赤き力の世界にて・・・

 

 

 

 

 

第44話「魔族の枷・・・」

 

 

 

 

 

 

 

覇王ダイナストが創造した城へと入ったルナ達は、一本しかない道を進んでいた・・・

脇道などはありはしない、本当にただの一本道。

 

その代わりなのか、通路はとんでもなく広く、それに比例して天井ももの凄く高い・・・・

そして、通路に施された装飾、彫刻などは、類を見ないほどに美しい。

これが城ではなく、美術館の通路・・・といわれれば、思わず納得してしまいかねないほどに・・・・・

 

 

リナは、天井にすら施された美麗な彫刻を見上げながら、口を開く・・・

 

 

「何とまぁ・・・・無駄に豪勢ね・・・・」

 

 

あきれたように口を開けて・・・・それは上を向いている所為かもしれないが・・・・リナは呟いた。

それもそうだろう・・・もし、本当の城であれば、一体いくら金がかかるのかわからないほどの装飾なのだから・・・

 

 

「以前、サイラーグで見た冥王が創った建物冥王宮なんて、装飾の欠片もなかったのに・・・」

「確かに、むやみやたらに広かったような気もするな・・・よく憶えてないけど・・・」

「あんた、ほとんど寝てたも同然だったからねぇ・・・・・」

 

 

首をかしげながら昔を思い出しているガウリイに、リナは容赦のないツッコミを入れる。

事実、ガウリイは冥王ヘル・マスターに囚われ、水晶クリスタルに閉じ込められていたのだ。

目が覚めた後、すぐにまた水晶クリスタルに閉じ込められたため、ガウリイに冥王宮の記憶はほとんど無い。

 

ただ・・・リナがそれを聞けば、元々記憶力のないあんたがそれだけ憶えていれば上等よ。と言うだろうが・・・・

 

そんな夫婦?漫才をしている二人に向かって、ルナは注意の声をかけた。

 

 

「二人とも、余裕があるのは良いけど、慢心と油断はしないようにね。

ただでさえ覇王ダイナストの懐の中なんだから。いつ襲われても不思議はないわよ」

 

「そりゃそうかも知れないけど・・・・ここまできたのに、今さら何かをする可能性はないんじゃない?姉ちゃん」

「あくまで可能性よ。用心しておいた方がいいわ」

 

 

しかし、ルナもそう言いながら、その可能性は低いと思っていた。

瘴気の森から出たことにより戻った感覚は、この城にたった1人しか居ないことを伝えていたのだ。

 

だが・・・そんな油断が、一瞬にして死を招く・・・・

敵陣の中で油断することほど、愚かなことはないのだから・・・・・

 

だが・・・今回は杞憂だったようだ。

 

 

「どうやら・・・ルナの懸念は外れていたようだな・・・」

「その様ね・・・」

 

 

ニースは通路の先に見えた扉と、そこにいる一人の気配を感じ、皆に注意を促す・・・

リナ達三人は、その事を察し、気を引き締めた。

 

皆の気が引き締まった事を察したルナは、巨大な扉を押して開けた。

 

扉をくぐり抜けた先・・・・そこは、町の一区画ほどもある大きな広場だった。

その最奥・・・一段と高くなっている場所に設置された玉座に座っている中年の男性が、

扉より入ってきたルナ達を見下ろしていた。

 

 

「ウェルズ国王・・・・」

 

 

その中年男性を見たリナは、呻くように呟いた・・・・・リナはその姿を見たことがあるのだ・・・・

かつて、覇王ダイナストがディルス王宮に潜伏していた際に使用していた姿なのだ・・・

 

その本人は・・・・・・今も、王宮の奥にて、死ぬことの許されない邪法ラウグヌト・ルシャヴナによって永劫の苦しみを味わっている。

 

ディルス王国での事件を思い出したリナは、覇王ダイナストに対して更に怒りを覚える・・・・

だがリナは、あえてそれを圧し隠し、いつもの軽い口調で覇王ダイナストに話しかけた。

 

 

「久しぶり・・・というべきかしら?」

「そうだな・・・・少なくとも、半年以上顔を合わせてはいないからな・・・・妥当だろう」

「まさか今だその格好ウェルズ国王の真似をしているとはね・・・気に入っているのかしら?」

「いや・・・・むしろ嫌悪しておる・・・何せ、この格好をしていた時に、人間なぞに負けたのだからな」

「へ〜。やっぱり堪えているわけ、人間に負けたことが」

 

 

リナの言葉に反応するかのように、覇王ダイナストは玉座から立ち上がった。

反射的に身構えるリナとガウリイ、そしてメアテナ・・・・・ルナとニースも、いつでも力が発動できる状態にある。

 

だが、そんな事に気がついていないのか・・・それとも知っていて無視しているのか・・・・

特に警戒した様子を見せず、ルナ達と同じ所に一歩一歩降りてきた。

 

覇王ダイナストとルナ達の間は、かなり・・・否、家が二、三つ建つほどの間合いが開いているが、

それでもルナ達は警戒をゆるめない。

この程度の間合いなど、五人の腹心やルナ達にとって、十分攻撃範囲の内だからだ。

 

 

「そうだ・・・・この姿は、人間に負けたという我自身への戒めでもある」

 

 

言葉を紡ぎながら、覇王ダイナストの身体が変化してゆく!

