持ち主ならいざ知らず、

一度あっただけ・・・なんの接点のない人物までは覚えているはずはない・・・・・

が、どうやら今回は、その例に当てはまらないようだった。

普通とは思えないような『氣』が、侵入者の体内から感じられたのだ。

いくらなんでも、こんな特別な氣の持ち主を忘れるはずはない・・・・・そこまで、アキトが考えたとき、

体に押し付けられている、柔らかい二つのふくらみに気がついた。

 

(女性!?それにこの体格!なにより、この内包されているこの氣!!

まさかそんなはずは・・・・・・彼女が此処にいるはずはない!!)

 

アキトは、気配を感じさせず布団に潜り込める、自分と同じような特殊な氣を持つ小柄な女性を思いだしていた。

というか、それほどの技術スキルと<氣>を持つものは、アキトの知り合いの中には1人しか居ない。

 

嫌な予想を必死に否定しているアキトの視界に、

モゾモゾとしながら布団から飛び出した、赤い髪の毛が入ってきた。

その髪の毛の持ち主は、布団の中が息苦しかったのか、頭をぴょこんと出し、再び安らかに眠り始めた・・・・・

『アー君・・・・・・』という寝言を呟きながら・・・・・・

 

 

「枝織ちゃん・・・・・なんで此処にいるの?」

 

 

アキトの呆然とした呟きに答える人物は、この場にいない・・・・・

これから巻き起こされるであろう騒動をアキトは予想し、少しだけ、夢であれば・・・・と祈った。

気持ちの大半は、懐かしい人に会えた嬉しさだったのだが・・・・

 

(・・・・・・・・・とりあえず、ルナさんが来る前に何とかしよう)

 

両腕が使えないアキトにとって、食事はもちろん、着替えもままならない状態なのだ。

激痛さえ無視すれば、できないこともないのだが、完治が遅れるということで、

ルナが色々と便宜をはかってくれていたのだった。

 

アキトは、なんとか枝織の手から逃れようと、身をよじる・・・・・が、

枝織の手は、がっちりとアキトの体をホールドし、離そうという気配すら微塵にもみせなかった。

 

 

「まいったな・・・・・枝織ちゃん、起きて、枝織ちゃん!」

 

 

アキトは、枝織に声をかけて起こそうとする。

揺さぶっておこそうにも、腕ごと抱きつかれていては動かせないし、なにより、

今現在のアキトの腕の状態では、揺さぶることができるのかですら怪しい・・・・・・・

 

枝織は、アキトの呼びかけに、う〜ん・・・と唸りつつも、いっこうに目を覚ます気配がない。

アキトは、どうしたものか・・・・と悩みつつ、天井を見上げた。

 

と、その時・・・・・・コンコン、という、ドアを叩く音と共に、廊下からルナの声が聞こえてきた。

 

 

「アキト君、起きてる?」

「あ・・・ええ、今起きました」

「そう、着替え手伝いに来たんだけど・・・・開けていいかしら?」

「え!?いや、ちょっと待ってください!」

 

 

アキトは、さすがに今の状況はやばいと思い、再び、枝織の手から逃れようともがき始める。

枝織も、アキトが逃げだそうとしているのを、寝ながらでさえも感じたのか、

さらにアキトにしがみつきながら、頭をすり寄せていた。

 

逃げだそうともがくアキト、それにしがみつこうとする枝織・・・・

いくら気配を最小に抑えていようとも、そんな事をすれば、

ルナに中の異常を察知されても仕方がないといえるだろう。

 

案の定・・・・・

 

 

「アキト君?どうしたの?」

「いえ、なんでもありません!気にしないでください!」

「気にしないでって・・・・入るわよ、アキト君」

 

 

ルナは、アキトが普段に見られないほど取り乱していることに不安を抱き、無断に部屋の中に入った。

 

 

「アキト君、一体何が・・・・・・・・・・・」

 

 

ルナは、アキトに抱きついて(今だ)寝ている枝織を見て、硬直した・・・・・・

アキトも、浮気現場がばれた旦那みたいな顔をして(ルナ・談)、硬直した・・・・・

 

その時、時が止まった・・・・・と、後にアキトは語った・・・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「で?アキト君。説明してくれる?」

 

 

家族会議・・・といえばいいのだろうか、インバース家の食卓に、

家族、居候を合わせた、この家に住まう者達全員がそろっていた。

 

あの後、硬直が真っ先にとけたルナは、事実の究明を後回しにして、寝ている少女・・・枝織を起こし、

アキトの着替えを手伝った後、朝食を先にとることにしたのだ。

話が長くなることを悟っての判断だが・・・・かなり大したものだ。

これが、起こしに来たのが某同盟に入っている者であれば、

間違いなく、その場で修羅場に突入していただろう事は、想像に難くない・・・・・

 

 

「どう・・・・説明したらいいのか、俺もわからないんですけど・・・・・」

 

 

アキトは、本気で困惑したような表情でルナ達を見やる。

あの状況で、こういった対処をとられたことがないため、アキトも戸惑っているのだろう。

まぁ、それ以上に、本気で訳がわからないのだろうが・・・・・・

 

