機動戦艦ナデシコ  OVERTURN The prince of darkness

第二十二話『作戦名は「僕たちの未来のために」』













「・・・・・眠そうだな」


「・・・・・そっちもな」


「・・・・・理由はお互い聞かないでおこうか」


「・・・・・ああ、そうしよう」


「「・・・・・・・・・・はぁ〜〜〜」」



『どうしてそんなに眠いんですか?(わくわく♪)』





「「おまえは黙っていろッ!!!」」





『ううっ、こんなにも尽くしているのにぃ。

 いつも不眠不休でがんばっているのにぃ。

 あなたがたの命令には逆らう事なくがんばっているのにぃ。

 それでもあなたたちはわたしを虐げると

 言うのですかぁ!??

 私―――――そんな愛はいらないっ(涙)』





「・・・・・いっそ、ぶっ壊してやろうか?」


「あんたにまかせるよ」



















「ショートコントは終わった?」



 ブリッジ下でラピスと座っているカツミさんが痛烈なツッコミをくれた。



「ああ、どっと疲れた。

 ―――――さて、ナデシコが飛ぶまであとどのくらいだ?」


「ちょっとまって。

 ラピス、教えてあげてごらん」


「うん」



 素直に頷いたラピスは俺たちの目の前にウインドウを開いてくれた。

 いや、本当に素直だなぁ。

 俺が面倒を見ていたラピスはここまで素直になるまで結構時間掛かったんだけどなぁ。



「4分前か。カツミさん、ナデシコのジュンに繋いでくれないか?」


「了解。

 ナデシコ、アオイ副艦長を」



 すぐに開かれたウインドウには、緊張したジュンの姿があった。



「ユリカたちの調子はどうだ?」


『ああ、テンカワか。

 ユリカとイネスさんは展望室で用意を進めている。

 こっちは定刻通りにいけるはずさ』


「そうか。

 すまないな、こっちのユリカにジャンプをさせるわけにはいかないからな」


『そのあたりの話はイネスさんから聞いているよ。

 ただでさえ、一隻の戦艦をジャンプさせるのには疲れるんだろ?

