悠久を奏でる地にて・・・

 

 

 

 

 

 

第二話『出会い・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはエンフィールドで唯一酒場と宿屋を兼業している店。『さくら亭』

町の中でもかなりの住民に親しまれている店の一つだ。

 

だが、親しまれているとはいっても、やはり昼下がりの中途半端な時間帯は客足が遠退く。

 

そんな時間帯に用があるのは遅めのランチをとる人間か優雅な午後を過ごす暇人ぐらいなものだ。

例外があるとすれば友人との待ち合わせや会話の場を求めてのことだろう。

 

そして例外中の例外であるいつもここに集まっているメンバーがいた。

 

 

「はぁ・・・・・」

「どうしたのよシーラ。溜息なんかついて」

「ううん。ちょっとね・・・・」

 

 

シーラという、いかにもお嬢様然とした少女に話しかけたのは、

自他共に認めるこの店の看板娘、パティであった。

 

 

「またアレフ?」

「あ、その・・・・・うん・・・・」

「最近のシーラがそんなに悩む用件なんてそれしかないからね・・・・」

「うん・・・・」

「アレフのやつは一発ガツンと言ってやんなきゃ分かんないのよ」

「でも・・・せっかく誘ってくれたのに悪い気がして・・・・」

「シーラは優しいからね・・・・」

「え?なになに!シーラさん、アレフさんとデートするの!?」

 

 

端で聞き耳をたてていた黄色い大きなリボンをした少女が話しに乱入してくる。

少女の目は興味で爛々と輝いているように見える。よほど噂好きの部類なのか・・・・・

 

 

「そんなこと無いわよ。トリーシャちゃん」

「なぁんだ。つまんないの・・・・久しぶりの面白そうな話だと思ったのになぁ」

「あんまり面白がるんじゃないよ。シーラに迷惑がかかるってもんだ」

 

 

カウンターの隅でナイフの手入れをしていた女性、リサ・メッカーノがトリーシャをたしなめる。

銀色の髪をしたかなり大柄な女性だ。服の隙間から見える体は一目で鍛えられているとわかる。

事実、彼女は傭兵で、訳あってこのさくら亭に長期滞在していた。

 

 

「ごめんなさ〜い」

「あたしに謝ったってしかたがないだろ?」

「シーラさん、御免なさ〜い」

「いいのよ、トリーシャちゃん」

「相変わらず優しいなぁ、シーラは」

「え!?」

 

 

カラン カラ〜ン

 

さくら亭の扉が備え付けてあるドアベルの軽快な音とともに開く。

入ってきたのはシーラの悩んでいる原因であるアレフと、

一見すると少女に間違われかねないような小柄な少年、クリスだった。

 

 

「俺はそんなシーラの優しいところが好きだなぁ」

「え、あの、その・・・・・」

「こら!うちの店に来てまでナンパしない!」

「いいじゃないか。どうせ今は客もいないんだからさ」

「いるわよ。あそこに」

 

 

そういってパティは店の片隅の方を指差す。

そこにはテーブルについて窓の外をボーーっと眺めている青年が一人いた。

 

確かにテーブルの上にはカップが一つ・・・・冷めた紅茶が入れてあった。

 

 

「アルベルトのやつは何をたそがれてるんだ?」

「なんでもアリサさんに会いに行ったけどいなかったらしくてさ・・・」

「それでたそがれてるのか?絵にもならないことを」

「じゃあ誰だったら絵になるっていうのよ」

「そりゃあシーラみたいなお嬢様が絵になるんじゃないか」

「じゃああたしは?」

「粗野でがさつそうなパティが絵になるわけないじゃないか。ハッハッハ!」

「ちょっと、アレフ君まずいよ!」

「あ?なんだって?―――――ハッ!!」

 

 

おそるおそるカウンターの方に向かって首を曲げるアレフ。

そこにはバックに炎を背負ったパティがいた。

 

 

「大きな・・・・お世話よぉ!!」

 

 

パティの右ストレート(やや捻り気味)がアレフの頬に炸裂する!

