未来に光を…



プロローグ






ここは沈黙のみが支配する宇宙。

その宇宙のある場所に、一隻の戦艦が存在していた。

その戦艦の名前は『ユーチャリス』宇宙的テロリストである『The Prince of Darkness』テンカワ・アキトの旗艦である。

かつてその中にはテンカワ・アキトの他にもラピス・ラズリという少女がいたが、今はテンカワ・アキトただ一人であった。



「…ふう」



今溜め息をついたのが艦長のテンカワ・アキトである。

彼は今、昔を思い出していた。



幼い頃過ごした幼馴染との思い出…

火星で過ごしたアルバイトの日々…

木星蜥蜴に襲われ、突然地球に跳んだ日のこと…

雪谷食堂で働いた日々のこと…

ナデシコに乗ってからの始めての戦闘…

幼馴染の襲来…

そして突然の友人の死…

三人のパイロット娘との出会い…

火星への到着…

チューリップを使ってのボソンジャンプ…

ナナフシの破壊…

オモイカネの反乱…

イツキ・カザマとの出会い…

初めての自分の意思でのボソンジャンプ…

二週間前の月へのジャンプ…

木連の発覚…

ルリのピースランドへの帰郷の付き添い…

ナデシコの制圧、奪還…

木連との和平交渉…

白鳥 九十九の死…

最終決戦…

ユリカ、ルリと三人で経営していた屋台のラーメン屋…

ミスマル・ユリカとの結婚…

火星への新婚旅行、そのシャトルの中での北辰の襲撃…

ヤマサキラボでの人体実験…

プロス、ゴートによる救出…

月臣との戦闘訓練…

サツキミドリ襲撃、その中での過去の仲間との再会…

義娘との再会…

北辰との決着…



最後のことを思い出した後、彼は艦長専用のシートにもたれ、深く溜め息をついた。



「…もう…限界か…」



そう、俺の体はもはや限界に近づいていた。

ヤマサキのもとから助けられた後、イネスに後五年ほどの命、と言われたことがある。

それも安静にしていて、のことなので、戦い続けてきた今では、もはやいつ死んでもおかしくなかった。



「フッ…俺には誰にも知られずに勝手に死ぬのがお似合いか…」



ユリカも元気になり、ラピスもリンクを切ってエリナに(無理矢理)預けた。

ルリや他のナデシコクルーも元気に過ごしている。

草壁、ヤマサキは自分が殺し、クリムゾングループも火星の後継者に協力していたということで解体された。

アカツキ及びネルガルはそのおかげで落ち目から立ち直った。

もう…心残りはどこにも無い。



<艦長、ユーチャリス付近にボース粒子増大>



俺が感傷にひたっていると、ユーチャリスAI『オモイカネ ツヴァイ』から報告が届いた。

このツヴァイが俺の五感のサポートもしてくれている。



「ツヴァイ、その船の解析を頼む」


<了解……解析完了、ナデシコ級戦艦、ナデシコCと判明>



ナデシコC…ルリちゃんか…彼女も必死だな。

だが、俺は戻る気はない。



<艦長、通信が入っています>


「…つないでくれ」


<了解……つながりました>


「「「アキト(さん)!!!!」」」


「…君たちか」



ルリちゃんはともかく、まさかユリカとラピスがいるなんてな…。

だが、俺の答えは変わらない。



「…なんのようだ」


「ねえアキト、帰ろうよ!」


「そうです! みんな待ってるんですよ!?」


「アキト、アキトハ私ガイラナクナッタノ!?」


「…言った筈だ。俺は君たちの元に戻る気は無い」


「どうして!? 全部終わったんでしょう!?」


「…ああ」


「ならどうして!?」


「それを言う気は無い」


「そんな…!?」



三人とも必死だな…。だが、何があっても俺は帰らないだろう。

資格が無い、とは言わない。今までやってきたことに後悔はしていないからだ。

俺が帰らない理由…それは…ユリカを愛することができないから。






俺はネルガルに救出され、戦闘訓練をしている間に思ったことがあった。

そう…俺は本当にユリカを愛していたのか。

その疑問が浮かんでから、俺のユリカへの愛は急激にさめていった。

コロニーを落とし始めた頃にはもはやユリカの事などなんとも思っていなかった。

ならばなぜコロニーを落としていったのか、と言う疑問が浮かぶだろう。

確かに俺はユリカを救おうと思った。

だがそれは好きだからではなく、一種の義務感のようなものからだ。

ただの義務感でコロニーを落とすなどするはずが無い。

俺がコロニーを落として言った理由とは…復讐だった。

