長身の男が、革張りの椅子に腰を降ろし足を組んでいる。
 左手で綺麗に形の揃えられた顎鬚をゆっくりと撫で、右手には火の付いた葉巻煙草を持つ。
 そのゆったりとした体勢には緊張感と云うものが乏しかったが、だが決して弛緩した風には見えない。
 特にその目。
 猛禽を思わせる細いその目は、強い光を宿らせていた。
 カンザキ・サトル。
 或いはサトル・ファリーナと呼ばれる事の多い人物、イタリア最大のマフィア・グループにして政財界に莫大な影響力を持つファリーナ家の酷薄なる支配者であった。
 名前から判る通りファリーナ家の人間どころか、イタリア人ですら無い入り婿である。
 血に拠ってでは無く、自身の有能さをもってファミリーを完全に支配する漢だった。

「………で、会合の反応はどうなのかね?」

 低い声。
 尊大な口調で問い掛けるサトル。
 正面には背広の男。
 サトルの名代としてファリーナ家を取り仕切る事もある、組織のナンバー2であった。

「予定通りですサトル様。アデナウワー家では連合宇宙軍改革の実相を把握しきれておらず、会合では改革案に乗る事を決定しました」

「ふん、やはりか。かのローレンツ家の翁がくたばってゼーレも碌な人材が無いと見える」

 嘲笑する様に口を操るサトル。
 手を回すまでも無かったな、と。
 会合。
 それは欧州経済界を裏側から支配するファリーナ家やアデナウワー家、ローレンツ家などと濃い血の団結で結ばれた組織の会議であった。
 組織は、欧州を統べるとの意味を込めてドイツ語に於ける魂の座――ゼーレの名で呼ばれていた。
 そのゼーレの会合に、サトルは罠を仕掛けたのだ。
 連合宇宙軍は欧州に膝を屈する積りだとの欺瞞情報を。
 サトルは連合宇宙軍内の人事異動などから、改革は、連合宇宙軍をより強硬な集団へと改編する為のものだと判断していた。
 そして改革が成された後に欧州は、全ての航宙戦力を連合宇宙軍に取られ使い潰され、国際社会での立場が凋落する。
 そこまで読んで居た。

 欧州が、現存する航宙戦力を使い切った後で再建させる事は極めて困難であった。
 何故なら人材や資源は先ず第1に地上へ、ロシアの戦線へと投入せねばならないからである。
 ルール工業地帯が打撃を受け、クルスク工業地帯は木星蜥蜴の圧迫を受けている。
 ロシアのウラル工業地帯こそは無傷であったが、それでも宇宙に傾けられる余力など殆ど無いのが実情であった。
 故に、航宙戦力の消耗と共に欧州の発言力は低下していくだろう。
 にも関わらずサトルは、ゼーレに対して警告を発していなかった。
 それは、ゼーレに対する重大な背信行為だった。

 

「宜しいのですか?」

 ファリーナ家の副官が退室して後、そう問い掛けた男が居た。
 顎鬚を生やした、何処かしら優しげな瞳を持った大男だ。
 ゲイリー・マックバーン。
 軍人崩れの傭兵であり、ファリーナ家の持つ私兵集団を統率する、サトルの腹心と呼べる男だった。

「構わんさ。負けたフリをしてやればいい――今は、な」

「フリですか?」

 この劣悪な状況で、そう言い放つ豪胆さにマックバーンは呆れた表情を見せる。
 経済的にも軍事的にも、欧州は追い詰められつつある。
 にも拘らず、その状況への対処よりも抜本的な改革を断行しようとするサトル。
 それは正しく、乱世の雄の資質であった。

 自分は何と云う人間に付いているのか、嘆息にも似た気持ちを抱くマックバーン。
 だが表面に出た反応は、軍人としての合理的な面であった。

「ですが欧州、特にドイツの拠点を失う事の影響を考えますと、代価が大きすぎるのでは?」

 ゼーレの中枢を占めるアデナウワー家の威は、ドイツ航宙軍が主力を為す欧州統合宇宙軍に拠っていた。
 資金面のみならず、人材面でもアデナウワー家は欧州統合宇宙軍を支え、支配していたのだ。
 その欧州統合宇宙軍の壊滅は、ゼーレのドイツ軍需産業界に対する影響力の低下に直結する。
 マックバーンが指揮する私兵集団も、その結びつきの強さから、ドイツ製を筆頭とする欧州の諸軍需産業界の最新兵器を非合法なものも含めて豊富に装備していたのだ。
 その繋がりが途絶える事をマックバーンが危惧するのも当然だった。
 戦争は補給、兵站なのだから。

「構わん。ファリーナ家を中心に金融面さえ握り続けていれば何とでもなる。それに、これまでの関係をスキャンダルとして扱っても良い。我々はビジネスマンでは無いのだからな。目的の為に手段を選ぶ必要は無い。
 君はその面では心配しなくて良いぞマックバーン。ファミリーにはその手の経験の豊富な人間は掃いて捨てるほどに居るからな」

 言外に、マフィアとしての力を使うと臭わせるサトル。
 当人の下半身や家族に関する情報収集は、怠り無く実施されていたのだ。
 そしてそれを使う事にサトルは、躊躇しない。

 又、そもそもクルップOTOの様な老舗では無く、オーストラリアのクリムゾン・グループとの提携話も行っているとサトルは言う。
 バリア関連の特許で、軍需産業界に食い込んで来ている新興企業であり、アジアアフリカ諸国に対する節操の無い商売姿勢で知られた、古典的な死の商人のしての軍需企業。
 それがクリムゾンだった。

「新装備の開発力はこれからだが、弾薬などの消耗品なら問題は無い」

「貴方がそう言うなら、まぁ大丈夫なんでしょうね。弾無しは勘弁ですよ」

「安心しろ。私とて素人では無い。君の部隊が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境は必ず維持する」

「良い上司にめぐりあった事を感謝しますよ」

 補給の続く限りは暴れ続けてみせる。
 そう断言するマックバーンに、サトルは満足の笑みを浮かべる。

「期待するぞマックバーン」

「はっ!」

 敬礼を捧げるマックバーン。
 それをサトルは鷹揚に受け入れていた。
 暗闇の蠢動。
 如何に強大な外敵が存在しようとも、人間の敵は、矢張り人間なのだから。
 そんな影に潜む漢達が歴史の表舞台に立つには、今しばらくの時間が必要であった。

 

 


 
機動戦艦 ナデシコ

MOONLIGHT MILE

 

第一幕 Arc-Light
Ya

My Fair Lady


 

 

――T――

 

 

 焼け焦げたフネが何隻も、埠頭にでは無く港の外側に設けられた停泊用の浮標に係留されていた。
 その傍らには白亜の船体に赤い十字が記された病院船が停泊し、ヘリや小型の連絡船が忙しげに動き回っている。
 場所は那覇、軍民共用港。
 数多くの軍用船が停泊し、その隙間を縫うように民間船舶が動いている。
 それは、日本近海で行われた初めての対CHULIP戦――琉球会戦の翌朝の事であった。
 そんな軍船に混じって少なからぬ民間船舶も停泊していたり、動いていたりする。
 どうやら近海で戦闘が行われた影響で、民間船籍の独航貨客船が那覇港へと避難してきている様だった。

 

 

