火星の後継者の反乱表明の放送から3日が経った。
その間に、火星の後継者は電撃作戦をもって瞬く間に火星全域を掌握。
火星極冠のイワトにその本拠を置いたのだった。
そして救出された草壁春樹が全宇宙圏に向かって演説を行った。



<私は火星の後継者代表、草壁春樹である!
諸君らも知っての通り、私は卑劣なる地球連合によって捕縛されていたが、勇敢なる同志諸君の手によって救出された!>


<今の腐りきった地球連合では、理想の社会などつくることは不可能である!
我々はここに改めて地球連合に対して徹底抗戦を敢行するものである!!>






火星宙域を勢力圏に治めた火星の後継者は、各ターミナルコロニーへの侵攻を開始した。
現在、ターミナルコロニーでは統合軍との戦闘が行われている。
しかし、無人兵器を大量に使用しているとはいえ、残存部隊を集めた程度の戦力では火星の後継者に分が悪く、各ターミナルコロニーでの戦闘は、統合軍が優勢であった。
統合軍は総兵力の3分の2を火星に向ける物量作戦でもってこの反乱を一気に鎮圧しようとしていたのである。










機動戦艦ナデシコ





A Story after the Movie...





“E”s from Venus






第4話 裏で暗躍せしもの











連合宇宙軍ヨコスカドック。
ナデシコCはここで発進準備を行っていた。
結局ナデシコCに集まったメンバーはいつも通り。
提督としてユリカ。 艦長のルリとハーリー、サブロウタ。 エステバリスのパイロットがリョーコ。ここまでは軍属だったのですぐに決まった。

他の元ナデシコクルーといえば・・・。
ヒカルは連載が終わったところで、新たなネタ集めの一環として快く引き受けた。休暇も兼ねているようだ。
イズミもOKのサイン。プロスペクターが交渉したので、どうやってOKをもらったのか詳しくは不明である。
ミナトとユキナは春休みに入っていたので(2202年現在、春休みは1ヶ月ほどもある。21世紀の日本人からは羨ましいことである・・・)、来てもらったようだった。
ウリバタケや整備班は快く引き受けた。 ルリが「お願いします」と頭を下げたら、整備班の元クルーなんてイチコロだった、とも伝わっている。


「ウリバタケさん、相転移エンジンの調子はどうですか?」


<オウ、ゼッコーチョーよ!!いつでも発進OKだぜ、ルリルリ!>


整備班はいつものメンバーが揃っている。いつものことだが、ハイテンションだ。


「ウリバタケさん、すみません。またナデシコに乗ってもらって」


<なぁに、気にすんな。久々にエステをいじれるってもんだしよ、何たってこの燃えるシチュエーション!!
最新鋭の戦艦、それもナデシコが強奪されたって聞いては、いても立ってもいられないってもんよ!>


ウリバタケはいつにもまして上機嫌である。最新のメカをいじれるということも彼にとっては大きな魅力なのだ。


<でもよ〜、ルリ。そのナデシコDの場所ってわかんのか?>


リョーコが通信に割り込んで疑問符を口にした。ナデシコDの所在はいまだに不明であるのだ。


「それはカイトさんたちの情報局が調べています。出航までに間に合うかどうかなのですが・・・」


ルリがそう口にしたときに、ハーリーが叫んだ。


「艦長!カイト少佐から通信入りました」


「!!ハーリー君、回線開いて」


「了解」


回線を開くと、ウインドウにカイトの姿が映し出された。


<ル、ルリさん・・・。よかった、間に合いましたよ・・・>


「か、カイトさん、一体どうしたんです?そんなにクマをつくって」


ブリッジにいる誰もが思ったであろう。それほどカイトは酷い姿だった。
目の周りはクマができまくっており、髪もボサボサである。


<いや、三日三晩ほど寝ないで、連続してIFSを使用していただけですよ・・・>


「ヒュ〜♪やるネェ、少佐」


サブロウタが口笛で誉める。
だけです、などとカイトはいうが、IFSの長時間の連続使用は、使用者に肉体的な疲労だけでなく精神的な疲労も大きく与える。
ましてや三日三晩の連続使用なんてものは、使用者の命に関わることもある。


「カイト少佐、まさかナデシコDの所在地がわかったんですか?」


<・・・く〜>


ハーリーの質問に対して、カイトは寝息で応えた。


「カイト少佐、カイト少佐ってばぁ!」


いくらハーリーが呼びかけても、カイトは船を漕ぐばかりである。よほど眠いのであろうか。


「カイトさん、ナデシコDの所在地は?」


<あっ、・・・ええ。
統合軍やヒサゴプランのコンピューターに侵入して調べたところ、ナデシコDは、スクナヒコ・タギツ・カグヤマを経由してタケルからジャンプアウトしています>










