時ナデ・if
<逆行の艦隊>

第26話その4 シャクヤク強奪










現代戦において戦術的奇襲が成功することはそれなりにある。
これだけ探知機器が発達していようとも、それを扱うのが人間である以上はヒューマンエラーが付きまとう。
ゆえに2重、3重のチェック機構をもうけるなどの工夫がされるものだ。
簡単に言うなら1人なら見過ごしても3人なら誰か気付くだろう、くらいのことだ。

ただし、このシステムもいいこと尽くめというわけではない。
他が気付かなかったことに「気付いてしまった」者は当然ながらそれに対処せねばならない。
人によっては「貧乏くじを引いた」とか「面倒」とも考えるだろう。
それが自分の生死に関わる事態となればなおさら……

「監視衛星は何をしていた!」

――― 居眠りしてたんじゃないかな、たぶん。

壮年の艦長の発した怒声に内心でそう答える。
もちろん確証があったわけではないが、そうとでも考えなければこの状況はありえない。

「相対速度プラス42、接敵予想時間は7分後!」

――― まずいよなぁ、これ。

このときばかりは「良く見えてしまう」電子作戦艦の解析能力が恨めしい。
さすがにナデシコCには及ばないものの、電子戦でナデシコBには対抗できる……たぶんできると思う。
できるんじゃないかな? まあ、ちょっとは期待しておけ ――― くらいの能力はある。
ただし、艦容積の大半が電子戦兵装に割り当てられており、その隙間を埋めるように居住区が配置され、
武装は最後にオマケのついでの気休めの枯れ木も山のなんとやらで付けらられた程度しかない。

ナデシコBに対抗できる(以下略)な電子戦能力はリソースをそれに注ぎ込んだ結果であり、
その点で非常にアンバランスなため戦力としては使いづらい。
マキビ・ハリが現在オペレーターを務めるリクニス級電子作戦艦2番艦、
個艦名<フロスククリ>とはそういう代物だった。

その歪な艦が目一杯の能力で捉えたのは1隻の艦影。
レーダー波の反射パターンを解析したところ、大まかな形状は把握できた。
それを類似するパターンデータと照合すればどんな艦なのか知ることができた。

「大型艦……戦艦クラスだねえ」

オペレーター補佐という良くわからない……そして配置した本人たちも恐らくよく考え決めたわけではないであろう肩書きで乗り込んでいるルチル・クォーツが呟く。

「わっかりやすい囮だねぇ」

レーダースクリーン上に映っている艦影は1つ。
対するこちらはフロスククリを除いても戦艦1、巡洋艦1、軽機動母艦1、護衛艦2、駆逐艦4のちょっとした規模の艦隊だ。
軽機動母艦は巡洋艦の船体を流用して20機ほど直掩専門のエステバリスを搭載している。
また、2隻の護衛艦はハリネズミのように防空火器で固めた対機動兵器専門の艦だ。
この編成は艦隊戦、対機動兵器戦のどちらにも対応できる柔軟性がある。

そこに単艦で突っ込んだところでたこ殴りにされて終了、である。
戦艦はその強大な火力と堅牢な防御力を誇るいわば移動要塞であるが、その巨躯ゆえに慣性が大きく、
宇宙空間の機動戦闘では単位時間あたりの加速性能と旋回性能が小型艦艇に比較して劣る、劣らざるをえないという弱点がある。
艦砲の射程は一般にエンジン出力の大きな大型艦艇のほうが小型艦艇をアウトレンジできるが、
一方で小型艦艇は機動力を駆使して武装の射程内に入れば、大型対艦ミサイルがある。
駆逐艦クラスのグラビティブラストでは戦艦のディストーションフィールドを抜けない。
しかし、対フィールド弾頭の対艦ミサイルならその限りではない。

ならば戦艦は無意味なのか、と言うとそうでもない。
ミサイルには筐体そのものを破壊するハードキル、囮やECMなどによって逸らしたり誘導を妨害するソフトキルができる。
交戦距離が地上とは比較にならないほど大きく、すべてが相対速度で表現される宇宙空間での戦闘では
ミサイルを撃たれても反対方向に猛ダッシュで相対速度を小さくし、迎撃を容易にするという戦術もあるくらいだ。
(もっとも、艦隊戦の場合は陣形が乱れるし、そんな悠長なことをしていられるのか、あるいはミサイルとて
 一方向から数発しか飛んでこないわけではないのであまり意味がないが)