皮膚と身に纏っている服が白銀の金属のように高質化し、顔などは完全に覆われてしまう!

 

 

「あの様な手を使ったとはいえ、貴様達は私を出し抜いて勝利した・・・

魔族にとって・・・いや、覇王われにとって、何よりも代え難き屈辱よ・・・・」

 

 

覇王ダイナストの身体より闇の如き闘氣が立ち上り、渦巻く!

その威圧感は洒落にならず、リナやガウリイ、メアテナは思わず後退してしまう!

 

 

「私が汝達をこの場に呼んだ理由・・・・解るであろうな」

「リベンジって訳?似合わないわね・・・魔族にしては」

 

「そうかもな・・・・だが・・・・今の我には何よりも優先される事よ。

忌まわしき存在である汝等を倒す行為こそ、この世界を無に帰す第一歩にふさわしい。

正直、汝達がカタートに向かったと聞いたときは、我の手で倒せぬかと思ったのだが・・・よく生きて帰ったものだ」

 

「それはどうも・・・でもあんた、この面子に勝てると思っているわけ?」

 

 

神の力を受け継ぎし『赤の竜神の騎士スィーフィード・ナイト』ルナ・インバースに、

神魔戦争を戦い抜いた英雄の一人、『赤眼の魔王の戦士ルビーアイ・ソルジャー』こと、『ソードダンサー』ニース。

 

この二人だけでも十分勝てる要因があるのに、その上、神と魔の力を内包する奇跡の子・メアテナ、

混沌の力を行使する天才魔導士・リナ、そして妖斬剣ブラスト・ソードを操る凄腕の剣士・ガウリイ・・・

 

五人の腹心最強と云われた冥王ヘル・マスターでも、真正面から戦うことは回避するだろう組み合わせ。

いかな覇王ダイナストといえど、勝てる可能性はかなり低いだろう。

 

 

「それは言わずとも、これからの戦いによって知ることだ・・・・尤も、知る前に死ななければ良いがな」

「上等よ、やってみなさい・・・あの頃の私達とは違うんだからね」

「面白い・・・・みせてみよ、たかが人間の力をな!!」

 

 

覇王ダイナストから発せられていた暗黒の闘氣が集束し、白銀の鎧に黒のアクセントを加える!

更に、その闘氣は両腕に集束し、闇よりも深い色をした、漆黒の大剣グレートソードを創り出した!!

かなり力を篭めているのか、その剣は物質化しているほどであった!

 

ルナとニース、メアテナ達も、覇王ダイナストとほぼ同時に自分達の武器を創り出す!

ガウリイも妖斬剣ブラスト・ソードを抜刀し、リナもやや後ろに下がって、いつでも呪文の詠唱を始められるように待機する!!

 

 

「私とニースが主に攻撃をするわ、メアテナちゃんとガウリイさんも攻撃をして。

でも、リナの護衛を第一と考えて行動して!」

 

「うん、解った!」

「つまり、いつも通りに戦ってもいいってことだな」

「ふふ・・・そうね」

 

 

平然としたガウリイの言葉に、ルナは思わず笑ってしまった。

ガウリイの言葉を直訳すると、いつも戦っている最中はリナのことを第一に考えている・・・

そう言っているのも同然だからだ。

 

リナもそれが当たり前だと思っているのか、平然とした表情でいる・・・・

二人は無意識の内にお互いのことを第一と考えているのだろう・・・偶に例外はあるかも知れないが・・・・

 

 

「リナ、あなたは魔術でフォロー。生半可な術は効かないんだから、大きい術を準備していなさい。

隙は私達が作ってあげるわ。でも、重破斬ギガ・スレイブは最後までとっておきなさい」

 

「わかってるって。いきなりあんなのは使わないわ。何てったって、切り札だからね」

「それならいいわ・・・」

 

 

ルナはそう言うと、大剣グレート・ソードサイズの赤竜の剣を握りしめ、覇王ダイナストに向かって構える!

それに伴い、ガウリイやメアテナも、リナのやや前方に立ち、武器を構える!

