なんだかんだあっても、何とかナデシコに乗り込んだアキトさん。
けど、何でバッタに吹き飛ばされた左腕が元に戻ってたりするんですか?

……考えても埒が明きませんね。
後で問い詰める事にしましょう。

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ ―闇達の輪舞
第三話:ナデシコって色々と衝撃的……って、何で貴方がここに居るの?

 

 

 

 

Akito side-

「―ふぅ。艦長も困ったものです」

プロスさんに半ば引き摺られるようにしてブリッジを出て暫くすると、そのプロスさんが疲れた様に呟いた
その左手に握り締められた胃薬の瓶はあえて無視する事にする

―それにしても、さっきのは誰だったんだ?
言われてみれば、確かにどこかで見たような気が…………ああっ!?

「ミスマルユリカか!?」

「……はい?艦長がどうかしましたか?」

俺の突然の叫び?に多少驚いた(と言うか呆れた感じがする)プロスさんが気の抜けた声で聞いてくる

「あ、いえ。別に気にしないでください」

「?はあ……」

危ない危ない。何とか気付かれずにすんだ、かな?
それにしても、ユリカがこんな所にいるとは……マズッた
アイツに関わると碌な事にならないっていうのに

こうなったら何とか理由をつけて早々にこの艦から降りなければ
俺が思い出したって知ったら、また前の様に……ってあれ?

俺、ユリカと一緒に居てどんな目にあったっけ?
あの『空港テロ』以前の事で両親関連の事意外はあんまり思い出さなかったから本格的に忘れてる――のか?

「テンカワさん。格納庫に着きましたが、どうかしましたか?」

「―へ?い、いえ。どうもしませんけど」

「それでは。あちらに居る方がパイロットのイツキカザマさんです。
彼女は先程の戦闘でエステバリスを操縦していた方でもあります」

プロスさんに促されてその方向を見ると
青いツナギの整備員が群がって調整されているピンク色のロボット……ではなく
数人の整備員と赤いジャケットを着た女性が何かを足蹴にしているところだった

「オラオラオラ!!」

「テメエ、一度ならず二度までも!」

「さあ!生まれて来た事を後悔させてあげますよ!!」

「え、と……あの人達は何をやってるんでしょう?」

目の前で起こっている何かの説明を求めてプロスさんを見ると……

「フフフフ…………ヤマダさんが『また』何かをやらかしたんですか。そうですか、そうなんですか。なら、私も相応の行動を起こさなければいけませんねぇ」

……はい。
俺は何も見ていない。誰が何と言おうが、何も見ていない。
脂汗が額に浮かぶのを感じながらもう一度さっきの集団へ目を向けると……まだ続いてるし

しかも、集団の足元から赤い液体が流れて……いや、あれも幻覚だ。誰が何を言おうと幻覚だ。

 

―で、十数分後

「え〜こちらの女性がイツキ・カザマさんで、そちらのボロ雑巾――もとい寝ている男性がヤマダジロウさんです。
二人とも腕利きのエステ乗りですので、操作や戦法などは二人……いえ、イツキさんへ聞いてください。」

微妙にいい汗をかいているプロスさんが、同じく微妙にいい汗をかいた女性―パイロットのイツキちゃんを紹介してくれた。
どうやら、さっきピンクのエステに乗っていたのは彼女だったらしい。
―うん。怪我も無いらしいので、助けてよかった。

「よろしくテンカワ君。
プロスさんが言う程じゃないけど、エステの事で分からない事は聞いてね。」

「あ、はい。よろしく。」

柔和な笑みを浮かべたイツキちゃんと軽く握手して、俺は視線を下へ―正確にはボロ雑巾になったヤマダへ―向けた。
……そのヤマダは、乾きかけた大量の赤い液体の中心で大した傷も無くピクピクと痙攣している。
―コイツ、もしかして人間じゃないんじゃあ

「一応飛び入りと言う訳ですので、テンカワさんの機体は予備機を回す事になります。
では、そろそろ食堂の方へ行きましょうか。」

「あ、はいわかりました。」

ふう、やっと食堂へ行けるのか。さて、ここ料理長はどんな人だろうな。
まあプロスさんが人材は厳選したって言ってたから、少なくとも俺より腕はいいだろうし楽しみだ。

「それじゃあ、私はコレの処理をウリバタケさん達としておきますね」

去り際に、イツキちゃんがちょっと物騒な言葉を残して
整備班長のウリバタケさん(さっき自己紹介してもらった)以下数名の整備員と
ボロ雑巾状態のヤマダを何処かへと引き摺って何処かへ行ってしまった。

一応、連行?されるヤマダに助け舟を出したかったが
プロスさんやイツキちゃんの目が俺の本能をビンビンに刺激してきたので見送るだけにした。

―それにしても、俺この人達と上手くやっていけるかなぁ……

 

 

 

