赤き力の世界にて



第8話「アルバイト・・・」

 

 

俺はあの後、厨房に入り色々と食材のことを教えてもらっていた。


「ん〜・・・思った通り、俺の世界とあまり変わりはないな」

「どうした?テンカワ君」

「いえ、ところで料理の方はどうします?
この地方の料理を一通りは見ておきたいんですけど・・・」


まさか、異世界から来たから料理が違うかもしれませんので・・・
なんて言えないからな・・・


「そうだな・・・材料費の高いものは作れないが
注文の多いものを中心に教えておくよ」

「お願いします」




そうして、一通りの料理を教えてもらっていたらお昼が近くなっていた。


「料理の仕方も名前もほとんど変わりありませんね」


調味料の名前が違っていたりするのは誤差の範囲だろう


「そうかい?なら助かるね、お昼が近くなってきたから
君の腕を見せてもらうことになるよ」

「わかりました!」

 

 

「ウェイトレスさ〜ん!Aセット二人前」

「ルナさん、今日のおすすめはどれですか?」

「俺はこのセットを頼む」


昼が近くなってきたと思った途端に客が押し寄せるように入ってきた。

昨日、ロウさんから聞いた話だと小さめの割には繁盛しているそうだ。
店長の腕は、有名料理店からの誘いもあるほどだそうだ。
もちろん全てを断っている。
店長曰く、


「俺は奥に籠もって上品な料理を作るよりも
自分の料理を美味しく食べる人の顔がよく見えるレストランをやる方がいい」


だそうだ・・・それを聞いたとき、
俺は一流以上の腕を持ちながらも
小さな店を選んだサイゾウさんやホウメイさんを思いだしていた。


ただ・・・男女の比率は『九対一』で男性の方が多い。
ルナさんがバイトをやり始めたらこうなったそうだ・・・

全くの余談だが、この店に来る男性客の八割以上がファン倶楽部会員だそうだ。

 

 

 

 

「アキト君!Aセット三人前!」

「はい!ルナさん、Bセット四人前上がりました!」


俺とルナさんが次々と注文をさばいてゆく。

俺は久々に料理が出来ることが嬉しく、
料理をするのが楽しくてたまらなかった。

知らず知らずの内に顔が笑っていたそうだ。

数少ない女性客が俺の方を見ていた・・・顔を赤くして・・・

何か料理の方法でも間違っていたのかな?


「Aセット三人前上がりました!」

「本日のおすすめ四人前!」

「はい!」


ルナさんも笑顔でウェイトレスをしている。
楽しそうだな・・・

俺も負けずに頑張ろう!!

今日はアキトにとって久々に楽しい一日になりそうだった。

 

 

 

(今日は私の出る幕はなさそうだ・・・)


私は料理の方をアキトに任せ、
レストランの端の方で客の様子を見ていた


(客の方にも不満そうな顔はない、むしろ美味しそうに食べている
やはりなかなかの腕のようだ・・・)


先頃料理を教えていた時、
包丁さばきやフライパンの持ち方はなかなか堂に入っていた。


(いい料理人に師事していたんだな、一度会ってみたいものだ・・・)


そして改めてルナの方を見る。


(今までで一番いい顔をしている・・・
変われば変わるもんだ、たった一日で・・・
テンカワ君に出会えてよかったな、ルナちゃん)




「よう店長!どうしたこんな所で?
料理はしていないのか?」


ふいに声をかける人物、常連客の鍛冶屋の店長だ・・・
ファン倶楽部の創立者でもある。
ちなみに既婚者。

今来た所みたいだな・・・


「ああ、今日はアルバイトに任せてある」

「ほ〜!珍しいこともあるもんだ!!
人一倍料理にはうるさいあんたがね〜・・・」

「そうか?自分ではそうは思わないんだが・・・」

「そんなもんさ。俺だってそうじゃないつもりだが
嫁に言わせりゃあ人の三倍はうるさいそうだ」

「ま、お互い自分の道に誇りをもっているからな」

「そのあんたが厨房を譲るほどの人材か・・・どんな女の子だ?」

「女じゃない、男だよ。
それもルナちゃんの紹介の・・・」

「何!!」


そう言うと妙に血走った目でカウンターの方を見る
ちょうどそこは料理を手渡す所だった。

ただ、端から見ると仲睦まじく見える。
実際そうだが・・・


「あいつが・・・」

「ああ、なかなか見所のある青年だよ
ルナちゃんも見る目がある」


そう言った店長を


ギン!!


