機動戦艦ナデシコ

 

〜ILLEGAL REQUEST〜

 

 

 

 

 

 

第2話      「任せとけ」じゃいられない!

 

 

 

 

時を物語より少し溯る。

 

 

〜第一次火星会戦〜

 

「総員退避!本艦をぶつける!」

 

ブリッジブロックを切り離し船体が飛来してきたもの、後にコードネーム‘チューリップ’と呼称されるも

のにぶつかり、大気圏に突入していたチューリップの進入角度が変わる。

そう、そのままであればかつての歴史通りに進んでいたのだろう。

彼らがそこにいなければ・・・・。

 

 

 

「やっぱり来るか・・・。当然と言えば当然か。何にも干渉してないし」

 

「でも見殺しにするつもりは無いんでしょ?」

 

「ま、な。ばれない程度にね。

 地下シェルターに補給物資を山のように詰めたし後はアレの落ちてくる衝撃を緩和させておしまいだ。」

 

「イネスに会って行かないの?」

 

「今のアイツ確か28だろ?同い年のはずの俺達が17歳の俺達と寸分変わらない顔でいてみろ。

 きっとアイツは俺達を実験に使う。」

 

「まさか・・・・。いくら彼女でも同僚には手はださないと思うけど?」

 

「それは甘い!百花屋のイチゴサンデーより甘いぞ!!

 ヤツはやる!俺には解る!

 ヤツは科学者の本懐を遂げるためには知り合いすら実験材料に使うんだぞ!?」

 

興奮していたので一気にまくし立てる。

 

「ねえ、トウヤ?」

 

「なんだよ?」

 

「科学者の本懐って何?」

 

「‘こんな事もあろうかと’ってやつだよ。技術屋の理想らしい」

 

「あんたも分類としてはその技術屋になるんでしょうに・・・・」

 

「なんだよその呆れた目は・・・・」

 

「べ〜つに〜」

 

失礼にも程があることをさらっと言ってくれた。

 

「まあいいけどな?それより本命様が来たぞ」

 

「それにしても・・・。いきなり押しかけてくるんだもの。男のレベルははっきり行って三流以下ね」

 

「冗談言ってる場合か・・・。ゼラニウム起動。所でなんで又お前が一緒に来てるんだ?」

 

「話しは後で良いじゃない?」

 

「はいはい。連合軍もいないし目撃者は地上にいない。

 事実を知るのは木連のみ。お披露目としてはちょうど良いかな?」

 

「予備コンソール貸して下さい。貴方一人じゃこの子は全力を出せないでしょう?」

 

「シズクに変わったか。じゃあ管制系頼む。駆動系はこっちで引き受けるから」

 

「了解」

 

「さあ行こうか」

 

ゼラニウムの両目に蛍色の光が灯るとウイング部分を開く。

 

戦場に舞い降りた天使。その呼び名は過言ではない。

 

スラスター全開でチューリップに取り付く。

 

「力比べですか?」

 

「面白そうだろ?」

 

「素直に故郷を消したくないと言えばいいじゃないですか」

 

「俺はそんなに素直じゃない。ただの意地だよ」

 

「それも答えの一つです」

 

ゼラニウムが落ちてくるチューリップを押し返し勢いを殺しきる。

ウイング部分より噴射炎が更に伸び、まるで猛禽類の翼のように強く優雅に羽ばたいた。

 

「これだけの質量受け止めてもまだまだ底がある、か。とんだじゃじゃ馬だぜ」

 

「この子はまだまだ強くなります。貴方と供に・・・。それと私の入るスペースを作ってくださいね?」

 

ちなみに今シズク(カスミ)はまたもやトウヤの膝の上である。

 

「まあ一応カスミもジャンパーだしシズクは適格者。断る理由はないけど結構加速とかGがきついぞ?」

 

「重力緩和なら明日香インダストリーの方に依頼しています。それにカスミさんもこの案には賛成です」

 

「そうか。じゃあ後は足の確保か。機動戦艦ナデシコ試作型ND−00ヤマトナデシコ。

 幻の零番艦と言われた、ね」

 

「かつての歴史では、です。それにどうせ潰れちゃうんです。有効利用に越した事はないでしょう。」

 

「商人の鏡だね」

 

「私、商人じゃありませんよ」

 

「カスミの事だよ」

 

「誤魔化してませんか?」

 

「気のせいだよ」

 

「それに貴方も製作に携わっているんでしたよね?」

 

「ノーコメント」

 

追及を逃れるべくチューリップを稼動不能にしてゼラニウムを研究施設内に進入させた。

 