 僕の見た感じではわからないけど、未来のユリカは生体ボソンジャンプするだけでも相当の負担になるって。

 それよりも、テンカワは大丈夫なのか?』


「ジャンパーもいろいろと種類みたいのがあるのさ。

 俺の事は心配しなくていい。

 ただ、そっちに置いてきたユリカのことをよろしく頼むな」



 俺の頼みに、ジュンは渋い顔をする。



『よろしくっていっても、こっちのユリカがジャンプをする間に自分が艦長をするって聞かなかったんだよな。

 僕とアカツキさんとエリナさんでなんとか説得したけど、夫だったらしっかりと言い聞かせておいてくれよ』



 まぁ、ユリカらしい発想だな。



「ユリカさんは相変わらずだな」


「言うなよ。

 じゃ、火星で会おう」



『了解。

 それでは、シバヤマ艦長たちもご無事で』


「ああ、こっちはのんびりとやらせてもらうさ」



 ジュンの敬礼にシバヤマが敬礼で返し、ウインドウは閉じた。

 目の前にあるのは、メインモニタに映るナデシコの姿だ。



「定刻です。

 ナデシコ、ジャンプフィールドを形成し始めました」



 カツミさんの報告を裏付けるように、ナデシコの周りにチューリップクリスタルが撒かれ、虹色の光が展開し始めた。



「さぁ、いってこい。ナデシコ!!」




 ―――――俺の言葉を聞き届けたかのように、次の瞬間、ナデシコは姿を消した。


































「まさか予告もなしにナデシコで視察に来るとは夢にも思っていませんでしたよ、ネルガル会長」


「そう邪険にしないでくれたまえ。

 火星極冠遺跡の調査にはネルガルも予算を割いているんだし、少しくらい見学させてもらってもいいじゃないかぃ?」



 地球と木連のつくる統合軍が暫定的に管理する火星極冠遺跡。

 だからだろうね、まさかここの責任者として木連の南雲義政が出てくるとは思わなかったよ。

 たしかに統合軍の主権は地球側に利がある。

 いくら統合軍結成の席からネルガルが弾き出されていたとしてもそれくらいの情報は入るさ。

 そして、その時に交渉でもあったのだろうね。

 軍統率は地球側に譲歩してでも火星を木連が握りたかったのだろう。

 まぁ、地球に比べたら木連のほうがボソンジャンプの知識が豊富だし、研究を進めるのならここほど最適な場所はないからね。



 僕とエリナ君、プロス君、ゴート君で極冠遺跡を尋ねると、すぐに統合軍での採用が決まっている

 ステルンクーゲルの大群に囲まれてそのまま応接室に連れていかれた。

 連行されたと言ったほうが正しいのかな?

 上空で待つナデシコも何機ものステルンクーゲルが包囲していた。

 連中にとっちゃいきなりナデシコがボソンジャンプしてきたんだから慌てたんだろうね。

 思わず交戦状態になろうとしたところを僕が必死に訴えて止めた。

 まぁ、そんなことじゃ信用されるわけも無く、ナデシコはいまでも厳重に包囲されている。




「でも自分が乗ってきた戦艦が銃を向けられているのを見るのも、なんか心苦しいね」


「でしたら、前もって連絡くらいはしていただきたい。

 それならこちらもこのような真似をしなくても済むのですぞ」



 前もって連絡したら、適当な理由を並べて視察を拒否するくせに。

 という本音を飲み込みながら、僕は用意された緑茶に手を伸ばした。



「まぁ、こうやって警戒されるのは当然でしょうな。

 うちの会長がどうしてもここの遺跡を視察されたいと申しまして、はい。

 私どももどうにかスケジュールを調整してこちらへお伺いしたのですよ」


「ですが、我々のスケジュールもある。その辺は考慮していただけなかったのですかな?」


「そうでしたな、そこまでは頭が回りませんでした。

 以後気をつけさせていただきますよ。

 我々も、出資をしている立場なのでここの施設がどう運営され、どのような成果を収めているのかをこの眼で確認したかったもので。

 なにしろそれなりに莫大な予算を献上させていただいていますからなぁ」



 プロス君の言うとおり、ネルガルも決して少なくない予算をこの施設に割いている。

 元々、莫大な予算が掛かる研究であるために、向こう側もすでに来てしまったネルガルをそう簡単に追い返しはしないだろう。

 その予算の何割かは火星の後継者の資金になっていると思うと腸が煮えくり返る思いがするけどね。



「・・・・・わかりましたよ。

 ですが、機密に当たる部分も存分にあります。

 そこまで案内はできませんけど、よろしいかな?」


「こっちも押しかけて来た様なものだからね。

 それくらいは分かっているつもりですよ」



 強烈に冷たい視線を感じながら、僕は両手を軽く挙げて答えた。























「ネルガルか?」


「そうです、閣下」



 施設の特区に設けられた我が主、草壁春樹閣下は腕を組みながら小さく頷いた。



「現在、ネルガル会長のアカツキ=ナガレと部下の者共は南雲の案内で施設内を視察中であります。

 で、ナデシコは暫定連合軍の機動兵器が包囲してございます。

 彼奴らの狙いが何であれ、そう簡単には事を起こさないであろうと考えられます」


「だが、貴様等がネルガルのシバヤマ=リョウジを取り逃がしたおかげでシラヒメでの一件はネルガルに伝わったであろう。

 報道に出ていないと言う事はそれを証明する証拠を持たなかっただけのことであり、ただの偶然に過ぎない。

 謎の戦艦と機動兵器の事だけで言い訳できる事ではないぞ!