 

 

「ニース、準備は?」

「それを訊くか?愚問だな。ルナこそどうなのだ?」

「確かに愚問ね」

 

 

ニースとルナは、朝に街を出た瞬間から、すでに戦闘態勢に入っている。

今さら準備云々問うこと自体、間違っているのだ。

 

 

「どっちに行く?」

「ニースは左、私は右。決め手は各自の判断で。ガウリイさんとメアテナちゃんは真正面から」

「うん」

「了解」

 

 

ガウリイとメアテナは、ルナの提案に頷いた。

最初から、二人のどちらかと組んで、コンビ攻撃ができるとは思ってもいない。

戦力バランスからすれば、ルナの提案が一番妥当だと理解しているのだ。

 

 

「いい返事だ・・・行くぞ!」

 

 

ニースのかけ声と共に、リナを除いた四人は覇王ダイナストに向かって行く!!

話し合った通り、ニースは左側から、ルナは右側から・・・そして、メアテナとガウリイは正面から。

 

こうすれば、覇王ダイナストは両手の剣をもっとも強敵であるルナとニースに向けざるおえない!

 

覇王ダイナストは三方に分かれたルナ達を見ると、両手に持った大剣グレート・ソードを少しだけ持ち上げた。

ただそれだけ・・・・それ以上の動きはみせない。

 

ルナとニースはその動作で、覇王ダイナストの意図を理解した!

 

 

(私とニースの剣を受け止めるつもり?)

(だとすれば舐められたものだな・・・・ならば!)

 

((その剣ごと叩き斬る!!))

 

 

ルナとニースは、打ち合わせたわけでもないのに、同じ考えに至る!

ルナの持つ赤竜の剣の刀身からは、光の粒子が発生し、螺旋を描いて巨大な刃と化し、

ニースの持つ二本の赤き魔剣は激しく明滅し、空間に赤い魔力の光刃を残し始める!!

 

 

「神竜剣技 大地裂斬!!

「魔影一式 残光刃!!

 

 

ルナは覇王ダイナストに向かって右薙ぎに光刃を振るう!!

その反対側では、ニースが明滅する二刀の魔剣を振り下ろしていた!!

 

二人の繰り出した必殺剣技が、覇王ダイナストの漆黒の大剣と衝突する!!

 

 

ギィィーーン!!

 

 

「「―――――ッ!!」」

「ふん・・・その程度か」

 

 

かつて、ルナの神剣を叩き斬ったニースの残光刃が・・・・

アキトの秘剣・飛竜翼斬を真っ二つにしたルナの大地裂斬が・・・・・

覇王ダイナストの漆黒の大剣に完全に止められる!!

 

しかも、受け止めた二刀の漆黒の大剣は、ヒビが入るどころか、刃が欠けることすらなかった!!

 

 

「ヌンッ!!」

 

 

覇王ダイナストは力を篭めると、大剣より漆黒の衝撃波を放ち、ルナとニースを吹き飛ばす!!

そして、疾走しているガウリイとメアテナに向かって、それぞれ二刀の大剣を振るった!!

その振るった軌跡と同じ型の漆黒の剣閃が、ガウリイとメアテナに向かってもの凄いスピードで迫る!!

 

 

「邪魔だ!!」

 

 

ガウリイは襲いかかってくる漆黒の剣閃に向かって、妖斬剣ブラスト・ソードを振りかぶる!!

対するメアテナは、両手に創り出した赤い光の刃を交差させ、剣閃を受け止めようとする!!

 

その二人を見たニースは、焦って声を張り上げる!

 

 

「避けろ!でなければ流せ!!」

 

 

ガウリイとメアテナは、ニースの言葉に反射的に従い、漆黒の剣閃を受け流そうとする!

が!受け流すために触れた瞬間、二人は磁石が反発するかのように吹き飛んだ!!

 

 

「何なんだ!あのバカみたいに重たい剣閃は!」

「ニース姉さんの言うとおりにしてなかったら、本気で危なかった・・・・」

 

 

吹き飛ばされた二人は、空中ですぐさま体勢と調え、床の上を滑りながら止まる。

その滑る距離の長さから、覇王ダイナストの放った剣閃が半端な威力でないことが理解できた。

 

 

(ガウリイやメアテナはともかく、姉ちゃん達の攻撃をこともなげに受け止めるなんて・・・

覇王ダイナストの奴、明らかに前より強くなっている?・・・・それとも、これが本気だっていうの?)

 

 

リナは、以前見た覇王ダイナストの攻撃とは比べものにならないほどの攻撃に、冷や汗をかく・・・・

前に戦ったときも、洒落にならないくらいの攻撃であったにも関わらず、更に攻撃力を増している・・・

 

思っていたよりも状況が悪い・・・・・リナは心の中だけで呟いた。

 

 

「ガウリイ!メアテナ!あんた達は姉ちゃん達の邪魔にならないようにしながら、

覇王ダイナストに嫌がらせしなさい!主に戦うのは姉ちゃん達に任せるのよ!」

 

「クソッ・・・・わかった」

 

 

そういうものの、ガウリイは納得していないのか、妖斬剣ブラスト・ソードの纏う紫光を強くする!