これに対し、少なくとも現状ではグラビティブラストを迎撃する術はない。
ディストーションフィールドで逸らすのが精一杯であり、装甲防御はまるで意味を成さない。
回避しようにも最近のFCSは高性能でかわしきれるものではないし、
亜光速で空間を伝播してくる重力波は感知した瞬間には命中している。
まあ、発射前に収束された重力波による空間のひずみとそれに伴う光の屈折などで発射を感知できることはあるが、
それとて状況次第であり、あまり意味があるとは思えない。

つまり艦砲としてのグラビティブラストは直進しかしないという欠点こそあるが、非常に優れた兵器だった。
そのプラットホームとしての戦艦もまたしかり。
何しろ真っ向正面から対抗するにはやはり戦艦を持ち出すしかないのだから当然だ。
陸戦における戦車と同じようなものである。

ただし、やはり陸戦における戦車と同様にそれだけあればいい、というものでもない。
戦艦は基本的に「敵性艦艇の駆逐」に特化しており、駆逐艦や巡洋艦のように哨戒任務や
機雷敷設、逆に航路にばら撒かれた機雷を除去する対機雷戦などには向いていない。
他にも船団護衛、デブリ帯でのデブリ除去作業などなど。 
なにも艦隊戦だけが宇宙軍の仕事というわけではないのだ。

その艦隊戦にしても遠距離砲戦に終始するのならばいいが、
距離を詰めての殴り合いになればミサイルがダース単位で飛び交い、艦載機や護衛艦艇による防空戦が行われる。
戦艦オンリーではこれに対応できない。
ことに第一次火星会戦で第1艦隊は初撃でいきなり痛手を負い、逃げる最中に駆逐艦やらに追い回され、
内懐に飛び込んだバッタになす術もなくなぶられたという苦い経験がある。
その戦訓から一定規模以上の艦隊には必ず機動母艦と対機動兵器用の護衛艦がつく。
1+1が2ではなく3にも4にもなるというのは何もスポ根やバトルマンガの世界の話だけではない。
いくつかの艦種を集め、1つの『艦隊』をして運用すれば、その戦力は同数の戦艦を寄せ集めただけのものより勝る。
まして相手は戦艦1隻。
戦力的に真っ向からぶつかってもこちらが負けるとは思えない。
ルチルが正面から悠々と接近する敵艦を「囮」と判断したのも頷ける。

だが、ハリは違った。
自分だけその場の手札をすべて確認してからゲームを開始するような反則技で
接近してくる敵艦の詳細を知っていた。
電子作戦艦という特異な艦種ゆえに得られる情報量は並みの戦艦などを軽く上回る。
その様々な数値と自分の記憶の中のスペックとを照会しつつ、ハリはその正体を確認した。

――― ヤンマ級に比較して反射スペクトルの分散比が大きい?
    反射強度も強いってことはそれだけRCS(レーダー断面積)も大きくて複雑な形状ってこと。
    相対ベクトル方向から考えるとほぼ正面から入射してるはず……精密走査モードで形状を推測。

間違いない。 ヤンマ級のような無人艦艇ではなく、
ドラム缶のようなカーゴユニットを2つ備えている(おそらくは)有人艦艇。

――― 周囲の真空エネルギー準位のパターン照合……は該当データがあるわけないか。

相転移エンジンは周囲のエネルギー準位の高い真空を取り込み、そこからエネルギーを取り出す機関である。
排出されるのは利用されたエネルギーやロスとなって消費されたエネルギー分を差し引かれた『エネルギー準位の低い真空』である。
この排出される真空のエネルギーパターンはエンジンの形式によって異なり、また同型でも部品ごとの微妙な公差などから
やはり微細な違いがあることから個艦を識別することさえできる。
もっとも、それには「ナデシコならこのパターンで、カキツバタならこう」というデータがないとどうしようもない。
当然、今回が初遭遇となる敵艦のそんなデータがあるはずもない。

仕方なしに人間には標準装備されているMk−1ブレインメモリー(俗に脳味噌と呼ばれる)からデータを引っ張り出す。
時期などから考えて木連のプラントで生産されている通称『ハ11』であるはずだ。
ナデシコ級の艦載エンジンに比較すると大雑把なつくりで出力も低いが、木連の工業力では手を加えて改良したりできないはずだった。
下手にいじると最悪で使用中に爆発……ならいいが、暴走して周囲の空間ごとフラストレーション起こして消滅、などということになりかねない。
それよりは耐久性と信頼性ということで、ヤンマ級と同型のものを使っている。
それでも使い込まれていくうちに独自の癖がつくもので……

