(さて・・・この後も大きい魔術ヤツを使うって言ってたけど・・・・一体何をする気なのかな?)

 

 

アリスは後ろで呪文の詠唱をしているエルネシアを、少しだけ振り返って横目で見る・・・・・・・

そこには早口ではない代わりに、急速に魔力を高めているエルネシアがいた。

 

その詠唱の内容を聞いたアリスは、内心ギョッとして、鳶色の瞳を大きく開いた。

 

 

「黄昏よりも昏きもの 血の流れよりも紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において・・・・・」 

 

(うあっ!まさかあれをやるつもり!?張り切りすぎ!というか、本気マジ!?)

 

竜破斬ドラグ・スレイブッ!!」

 

 

アリスの心情を余所に、エルネシアは何事もなく『力ある言葉カオス・ワーズ』を口にする。

すると、杖の水晶クリスタルの中に、炎のような揺らめきを見せる小さな紅い光球が発生する。

 

エルネシアは、またすぐに次の呪文の詠唱に入り、更に魔術を発動させる!

 

 

竜破斬ドラグ・スレイブッ!!」

 

 

杖の水晶クリスタル内に、二つ目となる小さな紅い光球が発生し、

二つの光球は、共に水晶クリスタルの中を時計回りに回転している。

 

それを見たアリスは、軽く溜息を吐きながら、もはや必要の無くなった風の結界を解いた。

 

 

(やはりあれをやるつもりか・・・・・あの杖が魔術を蓄えられるのは、大きさ関わらず、三つまで・・・・

後一回、エルが魔術を発動させれば、あれが完成する・・・リナのあの魔術ギガ・スレイブけて、最強最悪の魔術が・・・・)

 

 

アリスは今だ襲いかかろうとする魔族達を、鋼糸で切り裂きながら思考していた。

その間にも、三度目となるエルネシアの魔術は完成した!!

 

 

竜破斬ドラグ・スレイブッ!!」

 

 

杖の水晶クリスタルに、三つ目となる紅い光が発生し、先の二つと共に正三角形を描いた。

そして、そのまま、先程と同じように時計回りに回転し始める・・・・

まるで、次なる言葉、あるいは命令を待っているかのように・・・・・・

 

それを確認したエルネシアは、今だ戦場の中心近くにいた仲間の二人に声をかけた!

 

 

「レニス、ガイウス!発動場所は上空にいる魔族の中心部!

万が一ということもあります。人生に終止符を打たれたくなかったら避難して下さい!」

 

「わ、わかった!速やかに避難する!」

「少し待て!すぐに逃げる!!おらおら!道を開けやがれ!!」

 

 

レニスとガイウスの二人は、もの凄い勢いで、魔族達の中心部から離脱する!

その速さ、とても魔族を倒しながらとは思えないほどであった・・・・・

 

 

「お〜、速い速い。あっという間に離脱したよ・・・・」

「そうですね・・・これで、何の気兼ねもなく放つことができます・・・・・」

 

 

さっきのアレダイナスト・ブラストは気兼ねしていたとでも?と、胸中で呟くアリス・・・・

さすがに、口にすることはない・・・言ったところで、

 

『していましたよ。思いっきり』

 

との返事が返ってくるだけ、というのが、よく解っているから・・・・・

 

 

「では・・・・」

 

 

エルネシアは、三つの紅い光が宿った杖を、上空・・・それも魔族達の中心部に向かって構えた。

アリスはエルネシアの邪魔にならないように・・・そして邪魔が入らないようにと、

襲いかかろうとしている魔族などを駆逐し始める。

 

 

「内に蓄えられし魔術よ、混ざり合い、一つとなりて新たなる力を創り出せ!!」

 

 

杖の水晶クリスタル内にあった三つの紅い光の球が、絡まり合うように回転し、一つの紅い光と化す!

その紅い光は、闇のように暗く、そして深い色だった。

 

エルネシアの口は、、一つとなった魔術を解放すべく『力ある言葉カオスワーズ』を紡いだ!!

 

 

真紅の破滅クリムゾンッ!!」

 

 

 

その名の通り、最初に発生したのは力の源を示すかのような紅い光・・・・

その光は発生した直後、一点に集束し・・・・・爆発的に広がってゆく!!

 

慌てて逃げようとする空の魔族!

ある魔族は踵を返して・・・またある魔族は、空間転移をして真紅の光を回避しようとした・・・・・

だが、その殆どは逃げることも許されず、紅い閃光に飲み込まれ・・・塵すら残さず消滅させた!

 

空にあった雲でさえ、その威力の余波で消し飛んでいる・・・・・

紅い閃光は、空だけに留まらず地上にまで達し、発生したほぼ真下の大地を消滅させた!!