そんなアキトの反応に、ロウがいつもの飄々とした雰囲気で、助け船を出そうと口を開いた。

 

 

「なら質問を変えようか。そこのお嬢さんは何処の何方どなたさんで、アキトのなんなんだ?」

 

 

おそらく、この場にいる誰もが共通して疑問に思っていることを、口に出す。

 

 

「え〜・・・・彼女は、今は枝織ちゃんといって、俺の元の世界での知り合いです。

どうして此処にいるのかは・・・・・・俺が知りたいですよ」

 

 

アキトは、やや困ったような表情で、隣にいる枝織に視線をむける。

皆も、アキトにつられて、枝織に目をむけた。

その枝織といえば、久しぶりにアキトに会えて嬉しいのか、にこにこ笑いながらアキトの腕を掴んでいる。

 

 

「アキト、どうして此処にいる・・・というのも気になるが、今は枝織・・・というのはどういうことだ?」

 

「枝織ちゃんには、北斗という人格もあるんだ・・・・・正確には違うのだろうけど・・・・

コインの裏と表・・・とでもいえばいいのかな?育てられ方と、育てた連中に問題があってね・・・・・

詳しいことは、本人の承諾無しに話せないけど・・・・・」

 

 

ニースの問いに、アキトは言葉を慎重に選びながら答える。

人のプライバシーなど、そう簡単に話してもいいものではない・・・と思ってのことだ。

 

 

「そういえば枝織ちゃん。北斗は?」

「北ちゃん?・・・・・・・寝てるみたい。呼んでも返事がないの」

「そうなんだ・・・・それより、枝織ちゃんはどうやってこっちに来たんだい?」

 

 

アキトは、疑問に思っていたことを枝織に問いただした。

いくらなんでも、異世界など、そう簡単に来られるものではない・・・・・・・

 

 

「えっとね・・・・青くて綺麗な石にね、一生懸命お願いすれば、アー君に会えるって教えてくれたの」

「(青くて綺麗な石?・・・・・間違いなく、CCチューリップ・クリスタルだな)一体誰が教えてくれたんだい?」

「いつも千沙ちゃんの後を追いかけてる髪の長いおじさん」

「アカツキ・・・・・(帰ったら絶対泣かす)・・・・・・」

 

「ついでに、石がいっぱいあるところも教えてくれたの。

でも、邪魔する人が多くて、北ちゃんが蹴散らしちゃったの・・・・だから疲れてるのかな?」

 

「は、ははは・・・・そうじゃないのかな・・・で?何処に石があったんだい?」

「おじさんの会社。北ちゃんが教えろって頼んだら、素直に教えてくれたの」

 

(頼んだら、か・・・・半分、脅しているのも同然だろうな・・・ま、自業自得だ。

だとすると、エリナさんにこってり絞られているだろうから・・・北極にでもとばされるんじゃないかな?)

 

 

なかば洒落になってないことを考えるアキト・・・・

しかし、それより恐ろしいのは、それに納得してしまう、エリナの行動力バイタリティなのかも知れない・・・・・

 

 

「ということはなに?アキトに会いたくて、異世界くんだりまで来たわけ?」

「そう・・・・なるのかな・・・・どうしたんだい?リナちゃん。いきなり頭をかかえちゃって・・・・」

 

「なんでもないわ・・・・・ほっといて・・・・

(あっちゃ〜〜・・・アキトと姉ちゃんをくっつけて、平穏無事に余生を暮らそうという、私の壮大な計画が〜!!

さらに最悪なのは・・・・・・・姉ちゃん、怒ってるんじゃ・・・・・・・・)」

 

 

リナは、恐る恐るといった感じで、ルナの方に目をむけた。

少しでも、怒っている前兆があれば、即座に逃げられるよう、半ば腰を浮かせつつ・・・・・・

が、リナの最悪な予想とは裏腹に、ルナは怒っている様子はおろか、感心したような表情を見せていた。

 

ルナにとって、枝織(北斗)の存在は、怒りや嫉妬といった対象ではなく、

むしろ、アキトのために異世界を越えて会いに来るという偉業を達した、ある意味、尊敬に値する人物なのだ。

それに元々、アキトを慕ってくる女性が来ても、自分は自分らしく、

偽ることのない姿で、正々堂々と向かい合おうと思っているので、

たとえ誰が来ようとも、怒るなどという行動にでることはない。

 

・・・・・余程の理不尽なことがない限り・・・・・・・

 

 

「それで・・・・・これからどうするの?その様子だと、帰る手段があるってわけじゃないみたいだけど・・・・」

「そうですね・・・・とりあえず、俺が帰るときに一緒に・・・・ということになりますね」

「それまでは、家に泊まるといい、今さら一人や二人増えたところで、どうって事無いからな」

「すみません、ロウさん」

「おじさん、ありがとう!」

 

 

アキトと枝織に礼を言われたロウファは、内心、おじさんか・・・・・と、思いながら頭を掻いた。

 

 

「さて・・・・アルバイトなんだけど・・・・アキト君どうする?」

「俺も行きますよ。どうかしたんですか?」

「久しぶりに会えたのだから、一日くらい、休んでもいいのよ?元々、アキト君は休養するはずだったし・・・・」

「そう・・・・ですねぇ・・・・・・・」

 