――― 確か左右のアンバランスで苦労したって話を聞いたことがあったよね。

その記憶を元にコンピュータでデータを処理。
エネルギー分布を視覚化すると、右エンジンがやや咳き込んでいるのがわかる。
そして、その事実はハリにとって憂鬱極まりない事実を示していた。

――― あの艦は……かんなづき。

ほとんど効果を上げなかったとはいえ、戦術として注目された「ボソンジャンプによる効果的な奇襲」を成しえ、
ナデシコと単艦同士の決闘という現代戦ではめったにない奇妙な戦闘を繰り広げた艦。
そして、その艦長は戦後の連合宇宙軍で木連出身者として少将にまでなった有能な指揮官。
その副官は……

――― あそこには三郎太さんがいる!

ナデシコB、そしてナデシコCでも副長職を務め、自らもエースパイロットの一人であった高杉三郎太。
それはハリにとって忘れられない、忘れてはならない兄貴分の名だった。


○ ● ○ ● ○ ●


ここは外に ――― 宇宙に近い場所だ。
闇とわずかばかりの光という取り合わせ。
違うのは、ささやかではあるが人間の生存を許す環境があること。
壁をこえればそこは地獄とはよく言ったものだ。
しかし

「これはまた、歓迎だな!」

そう言って豪快に笑う男が一人。
一言でいうなら男臭い。
笑い方が昭和の雰囲気を漂わせ、優人部隊の白い詰襟よりもボロボロの黒い学生服に
下駄でも履いていたほうが似合いそうではある。
だが、岩から削りだしたようなごつい容貌『3体合体のロボットならキャタピラかドリル付き担当のパワー型』な外観と裏腹に
これでも優人部隊の中では若手の有望株として、白鳥九十九、月臣元一朗らと共に三羽烏として知られているのである。

名を秋山源八郎。 現在の階級は中佐。
ちなみに「なんで戦艦の艦長が中佐やねん!」というツッコミはノーセンキュー。
連合軍なら確かに大型艦艇の艦長職は大佐を充てるが、それは連合軍の話。
人手不足もいいところな木連では有人の艦艇など戦艦クラスの大型艦か、さもなければステルス艦といった特殊な艦艇しかない。
しかも分類こそ『戦艦』であるが、その実体は『強固な防御力と攻撃力を持たせて生存性の高い指揮中枢艦を作ろうとしたらこうなりました』という結果論である。
かつて優華部隊の旗艦を務めたステルス駆逐艦<朝霧>にしても、『戦艦よりちっこいし、他とスケール比較するなら駆逐艦クラス?』というアバウトさで艦種が決められた。
現在の優華部隊旗艦の巡航艦<陽炎>も『朝霧型よりはでかくなったし、居住性も改良されてるから巡航艦でいいんじゃね?』くらいのノリだ。
基本的に木連の有人艦艇は、そのすべてが“無人艦隊の指揮中枢艦”であり、連合軍の艦艇のように役割による区別が意味を成さない。

また、圧倒的な人員不足という現実から、艦の大部分が自動化されており、艦長が指揮下に置く人員はかなり少なくなっている。
単純化すれば『艦長−各課長−各課の班長−下っ端の指揮系統があるとして、下っ端は曹未満の兵卒を充て、
班長は軍曹や曹長といった組織の背骨となるベテランを補佐に、将校である少尉か中尉を充てるとする。
そうすると航海長や機関長、兵装長といった各課の長は大尉か少佐クラス。
それなら副長は中佐として、艦長は大佐だろう』というように下から積み上げていく。
これが極端に簡略化した連合軍の戦艦における階級と指揮系統の関係。
だが、木連の場合は『下っ端=ヤドカリ、ミニバッタなどの汎用機械』であり、
一つの課にリーダー以下2〜3名が基本であるから、仮にリーダーに大尉か中尉を充てたとして、残りは少尉か曹クラス、兵卒が各1名。
それなら上は艦長が佐官の少佐か中佐で十分ということになる。
中佐である源八郎や、少佐の九十九、元一朗が艦長職にあるのは木連のそんな事情があった。