 

 

「グハァァッッ!!」

 

 

アレフはスローモーションで床に倒れる。少なくともその現場にいた人はそう見えた。

思わずゴングの音が聞こえでもしそうな光景だった・・・・・

 

 

「ア、アレフく〜ん!!」

「おいおい・・・やりすぎじゃないのか?アレフ完全に伸びてるよ」

「ふん!いいざまよ!」

 

 

「大変っす〜〜!!」

「大変だ〜〜!!」

 

 

「ん?今誰かなんか言ったか?」

「どうしたのリサ」

「いや、いま何か声がしたような・・・・」

 

「大変っす〜〜!!」

「大変だ〜〜!!」

 

「私にも聞こえました!」

「私にも!何か大変だ〜って」

 

「大変っす〜〜!!」

「大変だ〜〜!!」

 

 

バッターーン!!

 

店の入り口が派手な音たてながら開く!

これでは開けるではなく、体当たりでぶち破るという表現の方が正解のように思える。

 

中に入ってきたのはテディと赤髪の少年、ピートだった。

 

 

「こらあんた達!ドアが壊れたらどうすんのよ!!」

 

「大変っす〜〜!!ご主人様が〜〜!!

女の人に襲われてモンスターが助けられて、でも敵わなくて大変っす〜〜!!」

 

「「「「「はあ??」」」」」」

 

 

一緒にきたピートも訳が分からないという顔になる。

 

実はピートは散歩の途中、大変と騒いでるテディにくっついて走っていただけだったりするので困りものだ。

 

その光景をぼんやりと眺めていたアルベルトがテディの一言を聞いて豹変した!

アルベルトはテディを掴みあげるとその小さな体を揺さぶりながら詰問した!

 

その時の顔は小さな子が見たら泣きだしそうなほどの鬼の形相だった。

 

 

「アリサさんが!アリサさんがモンスターに襲われて、

助けてくれた女性がいたが、今度は二人とも危険な状態だって!!」

 

「なんでアルベルトさんテディの話の内容がわかるんだろう」

「さぁね〜、アリサさんの事になると常識が通用しなくなるんじゃない?・・・・ってそんな場合じゃない!!」

「そうだ!麗しいご婦人がピンチなんだ!」

 

 

いつの間にやら復活したアレフがみんなを急がす。

女性のピンチになったら目を覚ますこいつはある意味凄い奴なのかもしれない・・・・

 

 

「なんであんた・・・・・ってそんな場合じゃないわね。急いでいきましょう!!」

「待て!これは自警団の管轄だ!素人は手出しするな!」

「素人かどうかは知らないが、あんた達はこない方がいい。足手まといだ!」

「でも!アリサおばさまが!!」

「アリサおばちゃんが危ないのにここで待っていられるかよ!!」

「待て!先に行くのは俺だ!!」

 

 

ピートとアルベルトは走って店の外に飛び出す。

 

 

「チッ!何が素人は手出しするな、だ!場所も知らずにどうしようってんだ!

クリス、あんたは自警団に連絡してきな。後のはここで待ってな。

テディ、案内してくれ!」

 

「ういっす!場所は北の森の入り口っす!急いでいくっす!」

 

 

リサはテディを抱えて店を飛び出す!

 

 

「待っていられるか!俺は行くぞ!」

「私も!アリサおばさまが心配だもの!」

「私も!」

「まったく!みんなそろって!クリス!あんたはリサに言われたとおり自警団の方にいって!」

「う、うん。みんな気をつけて!」

 

 

そこまで言うとシーラとトリーシャ。そしてアレフとクリスはそろってさくら亭を飛び出した。

一足遅れてパティも救急箱を抱えて走り出す!