 

 

 

〜時は再び現代へ〜

 

「それにしても・・・・」

 

帰ってきたアキトのエステを見上げてトウヤは呟く。

 

あるのは爆炎で剥げた塗装の塗りなおし位だろう。被弾個所は見当たらなかった。

 

「班長〜!エステの被弾無いみたいですよ〜」

 

「そうか!あの数の中良く被弾もせずに帰ってこれたもんだ。

 たしかコックで乗り込んできたんだろ?アイツ」

 

「そうらしいですね。パイロットも少ない事だし多分臨時でやらされるんじゃないですか?」

 

「ヤマダは足折っちまって使い物になんね〜しな〜。」

 

(俺がIFS付けてるってのは黙ってた方が良いか?)

 

「じゃあこのエステは俺が整備しておきます」

 

「お前、出来るのか?」

 

「仕様書どうりでしょ?これでもサブメカニックチーフですから。班長に頼ってばかりではいけませんし」

 

「そうか・・・」

 

「それに班長にはお仕事は山ほどあると思います。‘こんなこともあろうかと’ってやつが」

 

「おお!!お前は解ってくれるのか?俺達技術屋の熱い魂が!」

 

「王道ですよね?」

 

口元を不敵ににやりとさせる。

 

「だからここはお任せ下さい」

 

「よし!ここは任せたぞ!」

 

これがウリバタケ研究室の始まりである。

 

 

 

「やっぱり・・・」

 

トウヤはコックピットに乗り込み点検をしている。

 

「もう少し早く気付くべきだったな」

 

このエステバリスはかつてアキトが駆っていたブラックサレナとは違うのである。

 

「エステの制御コンピューターがアキトのIFS伝導率に耐えられなかったのか?改造決定だな」

 

アキト自身は気付いてるのか気付いていないのか解らないが並みの経験の蓄積ではないのだ。

まして彼用に調整したエステではないのである。無理がたたって当然だ。

 

「下手すりゃ制御不能でバッタとジョロにたこ殴りっていう事もあったかもな〜」

 

コミュニケを何やら操作すると思兼のウインドウが開く。

 

「誰がために鐘は鳴る。思兼アクセス。」

 

オペレーターであるホシノルリとネルガル会長であるアカツキナガレしか知らない思兼の管理用コード。

トウヤが使用したのは管理用とは異なる‘製作者’である彼を含め数人しか知らない裏コードである。

 

「始めまして。いや久しぶり、かな?」

 

「お久しぶりですマスター」

 

「マスターは堅苦しいけどまあいいか。オペレーターとは友達になれたか?」

 

「はい。ルリは良くしてくれます。ここ数時間ちょっと様子がおかしいですが」

 

「そう、か。(ホシノルリが帰還者かな?)早速だけどお願いが二つあるんだ」

 

「なんでしょうか?」

 

「ホシノルリを含めた誰にも知らせずに連絡回線を一本用意する事。

 後は俺の経歴をこのデータに改竄しておいてくれ」

 

データをコミュニケを経由して送る。

 

「何故ですか?」

 

「公的にと私的にと二つあるがどちらが聞きたい?」

 

「私的な方を、お願いします」

 

ウインドウと会話しているのだから傍から見れば滑稽だろう。

コックピットのハッチは閉まっているのでその心配はないが。

 

「(良い傾向だな)正義と言う名の免罪符を盾に野心を持つ男達がいる。

 その野心の陰で傷付き倒れていく者達がいる。

 全てのものを救えるといえるほど傲慢ではないし、自惚れてもいないが本の一握りの人達でも良い。

 救えるなら、いや護る事が出来ると思えるからそうして欲しい。

 今俺の存在は君の友達にはイレギュラーそのものだろうから。後は結果が証明してれるさ」

 

「納得はしませんがとりあえず了解です」

 

「ありがとう、思兼。今度電脳空間内ででも酒でも飲み交わそう」

 

「楽しみにしています」

 

ウインドウが消える。

 

 

 

「フレームの能力値アップか。ヤマダがアキトと同じ位の能力ならそんなに苦労しないで済むのに」

 

エステの機動性とパワーバランスに悩みながらアキトエステから降りると軍服を着てサブマシンガンを構えた

固太りの若者に呼び止められる。

 

「動くな!機動兵器を確保してどうするつもりだ?」

 

一つ、溜息をつく。

 

「俺はIFSつけていないのでエステの操縦は出来ません。

 それより他の人達はどうしたんですか?見当たらないですけど」

 

「なんだ脅かすな。この艦は地球連合軍が占拠した。

 ナデシコのクルーは食堂に集まっているはずだ。お前もさっさと行け!」

 

何もマシンガンで小突くことも無いのに、と思ったがとりあえず聞く事を聞くとする。

 

「・・・・食堂ってどこでしたっけ?」

 

目の前の男が呆れたような顔をしたのが解る。無論狙ってやったのだが。その瞬間。

 

        ダン!

