FILE TYPE   TENKAWA    act.2








Die Zerstorungen des Krieges der Trauer(嘆きの戦禍) 1. 「Angriff/襲撃」




高杉三郎太は戸惑っていた。勿論の事、今日いきなり艦長の口から発せられた言葉に、である。


「明後日出航、目的はユーチャリスの捕獲、及びテンカワアキトの捕縛、皆さん準備の程をよろしくお願いします」


感情を感じさせない声で、隠そうともせずに言った。明後日出航する事は前から通達があった。
名目は火星宙域のパトロールだった。火星の後継者蜂起以来、ナデシコは軍部において恐怖の対象同然とされていた。
だから、この所は出動任務すら無く。毎日トレーニングに励んでいた。その矢先、これだ。
ネルガルが一枚噛んでいるらしい、強引な出動の形を取れたのもネルガルが工作なりなんなりしたのだろう。
だが納得がいかない、何故自分達が。とも思った。相手、テンカワアキトはA級ジャンパーと聞く。


ならば、捉えたら直ぐに消えてしまうのではないか。只の徒労に終わるのではないか。
しかし、自らが乗り込んでいる艦の艦長の考えはそうでは無かったようだ。ネルガルの要請を飲んだらしい。
会長直々の使いと会い、その上で合意した、と耳に入っている。
やはり納得がいかない、そもそも本当に火星宙域にいるのか。疑ったらキリがないが、疑うのも仕事の内である。


納得できないのは、隣りで唸っている少年も同じ様だった。


「納得いきませんよ、僕は」


廊下を歩きながら、隣りの少年は不機嫌な声で言った。


「ハーリィ、艦長命令だぞ。いつまでも文句を言うな」


「解ってます、解ってますけど。なんでナデシコじゃなければいけないんですか」


それは自分も考えている事だ、と口を突いて出かけたが、飲み込んだ。


「体の良いところ囮ですよ、これ。艦長も解っているはずですよ」


それでも放っておく事が出来ないのだろう、あの小さな艦長は。固執とも取れる、テンカワアキトの元妻ミスマルユリカは現在療養中らしい。
それを度々見舞っているのも聞いている。そこで昇る話も想像に難くない。


「大体相手が悪すぎます、危険なんですよ。あのコロニー潰しのテンカワアキトですよ」


未だにいきり立つようにハーリィは唸っていた。この少年はこの少年で思う所があるのだろう。だが、まだ幼すぎる。


「嫉妬は良くないと思うぞ、ハーリィ」


「な、ななななにを、なにを言ってるんですか三郎太さん」


怒りに染まっていた赤い顔は、今度は羞恥の赤に染まった。見ていて飽きない、三郎太は口を押さえて苦笑した。
それを見て、ハーリィは不機嫌な顔つきに変わった。


「今回もオールスターって所だな。もう艦長は行っちまったぞ」


「え?」


心理的作戦なのだろうか、テンカワアキトに対し圧迫をかけるつもりなのかどうかは解らない。
これも軍人を使うのはあまり芳しくない任務ではあったが、前回の、火星の後継者事件の時ほどでは無いはずだった。
旧ナデシコのメンバーを集める。いわば、本気でテンカワを捕縛する気なのかも知れない。
三郎太から見ても、旧ナデシコのメンバーの腕は良かった。噂によれば性格よりも能力を優先して召集したらしい。
正に凄腕だっただろう。極北遺跡での戦いも、あのメンバーでなければ、誰かしら命を落としていたのだろう。


「大変です、連れ戻さないと」


今度は焦りを多分に含んで、ハーリィ少年はそう言った。


「何でよ」


「何で、って言われても。とにかく連れ戻しましょう」


そう言ってハーリィは駆けだした。素早く首根っこを掴む。


「は、はな、離してください高杉大尉」


わめきちらしながらハーリィが暴れ回った。廊下ですれ違う船員の視線が痛い。


「お前が邪魔する事じゃないっての」


食堂まで引きずった。
相変わらず視線が痛いが、なんとか三郎太はハーリィを席に座らせた。ハーリィは三郎太を睨んでいた、殺気も何もあったものじゃないが。
滑稽に見えた。


