ナデシコINゴーストスイーパー
第三話
西欧の魔王ドクター・グラシスの挑戦

先日の共同作戦から数日が過ぎた。
あの後俺は舞歌さんの友人らしい御統ユリカという人になぜか追いかけられた。
彼女いわく「あなたはユリカの王子様なの!!」ということらしいが、いくら危ないところを俺がかばったとはいえなんでそうなるんだ?
その後数時間に渡り彼女と俺の鬼ごっこが続き、なんとか舞歌さんの事務所にたどりついたところ、なぜか舞歌さんと枝織ちゃんの機嫌が悪かった。
まあ、それはさておき今日はバイト代が出たので食料品を少し買いだめしにスーパーへ行った。
自慢じゃないが俺は自炊して暮らしている。コンビニなどで弁当やインスタント麺を買うより安く済むし栄養バランスもとれるしな。
買い物を終え、スーパーを出てアパートへ帰る途中で俺は一人の女の子と出会った。
夜だったし女の子の一人歩きは危ないだろうと思い俺はその女の子に声をかけた。
「こんな時間にどうしたんですか?道に迷ったなら近くの交番まで案内しましょうか?あ、俺は天川アキトといいます。」
ヴュウウムッ、ガシッ
いきなり俺はその女の子に両腕をつかまれた。
「あ、あの、ちょっと?!」
その時俺は背後に人の気配を感じ振り返った。
そのとたん俺は気を失った。
気を失う前に見たのはニヤリ笑いを浮かべながらロングコートをはだけさせた老人の姿だった。

翌日、東舞歌除霊事務所にて…
「ドクター・グラシス?!…ってあの錬金術師の?!生きてたの?」
「そうなんだよー。古代の秘術を使って不死の身体になったはいいけど、ここ百年ほど姿をくらましてたでしょー。それが今日本に来てるんだよー!」
「ふーんどうしてそんなこと知ってるのよユリカ?」
「んとねーこないだ偶然空港で会っちゃったんだー!!サインもしてもらったんだよー!」ずるっと椅子から滑り落ちる舞歌。
「錬金術師としてはすごく有名人なんだもん。貴重でしょー。」
「……有名なら何でもいいのね。」
「そんでねー。大変なんだよ舞歌ちゃんー!!」

ユリカの回想…
「うわーい、ありがとうございますー。」
「いやいや、はっはっはっ。」
「日本には何しに来たんですかー?」
「ふむ、それは秘密なのじゃが。……ある秘法を完成させての。それを試す場所に日本を選んだ…とだけ言わせてもらおう。」
「へー、どんな秘法なんですかー?」
「ふむ。それは秘密なのじゃが、魂を交換し他人の肉体と能力を奪う術…とだけ言っておこう。」
「ほえー。すごーい、誰の身体をもらうんですかー?」
「ふむ。わしが求めておるのは強力な霊能力を持つ人間…とだけ言っておこう。――おおそうじゃ!お嬢さん、そういう人物に心当たりはないかね?」
「えー、ありますよー!!」
回想終了…

「んで、舞歌ちゃんのこと洗いざらい教えちゃいましたー!!ここは危険だからはやくにげてねー!!」
「こらっ!!」額に青筋を浮かべ怒る舞歌。
さらっと受け流し帰っていくユリカ。
「舞歌ちゃんたら怒りんぼさんなんだからー。せっかくユリカが教えたげたのになー。」
自分のせいなのだがユリカには悪意がない分余計にタチが悪い。
所変わってドクター・グラシスの隠れ家
「――というわけでだ、君は光栄にもこのドクター・グラシスの道具に選ばれたのだよ。」
「待て!そんなこと光栄でもなんでもない!!」
「まずは君を利用して東とやらの能力をいただくとしよう。わしの秘術と霊能力が合体すれば、わしは神に一歩近づくのだ!」
「なんだって!?舞歌さんに手を出すな!!」
「若いのになかなか肝がすわっとる。じゃが少し黙っていてもらおう!」
グラシスがロングコートを勢い良く開き、その胸板に描かれた五芒星の魔方陣からブレ○トファ○ヤー、もとい怪光線が放たれアキトを襲う。
バチバチバチバチッ
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
「よし!人格交換を始めるぞ!終わったらわしが戻るまでこやつを逃がさぬようにな。」
「く…」
「イエス。ドクター・グラシス。」
人格交換マシンにアキトとグラシスが座るとアンドロイド・サラがスイッチを入れる。
ガチャン ヴゥゥ―――ン ビュウウゥゥーン シュウウウ―ッ
(アキト入りグラシス略してAG)「げっ!!」
(グラシス入りアキト略してGA)「…無事入れ替わったようじゃな。」
GAをサラが、がしっと捕まえる
「ドクター・グラシスの命令により、逃がさないようにします…!」
GA「いやそうじゃなくて…、ってこら待つんじゃ若造!!逃げるな!」
AG「待てと言われて誰が待つか!」
AGが走ること数分…
「地下鉄のトンネル…!!とにかくここから出て舞歌さんに知らせて、なんとか元の身体に…」
「人格を交換したじゃろうが!わしがグラシスだっ!「あっ」早くあやつをつかまえろ!!」