「正面からやりあうつもりですか、艦長?」

「まさか、だろう?」

「ええ、まあ」

そう適当な返事を返すのは副長の高杉三郎太である。
階級は中尉。 今回の任務にあたって昇格したばかりだった。
しかし、その表情はいまいち晴れない。

――― ま、ナデシコじゃないだけマシか

そう思いつつも、もしかしたら知り合いが……この世界では未来の話なので厳密には違うが、
ともかく見知った顔と戦うことになるかもしれないと言う事実が彼を憂鬱にさせていた。
しかし、いくらなんでも「どうせこの戦争は負けますし、未来の知り合いと戦うの嫌ですから」などと言えばよくて更迭、悪ければ軍法会議で……結果は推して知るべし。
かと言っていまさら何もかもほっぽりだして隠遁生活をおくるわけにもいかない。
結果、三郎太はやや不安定なままこうして過去をなぞるように生きてきた。

「でも、この戦力は予想外ですね」

裏の意味なら「前はこんなのいなかったぜ」ということになる。
戦闘詳報などから全体の流れもそれなりに変わってきているようだと思っていたから、
いまさら個々の戦闘で相対する兵力が違っていたとしても驚きはしないが、不利という事実は変わらない。
艦艇数で劣るなら機動兵器で何とかするという手が考えられるが、戦後、宇宙軍との演習でランサー装備のエステにテツジンで挑んで完敗した経験から、三郎太は今ではジンシリーズをあまり評価していない。
かと言ってエステモドキの一式戦や二式戦は優華部隊専用で、優人部隊には配備されていない。
仮にあってもあの防御力の無さではあまり使いたくもないが。

「心配のしすぎだぞ、三郎太! なあに、かえって囮になる」

確かに囮としての役割を考えればその通りだ。
だが、囮だけが任務というわけではない。
被弾して損傷を受けるわけにはいかない理由がある。

「で、どうします?」

逃げますか?というニュアンスを言外ににじませるが、源八郎の返答は明確だった。

「三郎太、俺たちには退けない理由が3つある。 わかるか?」

ある意味で予想通りの返答に微苦笑しつつ、三郎太は澱みなく答える。

「1つ、男にはやらねばならぬ時がある。
 2つ、今がその時である」

「3つ! 俺たちは男だ!」

最後は源八郎だ。
端から一戦交える覚悟はあったと言うことだろう。
このやり取りも士気を高めるためのもの、ということだ。
戦力差は絶望的で、こちらには機動兵器のカバーもない。
常備されているはずのデンジンも今回は任務の都合で搭載してきていない。
それでも……

「折角の“彼女たち”のと共同戦線だ。
 俺たちだけが尻尾を巻いて逃げるなんてのはかっこ悪いだろう?」

その言葉にはまったく同感だった。
だから、頷き、応える。

「では艦長、御命令を」

かくして月を巡る陰謀はここに一つの始まりを迎える。
終焉への幕開けは宇宙からはじまった。


○ ● ○ ● ○ ●


「待機命令ね……」

まあそうだろうな、というニュアンスを込めて呟く。
敵艦襲来の報告は即座に月の守衛部隊にも通達され、トライアル試験は中断、部隊には戦闘待機が命じられた。
マコトたちの部隊もエステに実包を積み込む作業で大慌てだった。
これでまだ試験を続けようなどと言うバカがいたら、それこそ映画かマンガの世界だ。
リスクを考えれば中断もやむなしという判断は正しい。
イベントにかかった費用を考えればスポンサーには痛手だろうが、今は戦時なのだ。
これで試験部隊が見学の重役共々に吹っ飛ばされました、では笑い話にもならない。

「艦隊戦でケリがつくといいですわね」

「そう願いたいね。 低重力下戦は素人の私たちが出張るようじゃ、末期だよ」

「でも素人が出張るのも欧州では日常でしたわ」

「いつも末期だったからね」

乗機の通信機チェックを兼ねてアリサとそんな会話を交わす。
小隊指揮官に割り当てられるスーパーエステは『スーパー』と銘打つだけあって様々な点が強化されている。
新型ジェネレータによる出力向上に伴い、通信能力が強化されているのもその1つだ。
補助電源装置から供給された電力で小隊各機とのデータリンクが働き出し、その状態を指揮官にリアルタイムで送信してくる。
さすがに欧州の戦地で野戦整備になれた整備兵たちは迅速だった。
慣れない低重力下にも関わらず、作業の大半を終えて、今は最終チェックに入っていた。

