赤き力の世界にて

 

第6話「実家にて・・・」

 

 

「久しぶりね〜、あんまり変わってないわ」



ここはゼフィーリアの王都、ゼフィール・シティ
リナちゃんの故郷らしい。




「おっ?リナちゃんじゃないか!!
久しぶりだね〜、元気だったかい?」

「久しぶり!!八百屋のおっちゃん、
相変わらず光ってるね〜、頭が・・・」

「大きなお世話だよ!!」






「キャ〜!!リナ久しぶり!!
噂は色々聞いてるわよ!」

「どうせろくでもない事ばかりでしょ」

「セイルーンの王子に求婚したとか、
サイラーグの町の不思議に関わっているとか・・・」

「後者はともかく、前者だけは根も葉もないデマ!!」






「リナちゃん、帰ってきたのかい?」

「食堂のおばちゃん!!相変わらずご飯はおいしいの?」

「前より腕は上がっているよ!!また食べにおいで」






「おおっ!!リナ君、久しぶりじゃね」

「お久しぶりです、魔術に研究は進みましたか?」

「まだまだじゃよ、魔導士協会の方にも顔を出しなさい。
ローブがタンスの肥やしになってしまうぞ」

「謹んで辞退します・・・」






「リナ!!お久しぶり!!
後ろのカッコイイ男の人は何?しかも二人も?」

「二人とも旅の仲間よ」

「そんなこと言って、本当はどっちなの?もしかして二人とも?
リナってば大人になったのねぇ〜!!」

「相変わらず人の話聞かない奴ね・・・
もう一度攻撃魔法の実験に付き合いたい?」

「や・・・や〜ね〜、冗談よ、じょ・う・だ・ん♪」







「こうしてみると・・・リナ、お前結構好かれていたんだな〜」

「当たり前よ!!近所でも評判だったんだから!!」

「悪い方でか?」

「なんでそうなるのよ!!」


この二人の突っ込みにはついていけない・・・


「まあまあ二人とも・・・家の方は遠いのかい?」

「ああ、もうちょっと・・・ここだここだ!!」


そこは、町の中心よりやや外れにあるかなり大きめの家だった。
商家らしく、表に『インバース商会』と書いてあった。

ただ・・・


「なあ、リナちゃん」

「ん、何?」

「あれ・・・だけど・・・犬小屋?」


そこには、人が窮屈ながら住めるのでは?
と思うほど大きい犬小屋があった・・・
プレートに『スポット』と書いてある。


「あ、ホント!また姉ちゃん拾ってきたのかな?」

「拾って来たって・・・熊でも飼ってんのか?お前ん家・・・」

「そんなことあるはずないでしょ・・・たぶん・・・」


たぶんって・・・恐ろしい家だな。


「中には何もいないみたいね・・・
まあ良いわ!家族に誰かに聞けばわかるでしょ」

「そうだな」

「それもそうだ」





「ただいま〜!!」

「おお、リナお帰り、どうしたんだ?急に帰ってきて」

「ん?まあ久しぶりに帰ってみるのも悪くないかなって」

「そうか・・・色々あったようだな・・・
目を見ればだいたいわかるよ・・・改めて、お帰り・・・リナ」

「うん・・・ただいま、父さん」


お父さん!?若いように見えるぞ・・・
実際、見た目は20代後半から40半ばまで見える。
仕草自体でいくつでも年は誤魔化せるだろう。


「あ〜!!あんたは!!」


ん、ガウリイ知り合いだったのか?


