ナデシコINゴーストスイーパー
第四話
ケーキ&キス騒動

前回結構ずたぼろな目に会ったドクター・グラシス。
彼は今、安アパート「幸福荘」にて東舞歌への復讐のためとある悪巧みを考えていた。
その悪巧みとは…

ドクター・グラシスの部屋
なぜかケーキを作っているアンドロイド・サラ、その出来栄えはなかなかに見事だ。
「――作業完了しました。ドクター・グラシス。」
「うむ。なかなかの出来じゃ、サラ。すぐに包装して東舞歌の事務所にとどけるのじゃ。」
「イエス、ドクター・グラシス。」
小さな試験管を手に取り語りだすドクター・グラシス
「くっくっく。古代より伝わる暗殺用魔法薬。『時空消滅内服液』。作るのに苦労したわい。」
グラシスの脳裏に東舞歌への恨み(前回参照)。
「東舞歌め…。小娘の癖に、魔法科学を極め千年生き続けたわしを愚弄しおって……!その罪、死を持っても償えぬ!!」
徐々にテンションが上がっていくドクター・グラシス、歯を食いしばり、涙を流し、青筋を浮かべている。
「完全にこの世から消えてもらうぞ!!過去からも未来からも…!!それほどまでに恐ろしい『時空消滅内服液』飲んだらどーなるかというと、これがもースゴい!!時空から因果を…あれ?サラ?」
サラが出て行ったことに気づかず力説していたグラシスだが、ようやくいない事に気づいたようだ。
その頃サラはケーキを抱えて舞歌の事務所へてくてくと歩いていた。
グラシスはなんかとても空しくなったらしく、無言で体操座りしながら野球中継を見ていた。その背中は煤けていた。

翌朝、東舞歌除霊事務所…
一仕事終えて事務所に帰ってきた舞歌達がいる。
「ふー、今回の仕事はちょっときつかったわね。」
『枝織、お茶いれてくるよ。』
「いくら、土地が無いって言ったって、供養もしないで墓場に家なんか建てないでほしいわね。」舞歌が愚痴をこぼしている。
一方アキトは無言で荷物を降ろし頬を何故か赤くしながらぼうっとしている。
「今回の仕事は記憶に残ったなあ…」
どうやら仕事の事を思い出しているようだ。その仕事内容とは…

アキトの回想…
「アキト君!霊の数が減ってきたわ!後少しよ!」
「舞歌さん!気を付けて!床が崩れそう…!!」
アキトがそういった瞬間、バキャッと床が抜け二人そろって落っこちる。
地面につくと同時にアキトの頬に舞歌のくちびるが触れる。いわゆる「ほっぺにチュッ」というやつである。
それに舞歌は気づかず起き上がる。もし気づいていれば仕事そっちのけでアキトに襲い掛かるだろう。
「――!骨つぼ!これが原因ね!」
舞歌は立ち上がり護符を構え呪文を唱える。
「眠りを妨げられし者たちよ…!怒りを鎮め彼岸へと帰りたまえ…!!」
浄化されていく霊たち、その裏でアキトはぼうっとしていた。
「(く、くちびる。舞歌さんのくちびるが俺の頬に…)」
回想終了…

「(やわらかくて、ソフトで舞歌さんの呼吸の感触が…うう、どうしても思い出してしまう。)」
頬をおさえ赤い顔でぼうっとしているアキト。
「…どうしたのアキト君?熱でもあるの?(頬が赤く染まったアキト君…なかなかにいいわね)」
舞歌もなにやら妄想し始めたようだ
一方枝織は舞歌とアキトの分のコーヒーを淹れていた。
『んーと、舞姉さんがお砂糖なしでぇ、アー君がお砂糖一つ。えーとお菓子は…ん?』
ふとテーブルの上を見ると『うわぁ、きれいなケーキだぁ』昨夜サラの作ったケーキがあった。
『お茶が入ったよー。』
「ありがと、枝織ちゃん」
「(舞歌さんのくちびる…くちびるが)」
アキトはまだトリップ気味のようだ
「おいしそう。どうしたのこのケーキ?」
『え?舞姉さんが買っといたんじゃ…?』
「知らないわよ私。アキト君じゃないの」
「………」
アキトは上の空で聞こえてないようだ。
「違うみたいね。」
『じゃ、誰が?』
ケーキの匂いをかぎ始める舞歌
「!香料に混じってかすかに何かが匂うわ!…これは呪術に使う魔法植物と薬品の匂いだわ!何処にあったのこのケーキ!?」
『だ…台所だよ…あのね…枝織てっきり…』
「まあ、食べないで捨てたほうがよさそうね…。」
そう言ってアキトを見てみるとボケ―っとケーキを食べていた。
『! アー君!?』
「ん、どうしたの枝織ちゃん?…!?」
アキトがいきなり苦しみだす。
『ああっ吐いて!!吐き出しちゃって、アー君!!』
「このテの薬はいったん身体にはいったら簡単には出てこないわ!そこのビンを取って!」
そう言ってビンの中の薬を一さじアキトに飲ませる。
「呪術の効き目を遅らせる薬よ!一時的だけどしばらくは抑えられるわ!」
『誰かが舞姉さんに毒を盛ろうとしたの!?』
「そうらしいわね。」
「毒!?誰がそんなことを!!」
「アキト君、落ち着いて!私のことより自分の心配をしなさい!今調べるから待ってて!魔法薬だったら何が起こるかわからないから!死ぬだけならまだしも場合によってはゾンビになったり、化物として永久に生きる羽目になったり、ってこんな説明をしてる場合じゃないわ!早く解毒剤を!!」
『ごめんね!ごめんねアー君!!枝織…枝織!!』
「枝織ちゃんは悪くない!俺が悪いんだ!でも体をゆするのはやめてくれぇっ!」