「あんまりしつこいと艦長に嫌われるぞ、お前」


それを聞いた途端、ハーリィは空気が抜けたように机にへたり込んだ。


「そんな〜」


と、これまた空気が抜けたように声を上げて。

















夕方になっていた。
ウリバタケセイヤ、アマノヒカル、マキイズミ、メグミレイナード、ハルカミナトは快く参戦してくれた。
事情を説明した、あの人を捕まえます、と。パイロット陣には明日、統合軍から転属してくるスバルリョーコもいる。
それに高杉大尉も含めれば、パイロットの穴は無い。ルリはそう確信した。
テンカワアキトの捕縛の際、懸念があるとすればただ一つだけだった。それはボソンジャンプ。
目的地へのイメージを99%遺跡に伝えることができるA級ジャンパー。覚えてさえいればどこへなりとも逃げる事が可能な人類。
なら奇襲しかない、ジャンプする暇は与えない。断続的に攻撃を加え、ジャンプさせなければいい。ルリはそう考えていた。


サイメイと言ったあの男性についても調べた、が。何も出てこなかった、比喩でなく、どのデータベースにも彼の痕跡はなかった。
念のため、アカツキナガレに連絡を取った。彼は諜報部だ、と言った。とりあえず信用するしか無かったので、そうした。
サイメイの情報は何であれ、信用した方がいい、とも言った。藁を掴みたかったのだ、信用するしかないのだ。
出航の理由まで作ってくれた。火星宙域のパトロール、胡散臭い内容だったが、上層部を納得させたらしい。


これで、偶然ユーチャリスと遭遇し、交戦に至り、そして捕縛した、との言い訳もできる。有り難かった。
旧ナデシコのメンバーは前回の火星の後継者の時よりも、集まってくれた。これならば、とは思えど、実際どうなるかは予想できなかった。
ハルカミナトは会いに行った際、こう言った。「無理しないでね」、と。
無理をしているのだろうか。周りにはそう見えているのかも知れない。連日連日陳情を続けてきた。疲労は溜まってるのかもしれない。

ユリカの病状は着々と快方へ向かっていた。だが今ひとつ、暗い陰を落としているのをルリは見逃してはいなかった。
今必要な物も解っている。テンカワアキト、あの人が必要なのだ。
それが誰の為だか、この所はっきりと解らなくなってきた。
ユリカの為なのか、それとも自分の為なのか。
取り戻したい、とは思った。あの三年間を。少なからず幸せだったあの時を取り戻したかった。
捕まえたとして、それからどうするかはまだ考えていなかった。まず間違いなく死罪になるのだろう。手は打たなければならなかった。
でも今は何も考えないで、捕まえる事だけに専念しなければならないだろう。


「その調子だとテンカワに殺されるぞ」


不意に声が蘇ってきた。
あの人は、テンカワアキトは私達と対峙した時、殺そうとするのだろうか。
空を見上げた。日はもう暮れようとしていた。























艦内で赤色灯が明滅している。人が慌ただしく動いている。叫び声も聞こえてきた。警報だけが耳に入ってくる。
襲撃、最初はなにが起こったのか理解できなかった。只音がして、艦が揺さぶられた。それだけだった。
爆発、それに気付いたのは数秒おいてからだった。艦長は不在、自体は芳しいとは言い難かった。
艦橋まで駆けた。心臓が高鳴っている、恐怖か、はたまた興奮か。
外部よりの爆発、それは直ぐに解った。侵入者は無し、外部からのロボットによる攻撃。レーダーに機影が映し出される。
それはデータに残っていた。そして愕然とする。


「六連」


うなされるように三郎太が呟いた。


「嘘だろ、あいつらは俺達が落としたはずじゃあ」


あの異様に素早く動く一団を思いだした。火星の後継者の裏の部隊、後からそう聞いた。そして六連は奴らの専用機だとも聞いた。
なら、生きていたのか。死体の確認を怠ったのか、あいつらは。統合軍に対して怒りが浮き上がってくる。事後処理を申し出たのは統合軍だった。


「出る」


艦橋に声が響いた。


「相手は五機います、無茶です」
オペレーターの一人が悲痛な声つきで言った。


「これが自分一人の保身を計っている場合か」


咆吼に近い声を上げた。艦橋が静まり返る。


「ハーリィ、準備頼む。今はお前が艦長を代行しろ」


駆ける、今度はガレージに向かって。背後から声が聞こえる。それを無視して、駆けた。



空港は騒然としていた。対処が明らかに遅れているのも見て取れた。
どいつもこいつも、三郎太は舌打ちを打った。誰もこのタイミングで襲撃をかけてくるとは思わなかったのだろう。
相手は火星の後継者残党、まず間違いない。未だに処理に手間取っているらしい。
それが何故ナデシコを、三郎太は目を細めた。ガイドレーザーが当たりを照らしている。各地で火の手が上がっている。
ナデシコの対処が早かった、それで襲撃は失敗と言える。元よりこれは警戒心を煽るのが目的だろう、三郎太は思った。
直ぐに統合軍がくる、しかしそれより早くやつらは撤退するだろう。一機でも落としておく、三郎太はバーニアに火を入れた。