 

アキトは、枝織・・・・ひいては、北斗のことを心配した。

この国に猛者もさは多いが、自分と互角の戦闘力を持つものを止めることができるのは、

ルナやニースといった面々しかいない。他の人間では、死闘になってしまう・・・・・・・

だが、少なくとも、両手が使えないとはいえ、つきあいかたを多少なりともわかっている自分がいれば、

起こるであろう被害は、未然に防げる可能性も出てくる・・・・・・・・

そう考え、アキトは、今日一日はアルバイトを休ませてもらおうと考えた。

 

(とにかく、今日一日あれば、やってはいけない事とかを教えることができるだろうし・・・・・・

守ってくれるかどうかは、別としてだけど・・・・・・・・)

 

アキトは、自分の考えに苦笑しながら、ルナに、その旨を伝えようと口を開いた・・・・・その矢先、

 

 

「私も行く!アー君のお料理、食べたいし!!」

「でも枝織ちゃん、俺、手を怪我してるから料理作れないんだけど・・・・・」

「あ・・・・そうだった・・・・・う〜〜、アー君のお料理、食べたかったのに・・・・・」

「ごめんね、枝織ちゃん。腕が治ったら、きっと作ってあげるから、今は我慢して」

「・・・・・・うん。でもね!きっとだよ!」

「わかったよ、枝織ちゃん。絶対に作ってあげるから。約束だよ」

「うん!」

 

 

枝織は、純粋に嬉しそうな笑顔を、アキトに向けた。その笑顔は、嘘偽り無く、本当に無垢な表情だった。

アキトも、枝織の笑顔につられて、優しそうな笑顔を見せる。

 

そのあたたかな雰囲気は、それなりに場を和ませるものであった。

ルナはその光景を見ながら、『恋人などという雰囲気ではなく、おねだりする妹と優しい兄みたいな感じね・・・・・』

という、印象を受けたらしい。ついでに、この先はどうなるかはわからないけど・・・・とも、思ったらしい・・・・・

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

結局、枝織はアキトのアルバイトについていきたいと言い張り、

アキトも、店長が許可を出すのであれば・・・・といって、特に拒むことはなかった。

 

(これなら、アルバイトも休まなくてもいいし、枝織ちゃんが目につくところにいるから、安心できる・・・・・・)

 

というのが、本音に一番近かったのだが・・・・その途中、枝織が急に大声を上げた。

 

 

「あ〜!!忘れてた!!」

「どうかした?枝織ちゃん」

「アー君に、渡すものがあったの忘れてた」

 

 

枝織はそう言うと、腰に下げてあった零夜お手製のポーチ(特大)に手を突っ込み、何やら探し始めた。

結構ものが入っているのか、目的のものはなかなか見つからないようだ・・・・・

 

 

「あった!はいアー君」

 

 

枝織は、革表紙の、何やら物々しい感じがする本をアキトに差し出す。

アキトは、もの凄く嫌な予感がしたが、わざわざ持ってきてくれた物を無下にするわけにはいかず、

渋々ながら、題名に目を向けてみる。

 

そこには、ただ短く、『我が神の教え・・・・入門編』と書かれていた。正に胡散臭さ大爆発。

アキトの脳裏に、最近性格が変わった、とある人物の姿がよぎった。

 

 

「あの〜・・・枝織ちゃん。一体誰がこの本を渡したのかな〜?」

 

「えっとね・・・・厳つい顔をした変なおじさん。青い石があるお部屋に入る前にね、

『貴女が此処に来るのは、我が神の啓示によってわかっていた』

とか言ってね、北ちゃんに本を渡したの、北ちゃんは叩き返そうとしたんだけど、既に姿が無くて、

どこからともなく声だけが響いてきたの。

『それをテンカワに渡してくれ、そして、迷える者を導いてくれ』・・・・・って」

 

(ゴートさん・・・・あなた、そこまで・・・・・プロスさん、どうして止めてくれないんですか・・・・・)

 

 

その為だけに現れ、そして、北斗に気づかれることなく姿を消す・・・・奇行ここに極まれり、といったところか・・・・

そんなゴートを止めろというのは、プロスペクターといえども難しいだろう・・・・・

 

 

「何々?一体何の本なの?」

 

 

メアテナは、興味をひかれたのか、枝織の手の中にある本を覗き込もうとした・・・・が、その前に、

横から伸びてきたアキトの手が、枝織の手より本を奪う。

 

 

「「あ!!」」

 

 

メアテナと枝織が、アキトに非難の声と視線を向ける。

しかし、アキトはそんな事を気にもせず、腕にはしる激痛を無視し、本を空高く放り投げる!

そして、異常とも言えるほどのスピードで魔法の詠唱をすませる!

 

 

火炎球ファイアー・ボールっっ!!」

 

 

アキトの手より放たれた光球は、寸分の狂いもなく本に直撃し、盛大に炎を巻き上げる!