あ、そういえばパイロットの方は聞いたけど食堂の方は詳しく聞いてなかったな。

「あの、食堂には何人勤めているんですか?」

「―――おお、そういえば話しておりませんでしたな。
食堂に勤めていますのは、料理長と副料理長。それに調理補助兼ウェイトレスの方々の計7名です」

「はあ……何だか、微妙な人数ですね。」

この艦の乗員って、百人を超えるんだろ?
その百数十人の食事をたった7人で賄うなんて……やっぱ、一流って呼ばれる人なんだろうな

「いえ、その……予定ではあと数名程雇う筈だったのですが」

「……なるほど」

多少誤魔化す様に笑うプロスさん
大方、目に適う人材が見つからなかったか、断られたかなのだろう。

「ですがその分、非常に優秀な方々を雇う事が出来ましたし……
まあ、テンカワさんも加わるのならば大丈夫でしょう。」

そういうプロスさんだが、その言葉は自分自身に言い聞かせている様な気がする
と、その時プロスさんの腕のコミュニケ…だっけ?が呼び出し音を鳴らした

「ああ、はいはい……っと、何ですかレイナードさん?」

『プロスさん、ゴートさんが呼んでますよ』

「おや、ゴート君が……ああそう言えば忘れてました
すみませんテンカワさん、用事を思い出したので失礼します
なに、食堂でしたらここの3区画程先にありますからすぐ分かりますよ。」

言うが早いか、プロスさんは残像を残して通路の先へと消えていった
――改めて思ったんだけど、あんたホントに一般人?

……まあ、今は食堂の方に挨拶に行くのが先か

 

 

 

「へぇ、アンタがプロスさんが言ってたコックかい」

「はい。コック権パイロットのテンカワアキトです、よろしくお願いします。」

プロスさんの言ったとおり、確かに食堂は直ぐに見つかった
夕食時の仕込みの最中らしかったが、比較的まだ楽なこの時間に挨拶を済ませようと
料理長らしき割腹のいい女性に俺は声をかけ……↑の会話に繋がる。

「コック兼って……ここは兼業で出来る程甘い場所じゃないよ。」

「いえ、俺もコックだけがしたかったんですけどプロスさんに押切られてしまって……」

「はあ、そういう事かい。プロスさんにも困ったもんだね」

パイロットとの兼業と聞いて眉を顰めた料理長(仮)も、プロスさんに押し切られた事を話すと
納得してくれたのか、苦笑しつつも肩を叩いてくれたので多少は安心できた。

「私はこの食堂の料理長のリュウ・ホウメイ。よろしく頼むよテンカワ。
それで、あとは副料理長…は食材を取りに行ってるから調理補助の……」

「「「「「ホウメイ・ガールズで〜す♪」」」」」

「うわっ!?」

他の人の紹介をしようとしたホウメイさんの後ろから5人の女の子が突然現れた。
って……この娘達、さっきまで調理場で仕込みをしてなかった!?

「おやおや、なんだいそのほうめいがーるずってのは?」

「いえ、ホウメイさんは気にしないでくださ〜い♪」

少し驚きつつも苦笑するホウメイさんに、背の低い髪をお団子っぽく纏めた娘がそう言うが
5人合わせてホウメイガールズって言われても……ちゃんと名前を教えてくれよ

「はぁ……それじゃ、後でちゃんと名前を教えておくんだよ。
お、丁度倉庫から出てきたみたいだね。藤井ちょっと来ておくれ」

「はい、どうしたんですかホウメイさん?」

ホウメイさんに呼ばれて食材を入れたダンボールを抱えた人がこっちに振り向いた
少し伸びた黒髪の下に俺と同じようなはちまきをした細目の―――って

「これが副料理長の藤井

「八雲さん!何で貴方がここに居るんですか!?」

……おや、知り合いだったのかい?」

俺の反応を見てホウメイさんが何か言ったらしかったが
そんな事を気にする余裕なんて俺には無く、一足飛びで八雲さんの所へと移動した

「や、やあアキト。こんな所で会うなんて偶然だな」

「やあ、じゃないですよ!!何で貴方が『聖地』じゃなくてここに居るんですか?」

「い、いや……ちょっと止むに止まれぬ事情があって」

詰め寄ると、バツの悪そうな反応をする八雲さん
もしかして……『また』なんですか?

「止むに止まれぬって……もしかして、今度は舞鬼さんですか?」

「ア、アキト。その『今度は』って何だよ……」

「何って……確か、3年前には葉子姉さんが」

自分で言って思い出したけど、アレは凄かった。
八雲さんに葉子姉さんが不意打ちでキスをした所をパイさんに見られて……
うう………今思い出しただけでも寒気が

「ア、アレは不可抗力と言うか……」

「あの時は、本当に酷かったんですよ?
―で、何があったんですか?」

「そ、それは」

俺の問い掛けに八雲さんが少し言いよどむ
ってことはやっぱり……

「朝起きたら、綾小路と舞鬼が……それをパールバティーが」

「…………も、いいです」

何となく、何が起こったのか分かったし
何より、顔を蒼白にして(おこり)が起こった様に震える八雲さんの反応が怖い

「あの〜、二人はお知り合いなんですか?」

「―あ、サユリちゃん。まあ、そんなところだよ。」

「へぇ〜もしかして、幼馴染なんですか?」

ピシッ!!