「とても勝ち戦の後には見えんな」

 しぶる波頭、合成風力が運んで来る潮気を胸に吸い込みながら呟く男。
 日本海軍の誇る核融合炉搭載型潜水艦、所謂先進作戦遂行(AO)艦りゅうおうの艦長、イガ・トクヒロ大佐だった。
 場所は、背びれの如く見える潜水艦の艦橋、その露天監視所。
 りゅうおうは、大小さまざまな船舶が何時も以上に活発に活動している那覇港で、軍港部に向けて静々と進んでいる。
 露天監視所に上がってきて居た乗組員たちが四方を監視している。
 かなりの緊張感を漂わせている。
 当然だろう。
 りゅうおうは基準排水量7800tと云う巨艦であり、小さな漁船は当然、ある程度の規模の貨客船すらも接触事故を起せば転覆或いは最悪、沈没させてしまう恐れがあるのだ。
 今だ那覇港の港内に入っていないりゅうおうだが、それでも監視担当達が気を張るのも当然であった。
 事細かな情報を艦内、中央情報指揮所(CIC)に伝えて居る。

 そんな中で、イガは泰然自若の様で暢気な表情を見せていた。
 ゆっくりと煙草を吸う。
 半分は演技だ。
 指揮官は常に余裕をもっているべきだとの、強い思いからの挙動だった。

「艦長」

 名を呼ばれて振り返るイガ。
 見れば、副長のユーリ・マヤコフスキー少佐が水密ハッチから上がってきて居た。

「報告です。那覇港湾長から連絡ですが、接岸埠頭を第2では無く第5へと変更せよとの事です」

 小規模ながらも修理設備のある第2埠頭に対し、第5埠頭は只の接岸設備しかない。
 その変更の意味するものは一つだった。

「第5埠頭か。コッチで修理する事になりそうだな」

「はい。あかしにて調査チームが準備されているとの事です」

 那覇で小規模な修理を行って後方――呉に回航させて本格的修理をするのでは無く、那覇の設備と遠洋活動支援工作艦あかしとで任務へと復帰させる。
 それが、市ヶ谷(トライ・タワー)の判断だった。
 りゅうおうの被害、修理に手間の掛かる艦外装の損害は軽微の為、妥当な選択ではあった。

ロレンツィーニ探知システム(ビジュアル・ソナー)の方の手配はどうなってる」

「メーカーから人員が派遣されるそうです」

「ふん、早いとこ修理して貰いたいものだな。しかし副長どうした?」

 怪訝な目でユーリを見るイガ。
 責任感の強いユーリが、何故に持ち場であるCICから艦橋へと上がってきたのかと思ったのだ。
 艦内は今、航行と共に、各部の故障状態の点検を行っており、間違っても暇な状況では無かったのだから。
 そんなイガの疑問の答えは単純だった。
 追い出されたのだ、ユーリは。
 その作業の全般指揮を担当している機関長によって。

「邪魔だから煙草でも吸って来いと」

 苦笑と共に答えるユーリ。
 判って居たのだろう、機関長の真意が。
 那覇港の港内に入る前に、部下達に息抜きをさせようと考えて居たのだと。
 CHULIP戦から、断続的に艦内の状況把握と応急修理にと走っていた乗組員達。
 休息の命令を出す事自体は簡単だったが、1つだけ問題があった。
 上官である。
 折角の息抜き時に、しかめっ面した上官が傍に居ては碌に休めないのだから。
 だから追い出されたのだ。

「なら、吸うか?」

 自身の煙草を出すイガ。
 感謝を口にし、ありがたそうに貰うユーリ。
 紙巻(シガレット)では無く葉巻(シガリロ)
 咥え、火を点ける。

擦過音

 鈍色の鉱物油が燃える匂いと、きつい煙草の煙。
 ゆっくりと煙を吐き出すユーリ。
 さして広くは無い露天監視所に、煙草の匂いが充満する。
 この時代、社会的にみて喫煙家と云う人種は絶滅寸前の希少種ではあったが、軍は、軍人達はその貴重な例外であった。

「ん」

 フト、声を漏らすユーリ。
 その視線の先には、優美にして巨大な船体の何処其処に被弾痕を抱えた大型空母、CVN アドミラル56が接岸していた。
 少なからぬ乗組員が死傷しているのだろう。
 かなりの救急車が、岸壁に集まっている。

「新鋭の空母も初陣から酷いものだな」

「艦長、初陣で…なら、我が艦もですよ」

「フン、確かに胸を張って勝ったとは言い辛いな」

「残念ですが」

 CHULIPとの一連の交戦で満身創痍となったりゅうおう。
 だが、単艦で戦いを挑んで、そして生還した事は、1つの勝利でもあった。
 その事を理解しているが故に、2人の表情に暗さは無い。

「そう言えば、被害の総計が出ていました。沈没こそせとぎり1隻だけでしたが、大中破はアドミラル56を筆頭に7隻です。連合宇宙軍の方でも航宙艦が3隻、被害を受けてます」

「それにアレか。ナデシコ」

「ええ。聞いた話だと能力的喪失だけでは小破ですけど、実際には中破と判定してもおかしくない被害だそうです」

 視線を沿岸、陸へと移すユーリ。
 その視線の先にナデシコは居る筈だった。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が沖縄は嘉手納に持つ宇宙開発拠点、通称ケープ・カデナに隣接する形で作られた北崎重工業の沖縄工場航宙造船区画へと向かったと聞いていた。

「噂の新型防護システムの隙を突かれたって話だったか?」

「ええ。ディストーションフィールドですね。強力な防御システムらしいですが、艦載部隊の着艦時を狙われたらしく……」

「ドカン、か」

「海面近くを漂っていた無人機が、その隙を突く形で突入したそうです」

「近接防御システムは無かったのか?」

「詳細は不明ですが、どうやら何も無かった様で」

 ディストーションフィールド以外の防御システムは無いとの事を聞いた時、イガは呆れた様に呟いていた。
 流石はネルガル、と。
 有名なのだ、ネルガルの技術優先主義は。
 真偽の程は不明ながらも、使い勝手が悪いとクレームをつけた下士官に堂々と、使い方が悪いと言い放った若手技術者が居たらしいとの噂すらあった。

「着想は面白いものが多いんだがな」

「ですが艦長、武人の蛮用に耐える事が最低限度の条件では無いでしょうか」

「副長。確かにその通りだが、厳密に判断してしまうと、本艦もその例外では無くなるからな」

 苦笑と共に指摘するイガ。
 確かにりゅうおうも又、その運用には若干の繊細さを必要とする実験艦だったのだから。
 その言葉に、ユーリが苦笑と共に返事をしようとした時、イガの胸元の通信機が鳴った。

「こちら艦長」

『機関長です。港湾長から接岸許可が下りました。』

「判った。今から降りる――副長、この場を任せるぞ」

 そう言うや否や、イガは年齢を感じさせない素早い動作で、艦内へと続く水密ハッチへと身を躍らせていた。

 

 

――U――

 

 

 規則正しい靴音が、広い空間に木霊している。
 暗い場所。
 ふと、止まった。

「いやはや、中々に手荒くやられたものですな」

 感嘆する様に言葉を連ねたのはチョビヒゲに偽名の怪しい人物、ナデシコの会計監査を担当しているプロスペクターだった。
 上を見上げながら、溜息をつく。

「新品が翌日には傷物とは、たまりませんなー」

 見上げた先に鎮座するのは、ナデシコだった。
 艦底部、右舷前部ディストーションフィールド発生ブレードを中心にかなり広範に損傷が発生している。
 機能の喪失と云う点から見れば小破の判定だが、損害部位が広範囲である事から実質的中破の損害であった。
 場所は北崎重工沖縄工場航宙造船区画第7船渠。
 北崎重工業が沖縄に持つ大規模航宙艦造船施設だった。