俺の夢を奪ったヤマサキら火星の後継者。

そいつらに復讐するために、俺はコロニーを落として回った。

そのことをアカツキに話したら、



「君らしくはないかもね。でも、僕はそういうの嫌いじゃないよ」



と言ってくれた。

俺はその瞬間、こいつは俺が今まで得た中で最高の友人だ、と思った。

そのことを聞いたアカツキは、



「…心外だね、僕は君の事を利用してきただけだよ。

 …でもね、テンカワ君。僕はそんな君の事を…絶対に忘れないよ」



と返してきた。

俺にはアカツキの気持ちがよくわかったので、ただこう言った。



「それで十分だよ、アカツキ…」



そして、俺はそこから去ってユーチャリスに乗り込み、今に至るという訳だ。






ナデシコのみんなが何か言っているが、俺はもう聞く気はない。



「とにかく…これ以上俺に付きまとうつもりなら、しかるべき処置をとらせてもらう」



俺はそう言ってウィンドウを閉じた。

俺は椅子にもたれこみ、溜め息をはいた。



「ちょうどいいか…ツヴァイ、『バニシング』はいけるか?」


<いつでもいけますよ、艦長>



『バニシング』とは、火星の後継者と戦い続ける俺のために、アカツキが用意してくれたブラックサレナの後継機だ。

新たな愛機となったこの機体、ブラックサレナとはだいぶ違っている。

ブラックサレナがエステバリス・カスタムにつける追加装甲だったのに対し、バニシングはそれ自体が一機の機動兵器になっている。

フォルム的には夜天光に似ているが、その性能にはかなりの差がある。

スピードは最高速でサレナの約1,5倍にもなり、おそらく…いや、間違いなく俺以外には使いこなせないだろう。

さらにディストーションフィールド発生装置が二つ搭載されている。

たとえナデシコのグラビティーブラストでも破ることはできない。

カラーリングは黒、これだけは譲れなかった。

さらに両手がエステのように自由に使えるようになったので、俺の得意な抜刀術が使えるようになった。

ブラックサレナよりも付き合いの長い、俺の相棒だ。



「よし…俺はバニシングで出る。

 やることは…わかっているな…?」


<…はい、それでは>



それを聞くと、俺は格納庫に行き、バニシングに乗り込んだ。



「長い間世話になったな…これが最後だよ…相棒。

 …さて、テンカワ・アキト、バニシング、出撃する!」



そして俺はハッチを開き、闇の支配する宇宙へと発進した。





戦いは一方的だった。

ナデシコCからも機動兵器が出撃したが、バニシングに乗った俺に適うはずもなく、即座に全員行動不能におちいった。

俺はナデシコの相転移エンジンを破壊し、もう一度通信を開いた。



「アキト!!」



通信に出たのはユリカだった。

俺はただ淡々と告げた。



「これで…終わりだな」


「そんなことない! アキトが戻ってくるまでいくらでも追い続けるから!」


「そうじゃないよ…」



アキトがそう言うと同時に、バニシングを蒼い光が包んだ。



「ボース粒子反応、増大しています!」


「どうする気なんですか!? アキトさん!」


「言っただろう? これで終わりだと…。

 俺は…ランダムジャンプをする」



俺はもうすぐ死ぬだろうが、無様な死体を晒すつもりはない。



「「「「「「「!?」」」」」」」



みんな驚いているな。まあ無理もないが。



「俺がジャンプした後、ユーチャリスは自爆するようツヴァイに言ってある。

 これで本当に…お別れだ」



バニシングを包み込む蒼い光がだんだん強くなっていく。

そしていっそう強くなり、光が消えたあと、そこには何も残っていなかった。





プロローグその2へ続く



〜あとがき〜

始めまして、シンと申します。

実はこれ、私の処女作なんです。

なので、色々と文体が変になったりするかもしれませんが、長い眼で見てやってください。

また、一言だけ言っておくと、私はユリカは別に嫌いではありません。

ただ、自分の望むくっつけ方をしようとするとああなってしまうわけです(苦笑)

それでは、また次回(いつになるかわかりませんが)でお会いしましょう。

 

管理人の感想

コウさんからの投稿です。

うーん、アキト一人で行うランダムジャンプですか。

これが逆行物なのか、それとも他の世界に行く物語なのかは分かりませんが、続きを頑張って下さいね。

プロローグだとこんな事くらいしかまだ言えません(苦笑)