 

 

誰もいなくなったさくら亭に静寂が満ちた・・・・・

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

と き
時間はテディがアキトと別れてすぐまで遡る。

 

森の入り口近くでは少女が奮闘を続けていた。

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・」

 

 

薙刀をかまえた少女は今にも倒れ込みそうなほど疲労していた。

 

彼女の服装は旅人らしい頑丈そうな服装だったが、

たびかさなるオーガーとハーピーの攻撃にボロボロになっている。

 

決してこの少女が弱いわけではない、むしろ強い方に分類されるだろう。

 

戦闘力が馬鹿にならないオーガーを数体相手にしている上に、

ただでさえ死角になりやすい上空からハーピーが攻撃している。

さらにこの少女は女性を庇いながら戦っているのだ。

 

背後をとられないように木を背にしていたのが幸いしているのだ。

 

この少女に運と実力がなければとっくにやられていただろう。

 

だが、このままではそう遠くない未来で結果は同じになってしまう事は想像に難くない・・・・・

 

 

「申し訳ありません・・・せっかく助けに来たのに・・・」

「私のことはいいから貴女だけでも逃げて!」

「そんな事できません!」

 

 

女性は少女に逃げるように言っているようだが、少女は頑として受け入れなかった。

 

先頭にいたオーガーは自分から注意がそれたのを本能的に感じ、好機と感じて襲いかかる!

 

 

「ガアァァァッッッ!!」

「クッ!!」

 

 

少女はその一撃を何とか武器で受け止めるが、

少女にとって最悪なことに、力比べをするかのような体勢で受け止めてしまった!

 

オーガーと少女では力を比べる以前の問題だ!

 

しかも武器が封じられたのを見てハーピーが数体、上空から襲いかかってくる!!

 

 

「―――――ッ!!」

 

 

少女は襲いかかる衝撃、もしくは恐ろしい未来から目を背けるように目を瞑った!

 

だが・・・・この少女は助かった。ある男がこの世界に来ていたことで・・・・・

 

 

フリーズ・アロー
「氷の矢!!」

 

 

森の入り口から飛んできた矢の形をした氷が襲いかかろうとしていたハーピー数体を蹴散らす!!

 

そして次の瞬間、少女を押さえつけていたオーガーは横からきた攻撃により吹き飛ぶ!!

 

 

「大丈夫か!!」

「え!?あ、はい」

 

 

少女は我が目を疑った。

いままさに自分を追い詰めていたオーガーが目の前から消えていたのだ。

横手の方を見ると木にあたり、気絶しているオーガーの姿が見える。

 

大人の二回りから三回りはあろうかという体格のオーガーがいともたやすく吹き飛んだのだ。

少女でなくても・・・たとえ見ていたとしても信じられることではない。

 

そしてオーガーの代わりに目の前に立っていたのは心配そうな目で自分たちを見ている

優しそうな顔を引き締めた青年だった。

 

 

「あの・・・貴方様は?」

「ああ、俺の名前はテンカワ アキト。テディという子に頼まれてね」

「テディに?それはありがとうございます」

 

 

盲目の女性が男性に向かって礼を言う。

アキトはその女性は盲目であり、テディの言っていたご主人様だと言うことに気がついた。

 

 

「二人とも、もう少しだけ待って下さい。モンスターの方を何とかしますから」

「でも!一人だけでは!!」

「大丈夫。数少ない特技の一つが格闘術でね。心配してくれてありがとう」

「いえ・・・・気をつけて下さい」

 

 

少女はアキトの笑顔を見て顔を赤くし、何もいえなくなった。

何も惚けていえなかったわけではない。

少女の胸中にはアキトの目を見た瞬間、この人なら大丈夫という気持ちになったのだ。

これがアキトの知らない隠れた特技であり、某同盟の悩みの種だったりする。

 

アキトはモンスター達のいる方に向きなおる。

 

 

「無用な殺生はしたくはない。退いてくれないか」

 

 

アキトはモンスター達を脅すわけではなく、ただ静かに頼んでいた。

 

モンスター達も目の前にいる人間に敵わないことを本能で察していた。

空にいるハーピー達は仲間があっさりとやられた時点で逃げ腰になっている。

 