 

一瞬でマシンガンの銃口の内側まで歩み寄りボディブローが炸裂する。

 

                ばきゃ!

 

「がっ!」

 

「ご愁傷様。でも俺も小突かれたし引き分けって事で」

 

実際はそんな甘いものではなく肋骨の一本や2本折れているだろう。入院決定である。

 

「まあ海賊行為である事は確かだし、お咎めはないはずだ」

 

上着を剥ぎ取り左脇にある軍用拳銃を抜き取り自分の懐にしまい、上着で器用に拘束する。

 

「よし!じゃあ食堂まで行きますか・・・・・」

 

ずるずる軍人を引きずったまま・・・・・。

 

 

 

「奪われた秘密基地!軍部の陰謀!!くぅぅ〜〜〜!!鬼のように燃えるシチュエーションだぜ!」

 

適当な倉庫に先ほどの荷物を放りこみ現在ヤマダジロウ(ダイゴウジガイだ!ば〜いジロウ)が食堂のテーブル

に仁王立ちし演説の真っ最中。

 

「お前足折れてるんじゃなかったか?」

 

まあゴートさんの冷静な突っ込みというヤツでいまさら気付いたジロウが痛がりだす。

 

(バカはノリと気分で痛覚を忘れることができるらしい)

 

一つ賢くなった所でアキトに視線を移す。少女と顔を寄せて密談中。やっぱり彼女も帰還者のようだ。

 

「どうした!!皆、暗いぞ!!俺が元気の出るものを見せてやる!!」

 

なにやらポケットの中からディスクを取り出す。

 

(絶対あの大きさはポケットに入りきらないだろう。四次元ポケット?)

 

素朴な疑問を抱えながら食堂の自販機で買ったオレンジジュースを飲んでいる。

 

 

ジロウを先頭に突如駆け出すナデシコクルー。

足を折っているジロウは当然の如く走り辛い訳で早々にこけて床と一体化している。

かく言う俺も既に先頭集団の仲間入り。

まあもっぱらメカニッククルーと生活班?のホウメイさんでブリッジに向かう。

 

「止まらんと・・・かはっ!」

 

「止まれ!」

 

「セリフにオリジナリティーがないので却下だ!!」

 

立ちふさがる軍人など瞬殺だ。気絶した軍人は整備班が誇る人海戦術(圧し掛かり)で行動不能である。

 

 

「ちょろいもんさね」

 

中華鍋で後頭部を一撃し気絶させたホウメイさんがウインドウの向こうのプロスさんにブイサインを送る。

 

「これから帰ります。出迎えよろしく!」

 

一瞬懐かしい光景がオーバーラップし、ユリカちゃんがナデシコ艦長ミスマル・ユリカに重なる。

 

「艦長。アキト機がチューリップの牽制に空戦エステで出ます。

 カタパルトの射線に入らないで下さいね?」

 

「わかりました。すぐそちらに向かいます」

 

(気付かない、か。少し寂しいかな?)

 

兄貴分としては思うところがあるもののとりあえず仕事を続ける。

 

 

マスターキー使用から3分でグラビティ・ブラストをチャージし終えチューリップ内部より強力な一撃で決着を

つけた。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

〜堕作者のあとがき〜

 

こんなので良いのだろうか?まあ良いとしよう(笑)

 

このまま書き続けたらどうなるのだろうか?ゼラニウムがその内ライ○レード化しそうですね。

二人乗りは男のロマンと言う事で納得していただけると嬉しいのですが。

まあ付け足したものが実際本編であったかなんてどうでも良くなっている今日この頃。

今度はマスドライバー(質量射出装置)でチューリップを撃墜だ!(大嘘)

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

 

久遠の月さんからの投稿第三話です!!

・・・受け止めたんですか?

落下するチューリップを?

まあ、今更トウヤさんに関しては何も言いませんが・・・

しかし、アキトとルリにどうアプローチをしていくんでしょうかね?

凄く気になりますね〜

案外アキトと格闘戦とかしたりして(苦笑)

・・・北斗とはどうなるんだろう?

う〜ん、実に先が楽しみにですね!!

 

それでは、久遠の月さん投稿有難うございました!!

 

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