 

 

「私もわかった。でも・・・戦うことを諦めた訳じゃないよ」

 

 

メアテナの創りだした二刀の赤い光刃も、その色合いを濃くし、光度も加速度的に増す!

 

そんな二人の武器が完成する前に、ルナとニースは再び覇王ダイナストに斬りかかる!

 

二人は覇王ダイナストに必殺剣を受け止められて、ほんの一瞬だけ動きが止まったものの、

すぐさま覇王ダイナストに対する考えを改め、強さに見合った戦法を取り始める!

 

 

「セイッ!!」

 

 

ルナの放った線のように集束された赤い剣閃が覇王ダイナストに襲いかかる!!

それと同時に、ニースも反対側からルナとは違った赤い色の剣閃を放つ!!

 

 

「その程度の攻撃、避けるまでもない!!」

 

 

二人の放った赤き剣閃は、覇王ダイナストの一撃によって粉々に打ち砕かれる!!

だが、その一撃によって覇王ダイナストに一瞬の隙が生まれた!

 

 

「油断していると、あっさりと滅ぶわよ!」

 

 

覇王ダイナストの懐に飛び込んだルナは、掌に集束した神力を零距離で叩き込む!!

その瞬間、打ちつけた掌を中心に、赤い光と共に重い衝撃波が辺りの空間に響く!

 

ルナはその発生した衝撃波の流れに逆らわず、逆に利用して自ら後ろに跳んだ!

―――――直後!ルナがいたその空間を黒い刃が薙ぎ払う!

 

 

「その程度で我を倒せると思ったか!!」

「塵ほども思ってないわ」

「その通りだ!」

 

 

懐にまで入り込んだルナに気をとられた覇王ダイナストは、背後に接近したニースに気がつかなかった!

ニースは右手に持った剣で覇王ダイナストに向かって袈裟懸けに斬りかかった!!

覇王ダイナストは左手に持った大剣でその一撃を受け止める!!

 

そして、右手の大剣でニースに斬りかか・・・・・ろうとしたが、動かなかった!

覇王ダイナストがそちらを見ると、そこには赤竜の剣を鞭に変え、漆黒の大剣に巻き付けて動きを封じているルナがいた!

 

 

「小賢しいわ!!」

 

 

覇王ダイナストは両手に力を篭めると、漆黒の大剣を無理矢理振るおうとした!!

が、それよりも先に、ニースが左手で持っていた魔剣で覇王ダイナストの首を刈るべく薙ぎ払われる!

 

だが、赤き刃が覇王ダイナストに触れる寸前、突如発生した黒い半透明の結晶がそれを受け止めた!

 

 

「チッ!!」

 

 

ニースは舌打ちすると、それ以上粘ることなく潔く後ろに引いた。

それと同時に、ルナも覇王ダイナストとの間合いを広げた。

 

 

(ニースの攻撃を受け止めたということは、少なくともまともに喰らえば傷を負うダメージを受けるという事ね。

しかし・・・不可解ね、覇王ダイナストの力が思ったよりも高い・・・人間相手になぜ・・・)

 

 

ルナはそこまで考えた瞬間、床を蹴り、右に向かって跳んだ!

その直後、ルナの立っていた空間に、黒い閃光が走った!!

 

 

「考えている暇はない・・・・か。戦えばそのうち答えも出るでしょうし・・・・・」

 

 

そう呟くと、ルナは赤竜の鞭を再び大剣に変え、覇王ダイナストに向かって疾走した!

それより数瞬遅れで、様子を窺っていたガウリイも疾走する!!

 

 

「神魔混合・裂光弾!!」

 

 

メアテナの放った、神と魔の力が入り乱れた光弾が覇王ダイナストに殺到する!!

それを見た覇王ダイナストは、右手に持っていた漆黒の大剣を瞬時に盾に変化させ防御する!

 

 

「魔影二式・残光翔裂破!!」

 

 

ニースの放った残光翔裂破連続の剣閃が、覇王ダイナストの左側から襲いかかる!

覇王ダイナストはそれを、左手の大剣を盾に変え、障壁を発生させて受け止める!!

 

もし、大剣で斬り裂きでもすれば、そのすぐ後に迫っているニースに対して隙を見せてしまう事からだ!

 

ニースは、更に攻撃力を増させた二刀の魔剣を振るい、黒い障壁をいとも容易く斬り裂く!

だがその剣撃も、覇王ダイナストの漆黒の盾に受け止められる!!

 

 

「神竜剣技・大地裂斬!!」

 

 

ニースとは反対側から、ルナが覇王ダイナストに向かって、刀身に光を集束させた剣を振るう!!

これが大地裂斬の真の姿であり、完成形態!

纏うのではなく、完全に集束している!正に大地さえ斬り裂く刃と化している!!