 ・・・・・・山崎博士、やはりあれはネルガルの戦艦なのかね?」


「これまでの情報だけだと分かりませんよ。

 白い戦艦で強固な歪曲場を多連装重力砲を装備している戦艦。

 現在北辰さん達が建造が確認したネルガルのナデシコBと呼ばれる戦艦もあれほどの能力があるとは思えません。

 もちろん、クリムゾングループにもあのような戦艦を造れるとは思えませんしねぇ」



 山崎の言うとおりだ。

 実際、地球に潜入した際に我がナデシコの後継と目される戦艦の建造の情報を手に入れた。

 それも遺伝子操作被検体のヒサイシ=カツミを拉致した際に手に入れた情報だ、かなり新しいもののはず。



「なんにせよ、その戦艦にシバヤマが救出されたのであればネルガルとの繋がりがあると考えて当然だろう。

 その上、今こうしてネルガルがナデシコでこの地に現れている。

 先の戦争で苦汁を舐めさせられた奴らにそう何度も出し抜かれる我等ではない!

 シラヒメから引き上げた実験施設のアマテラスへの移動の準備もまだ十分には出来ていないのだ。

 今回の事は新たなる秩序をつくる大事の前の小事としてもらいたいものだな」


「ネルガルの連中を牽制するだけでしたら南雲さんだけでも大丈夫でしょう。

 なんで、僕は研究所に戻らせてもらいますよ。

 せっかく北辰さんにかわいい実験体をつれてきてもらったんだから可愛がってあげないと可愛相ですからねぇ」」



 そう言い残し、山崎はひどくうれしそうに部屋を出て行った。



「やれやれ、彼は相変わらずだな」


「ですが、彼奴の研究が実入り多いのも事実。

 山崎もまた彼奴の我道を行く者でございます」


「まぁ、彼も大儀の為には必要な人材。

 これからも我等のために励んでもらわないとな。

 で、貴様はどうするのだ、北辰?」



 我はかぶっている編笠の鍔を軽く下げ、口元を歪めた。



「我もまた我の道を行くのみ。

 もしネルガルが攻勢に出るのであれば必ずあの男も出るはず。

 次こそ決着をつける所存にございます」


「うむ、その時は必ず成し遂げてもらおう。

 全ては世界の未来のためにな」


「御意。では」



 我は一礼し、閣下の部屋を後にした。






「隊長、どうなりましたか!?」


「慌てるな、しばらくは高みの見物よ」



 待機していた部下を眺めながら、我等は格納庫に向かった。



「我等の目的はThe prince of darknessとの決着をつけるのみ。

 ただ―――――」


「ただ?」









「戦闘となれば、あの戦艦と機動兵器は出てくるかな?」











































「ナデシコがボソンジャンプして、もう1時間半ね」


 ピッ


「そうだな。とりあえず、轟沈していければいいけどな」


 ピッ


「ナデシコには優秀なクルーがたくさんいる。

 もし戦闘になっていたとしてもそう簡単にはやられていないさ」


 ピッ


「よし、リーチ!」


 ピロリ〜ン  ピッ


「随分と、自信がお有りね?

 あ、それポン」


「うそ、一発が〜」


 ピロリ〜ン ピッ


「信頼しているって事か?」


 ピッ


「仲間を信頼するのは当然だろ?

 俺はそうしてナデシコで生き残れたんだ。

 これは通るか?」


 ピッ


「それロ〜〜〜ン♪」 「通りませんよ、テンカワさん」



 パッパラパッパッパーーーーー♪





『撥でラピスが国士無双、カツミさんが大三元。

 テンカワさん飛びました。弱すぎです!!』



「なんだと!?

 そんな役をダブロン!??」



「いや、捨て牌でそれくらい読めよ

 あ、この場合はリーチかけても手牌がバレバレだから逆効果だぞ、ラピス」











 わたしたちの行動時間は決まっていない。

 ヘタに時間を決めておくよりも、ナデシコも知らない時に襲撃をかけたほうがその時のナデシコの対応も牽制になる。

 計画はナデシコも知っているけど、敵を欺くにはまず味方から。

 ほんのちょっとの差しか出ないと思うけど、はらえる注意は払っておいた方がいい。

 だから、わたしたちは麻雀で半荘やってから行動を開始する事にした。

 ちなみに、麻雀卓なんて戦艦に用意していないからハンニバルに頼んでウインドウでプレイ。

 ただ、ウインドウは反対側からでも他の人に見えてしまうからみんな四方の壁を向いてやった。

 端から見たら、結構シュールな光景かもね。

 レートは点百。

 ラピスが負けた場合はわたしとリョウジの折半払い。

 でも、良いお小遣い稼ぎになったわ。

 あ、いくらハンニバルが介入しているからってイカサマなんてしていない。

 ―――――証拠なんて、どこにもないけど(にっこり)