「ナデシコは軍用艦です。被害を受ける事が前提ですので、仕方がありませんよ」

 プロスペクターの直ぐ後に立つもっさりとした雰囲気の大男、ゴート・ホーリーが宥めるように告げる。
 公式的な立場ではプロスペクターの上司であるゴートだが、非公式なものを含めれば立場は逆転する。
 それ故に丁重な口調を崩さないのだ。

「仰る通りですがね、まっ、経理を担当する身としては出来る限り無駄な出費は避けたい訳でして、はい」

 何事でもタダと云う事は無いのですから、と何処からとも無く引っ張りだした電子機能付き算盤を振るプロスペクター。
 その姿にゴートは、プロスペクターの異名の1つが脳裏に蘇った。
 経費削減の鬼(コスト・カッター)
 何処からとも無く現れて、コストを削っていく怪人。
 振り返れば、算盤を弾く音だけが聞こえる――そんな一種、怪奇現象的にも言われていた事を。
 埒も無い。
 自分の脳裏に蘇った余計な情報を、眉を1つ動かす事で放り捨てると、感情を感じさせない声で同意を示した。

「確かに。だがミスター、考えようによっては火星に旅立つ前に洗い直しが出来る事を喜ぶべきでは無いですかね?」

戦闘による実証(コンバットプルーフ)、実戦の洗礼と云う訳ですかね」

「ええ。それに、無人機が3機も突入して来たにも関わらずこの程度の損害しか受けなかったナデシコの持つ生残性、これはかなりのアピールポイントかと」

「そういうものですか?」

「ええ。軍人には被害を受けないこともですが、それ以上に被害を限定出来ると言う事が評価されるものです」

 ナデシコを見上げながら言うゴート。
 その巨躯の一番上に、真新しい黄色いヘルメットがチョコンと乗っている。
 口調に反してかなりユーモラスだ。

「そういう意味では良かったのかもしれませんね。013計画艦が、連合宇宙軍に正式採用される事が決定しましたので」

「改ナデシコ級が、ですか」

「ええ。ザイドリッツ級とは別に整備される事になりまして。クラス名はゆうがお。絆、と言った所ですかな」

 花言葉を交えて笑うプロスペクター。
 話題のゆうがお級とは、ナデシコで搭載された諸技術をリアトリス級にフィードバックする形で設計された戦艦だった。
 その意味ではザイドリッツ級と似ている。
 相違点はその発展余裕だろう。
 戦時量産艦として数を揃える為に生産効率を最優先に設計されたザイドリッツ級に対し、ゆうがお級は純粋な戦艦としての贅沢な構造――かなりの発展余裕を含んでいた。
 基本設計は連合宇宙軍艦政本部。
 そこにネルガルの技術者が派遣され、設計された戦艦だった。

「我が世の春、ですな」

 それまで、企業規模は別としても立場的には中小企業的なものだったネルガルが一躍、軍需の中心に立つ。
 その事にゴートは少しばかりの照れを感じて居た。
 何故ならナデシコの存在こそが、その躍進の切っ掛けだったのだから。
 途中からプロジェクト・リーダーに参加したゴートであったたが、スキャパレリ計画に対する思いいれは深い。
 初めてリーダーを担当する大規模プロジェクトなのだ。企業人として燃えない筈が無い。
 尤もゴートは、そんな事を顔の表情に出した事は一度も無かったが。

「あまりやり過ぎても恨まれますんで、建造自体は他の企業にも振る事になっていますがね、はい」

「確かに出る杭は打たれる訳ですから」

 最近決定された連合宇宙軍の戦時戦力整備計画、D計画。
 一般には“星海艦隊計画(スターフリート・プラン)”の名で呼ばれる大艦隊建設計画、その中心を占める主力戦艦や主力機動兵器の開発を行い、そのパテントを大量に保有しているのだ。
 恨まれない筈は無かった。
 それが、ナデシコの修理をネルガル・グループの造船所では無くライヴァルである北崎重工業の工場で行う理由、その最大のものだった。
 囲い込みによるグループ化を図っているのだ。
 無論、北崎だけでは無い。
 三菱やジョイントスターズ、ビッカースKIと5社の共同出資で相転移炉の製造会社を設立していた。
 欧州軍需産業界の雄クルップOTOとは、エステバリスの陸戦用新フレームの共同開発や現行型のライセンス生産に関する提携話が進んでいた。
 ロシアのヤコブレフ設計局とはエステバリスの気圏飛行用フレームの新規開発の話が持ち上がっている。
 この様に海洋国家共同体系の企業のみならず、極端な敵対関係にある企業以外にも提携の手を伸ばしているのだ。
 共存共栄とは、ネルガル会長の最近の口癖であった。
 尤も、顧客層や主力商品の重なり方から完全に敵対しているクリムゾン・グループや、国家間の歴史的経緯やら無許可複製商品の開発と販売と云った問題から技術移転を含む提携先に絶対に選べない中国北方有限公司(ノリンコ)といった企業は強者連合、乃至は利権による汚らしい連携だと罵ってはいたが。
 これは誰もが納得し満足する様な手法は存在しないと云う事の、ある種、実証であったのかもしれない。
 それに、如何に戦時下とは云え企業間の競争が無くなる筈が無いのだから。

 

 

 一通り、自分たちの目でナデシコの現状を確認した2人は、船渠の脇に設けられていた作業員休憩所にて珈琲を飲んでいた。

「しかしミスター、これだけ広範囲に破損を受けたとなると考え直さねばならないのでは無いですか?」

 人気の無い休憩所に、ゴートの声が染みる。
 戦時下の現状、北崎重工沖縄工場も全力稼働しており、ナデシコの修理が始まっていない第7船渠に人を配置する様な余裕は無いのだ。

「改装、ですな」

 チョビヒゲを撫でながら呟くプロスペクター。
 ゴートは頷く。
 防空能力の強化、即ち重装化は必要だと。

「火星では支援の全く無い状況でナデシコを動かす事となります。先の会戦よりも状況は悪化するのみです」

「ええ、それは否定しませんよ」

 頷きつつも全面的肯定はしないプロスペクター。
 その脳裏では、ナデシコの改装に必要であろう予算と資材、そして時間とが渦巻いていた。
 ナデシコの能力の向上。
 その代償は、時間が過ぎる事による木星側に対ナデシコ用の準備をされるかもしれないと云う可能性。
 容易に判断の下せる事では無かった。

「まっ、詳細に関しては午後の検討会議で詰めましょう。専門家も来る事ですし」

 軍事に関しては素人同然。
 その事を自覚しているプロスペクターは、結論を出す事を放棄した。
 経費削減に関しては色々と言われているプロスペクターだが、少なくとも傲慢では無い。
 自分の判断を押し通そうとするのでは無く専門家の意見を確認しようとする。
 その事にゴートは安堵と感謝の気持ちが入り混じったものを抱いた。
 尤も、その巖の如き口から出された言葉は、何時も通りに感情の少ないものだったが。
 ですな、と。

 

 

 