 

迫りくる赤竜の大剣を、覇王ダイナストは先程メアテナの攻撃を防いだ盾で受け止める!!

 

 

「グヌゥッ!!」

 

 

二人の剣を受け止めた覇王ダイナストは、この戦いで始めて苦悶の声を上げる!

二人の剣が漆黒の盾にめり込み、今にも斬り裂こうとしているのに抵抗しているのだ!!

 

両手を左右に広げ、ルナとニースの攻撃を受け止めている覇王ダイナストに向かって、

妖斬剣ブラスト・ソードを水平に構えたガウリイが突進する!!

 

全身全霊を篭めたガウリイの刺突!!その足の速さはいつもの比ではなく、

リナには妖斬剣ブラスト・ソードから発生している紫光が、彗星の如く長く尾を引いているようにさえ見える!!

 

 

「オオオォォォーーーーッッ!!!」

 

 

ガウリイの妖斬剣ブラスト・ソード覇王ダイナストの腹部に突き刺さる・・・・・・その寸前!

ニースが覇王ダイナストの首を狙った時と同じく、突如発生した半透明の黒い結晶が、ガウリイの刺突を止めた!!

 

妖斬剣ブラスト・ソードの切っ先と黒い結晶とが拮抗し、弱い閃光を発しながら電気が弾けるような音をたてる!!

 

 

「メアテナ、ガウリイに当たらないようにフォロー!!」

「わかった!!」

 

 

リナは覇王ダイナストに向かって右手の人差し指を向けた!

メアテナも、リナのやることを真似て、右手の人差し指を覇王ダイナストに向ける!

 

 

獣王牙繰弾ゼラス・ブリットッ!!」

「貫け!!」

 

 

リナとメアテナの人差し指より放たれた二乗の閃光は、真っ直ぐに覇王ダイナストの額めがけて飛翔する!!

覇王ダイナストは軽く舌打ちすると、目の前まで迫った二乗の閃光を力を篭めて睨む!!

すると、視線にでも迎撃されたかのように、二乗の閃光は霧散した!!

 

 

『―――――ッ!!』

 

 

それをガウリイを除く皆は、驚きに目を見開いた!!

リナとメアテナは、三人の攻撃を受け止めながらも迎撃する覇王ダイナストの底知れない実力に・・・・

ルナとニースは、閃光を散らした覇王ダイナストの方法に!!

 

そんな四人の驚きを吹き飛ばすかの如く、ガウリイは雄々しく吠える!!

それと共に、妖斬剣ブラスト・ソードの紫色の光も眩しく輝く!!

 

リナとメアテナの攻撃を相殺するため気が逸れた覇王ダイナストの一瞬をついたのだ!!

 

 

「オオォォォォオオオーーー!!!」

 

 

妖斬剣ブラスト・ソードの切っ先が黒い結晶に少しだけ食い込む・・・・次の瞬間!

止められていた勢いを取り戻すかの如く、妖斬剣ブラスト・ソードが一気に結晶を貫き、覇王ダイナストを突き刺した!!

 

 

「グッ!!・・・・・グオォォッッ!!!」

 

 

少しだけ低く呻いた覇王ダイナストは、すぐさま雄叫びを上げながら黒い衝撃波を放つ!!

比較的遠くにいたリナとメアテナは踏ん張っただけですんだのだが、

斬りかかっていたルナとニースは、その衝撃波を自らが後方に下がる事によって受け流した。

 

そして問題はガウリイ・・・突き刺した直後だったため、反応が遅れ、

衝撃波をまともに浴びて吹き飛ばされて、床の上を数回ほど跳ね、転がり滑りながら止まった!

 

 

「グハッ・・・」

「ガウリイ!!」

 

 

ガウリイは上半身を何とか起こし・・・・少量の血を吐き出す。内蔵がやられたらしい!

リナはすぐさまガウリイの傍により、治療呪文リザレクションをかけ始める。

 

 

「す、すまない。リナ・・・・・」

 

「喋らないで、治りが遅くなるから・・・それに気にしなくていいわよ。

何てったって、覇王ダイナストに最初の一撃を喰らわせたんだからね」

 

「意味は・・・・無かったみたいだがな・・・・」

 

 

ガウリイは無理矢理立ち上がりながら、覇王ダイナストを睨んだ。

リナも、ガウリイにつられて覇王ダイナストの方を見ると・・・・

 

そこには、腹部の傷が急速に癒えてゆく覇王ダイナストの姿があった!

