機動戦艦ナデシコ  OVERTURN The prince of darkness

第六話『「私らしく」をつらぬけるか?』








「しっかし、無茶なことさせるねぇ」
「無茶は承知です。ですが、ナデシコAと『オシリス』の完成は今回の作戦に必須なんですよ」
「………わからないなぁ。なぜ、そこまでテンカワ君たちに肩入れするんだ?」

 俺は薄い笑みを浮かべた。



「まっ、いろいろですよ」
























「よーし、期限は二週間なんだ。ナデシコ整備班の意地に賭けて俺達の艦を復活させるぞーーー!!!」



「「「「「ウィ―――――ッス!!!」」」」」







 そんな整備班を見ながら俺はため息をついた。

 未来のテンカワ達の不幸、それを聞かされて意気揚揚となるのもわかるが、俺はまだモヤモヤしていた。

 エリナの奴にケツ叩かれて統合軍へ行く事を決めてから少ししか経っていないのに状況はどんどん変わっていく。

 ヒカルは今回の締め切りまでは終わらせるという事で自宅に戻った。

 ネルガルの連中やジュン、メグミも自分達の仕事があると行って去っていった。

 次の集合は一週間後。

 それまで、俺は宙ぶらりんってなわけだ。



「はぁ………なにやってんだよ、俺は」

「だったら、仕事をあげましょうか?」

 俺が声をした方向を向くと、そこにはイネス先生と説明会にいたヒサイシ=カツミが近寄ってきた。

「実はね、わたし達は可及的速やかに解決しなければならない問題があるのよ」

「問題?なんだそりゃ?」

 俺の質問にイネス先生は腕を組みながら答えた。

「ナデシコの艦長………候補が一人しかいないのよ」

「あっ――――」

 その一言に俺は俯いてしまった。

「………そうだよな。アイツらがいないナデシコなんてナデシコじゃないもんな」

 イネス先生もため息をつく。

「それに、ルリちゃんじゃないとオモイカネとコミュニケーション取れる人なんていないわ」

「なるほど、仕事って言うのは―――――」

「そう、わたしとプロスさんと一緒にアキト君たちの勧誘に行くのよ」



「ちっ」



 わかっていた事とはいえ、俺はおもわず舌打ちをした。

 視線をそらすと、下で作業の指揮を執っていたウリバタケのおっさんが俺達を見上げている。

 当然だよな、艦長以外に命を預けられるなんていないってわかっている。



 だが、気が乗らねーんだよ。



「どうする?もちろん、無理強いはしないけど」

「ああ、俺はパスだ。悪いけど、アイツらをまた戦争に引きずり込もうなんておもわねーよ」

 おもわず、余計な事まで行っちまった。

 わかってんだよ、みんなアイツらを巻き込みたくないって気持ちは一緒なんだ。

 けど、現状はそんなこといってられない。

 それに、ナデシコがナデシコであるためにはアイツらが必要って事もよくわかってんだ!

「ふぅ、わかったわ。じゃあ、今晩でもアキト君たちの所に行ってくるわ」

 俺の気持ちをわかっているかのように、イネス先生は少しも咎めず、それだけを言って去っていった。






「………なんだよ?」


 俺はまだ残っていたヒサイシに声をかけた。


「他の仕事なら、仕事をしてみるつもりはない?」


「え?」
































 夜になって、私とイネスさんはテンカワさんの屋台に出向きました。



 おや、一人お客さんがいるみたいですな。

 仕方ありませんね、少し待つ事にしますか。

「でもプロスさん、ここまで来たけどどうやって説得するつもりなの?」

「そうですなぁ、ここはひとつイネス先生お得意の説明会でもどうですかな?」

 にこやかに言ったつもりなのですが、イネス女史は浮かない表情をしております。

 う〜む、女性のゴキゲンを取るのはむずかしいですなぁ。

 おや、屋台のお客さんが我々を手招いていますね。

「あら?」

 イネス女史も気付かれたようですな。

 私たちを呼んでいるのは、どうやらイズミさんのようですな。

 少し困りましたね、イズミさんにはまだ何も説明していませんからねぇ。

 しかし、呼ばれたのであればしかたありませんな。

 私たちは屋台に向かいました。





「へいらっしゃい!あ、プロスさんにイネスさん」

 う〜ん、相変わらずいい笑顔ですな、テンカワさん。

 でも、その笑顔が今の私たちには辛いんですよ。

「いらっしゃい、二人とも。なんにする?」

 艦長もとびきりと笑顔で注文を聞いてきます。

「では、私は醤油ラーメンを」

「わたしはねぎミソラーメンね」

「あいよ!」

 威勢良く言ったテンカワさんは、これまた手際良く麺を湯がき始めました。





「ねぇ、プロスさん」

「はい、なんでしょう?」

 横で塩ラーメンを啜っているイズミさんに呼ばれ、小皿に高菜を乗せていた私は彼女の方を向きました。

「あの事で来たの?」

「あなた、それをなぜ………いやいや、イズミさんには愚問ですな」

 うーむ、ナデシコ時代から不思議な方だと思っていましたが、まさか例の件まで知っているとは。


 どこかで電波でも拾っているのでしょうか?