数分後、東舞歌除霊事務所…
ピルルルッ ピルルルッ(電話)
カチャ『はいっ、東舞歌除霊事務所です!』
AG「あっ、枝織ちゃん!?」
『は!?誰ですか?』
AG「俺だよ、天川アキト!!」
『…どうしたの、その声、風邪でもひいたの?』
その時AGの背後にサラが迫る
「うわあっ!!」
キュイ―ン ズギャアッ
サラの右ストレートが公衆電話を破壊する

そのころの東舞歌除霊事務所
『切れちゃった。どうしたんだろ?』
枝織の背後に魔方陣の描かれたビンを持ちニヤリと笑うGAがいた。
『へっ!?』
パシュウッ
ビンの中に枝織は閉じ込められてしまった。
その頃舞歌はシャワーを浴び終えてシャワールームから出てこようとしていた。
キュッ(蛇口を閉めた音)
バスタオルで体を包み出てくる舞歌。
「枝織ちゃーん、冷蔵庫のビールとってくれない?」
と、言いながら出てきたらGAがいた。
「あれ?アキト君?」
GA「ビールなら俺が取ってきますよ。一本でいいですか?」
「え、ええ…」
GA「(…と油断したところを…)」振り返り背を向けている舞歌に襲い掛かろうとする、しかし…
「なるほど!アキト君を乗っ取って次は私って訳ね、ドクター・グラシス!!」
GA「なにっ!?」
ぶんっ バキャアッ
舞歌の振り向き様の飛び膝蹴りがGAの左頬にクリーンヒットする。
GA「ぶっ!!なっなぜだ!?なぜわしだと…!?」
頬をさすりながら起き上がるGAに舞歌が言い放つ。
「バスタオル一枚の私を見てあの純情でウブなアキト君が顔を真っ赤にしてうろたえないなんて、物理的にありえないからよ!!」
GA「ぶ…物理的にありえないっ!?よくわからんがしまったああっ!」
「………」あきれる舞歌。
GA「だがわしにはまだ奥の手がある!!くらえいっ!」
ばっ 勢い良く着ているTシャツを捲り上げるGA
「……!?(あら、結構引き締まった身体してるわね、アキト君って。これで中身も本物のアキト君ならな…。)」
GA「あ、そ、そうかこれはわしの身体ではなかった…!きょ、今日のところはひきわけじゃなっ!!また会おう東くん!!」
カチッ GAが手にしたスイッチを押す。
ビュン!! アキトとグラシスが入れ替わり…
「――!!元にもどったのか!?」元に戻ったアキト。だが…
「クサイ芝居したって無駄よっ!!」手に霊力を溜め必殺モードの舞歌。
「え……って舞歌さんなんて格好をーーー!!」
「…って本物のアキト君!?」
ようやく気づく舞歌だが、時すでに遅く振り下ろされた拳は見事にアキトのテンプル(こめかみ)に打ち込まれていた。
ズバキャアッ
「ウギャアアァァッッ!?」
「あー、アキト君しっかりしてぇぇっ!!」

その頃グラシスは…
ズガッ グアシャァッ バキッ 
「やめろ!サラわしじゃ!!わからんのかっ!!えーいっ東舞歌!!いつか必ずこの借りは返してやるからなー!」
サラにえんえんとド突き倒されていた。
不老不死とはいえ流石にきつかったらしく回復に数週間かかった。
後日アキトは枝織と舞歌に看病されていた。
枝織が手料理を作り、なぜかナース服を着た舞歌に身の回りの世話をされ、どこからか聞きつけたユリカの手料理を食べさせられ回復が更に遅れた。
その間舞歌が「身体を拭いてあげる」とか「お風呂私が入れてあげる」とかどこか血走った目で言っておりアキトは貞操の危機を感じていたというのは余談である。


あとがき
試験終わってないのにこれをかいてしまった馬鹿混沌の覇王です。
今回ドクターカオスとしてグラシスを出してみました
候補はフクベ、ムネタケ父もいたんですがやっぱヨーロッパということなんでグラシスにしました。
それにしても毎度の事ながら短い。
どうも長く書けないんですよね…はあ(溜息)