「高杉三郎太、出る」


いつもの三郎太のような、軽々しい感じは微塵も無くなっていた。
叫び、カタパルトから射出された。
風が動いている、そうとしか見えなかった。レーダーは捉えているが、目視では確認しづらい。ましてや今は夜だ、視界は閉ざされている。
以前と早さの桁が違う。そう思った刹那、ロックオン警報が機内に響いた。
ノズルから閃光が漏れ、空に舞い上がる。レーダーが反応する、五機、囲んでいる。


「畜生」


ほとんど叫び声に近かったのだろう。爆炎が夜空を彩った。艦橋で悲鳴が上がる。ハーリィは歯がみしていた。
こちらは艦内制御の復活に手が一杯だった。三郎太の機体の反応は消えている。死んだか、一時的な電波障害か。
後者であれ、とハーリィは唇を強く噛んだ。血が垂れてきた。


反応が戻った。三郎太のスーパーエステバリスが炎の中から飛び出してくる。右手は無く、左足も同様に無い。
傷痕は凄まじく、飛ぶ事すら限界に近いだろう。
左手に残ったライフルを撃つ、狙いを定めているようには見えない。
艦橋に三郎太の声が通信として響いた。発狂しているかのように叫んでいる。糞、畜生、叫んでいる。
泣いている船員もいた。ハーリィは年齢に合わない叫び声を上げ、艦内に命令を発信していた。


「三郎太さん、もどってください」


無理な事は解っている、只、言わないと押しつぶされそうだった。


「統合軍はまだ着かないんですか」


オペレーターの女性が一人、金切り声を上げた。ヒステリックになっている。

三郎太のライフルが虚しい音を立てた。コッキング音のみ、弾が切れたのだ。
五発のミサイルがスーパーエステバリスを捉える。爆炎。反応が消えた。
ハーリィが絶叫する。


「グラビティブラスト、前方空域に向け、一斉発射」


その命令に異論を唱える者はいなかった。
空間を歪曲させながら、砲塔が歪んだ。伸びる黒い閃光。当たりがひしゃげていく。


「死ね」


およそ今まで口にした事が無い言葉をハーリィは叫んでいた。


「高杉機回収、急いで」


別のオペレーターが、叫んだ。五機の反応は消失していた。撃墜はしていない。


完膚無きまでの、敗北だった。
Die Zerstorungen des Krieges der Trauer(嘆きの戦禍)2. 「Armbanduhr/警戒」


命こそ取り留めたものの、予断は決して許されない状態だった。ハーリィは病院の待合い室で、下を俯き何事か唸っていた。
走る足音が聞こえた。廊下の向こうから、見覚えがある銀髪の少女が駆けてきた。
目の前で止まった、息は荒い。


「ハーリィ君、高杉さんの状態は」


ハーリィは俯いた。それで芳しくない、と察したのか、ルリは呆然とした。
襲撃犯の機体は間違いなく、北辰麾下の機体だった。なら、火星の後継者が一枚噛んでいるのか。
予想だにしなかった。まさか出航二日前に襲撃をかける、それも五機で、あの警戒網をくぐり抜けて。
まるで悪い夢でも見ているようだった。何故、とも思った。テンカワアキトは火星の後継者残党を狩っている、それに関係するのか。
考えたくもなかった。考えてもしかた無かった。ナデシコの傷はさほど大きくはなかった、二日もあれば飛べるだろう。


