＿…グリシーヌさん？
グリシーヌ？ 誰の事をいっておる、わたくしの名はブルーアイ、
パリにある劇場テアトル・シャノワールにてダンスを披露することを生業とするものだ。
漆黒の戦神アナザー
ブルーアイの場合
＿えっ、でもグリシー…
（チャキ）ブルーアイだ。
＿わぁっ！ わっ分かりました、ブルーアイさんです、ハイッ！ ですからその痛そうな斧を下ろしてください！
…まぁよかろう、で？
＿はっ？
聞きたいことがあるから訪ねて来たのであろう？ それともまさかわたくしをからかっておるのか？（チャキ）
＿そそそ、そうでした、実は「漆黒の戦神」のことでお聞きしたいことが…
ああ、そのことか…
ふむ…あれは先の戦争が終結して少し経ったころのことだ、シャノワールでモギリのアルバイトの募集をしていたのだが、
それに応募してきたのが彼だったのだ。
実はな、わたくしと彼とは以前ちょっとした出来事で面識があったのだが…
＿山で熊引きずってるところにでも遭遇しましたか？
…言いたいことがあるのならはっきり言ったほうがよいぞ？（チャキ）
＿ひぃぃぃぃ、なんでもありませぇぇぇん！！
フン、話を戻すぞ？ そのときの彼はひどく憔悴していてな、
「モギリの経験はあります、なんでもしますから雇ってください、
って言うか匿って」
などと泣き付かれてな、以前の借りを返すよい機会だと雇うことにしたのだ。
そういえばシャノワールのほかの者達とも面識があったようだが…
＿彼の手の速さと広さは有名ですからねぇ…
まったく、あれさえなければ「完全無欠の花婿」にふさわしいのだが…
＿あの…自分から言ってません？
ううう、うるさい！ 気にするな！
とにかく！ 雇ってみたらこれが使えるやつでな、
厨房からモギリ、時にはステージの司会まで、完璧にこなしてくれている。
実にありがたい限りだ、
一度、我が屋敷のメイドたちに手ほどきを頼みたいものだな。
＿あの、お話を伺ってると、まだその劇場にいらっしゃる様に聞こえるのですが。
無論であろ？
辞めたなどとは一言もいっておらぬぞ？
＿大ニュースじゃないですか！ 彼の消息は世界中の注目の的なんですよ！？
ふむ、だがこの本が出るまでには時間がある、彼ならばその時間だけで十分ではないか。
＿えらくあっさりしてますね、彼が逃げればあなたも会えなくなるのでは？
ええい、うるさい、あまり深く突っ込むな。
＿（怪しいなぁ…）そうですか、それではグリシーヌさん、本日はどうもありがとうございました。
…一度学習能力のテストをしたほうがよさそうだな（チャキ）
民明書房刊「漆黒の戦神、その軌跡」より抜粋
「いたか」
「だめです、見あたりません」
「くそう、インタビューから二時間しかたってないんだぞ？ いくらなんでも早すぎる」
「出版社内部の同士から、これ以上の情報の塞き止めは無理との連絡が来ています」
「「彼女達」が動く前に身柄を確保したかったのだが…」
「どこへ消えたのだ戦神は…」
「この作戦には我が組織の会長も期待されているのだ、いいかげん彼の者に金色の鎖という引導を渡し、
我らあぶれ者にも春は来ると言うことを証明するのだ！」
TA抹殺組合の健気な努力は続く……
どことも知れない場所、その地下室
「…これはないんじゃないか？ グリシーヌ」
「こうでもせねば貴公は逃げるであろう？ 当然の処置というものだ」
かなり不機嫌そうなアキトの声。
インタビュー直後、逃走準備に入ったアキトを、匿ってやると言葉巧みに騙し、
連れ込んだ挙句、屋敷のメイド総がかりで縛り上げて拉致監禁とくれば当然かもしれない。
女性に手をあげられないアキトの意外（でもなんでもない）な弱点
「とにかく既成事実さえあれば他の者たちも文句は言えんというもの、
なに、やさしくするから安心するがよい、ちなみにわたくしの希望として一人目は貴公に似た男子が良いのだが…」