「あの時の釣りしてたおっさん!!」

「おお、あんときの兄ちゃんか、元気そうだな、
迷いは吹っ切れたのか?」

「ああ、あんたの娘さんのおかげでね、
元凶もろともすっきりしたよ」

「なんだ、結局捨てちまったのか・・・勿体ない」

「いや、そこら辺は色々あったんだけど・・・」



何だか俺だけ蚊帳の外だな・・・
置物と大して変わりないな、今の俺・・・


「まあ積もる話しもあるだろう・・・奥に上がってくれ、
そろそろルナも犬の散歩から帰ってくる頃だ」

「犬って・・・表にあったあのバカでかい犬小屋の?」

「ああ、番犬代わりでな、
この前も忍び込もうとした盗賊団を返り討ちにしてくれたよ」


恐ろしい番犬だな・・・
しかも団と言うからには複数居ただろうに。


「まあ帰ってきたら挨拶ぐらいすると良い」

「しかし、この家に忍び込もうとする盗賊(バカ)が居るとはね・・・
最近できた所ね、あとで狩ってこよう」

「まあ程々にな、とりあえず上がったらどうだ?
いつまでも立っているのも疲れるだろう」

「そうね」

「すまない、上がらせてもらうよ」


俺は・・・どうしようか?
話についてゆけない・・・


「そこの兄ちゃんも上がってくれ、
どうせリナが迷惑かけた口だろうからな」

「そんなことありませんよ、
むしろ俺の方が迷惑かけっぱなしで・・・」

「まあ良いから!とにかく上がってくれ」

「わかりました、お邪魔します」




「お帰り、リナ。
そしてそこのお二人さん、いらっしゃい。
私がリナの母親のレナ・インバースといいます。」


この家はどうなっているんだ?
リナちゃんの母親といったこの女性、
どう見ても二十代半ばから三十代前半にしか見えない・・・


「あ、どうも俺は・・・」

「ただいまー、あら?リナやっぱり帰ってきたのね」

「お?ちょうど良い、お二人さんこの子が私達の娘、ルナだ」

「始めまして、ルナ・インバースといいます」



このルナといった女性、やはりリナちゃんの姉妹だけあって顔つきが似ていた。
百人に聞けば百人とも絶世の美人と言うだろう。
年は20歳ぐらい、髪は腰まである赤みが入った金髪、
しかし気配が人間とは何か違っている・・・
この前会った魔族とは違う・・・どちらかというと、神々しい感じだ。
物腰から見てかなり強い、間違いなく・・・

余談だが、プロポーションはもの凄く良い・・・



「始めまして、俺はガウリイ・ガブリエフ、ガウリイと呼んで下さい」

「テンカワ・アキトです、始めまして」

「そういや〜、俺も自己紹介してなかったな、
俺はロウファ、親しい人からはロウと呼ばれてる」

「よろしく、ロウファさん」

「よろしく、おっちゃん」

「おいおい、おっちゃんはよしてくれ、
それにテンカワ君の方もロウで結構だよ」

「はい、わかりました。俺もアキトで結構です。
そうだ!ディア、ブロス」

「呼んだ〜?アキト兄」

『僕のこと呼んだ?』

「ああ、この人達がリナちゃんのご家族だ」

「ディアで〜す!!よろしくお願いしま〜す♪」

『ブロスで〜す!!こちらもよろしく!!』

「こいつはたまげた、こりゃあ一体何なんだ?」

「まあ珍しい!ディアちゃん、ブロス君
私はレナというの、よろしくね」

「私はルナよ、よろしくディアちゃん、ブロス君」

「俺はロウファ、よろしくな、ちょっと変わったお二人さん」







この後、俺の事情を話した・・・








「そうかい、そんな事が・・・・」

「大変でしたねぇ。色々と辛かったでしょうに・・・」

「この世界に来て色々大変でしょうが何でもいってね!
私にできる限りのことはするわ」

優しい家族なんだな・・・
俺のことを本当に心配してくれている。

この世界に来て、この家族に会えたことが俺は嬉しかった。

「ありがとうございます」


そう言って、俺は微笑みながら感謝の言葉を返した。



・・・なぜルナさんとレナさん、顔が赤くなってるだ?
・・・もしかして熱いのかな?


異世界まで行っても鈍感男は鈍感だった・・・






・・・・・・・

「さてリナ、あなた旅の間に色々やったみたいね」

「ど、どの事?い、いや何の事?」


リナちゃん思いっきりどもってるよ・・・
これじゃあ白状しているのも同じだよ・・・


「貴方やガウリイさん、アメリアさんにゼルガディスさん、
魔王の腹心二人も相手にしておきながらよく生き残ったもんね、
・・・あなた達、相当運が良かったわよ」


「まあ・・・あの事に関したらそう思うけど」

「俺なんかヘル何とかって奴に捕まって死にかけたしな。
それに光の剣もその事件のせいでなくなっちまったし」


こいつ!!いらん事ばっかし覚えていて!!
得意の鳥頭はどうした!!


