当人の立場を考えれば質素にすぎる執務室、

デスクに置かれた小冊子を前に、ロバート・クリムゾンは困惑気味に問うた

 

「なんだこれは?」

 

「まずは御一読のほどを会長」

 

 

 

 

 

「漆黒の戦神」アナザー
アズマリア・クリストファの場合

 

 

 

 

 

わたくしがあの方とお会いしたのはそう・・・秋も終わりを告げ冬将軍が訪れた11月も半ばを過ぎた頃でした。

 

その日は近くで起こった戦闘の為、わたくしの預かる教会に付近の住人の方々が避難をしておりました。

普段ならば町外れにある教会までは戦禍がとどく事は無かったはずなのですが、

その日はいつにも増して激しい戦闘だったのか老朽化した外壁が崩れるほどの轟音が鳴り響いてきたのです。

 

 

恐れおののく人々を前に自分の無力さを噛み締めながら必死に神への祈りをささげていたその時、

無常にもあの恐るべき悪魔の機械が現れたのです。

せめて街の人達だけでもと、なれない銃を手に駆け出したその刹那、悪魔の機械は黒い影に踏み潰されて

しまったのです。

太陽を背に現れたその黒い機影は天使と見間違えるほどに美しく、そして荘厳な雰囲気を放っていました。

 

その機体はわたくしを見つめると唐突に跪き胸のハッチを開いたのです。

機体の内から現れたあの方はその機体がそのまま人の形を為したかのような漆黒の装束に身を包んだ

青年でした。

あの方は

 

「無茶をする人だ」

 

と苦笑いを浮かべたあと、緊張に固まったわたくしの手から銃を取り上げ、

皆に聞こえる様に朗々とした声で戦闘の終了と身の安全を告げたのです。

 

 

その後、あの方は軍に掛け合って調達した糧食を自ら腕をふるって調理し、

炊き出しとして惜しげも無く皆にふるまって下さいました。

 

 

わたくしは始めて見たその瞬間に感じた猛々しさと、

食事の用意の際に見せる穏やかな表情のギャップをなぜかその時、当たり前のように受け入れていました。

 

あの方がかの「漆黒の戦神」その人であったと知ったのは更に後のことですが、

あの時父なるイエスの像の前であの方に抱かれた瞬間、

自分がこの方にお使えするためにこの世に生を受けた事、そしてこの方こそがこの混迷の時代に

希望をもたらす光だとの啓示を受けたのです。

 

_シスター・アズマリア・クリストファ談

 

 

 

このように彼の人物の手管にかかれば敬虔な修道女でさえもこの有様である。

軍の物資を女性を口説くために横流しするような人物が真に英雄と呼ばれるにふさわしいのか、

私は非常に疑問に感じるといわざるを得ない

 

 

 

太公望書林「黒い死神、その真実に迫る」File1より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんだこれは」

 

こめかみに走る鈍痛を指で抑えながらロバート・クリムゾンは再び問うた。

 

「これこそはわがクリムソングループ出版事業部の考案した企画、

 テンカワアキトの行状を赤裸々に暴露する事で彼の英雄像を完膚なきまでに叩き潰すという・・・」

 

「却下だ! これでは逆効果ではないか、どうみても美談にしかならん」

 

「しっ、しかし、もう第1版は各地に配送済みですし、初回特典に用意した10冊までをファイル出来る

 クリアケースの発注も済んでおります、このまま企画中止では採算が・・・」

 

「・・・好きにしろ、ただし元がとれん様なら分かっているな?」

 

「ははー!!、もちろんであります」

 

去っていく部下の背を見つめながら

 

「ウチも長くないかもしれん・・・」

 

と、重く重く呟くのであった。

 

 

 

 

「各務、なに読みよると?」

 

訓練を終えて私室に戻ってきた神楽三姫は相部屋の各務千沙が読みふけっている小冊子を覗き込んだ。

 

「これ? 地球から送られてきたテンカワアキトの資料、結構面白いわよ、三姫も読む?」

 

「どれ・・・ふんふん・・・」

 

「どう、面白い?」

 

「・・・各務、この本もしかして舞歌様にもお見せしたと?」

 

「あら良く分かったわね、ずいぶん真剣に読んでたみたいだけど?」

 

三姫はその言葉に力尽きたように跪いた。

 

「ちょっ、どうしたのよ三姫」

 

「さっきトレーニングの後、舞歌さまがウチの式服一揃い持っていったとよ、何につかうかお聞きしたら、

 ナデシコとの和平交渉の時に着て行くって・・・」

 

「式服ってあの巫女さん装束の事?パイロットスーツにも使ってる・・・」

 

コクリ

 

うなずく三姫の表情に重苦しい空気が漂い出す。

 

「舞歌様そろそろ適齢期で焦っておられるから・・・」

 

その一言には重くなった部屋の空気を軽くする力は無かったようだ・・・

 

 

 

「あの・・・本当にそのような格好で和平交渉に望まれるおつもりですか? 東司令」

 

「氷室君? 言葉は正しく使わなくちゃね、和平交渉ではなく、その前段取りの為の交渉でしょ、

 それに旧家たる東の家では巫女装束はれっきとした正装なのよ」

 

「(さっき神楽から借りて来たくせに・・・)ハァ、そうなんですか・・・」

 

「そういう事、それに"あの"ナデシコのクルーと話し合いをするのよ、

 まず見た目で衝撃を与えて相手がひるんでる隙に会談を有利に進めでもしなきゃ、

 足元すくわれちゃうかもしれないでしょ?