当然、その本は爆炎によって消し炭となり、跡形もなく散り散りになった・・・・・・

 

 

「アキト兄さん、酷いです。興味があったのに・・・・」

「ごめんね・・・・でも、あれはね、普通の人が読んだらいけない本なんだ。だから燃やしたんだ」

「そうなんだ・・・・・ごめんなさい」

 

「いいんだよ、メアテナちゃん。気にしてないから・・・・

(メアテナちゃんの情操教育に悪いからな・・・それに!俺の世界の恥部を、この世界に広げてたまるか!!)」

 

 

メアテナに対して、ニッコリと微笑むと同時に、心の内で、未然に感染を防げたことにほっとしていた。

アキトは、心の内にある『帰ったらとりあえず泣かす』リストのトップに、

ゴートの名をデカデカと、太字で書き加えた。

 

いきなり手の中から本を奪われた枝織はというと・・・・・・アキトの魔法に、興味津々といった感じだった。

さも、面白い玩具を見つけた・・・・みたいな目で、アキトを見ていた。

 

 

「アー君アー君!!何あれ、手品?枝織にも教えて!!」

「手品じゃないんだよ、枝織ちゃん。あれは魔法なんだ」

「魔法?あの、ステッキとかもって、呪文を唱えるやつ?なんとかライチ?」

「あ〜・・・・ちょっと、違うかな?(誰だよ、枝織ちゃんにナチュラル・ライチを見せたのは!)」

「ね、ね!私にもできるかな?」

「さ〜、どうだろうね。勉強したら、覚えられるかな?(あんまり、教えたくないけど・・・・・)」

「え〜・・・めんどくさいよぉ」

 

 

枝織は、勉強という言葉に、いやそうな、それでいて拗ねた表情を見せる。

アキトは、その様子にホッとしていた。今の戦闘力でさえ危険なのに、その上に魔法も加わるとなると、

さらに手がつけられなくなると考えたのだ。

 

アキトの脳裏に、楽しそうに火炎球ファイアー・ボールを乱発する枝織の姿がよぎった。

・・・・リナ以上の破壊神となる日も、そう遠くはない・・・・かも?

 

アキトは、いやな想像を顔をしかめながら打ち払った・・・・・・

 

 

「そうしていると、保護者みたいだな。アキト」

「かなり苦労するがな・・・・」

 

 

ニースとアキトは、それぞれ保護すべき少女達に目を向けた。

その二人は、気があったのか、仲良く手をつないで歩いていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そして、リアランサーにつき、アルバイトを開始した。

枝織は、見学という名目上、カウンターの端の方に座り、店内を見回していた。

なにも出さないのは少々気が引けるため、ジュースなどを出してたりする。

 

一応、話し相手として、店長を横に置いている。

厨房の方は、昼の忙しい時間帯までは、ルナに仕切らせると言って、店に出ていたのだ。

たま〜に、こういった突発的なことをする人なのだ・・・・・

 

 

・・・・アルバイトを始めて一時間ほどしただろうか・・・・枝織が突然立ち上がり、アキトの方に歩いていった。

その顔は、どことなく、面白いことを考えついた・・・という感じがするものであった。

 

 

「アー君アー君!」

「なに?枝織ちゃん。何かあった?」

「私もアー君やメアテナちゃんみたいな事したい!」

 

 

どうやら、アキトやメアテナ達を見ている間に、自分もやってみたいと思ったらしい。

枝織は、子犬みたいにキラキラと、好奇心溢れる瞳をしてアキトを見ていた。

 

 

「でもね・・・・枝織ちゃん。そういったことは店長の許可がないと・・・・・」

「別に構わんぞ」

 

 

枝織の傍に座っていた店長が、事も無げに言った。

口の辺りがニヤリと笑っているあたり、面白がっているのかも知れない。

 

 

「店長・・・・でもですね、枝織ちゃんはやったことがないんですよ?」

 

「気にするな。ちょっとした失敗ドジくらい、愛嬌ですむさ。

その方が可愛げがあると言って、喜ぶ連中もいるだろうしな」

 

 

店長の言葉に、店にいた男性客が、その通り!といわんばかりの表情でうんうんと頷いていた。

アキトは、そんな様子を見ながら、ちょっとした・・・で、すめばいいがな・・・と、内心呟いていた。

 

 

「それに、今はそう忙しい時間帯じゃないしな。

昼時の混雑時まで、やらせてやったっていいだろう?ねぇ、枝織ちゃん」

 

「うん!」

「まったく・・・・面白がってません?店長」

「人生、面白がった者勝ちだよ。ずっとしかめっ面して生きても、つまらないからね」

「そうですか・・・・・」

 

 

アキトは、店長に何を言っても無駄だということを悟り、疲れたように溜息を吐いた。

 

 

「でも、服はどうするんですか?枝織ちゃんの分はないでしょう?」

「こんな事もあろうかと・・・ってな。安心していいよ、店の奥に、色々な種類とサイズの制服があるから」

 

 

アキトは、店長の準備の良さに、絶句してしまった・・・・・

それと同時に、やはりルナ達の服は、店長の趣味だったのか・・・・・と、考えた・・・

 

そして、店長と枝織が店の奥へと入り、暫くして店長のみがでてきた。

 