「それにディルス王国での覇王絡みのこと・・・
竜族の長とエルフ族の力を借りたとはいえ、大したものよ」


・・・うう、全部ばれてる・・・
どうして?関係者の口は封じ・・・いやいや、黙秘してもらっているのに・・・


「その顔じゃあ、何でばれているのか、なんて考えている顔ね」


す・・・するどひ・・・相変わらずか・・・


「そして・・・ルークさんとミリーナさんのこと・・・」

「うん・・・」

「リナの姉ちゃん!!アレはリナの所為じゃあ」

「わかっていますよガウリイさん、ただ私が言いたいのは、
あなたの力が及ばなかった事を言っているんじゃないの・・・
学ぶべき事を学んでいれば、防げていた事があったんじゃないか。
そう言いたかっただけ・・・」


私は・・・何も言えなかった・・・
確かに、学んでいなかった、覚えていればよかった、
そんな事が度々あった。


「今、魔族に動きは無いけど、いつあなたを狙った動きがあるともわからないわ」


確かに・・・あそこまで魔族を引っかき回したのだ、
何か新しい動きをする時に、何かと邪魔な私を消そうとするだろう。


「その事について、一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」

「なに?」

「魔族に姉ちゃんと同じ赤い剣を持った女形の魔族がいたの、
覇王神官からは『ルビーアイ・ソルジャー』なんて呼ばれてたんだけど・・・
心当たりとか聞き覚えない?」

「無い・・・わねぇ・・・
それがどうかしたの?」

「強かったの・・・手も足も出ないくらい・・・」

「ああ、確かに強い。
動きに一片の無駄がない、闘い慣れているというレベルじゃなかった」


戦っても勝てる気が全然しない・・・
少なくとも・・・今のままでは・・・


「・・・あなた達、ここで修行していきなさい」

「「は?」」

「勝てないんだったら、強くなるしかないでしょう?
私が色々と稽古つけてあげるわ」


ん?リナちゃん顔が真っ青だな・・・どうかしたのか?


「わ・・・わかった・・・」


私にとって苦渋の選択肢だったかもしれない・・・
姉ちゃんが直々稽古をつける・・・地獄の日々と同義語だ・・・


「こちらからもお願いするよ・・・
リナの姉ちゃんかなり強そうだし」


リナの姉ちゃんって・・・ガウリイ、もしかして名前覚えてないのか?



「アキト君・・・だったかな?あなたはどうする?
あなたは私の稽古なんて必要ないみたいだし・・・」

「そうですね・・・まずこの世界のことを学びながら
アルバイトでも探します、お金が全くないし・・・住居も何とかしないと、
後、たまに組み手でもやってもらいたい・・・ぐらいですね、
色々と試したいこともありますし。
魔法というのも興味はあるんですけど・・・」

「まず、この世界については私が教えてあげるわ、
父さんも母さんも店で忙しいし。
アルバイトについても私のアルバイト先を紹介してあげる。
住居については遠慮しないで、この家部屋が余ってるから、ねえ父さん」

「ああ、遠慮するな、我が家みたいに思ってくれ」

「魔法に関してはリナから教えてもらったらいいわ、
腕はこの世界でも指折りだから」


まあそうだろうな・・・魔王とかを倒すぐらいだから・・・


「何から何まですみません」

「良いのよ、私もあなたに興味があるから」


?どういうことだ??


「まあとにかく夕食にしよう。
やることは明日になってからだ」

「そうね!久々に腕の振るい甲斐があるわ!!」

「私も手伝うわ」

「俺も手伝います」

「良いのよ、今度手伝ってもらうわ、だから今日は座って待っていて」

「すみません」


この日食べた夕食は、本当においしかった・・・





夕食後・・・

「リナ〜、スポットにご飯あげてくれる?
挨拶もまだみたいだし」

「良いわよ、姉ちゃん」

「はいこれ」

「こ・・・これを食べさせるの?」


そう、そこにはご飯があった・・・私達と同じ。
しかも犬にあげるのに箸まで付いているし・・・
箸使う犬なんてどんな犬だ!?

