機動戦艦ナデシコ ―闇達の輪舞
第一話

 

夢――

夢を………見ている―――

 

懐かしくも辛い、過ぎ去りし日々の夢を―――

 

 

 

 

 

炎に囲まれた自分

必死になって走る

行き先は分かっている―――そこで待つ結果も

 

 

けど足は止まらない

なぜなら――――――これは夢だから

 

 

声が聞こえた

知っている声と、知らない声

 

知らない声に嫌な予感を感じ、側の物陰に隠れて覗き見る

 

見えたのは両親と――――見知らぬ男達

 

一言二言、両親と男達が話した後

両親の体が突如痙攣し、そのまま倒れ付した

 

 

その光景を呆然と見詰める自分

倒れた両親の体に触れて何かを確認する男達

 

 

言葉にならない言葉が口から漏れでるが

それは止めようにない――――――――声を上げているのは自分であって自分でないのだから

 

 

 

―――暗転―――

 

 

一転して、荒涼とした大地

辺りには人は存在していない

 

目の前には一人の女性。いや少女

中背で漆黒の髪を二つに纏めている美少女だ――

その姿を見れば十人中十人が振り向くであろう

その美しさと、異様さで

 

 

何故ならば、彼女は――――だったから

 

 

彼女が、自分へと話しかける

声は聞こえないが、何と言っているのかは知っている

 

コレが、俺の運命を大きく変えた出来事なのだから――――

 

 

 

―――――さらに暗転―――――

 

 

断続的に振動が伝わってくるシェルター

みかんを持って笑いかけてくる女の子

 

壁から進入してきたバッタ

 

トラクターを使って押さえ、他の人に気付かれないように獣魔を召喚して頭部を破壊する

 

衝撃―――

 

後ろを振り向くと、入り口から無数のバッタが入り込んできているのが見えた

そのバッタの足元には、手足を、または頭部や腹部を吹き飛ばされて絶命している人々

 

咆哮―――

 

破壊したバッタが囮だという事に気付かなかった自分を責め

人々を守れなかった己の非力さを責め

閃光を()び迫り来るバッタを破壊する自分

 

声がした――

 

振り向くと、先程みかんをあげた女の子が此方へと走ってきていた

その少し後ろには、血溜りの中でピクリとも動かない女の子の母親

 

咆哮―――

 

瞳孔が細まり、意識が遠のくのを感じた

 

視界が白く染まり

浮遊感が体を包む

 

意識が、浮上する

 

 

 

 

瞼を上げる

見慣れた、天井だ

 

一息ついてから、俺は体を起こして準備を始めた

そろそろ仕込みの時間だから起きて下に行かないとサイゾウさんに殴られる

 

 

そう言えば、自己紹介が遅れていた

俺の名前はテンカワアキト

約一年前の『第一次火星会戦』の折に何故か火星から地球へ移動していて

現在はユキタニ食堂と言う大衆食堂に住み込みで働かせてもらっている

特技は料理と格闘術、それに幾つかの術だ。

術が何なのかはおいおい話すとして―――今俺はちょっとした悩みみたいな物がある。それは………

 

 

ズズーーーン

ガゴォッ

 

「あ〜あ、また始まったよ」

「バッタと戦闘機じゃ機動力が違いすぎるのに、連合軍も頑張るよなぁ」

「とは言っても、全滅するのはやっぱ時間の問題だろ?」

 

カウンターで飯を食っていた数人が外での爆発音などを聞いて知った顔をして話している

無人兵器によって無残な姿に変えられた人々を目の当たりにしたことが無い彼等にとっては

今戦っている軍人の命などただの数字上の存在としか感じられないのだろう

 

「……サイゾウさん。ちょっと、いいっすか?」

「あ……?アキト、またか。ま、別にいいが早めに戻ってこいよ?」

 

俺の、感情を少し押し殺した声に少し呆れたように許可を出すサイゾウさん

多分、サイゾウさんは俺が誰にも見られない場所で震えていると思っているようだが

それは、フェイクだ

俺が感じているのは、恐怖ではなく――――――行き場の無い、怒りと憎しみだから

 

 

「あれ?大将、もう一人のヤツはどうしたの?」

「ああ、アキトの奴か。怖いんだとよ、あいつ等が」

サイゾウさんは呆れた表情で天井を指差した

 