 

「服は決まったんですか?」

「一応ね。後は見てのお楽しみ」

 

 

そこまで言うと、店長は奥へ続く扉の方へと目を向けた。アキトも、店長とほぼ同時ぐらいに目を向けた。

枝織の<氣>がこちらに近づいていることに気がついたからだった。

 

気配を消すことはできても、生きている以上、<氣>を絶つことは何人にもできない。

生命の波動ともいうのだろうか・・・・誤魔化す術はあっても、消す術は存在しない・・・

昨晩のアキトは、疲労による熟睡で気がつかなかったが・・・・

 

それはさておき・・・・枝織は、今まで着たことがなかった服に喜んでいるのか、

おもしろ可笑しそうに、自分の着ている服を確認しながら、奥から出てきた。

そして、アキトが見ていることに気がつくと、一直線にアキトの元へと小走りに近づいた。

 

 

「ね、ね!アー君!似合ってる?」

「うん、よく似合ってるよ、枝織ちゃん」

「えへへへ・・・・・」

 

 

アキトの言葉に、枝織は嬉しそうな顔をして笑った。

確かに・・・アキトの言葉通り、そのウェイトレス服は枝織によく似合っていた。

その服は、薄い赤色を基準とし、嫌味にならない程度にフリルが付いたデザインだった。

美しいというよりは、可愛らしいと思わせる為のデザインだろう。

 

 

「枝織ちゃん、試しに注文でもとってきなさい。

分からないところがあった場合は、私でもアキト君でもいいから訊ねに来るといい」

 

「は〜い!」

 

 

枝織は元気いっぱいに返事をすると、意気揚々と客の注文を取りに行った。

アキトは、はらはらと心配しながら枝織の様子を見ていたが、

その心配を余所に、ときどき些細なミスがあるだけで、枝織の仕事ぶりは結構様になっていた。

 

ただ・・・・ニースやルナとは違った、小柄な美少女然とした枝織に、不埒な真似をしようとした一部の客がいた。

(主に、セクハラ行為や、ナンパといったものだったが・・・・・・)

 

お尻を触ろうとした男は、あわや腕の骨を折られかけたところを、アキトが急いで枝織を止めた・・・・・・

(止めたといっても、折れるのを止めただけで、肩の関節は完全に外れていたが・・・・・)

強引にナンパをしようとした者は、保護者ぶりが板に付いたアキトが撃退した。

(脳天踵落としを喰らわせた後、始末は店長がした・・・・)

 

まったくもって、自業自得であろう・・・・・男達に同情した人物は、片手の指で足りるほどだった。

ニースなどは、なまぬるい・・・・・といって、止めまでさそうとしていたりした・・・・・

 

馬鹿な男というのは、何処の世界でも根絶することはない・・・・その良い例かも知れない。

 

 

 

時は流れて・・・・・・・昼休み。枝織の手伝いもあり、昼のピークはつつがなく過ぎていった。

アキト達は、店の一番奥のテーブルを陣取り、少し遅い昼食をとっていた。

 

本日のアキトに昼食を食べさせているのは・・・・・・・

 

 

「アー君、はい、あ〜ん」

「は、ははは・・・・」

 

 

アキトは、やや顔をひきつらせながらも、枝織のさしだした料理を食べていた。

しかし、今さらながらもアキトは気恥ずかしがり、なかなか食が進まない・・・・

 

 

「もう!アー君、ちゃんと食べなきゃだめ!!」

「で、でもね・・・・・・」

「でももなにもないの!ちゃんと食べないと、大きくなれないって零ちゃんも言ってたよ!」

「・・・・・・はい」

 

 

頬をぷくっと可愛らしくふくらませながら怒る枝織に、アキトは反論もなく項垂れた。

だが、なにも責任はアキトにだけあるのではない。枝織にも少々あるのだ。

他人に食事をさせるとき、慣れていない者は、緊張により、腕に余分な力が入り、手元が震える場合が多い。

もちろん、例外もあるし、全員がそうであるとは限らない・・・が、比率にするとやはり、震える者が多いだろう。

別に、枝織は緊張しているわけではないが、慎重にするあまり、腕に力が入りすぎているのだ・・・

枝織もその事を薄々と感じており、首を傾げ、何やら思案していた。

 

 

「ん〜〜・・・あ!!」

 

 

数秒ほど考えただろうか、枝織は良い案でもひらめいたのか、突如として明るい顔を見せた。

そして、アキトの昼食を自分の口に放りこむと、数回ほど噛み、

両手でアキトの顔を自分の方へと向けさせる。

 

 

「へ?枝織ちゃん、何を・・・・・・!?!?!??!!