そう思いつつも犬小屋に行こうとすると、


「お〜、犬に会いに行くのか?俺もいくよ。
どんな犬か見てみたいし・・・」

「そうだな、これからこの家に居候するんだから、
帰ってくる度に吠えられるのもな・・・」


そして一行は玄関に向かった・・・


「スポット〜、ご飯だよ〜」

「へ〜い!」


おい!!犬が返事するのか!?この世界は!?!
横を見てみるとリナちゃん達も吃驚している。違ったのか・・・よかった・・・

犬小屋からのっそり現れたのは『狼男』
・・・そうとしか言い表せない人?だった。


「お!お前はリナ・インバース!!帰ってきたのか!!」

「あ・・・あんた!」


??知り合いなのか?


「誰だっけ?ガウリイ覚えてる?」

「前にも言わなかったか?俺にけだものの区別は付かないって」


結構ひどいな・・・スポットがいじけているぞ・・・


「またか!!ディルギアだ!ディ・ル・ギ・ア」

「ああ!!思い出した!!下ネタ獣人のやられ役の・・・」

「いたっけ?そんなの・・・」

「そうよね〜、あんたと顔会わせたらすぐやられたもんね〜」

「知り合いなのか?」

「前にね・・・赤法師・レゾっていう奴の部下だったの」

「ああ、リナちゃんの話にでてきた」

「まあ、今では姉ちゃんの飼われ犬みたいだけど・・・」

「シクシクシク・・・お前の姉ちゃんには絶対逆らえん」

「分かるわ・・・分かりすぎるわその気持ち・・・」


二人そろって泣かないで欲しい・・・


「え〜と・・・スポットさん?」

「何だ?それにお前は誰だ?初めて見る顔だな・・・」

「俺はテンカワ・アキト。この家に厄介になるんだ。
これからよろしく頼む」

「ああ、よろしく・・・しかし、リナの仲間とは思えんような常識人だな」

「うるさいわね・・・焼き犬になりたい?スポットちゃ〜ん?」

「まあまあ・・・これ夕食、ちょっと冷めちゃったけど、
まだ暖かいから早めに食べてくれ」

「ありがとうよ・・・あんた良い奴だな」

「ありがとう」






「は〜・・・うまかった」

「お粗末様、食器下げるけど、良いか?」

「ああ、頼むよ」

「しかし・・・外じゃあ寒くないか?」


すでにリナちゃん達は寒いからと言って家の中に入っている。


「ああ平気だよ、こう見えてもこの小屋は保温性が高いし
布団もあるしな、じゃあ俺も寝るわ・・・おやすみ、テンカワ」

「俺のことはアキトで良いよ、じゃあおやすみ」




こうして、ゼフィーリアでの最初の一日は終わった。





(第7話に続く)





あとがき

どうもケインです。
とうとうリナの家族が出てきました。
まあ名前については適当です(法則性はありますがね)
ガウリイとリナの父ちゃんですが面識はあります。これは事実です。
確かドラゴン・マガジンの増刊号で出ていましたね・・・


さて今回の答えはスポットです。(又はディルギア)
簡単すぎ!!という意見もちらほらと・・・

めげずに次の問題!

次の話でアキトはアルバイトを始めるわけですが・・・
その店の名前はなにでしょう!!

しまった!これも簡単だ!!

でもヒントを出します。
         @ルナさんと一緒
         Aスペシャルの方で名前が出ています



これだけで十分ですね。ではじっくり考えて・・・考えなくてもわかりますね・・・


最後に、リンさん、カルマさん、八影さん、涼水夢さん、感想どうも有り難うございます。
ちなみに涼水夢さん、掲示板での答えるかどうかは余り気にしないで下さい。
ただの暇つぶし的に書いているだけですから・・・


では第7話で会いましょう!

 

 

代理人の感想

 

そ〜すると死んだ祖父は「ランディ」とか言うんですか?

どうでも良い事ですが(笑)。

 

しかしルナとアキトがバイトするレストランか・・・・・想像するだに恐ろしい店だな。

下手に暴れたら身の破滅、いやそれより恐ろしい目に会いそうだ(笑)。