 しかし、それを知った上で屋台に来たという事は私たちが来る事は予測済みだったんでしょうなぁ。

「なんですか、あの事って?」

「おおっ!ルリさん、驚かせないでくださいよ」

 突然声がした方を向くと、チャルメラを持ったルリさんが私を見上げていました。


「いやいや、大した事ではありません。今日は皆さんをあのナデシコに招待しようと思ってきたわけでして」

「「えっ?」」

「ナデシコ!?えーっ、またナデシコに乗れるんですか?」


 あっけにとられた表情のテンカワさんとルリさん、そして即座に反応した艦長に私は大きく頷きました。

「そうなんですよ。実は我が社で再びあのナデシコを復活させようという計画がありまして、そこであなた達無くしてナデシコに在らず、というわけで招待する事にしたのです、はい」

「ルリちゃんにはオモイカネの面倒を見てもらわないといけないし、ナデシコの艦長にはミスマル=ユリカしか考えられないわ。まぁ、アキト君は雰囲気の問題かしら」

「「ほうほう」」

 イネス女史のフォローも重なり、テンカワさんとユリカさんは納得したかのように二、三度頷きました。

「というわけで、形式的な物ではございますがこちらの承諾書にサインを………」


「ちょっと待ってください」

 一人納得しなかったルリさんが懐から承諾書を取り出そうとした私の手を止めました。

 マズイですなぁ、できることなら済し崩しいきたかったのですが。

「なんですかな、ルリさん?」

「仮にも連合軍とネルガルの同意でナデシコは解体されたはずです。それをどうして今になって甦らせるんですか?しかも、ネルガルの独断で」

「ああ、そのことですか………」

 私はずれてもいない眼鏡を軽く持ち上げ、意図的にレンズを光らせました。

 いや、演出というのもなかなか馬鹿に出来ませんもので。

「この件は連合軍極東方面司令官である艦長のお父上、ミスマル=コウイチロウ氏も既に承諾済みです」

「へぇ、お父様やるぅ♪」





 ………やはり、ミスマル提督はなにも話してはいませんか。

 昨日訪問したときには疲労感しか感じませんでしたからな。

 考え様によっては、未来のあなたたちは中々の親不孝者かもしれませんよ。





「ところで、わたしたちのナデシコ乗船は遊覧のためなんですか?」

 ………痛いところを突かれましたな。

 さすがはミスマル=ユリカと言ったところでしょうか。

「そんなところね。わたしの所にもお誘いがきたもの」

 どんぶりを置いたイズミさんが嬉しい横槍を入れてきます。

「他のクルーも参加するらしいわよ。リョーコとかヒカルとかね」


「そうなんですよ。ここは一つテンカワアキト、ミスマル=ユリカ両名の結婚を祝して運命の再会を果たしたナデシコでパーッとやろうじゃないかと会長が申されたんですよ!」


 私の駄目押しに艦長は瞳を輝かせました。

「なんか照れるなぁ。どんどん俺達の結婚式が豪華になっていっていないか?」

 テンカワさんも照れくさそうに頬を指で掻いています。

「もちろん、経費は全てネルガルが負担しますのでご安心下さい。先の戦争で和平を達成した最大の功績があるナデシコの艦長のためにもと奮発させていただきますよぉ」

「ねぇねぇアキト、ルリちゃん行こうよぉ♪」

「うーん、あんまり長いと困るんだよなぁ」

「いえいえ、ナデシコの完成は二週間後ですし、それから一週間くらいの旅行を計画していますで結婚式の一週間前には戻ってこれますよ」

「ただ、ルリちゃんだけはオモイカネの調整のために先に来てもらいたいんだけど………お願いできるかしら?」

 注文以来、まったく口を開かなかったイネス女史がルリさんに尋ねた。

 するとルリさんはじっとイネス女史を見、そして一瞬だけ私のほうを見てから頷いた。

「わかりました。では、今から行きましょう。オモイカネにも早く会いたいですし」

 ルリさんは少し微笑みながら、屋台の裏側に向かい、

「というわけで、わたし、ちょっと行って来ます」

 ペコリ頭を下げて二人に挨拶した。

「では、行きましょうか」

 イネス女史の一言に、ルリさんは頷き、イズミさんは無言でお代を置いた。

「ちょ、ちょっとまってください。先ほど注文したラーメンはどうするんですか?」