 

 

「あのまま、あの場所にいても、私達までは被害は来ませんでしたね・・・・・」

「そうだな・・・・でもよ、レニス・・・・俺は好き好んであんなのの側に立ちたくはないぜ・・・・」

「同感です」

 

 

レニスとガイウスは、大地すら消滅させている紅い閃光を見ながら、次々に魔族を駆逐している。

周りにいる魔族は、その光景に衝撃をうけたのか、攻撃の手が緩んでいた・・・・・

 

 

やがて、紅い閃光も徐々におさまり・・・・跡形もなく消え去った。

空を埋め尽くしていた魔族は、最初の一割ほどの数を残して、全て消滅していた・・・・・

 

とんでもない威力・・・・・アリスはリナの重破斬ギガ・スレイブのぞけば最強最悪、と考えていたが、

破壊規模だけを比べるのであれば、それをはるかに越えているだろう・・・・・・

巨大な王都でさえ、その一撃で消滅すらしかねない・・・・・・

 

しかし・・・本当に恐ろしいのは、竜破斬ドラグ・スレイブ三発を融合させ、完全に制御した、エルネシアの集中力と精神力、

そして、強力な魔術三発をも内包することができた、杖の許容力キャパシティだろう・・・・・・

 

アリスは、目の前で起こった出来事に、やや頬を引きつらせた・・・・・

 

 

「ハハハハ・・・・・相変わらず凄い威力・・・・」

 

「そうですね・・・とても竜破斬三発分トリプル・ドラグ・スレイブとは思えないほどのエネルギー量です。

たぶん・・・・融合による術同士の相互干渉によって引き起こされた・・・・・・」

 

「あ〜、そんな事は後で暇なヤツに説明でもして・・・アタイはもう知っているから」

「そうですか・・・・では、今度アキト様にお教えしましょうか。二人きりで・・・・・」

「ずるい!そんな事言うわけ!?」

「早い者勝ちです。それに、アキト様は熱心に魔術の勉強をなさっていますしね」

「こいつは〜〜・・・・・・」

 

 

満面の笑みを浮かべるエルネシアに、アリスは悔しそうな顔をする。

アキトが旅立つとき、アリスが自分に黙って色々と手助けしたことを根に持っているのだ・・・・

せめて、自分も何か手助けしたい・・・と、前々から考えていたので、尚更根が深い。

 

 

そんな事をしている二人に、ガイウスとレニスは呆れた顔をしながら傍に近寄った。

四人の近辺にいた下級魔族が全て片づいた為、一時的に集合したのだ・・・・・

 

 

 

「二人とも、余裕ですね・・・・」

「だな。これからが一番厄介だっていうのに・・・・・」

「わかってるよ」

 

 

アリスは魔族達がいる方向・・・・その奥の方にいる連中に目を向けた。

そこには、人が四十ほど居た・・・・・否、人らしき者が・・・・である。

 

それらは全て、下級魔族とは比べものにならないくらいの力を持った魔族・・・・中級魔族だった。

 

 

「私達が疲れるのを待っていたのでしょうね・・・・ゴミ掃除にも念入りなことです」

「ゴミね・・・・ま、あいつら魔族の『人間に対する認識』ってのは、その程度だしね」

「もしくは、勝手に栄養源を作る負の感情を発する家畜程度だな」

 

 

ガイウスはつまらなさそうな表情で言い捨てる・・・・

実際、魔族の人間に対する認識というのは、そうはずれたものではない・・・・

 

 

「一寸の虫にも五分の魂・・・・・・人間というものがどの程度なのか、その身をもって教えるのみ!」

「レニスのいうとおりだ・・・・・だが、このままじゃぁちょっとやばいな・・・・良いところ五分五分だ」

「ですね・・・・私の杖はもう使えませんし・・・・・」

 

 

エルネシアは持っていた杖の水晶クリスタルを見る・・・そこには、ひどく曇った水晶クリスタルがあった。

使う前までは、光をそのまま透き通らせるほどの透明度を持っていたのに・・・・である。

 

これが『水竜の杖』の欠点の一つである・・・・

強力な魔術を蓄積、融合させることができるものの、その魔力の残滓が水晶クリスタルを汚してしまうのだ。

こうなると、使用は不可能となり、融合どころか蓄積すら不可能となる・・・・

大体、数日ほど使用せずにおいておけば使用可能となる元の透明度に戻るのだが・・・・それまではただの杖同然となる。

 

それを承知の上で、エルネシアは『真紅の破滅クリムゾン』を使ったのだが・・・・

 

 

「仕方がないじゃん。あそこでアレクリムゾンを使わなきゃ、本体前に疲れていたし」

「そうだな。何より、相手をしにくい空の魔族が殆ど消滅したんだ。それだけで十分だ」

「そう言ってくれると嬉しいです。けど・・・・どうします?」

「私の火竜の剣ヴラバザード・ソードと、アリスの魔法武器マジック・ウェポンだけでは・・・正直、中級魔族四十体の相手は少々辛いな・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

ガイウスは、自分の氣功術を戦力の一つに数えられなかったことに、眉をひそめたものの、

特に何も言うことはなかった・・・・その通りだと、自分でも納得しているがゆえに・・・・・

 

氣功術で魔族にダメージを与える事ができる・・・だが、その方法は二通りあるのだ。

一つは、氣を媒介にして、魔族に己の精神力を直接叩き込んでダメージを与える方法・・・・

もう一つは、氣と精神力を同期させ、精神の力を氣功術の威力まで引き上げる方法・・・・

主に、前者がアキトで、後者が一般的な氣功術士・・・ガイウスにあたる。

 

ただし、それは砕破や衝破・・・・そして発剄などの自らの氣を使っている場合であり、

空破や地破、水破といった自然の氣と同期、同調させるようなものに至っては、

氣功術そのものの破壊力が、魔族に対する威力となる・・・

 