 ちなみにラピスに麻雀を教えた理由は、わたしの趣味。













 結局、テンカワさんが弱いせいで
「あまりやった事がないんだ!」南二局で終わったけど、いい時間になった。

 わたしたちはオペレート席、リョウジとテンカワさんは各自のエステバリスに、そしてラピスは主のいないキャプテンシートに座った。



「こっちの準備はOK。

 あとはそっち待ちよ」


『別に俺は忙しくないからな。

 出発のタイミングはテンカワに任せる』


「だそうですよ、テンカワさん」


『・・・・・ごめん、さっきの負けがどうにも頭から離れなくてイメージングが』


「言い訳しないでさっさとしてください」


「・・・・・はぃ」



 ここでは距離が有りすぎるためナデシコとも通信が出来ず、火星の状況が把握できない。

 よって、まずユーチャリスを火星のボソン粒子探知レーダーの有効範囲外にボソンジャンプ。

 ユーチャリスはステルスで火星に近づき、頃合を見計らってテンカワさんが極冠遺跡の施設にジャンプ。

 所属不明の機動兵器として施設とナデシコに攻撃を仕掛ける。

 もし、火星の後継者たる証拠を見つければ次の作戦へ。

 見つからなかった場合はユーチャリスに帰還してそのまま離脱。

 その場合でも、なんだかんだと口実を並べて査察を入れればなにか出てくるはず。

 ―――――これじゃ、わたしたちがテロリストね。










「そうそう、不足金はキッチリと回収しますから、ユリカさんとでも相談しておいてくださいね。テンカワさん」



「・・・・・・・・・・うぐぅ」





















次回予告(ウリバタケ=セイヤ口調)


さぁ今回読んでくれた良い子のみんな、賭け麻雀は悪い事だからマネしちゃだめだぞ。
オジサンとの約束だぁ・・・・・って、俺はまだ若ーーーーーい!!!

そして、負けた気持ちを切り替えられず火星で突貫するテンカワの姿を、ああ、君は見たか!?

最近、カロリーメイトにハマッている作者が送る次回、機動戦艦ナデシコOVERTURN The prince of deakness
『戦場はこの胸の中に』を、みんなで見よう!!


こんちは、きーちゃんです!

え〜、予告でも言いましたが『賭け麻雀は犯罪です!!』

さて、話は変わりまして(早っ)最近、奇妙な生活をはじめました。
朝食・・・カロリーメイト&野菜ジュース
昼食・・・カロリーメイト
夕食・・・カロリーメイト&酒
・・・・・いや、しばらく知人の猫を預かっていたんですよ。
んで、料理をしようとすると、いやぁ、台所を荒らす荒らすッ(怒)
最後には、底の深いゴミ箱の中に落ちるしっ!!
でも、外食するほどの余裕が懐にあるわけが無く・・・・・まぁ、そういう状況なのです(涙)

・・・・・・・・ギャンブルに走るかな?(キラーン☆)
でも、以前、興味本位で5千円握り締めてパチンコ屋さんに行って40分でスッてしまって以来、大嫌いになったしなぁ(ぎゃふん)

まぁ、しばらくこのスタイルで生きていこう(遠い目)

それでは、またお会いしましょう。
では!!!

 

BGM:稲葉浩志『JEALOUS DOG』

 

 

代理人の感想

何がなんだかわからない〜♪

まぁ、戦闘前に麻雀打ってるとこなんかはある意味非常にナデシコらしいんですが(爆)。

 

 

>カロリーメイト

あまり長く続けてると消化器系が弱るんで、沢庵+御飯とか、せめて重湯とか(爆)に切り替えたほうがいいですよー。

抵抗力も落ちるらしいですし。