 その日の午後。
 ナデシコ艦内に設けられた第2会議室にナデシコの修理、改装に関わる人間と運用側の責任者が集合していた。
 建造したネルガルの技術者と、修理と改装を担当する北崎の技術者。それに連合宇宙軍艦政本部からも技術者が派遣されて来ていた。
 これは、ナデシコの基本設計を行った人間が地球に居ない――より正確に言えば、火星に居る事が原因だった。
 イネス・フレサンジュ。
 ネルガル・火星オリンポス研究所の第1主任であり、特定分野では無くあらゆる分野に於いて優れた能力を持った天才的科学者。
 その彼女がナデシコの基礎設計を行ったのだ。
 地球の技術者は、その基本設計図を煮詰め、細かい修正を施しただけなのだ。
 ナデシコの構造こそは熟知していたが、ナデシコに投入されている技術、その全てに精通している訳では無いのだ。
 それ故に軍艦、特に大型艦の建造経験の豊富な人間の派遣を受け入れているのだ。
 又、この他にもナデシコの系譜に連なる艦、ザイドリッツ級やゆうがお級などの大量建造をする時の為の経験の蓄積と云う側面があった。
 そして運用側。
 当然ながらも艦長のミスマル・ユリカと監査役のムネタケ・サダアキ。そしてプロスペクターとゴートが参加していた。

 

 喧々諤々の議論。
 基本的な議論の流れとして、修理と共に武装強化を行うと云う事だけは決まっていた。
 後はその規模。
 対空火器を設置するだけの小規模な改修と呼べるものから、艦の構造材にまで手を入れてレールガン等の対艦兵装を搭載しようという大規模な改装工事まで。
 様々なものが比較検討されていった。
 その中心に居たのは、2人の人間。

「どうせならレールガンを装備させなさいよ! 地上じゃ何時でも使えるって訳じゃないでしょあの主砲は」

「確かにグラビティ・ブラストは機関に掛ける負荷が大きく、地上での連続使用は困難でしょうな。ですが、そこは運用で何とかして頂きたいと思いまして、はい」

「運用って、人によって補うったって万能じゃ無いわよ! それに常時使えない表看板なんてナンセンスよっ!!」

「ですが、構造材にまで手を入れようとしたら改装期間が長期に亘りますので、はい。ネルガル側と致しましては………」

 否。
 中心というよりも、2人だけだった。強く主張しあっているのは。
 他の技術者達は、2人の脇で被害の調査で判明した諸情報を元に修理に関する技術的な事を話していた。
 そんな周囲を気にする事も無く2人は、円卓の真っ向の席で一歩も退かぬとばかりに議論を交えた。

 再就役に掛かる時間を念頭に、対空火器の設置を中心とした小規模な改装に留めたいプロスペクター。
 最悪の事態を想定して、主力戦艦並の対艦兵装の搭載を中心とした大規模な改装を行いたいムネタケ。
 共に口にする理屈は正論。
 だが同時に、相手の理屈を圧し退けるだけの理屈とは云い難い意見。
 ほんの少しの視点の違いが、結論を別けていた。
 だからこそ、議論は結論を得る事が難しいのであった。

「………」

 そんな議論が堂々巡りを始めた段階でユリカは、思考の焦点をナデシコからずらしていた。
 基本的に腹案はあったのだ。双方を納得させられる程度の。
 だが、議論が感情的になりつつある状況では無意味と思い、それよりはと別の事に思考を巡らせたのだ。
 その新しい焦点はユリカの最も大事な事、人、無論テンカワ・アキトだった。
 眉に皺を寄せて考えている。
 再会して5日も経ったのに、まだゆっくりと会話が出来ていない――その事が不満だったのだ。
 であるが故に、戦術指揮官としての能力は“魔術師の如し”と謳われたその頭脳をアキトと逢う為に疾駆させていた。
 様々な会話や状況を演算し、どう演出するかを考える。
 楽しい愉しい時間。
 その気分を漏らさぬ様に、ユリカは殊更に眉をしかめさせていたのだった。

 尤も、外から見れば自分の預かる艦の事を真剣に考えているようにしか思えなかった。
 それ故にムネタケが水を向けた。
 煮詰まりつつあった議論を組み直す為に。
 何かアイディアは無いのか、と。

「………」

 それまで、技術的な事を話し合っていた技術者達も、何かに引き寄せられる様にユリカを見た。
 静まる室内。
 そんな衆目の中、ゆっくりと口を開く。
 案はあります、と。

 

 

――V――

 

 

 沖縄の空は青く、そして高い。
 燦々と降り注ぐ強い日差し。
 その下でアキトは、赤くて丸いホットハッチ車に背を預けながら静かに佇んでいた。
 色の濃いサングラスを掛け、ベージュのスラックスに白を基調とするシャツを着込んでいる。
 少しだけお洒落な雰囲気だ。
 アキトの表情と、場所の事とを除けばだが。
 暗い、とは言えないものの朗らかとは言い難い表情。
 そんなアキトの居る場所は北崎重工の第7船渠、その脇に作られた駐車場だった。
 船渠群の巨大な建物に囲まれた、ぽっかりと開けた空間。
 そこでアキトは呆っとしていた。

 

 ふと、空を見上げるアキト。
 鈍い響きと共に、低空を飛ぶ軍用輸送機の姿があった。
 風が駆け抜ける。
 視線をゆっくりと下げたアキト、その視線の先には栗色の長い髪をたなびかせた女性の姿があった。

「待った?」

「いや」

 問い掛けに短く答えて、車に乗り込むアキト。
 女性は小さく笑って助手席に座る。
 ナデシコの操舵士、ハルカ・ミナトだった。

「そういう態度じゃ女の子にもてないぞアキト君?」

「別にもてたい訳じゃ無い」

 からかわれる様な言葉に答えて、エンジンに火を入れる。
 稼働した水素エンジンは騒音と振動を撒き散らす事無くエネルギーを生み出し、その余波で目覚めたカーラジオがPOPな音楽を流し出す。
 その音量を小さく絞ってアキトは問う。
 ホシノさんは、と。

「ルリルリは船渠管理棟に行ってるわ。少しオモイカネの調整用に、ネルガルの人と話さなければならなかったらしくねて」

「了解。なら車をソッチへ回すとしよう」

 2人が私服で車に乗っている理由。
 それは昨夜に起因する事だった。

 

 

『えー明日と明後日は半舷上陸となります。全員が休める様にシフトを組みますんで、皆さんしっかり休養を取って下さいね、V!』

 不特定多数を相手とした艦内放送だからだろう、艦内にはユリカの顔を写したウィンドウが大量に浮遊している。
 休養。その言葉に確かに連戦だったからなと小さく頷くアキト。
 その手には珈琲カップ。
 場所はナデシコ食堂。
 アキトは少しだけ疲れた表情で、珈琲を口にした。

「………休めるって事か?」

 アキトの向い側に座っていた女性が、心底疲れた様な声を漏らす。
 スバル・リョーコだ。
 力なく机にだらしなく上半身を預けている。
 否、スバルだけでは無い。
 このテーブルに座っている面々――ナデシコ機動部隊の隊員達は、アキトとヤマダ・ジロウを除き疲れ果てていた。

「そうね、そうだとありがたいわ」

 常日頃よりも顔色を青くしたマキ・イズミがぼそぼそと返す。
 面々がここまで疲労している理由、それは彼等がナデシコの防空任務を全力で果たした証拠だった。
 CHULIP撃破時に被弾したナデシコ。
 だが、その時点で戦闘の全てが終った訳では無かったのだから。
 CHULIPが散々ばら撒いた無人機、この掃討を行わない限り終わりでは無いのだから。
 これは不用意に無人機が拡散して民間の船舶、或いは近隣の沖縄にでも上陸されては事だからだ。