オーガーの一体が我先にと逃げ出した。

その一体につられてモンスターが全員逃げ始める。

 

しかし、最初の一体が一番後ろにいた桁外れに大きいオーガーに殴り飛ばされるのを見て、

モンスター達の逃亡の足は一気に止まった。

 

 

「ニゲ、ダシタヤツ・・・・コロス」

 

「そんな!オーガーが言葉をしゃべるなんて!!」

 

 

少女は我が耳を疑った。

知能が低いはずのオーガーがしゃべることなど前代未聞といってもいい。

 

しかしアキトはその様子を気にした様子はなく、今度はそのオーガーに向かって話しかける。

 

 

「お前がこのモンスター達のボスか。この場は退いてくれないか」

 

 

しかしオーガーはアキトの言葉を無視し、アキトと対峙するかのように立った。

 

 

「ニンゲン・・・我等ヲオイツメル。フクシュウ・・・ゼッタイユルサナイ!!」

「このままではお前達を倒さなくてはならない。ここは素直に退いてくれ」

「シンヨウナラナイ!ソウイッテウシロカラ殺スツモリダ!!」

 

 

アキトはオーガーの瞳に宿る暗い負の感情を見ると悲しそうな顔をした。

 

他のモンスター達は逃げることも襲いかかることもできず、

ただ怯えてアキトと自分たちのボスを見ていた

 

 

「戦う・・・・しかないのか」

「ニンゲン!コロス!!」

 

「危ない!!」

 

 

オーガーはアキトに殴りかかった!!

アキトはその拳を素手で受け止める!あまつさえそのまま押し返した!

 

自分より小さい人間に受け止め押し返されたことが信じられないオーガーは呆然とする。

 

次の瞬間、そのオーガーが見たのは自分の胸、

ちょうど心臓のある位置に手をおくアキトの姿だった。

 

それが・・・・・オーガーがこの世で見た最後の光景だった。

 

 

「(せめて苦しまないように)・・・・・・ハァッ!!」

 

 

そして、アキトがオーガーのそばから離れると、オーガーは後ろに向かって倒れていった。

 

自分たちのボスがあっさりと倒され、逃走を妨げる者がいなくなったと知るや否や、

我先にとモンスター達は森の奥へと逃げていった。

 

それを確認したアキトは二人の女性の方に向かって歩いていった。

 

 

「大丈夫ですか?え〜と・・・・」

「あ、ありがとうございます!私の名前はクレア・コーレインと申します」

「私はアリサ・アスティア。どうもありがとうございます」

 

「いえ、気にしないで下さい。それよりも手当の方が先です」

 

 

アキトは怪我のひどいクレアの傷口に手をかざす。

 

 

リカバリィ
「治癒」

 

 

アキトの唱えた治療呪文により、クレアの怪我は見る見るうちにふさがっていった。

一方、クレアはというと見たことも聞いたこともない呪文に驚いている様子だった。

 

 

「誰か来たみたいだね」

「え?」

 

 

アキトは遠くの方からもの凄い早さで近づいてくる気を四つ感じた。

その後に遅いながらもついてくる存在のことも・・・・・

 

その早さ故に、その人物の声が聞こえ始めてくる。

 

 

「アリサさ〜〜ん!!」

「アリサおばちゃ〜〜ん!!」

 

「どこかで聞いたことのあるような声ですね・・・・・」

「アリサさん。お名前を呼んでいるようですけど、お知り合いですか?」

「ええ、この声はピート君とアルベルトさんですね・・・・あら?そういえばクレアちゃんと名字が・・・・」

「はい!おそらく私の兄様で間違いありません!」

 

 

その声は徐々に近づいている。

陸上選手もここまでは走れないかもしれない。

ある意味、今のこいつらは人を越えた存在になっているのかもしれない・・・・(若干二名のみ)

 

そしてあっという間に大柄な男と赤髪の男の子、

そしてこれまた大柄な女性とその肩に乗っているテディがやって来た。

 

「アリサさん!お怪我は・・・こんな大怪我を!