付け加えておくが・・・・・・・何もガイウスの精神力が弱いわけではない。

本来なら人の精神力が氣功術の威力を上回ることはないのだから・・・・・

魂の力が物理世界まで影響するほどの強い精神力を持つアキトだからこそ有効な手段なのだ。

 

故に・・・通常の氣功術士が下級魔族に勝つことは難しい。

ガイウスのような一流の氣功術士で、人の身では膨大な氣の容量を持つ者でさえも、

中級魔族の前では、サポート役がせいぜいだろう。

 

 

だが・・・・ガイウスはまがりなりにもゼフィーリア四竜騎士団の一角を担う者・・・・

中級魔族相手だからといって、サポート役に甘んじる男ではない。

 

 

「だったら・・・・俺が奥の手を出せばいいだけだ」

 

 

ガイウスの一言に、アリス達は驚いたような表情になった。

そしてすぐに、三人とも渋い表情となった・・・・・・

 

 

「ちょっとガイウス。あんた本気で言ってる?」

「当たり前だ。この状況下で冗談なんぞ言うかよ」

「ますます最悪・・・・・冗談の方が良かったかもしんない・・・・・・」

「そこまで言うかよ、おい・・・・・」

「私も同感です。貴方の切り札は危険すぎます」

「ま、否定はしない・・・・冗談抜きに、危ないからな」

 

 

苦笑しながら返答をするガイウス・・・・

それは、誇張でもなんでもなく、本当に危険であることを感じさせる。

 

 

「万が一のことがあったら・・・・お前の奥さんと子供エミリアさんとルミナちゃんに責められるのは私達なんだぞ。

それに、ルナ殿とアキト殿も・・・・・・悲しまれる」

 

「わかってるって。女房と子供を残して死ぬようなまねなんかしねぇよ。もちろん、あの二人も悲しませねぇ」

「だったら使用は止めるんだな」

「誰が止めるか、やるぜ。それとも、仲間を信じられないのか?」

「しかしだな・・・・・・・わかった・・・・・・・」

 

 

レニスは溜息を吐きながら呆れた表情となった・・・・他の二人も同様である。

仲間を信用できないのか?そういわれれば、頷かざるおえない・・・・・・

 

 

「奥の手を使うためには準備が必要だからな。時間稼ぎを頼むぜ」

「わかった・・・・・・・・・死ぬなよ」

「心配するだけ無駄だって言うことを教えてやるよ」

「死んだら奥さんにいい人紹介するからね」

「アリス・・・さらりときついこと言ってんなお前・・・・・」

「嫌なら死なないことだね」

「わかったわかった。肝に銘じておくよ・・・・(まったく・・・らしい励まし方だよな・・・・)」

 

 

思いっきり苦笑しているガイウスを見たアリスとレニスは、残りの下級魔族の掃討に向かう。

中級魔族の前に、余計なものを片づけておくために・・・・・

 

 

「それではわたくしもお二人のサポートに行きます。

言っておきますが、くれぐれも、アキト様を悲しませるようなことの無きように・・・・・お願いしますね」

 

 

エルネシアはガイウスに向かってニッコリと微笑むと、アリス達の後を追って行った・・・・

後に残されたガイウスは・・・嫌なものを見たと言わんばかりの表情をしていた・・・・・

 

(久しぶりに見たな、あの笑顔・・・冗談抜きに鳥肌立ったぞ・・・・・)

 

過去、あの表情をしているエルネシアに関わり、とんでもない目にあったことを思い出すガイウス・・・・

例え死んだとしても、無理矢理にでも魂を呼びだして折檻しかねん・・・・と、本気で考えた。

 

 

「死ぬ気は毛頭ないが・・・・洒落にならんな・・・・・」

 

 

後頭部に大きな汗を垂らしながら、改めて気合いを入れるガイウス!

腕を胸の前で交差させ、足を少し広げて大地を踏みしめるような構えをとった。

 

そして、目を瞑り、大きく息を吸い込むと・・・・・ゆっくりと・・・氣を練り上げながら吐き出す・・・・・

 

 

何度も何度も・・・・・・・・・己の氣を練り上げ、そして周りの氣と同調させながら・・・・・

 

その回数が五回を超えたとき・・・・・周囲の風がガイウスを中心に渦巻き始める・・・・

その吹く風は優しく・・・そして力強く、ガイウスに向かって際限なく吹き込んでいた・・・・

 

その回数が十を超えたとき・・・・大地に流れる氣が、ガイウスに向かって流れを変えた。

その大地の氣は、限りなくあたたかく、そして、全てを生み出す母の如く、慈愛に溢れていた・・・・

 

 

その回数が二十を超えたとき・・・・周囲にある全ての自然が、ガイウスと同調、同期し、

持てる力をガイウスに向かって流し込み始める・・・・・・

 

 

大地も、大気も・・・そして水や火、木や光・・・全ての自然界に属するものが、ガイウスの存在を感じ取っていた。

 

地竜式 氣功闘方術 口伝秘奥義 『氣門解放』

 

それが、今ガイウスが行っている技の名・・・・

自然界にある氣の流れ・・・そのホンの一部の流れを自分に向け、己の力とする奥義。

 

しかし・・・・自然界に流れる氣の力は途方もなく、総量の一パーセン程度でも、人の容量を遙かに越えている。

それに、自然界でも、氣の性質が合わないものはある・・・火と水、風と大地はその尤もたるもの・・・・

 

それが一つに纏まろうとすると・・・・当然、反発するような現象が起こる!!