 (それにしても・・・テンカワアキトの好みが聖職者だったなんて・・・

 大丈夫、洋の東西こそ違えど巫女も立派な聖職者、ましてモンゴロイドの家系ならこちらの方が遥かに

 ぐっと来るはずだわ)」

 

後に会談におもむいた舞歌がありとあらゆる聖職者のコスプレをしたナデシコクルーに出迎えられて、

軽い敗北感に陥った事はまったくの余談である。 

 

 

「バカばっかり・・・ってちょっと待て!! なぜ俺がこの台詞を言わねばならん!!」

 

「北ちゃん何に向かって叫んでるの?」

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

「今日の戦神さん」

 

薄暗い部屋の中、Uの字に並べられた15個の椅子がある、そのウチの1つに腰掛けた人物

スバルリョーコが苛立たしげに呟いた。

 

「おっせーな、注文の品はまだこねえのかよ」

 

「落ち着いてください、五花の皆さんはもう食堂を出てるはずなんですから」

 

いさめるアリサの声もどこか苛立たしげだ。

 

コンコン

 

そのとき軽いノックの音が響き、同時に弾むような明るい声が響き渡った

 

「おまたせしました〜、ナデシコ食堂デリバリーサービスです」

 

扉が開きホウメイガールズ達が布に包まれた大きなカーゴを押して入ってきた。

 

「ご注文の品スペシャルデコレーションケーキです、新鮮な漆黒の戦神を素材の持ち味を殺すことなく

 厳選された素材で調理した本格派のデザート、ううんこれはもうメインを張れる一品です」

 

「えーなお今回は対象者の年齢を考慮して上半身のみを調理してます」

 

「やー苦労したのよ、何せ薬物に異様なまでに敏感な戦神を眠らせるために、

 わざわざヨーロッパから天然素材のブラックロータスを調達しましたからね」

 

得意げに話す彼女達の背後でケーキと呼ばれた物体がもぞもぞと動き出した。

 

「うう・・・なんだ?どうして俺寝てたんだ?たしかミカコちゃんに料理の味見を頼まれてその後・・・

 くそっ、動けない」

 

「わー凄い、活造りなんだ〜」

 

「ちょっと活き良すぎません? これじゃあ食べにくいですよ」

 

「・・・仕方ありません皆さん抑えつけるので両手がふさがってますし、

 少々はしたないですが直接口でなめ取るしかありませんね(はぁと)」

 

「しょっ、しょうがねえよな?両手ふさがってるんだから(はぁと)」

 

「うんうん、しょうがないよね(はぁと)」

 

「それでは皆さん、手を合わせて」

 

「いた〜だきます」×15

 

「ちょっとまて〜〜!!」

 

その悲鳴は遠く離れたブリッチにまで響いたそうな。

 

 

 

「無駄とは思うが・・・生きてるかアキト?」

 

「ウッウッウッ、けがされちゃったよナオさん、どうしよう・・・」

 

「出来れば俺にその台詞を言うのは辞めて欲しいんだけど・・・」

 

グスグスと泣き崩れるアキトに溜息を吐きながら、疑問に思っていたことを聞いてみる。

 

「なあアキト、この本に書かれてる「父なるイエスの像の前であの方に抱かれた」ってのはどういう意味だ?

 もしかして俺達の見てない隙にヤッちゃったのか?」

 

「(グスグス)ただ単に教会の外壁が崩れてきたからとっさにかばっただけっす、

 なのに皆信じてくれないんだ〜〜!!」

 

・・・彼のこれからに幸のあらんことを、エイメン。

 

おわり

 

 

 

 

あとがき

・・・痒い、書いてて痒かったっす(;^^A

お約束どうりシスターにチャレンジしました、

ノンポリなんで宗教には詳しくないのでかなり適当になりましたが・・・

 

とりあえず民明書房は現在「謎」の資金凍結を食らってるという事で・・・(笑)

 

次はいつもどうりに戻すつもりですが・・・

ちょっと予定変更で女教師ではなく普通の教師になると思います。

 

それでは、このような駄文にお付き合いいただきどうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

黒貴宝さんからの投稿第六弾です!!

ふふふ、とうとう聖職者に手を出しましたね?

留まるところを知らない、アキトの暴挙!!

ナデシコに帰るまでに、一体何人の被害者を出したんだ?(笑)

まあ、この調子で主要職業全員を落としてください(爆)

 

でも生け造りって・・・(汗)

 

それでは、黒貴宝さん投稿有り難う御座いました!!

 

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