 

 

アキトは、枝織のいきなりの行動に、完全にパニックに陥る・・・・

それもそうだろう・・・・誰だって、いきなり口移しをされれば、パニックに陥ろうというものだ。

 

傍で見ていたルナ達は、枝織の行為に固まっていた・・・・

普段、冷静を体現しているとまでいわれるニースでさえ、呆然としていた・・・・・

 

 

「し、枝織ちゃん・・・やるわね」

 

 

ルナは、侮れない・・・・といった険しい表情で、なんとか自我を保つ。

内心では、いいなぁ・・・・と思っているのは、さすがに口には出さないようだ・・・・・

枝織は次も口移しをやろうと、またもや食事を口に運ぼうとしているのを見て、ルナは慌てて止めに入った。

 

 

「ちょ・・・・枝織ちゃん!ストップ!」

「なに?ルナさん」

「口移しはだめ、これ以上やったら・・・・」

「やったら?」

「アキト君の精神が帰って来られなくなるわ」

 

 

ルナは、パニックから呆然自失状態に移行したアキトを見た。

確かに・・・・これ以上過激なことをしようものなら、しばらく自我が戻らなくなるかも知れない・・・・・

 

 

「ん〜〜・・・良い考えだと思ったのになぁ・・・・」

「そ、そうね・・・・ちょこっと過激だったけど」

「ちょっと残念・・・」

 

 

枝織は本気で残念がると、アキトに箸で食べさせる事にした。

アキトも、呆然としつつも、差し出された料理を食べていた・・・・なにげに凄い・・・・・・

 

そして、料理は見る見るうちに無くなっていった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ハッ!俺は何を・・・・・」

「ん?やっと正気に戻ったみたいだな。アキト」

「ニース・・・俺は一体・・・・・」

「わ、私に訊くな・・・・」

 

 

ニースは、頬を少し赤く染めながら、そっぽを向いた。

今までにない反応をみせたニースを見て、アキトは少し、可愛らしいと思ってしまった・・・・・・

 

 

「あれ?メアテナちゃんとルナさんは?」

 

「厨房だ。次の仕込みを手伝っている。私は、その間のウェイトレスなのだが・・・・

こんな時間帯だ、客が来なくて暇だったわけだ・・・・」

 

「そうだったのか・・・・・みんなに悪い事したな・・・・」

「気にするな。みんな迷惑とも思ってない」

「そうか・・・・・」

 

 

アキトは、少し微笑むと、自分に寄りかかりながら眠っている枝織に目を向けた。

なれないことに疲れたのか、珍しくぐっすりと熟睡している・・・・

 

と、アキトが思った瞬間、枝織は目を開け、スッ・・・と、なにも言わず、アキトから離れた。

その雰囲気・・・・というか、気配は、今までとは違い、刃物といった印象を受ける。

ニースは、枝織の気配の変化に少々戸惑い、怪訝な顔をしていた。

 

アキトは、その様子を見ながら、一つの可能性を導き出した。

 

 

「北斗・・・・・か?」

「久しぶりに会った台詞がそれか?ぼけたのか?アキト」

「いや、いきなり交代するとな・・・・戸惑うし。それより、久しぶりだな」

「そうだな。それはいいのだが・・・・・この服装は貴様の趣味か?」

「違う!」

「冗談だ。どうせ、枝織が着替えたのだろう」

 

 

アキトは、北斗らしからぬ冗談・・・・・いや、前とよく似た北斗らしい冗談に、

ちょっとした懐かしさを感じながら、ひどく疲れた顔をした・・・・

枝織が寝たと思ったら、次は北斗の相手・・・誰でも疲れるというものだ。

 

北斗は、アキトの様子にニヤッと笑った。

 

 

「それで・・・・此処は何処だ?」

 

 

その質問は、もっともかも知れない・・・・が、なんとも間の抜けたようにしか聞こえないのが悲しいところか・・・

アキトは、苦笑しつつも、北斗にこの世界のことを知りうるかぎり教えた。

 

 

「なるほどな・・・・異世界、というやつか?にわかには信じられんな」

「そうだろうな・・・・だが、これは現実だ」

「ふん・・・・・」

 

 

アキトの答えに、一応納得したのか、興味深げに周りを見回した。

そして、その視線は最後に、対面に座っていたニースに止まった。

 

 

「貴様は何者だ。かなり異質な<氣>を感じるが・・・・・」

 

「それに気がつくとは流石だな・・・・私はニース。

貴女が感じた異質な氣というのは、私の内にある、魔王の欠片のことだ」

 

「魔王・・・か。そんな事に興味はない・・・が、その力がどれ程のものかには興味があるな・・・・・」

 

「・・・・・それは隣にいるアキトに訊くといい。私は貴女の強さを知らない。

双方の強さを知っている、アキトに訊くのが、一番無難だろう」

 

 

確かに・・・・二人の強さを測るには、二人が直接闘うか、双方と戦った者の意見を聞くのが一番手っ取り早い。

見物者がどれ程意見を重ね、推測をたてようとも、実体験には敵いはしない。

 

 

「どれ程と言ってもな・・・・・・・・・とりあえず、単純に剣の技術であれば、明らかにニースの方が上だろうね」

「ほう?お前がそこまで言う程か・・・・」

 

「戦闘においても・・・・・たぶん、ニースが勝つだろうな・・・・・

あくまで、俺が最後に知っている北斗の実力からすれば、の話だけど・・・」

 

 

それを聞いた北斗は、不愉快そうに顔をしかめた。

しかし、格好はウェイトレス服のままなので、妙な感じだったが・・・・・

 

 