 

 

「クッ・・・・・・・」

 

 

己に流れ込み、そして暴れようとする氣の力を必死に制御するガイウス・・・・

その身体からは、収まりきらない氣が、時折漏れ出ている!

 

 

「そんなに暴れるなよ・・・戦う相手は決まってるんだぜ・・・・・・

だからよ・・・・暴れるのなら、俺と一緒に暴れようぜ!!思いっきりな!!」

 

 

目を大きく広げ、天に向かって吠えるガイウス!!

その身から発せられた氣の光が、柱となって立ち上り、蒼穹の天を貫く!!

 

 

「もの凄い氣・・・・・ガイウスの奴、成功したみたいだね」

「その様だな・・・・一つ目の・・・・心配は消えた」

「氣の制御に失敗すると、集まった氣の圧力に負けて体が弾けるんだったっけ?」

「ああ、破裂するようにな・・・・おっと!」

 

 

アリスとレニスの間を、光の奔流が通り過ぎ、三体の魔族を消滅させる!!

それで、地上にいた下級魔族は全て消滅したことになる・・・・

 

二人は、光の奔流が放たれた元・・・・エルネシアに目を向けた。

 

 

「これで、後は空の下級魔族と、中級魔族のみですね」

「そうだな・・・・では、下級の方を一気に」

「俺が片をつけてやるよ」

 

 

ガイウスは三人の側に、一足飛びで近寄った。

少なくとも、二十メートル以上の間があったにもかかわらず、本人は軽く跳んだ・・・といった感じだった。

 

 

「これをやるの三回目だからな・・・・・ちょっと肩慣らしをさせてもらうぜ」

 

「それは良いですけど・・・やりすぎないで下さいね。ここはゼフィーリアじゃないんですから・・・・

あんまり暴れすぎて、此処の国から抗議文でも送ってこられたら困りますからね」

 

 

竜破斬ドラグ・スレイブやら真紅の破滅クリムゾンなどといった広範囲系破壊呪文を使った人物の台詞とは思えない・・・

それが、この場にいる三人の意見だった・・・・が、口に出して言うほど無謀な者はいなかった。

 

尤も・・・これほどの魔族が発生したのを、無償で片をつけているので、

ここの国・・・特に、サイラーグに住んでいる住人達には大喜びされるだろう・・・度が過ぎなければ・・・・

 

 

 

「なるべく善処する・・・としか言えんな。力加減が難しいし・・・・」

 

「大地の裂傷程度ならば、ルナ様に頼めば元に戻してもらえますからね・・・・

あくまで、周りの街にまで被害が及ばないようにだけしてくれれば結構です」

 

「了解・・・・じゃ、ちょっくらやるか!!天と地に満ちる氣よ!!」

 

 

ガイウスは、右手を天に・・・左手を大地に向け、氣を呼応させた!!

魔族にしか見えなかったが、その時、大地と空が一瞬だけ光った!!

 

 

「天空を覆う大『氣』よ!敵を押し潰せ!!」

 

 

ゴゴゴゴ・・・・・・・

 

宙を舞う魔族のさらに上空で、何かが身体の芯にまで響くような音をたてて鳴動する!!

 

 

「地竜式 氣功闘方術 空破・奥義 天堕衝!!」

 

 

ガイウスが天に向けていた右手を振り下ろす!!

 

何事か!?と、空の魔族達が自分達の上を見上げるのと、

遙か上空より急降下する空気の塊に叩き落とされるのがほぼ同時だった!

 

 

強烈な下降気流ダウン・バーストか!?」

 

 

レニス達は一目で技の内容を推測する!

超高空度で冷えた空気が、高速で地上に落下する現象を主にそういうが・・・・

ガイウスは、氣の満ちた空気の塊を、超高速で落下させたのだ!

 

地表に叩きつけられた下級魔族は、それぞれクレーターを作りながら粉々に砕け散る!

元々地上にいた中級魔族も障壁を張るなどして、押し潰されようとするのをなんとか堪えている状況だった!!

 

なんと凄まじき力か・・・・自然の力を行使する力・・・ルナの精霊術に勝るとも劣らない力であろう。

 

 

「俺が中級魔族達やつらを少し弱らせる。その後、各自で掃討に入ってくれや」

 

 

ガイウスはそう言うと、今度は地に向けていた左手を、天に向かって振り上げた!

 

 

「地破・奥義 地竜激震!!」

 

 

ドンッ!!

 

大地より吹き上げた氣が、中級魔族全部を上空へと吹き飛ばす!!

魔族達は、上に向かって障壁を展開していたため、下からの攻撃をまともに喰らったのだ!

ガイウスは少し弱らせる・・・と言ったものの、その威力は先程の空破に勝るとも劣らないものだった!

 

中級の中でも下位に属するものは、先程の技だけで、人の姿を維持することができなくなっている!

 

 

「行くぜ!!」

「無論!」

「一気に片づけるよ!!」

 

 

ガイウスは膨大な氣によって得た筋力で、一足飛びに魔族達に向かって跳躍する!!