「……例のデカブツが出てきたらどうする?」

「槍を構えて突撃するしかありませんわ」

「ナイスアイデアだ。 君に任せる」

「承ります……仕方ありませんもの、ヤマダさんは不在ですし」

「我らが戦神殿も機上の人だしね」

マコトの不安はそこにあった。
もしヨコスカで戦ったテツジンクラスが出てきたら、それこそマコトたちにはフィールドランサー構えて突撃するしか手がない。
欧州でマジンを撃破したカイラーは、ヨコスカの戦闘で肝心の大剣を失い、さらにはパイロットのヤマダが行方不明。
DFSを使えるアキトはこれもまたシャトルで月へ向かう最中で……戦闘が開始されたらシャトルは引き返すか、
最寄のステーションに退避することになりそうだ。
そもそもファルケが整備のためにばらされているので来てもどうしようもないが。

「その点は心配いらないかと」

と、唐突なタイミングでソニア・ユーティライネン中尉の通信が割り込む。
珍しいことに直接通信 ――― 他の機器を介さないコミュニケ同士の通信だった。
秘匿性に優れる反面、直接電波の届く範囲でしか通信できないのでおのずと限界がある。
カメラを切り替えて周囲を操作すると、格納庫の入り口にパイロットスーツをまとった姿を見つける。

――― なんでわざわざ?

『サンダーソニア』の二つ名で知られる宇宙軍のエースであり、トライアルでマコトたちが仮想敵を演じる対象だった相手だ。
宇宙軍とマコトたち第13独立遊撃艦隊(中身はカキツバタ1隻とその艦載機部隊)では指揮系統が違うので
実戦ではバラバラに動くかと思っていたため、あえてこちらから声はかけなかった相手だ。

「こちらからインペリアリスが出ます」

「…………おいおい」

さすがに採用前の兵器を使うのはどうかと思う。
ソニアの部隊に配備されているのは先行量産型……つまり本格量産前に少数生産して生産上の不都合だとか
使用上の不具合だとかを洗い出すための初期ロットである。
試作機に比べれば減っているとは言え、どこにどんな不良があるかわかったものではない。
その意図を汲んだのか、ソニアは軽く頷き、

「可変機構は使いません。 あくまで人型のみで、武器も主砲だけならそう問題はないかと」

フリティラリア・インペリアリスの売りの一つである可変機構は、航宙機形態で対艦ミサイルを運用するためにある。
対艦攻撃を想定せず、対テツジン用に71口径88mmレールカノンを使うだけなら人型で十分だ。
複雑な機構はそれだけ故障の確率を増す。 逆にそれさえ使わなければ……という発想はそう悪くない。
しかし、それをわざわざ話す必要はない。
マコトにしてみれば「それはよかった、じゃあ頑張れ」くらいしか感想もない。

「それはつまり、何がいいたいのかな?」

「護衛を願いたいのです」

ソニアの主旨をまとめるとこうだ。
インペリアリスは71口径88mmという化け物じみた長砲身砲を使う。
砲身長だけで約6mとなればエステの頭頂高にも等しい。
インペリアリスが頭頂高8.5mであることを考えても異様に長い。
つまり、それだけ取り回しが悪い。
長槍を構えた騎士でも内懐から組み付かれてはなす術がない。
戦車と歩兵の歩戦共同のようにエステとインペリアリスの共同作戦というわけだ。

「連携の問題がある。 指揮系統も」

短く、事実だけを指摘する。
ぐたぐたやっている時間が惜しい。

「指揮権はオオサキ中佐へ委任します。
 細かな部分では私どもの黒い大尉がとるかと」

「字面だけ見るとあの大尉が黒い人間みたいだな」

「そちらでも概ね間違っていないかと」

「……間違ってないんですか?」

そこは否定して欲しい、というアリサの願いも空しくソニアは話を進める。

「マツナガ大尉は中佐と打ち合わせ中です。
 時間がありませんので」

「時間がない?」

「敵の機動兵器が確認されました」

「初耳だ」

「防衛の部隊が迎撃していますが、遅退行動が精一杯かと。
 それを伝えに来ましたので」

なら早く言えよ、というツッコミを心中に留めつつ、新たな疑問を口にする。

「単艦とは言え、戦艦クラスの大型艦をこの至近距離まで察知できずに、こんどは機動兵器の揚陸まで許すなんて、
 本当に警戒線は機能してたのか?」

「していません」

「いや、してないって……まさか」

「何の要因かは不明。 ただ、機能していないのは事実かと」

淡々とした言葉。 それを事実の再確認として受け、思考を切り替える。
どこか安穏としていた日常から、非日常……あるいはもう一つの日常である戦場のそれへ。
同時に彼女が機動兵器戦闘は寸刻を争うにもかかわらず、わざわざ自分で事態を告げに来た理由にも思い至る。