 

 

(表面上だけ傷を塞いでいる・・・・・という感じじゃないわね)

 

 

精神世界面アストラル・サイドに属する魔族が、物質世界に見せる姿はあくまで仮のもの・・・

その姿は、くらいの高い魔族になればなるほど、自由自在に変化させることができる。

 

子供、女性、人間はいうにおよばず、剣などの武具、それこそ魔物モンスターといわんばかりの姿でも・・・

ゼロスといった高位魔族となると、鏡に映したかのような、そっくりな姿に化けることでさえも可能。

 

それゆえに、傷が癒えたように見えるのは、見せかけの姿の傷を消しただけで、

精神世界面アストラル・サイドにある覇王ダイナストの本体はダメージがあるはず・・・そう、リナは考えたのだが・・・

小さな声で話し合っているルナとニースの顔色を見て、その考えは間違っている・・・・・そう判断した。

 

 

 

「ルナ・・・アレをどう思う」

「防御したのであれば、不思議じゃないんだけどね・・・迎撃は不可能なはずよ」

「そうだな・・・・と、いうことは・・・・」

「ええ・・・でも、ちゃんと確認するまでは断言できないけど・・・・気をつけてね」

「わかっている・・・・・メアテナにあの二人を任せよう」

「そうね・・・・・」

 

(もし、私の仮説が正しければ・・・覇王ダイナストの強さも、ダメージがすぐに治ったことも説明できる。

でも・・・・それが正しいと証明された瞬間、この戦いが私達に不利だという事が明らかになる瞬間でもあるわね)

 

 

ルナは心の内だけで呟き、漆黒の大剣を構え直す覇王ダイナストを睨み付けた。

 

 

「やはり・・・人間を舐めすぎていたということか・・・赤の竜神の騎士スィーフィード・ナイトやソード・ダンサーならまだしも、

妖斬剣ブラスト・ソードを持っているとはいえ、ただの人間に黒魔晶こくましょうを破られ、傷つけられるとはな・・・

自動的な防御魔術とはいえ、やはり元が魔力・・・それが仇となったようだ・・・」

 

 

覇王ダイナストの黒い闘氣が、まるでヘビのように覇王ダイナストの身体にまとわりつく!

その黒いヘビは、白銀の鎧に溶け込むように姿を消し、白と黒のまだらだった鎧を漆黒に染め上げる!

漆黒の大剣も、覇王の魔力黒い闘氣を吸収し、禍々しい雰囲気をより一層強くする!

 

 

「まともに受けたら痛そうね・・・・」

「痛いですめばいいがな・・・」

 

 

リナの軽口に、ガウリイは真面目に答える・・・・

遠距離攻撃をするリナとは違い、ガウリイは間近で戦うのだ・・・・軽口を言う余裕はない。

 

 

「準備運動は終わりだ・・・・全力で行くぞ・・・」

 

 

覇王ダイナストの漆黒の鎧よりあふれ出る漆黒の闘氣が、再びヘビのような姿をとる!

その数は五匹程度なのだが・・・その禍々しさは普通のヘビを百匹集めてもまだ足らないだろう。

全ての物を噛み砕かんと鎌首もたげる黒い大蛇は、どのような毒蛇よりも毒々しい・・・・・

 

 

「その牙をもちて噛み砕け!!」

 

 

覇王ダイナストの号令に、五匹の大蛇がルナ達に殺到する!!

空中を滑るように進み、顎を大きく開き襲いかかる姿に、リナは生理的嫌悪感を覚える!

 

 

烈閃砲エルメキア・フレイムッ!!」

 

 

リナはすぐさま詠唱をすませ、自分に向かってくる大蛇に向かって閃光を放つ!!

だが、魔を滅ぼす力をもった閃光は、大蛇に飲み込まれて消滅する!!

 

 

「うそっ!!」

 

 

突っ込んできた大蛇をなんとか避けながら、リナは驚きの声を上げた!

避けるならまだしも、まさか飲み込まれるとは思ってもいなかったのだろう。

 

そんなリナの驚きなどを余所に、大蛇は旋回し、再び襲いかかる!!

 

 

「唱える隙が・・・・・―――――しまった!!」

 

 

詠唱する時間を与えず襲いかかってきた大蛇を、またもや避けたリナは、自分の失策に気がついた!

大蛇といっても、根本は覇王ダイナストから伸びている!

その為、攻撃をかわしたのは良いが、胴が途切れているわけではないので、逃げ道が無くなってしまったのだ!

 

リナの周りにある黒い大蛇の胴が、一気に狭まりリナを締め付けようとする!!

 

 

(あんなのに締め付けられたら、あっと云う間にバラバラになる!!こうなったら・・・・)

 

 

リナは呪文の詠唱を早口にすませながら、腰に下げてあった剣に手をかけ、引き抜こうとする。

が、それよりも先に、紫色の閃光が大蛇を微塵に斬り裂いた!!

 

 

「すまん!思ったよりも手間取った!大丈夫か!!」

「何とかね!!良いタイミングだったわ、ガウリイ」

 

 

大蛇を微塵に斬り裂いたガウリイは、覇王ダイナストからリナを庇うように剣を構える!