レニスは火竜の剣ヴラバザード・ソードより発した炎を刀身にまとわりつかせながら戦場へと走る!

アリスも、再び鋼糸を広げながら、疾風かぜの如く魔族達に向かって疾走する!!

 

三人が魔族達に向かって走って行くのを見たエルネシアは、その場から動くことなく、呪文の詠唱を始める!

 

 

「蒼穹よりも青きもの 海の深きに眠る王 

  全てを貫く汝の牙で 我が前にある数多の敵を討て!!海王槍破撃ダルフ・ストラッシュ!!」

 

 

海王槍破撃ダルフ・ストラッシュ・・・本来なら、敵一体を討つ魔術・・・・

だが、エルネシアが使ったものは詠唱と構成に手を加えられている!

虚空より発生した魔の水でできた無数の槍が、魔族を二つに分断するように放たれる!!

 

 

「ナイス!エル!!」

 

 

エルの放った魔槍の後を疾走するアリス!!その周囲にいた魔族達はバラバラに斬り刻まれる!!

なんとか避けた魔族もいたが、それは例外なく腕や足などの部位が斬り落とされている!

 

 

「レニス!アリスと一緒に右を殲滅してくれ!左は俺が殲滅する!!」

「わかった!抜かるなよ!」

「ぬかせ!それより自分の心配でもしていろ!」

 

 

ガイウスは獰猛な笑みで返事をしながら、右側にいた魔族達に向かって発剄を放つ!!

その一撃だけで、中級魔族は弾き飛ばされ、人の姿を保っていられなくなる程のダメージを受けた!

 

レニスも、負けじと左側にいた中級魔族を一瞬にして五つに斬り裂き、燃やしつくす!

 

お互いの顔を見たレニスとガイウスは・・・・ニヤリ、とした笑みをかわし、

今度は言葉を交わすことなく、己の戦場へと飛び込んでいった!!

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ハァッ!!」

 

 

刀身に炎を集束させ、炎刃を作り出したレニスは、間合いを一気に広げ、魔族を斬り裂く!!

しかも、先程の下級魔族の時は出し惜しみしていたのか、

今度の炎刃は、前よりも巨大で、熱量・・・炎の量も倍以上凝縮したものだった!!

 

炎の刃が通り過ぎた後は、あまりの熱気に大地に生えていた草が燃えだすほどであった!!

魔族達はレニスの剣術と炎の刃を警戒してか、次々に魔力弾を放つが、

それらは全て、レニスが炎の刃を振るい、斬り裂いて消滅させる!!

 

本来なら、中級魔族相手にレニスは苦戦・・・いや、死闘ギリギリになるところなのだが、

先のガイウスが放った二連撃があったため、魔族達の力は軒並み下がっていた!

 

 

「いい気になるな!人間風情が!!」

 

 

渋みのある顔をした中年男性の姿をした魔族が、炎の刃を受け止める!!

魔族はその手に膨大な魔力を集束させ、炎の刃を受け止めているのだ!

 

 

「こんなもの・・・・・ヌンッ!!」

 

 

魔族の手に集まっていた赤黒い魔力光が一際輝くと、炎の刃は二つに折られる!!

炎の刃を折った魔族は、その手に持つ炎を握りつぶす!

 

周りの魔族もそれを機に、レニスへと殺到した!!

 

 

「やはり・・・魔族というのは人間を侮りすぎているな・・・・・後悔するがいい!!

そして知れ、守るべき者の為に炎の牙を持った騎士の強さを!!」

 

 

レニスの持つ火竜の剣ヴラバザード・ソードより、もの凄い勢いで炎が発せられる!!

そして、その猛々しいまでの炎は、一瞬にして刀身に吸収、更に切っ先に集束される!!

 

 

「火竜式 護法剣術 烈火閃刃!!」

 

 

レニスは火竜の剣ヴラバザード・ソードを周囲の空間に向かって振るう!

剣の切っ先に炎が集束しているためか、通り過ぎた後には赤い残光が描かれている!

神速で振るわれた剣は、瞬く間にレニスを取り囲むように、空間に赤い線を張り巡らせた!!

 

襲いかかろうとしていた魔族の内、殆どは危険を感じて寸前で止まったが、

構わず拳を繰り出した魔族は、赤い線に触れた途端、腕をその線に切り裂かれた!!

 

二つに切り裂かれた腕を押さえる魔族!!

周囲にいた魔族はその魔族を気にすることなく、魔力弾を撃ちだそうと掌を向けようとする・・・・が!!

 

 

「斬!!」

 

 

レニスの言葉と同時に、赤い線は爆発的に広がり、周囲にいた魔族十数体を切り裂く!!

ある者は首を飛ばされ・・・またある者は胴を分断され・・・・

 

それら分断された者全ては、油を吸った和紙の如く瞬時に燃え上がり、灰となる!!

 

そのあまりにも呆気なく倒される仲間達の姿に、魔族達は動きを止めた・・・・

レニスはそんな魔族達に剣の切っ先を突き付けるように向ける!

 

そして決め台詞を言おうと口を開・・・こうとしたが、後ろからいきなり受けた衝撃に、口を塞がれた!