これなら、出航時にもう一度襲撃が予想された。船員の志気も低下しているだろう、高杉大尉が目の前で落とされたのだ。
こめかみが鈍い痛みを上げた、顔をしかめ押さえる。


「ハーリィ君、貴方のせいではありません。落ち込んでいたらまた笑われますよ、高杉大尉に」


ハーリィは涙を床に落とし、嗚咽していた。
また、足音が聞こえた。男が歩いてくる、サイメイ・リョウその人だ。


「襲撃が、あったそうだな」


「理由は、ご存じなんですか」


聞いてみる、疑惑の念を持って。


「こちらも奴らとは一度遭遇した。襲撃のおよそ二時間前に、だが、ナデシコを襲う理由は見えない」


「そうですか」


それ以上聞いても意味が無いような気がして、ルリは訪ねるのを止めた。


「明日、発て」


ルリの目が、サイメイの顔を睨む。


「この状態で、どうやって発て、と」


「ネルガルから人員を送る、それで明日の夕方に発て。このままではもう一度襲撃を受ける、それは避けろ」


「しかし」


「出航の際に隙はできる、そこは俺達に任せろ」


俺達、とはネルガル諜報部の事を言っているのだろうか、ルリは察しかねた。


「警戒は怠るな、相手はもう解っているのだろう?ホシノ中佐」


頷く。


「北辰、生きていたとは」


サイメイが苦々しげに呟いた。この事をあの人が知ったら、どうなるだろうか、とルリは考えて、寒気がした。








夜風に当たった。
ヤマザキの場所は掴んだ。驚いた事に火星宙域だった。これでテンカワが何故動かないか、合点がいった。
補給を済まし、一気に叩くつもりなのだろうか。まさしく自殺行為だ。早くナデシコを向かわせ、足止めをしなければならない。
出航の時、間違いなく北辰は来るだろう。それを防ぐのが、まず俺の役目か。
サイメイは拳を握った。宇宙は果てなく広い。あの宇宙はどこまで人の思いを受けきれるのだろうか。漠然と考えてみた。

決着は宇宙でつく、テンカワも、火星の後継者も、全て。

それまで何人が死ぬのだろうか、考えても無駄とは解っていても、考えずにはいられなかった。
電話を取り出した。


「サレナの整備は」


「万全だね、完璧だよ。いつでも出れる」


「明日出す、そのまま宇宙に飛ぶ、シャトルも用意頼む」


「いよいよだね」


「ああ」


電話を切った。

ネルガルのガレージで俺を待っている。
サレナ・アヴェンジャー。「復讐者」の名を冠し、灰と鈍重な紅に機体を染め上げ、俺を待っている。
復讐者、その言葉を誰に掲げてつけたのかは、俺にも解らない。

解らなくてもいい、今も、そしてこれからも、ずっと。
Die Zerstorungen des Krieges der Trauer(嘆きの戦禍)3. 「Abfangen/迎撃」


ネルガル整備班と、ウリバタケ率いるナデシコ整備班の力により、ナデシコは飛び立てるまでに完治した。
追加パイロットの補充も滞り無く終わった。ヒカル、イズミ、リョーコの顔色は暗い。先日の襲撃の報告は聞いていた。
高杉三郎太は決して弱くない、むしろエースパイロットであった。例え五機が相手だとしても、一機は落とす。
そう思っていた。結果、一機も落とせずに、重傷を負わされた。一度倒した敵だけに、ショックは大きかったのだ。


「ルリ、後何時間ある」


リョーコが訪ねる、聞いているのは出航までの時間だろう。


「もう一時間もありません、それにエステの整備が終了し次第。飛びます」


「そうだな」


急がなくては、リョーコも焦っていた。出航の際に襲撃を受ければ、エステバリスは発進できない。
かと言って、空港の警備が役に立つとは、到底思えなかった。統合軍から送られてきた警護はわずかであった。
練兵もなされていない、脆弱な兵だった。
統合軍時のリョーコの部隊「ライオンズ・シックル」も加わっていた。無理矢理付いてきたらしい。
頼りは、わずかネルガルだけだった。

ハーリィは機体整備終了の伝言をルリに伝えた。顔にはまだ陰を落としているが、尾は引いていないようだ。
ハーリィが空港でグラビティブラストを撃たせた、と聞いたときは少なからずルリは驚いた。
だが、それには触れなかった。


「各員、離陸体勢をとってください」


凛とした声が艦内に響き渡る。各所で人が動き始めた。

それから十分が経ち、各員準備完了、との連絡を受けた。


「ナデシコB、発進。目標火星宙域」


ナデシコBのエンジンノズルから火が吹き出る。振動が多少だが、艦内を揺らす。
重力制御の方が万全とは言い難かったようだ、だが今更遅い。
ナデシコはボソンジャンプを使わずして、火星宙域まで全速力で航路を取る。それは一重にユーチャリス強襲の為であった。
ボソン粒子であれ何であれ、事前に察知されるような物が一切出してはならない。その為の策も練った。一晩で、だが。
思兼とシミュレートを繰り返し、最前の方策を採った。