「潜り込まれた?」

「潜んでいた、が正しいかと」

まさか、と反射的に否定しかけ、しかし止める。
否定するにも根拠がなく、ただ感情からの言葉では意味がないと悟ったのと、
ソニアの口調があまりに断定的だったからだ。

「戦略情報軍が何人か月に送り込んだ痕跡があります。
 極秘ですが」

「……なら、どこから聞いたとは聞けないよな」

「理解感謝」

短く、主語を曖昧に会話。
しかし当人たちは確実にその意味を理解した。

――― スパイがいる。 誰も信用できないから協力してくれ。

なるほど。 逆説的ではあるがカキツバタのスタッフは安全だ。
地上から上がってきたばかりの新参では月の事情にも疎く、ゆえにスパイを潜り込ませる必然性も薄い。
また、大半は欧州からのメンバーで身元もはっきりしている。
ここまで足を運んだのも傍受を防ぐため。

「 ――― まったく面倒な話を」

マコトとアリサだけにしたのは特に深い意味はないだろう。
ただ、現場部隊の指揮を執る小隊長には話を通しておこうというのだろう。
さらに上 ――― 機動部隊指揮官のオオサキ・シュン中佐やカキツバタ艦長のアオイ・ジュン少佐には話していないだろう。
そこまでいくと話が大きくなりすぎて身動きが取れなくなる。
その点でマコトたちは心配ない。
確たる証拠もなしに憶測の伝聞では現場を混乱させるだけだと承知している。
せいぜいが「それならちょっと注意しようか」と考えるだけだ。
騒ぎを大きくせず、それでいて万が一に備えられる立場の小隊長にのみ話を通す。
賢くはあるが、言われたほうとしては面倒極まりない。

「あら、それではこれまでに面倒でない話が私たちにあったような言いかたですね?」

諦めたようなアリサの言葉にはまったくもって同感だったけれども。


○ ● ○ ● ○ ●


地上 ――― という表現が正しいかどうかはさておき、月面での混乱は増す一方だった。
艦隊の襲撃と、さらに機動兵器の揚陸ともなれば、それが威力偵察でないことくらい伺える。
機動部隊の侵攻が迅速……いや、性急に過ぎるのも気になった。

通常、敵前への揚陸作戦とは非常に困難を伴う軍事作戦である。
レーダーなどの探査手段が発達した現在では戦術的奇襲が成立しにくい。
揚陸させる側としては防衛側のレーダー基地、指揮通信所などを先制攻撃で潰し、
次いで防空火器などを制圧した上で部隊を揚陸させる必要がある。
なぜなら揚陸中の部隊はまるっきり無防備に近い状態に晒されるからだ。

月面への降下でもそれは変わらない。
部隊は母艦から月面に向かって降下する間、空中でまったくの無防備となる。
機動兵器なんだから、かわせばいいという問題でもない。
月にも1/6Gの重力があり、下手に降下軌道を逸れれば最悪で降下時の慣性速度を殺しきれずに地面に激突しかねない。
凹凸があればバランスを崩して転倒ということも十分に考えられる。
軍事作戦ともなれば敵の妨害を排除できるよう慎重に着陸地点を選定し、その上で制宙権を確保し、敵の対空ユニットを砲撃などで制圧、
しかる後に部隊を降下させるのが一般的なセオリーだ。

が、そこまでしても被害は出る。
例えば基地から緊急発進してくる敵の戦闘機、機動兵器。
展開速度の早いこれらのユニットは完全に阻止するということが難しい。
そして軌道上からの砲爆撃だけでは厳重に防備された対空陣地は潰しきれないというのも過去の戦訓から明らかだ。
立場は逆だが、月攻略戦で月連合軍もやはり降下時には対空ユニットに手を焼いている。
電子作戦艦による電子妨害やSEAD(敵防空網制圧)任務の戦闘攻撃機を飛ばしていてなお、少なくない損害を出した。
それは艦隊が撤退し、孤立無援となった状況でも残された無人兵器たちは律儀に命令を全うして
戦略的にも戦術的にもまったく無意味な抵抗を続けたせいもある。

ならば今回は人間である連合軍は抵抗をしないかというと、そうでもないだろう。
艦隊は未だに月軌道に留まっているし、時間が経てばルナ2の艦隊が押っ取り刀で駆けつけてくるだろう。
つまり彼らには十分な勝算がある。 少なくとも本人たちがそう考える限りは抵抗を続けるだろう。
敵に抵抗の意志があり、防空網の対空ユニットも生きている状態で部隊を降下させるというのは、軍事的には悪夢だ。
それでも敵はそれを行った。 捨て駒の無人兵器ではなく、貴重な人型機動兵器でもって。