今すぐ病院に連れていきますのでもう少し我慢して下さい!!」

 

「おばちゃん怪我してるの!!」

 

 

そんな事を言っているが、アリサの怪我はそう大したものではない。

よくいうかすり傷といった程度だ。幸いながらばい菌などの感染症状はない。

 

 

「私は大丈夫よ。怪我もそう大したものじゃないから。それよりクレアちゃんの方を」

「クレア?・・・・・ってクレア!なんでお前がここにいるんだ!!」

「今頃気がつくのですか!怪我人・・・・怪我人の妹を放っておいて第一声がそれですか!」

「何!?なんだその格好は!はしたない!!」

 

 

クレアの格好はオーガーの攻撃によりズタボロ。場所が場所であれば大問題にもなりかねない。

 

 

「はしたないとはなんですか」

 

「はしたないからはしたないといってるんだ!そもそもなぜお前がここにいるんだ!

学校を卒業して家に帰ったんじゃなかったのか!!」

 

「私もそのつもりでしたけど、あまりにも兄様が心配だったので来たのです!それを!!」

「クレアちゃん落ち着いて。とりあえずで悪いけどこのマントでも羽織っていればいいから」

「は、はい。ありがとうございます。アキト様」

 

 

やけに親切なアキトと、それを頬を赤く染め、はにかみながら受け答えるクレア。

それを見たアルベルトの頭に青筋が浮かび上がる。

 

 

「なんだ貴様!うちの妹に馴れ馴れしい!!」

「なんて事を言うのですか兄様!私とアリサ様の命の恩人に向かって!!」

「なんだと・・・・」

 

 

アルベルトはそこまでいわれてようやく回りの状況を把握し、現場検証に入った。

何だかんだやってはいるものの、自警団の一員としての習性は骨の髄まで染み込んでいるのだ。

 

すでにリサの方はあらかたの状況を調べ、大体何があったのか察していた。

 

 

「これをあんたがやったってのかい?」

 

 

そう言って指差したのはアキトが倒したオーガーだった。

 

 

「ああ」

「本当かい?正直いって信じられないねぇ・・・・」

「別に信じてもらわなくても構わないさ。自慢になることじゃないし」

「充分自慢になるさ。事の真偽は知らないけどさ」

「それよりも・・・そこにいる人達は知り合いなのか?」

「ん?」

 

 

アキトは森の入り口の方を指差す。

リサは何を言っているのかわからず目を凝らした。

するとこちらに向かって走ってくる四人組を見つけ、呆れた顔になった。

 

 

「あんた達!店で待ってろって言わなかったかい!!」

「で、でもよ」

 

「でもも何もない!危険なことがわからないのかい!幸いなことにオーガーは死んでいたけど、

こんなやつが万が一生きていたら私やアルベルトの手には負えないんだよ」

 

 

そこまで言われて四人はショックを受けたようにうつむいた。

オーガーの死体を見てその現実感というものを理解したのだ。

 

 

「とにかくアリサさんやクレアちゃんを街の方に運ばないか?」

「・・・・わかったよ。え〜と・・・そう言えばあんたの名前は?」

「俺はテンカワ・アキト」

「私はリサ。リサ・メッカーノだ」

「私はトリーシャ・フォスター。よろしく!」

「俺はアレフ・コールソン。エンフィールド一番のフェミニストだ」

「何言ってんのよあんたは・・・あたしはパティ・ソール。さくら亭のウェイトレスよ」

「あ、あの・・・・シーラ・シェフィールドです」

「クレア・コールソンと申します。以後お見知り置きを・・・・」

「お?可愛いねぇ、今度お茶でも御一緒に・・・・どう?」

「謹んでお断りいたします」

 

 

クレアはにべもなく即答した。

今の彼女の頭の中には、誘いを受けてもいい人物は一名しかいない。

 

 

「ねえねえ!あのオーガーってアキトさんが倒したの?」

「ああ、そうだけど」

「すごーい!あんな大きなやつを倒すなんて!!」

 

「トリーシャ!悪いけど話の続きは後でしてくれ。

これの仲間がいる可能性もあるんだ。今はとにかく街に戻ろう」

 

 

「ガアァァァァ!!」

「キャアァァ!!」

 

 

リサの言葉を待っていたかのように気絶していたオーガーが目を覚ます!