「一つ訊く・・・お前アキトそいつニースは闘い、お前が勝ったんだな」

「あ、ああ・・・・僅差だったけど。その後遺症で、未だに腕が治らないがな・・・・」

「それはつまり、俺の実力は、今のアキトより劣るというのだな」

 

「今はどうかわからないよ・・・・少なくとも、俺はこの世界に来て、色々な事を学んだからな・・・・・

それに、ニースとの闘いの時、俺はルナさんの力を借りたからね・・・・・」

 

「何をいう。たとえ力があろうとも、扱えぬのであれば意味はない。あの場合も同じだ。

赤竜の力とはいえ、力は力だ。扱ってみせた時点で、あれはお前の力といえるだろう」

 

「そうなのかな・・・・・・」

「そうだ・・・・なんら気にすることはない」

 

 

ニースの話は、剣に例えることもできる・・・・・例えば一本の特大製の大剣グレート・ソード

その重量ゆえに、扱える者が誰もいない・・・だが、一人の男がそれを扱ってみせた。

そして、その大剣グレート・ソードで、戦う相手を鎧や盾ごと叩き斬った・・・それは卑怯だろうか?

答えは『否』・・・・扱いきった男を称えはすれど、卑怯と貶すのは筋違いというものだろう・・・・・

 

赤竜の力とはいえ、力は力・・・・魔王の力を制御しきっているニースだからこそ、言える言葉なのかも知れない・・・

 

 

「赤竜の力とかなんだとか、俺にはわからん・・・が、お前が俺を弱いと思っているのは癪に障る・・・

今すぐ勝負・・・と言いたいが、そんな状態のアキトと戦ってもな・・・・

ならば・・・・・そこのお前、ニースとか言ったな・・・・私と闘え」

 

「そう来るか・・・確かに、私に勝てば、アキトと同格か、それ以上ということになるな・・・・」

「怪我人に勝っても自慢にならん」

「確かにな・・・・わかった。その挑戦、一介の戦士としてお受けしよう」

「異界とやらの戦士の力か・・・・・どのようなものか、楽しみだ」

「ご期待にそえるように努力しよう・・・・」

 

 

ニースは、静かに席を立つと、店の扉に向かって歩き始めた。

北斗も、外で闘うのに異存はないのか、黙って後をついていった・・・・

 

後に残されたのは、いきなりの展開について行けなかったアキトただ一人・・・・・

今、頭の中で必死になって、北斗とニースの会話を思い出していた・・・・・

 

(あ〜・・・え〜っと・・・・・北斗は俺に、弱いと思われるのがいやで、

自分は強いという証明に、ニースに闘いを申し込んだ訳で・・・・・そして、今は外で戦闘のまっ最中で・・・・)

 

窓の外から、赤い閃光が飛び交っているのが見える・・・・

どちらの力も赤を基準としているので、見た目的には赤一色の戦闘だった。

『暗色の赤』に『朱金』・・・・・暗い赤に朱金が映えるというか・・・

被害をそっちのけにすれば、なかなか綺麗な見せ物だろう・・・・被害さえ気にしなければ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(もしかして・・・・今、ゼフィーリア壊滅の危機?)

 

もしかしなくてもそうだろう・・・・間違いなく、壊滅まで残り時間はかなり少ない・・・・

アキトの頭に、その重要性が徐々に浸透し、理解すると同時に。顔を真っ青にして立ち上がった。

 

 

「二人とも!ストーップ!!」

 

 

慌てながら店を出たアキトの目に入ってきた光景は・・・廃墟寸前であるゼフィーリアの町並みと、

赤い色をした二本の魔剣を構えているニースと、朱金の刃を灯したDFSを握っている北斗だった・・・・

 

二人は、闘いに集中しているため、アキトの声すら届かず、お互いの得物をさらに握りしめた。

 

 

「ん・・・・・・流石だな、アキトに少しも引けをとっていない」

 

「当たり前だ。だが、お前に関して、アキトの言っていることは正しいこともわかった。

確かに、剣術では貴様の方が上だ。素直に認めよう。だが・・・・負ける気は絶対にない」

 

「いいだろう。ならば全力をもって叩きふせる!!」

「やれるものならな・・・・」

 

 

北斗の体からあふれ出た朱金の昂氣は、手元にあるDFSに集束する。

そして、刃を形成している反対側の柄から、さらに新しい刃が発生した!

 

 

「ほう・・・アキトの武器とはひと味違うようだな・・・・」

「まぁな・・・といっても、あいつの仲間がかってに改良しただけなんだがな・・・・・」

 

 

北斗の言葉に、アキトは眼鏡をかけた、改造マニアのとある御仁を思い出す・・・・・

 

(セイヤさん・・・・おめでとう、帰ったら泣かす人、三人目です・・・手加減なんてしませんからね・・・・)

 

アキトがそんな現実逃避のことを考えている間にも、二人の闘いは最終局面に入っていた。

二人の持つ剣の輝きが、今までの比でないほど光を放っている!

 

 

「行くぞ・・・・・・魔影三式 奥義 神魔裂砕牙!!