周りに飛び散っていた黒い大蛇の残滓は、覇王ダイナストの元に集まり、再びその姿を取り戻す!

ニースも、大蛇を微塵に吹き飛ばしたが、覇王ダイナストの元へと集束し、元の姿へと戻る。

 

ただ、ルナとメアテナが倒した大蛇は、元に戻ることなく蒸発して消えていった!

 

 

「なるほど・・・姉ちゃんの剣は神の力で創り上げたもの。メアテナの光の刃も、片方は神の力・・・

それで倒すことによって、覇王ダイナストの力を浄化したのね」

 

「感心している場合じゃない!きたぞ!!」

 

 

ガウリイはリナの身体を抱き寄せると、その場から右に跳んだ!!

その一瞬後、一足飛びに襲いかかってきた覇王ダイナストが漆黒の大剣を振り下ろしていた!!

剣の叩きつけられた床が、無惨にも大きくへこみ、ひび割れる!

 

 

「お偉い覇王ダイナスト様が一番最初に私達を襲うなんて、光栄ね!」

「もっとも弱き者から始末するのが戦闘の流れ・・・恐怖しながら死ぬが良い!!」

「させるかよ!!」

 

 

ガウリイが妖斬剣ブラスト・ソードで、リナに振るわれた覇王ダイナストの漆黒の大剣を受け止める!

紫色の光を燦然と輝かせる妖斬剣ブラスト・ソードは、覇王ダイナストの大剣となんとか拮抗する!!

 

だが、妖斬剣ブラスト・ソードが一本に対し、覇王ダイナストの漆黒の大剣は二本!

覇王ダイナストはもう一つの大剣を、ガウリイに向かって振り下ろした!!

 

リナは反射的にガウリイを助けようと大剣の軌道上に自分の身体を挟もうとする・・・が、

それよりも先に、割り込む者がいた!!

 

 

「ガウリイさん!気をつけないと危ないよ!!」

「すまん!!」

 

 

普段以上に輝く、赤い二刀の光の剣を持ったメアテナが、覇王ダイナストの大剣を受け止める!!

しかし、それにホッとする暇などはガウリイ達にはなかった!

 

メアテナがガウリイに注意を促す!!

 

 

「ガウリイさん!!蛇が!!」

 

 

そう・・・・今の覇王ダイナストの武器は二刀の大剣だけでは無いのだ!

覇王ダイナストの魔氣より創られし漆黒の大蛇が、剣を受け止めたガウリイとメアテナに襲いかかる!!

 

 

「長いモノが嫌いになりそうだ!!」

 

 

ガウリイは悪態をつきながら、もの凄い勢いで後方へと跳んだ!

メアテナも、ガウリイとほぼ同時に、後方へと跳びずさる。

 

リナは二人が後方へと跳んだのを確認するや否や、!!

 

 

竜滅斬ドラグ・バスターァッ!!」

 

 

覇王ダイナストの身体を、突如発生した赤い光の柱が包み込む!!

赤い光の柱は、直上にあった天井を瞬時に蒸発させる!!

 

中級魔族マゼンダでさえ瞬時に滅ぼすほどの威力をもった赤い光の柱は、

覇王ダイナストを取り巻いていた黒い大蛇を崩壊させ、完全に消滅させる!!

 

リナは思った以上に効果のあった竜滅斬ドラグ・バスターに、ほんの少し期待した・・・・次の瞬間!

 

 

「フンッ!!」

 

 

覇王ダイナストの気迫に、赤い光の柱は粉々に打ち砕かれる!!

黒い蛇は消滅したものの、覇王ダイナスト自身に目立った外傷は見られない・・・・

 

 

「面白いモノを見せてくれるな・・・・これはその返礼だ!受け取るがいい!!」

 

 

覇王ダイナストはリナ達に向かって、左手に持っていた黒い妖気を発する大剣を突き付ける!!

リナはそれを見た瞬間、とんでもない悪寒を感じた!!

 

 

(やばい!何かよくわからないけど、とんでもなくやばい!!)

 

 

それは、幾多の死線をくぐり抜けてきたリナの生存本能と云うべきモノであろうか・・・・

それが、最大限の警告を伝えていたのだ!

だが・・・それと同時に、もはや自分には避けようがない・・・それも理解していた。

 

何かが、音もなく光もなく、自分達に襲いかかるのを、リナは感じる!!

 

 

本気マジで死ぬっ!!)

 

 

リナが半ば覚悟を決めた瞬間!

リナ達と覇王ダイナストの間に割って入ったニースが、何もない空間に向かって二刀の魔剣を振るった!!

 

ギャンッ!!

 

不可思議な音と共に、剣を振るった空間に弱い黒い光が発生した!!