 

レニスは慌てて後ろを振り向くと・・・・そこにはニィィっと笑うアリスの姿があった。

 

 

「レニス〜・・・あんたいきなりあんな技を使って・・・・アタイを殺す気だった?殺す気だったんでしょ?」

「い、いや、そんな事はないぞ!アリスならきっと事前に察知して、避けると信じて・・・」

 

「なんとか避けたよ・・・でもさ、ちょびっと切れたんだけど・・・」

 

 

確かに・・・アリスが言うとり、服の端が少しだけこげている。本当にホンの少しだけ・・・・

 

 

「その程度、後で弁償を・・・・・・」

「弁償という問題じゃない。万が一にでも、乙女の柔肌が傷ついたらどうすんの?」

「あ、いや・・・・その場合は責任をもって・・・・・」

「もって?」

「・・・・・・・・・・アキト殿との橋渡しをする所存です」

「それも良いんだけどね・・・今回は、精神的なものだし・・・これくらいで勘弁して上げるわ」

 

 

アリスの両手から・・・正確には服の袖からなのだが・・・・更に鋼糸が出される!!

それら全ての鋼糸は、真っ直ぐに飛び、針のように魔族達を貫いた!!

 

 

「ア、アリス・・・その体勢から放たれる技が私の予想通りなら、もの凄く危険だと思うのだが?」

「大丈夫!痛みなんか無いからさ」

「それは!痛みを感じる前に細切れになるからだろうが!!」

 

 

 

レニスはいつもの丁寧な言葉使いをかなぐり捨てて怒鳴る!

そして、踵を返して、中級魔族達がひしめきあっている方向へと走りだした!!

 

 

「待て!逃げるな!!」

「例えアキト殿でも逃げるぞ!!」

「そんなこと無いよ、アタイはそんな事しないから」

「贔屓だ!それに、アキト殿にはしなくて、仲間にはやるのか!?」

「フッ・・・・当然」

 

 

アリスのニヤッとした笑顔を見ると、レニスは更に逃げる足を速める!

逃げる先が中級魔族達・・・それはつまり、中級魔族よりも、アリスの方が危険・・・そう言っているのも同然だった。

 

 

「空竜式 戦闘術 弦の章 旋空斬!

 

 

左右に展開されていた鋼糸が、繰り手アリスを中心にして、渦を巻くように回転する!

それは光の竜巻となり、アリスの周囲全てを微塵に斬り裂き始める!!

 

中心にいるアリスに向かって、転移するもの、魔力弾を撃つもの・・・・そのどちらも、効果はなかった。

転移したものは、出現すると同時に微塵に斬り裂かれ消滅し、

魔力弾、瘴気の衝撃波は光の竜巻を突破することなく霧散する!

 

 

「さて・・・・レニスはどこかな〜」

 

 

アリスはレニスを捜して移動を始める・・・当然、光の竜巻もアリスを中心にして、移動する。

威力を、徐々に高めながら・・・・心なし、竜巻の大きさも拡大しているようだった。

 

人間相手に、逃げるという選択肢を選ぶことのできない魔族達は、幾度となく魔力弾を放ったりするが・・・・

その行為もむなしく、光の竜巻に飲み込まれ、次々に消滅してゆく!!

 

 

「おのれ!!」

 

 

一人の魔族が空間転移をして、アリスの頭上に現れる!!

竜巻であれば、中心地・・・つまり、アリスの頭上は影響がない!と判断しての行為だった!

 

転移した中級魔族は、魔力光を集束した五指をアリスに向ける!!

 

 

「死ぬがいい!!」

 

 

今まさに五条の光線を放とうとしている魔族に、アリスはチラッとだけ目を向ける。

 

 

(着眼点は良いんだけどね・・・これが普通の竜巻だったら、だけど・・・・・・・)

 

 

アリスは右の手を少しだけ揺らした・・・・・

それと同時に、竜巻から伸びた光の線が、アリスに攻撃しようとしていた魔族をバラバラに斬り裂く!!

 

 

「鋼糸で作り上げているんだからね・・・普通の竜巻と一緒の考えしてると、痛い目見るよ・・・って、もう遅いか。

さて・・・・後十体少々か・・・・一気にお掃除と行きますか!!」

 

 

アリスは近場にいた中級魔族に向かって歩を進める・・・・

そこには、魔族の他に、炎を発する剣を持つ男がいるのだが・・・・アリスは意図的に無視をした。

 

(レニスだったら、アタイが近づくのを察して逃げるでから大丈夫よね・・・・・)

 

信頼している・・・ともとれる考えなのだが・・・・

どう考えても、先程の仕返しにしか思えない・・・そう言う状況と、アリスの笑顔だった・・・・・

 

 

それから程なくして・・・二人が受け持った二十体近くの中級魔族は全滅した・・・・

アリスとレニスの間に少々の問題を残して・・・それはまあ、些細な問題だろう。

 

最後に勝つのは、女性と決まっているゼフィーリアの風習から考えて・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

時は少し遡り・・・・・

 

中級魔族全体の半分・・・・二十体もの数の魔族を引き受けたガイウスはというと・・・・

鬼神の如き強さで魔族達をまったく近づかせていなかった!!

 

 

「竜牙乱舞!!」

 

 

両の拳に氣を集束し、一瞬にして数十発もの攻撃を繰り出すガイウス!!