その時、一番近く、弱そうだと認識したシーラを掴み、人質のように盾にしている。

 

 

 

「チィ!!あんたトドメさしてなかったのかい!!」

「必要がないからな」

「今のこの状況でよくそんな事がいえるもんだね!」

 

「そんな事はいいからお前ら全員下がっていろ!こいつは俺がしとめてやる!!」

「一人でいきがってんじゃないよ!」

 

 

アルベルトはハルバートを、リサは両手にナイフを構える。

 

トリーシャ達は後ろに下がっており、アレフが盾になるように庇っている。

 

クレアはアキトの影に隠れるように避難しており、

アリサはというとピートが必死に庇っている。

 

 

「い、いやぁ!!」

 

 

シーラはあまりの恐怖に顔面蒼白になっていた。

いっそのこと気絶した方がシーラにとっては楽だったのかもしれない。

 

 

「くそ!!どうしたらいいんだ!!」

「・・・・あたしが注意を引きつけるからアルベルトが攻撃しな」

「おい!そんな勝手なことをいうな!そもそも一般市民に危険なことをやらせられるか!」

                                      ナイフ
「あんたの方が力が強いんだ。あたしの獲物じゃあ一撃でしとめるのは難しいんだよ。じゃあ行くよ!!」

「クソッ!!」

 

 

その時、今にも飛び出しそうな二人をアキトが押さえつけた。

 

 

「なんだ貴様は!放せ!!(なんだこいつの力は!この俺の力でもビクともしない!?)」

「下がっていろ」

「なんだって!あんた一体どうするつもりなんだい!?」

 

 

アキトはリサの質問に答えず、一人でオーガーの前に立つ。

アキトの実力を知るアリサとクレア以外は一撃で吹き飛ぶアキトを想像した。

 

 

「もういい、やめろ。」

「何やってるんだい!オーガーに話しかけたって意味がわかるわけないだろ!!」

 

 

しかしアキトは外の声には耳を傾けず、静かな目をしてオーガーを見ていた。

 

 

「お前が暴れる必要はない。住処を追われた気持ちは分かる。

だが人間に手をだすな。そんな事をしても余計に立場が悪くなるだけだ。」

 

「グル・・ガ・・・・・・・・・」

 

 

不思議なことにオーガーはアキトを襲おうとはせず、ずっと見つめ合う。

シーラもアキトの目を見て、不思議な感じがしていた。

 

(凄い…何だか吸い込まれそうな気がする・・・・とても綺麗で澄んだ目・・・・)

 

頬が赤いのは恐怖によってではないだろう。

 

 

実際に過ぎた時間は三十秒ほどではあったが、この場にいるものにはとても長い時間に感じられた。

 

するとオーガーは手にしていたシーラを下におろした。

シーラは信じられないといった顔でオーガーを見ていた。

 

 

「え!?」

「シーラ!何してんの!早くこっちに来なさい!」

「え、うん」

 

 

シーラは小走りにパティ達の方に向かって走り出す。

シーラが仲間の所についたのを見て、オーガーは身をひるがえして森の中に歩いていった。

 

 

「待て、逃がすか!!」

「やめろ!追うのなら俺が相手になる」

「何を〜」

「アルベルトさん、やめてください。余計な血が流れなかったのだからいいじゃありませんか」

「ぐ・・・・・アリサさんがそう言うのであれば・・・・ちっ、運が良かったな」

 