「敵影、感知」


メグミが叫んだ。
ハーリィは既にウィンドウボールを展開し、顔はナノマシンの光に帯びている。
ルリもウィンドウボールを展開させ、思兼を立ち上げた。


「敵、6。機体識別コード、六連、及び夜天光」


来た、手を握りしめる。


「パイロットに通達、各員決してその場から離れないように」


リョーコさん辺りが文句を言うだろうが、黙殺するしかない。一度発進したら、回収できる高度ではないのだ。
その地点で勝負を挑む、パイロット能力だけでなく、機体のポテンシャルも上がっているらしい。ルリは歯を噛みしめた。
震動、そして爆発音。艦橋に真っ直ぐと向かい、五機が飛んでくる。
グラビティブラストは撃てない。地球圏脱出の為、相転移エンジンに無駄な負荷はかけられない。
五機が隊列を組んで向かってくる、迎撃ミサイルがそれを迎え撃つが、ディストーションフィールドを破るには至らない。
刹那、灰色の影が、五機を薙ぎ倒した。
それは艦橋の前で止まり、ナデシコBの先端に着陸した。


「機体コードは」


「ネルガル、サレナタイプです」


サレナ、ルリの眉がわずかに動いた。アキトと同じ機体である。


「サイメイ・リョウ、助太刀」


ウィンドウ受信が開いた。映った顔は不敵な顔をしている。
他の機体は確認できない。


「まさか、一人で」


「任せておけ」


サレナが再び空に飛び出していった。五機の目標がサイメイにそれた、チャンス、ルリは瞬間にそう思った。


「突入角度を二度、三時方向へ」


「りょーかい」


ミナトが操舵を切る。
わずかにナデシコの機首がそれる、これで。ルリは溜息をついた、後は信用するしかない、あのサイメイ・リョウと言う男を。


六連は周りを飛び交っている、小賢しい、右腕から兵装の一つを取り出す。
淡く光る剣、単純に硬度だけを引き上げた剣に、圧縮したディストーションフィールドを展開。
なおかつ超高震動している為、およそ例外無くバターのように切り裂ける。
五機の内、一機がこちらに向かってくる。それに合わせて、一機、二機と続いてくる。
早い、が。それならもう少し早くこちらも動けばいいだけの事。スロットルを全開にする。バーニアノズルが雄叫びを上げる。
剣を振る、当たらない、当てるつもりは無い。ここは足止めに専念する。地上からの援護はおよそ役に立っていない。


「役立たずが」


吐き捨てるように呟く。二機とすれ違う、突進してくるが、避ける。弾の兵装もあるが、こいつらに当たる事はないだろう。
レーダーの先には、北辰の夜天光が控えている。


「随分と余裕じゃねぇか」


腹が立ってきた。機体を夜天光に向け、突っ込む。すれ違う、夜天光は動かない。こちらも剣は振らなかった。
ミサイルが飛んでくる。六本、全て撃ち落とす。夜天光が、遠くに飛び去っていく。
後続の数機が、こちらを牽制しながら、飛び去っていった。まだ決着には早い、大方そう思っているのだろう。
機体の向きを変え、ネルガル専用の空港へ向かう。急がなければ、奴らもクリムゾンの所から宇宙へ行く。
地上部隊は夜天光一機によって沈黙していた。ネルガルの人員は既に撤収済みだろう、脆弱な兵士と心中する程の勇気を持った奴らじゃない。
北辰の蜥蜴の様な顔を思い出し、軽く苛立った。火星宙域小惑星群、通称「アマミズキ」。そこが決戦の場になるだろう。
ネルガルの飛行場では手筈通り、シャトルがエンジンを暖めている筈。スロットルを開き、亜音速で移動する。







決戦の場は、宇宙へ。





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こんにちは、胡車児(F沢)です。
ファイルタイプ・テンカワでした。一応これが中編の予定ですが、三部で終わる気配が見えません。
もうすこし突き詰めて書きたかったですが、どうにも範囲を限定すると、駄作になりますね。
皆さんが着いてこれるような話を書けるようになりたいものです。

では、又。





宣伝(いいのかどうかわかりませんが)

色々と混乱もあったようなので、一応記しておきます。

「ポリエスチレン・テクニカルズ」
http://polytech.loops.jp



 

 

 

代理人の感想

 

取合えず六人衆の一人はアレで死んでたみたいですね〜。

でもこちらもサブロウタを失って(死んではいませんが)、戦力比は変わらず。

三人娘がいるとはいえ、サイメイかアキトを加えてやっと互角くらいでしょうか?

そもそもナデシコBって武装はグラビティブラスト一門のみと艦の戦力自体は極めて低い

(単体の戦闘力は下手するとYユニット抜きのナデシコAにも劣る)ですから、

ブラックサレナに加えてグラビティブラスト四門装備、大量の無人兵器を搭載したユーチャリスと

真っ向から戦うとなると実はこの面子でも厳しいんですよね。

大抵のSSではユーチャリスに無人兵器は積んでないので

機動兵器の数の差で優位に戦ってますが(笑)。