お、幼馴染…………た、確かに八雲さんはあんな顔(童顔)だけど
俺と八雲さんは2ピー歳も年齢差があるんだぞ!!

「いや、それとはちょっと違うんだ」

「あ、そうなんですか。」

……八雲さん、幼馴染発言を何でも無いかのように流すのは止めてくれませんか?
一応俺、ショックを受けて固まってたんですけど

「ほらそこ!自己紹介は終わったんだから何時までも話してるんじゃないよ
まだ夕食の仕込が終わってないんだから、早くしな!」

「は、はい!!」

「それと、テンカワ。あんたは……そうだね。
ちょっとどれだけ出来るか見たいから何か簡単な物を作っておくれ。」

「あ、はい。わかりました。」

「厨房は適当に開いている所を使っていいからね」

簡単な物となると……チャーハンかな?
一応、和洋中と一通りは作れるけどやっぱり自信があるのは中華だし

と、チャーハンを作る準備をしていると目の前に……え〜と、ウィンドウ?が出てきた。
しかもそれにはさっき別れたプロスさんがでかでかと。さっきの用事ってコレの事?

「ほらテンカワ、手を休めちゃだめだよ」

「あ、すいません。」

『―ナデシコの目的地を明らかにしなかったのは、様々な妨害者の目を欺く必要があったからです。』

―へぇ
そう言われれば、確かにプロスさんからはナデシコの目的地なんて一言も聞かなかったな。
てっきりそこら辺をうろついて木星蜥蜴を片っ端から殲滅するかと思っていたんだけど

『これより我々はスキャパレリ・プロジェクトの一翼を担い、軍とは別行動をとる事になります。』

『我々の目的地は火星だ!!

「……マジで?」

「ほらテンカワ!また手が止まってるよ!!」

「へ…うわっと!?」

あ、危ない危ない。チャーハンを焦げ付かせるところだった
それにしても、ナデシコが火星にねぇ…………上手く行けば帰れるかな

 

「全員、動くな!!」

「抵抗しなければ手荒な事はしない!」

と、俺がチャーハンを作り終わってそれをホウメイさんが食べようとした時
銃を構えた軍人?……が数人、入り口から一気に入ってきた。

ふと、ブリッジが映っているウィンドウを見ると
同じように数人の軍人が銃を構えてプロスさんと何かを話しているのが見えた。
―なるほど。機会を窺って一斉に占領か……なら抵抗しないほうがいいか

そう思い八雲さんを見ると、八雲さんは俺の視線に気付いて顔を軽く左右に振って見せた。
どうやら俺に大人しくしてろと言いたいらしい―――幾ら俺でもそれ位分かるのに……

 

 

 

それにしても、このまま行くと就職してすぐに失職か?

はぁ……なんだかこの頃ついてないなぁ

 

 

 

あとがき

どうも。
ちょっと前にOSの再インストールを失敗して
PCをデュアルブートにしてしまったケルトの三日月です。

ホウメイガールズの描写が……誰が誰だか分からない(泣
フィルムブックやその他色々を見て何とか書き上げ……(読み返し中)……ダメじゃん
予定では食堂での描写が多くなる筈なのに……

それと、早々に出しちゃいました♪ 現行で最強の人物その1、藤井八雲
あ、一応彼はIFSが無いので余り戦闘には参加しない予定です。

って、八雲を出したらアキトが誰の『无』かバレバレのような気が……(汗
管理人殿か代理人殿に感想で指摘されたら次回の人物紹介はアキトにしようかな

 

勝手に人物紹介その2

ミスマルユリカ
年齢20歳
地球連合大学首席で卒業、軍に奉職する前にプロスによりスカウトされる。
……と言った風に設定は全然変わっていない。
が、アキトにその存在を『ほぼ完全』に忘れ去られている為に
多分ヒロインになる事はない……と思う。

次の勝手に人物紹介はアキトか八雲という事で

 

最後に
中島様、外川様、時の番人様、覇竜王様、彼のΣ様
感想ありがとうございました。
精進しますんで、よろしければ見てやってくださいm(_ _)m

 

管理人の感想

いきなり八雲っすか??!!

えっと、ケルトの三日月さんからの投稿です。

ここで出すかな・・・この人(?)を。

それにしても、聖地で何やってんだよ・・・八雲(汗)

ま、彼女も嫉妬深い性格してましたしねぇ。

何とな〜く、アキトのご主人様が見えてきましたねぇ。

 

生き残りの三只眼全員に、僕が居る以上は・・・・ねぇ?(苦笑)