と睨むと、


「どういうこった!!
男を雇うなんて約束が違うぞ!!」


「守っているさ。アレだろ
『ルナちゃんを目当てにしている男を雇うな!』ってヤツだろ?」

「そうだ!!」

「テンカワ君はそういった奴じゃなかっただけだ」

「そうはいっても・・・」

「ならお前はルナちゃんの頼みを断れるか?」

「それを言われると・・・・」

「なら黙っていろ」

「・・・しかし新参者に礼儀を教えないとな。
我々ファン倶楽部の・・・」

「おいおい・・・折角入ったいい料理人だぞ、
手荒な真似は止してくれよ」

「安心しろ・・・ちょっと待ち伏せして脅してやるだけだ・・・
まあ多少の魔法を使わせてもらうがな・・・」

「・・・ハァ、程々にしておけよ。
アルバイトに影響がでない程度にな・・・」

「で?奴の宿は?」

「ルナちゃん家に居候中だそうだ」

「な!!ますます許せん!!」


しまった・・・火に油だったな。

まあ、ルナちゃんがいるから大丈夫か・・・


しかし、物事は店長の予想を遙かに超えていた。(特にアキト・・・)

 

 

 

アルバイトが終わったのは日が落ちて、辺りがやや暗くなった頃だった。


「アキト君、私は先に帰ってるわ。
リナ達がまだだったら迎えに行かなくちゃならないから」


何だかんだ言ってやっぱり心配なんだ。
ルナさんはやっぱり優しい人だな・・・


「わかりました。帰り道はわかりますから
先に帰ってて下さい」

「ありがとう」

「おいおい・・・独り者の目に毒だ。
いちゃつくなら帰ってからにしてくれ」

「「そんなんじゃありませんよ」」

「息もぴったり・・・夫婦みたいだな」

「からかわないで下さい!
じゃあアキト君、悪いけど先に!」

「後片づけの方は気にしないで下さい、ルナさん」

「お願いします!」


そういってルナさんは先に帰途についた。

 

 

 

その10分後に俺も後片づけがすみ、帰途につこうとした。


「ああ〜テンカワ君・・・」

「何ですか店長??」

「実は・・・口止めされていたが
帰りにルナちゃんのファン倶楽部が待ち伏せしているんだ」

「どうしてですか?」

「自分たちの知らない男がルナちゃんの側にいるんだ。
嫉妬の一つもするだろう?
しかも同居中だからよけいに気にしているんだ」

「同居って・・・ただの居候ですよ」

「連中から見れば変わりはないさ。
危険だから別のルートで帰った方がいい」


しかし・・・これからの事を考えたら
何時までも避けているわけにはいけないよな。


「忠告どうもありがとうございます。
でも会って話をしてみます。じゃあ・・・」

「おい!ちょっと・・・まあいいか、
今までもこんなコトがあったが大怪我した人はいなかったしな・・・」







あそこに人がかたまって居る、5人ほどだ。
おそらく待ち伏せの人だろう・・・

その場所まで行くと俺を取り囲むように立ちふさがる・・・


「おい・・・そこの奴」


やや陰湿そうな声で質問してくる。


「俺のことか?」


一応確認しないとな・・・
間違いとかだったらいけないし。


「そうだ・・・ルナさんの近くにうろつく目障りな奴、貴様のことだ」


・・・最初から喧嘩腰だな、話し合いは無理か?


「こちらに来てもらおう・・・話し合いの場がある」


話し合いの意志があるのか?
俺を取り囲みながら・・・殺気まで感じるぞ・・・


「わかった。ついて行こう」


そして俺の連れて行かれた場所は
町から出て15分ほど歩いた所にあった・・・

そこには10人程度の人がいた。


「おう、来てくれたようだな!!」


リーダーらしき人物が俺に声をかける。

その人に注意を向ける・・・・俺は驚いた・・・

この世界に来てから驚くことばかりだったが、
これは極めつけだった。



このリーダー、店長から聞いた話だと
ファン倶楽部の創立者であり、幹部らしいのだが・・・



俺のよく知る人にそっくりであった・・・

 

 

(第9話に続く)



あとがき

どうもケインです。
先に謝っておきます。今回は短くてすみません。

暑さにばててしまって・・・次回までの間隔を短くしますので我慢して下さい!!


さて今回のクイズ!!(ああ、何だか久々のような気が・・・)

最後に出てきたとある人のそっくりさん。
一体誰にそっくりでしょう?

ではヒントいってみましょうか!!

         @アキトの世界の人です(当たり前ですね・・・)
         A作中の言動を見れば何となく予想がつきます。
         B某組合の幹部の一人
         C既婚者です。
         D職業も似ているかな?何となく・・・

無くてもばればれかも・・・
では次回は早めに書きます。また次の話で会いましょう!!

最後に、カルマさん、川嶋さん、八影さん、涼水夢さん、感想どうも有り難うございます!!

 

 

 

代理人の感想

 

・・・・・・・・一人しかいないじゃん(笑)。

毎度ながらクイズになってないとゆーか(爆)。