 そしてナデシコも又、被害を受けてはいたがその任務に参加していたのだ。
 当然ながらも飛翔フレームのエステバリス2機を遊撃部隊として配置。
 そして補給時の間隙を突かれぬ為に、同じ過ちを繰り返さない為に艦の各部に残るエステバリス部隊を陸戦フレームで配置し即製の防空銃座代わりとしたのだ。
 その時間、約7時間。
 数時間毎に休養を取ってはいたが、それでも長期に渡って緊張していては疲労するのも当然だろう。
 だが、体力の不足は否定出来ないな。
 疲労の色を殆ど見せていないアキトは、埒も無く、そんな事を考えて居た。
 地上、味方の支配圏下だからこの程度の時間で済んでいたが、敵懐中ど真ん中の火星では、この程度の時間、緊張感を維持し続けなければならない事など基本だろうに、と。
 何故か疲労を感じていないような元気一杯のヤマダは別としても、疲れ果てている4人の女性。
 だが全員、肉体的な体力はあるだろう。
 日頃の挙動を見る限りは、そして過去の記憶を思い出す限りでは。
 只、長時間に渡った緊張感の維持と云う、慣れぬ任務故に疲れ果てただけだろうとアキトは判断していた。
 ではどうすれば良いのか? 考えれば簡単な事だ。
 走れ。
 身体を鍛え、精神を鍛える。
 精神論では無い。
 合理的とはいい難いかもしれないが経験則ではある。
 苦難を乗り越えて行く事で、身体も、そして心も鍛えるのだ。
 だがその前に1つ、しておく事がある。
 他の何でも無い、休養だ。
 初の実戦と云う事で緊張もしていただろうし、何よりも連戦だったのだ。
 休養は必須だった。

「大丈夫、心配する必要は無い。
 沖縄は今、1個師団規模の陸戦戦力が配置されている。それにナデシコは被害を受けて入渠している。呼び出される事は無いだろう。
 心配せずにゆっくりすればいい」

「は良いとして、っオメーは大丈夫そうだなぁ」

 少しだけ悔しげに言うスバル。
 対してアキトは小さく笑う。
 これでも宇宙軍上がりだ、と。

「鍛えろって事か」

「そうかもしれない」

「……しかし、なぁ?」

 言葉を濁しながら視線をずらすスバル。
 その先には、机に突っ伏している部隊長イツキ・カザマが居た。
 士官学校を出たばかりとは言え、一応は軍隊上がりのイツキ。だが果てていた。

「………」

 視線を感じたのだろう、その細い肩がピクリと揺れた。
 そして深く深く溜息を付く。
 へこんでいた。
 疲れてもいたが、それ以上に己の失態に凹んでいた。
 ナデシコの被弾、その原因となった飛翔フレームの補給、それは無理矢理に出撃したイツキ機だったのだ。
 感情のままに機体を操り戦果は上げたが、弾薬と燃料とを消費し過ぎて補給の為に帰還した処を狙われたのだ。

「ま、これからさ。全てはね」

 アキトからすれば、初戦でヘマをするのは当然だった。
 誰しもが一度は下手を打つのだ。
 母艦を傷つける程の強者は、流石に滅多に居ないが。
 とは言え、アキトは慰めを口にはしていない。
 これは本人の内心を慮って――今はそっとされていたいだろうと思っての事だった。
 指揮官である事に誇りを抱いていたイツキ、にも関わらず真っ先に失敗したのだ。
 その沈みの深さは、余人にどう言えるものではないだろうと思ったのだ。
 尤も、そんな事を意にも介さない人間も居たが。

「そうそう。人間誰しも失敗はある。気にする事は無いぜ、隊長さん!」

 ガッハッハッと豪快に笑うのは、当然ながらもヤマダ。
 そんな僚友の姿にアキトは、疲れを見せないのも含めて常人とは神経の作りが違うのかもしれないと内心で苦笑していた。
 そんな気分を抱いたのはアキトだけでは無かった。

「うわー強…」

 にょーと、机で垂れていたアマノ・ヒカルは笑った。
 日頃は能天気系の明るさを発散し続けているアマノも、流石に疲れ果てていた。
 ピュルルー ピュルルー と玩具の笛を吹きながらだが、その音色にも張りが無い。

 この場所に、全員が揃っている理由は反省会だった。
 戦闘の。
 本来は戦闘班待機所(ガン・ルーム)ででも開くものだが、飲み物が欲しいし軽食もしたいとの欲求が勝り、ネルガル食堂で開かれる事となったのだ。
 昼食と夕食を兼ねたような食事を取り、どれ話そうかとなりはしたが食事を摂ったが故に疲れが顕著化した為、隊長であるイツキの決断で反省会は延期となったのだ。
 後は只々、だらりと駄弁るだけ。
 部屋に帰ろうにも、その元気すらも乏しい。
 故に、ナデシコ食堂の一角にどんよりとした雰囲気の魔窟が形成されていた。
 そんな廃人のテーブルに近づく人影。
 ナデシコ食堂の絶対君主、ホウメイ・ゲレルだ。
 柔らかな大人の笑みを浮かべている。

「お疲れさん。やっぱり初陣からの連戦は若さでも補えなかったかい」

 手にはお盆。
 甘く濃厚な匂い、ココアだ。

「アタシの奢りだよ、初陣祝い。疲労回復にはこれが1番さね」

 そらっと、配っていくホウメイ。
 のろのろとした仕草で受け取っていく一同。
 そして最後にアキト。
 マグカップを持って、ゆっくりと飲む。

「………ぁー生き返ります」

 垂れた状態から、再起動するが如く蘇るイツキ。
 グビグビっと一気に飲む、目が少しだけ赤い。
 ポロリと零れる涙。
 湯気が目に入ったといって袖で拭こうとするが、それをヤマダが止める。

「コレを使いな」

 意外と評すれば失礼かもしれないが、誠に意外なことにも差し出したのは純白のハンカチ。
 慌ててのむからだぜ、とガハハッと笑う。

「うんうん、青春だねー」

「屋台のくじ引き特賞、当りなし………外れ、そうアレは空気を読めてないだけ」

「ノンノン、そこから芽生える恋もある」

「夢は大きくでっかく?」

「そそそ。他人の何とかは蜜の味ってね」

 顔をつき合わせて笑ってるアマノとマキ。
 多少は元気が帰ってきた模様だ。
 その横でスバルは、特訓だ特訓だと呟いていた。

 そんな微温な廃窟に射す影。

「おつかれー」

 その陽気な語調に曳かれて影を見るアキト。
 ハルカだった。
 在る意味でアキトにとって、今現在もっとも近い(・・)位置に居る人間だった。
 他人との距離を測りかね、軍人としての仮面で全てを覆っているアキト。
 故にナデシコ艦内では浮いているアキト。
 にも関わらずハルカは、アキトの纏う雰囲気を気にする事無く接してくる。
 その理由が判らぬアキトは、困惑しつつも右手を上げて応じていた。