 

「面白い!貴様の牙、俺の牙でうち砕いてやる!喰らえ!!蛇王双牙斬!!」

 

 

二つの強大な赤いエネルギーが、お互いの威信を賭け、真正面からぶつかり合う!!

二人を止めようと駆け寄っていたアキトは、その技がぶつかり合った余波をまともに喰らい、

吹き飛ばされて、近くに民家の壁に激突した。

 

(く・・・・これは効いた・・・)

 

咄嗟に受け身をとろうにも、腕が使えなかったため、重心が崩れて上手くいかなかったらしい・・・・

さらに頭を打ったのか、意識が朦朧としはじめる・・・・・

 

(やばい・・・意識が・・・・・・)

 

「・・・・・君!・・・・・・ト君!・・・・・・キト君!!」

 

(なんだ・・・・遠くの方で、ルナさんが呼んでいるような・・・・・)

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「アキト君!どうかしたの!?アキト君!!」

 

「―――――ハッ!!」

 

 

ルナの大声と、体を揺さぶられたことによって、意識が覚醒するアキト・・・・・

慌て手回りを見回すと・・・・・そこは、いつもアキトが寝泊まりしている、インバース家の一室だった。

 

 

「え!?・・・・あれ?此処は?」

「アキト君の寝室よ・・・・どうかしたの?かなりうなされていたけど・・・・何か悪い夢でも見たの?」

「・・・・・・・・もしかして・・・・全部・・・夢?」

「どんな夢を見たのかは知らないけど・・・・たぶん、そうよ」

「そうなんだ・・・・・」

 

 

アキトは、安堵の溜息を長々と吐いた。

 

(そういえばそうだよな・・・おかしな所はいくつもあったし。そもそも、枝織ちゃんや北斗が来るわけないしな)

 

「それと・・・・ごめんなさい。勝手に部屋に入って。アキト君がうなされていたようだから、無断で入ったの」

「いえ、気にしないでください。それに、俺が寝坊したみたいですし・・・・」

 

 

アキトが外を見てみると、太陽がそこそこ昇っていた。

いつもなら、ルナがアキトの着替えを手伝っている時間帯だろう。

だからこそ、アキトの部屋に、ルナが来たのだが・・・・

 

ルナは、アキトの見ていた窓を開け、部屋に朝の新鮮な空気を取り入れる。

やや肌寒い感じはするようだが、眠気を覚ますのには丁度いい感じだった。

 

 

「今日もいい天気。今日も一日、頑張りましょう。アキト君」

「そうですね。ルナさん」

 

 

アキトは、夢のことを思い出すまいとするかのように、今日の予定を考え始めた。

・・・・夢でも働き、そして今から働くことに、少々疲労感を感じつつも、気持ちを切り替えて頑張ろうと意気込んだ。

そしてアキトは、夢を見た所為で、故郷自分の居た世界を懐かしく思いながら、

平穏で平和な日常へと、戻っていった・・・・・・・帰郷の思いを胸に抱きつつ・・・・・・・・

 

 

 

 

(第三十四話に続く・・・・・)

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、ディアちゃんで〜す!みんな、久しぶり〜!

あのバカ作者が逃げたので、私がでてきました!これからもまたよろしくね!

 

・・・・・で、作者が逃げた訳・・・・今回のゲストの所為です。あんなの当たるわけ無いよね・・・ホント。

正解者一人も無し・・・・当たり前だって・・・・『巫山戯るな!』と言う声が怖くて逃げ出したのよ・・・あの作者。

しかも夢オチ。いいのかなぁ・・・・こんなので・・・・

確かに、スレイヤーズを知らない人でも知っている人ではあるけどね・・・・かなり反則気味だし・・・・・

 

まあとにかく・・・・作者からの伝言だけ伝えとくね。

『楽しんでいただけたのなら嬉しいです。怒った方・・・宇宙よりも広い心で許して下さい・・・・・』

だって・・・・・そこの所の判断は、読んでくれた人の判断次第なんだけどね。

 

さて!次回はいよいよアキト兄の腕が治り、ちょっとしたイベントとなります。

ホントにちょっとしたイベントなんだけどね・・・・・『戦闘』が付く・・・・・・

 

 

最後に・・・・K・Oさん、m-yositoさん、oonoさん、rennjiさん、USOさん、watanukiさん、アイハラ・ヒカルさん、

アッシュさん、カインさん、ザインさん、ゼロCさん、ホワイトさん、下屋敷さん、絶望さん、浅川さん、

谷城拓人さん、道雪さん、白面朗君さん、百華さん、憂鬱なプログラマさん、ナイツさん、GPO3さん、ノバさん、

零さん、HYPERIONさん、危険地域さん、展性さん。

 

感想、ありがと〜!!あの作者に代わって、お礼をいうね!

 

 

じゃぁ、次回『命を賭けた試合<リベンジ編>』で、また会おうね〜!!

 

 

 

代理人の感想

あっはっはっはっは。座布団一枚。

 

>かなり反則気味

きっぱりはっきり反則技です(笑)。

 

 

それはともかくとして今回は伏線でしょうかね。

アキトに里心をつけさせるための。

と、すれば何やらこれからの展開も・・・読めないか、それだけじゃ(笑)。