ヴーッ!ヴーッ!


基地内の全てに警報音が鳴り響き、緊急事態の発生を告げる。

ディスプレイには『未確認機体来襲!』とあるのみで、やたらと警報音と無駄なパネルが並ぶだけである。


<敵機来襲!!敵機来襲!!>


<総員第一種戦闘配備につけ!!>


そう言った警報が流れるものの、敵の赤い機体には為すすべもなく味方のステルンクーゲルは撃破されてゆく。


ようやく敵機の確認が出来た。

その赤い機体は、新地球連合にとって忌まわしい機体であった・・・。


夜天光


火星の後継者の兵器であり、エースパイロットが乗ることを許される機体。
現在までに確認されている夜天光は数機。
火星の後継者の特殊部隊の北辰、それに残党軍の首領南雲義政。
この2人に代表されるように、夜天光に乗るパイロットは明らかに別格の腕を持っている人物ばかりである。

その機体が再び、いや三度新地球連合に相対したのである。










機動戦艦ナデシコ





A Story after the Movie...





“E”s from Venus






第1話 ナデシコ強奪!!
















「敵はただの一機だぞ!何故に機動部隊がこうも簡単にやられていくのだ!!


基地司令が叫ぶ。
しかし為す術もなく、訓練されたステルンクーゲル十数体がいとも簡単に撃墜されていくのをただ見ているだけしかなかった。
夜天光の繰り出す錫杖にステルンクーゲルは次々と撃破される。
威力の高いレールガンを装備する部隊は真っ先に壊滅した。
現在残っているのは白兵戦用の装備の機体と、ラピッドライフルを装備した機体のみである。


「ええ〜い!取り囲んでたたかわんかぁ!!1対1ではキサマラでは話になっとらんではないかぁ!!」


司令が怒鳴り散らすが、夜天光の動きが速すぎて味方のスピードが付いていっていないのが現状だった。
ラッピドライフルは何発か当たっているのかも知れないが、全く影響が見られない。ディストーションフィールドに阻まれているのは明らかであった。

そしてステルンクーゲルがまた一機、錫杖に頭部と脚部を破壊されて墜ちていった。


「司令!今救援要請が入りました!」


「ええい!!こっちはそれどころではないのだ!!天下の統合軍がたった一機の機体によって壊滅させられるなど・・・」


急いた声でオペレーターが軍に届いた救援要請を報せたが、司令はそれどころではないといった様子だ。
それはそうであろう。いくら急を突かれたとはいえ、たった一機によって統合軍が壊滅することなどあってはならないことである。
少なくとも、この司令の今後の昇進には関わることは確実であった。司令はその心配をしていたのだ。

オペレーターはそのまま言葉を続ける。


「し、しかし、ネ、ネルガルの月ドックが現在攻撃を受けているとのことです」


「一企業のドックのことなどしらん!!それより、この私の責任が・・・うああ・・・」


耳を全く傾けずに悲嘆に暮れる基地司令。
責任。昇進。
多くの統合軍の人間と同じように、この司令にとってもそれだけがひっかかった。


「兵器から推測される敵は・・・火星の後継者だそう・・・グハァッッぁっ!!


夜天光に撃墜されたステルンクーゲルが司令所のすぐそばに落下し爆発し、基地司令は今後の昇進の心配をすることは無くなったのだった。



統合軍基地に夜天光の他には、もはや動く機体はなかった・・・。





シャラン





錫杖をひと鳴らしすると、夜天光はネルガルのドックに向かったのだった。





















ネルガル月ドック。


突如あらわれた積尸気の部隊に警備班の対応は遅れ、エステバリスの発進もままならぬうちにドックは制圧された。

統合軍基地にも連絡を入れたが、当の軍基地が壊滅しているために救援など来るわけもない。
それに元々、一企業であるネルガルのドックに精強な部隊などがいるはずはない。
急襲した積尸気の部隊にろくな反撃もできないまま、エステバリス隊は壊滅した。
あちこちに散らばったエステバリスの残骸から煙が上がっているばかりである。

