未来に光を…



プロローグ その2






ジャンプしてからどのくらいの時が過ぎただろうか。

俺は眼を覚まし、辺りを見回した。

そこは何もなく、見渡す限り白しか見えなかった。



「…なんだここは? 地獄にしては何もなさすぎるが…」


『ここは地獄ではありませんよ』


「…誰だ!?」



考えていると、突然声が聞こえてきた。

いや、聞こえてきたと言うよりも、直接頭の中に響いてきたと言う感じだ。



『興奮しないでください。説明しますから』



説明と聞いたとき、思わず体が反応してしまった。

まあそれはともかく、今は現状を理解することが大切だ。

信用できるかどうかはわからんが、話を聞いてみるか。



「わかった、話してくれ」


『わかりました。まずここはどこかと言うことですが、ここは遺跡の中です。

 少し無理をして私がお呼びしました』


「遺跡の中だと!?」



…驚いた。まさかここが遺跡の中だったとは……ん? と言うことはもしかすると…



「君は…まさか…」


『…はい。私は、あなたたちが演算ユニットと呼ぶものの意思です』



やはりそうか。

しかし、なぜ俺を呼んだんだ? 理由がまったくわからない。

俺がそれを聞こうとすると、先に相手が話しかけてきた。



『私があなたを呼んだ理由、それは…あなたに償いがしたかったからです』


「償い?」


『はい、償いです』



何故だ? 何故遺跡が俺に償いをしようとする?

考えてもわからないので、俺は聞いてみることにした。



「何故俺に償おうとする?」


『それは…私のせいであなたの人生が狂ってしまったからです』


「…………」



なるほど、確かにボソンジャンプがなければ俺はこんな事にはならなかっただろう。

だが…


「それはやった人間が悪いことで、君は悪くないだろう?」


『…私を憎んでいないのですか?』


「まあ、憎んでいないと言えば嘘になるかもしれない。

 けど、さっきも言った通り、それはやった人間が悪いんだ。

 君は君の意思ではどうにもできなかった。違うか?」


『…ええ、その通りです』


「なら、君は悪くない。自分を責める必要はないさ」


『…優しい方ですね。貴方は』


「…そんなことはないさ。俺はこの手でいくつものコロニーを落とした犯罪者だ」


『そんなことは関係ありませんよ。貴方の心はガラスのように透き通っています。

 優しく、そして繊細な心の持ち主ですよ、あなたは』



俺の心はガラスのように繊細…か。そんなことを言われたのは始めてかもな。

…そういえば



「ところで、遺跡にも性別ってあるのか?」


『ええ、一応私は女性体ですけど』



遺跡にも性別ってあったんだな…まあ話し方とかで大体予想はついていたが。

それよりも、聞かなければならないことがある。



「なあ、俺はこれからどうすればいいんだ?」


『はっ! そうでした、忘れていました』



…忘れるなよ。



「で、どうするんだ?」


『はい、貴方には選んでもらいます』


「…選ぶ? 一体何を?」


『これから貴方の歩む道です。

 ひとつは、元いた世界に返ること。そしてもうひとつは…過去に戻ってやり直すことです』



なんだと!? 過去に戻れる!?



「過去に戻れるのか!?」


『はい、ボソンジャンプを使えば可能です。

 ボソンジャンプはもともと時空間移動ですので、私がナビゲートすれば過去に戻れるでしょう』



過去に戻れる…全てをやり直せるのか?

またあの頃に…楽しかったナデシコの頃に戻れるのか?

もしそれが可能なら、俺は…



「お願い…できるか?」


『はい、おまかせください』


「しかし、何故そこまでしてくれるんだ?

 やはり俺に対する償いなのか?」


『…ええ、そうですね。そういうことにしておきましょう』


「…? まあいいか。ところで、バニシングがどうなったか知らないか?」


『あの機動兵器のことですか? すいませんが、私にはわかりません。

 私は貴方をここに呼ぶので精一杯だったものですから…』


「そうか…」


『すいません』


「いや、気にしないでくれ」



そうか、バニシングの行方はわからないか…。

仕方ないといえば仕方ないが…やはり、つらいものがあるな。

長い間共に戦ってきた、相棒だからな…。



『それでは、過去に戻しても良いですか?』


「ああ…ところで、戻す時間なんだが…空港の事件の次の日にしてくれないか?」


『それはかまいませんが…ご両親のことはよろしいのですか?』


「どうせ子供の俺が何か言ったところで話なんか聞いてもらえないだろうし、子供に戻るんだから限界もあるしな。

 俺には、どうしようもできないだろう」


『わかりました。それではいきます」



彼女がそう言うと、俺の体が青いボソンの光に包まれた。



『それでは、がんばってください』


「ああ、ありがとう」



俺はそう言うと意識を失った。

俺の心には確かな決意が満ち溢れていた。





to be continued...

〜あとがき〜

どうも、プロローグ その2を更新しました。

ああ…文が短い…。

プロローグだからこんなものかな、とも思うんですけど…やっぱり、ねぇ?

それにしても、高校2年生なのにこんなことしてていいのだろうか…

それはそうと、どうでしょう?

なにかありましたら、どうか感想をお願いします。

それでは、第1話をこうご期待!…………できるかなぁ?

 

管理人の感想

コウさんからの投稿です。

確かに短いですね(苦笑)

愛機のバニシングの行方も気になりますが、アキトはどんな形で過去に戻るんでしょうね?

それにしても、随分とアキト贔屓の遺跡ですなw

アキトがどれだけ繊細な心の持ち主でも、自分の意思でコロニーを落とした訳ですし。

そこは責める所だと思いますよ?

じゃないと、過去に戻っても同じ事を繰り返しますよ、奴は(爆)