それをまともに受けた二体の中級魔族は、悲鳴をあげる間もなく散り散りに吹き飛ぶ!!

 

周囲にいた魔族は、動きの止まったガイウスに向かって魔力弾を放つ!!その数はざっと数えて五十以上!!

 

一瞬の隙を・・・・氣の途切れた瞬間をついた!

 

魔族達はそう考えていたが、絶えず周りから氣を供給され、操っているガイウスに、氣が途切れることはない!

周りの状況を氣の流れから察していたガイウスは、体内に巡っている膨大な氣を圧縮する!!

 

 

「地竜式 氣功闘方術 衝破!!」

 

 

圧縮された氣が一気に解き放たれ、強力な衝撃波を全方位に放つ!!

凄まじき氣の衝撃波は、襲いかかろうとしていた魔力弾をかき消し、全ての魔族を吹き飛ばす!!

 

その破壊力は、アキトの秘拳『竜吼破』にすら劣らないほどの威力があった!!

 

吹き飛ばされた魔族は、なんとか体勢を崩さずに着地するものの、全員そろって目をおさえる。

魔族といった精神世界面アストラル・サイドを見るものにとって、氣は光って見えるのだ。

先程ガイウスの放った衝破は、正に光の爆発ともいえる光景だったのだ!

 

 

「クッ・・・・」

 

 

目を細めて敵・・・・ガイウスを睨もうとする魔族。

その魔族が見たものは・・・・・今まさに掌底を繰り出していたガイウスの姿だった!!

 

ボンッ!!

 

圧縮した空気が破裂したような音と共に、破砕する魔族!!

その最後は、打撃によって吹き飛んだ・・・という感じではなく、内部からの圧力によって弾けた感じがあった。

 

 

「確か、暗剄・・・だったよな、アキトの世界の名称だと・・・・」

 

 

暗剄とは、相手の体内に氣を叩き込み、内部より破壊する発剄の意・・・・

もし、ガイウスやアキトといった者が人間に行使すれば、内部より破裂し、必殺の一撃となるだろう。

 

 

地竜式ウチでは黒竜掌というんだが・・・・・・

同じ氣を扱うんだから、似たような技があっても可笑しくはないわな・・・・」

 

 

そう言うと、ガイウスはその場から消え失せ、背後から魔力弾を放とうとしている魔族の後ろに現れ、

背中に掌をあて・・・・強力な氣を浸透させる!!

すると、先程の魔族と同じように、二体の魔族は破砕し消滅した!!

 

残りは・・・・すでにわずか十体にまで減っている。

対するガイウスは、全くの無傷・・・・恐ろしいまでに強い!

 

 

「長引けば長引くほど、後が辛いんだ・・・・悪いが、さっさと終わらせてもらうぜ!!」

 

 

全身から凄まじい氣を発するガイウス!!

魔族達には、直視すら出来ないほどの光量となって見えていた!!

 

 

「竜神掌!!」

 

 

ガイウスが放った二発の発剄が、それぞれ一体ずつ、魔族の身体を貫いた!!

 

ガイウスの背後より、三体の魔族が魔力によって剣を創り出し、斬りかかろうと飛び掛かる!!

すぐさま振り向き、迎撃しようとしたガイウスだが・・・・それよりも先に、仲間の声が耳に入ってきた。

 

 

烈閃弾エルメキア・ブリッドッ!!」

 

 

横手から飛来した光弾が、三体の魔族の身体を貫いた!!

ガイウスに斬りかかることなく地に落ちる魔族!

 

頭を上げ、光弾が放たれた方向を向くと・・・・

空中に描かれていた五紡星と、その向こうにあるエルネシアの姿があった。

 

五紡星の頂点より発していた雷は、中央にて集束し、眩い光球を作り上げていた!!

 

 

「少しはわたくしに譲って下さいね」

 

 

エルネシアはそう言うと、五紡星越しに地に伏した三体の魔族に向かって手をかざした!

すると、雷を集束した光球が放たれ、三体の魔族を貫くと同時に爆発し、大地ごと消滅した!!

 

 

「まったく・・・・俺達の中で最高に派手だな・・・・」

「そうですか?」

 

 

残った魔族・・・・その最後の一体を発剄で消滅させながら、ガイウスは苦笑混じりで言う。

エルネシアは首を傾げ、そうでしょうか?と考えていた・・・・・

 

 

「そちらも終わったようだな・・・・」

「おうレニスか・・・・って、一体どうした、その格好・・・・」

 

 

ガイウスはレニスの格好を見て、呆れたように呟く・・・・・

レニスの格好は、かなりボロボロなのだ・・・・幸い、怪我などはないが・・・・

 

 

「何、周りを確認しなかった事への代償・・・というやつだ。気にするな」

「どうしてそうなったのか・・・薄々わかったから聞きゃしねぇよ」

「自業自得ってやつだからね」

 

 

アリスがニヤッとした顔で言葉をはさんでくる。

そんなアリスを見てガイウスは、やれやれ・・・・と言わんばかりに溜息を吐いた。

 

 

 

「ま、とりあえず・・・・三人とも離れてくれ。技を解除する」

 

「それがよろしいでしょうね。『氣門開放』を発動してからそれなりの時が経っています。

一刻も早く解除すべきでしょう。手遅れにならない内に」

 

「だろうな・・・そろそろ限界に近いだろう」

 

「気をつけて」

「死ぬことだけは勘弁ね」

「わかってる。さっさと離れろ!」

 

 

アリス達三人は、ガイウスから一定の距離をとった。

それを確認したガイウスは、体内にある自然の氣を鎮め始める・・・・・

 

今まで、ガイウスに向かっていた自然の氣の流れは、逆流を始め、

ガイウスの中にある氣を急速に引きずり出して行く・・・・・

 

まるで、波が引いて行くように・・・・

 

それにともない、ガイウス自身の氣も、流出する氣に絡め取られて減少してゆく!