「ヨヨヨ…お嬢様、ご立派になられて…」
「まっ、待つんだグリシーヌ！ 僕、初めてなの…じゃなくて！ こういうことはお互いもっと良く知り合ってから…でもなくて！！
ああもう、何いってんだ俺！」
「ブルーメール家に代々伝わる閨の技、とくと味あわせてやろう…」
「もっと自分を大事にするんだ、って人の話を…ってああっ！ 堪忍してぇ…」
数刻後
寸前でジャンプに成功し、ひそかに用意していたセーフハウス（出向時代に買い取っていた）で身体を休めるアキト、
かろうじて純潔は守れたようだ。
「ハァハァ、もう少しで堕ちるとこだった、くそっ、これで手持ちのCCを全部使い切っちまった…
はぁ、いつまで逃げればいいんだろ」
「そう思うならいい加減、観念すれば良いじゃないですか」
「そうもいかないよ、重婚なんてそんな反社会的な…って誰だ！！」
「お久しぶりですアキトさん」
「げっ、ルリちゃん、何でここが！？」
「これまでの逃走経路から割り出したいくつかのポイントで、ボース粒子の反応があったポイントがここです」
ご丁寧にマップまで出して解説くれるルリ、イネスさんの羨む姿が脳裏に浮かぶような説明っぷりだ。
「…それにしても早過ぎないかい？」
「出版社の発刊スケジュールから調べて行けば、アキトさんの立ち回り先はそれなりに予想が立ちますから…」
「前から思ってたんだけど、あの出版社の情報網ってどうなってんの？」
「こっちが聞きたいくらいです、
…それにしても何が不満なんですか？ もうアキトさんの取り合いは止めたって言ってるじゃないですか」
「いいかいルリちゃん、俺にだって恥ってものがあるんだ、「こうして天川アキトはハーレムの王様になりました、めでたしめでたし」
なんて昔話の主人公になるのはごめんだよ、それに、重婚なんて許されない犯罪だよ」
「…自分で火種まいてるアキトさんにそれを語る資格はありません、ほら、教会の手配は済んでます、というより１つ買い取りました。
みんなのところへ帰りましょう」
「…わかった、俺の負けだよ、帰ろうナデシコに」
「やっと分かってくれたんですね、それじゃあ行きましょう、ナビゲーションは私が…」
「…ごめんルリちゃん」
「えっ？ あっ！」
ルリの髪留めに仕込まれたCCを奪うと速攻でフィールドを展開する、ここら辺、A級ジャンパーの強み。
「いつか俺の本当の居場所を見つけたらかえってくるからね〜」
アキトの消えた虚空を見つめるルリ…
「逃げられると思うあたりが甘いです、アキトさんの居場所は私の膝の上にしかないってことを
じっくりと教育してあげなければいけないようですね…」
クスクスクス……
ルリの小さな笑い声がいつまでも響くのであった…
いつまでも、いつまでも………
おわり
あとがき
…なんとなく、いやに黒い終わり方した気がするなぁ（＾＾；
とっ、ともかく、このような駄文にお付き合いいただきどうもありがとうございました。
個人的に3はロベりん萌え♪
代理人の毒電波
「ブルーメール家に代々伝わる閨の技、とくと味あわせてやろう…」
そうすると・・・・
「受けきれるか！？ 大理石をも粉砕する、我がブルーメール家に八百年に渡り伝承されし戦斧術最大奥義！」
とかグリシーヌが叫んだり、
「貴様は私が直々にブルーメール家に千百年に渡り伝えられし拷問術『悶絶百年殺し』でこの世の地獄を味あわせてくれる・・・・・」
といいつつ底冷えのする笑みを浮かべたり、
「ふっ・・・我がブルーメール家に七百年に渡り伝えられし秘技、『活殺自在の術』（＝死んだふり）をもってすれば、奴の目を欺くことなど造作もないわっ！！！」
と意味もなく胸を張ったり、
「我がブルーメール家に五百年伝わるイカダ」
なるものがあったりするんですね（爆）？
ああ、懐かしいフレーズ（笑）。