「まったく・・・一体何がどうなってるんだい?私にはさっぱりだよ」

 

 

リサはさっぱりわからないという顔になって街に向かって歩き始めた。

クレアもアルベルトに引っ張られるように街に向かっている。

 

 

「アキト君はこれからどうするの?」

 

 

アリサはこの場から動こうとしないアキトに話しかける。

パティやシーラ達も動かないアキトを不思議そうに見ていた。

 

 

「どうするか悩んでいます。お金がありませんし・・・それにあの街に捜し物があるので・・・・」

「それなら家に来るといいわ」

「しかし、ご迷惑をおかけするわけには・・・・」

「命を助けてもらったのは私よ。だから迷惑なんて考えないで」

「あ〜・・・でも、その・・・・・」

「いいですね」

「・・・・・・・・はい。(どうして俺の回りには妙に押しの強い人が多いんだ!?)」

 

 

結局、押し切られるように返事をしてしまったアキト。

 

パティやシーラといった面々はアリサとの問答で狼狽している姿を見て、

アキトが悪い人物ではないことを悟る。

 

 

「じゃあみんなで帰りましょうか。エンフィールドへ」

 

 

(エンフィールド・・・・俺がこれから住む町・・・・・・そしてこの街のどこかにディアとブロスが・・・・

待っていろよ。必ず俺が探し出してやるからな・・・・・・・)

 

 

 

アキトはこうしてエンフィールドに住むこととなった。

 

この街の命運を・・・・・アキトが握ってることを・・・・・今は誰一人として知らない。

 

 

 

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、『赤き…』の後書きから逃げてきたへっぽこ作者のケインです。

悠久の第二話をお送りします。結構知っている人は少ないんですね・・・・・ちょっとショックです。

知っている人は結構詳しく知っている様子ですけどね。

(ちなみに、シャドウなどの設定はいじってあります。そうじゃないと面白みがありませんからね。)

 

しかしまあ・・・・ここでもテンカワ・スマイルが炸裂。いいのか?

行く先々で女性を落としまくる・・・・あ、本編でも似たようなものか・・・異世界か外国かの違いだけですね。

 

ディアちゃんとブロス君はしばらく・・・・というか、最後の方まで出番無し。

『赤き・・・』の方でもあまり出番がないのに可哀想ですね。(しみじみ・・・・)すべて私が悪いのです。御免なさい。

行った先が宇宙でドンパチする世界だったら出番がバンバンあるんですけどね・・・(例えばヴァ○ドレッドとか・・・)

 

ところで・・・・誠に勝手ながら二、三週間程、投稿が滞る可能性があります。理由は次の通りです。

 

@仕事が追い込み間近。ちゃんとしないと首が切れます。(今現在、首の皮一枚)

Aネタをしっかり練る期間がほしくなった。(練りこみが甘いとつまらなくなります・・・私の場合は元々か・・・)

B東京魔人学園・外法帳をやっているから。(虎の子の一万円を使った以上、徹底的にやり込みます)

 

ということです。なにげに@とBが反目しあっているような感じですが・・・気にしないで下さい。

 

ということで・・・もし、順調よく仕事が終わるか、もしくは首切られて暇になったりすれば

今度の日曜にでも『赤き・・・』を投稿します。期待しないで待っていて下さい。

 

最後に・・・感想をくれた悠久さん、K・Oさん。ありがとうございます。

(前回の赤き力の世界にての後にくれた人や、第2話の製作に協力してくれた人です。)

では次回の赤き力の世界にて出会いましょう!!

 

 

 

代理人の感想

言葉を使わずに説得するとは・・・・

まるでどこぞのジャングルの王者かセイルーンの第一王位継承者(爆)。

その内メスのオーガーに惚れられたりしたらどうしましょ(核爆)。

 

>後書き

・・・・まぁ、お大事に(爆)。

私も今は仕事が割と暇ですからこんな事もしてられるわけですが・・・・

忙しい時は鬼のように忙しいのですよねぇ。