「うわぁぁぁぁぁん!何で僕の時には応えてくれないんですか〜〜〜





見事なハーリーダッシュをかまし、泣きながらブリッジから走り去るハーリー。
頑張れ、ハーリー君。きっと日の目を見るときも来るさ(かも?)。



「ターミナルコロニー・タケル、ですか・・・」


ターミナルコロニー・タケル。火星と木星を結ぶ重要拠点である。
つまり、火星の後継者は木星へ侵攻している可能性が非常に濃いということでもあった。


「いいんですか艦長?ハーリーの奴追わないでも」


「いいんです。ハーリー君にはもっと成長してもらわないといけませんし」


いつものことなのでサブロウタ以下クルーは慣れたものであるが、こういった光景を初めて見るカイトにとっては少々刺激が強かったようだで、しどろもどろしている。


<あ、あの〜・・・>


「いいんです、カイトさん。続けて下さい」





哀れハーリー君。君には不幸とダッシュとべそかきがお似合いなんだよ。



<エエ。後はヒサゴプランのシステムに侵入したときにわかったことですが・・・>


そういってカイトは口を濁した。


<何者かがヒサゴプランのコントロールシステムにハッキングを繰り返しています。火星の後継者が行っている可能性が高いですね・・・>


当然に予測されることである。火星の後継者はボソンジャンプを統制することで地球圏の支配を目論んでいる為だ。
事実、以前の南雲の反乱時にもヒサゴプランのシステムを乗っ取ろうとしていた。


「わかりました、ありがとうございます、カイトさん」


「少佐、ゴクローさまです。あとはオレらにまかせてゆっくりと休んで下さいヨ」


<そう・・しま・・すね・・・では・・・く〜>


通信を切る前にカイトはぶっ倒れてしまった。よほどの疲労だったのか。


「で、艦長、どうするんですか、作戦?」


「おっまたせ〜!ぶいっ!!


サブロウタが質問するとほぼ同時に、お馴染みのセリフでユリカがブリッジに入ってきた。全くもってこの天真爛漫ぶりはいつになっても変わらない。



「そうですね。現在スクナヒコ、ツキオミ、コトシロで戦闘が行われていますから・・・」


「じゃ〜ん!そこであたしの出番って訳ね♪で、ルリちゃん?どこに行く?」


まるでピクニックにでも出かけるようにユリカはしゃべる。これがこの人の最大の魅力なのだが。
ナデシコCには移動というのが当面の問題であった。ナデシコDの追跡という任務を表に出している以上、火星にジャンプして制圧というわけにはいかないのだ。


「取り敢えずは木星圏に向かうしかないと思います。
準備が出来次第出航して、太平洋上でターミナルコロニー・タケルにボソンジャンプします」



「「「「<<<<了解ッ!!>>>>」」」」



その場にいた全員、いや艦内の全員がコミュニケを通じて応える。
今までにないくらいにナデシコCのボルテージは高まり、盛り上がっていた。
初代ナデシコのクルー、現ナデシコCの3人、その他多少。
士気はいやがおうにも高まったのだった。






しかし彼等は、裏にうごめく組織の影には気付かなかった・・・。





















「会長・・・」


「ン?なんだい、エリナ君?」


いつもながら、飄々とアカツキは応える。
ちなみに、エリナ・キンジョウ・ウォンはネルガルの月ドックが再建中のために地球に戻っている。


「今回の事件、不可解ですわ・・・」


「ん、何がだい?」


「シークレットサービスが調べた所では、今回クリムゾングループは、火星の後継者に関わっていません」





ガタッ





アカツキは予期せぬ事に思わず席を立ち上がった。


「・・・それは、本当かい、エリナ君?」


背中を向けてはいるが、その顔の表情は容易に想像がついた。おそらく、強張っていることだろう。


「ええ、信頼の置ける情報ですわ。これは・・・我々の予期せぬ事態です・・・」


エリナも信じられない面持ちで報告している。
今まで、火星の後継者の裏では常にクリムゾングループが動いていた。
しかし、今回はそれが認められないという。
アカツキは素早く思考を巡らして次の指令を出す。流石この若さで一大企業の会長を勤め上げるだけはある。


「しかし、火星の後継者の裏には必ず何者かがいるはずだよ・・・?そうでなければあれほどまでの大見得を切りはしないだろうからね?」


「ええ、裏に何者かが暗躍していることは間違いありませんわ。そうでなければ月上空にあった戦艦の残骸などは・・・」


「エリナ君。ネルガルに取って代わろうとしている可能性のある企業を至急調べてくれ。事は急を要するからね」


アカツキはエリナに至急の指令を出す。


「それと、フレサンジュ博士の所在もね・・・」


「わかりました。シークレットサービスの総力を尽くさせますわ」


エリナは颯爽とした足取りで会長室を出ていった。

クリムゾングループは今回の反乱に関わっていない。
その事実はネルガルの会長であるアカツキをも驚かせたのだった。











〜あとがき〜

どうも、こーそんおうです。第4話をお送りしました。

さて、いよいよ核心に迫ってきました。少しだけですけど。
今回は何か重要そうな場面がでてきてます。敵の正体についてですね。
徐々に分かるようにしていくつもりですが・・・。

今回、ナデシコクルーはすでに集まっています。
いつの間に、ってのもあるんでしょうが、そこまで書いとると長くなって収集がつかんので・・・。
あと1人、次回に乗り込みますけども。

そして例のごとくハーリー君の登場。
やっぱりハーリーダッシュがなくてはハーリー君とは言いません。
今後も彼には不幸を一手に引き受けてもらおうと思っています(笑)。

感想、誤字・脱字・誤植、批判等意見はお気軽に出して下さい〜。

 

 

代理人の感想

 

総兵力の三分の二・・・・ますますもって統合軍=地球連邦軍宇宙艦隊に見えてきた(爆)。

この兵力が壊滅した後宇宙軍が返り咲いて・・・・・・・

すると、宇宙軍=ティターンズ(核爆)!?

コウイチロウがジャミトフで親キノコがバスク?

ついでにルリはパプティマス=シロッコ(超爆)?