「えー、その疲れてるみたいね」

 他の面々は誰も返事を返して来ない事に苦笑するハルカ。
 笑うもの呟くもの泣くもの。
 皆、それぞれの行為に没頭し続けていた。

「だな。虚脱からハイに入りつつある。まぁ仕方が無い。初陣の後だ」

「アキト君もそうだったの?」

 何気ない問いかけ、だがアキトは目を細めた。
 思考を沈める。
 どっちのだ(・・・・・)、と。
 今の初陣は、何の感慨も無かった。
 あの未来にして過去、どうだっただろうか。
 思い出そうとするが、思い出せない。
 遥かな昔の思い出。そう評するほか無い時間なのだから。
 だから口をついて出た言葉は一言、“忘れた”だった。

「必死だった。だから、かな」

 そう言って、冷えかけたココアを最後まで飲み干した。
 ナプキンで口元を拭くと、コミュニケを起動させシフト表を呼び出す。

電子音

 青と赤とで休みの順番が組み上げられたものが表示される。
 ナデシコ機動部隊の面々もキッチリと2分割されていた。
 艦の中枢組みは軒並み、明日は仕事とされている。
 報告書を出せ、と云う事なのだろう。
 そしてアキト。

「明日は休みか………」

 顎をゆっくりと撫でるアキト。
 体は疲れておらず、そもそも特に何かをする必要性を感じ無い。
 さて、何をして時間を潰そうかと考えた時、ハルカが声を上げた。

「あ〜っ、アタシ()も休みだ!」

 その声に誘われて、ブリッジクルーのシフト表を確認する。
 ハルカの名は当然ながらも休日に。
 そしてブリッジ組としてはもう1人、休みになっていた。
 ホシノ・ルリである。
 艶やかな唇に指を当てて呟く。
 どうしようかな、と。

「疲れたんじゃ無いですか?」

「んー? そうでも無いわよ。このフネのシステムってかなりシステム化が進んでて楽だからね」

「最新鋭、そういう事ですか」

「そんな感じだね。でも、チョット癖のある感じもあるから、慣れるまでは面倒かもしれないけどね」

「?」

「システム化が進みすぎてて、使う側としては微妙なのよね」

 面白く無い、と言うハルカ。
 そういうものかと納得するアキト。
 出来る人間にとって、制御をシステムに預けるのは面白い事では無いのだから。

「………そう言えばアキト君、知ってる? ルリルリってね私物が凄く少ないの」

 そう言ってハルカはルリの身上を告げる。
 服も小物も持たない。お洒落も知らない。思い出すらも判らないと。
 だから、とハルカは言う。

「地球を離れる前に、少しだけ思いでを作ってあげたいのよ」

「帰ってくる、予定ですよ?」

 危険だと言うのだろうかと問えば、ハルカの顔はかなり真剣な表情で返した。
 だからこそ、と。
 帰る場所を覚えておいて欲しいのだと。

「地球の記憶が研究所だけなんて寂しいじゃない」

 その意見に、完全に同意するアキト。
 ルリが何も持っていなかった――その事はアキトとて覚えてはいた。
 にも関わらず、何のアクションも起さなかった。
 只の情報としてしか見ていなかったのだ。

嘆息

 今と過去。
 まだ誤差を感じている、感じ続けている。
 自分は部外者であり、故に、今を生きる人たちに干渉してしまってよいのか。
 その迷いは今だ晴れない。
 とは言え目の前の事を座視し続けて良いのだろうか。
 否。
 だからアキトは口を開いた。

「何か手伝う事は?」

 ハルカは柔らかな笑みを浮かべて答えた。
 有難う、と。

 

 

 そして今。
 アキトは流れに乗せて車を走らせていた。
 POPな音楽が、ラジオから流れている。
 ルームミラーを見るアキト。
 後部座席に並んで座るルリとハルカ。
 チョコンと座ったルリと、ルリに話しかけているハルカ。
 その雰囲気は、歳の離れた姉妹にも見える。

「もう直ぐ那覇だが、先ずは何処に行く?」

「ん、んーねぇルリルリ。ルリルリは何が欲しい?」

「私は………判りません」

 今まで、自分が欲しかったもの。
 欲しいもの、何も判らない。
 だからこその言葉。
 そもそも今日の買い物もルリ自身の発案では無い。
 ルリには自分のものを選び、そして買うと云う習慣は無かったのだから。

 そんな悲しい事を言うルリをぎゅっと抱きしめるハルカ。
 寂しい事はもう言わせない。
 鬱陶しがれるかもしれない。
 嫌われるかもしれない。
 そう強く決心を固めてハルカは、もっともっと愉しい事を覚えましょう、と言う。
 だけど、自分は手を差し伸べ続けようとの思いを込めて。

「じゃぁ先ずはウィンドウショッピングと洒落込もうか?」

 選ぶ楽しみを覚えないとね、とハルカは笑う。
 一杯、いい物を選びましょうと。

 

 平日ながらも盛況な人ので、その中を歩く3人。
 ハルカがルリを振り回し、アキトはその荷物持ちだ。
 色々なものを見て、買って行く。
 無論、無差別にでは無い。
 デパートから小規模店舗までも練り歩き、探し、キッチリと選んで必要性も勘案し、その上で買っていたのだ。
 服を、小物を。
 可愛らしい服、清潔感ある服。
 デザイン性の高い小物を、実用性を優先した小物を。
 だがハルカは決して押し付けず、ルリの意見を聞きだす様にして選んでいた。
 選び抜いてはいたが、みるみる増えていく荷物。
 紙袋に幾つも。
 アキトは、そんな数々の品物を持って付き従っていた。
 正しく荷物持ち。

「少し休憩しよっか?」

 同行者の顔色を確認して、主催者のミナトが宣言する。
 流石は軍隊上がりと言うべきか、中々の量の荷物を抱えてもアキトが疲労を見せる事は無かったが、その分、ルリが顔色を悪くしていた。
 空調の整った場所での生活が長かった影響で、沖縄の強い日差しには耐えかねていたのだった。
 適当な喫茶店を選んで入る。

 

「ルリルリ、楽しんでると思う?」

 単刀直入な言葉を口にするハルカ。
 だが表情は言葉ほどに真っ直ぐでは無い。
 迷いに近い色が浮いていた。
 否、迷って居たのだ。
 疲れを滲ませるルリの表情を見て、自分の行為が余計なお節介では無いかと自責の念を抱いたのだ。
 それ故に、アキトに尋ねたのだ。
 ルリはトイレに立った、その時を狙って。

「……多分、ね」

 若干言葉を濁すアキト。
 過去の思い出を甦らせる。
 ルリの性格を趣味を。
 それらの情報を元に、怪しまれない程度にぼかした推測と云う形で口にする。

「いやな事はちゃんと口に出来る娘だとは思う。考えすぎだな。服やら小物やらと色々な見て回る時、あの娘の目には好奇心があった様に見えた。だから心配する必要は無いだと思うがね」

「そう、かな?」

 心配なのだろう。
 ルリが迷惑がっていないか。押し付けになってはいないか、と。
 だが、と思うアキト。
 アキトの知るルリは、好き嫌いをはっきりと口にする少女だった。
 場を考えず、ズケズケと思ったことを口にする。
 是は是、否は否と。
 そこまで言った時に、フト思い出す。
 言い過ぎる面もあった、と。

「? どうしたのアキト君」

「いや、何でも無い」

 思い出に、歪みそうになる頬を手で撫でる事で抑えるアキト。
 ルリの里帰り、ピースランドでの事を思い出したのだ。
 余りにも不味い、郷土自慢料理。
 率直過ぎるルリの評価。
 騒動。