そして、そのドックの中央には・・・。



ナデシコがあった。


ナデシコD。
ネルガルがナデシコCの後継艦として密かに建造し、つい先日完成したばかりの最新鋭の戦艦である。
明らかにこのナデシコDが目的で月ドックは襲われたのだった。





<月ドック周囲の敵勢力制圧完了>


<ナデシコの制圧も完了。いつでも出航準備可能の状態です!>


<よし、相転移エンジン始動。60%・・・70%・・・順調に稼働!>


壊滅したネルガルの月ドッグに響きわたったのは、積尸気とナデシコとの通信、そしてナデシコDの相転移エンジンの駆動音であった。
ナデシコDはそのまま上昇し、月の地表面に出る。遠くの統合軍基地のあるあたりからひときわ大きな煙が立ち上っている。近くからも幾筋もの煙が出ている。





シャラン





錫杖の音が響き、夜天光がナデシコの艦橋の上に姿を現した。


<・・・任務完了・・・。予定通りだ。被害状況は?>


夜天光のコックピット内に被害状況を示したウインドウが表示される。


<死者0  重傷者0  軽傷者4  機体損傷度10%以下>


<ナデシコCは、確保したか?>


「いえ、月ドックには確認できません。残念ながら確保できませんでした・・・」


ナデシコDの艦橋では計器チェックが慌ただしく行われていた。夜天光と交信する背後では計器のチェック等が忙しく行われている。


<・・・仕方ない。件の作戦はどうなっている?>


「はっ。草壁中将以下目標全ての救出に成功。まもなく小早川中佐の艦隊に合流するものと思われます」


作戦の成功を伝えると、夜天光はドックに降り立った。


<ふむ、では仕上げだ>


皆無に近い損害状況を確認して、ドック内を見回す。
夜天光は乗り捨てた一機の積尸気に向かい、落ちているレールガンを拾い上げ、構えた。





ドンドンッ





狙いは外れることなく積尸気の頭部と片腕を撃ち抜く。夜天光はレールガンを無造作に投げ捨てて上昇。ナデシコDの艦橋に着地する。

そして一言・・・。





<ナデシコD、いや、アンジャベル発進!>





夜天光がそう命令すると、アンジャベルと改名されたナデシコDは相転移エンジンを駆動させ最大船速で動き出した。





















〜あとがき〜

どうもはじめまして。超初心者のモノ書きのこーそんおうと申します。
身の程知らずもいいところですが、ついに始めてしまいました、ナデシコのSS。
しかも連載ということで、おもいっきしアフターカーニバルするかもしれません・・・。

夜天光とか積尸気とかがでてきてるんで、『あの組織』ですわな。
しかし、あからさまなこのタイトル・・・。もうバレバレですわな?

あと、ナデシコDに付けられた『アンジャベル』ってのはカーネーションの旧称。カーネーションはナデシコ科の多年草っす。よく母の日なんかに贈られますね。なんか語呂がいいんで使いました。花言葉は・・・知りません・・・。誰か教えてください・・・。

それではこの『機動戦艦ナデシコ〜“E”s from Venus〜』をお楽しみ下さい。最後までは長くなるでしょうが、お付き合い願えれば感謝感激雨霰です(古っ)。
また感想、誤字・脱字・誤植、批判等意見はお気軽に出して下さい〜

 

 

代理人の感想

 

カーネーションの花言葉・・・

ナデシコっぽく白ならば「愛の拒絶・愛を信じる・傷心・私の愛は生きています 」あたりですが、

濃赤のそれで「私の心に悲しみを・欲望 」と言うのも捨てがたいですね(笑)。

 

 

 

・・・今、電波が来たんですがナデシコDって

あとみっくばずーかが装備されてたりしません(超爆)?

いや、強奪だし、花の名前がついてるし(更爆)。