 私が慌てて尋ねるとイネス女史は鼻で笑い、テンカワさんの茹でる麺を見た。

「話に夢中になって茹ですぎた麺のラーメンを食べたいのなら、待っておきますよ?」

「あっ!?」

 テンカワさんが鍋を見ると、見た目にもふやけた二人分の麺が茹っていた。





「ふっ、無様ね」



 それは作品違いますよ。


















「……………大人ってズルイですね」

 荷造りを整えネルガルから呼んだ車の中、ルリさんが唐突に口を開きました。

「はて、どういうことですかな?」

 バレバレとわかっていたものの、わたしはとぼけました。

「いくら提督でも、遊覧のためにナデシコの復活なんて認めないはずです。可能性があるとすれば表沙汰に出来合い事情、しかも軍を動かせない事態……………戦争ですか?」

 さすがはルリさん、するどいですなぁ。

「しかも、ナデシコを復活させるのであれば最初にユリカさんやアキトさんに相談するはずなのに、イズミさんたちのほうが先にお誘いがあったみたいですね。これは、マシンチャイルドかA級ジャンパーを遠ざけたかった背景があるんじゃないんですか?」

「いやいや、参りましたな。実は、元木連の草壁中将を中心とした『火星の後継者』という連中がクーデターを起こそうと計画中なんですよ。ただ、、、たしかに他のクルーには声をかけたのですが、イズミさんがこの事を何故知っているのかというほうが不思議なんですよ」

 私の言葉に、イズミさんはポロロ〜ンとウクレレを鳴らしながら不気味な薄笑いをしただけでした。

「………まぁ、それは置いといて、、、どうするルリちゃん。アキト君や艦長たちにこの事を教えるの?」

「アキトさんならともかく、ユリカさんは教えなくても気付きますよ。ただ、ネルガルが隠そうとしている真実だけはまだわかりませんが」

「真実なんて知らなくて良いわ。わたしたちはその真実を曲げようとしているんだから」

 外の流れる夜景を見ながら、イネス女史はルリさんに諭すように話した。

 ですが、オモイカネと接する事によりいつかは未来の歴史を垣間見る事になるでしょう。

 その時、この幼い少女はどう思うんでしょうか。





 ただ、それだけが気になりました。

























次回予告(アカツキ=ナガレ口調)


 さぁみんな、次回予告が当てにならないのがわかったかな?
 予告は作者が適当に書いているから、予告と本編が違うことだってあるんだよぉ

 さて次回はユーチャリスメンバーとシバヤマ達のお話だ。
 不確定要素が多い連中の事だから、みんなちゃんと読んでくれよ?

 そんなわけで、留年が確定した作者が送る次回、機動戦艦ナデシコ OVERTURN The prince of darkness
『ステキなボクらの関係』をみんなで見てくれよ♪


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)

 ごめんなさいっっっ!!!(平謝り)



 次回予告に書いた通りです、自爆しました(涙)
 ユーチャリスのユの字も出てないやん!
 あうぅぅぅぅぅぅぅ、、、、、予告を書いている皆さん、やっぱり次回のネームを完璧にしてから予告は書くもんですね(▽;

 さて、私生活では留年確定!!!!!
 ・・・・・・・・・・・・・・ふっ(遠い目)

 いやいや、最近、世間のキビシサを身をもって感じているような気がしますよ
 ま、まぁ、おれっちが勉強していないのが悪いんですが。はっはっは・・・・・はぁ

 そんなわけで、みなさんはおれっちみたいに堕落した生活をしないようにしてくださいっ!!(号泣)

 ああ、進級決めたトモダチが妬ましいぃぃぃ(怨怨怨)

 それじゃ、次回でお会いしましょう
 では!!!

 BGM:稲葉浩志『冷血』

 

 

管理人の感想

きーちゃんさんからの投稿です。

そうですか、アキト(現在Ver)達をナデシコに乗せて隔離しますか。

確かに、それも有効な手に思えますね。

ま、ルリが何かを感じていますが・・・アキト(未来Ver)の映像を発見した時、どんな反応をすることやら。

続きが非常に気になりますね。

 

PS.

予告は難しいですよねぇ

私も時ナデ本編では、最後の最後になるまで、予告はしませんでしたし(苦笑)