 微笑。

「ねぇねぇどうしたのアキト君?」

「いや……ん…ん」

 どう誤魔化そうかとアキトが考えた時、状況を更にかき回す存在が降臨した。
 ルリだ。
 ボソリと言う。

「お邪魔ですか?」

 抑揚の少ない声。
 トイレから帰って来て、フト、2人が愉しげに見えたからだ。
 ルリなりに気を回していたのだ。

「へっ?」

「はぁ?」

 思いがけない言葉に、キョトンとする2人。
 それから、ルリの言葉の意味を考えて、殆ど一緒の瞬間に破顔する。
 尤もアキトは、喉を振るわせた程度ではあったが。

「違う違うルリルリ。これからどうしようかってお話」

 ルリは決して気を回せない、何も知らない娘では無い。
 そう思いながらハルカは、笑いながら否定していた。

「ルリルリは何処か見たい場所って無い?」

「いえ。もう十分過ぎるほど見て回りました」

「ふ〜ん、満足した」

「………満足かどうかは自分ではまだ判りませんが、でも、愉しかったです」

 訥々と言葉を連ねるルリ。
 それが本音だと云う事は、その声色で判った。
 だからハルカは満足げに頷いていた。

「そっか。じゃぁ最後に、あの服屋さんに戻ろっか。決めかねて居たもんね」

 最初に行った店の事を上げるハルカ。
 薄蒼色のワンピースか、それともオレンジと白のツートンカラーのワンピースか。
 どちらもルリに良く似合っていた。
 清潔――清楚さをかもし出し。
 それ故に決めかね、最後にもう1回来ようと決めた店だった。

「はい」

 愉しそうにどっちが良いかなと言うハルカ、その笑顔に誘われる様に、ルリも小さく顔を綻ばせていた。
 そんな2人の微笑ましい姿に、アキトは小さく笑って口を開いた。

「それもだが、1つ、プレゼントがしたいな」

 

 

 

 夕暮れの中を走る車。
 車内は、暖かな色に染まっている。
 開放された窓から、湿気を含んだ島風がたっぷりと入り込んでくる。

「寝ちゃったね」

 サンバイザーに取り付けられている鏡で後部座席を見たハルカが優しく微笑む。
 アキトもルームミラーで確認する。

「ああ」

 ルリは山の様な買い物袋に囲まれたルリが、目を閉じていた。
 穏やかな寝顔だ。
 ラジオの音量を下げる。

「………楽しんでくれたかな?」

「多分、な」

 優しい時間。
 ハルカは満足げに微笑んでいた。

「貴方の願い通り、思い出になったとは思う」

 流れにまかせて、ゆっくりと、ルリを起さぬように車を操るアキト。
 車の振動が減ったことに気付いたハルカ、チラリとルリの手元も見て、微笑を浮かべる。

「優しいわね、アキト君」

 ルリの手元には、強い沖縄の日差しを遮る為としてアキトがプレゼントした真っ白な帽子があった。
 真っ赤なリボンが1つ、付けられた可愛いデザインの帽子だった。

 

 

――W――

 

 

 入り口には【研究室】と、猫を模ったメッセージボードに書かれた部屋。
 その室内は真っ暗だった。
 光源は何処其処に置かれたディスプレイのみと云う怪しい雰囲気。
 そこで、小柄な人影が受話器を片手にポチポチとキーボードを叩いていた。

「にしし。面白いデータがネルガルから流れてきたわよ。ソッチには来てる? うん。なかなかに狂い果てた設計だから」

 口調は軽いし、目元は愉悦に歪んでいる。
 今にも舌舐めずりしそうな感じであり、何処かしら猫科を連想させる雰囲気をまとって居た。
 ツクヨミ・イチカ。
 かなり小柄な背丈をオーバーオール風の作業着に包み、その上に白衣を着込んでいる。
 背格好や雰囲気などを含めてとても重要人物には見えない人物だが、連合宇宙軍大佐にして連合宇宙軍艦政本部部長と云う、連合宇宙軍の技術面での支配者であった。

 イチカが見ているディスプレイの上段には、[ND-001 C-Plan]と書かれていた。
 ナデシコの那覇基地への入渠、修理と改装の予定に合わせてネルガル側から提供されたナデシコ級の基礎設計の数々、その中にあった設計図だった。
 正確に言うならば、概念図と呼ぶべきかもしれない。
 単艦で多数の敵と相対し、これを正面から撃破しうる戦闘能力を持った艦。
 全長で500mを優に超える巨体を持った巨大戦艦。
 それがc-Planの設計コンセプトだった。
 現行のナデシコが、その基本に於いて砲艦的性格をしている事と全く異なっていた。
 そんなc-Planの基礎設計をイチカは解析しているのだった。

707号艦(ザイドリッツ・クラス)の基礎設計が終ってるのが残念だわ。コレ入れたらかなり素敵な戦艦に仕上がったんだけどね。まっ採算は度外視になるけど」

 にししっ、と笑いながらキーボードを叩く。
 口以上に手は素早く制御端末を操り投入されている技術を解析し、構造の意味を把握していく。
 だが概念図には、その全ての情報が記載されている訳では無い。
 幾つかの構造の中枢と思しき場所は、公開限定技術(ブラックボックス)として情報が破棄されている。
 当然だろう。
 ネルガルとて商売を行っているのだ。
 無制限に、その持てる技術を公開する筈が無かった。

『そんな事言っては駄目ですよーっ。戦時計画艦700番台は戦時計画量産艦なんですからねーっ』

 イチカの電話相手は笑いながら、まるで女学生の電話の様な雰囲気で窘める。

「判ってるって。あたしだって戦時建艦計画へは、@号建艦計画の概念段階から参加してたんだからさ」

 戦時建造計画。
 それは戦時下に於いて発生するであろう戦力の不足を補う為、量産性最優先で建造される艦の事なのだ。
 平時に立案されていた@号計画と、第1次火星会戦の結果から改訂されたA号計画。
 ネルガルの提唱したスキャパレリ計画――ナデシコ級の影響を受けたB号計画。
 そして、連合宇宙軍内の主導権を統合派が掌握すると共に大規模な改訂が行われた、現在のC号計画。
 改訂される都度、建造計画は拡大し、C号計画に到っては戦艦120隻と空母80隻を中心とする800隻の戦闘艦を整備するとされていた。
 戦前の戦艦数は地球圏の全艦を合わせても44隻。
 空母に到っては、正規空母としては18隻しか就役していなかった事から考えても、C号建艦計画の凄まじさが判ると云うものだろう。
 地球連合の特別軍事予算補正会議の場にてC号計画を聞いた軍人上がりの議員は、初めは己が耳を疑い、次には立案者の正気を疑ったと伝えられている。
 それ程の艦隊建設計画。
 この艦隊建設計画に従って、人員の募集も大馬力で開始されていた。
 人を揃え艦を揃え、一心不乱に戦力を整えていく。
 これが、地球圏の本気であった。

 その120隻も建造する事となった戦艦の中心となるのが戦時計画艦、設計番号700番に連なる艦であった。
 数を揃えて木星蜥蜴の主力艦、通称カトンボ級と戦う事が主任務であった。
 それ故に、凝った、建造しにくくコストのかかるフネを設計する事は不適格であった。

「だけど主力艦には、それなりのを揃えたいじゃない?」

『あははーっ! それは全然肯定しますねっ。
 噂されている新設の900番台艦には、対抗や拮抗なんて言葉じゃなく圧倒って言葉が似つかわしいフネになって欲しいと思ってますよ?』