 

これが、『秘奥義』の二番目の問題だった。

ここで、自分の氣が全て流れ出てしまうと、命を失ってしまうのだ・・・・

 

己の氣だけを把握し、流されないように確実に掴んでおく・・・・

それは、激しい滝に逆らうようなもの・・・・ガイウスは、己の氣を必死に掴み、枯渇しないように練り上げる!

 

 

時間にして一分程度経っただろうか・・・・

ガイウスの氣は急速に小さくなり、身体は仰向けに倒れた!

 

 

「「「―――――ッ!!」」」

 

 

アリス達はガイウスに近寄り、顔を覗き込む!

 

倒れたガイウスは・・・・ゆっくりとだが、力強く呼吸していた。

それを確認した三人は、ホッと一息ついた・・・・

 

 

「あんまり心配かけないでよ・・・心臓に悪い」

「悪い悪い・・・・」

 

 

アリスの言葉に、ガイウスはあまり反省していないような声で謝る・・・・

レニスとエルネシアは、声をかけはしなかったが、その表情は安堵に満ちあふれていた。

 

 

「アキト達には悪いが、俺はここでリタイヤだ。もう歩く気もしねぇ・・・・」

「それは私達とて同じ様なものです。この様な状態では、足手まといになるでしょう」

「それは確かだな・・・さすがにあれ程の数の魔族との戦い、さすがに疲れた・・・」

「後はアキト達に任せるしかないか・・・・」

 

 

アリスは、かつて瘴気の森と呼ばれていた森に目を向ける・・・・

 

その時!

森の奥から、上空に向かって二つの黒い塊が飛翔した!!

 

 

「あれは・・・・」

 

 

アリスはその二つ・・・正確には、大きめの黒い存在を見つめた。

アリスだけではない、エルネシアも、ガイウスとレニスも、それを見つめた。

 

 

「信じましょう・・・・・アキト様の勝利を・・・・そして、ルナ様達が帰ってくるのを・・・・」

 

 

エルネシアの言葉に・・・・アリス達は無言で頷いた。

天を飛翔する、二つの存在を見つめたまま・・・・・

 

 

 

 

(四十三話に続く・・・・・・)

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

 

どうも、ケインです。

なんというか・・・四騎士が異様に強いと思っている方が多いでしょうが・・・

まあ、最初で最後の見せ場ということで、笑って見過ごしてください。お願いします・・・

 

四騎士の武器については、それぞれが竜王の名を冠していましたが、

あれはただ単にそう名前を付けただけで、本来の名称とは異なります。

 

レニスの剣『火竜の剣ヴラバザード・ソード』ですが、本人は神炎といっていましたが、

本当は、大気中の魔力を吸収し、魔を浄化する炎に転化しているだけです。

実際に、火竜王フレイム・ロードの加護を受けていたり、力の源となっていると云うことはまったくありません。

 

ただ言いたいのは、どんな優れた武器、道具でも、使い手がヘタレだと宝の持ち腐れになります・・・

あれ程の戦闘ができたのは、道具の性能を本来以上に引き出した四騎士の実力だ・・・と思ってほしいです。

 

私なんか、持っているパソコンの機能を本当に使っているのか?と聞かれれば、約一割・・・としか言えませんし。

 

 

さて次回は・・・ルナ達が瘴気の森に入った後から始まります。

今回みたいな戦闘シーンはあまりありませんが・・・ネタバラシの話ですかね?ホンのちょこっとですけど・・・

ブラック・サレナがなぜ此処にあるか?などです。まあ、今さらという感じですけどね・・・

 

 

それでは・・・最後に、K・Oさん、15さん、一トンさん、Iogさん、NTRC直さん、TAGUROさん、

        v&wさん、サテライトさん、ハヤトさん、ホワイトさん、逢川さん、時の番人さん、

        秋さん、浅川さん、大谷さん、夢の竜さん、ナイツさん、ノバさん。

 

感想、誠にありがとうございます・・・

 

 

それでは・・・次回も、よろしければ読んでやってください・・・

 

追伸・・・身体の問題で、入院する可能性が高くなりました・・・一ヶ月ほど投稿が止まったりすれば・・・すみません。

 

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

ケインさんからの投稿です。

つ、強いですねね四騎士(汗)

中級魔族って、前回リナとガウリイが倒したマゼンダクラスですよね?

それを40体・・・・・・・・

サイラーグは地形が変わりまくってるし(苦笑)

何と言うか、引越しをお勧めします、サイラーグの市民の方には(笑)

 

これもリナに係わったせいだから、ですかねぇ?

 

 

PS

入院されるかもしれないそうですが、健康には気をつけて下さいね!!