 

厨房から出ると、俺は上空で戦っている連合軍機とバッタを見た

やはり連合軍のほうが劣勢らしい。

 

バッタの数を確認すると、俺は腕をバッタの方へ伸ばし肉体に宿る(しもべ)の御名を()ぶ。

「テンカワアキトの名に於いて、命ず―――――出でよ光牙(コアンヤア)

閃光と共に現れた光の龍がその顎を開きバッタへと殺到する

 

戦闘機に気を取られていたバッタに光の龍が喰らいつき、爆発する

 

爆炎がおさまり、バッタの姿が全て消えたのを確認すると俺は厨房へと戻る

幾分かの爽快感と、虚しさを感じながら

 

「ん?もういいのか、アキト。」

「ええ。すいませんいつもいつも」

「おう。あんま気にすんなよ。」

 

これが、俺の日常

何処か狂って、誰もそれに気付かない日常だった

 

 

 

「クビ……ですか。」

「悪いな。こっちも臆病者のパイロット崩れを雇ってるって噂が立つと都合が悪くなるんでな。」

「パイロット………ですか。ま、いいですけど」

常連客はともかく、時々来る客がそんな事を口にしているのは耳に入っていたから

別に理不尽だとか納得いかないという気にはならない

 

むしろ、サイゾウさんには今日まで雇ってくれた感謝の方が大きい

 

「これは、今日までの給料だ。

なに、大丈夫だよ。お前の腕ならそこそこいけるからな。」

「あ、ありがとうございます。」

正直、サイゾウさんが俺をほめるなんて少し信じられない。

「ま、それはお前の目の濁りが無くなったらの話だがな」

「濁り、ですか?」

「ああ。ま、お前が自分で気付いてりゃいいんだがな」

「はぁ」

目の濁り?

ありゃりゃ、サイゾウさん気付いてたのか。

俺もまだまだ精神修養が足りないって事か

「まぁ、それがなくなりゃまた雇ってやるよ。」

 

 

「―と言われてもなぁ」

ほんの数時間前のやり取りを思い出して思わず愚痴る。

そんな事をやったところで、何も変わりはしないのに

「ま、それはともかく。何処に行くかな――――ん?」

山の中腹付近で、何かが光った

爆発―――?

「あそこには確か………軍のドックがあったハズ」

 

なら、あれは無人兵器の襲撃?

ならば―――――行くしかない

 

俺は荷物を背負いなおすと、ドックがある方へと急いだ

 

 

数分してドックの側に到着した

案の定、数キロ先からでも確認できた爆発はバッタ等による襲撃だった

守備隊の大半が既に撃墜され、バッタが基地を蹂躙する姿が一年前を思い出させる

 

「くそっ………こんなんばっかかよ」

小さく愚痴をこぼすと、俺は気を引き締めてバッタの群れへと突っ込んでいった

目的は―――”全破壊”

 

 

 

あとがき?

ども、初めまして
ケルトの三日月っちゅうもんです。

こんな駄作ですが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
んで、掲載してくださった管理人殿に感謝です。

えと……この闇達の輪舞は私の突発的な思いつき(又は妄想)の産物です。
その思い付きとは、『3×3eyesでは月に昆侖があったんだから火星にもあるんじゃない?』っていうくだらないものっす。

なお、大まかなカップリングは既に決定してまして
詳しくは秘密ですが、取り合えずアキト君はユリカ嬢とはくっつかないと言う事です。
さらに言うと、ルリ嬢でもありません。
じゃあ誰かと言われても、ソレはいえません。

次回からは、あとがきで設定や人物紹介みたいな物を
小出しにして行こうと思いますのでよろしくです。
とは言っても、すぐにネタがなくなりそうだけど……

 

最後に
ここまで見てくださった方々に最大限の感謝を!

 

 

管理人の感想

ケルトの三日月さん、投稿有難う御座います。

しかし、3×3ですか・・・とうとう作品は完結しましたよねぇ

私もこの作品は大好きなんですよ。

ただ、こうなるとアキトは不死身じゃないんですよね?

並みの人間が獣魔を使うと、精気を吸われて死んじゃうはずなんですが。

・・・その辺は、どう対処されるんでしょう、楽しみです。

 

まさか、ヒロインがパイって事は無いですよねぇ(苦笑)