理由はいくつか考えられる。

1.政治的要求:
軍事的に無茶でも政治的にそれを要求された場合、軍は時に無謀なこともやる。
例えば太平洋戦争におけるドゥーリットル隊の空襲は空母ホーネットにB−25爆撃機を搭載して日本本土ギリギリまで接近、
大型陸上機であるB−25は発艦でさえカツカツ、もちろん着艦はできないから中国になんとか着陸する予定。
下手を打てば貴重な空母を2隻(B−25を運んだホーネットと護衛のエンタープライズ)を失いかねない無謀な作戦だった。
また、たかだか16機のB−25では大した量の爆弾がつめるはずもない。
リスクと効果を考えれば純軍事的にはあまり意味のない作戦。 
しかし、当初は負け続けだったアメリカ側としては国民の士気向上のために必要だった。
同様に政治的要求で何が何でも月を早期に制圧する必要があったなら、強引な手も使うかもしれない。

2.攻撃側のミス:
楽観するなら、単純に敵のミスとも考えられる。
防空網の存在を察知できていなかったため、誤判断をして無謀ともいえる行動に出た。
古来より敵の戦力見積を誤って大損害を出した例は少なくない。
これもそうだと言うならそうなのかもしれないが……それにしても貴重な人型機動兵器を投入するにしてはいささか軽率に過ぎる。

3.予定調和:
こちらにとっては一番嫌な想定になる。
敵側があえて破壊しなくてもこちらの防空網を無効化できると考え、かつそれを実行していた場合だ。
砲爆撃によらないソフトキル ――― 電波妨害で誘導を邪魔したり、チャフやデコイで誤認させたりする ――― が十分に機能すれば
破壊しなくとも無力化はできる。 だからあえて艦を危険に晒す対地砲撃を行わず、戦艦は艦隊との戦闘に差し向け、
そのために邪魔な機動部隊はさっさと月面の制圧にまわした。

……やっぱり無理がある。

そこまで考えてハリは首を振った。
敵の目的がつかめない。

艦隊を相手にするのが第一なら機動兵器は直掩に回すべきだ。
10m未満の機動兵器でも近接戦闘になれば戦艦にとっても厄介な相手であることに違いはない。
対艦ミサイルはなくとも重武装のスノーフレイクなら至近距離からロケット弾を浴びせたり、
75mmレールカノンを叩き込んだりすることで戦艦の戦闘力は十分に奪える。
ろくな防空火器もなく、機動兵器の直掩も失った艦隊が機動兵器相手にどんな目に合わされるか、
それを連合軍は第一次火星会戦で学び、その意趣返しを第四次月攻略戦で行った。
兵たちの血で綴られたその戦訓を早々に忘れたとは考えにくい。
何しろ相手はあの秋山源八郎なのだから。

ならば月面の制圧が目的かというと、それにしては揚陸兵力が少なすぎる。
人型機動兵器のみでは施設の占領ができない。 それに、揚陸を急いだ意味もわからない。
専門の電子作戦艦を投入している連合軍でさえ「防空網制圧はソフトキルだけでは不十分。 できれば徹底的に破壊しろ」と結論しているのに、
その手の電子戦方面にはほとんど無頓着という悪癖を持つ木連が急に防空網を完全に無力化できるソフトキルの技術を開発できたとも思えない。
であるなら、防空網がほぼ無傷と考えられる状況で揚陸は行われた。
結果としてはなぜか対空砲火の類は沈黙したままだったので損害は皆無だったが……

――― いや、そうなのかな?

逆に結論から考えてみるなら、防空網は機能していないからさっさと揚陸させられたとも考えられる。
それなら取り合えず揚陸云々に関しては納得できる。
いかなる手段でか敵は防空網が機能しないと知り(あるいは無効化し)、部隊を揚陸。
部隊を放り出した戦艦は軌道上から一方的に地上部隊を叩かれるのを恐れて自らは囮になった。

「うーん、でも違和感が」

「え? 何かおかしかった?」

思わず声に出た呟きを聞きとがめてローズ・クォーツがハリの前に展開されたウインドウを覗き込む。

「え……いえ、こっちの話ですから気にしないで」

「そう? ま、この艦のシステムは元々マシンチャイルド用のを機能制限して使ってたわけだし、
 1番艦のデータもフィードバックしてあるからそうそう変なことにはならないと思うけど……」

そういいつつもローズは再チェックに余念がない。
悪いことしちゃったかな、と思いつつ再度の思索を開始する。

戦艦は囮。 単艦で行動している点からしても間違いないと思う。
それなら地上部隊が主攻と見ていいのだろうか?
なら、その目的は?