 地球連合を構成する責任ある国家の一員としては、と言う。
 相手は連合宇宙軍では無く日本国防軍技術研究本部に所属する人間だった。
 “教授”と呼ばれる、本名は誰も知らない謎の女性。
 組織の中でその名を記されているものは無く、だが誰も無視することは出来ぬ暗闇の盟主であった。

「おっ、日本も一口乗る?」

『私としては、それが良いと思えるんですけどねーっ』

 戦艦。
 それも国を代表するような中枢艦には、日本国の独自性を出すべきだと言う声が少なからずあると言う。

『教授的には無意味だって思うんですよーっ?』

「効率だけで決まるわけでも無いし、か。政治は面倒だからねぇ」

 嘆息するように言うイチカ。
 連合宇宙軍と日本国防軍との関係は、単純に味方だと評する事は難しい関係だった。
 個々の懸案では対立する要素も多分に内包しているのだから。
 だが、イチカにとってこの相手は別だった。
 同士。
 所属の違いを超えた関係だった。
 そう、科学者としての。

 

 

 暗い部屋が急に明るくなる。
 急な光量の増加に、顔をしかめるイチカ。

「居る?」

 問いかけと言うよりも、確認する様に言ったのはズケラン・タビト少佐だった。
 イチカの部下、より正確には腹心と言う言葉が似つかわしいだろう。
 他に誰も居ないであろう事からイチカの望む態度――軍隊と云う組織が、その組織を構成し維持する上で必要な礼則を一切無視した遠慮の無い態度で入ってくる。

「どうしたのタビトちん、今日は直帰しても良いって言った筈じゃなかったっけ?」

「ネルガルで新しいネタを仕入れたからな。コレは差し入れ。っと、教授さん?」

 タビトは大手ハンバーガーフランチャイズのマークが入ったビニル袋を机の上に載せる。
 ポケットから携帯記憶端末(PHD)を取り出して予備のパソコンに繋ごうとし、そこでイチカの手元に黒い実用一辺倒の有線電話機がある事に気付いた。
 その相手が誰であるかは知って居た。
 そして常には接続されていない電話機が、回線に繋がっている事の意味も判って居た。

「邪魔したか?」

「鍵が開いてたでしょ? もう終ったわよ。面倒だったんで片付けて無いだけ。んーそれよりも新しいネタって何?」

 余り表沙汰に出来る関係では無いのだ、イチカと教授の関係は。
 だから通信中イチカは、室内に鍵を掛ける様にしていた。
 恥じる積りも、後ろ暗い事も無かったが、それでも小言を言われたくは無いからと、イチカは親しい人間に公言していた。
 嬉々とした仕草で、ビニル袋を漁るイチカ。
 そのイチカに指摘されてその事に気付いたタビトは、だなと小さく笑うと、予備のパソコンを操った。
 暗号の解除鍵を入力し、PHDの内容を画面に表示させる。

「エステバリスに対する対艦能力の付与、って?」

「そうだよ。ナデシコの艦長さんの提案らしいんだがな、ナデシコ級の気圏内での戦闘能力の不足を、エステバリスで補おうって話らしい」

 へーっと、3段重ねのスペシャルバーガーに齧り付きながら唸るイチカ。
 現時点でのエステバリスの役割は、ナデシコへの近接戦闘能力の補完――無人機狩りだった。
 それをひっくり返そうとユリカは提唱したのだ。

「面白いかもしれないね、これは」

 誰でも考えそうな、だが誰も考えなかったアイデア。
 3Lのビッグボトルのオレンジジュースを、漢らしく傾けながら頷くイチカ。
 それがユリカの案だった。
 同時に、それがエステバリスが連合宇宙軍艦載機部隊の主力として採用され1つの時代を築く、その最初の1歩だった。
 大型艦による戦闘をもって成り立った大艦巨砲主義の時代から、機動兵器を主力兵器とする時代への幕開け。
 ナナフシの軌道降下阻止戦に於いて、艦載型の大型対艦誘導弾をディルフィニウムに無理矢理に括り付ける様な急造では無く、1から対艦用として開発された機動兵器。
 それが、後のエステバリス対艦用フレーム(ストライク・エステバリス)だった。

 機動兵器を主力とする新時代の戦場。
 その入り口を開いた者として、ユリカの名は歴史に残る事となるのだった。

 

 

2005 11/5 Ver4.01


<ケイ氏の独り言>

 着工が10/24で11/5に完成。
 夜勤の分を抜けば実質10日でか、有無、やれば出来る子じゃから、ワシ(マテ

 つーか、一応、これはアキト×ルリを目指しているんですよーっと言いたいケイ氏です(マジで
 最初の目的だった、お買い物イベントが1個クリア!
 でもアキトとハルカもいい感じ(自爆
 矢張りコレはアレですな、某チャールズとレイの夫妻が影響大だなとか思ったり(笑

 と云うか、マジでルリルリとアキトが目だって良かったなと思ってるケイ氏です(目立ってましたよネ? ネ??
 TとUまで書き上げたとき、いつもの様に出番が無かったらどうしようと、本気で悩んだ位ですんで(お
 いっそ開き直って「我が淑女とはナデシコであります。これは古来より軍用艦が彼女(She)と呼ばれている事に由来しておりまして」などとばっくれようか等と思って居た訳で。
 そうならなくて本当に良かったでアリマス。

 

>追伸

 尚、非常に蛇足ではありますが、Wの“教授”ネタはリスペクトです。
 かつて存在した歓喜と狂気に満ち溢れた世界へと満腔の敬意を捧げるものであり、それ以上でもそれ以下でもありません。

 要するに、ネタ元に気付いた人は黙ってニヤニヤして下さい、と(お

 

 

>代理人さん

 えー、まさかユリカスキー強者としての自覚が無かったんですか?(笑
 いやいや、文からユリカへの愛を感じましたんで。

 つーか、ルリを出さずして何がナデシコで御座いましょうかと、熱血一杯に主張したケイ氏。
 性年の主張?(非常にマテ

 まっ、それは兎も角、松本零士はデフォとの事で、いっそ無限海漂流記でも入れますかねぇ。
 絶対に戦争が終らなくなりそうってか、地球側がガチの悪役になってしまうので、悩む処ですが(派手にマテ

 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

オウソーリィ、素でナデシコのことだと思ってましたネ、HAHAHAHAHA!(核爆)>My Fair Lady

いや本当真面目に。
今回のルリに関してはいわれてみれば確かに目立っていたなと思わなくもなかずんばかしこき所存、いわゆるひとつのありおりはべりいまそがりにて御座候。
まぁ別にデートイベントって訳でもないからそりゃこんなもんなんでしょうが。w

>ユリカスキー

んー、そもそも私はロリ属性および綾波属性の皆無な人間でして。
かてて加えて不条理とヘイトも死ぬほど嫌いなので、劇場版アフターのSSを読みあさって行くとどーしてもユリカに肩入れしてしまうんですなぁ。

つーか劇場版の時点で死ぬほど腹立ててたしねっ!(爆)>ユリカ生き埋めにして無理矢理ルリヒロイン

ありゃあ今にして思えば某嫁の脚本にも匹敵するくらいの不条理加減だったなぁ。
GSあたりと違って、原作でまがりなりにもくっついたカップルをそこまであからさまに無視するのはどーよと。

と言うわけで、私がユリカスキーだとしてもそれは受動的なもんじゃないかなぁと自分では分析してるんですけどね。