 

 

「誰一人として殺らせはせん!!」

「やって見せろ!『ソード・ダンサー』ニース!!」

 

 

覇王ダイナストはニース達に向かって一足飛びに斬りかかろうと身を低くした・・・次の瞬間!!

振り返って、遙か後方にいたルナに右の大剣を突き付ける!!

 

ルナもほぼ同時に、赤竜の大剣を覇王ダイナストに向かって突き付けた!!

 

すると、なんの前触れもなく、ルナと覇王ダイナストの中間辺りの空間が、捻れるように歪んだ!!

それは数瞬で元に戻ったが・・・・ルナと覇王ダイナストはかなり渋い表情をしている。

 

ルナは、予想していたとはいえ、本当にあの攻撃を相殺されたことに対して・・・

覇王ダイナストは、思ったよりもルナの攻撃力が高く、咄嗟の事とは云え相殺しかできなかったことに・・・

 

 

「え?何、一体何なの!?」

 

 

リナは状況が判断できず、目の前にいたニースに質問する・・・

ニースは一瞬躊躇し、苦々しい口調で語りだす。

 

 

「ルナがやったことは、精神世界面アストラル・サイドでの攻撃だ。そして、覇王ダイナストはそれを相殺した・・・同じ方法でな。

ちなみに、先程覇王ダイナストがお前達にした攻撃も、同じ精神世界面アストラル・サイドでの攻撃だ」

 

 

リナは、ニースの言った言葉が信じられず、数瞬の間、頭の中が真っ白になり、呆然とした・・・

極一部の例外を除き、精神世界面アストラル・サイドが視えない人間には、防ぐことはおろか、避けることですら不可能に近い。

つまりそれは、リナとガウリイといった力を持たない人間には、覇王ダイナストの本気の攻撃を視ることができない・・・・

獣並の勘を持ったガウリイなら避けられるかも知れないが、

リナにとっては実質上、死の宣告を受けたにも等しい。

 

リナの顔色は、青を通り越し、今にも倒れそうなほど真っ白になっていた・・・・・

 

傍にいたガウリイやメアテナは、今の言葉の重要性がわかっていなかったのか、

今ひとつ納得しかねているようだが、リナの様子からとんでもないことだということだけは理解していた・・・

 

 

「予想通り・・・・・まさか腹心の一人たる覇王ダイナストが、そこまでするとはね・・・・・」

「ほう、その様子だと何があったのか理解したようだな」

 

 

覇王ダイナストは唇の端をつり上げるような笑いの顔をした・・・

それを見たルナは、胸に溜まった重い空気を全て吐き出さんばかりに、深く溜息を吐いた・・・・・・

 

 

「ええ・・・・部下だけならまだしも、まさか貴方まで魔族をやめるとはね・・・・・・」

 

 

ルナの言葉は・・・・それほど大きくなかったにもかかわらず、広い空間である部屋中に響いた・・・・

それは、その言葉自体の重みが果てしないように、リナ達は感じた・・・・・・

 

 

 

(第四十五話・アキトサイドへ続く・・・・)

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

 

どうも、ケインです・・・

色々な都合あって、昨日で退院しました。(決して、追い出されたのではありませんので・・・)

 

それはともかく・・・今回は、ルナ達対覇王ダイナストの戦いでした。

 

覇王ダイナストがなぜ余裕があったのか・・・最後にでてきましたね。ああいう訳なんです。

とりあえず、質問があると思うので言っておくと、魔族をやめた順番は、

 

覇王ダイナスト覇王神官プリーストグロウ→その他・人魔となった魔族

 

となります。

グロウ同様、覇王ダイナストも魔族をやめる気では無かったのですが、結果そうなってしまった・・・と言う感じです。

理由も、世界を無に帰すと言う目的のため、神との戦いに備えて更なる力を求めた・・・です。

決して、ルナ達との戦いのためではありません。

同格の存在である魔竜王カオス・ドラゴン・ガーヴが、魔王と一緒でも水竜王を倒せなかったのですからね・・・

覇王ダイナストとその配下を合わせても、勝ち目はありませんから・・・

 

ゆえに、ある存在と融合した結果・・・ああなったわけです。

 

長々しい話になって申し訳ございません・・・

 

それでは最後に・・・15さん、KーDAIさん、ナイツさん、ホワイトさん、逢川さん、下院さん、下屋敷さん、

            時の番人さん、双頭竜さん、大谷さん、夢幻草さん、遊び人さん、

            ノバさん、GPO3さん、狛犬さん。

 

感想、誠にありがとうございます!

よろしければ、次回もまた読んでやってください。

 

では・・・次回、四十五話『黒の衝突』にて・・・・

 

 

管理人の感想

ケインさんからの投稿です。

まずは退院おめでとうございます!!

いや、人間健康が一番ですよね。

それにしても、強いな・・・ガウリイ(爆)

人間の中では、一番強いんじゃなかろか?