その頃、安アパート「幸福荘」ドクター・グラシスの部屋
グラシスがなにやら説明をしている、どうやら「時空消滅内服液」の説明のようだ。
「人間というのはそもそもこの世に縁会ってうまれてきたわけじゃが…この薬にはその縁を断つ効果があるのじゃ!早い話がその人物が初めから生まれてこなかったことにしてしまうのだ!東舞歌が生まれなければ、わしがあやつのためにひどいめに会うこともないし、復讐のためにこの安アパートで生活することも無くなる。歴史そのものが変わるのじゃからな。故に家賃を払う必要もなくなるのだよ君!」
「ンな事はいいからさっさと家賃払いなさい!」
ご大層な説明をしていた理由は家賃の支払いを避けるためだったようだ。
「やれやれ、これだから凡俗な人間はこまるのう。いいかね、何度も言うが…」
ドカッ バキッ ゴシャッ ザシュウッ
…しばらくお待ちください…
「すんません、後一日待ってください、お願いです。」
「ふん、最初からそういやいいんだよ!!」
西欧の魔王ドクター・グラシス&その最高傑作アンドロイド・サラ、大家の田中よね(85)にぼろ負けする。

元に戻って東舞歌除霊事務所
「……それじゃケーキの中にその…」
「『時空消滅内服液』効能は今言った通りよ!」
「じゃ、早く解毒剤を…。」
「――そんなものこの世に無いわ。」

「解毒剤ないの?」
「無いの。」
「じゃあ、駄目じゃないですか!」
「落ち着いて!解毒剤は無くても助かる方法が無いわけじゃないの!」
「どうすればいいんですか?」
「元に戻るには、この世との結びつき…つまり縁を強めるしかないわ!ケーキを食べる前24時間以内で強烈に印象に残っていることは何か無い?」
そういわれアキトの脳裏にはあの「ほっぺにチュ」が浮かんだ。
「……!あ…あります!」
「じゃあ、それを再現すれば助かることができるわ!」
「えっ!そんな、ま、舞歌さんに頬にキスしてくれなんていえるわけ無いじゃないですか!!…あっ!!」
自分が何を言ったのか気づき、途端に顔を真っ赤に染め固まるアキト。
「何だ、そんな事なら…えいっ♪」
舞歌がそれはもうこの上なく嬉しそうにアキトの頬へキスをする。
『「ああああっ!」』
いきなりのことにアキトと枝織がハモる。
「それで、これはお・ま・け♪」
そういい、舞歌はアキトのくちびるへとキスをする。
アキト&枝織さらに固まり、アキトに至っては鼻血&真っ赤になって気を失った。

後日談
その翌日、東舞歌除霊事務所では舞歌を見るたびに顔を真っ赤にするアキトと、どこか不機嫌な枝織と、やたらと上機嫌な舞歌の姿が見られたという。
後日談その2
舞歌は、この騒動の張本人をドクター・グラシスと当たりをつけグラシス達を探し出しお仕置きしたらしい。
内容は割愛するが、ドクター・グラシスはその後1週間ほどドナドナを口ずさんだり、一人でマイム・マイムを踊ったりという奇行を行っていたというのは全くの余談である。


あとがき
どうも、混沌の覇王です。
えー今回はグラシスが結構むごい役回りでした。
あと、原作のほうじゃこの話は続編が三つほどあったんですが省略しました。
理由は、そこまで話を考えられなかったためです(自爆)
何で長く書けないんだろう?

 

 

代理人の感想

え〜、長くならない理由としては、マンガを「そのまま」SSに直しているからであると思われます。

ある意味で小説と言うのは「物語を文章で説明」する事ですから、

説明が詳しければそれだけ長くなりますし、要点だけ押さえれば短くなります。

筋だけ書いて細かい所の描写などを書いたり加えたりしないので短くなるのではないでしょうか。

 

・・・・・何気にこの文章、「感想」ではないような気もしますが深くは突っ込まないで下さい(爆)。

 

 

追伸

例の件、OKです。どうぞどうぞご自由にお使い下さい(笑)。