「あー、それにしてもせっかくのお祭りだってのに大変だね」

キーボードを叩く手はそのままにローズがぼやくのが聞こえる。
それでふと気付く。

「このお祭り……じゃなくてトライアルには企業の偉い人とかも来てるんですよね?」

「んー、だから大慌てだね。 うちの会長もいるし、ネルガル、明日香、スカーレット、クリムゾン。
 あとは軍の人とか? フィリスの叔父さんも来てるよ。 確か中将だっけ」

―― 人質

そんな単語が浮かぶ。
月面の施設の占領ではなく、ピンポイントでVIPのいる建屋だけを制圧するなら人型機動兵器の少数精鋭でもいい。
逆に無人兵器では「偉そうな人間は撃つな。 それ以外はですとろーい」などという曖昧な命令ができない。
せいぜいが「IFF応答のない動くものはじぇのさいど」「でも施設は極力傷つけたくないからミサイル禁止」くらいだ。
他にも降伏勧告したり交渉したりなどは無人兵器ではできない。
それが狙い?

「再チェック完了。 異常はないと思うけど、何かあったらおねーさんに言いなさい」

「はい、お手数をかけました」

おねーさん、のところに妙なアクセントを置いてローズが言う。
それに丁寧に応じたハリに、ローズは「子供らしくないなー」と苦笑して付け加えた。

「まー、一人で無理することはないし、ほんとに何かあれば相談してね」

本気で心配するような声に、どうやらずっと考え込んでいたのを誤解されたらしいと悟る。
本当に大丈夫ですから、とそう口を開きかけ……しかし止めた。

「一人で、無理? 一人で……」

「おーい、もしもし?」

ますます不審げになるローズに答えることなくハリはキーボードを操作して軌道計算ソフトを立ち上げる。
かぐらつきは機動兵器を搭載できる。 が、だからといって揚陸された機動兵器がかぐらつきの艦載機という確証はない。
かぐらつきの航跡と機動兵器の降下地点を、月の重力から算出される周回軌道と照らしあわせる。

「単艦なんかじゃない!」

「なにが?」

「敵は単独じゃないです!」

「うん、揚陸部隊はいるよね」

「そうじゃなくって!」

かみ合わない会話に苛立ちながらハリは叫んだ。

「静止軌道上から部隊を降下させたとして、あのかぐら……あの戦艦が僕らの正面に現れるには軌道をぐるっともう一周してこないとならないんです!」

「してきたんじゃないの?」

「ならその間とっくにどこかのレーダーなりが見つけますよ!
 そもそも静止軌道上にあんなのが留まって、誰も気付かない方が変です。
 僕らだって哨戒してたんですよ!?」

「あっ、ちょっとまって……それってものすごくやばくない?」

「降下てくる部隊は察知できました。 じゃあ、母艦は?
 おかしいじゃないですか、両方見つからないならレーダー網が機能してないって話でわかりますけど」

「囮ってのは?」

「それは間違ってないと思います。 でも、目的は僕らを揚陸された機動兵器部隊から離すんじゃなくて、
 きっと罠におびき寄せるための……」

「それ、要点まとめといて」

そう告げるなりローズは自分のコミュニケを操作。

「こちらCIC、オペレータより艦長、及び艦隊司令に意見具申」

「こちら艦長。 技術顧問は軍の作戦には関与しないのでは?」

「聞くだけはタダです。 ハーリーくん?」

「はい。 口頭だけだとわかりにくいと思うので映像化しました」

そして今しがた話しながらつくったシミュレーション映像を見せながら説明する。
気難しげな艦長の胡乱気な視線は、しかし、途中から険しくなり……何事かを口にしようとしたところで別の絶叫に遮られた。

「艦長! ツモレアが!」

何事かと問うまでもなかった。艦隊の後方、大型艦が炎上している。
宇宙空間でも物は燃える。 艦内の空気だとか、酸化剤を含んだ燃料などが酸素を供給できるからだ。
そしてツモレアはまさに艦内の酸素を乗員の生命活動のためではなく、むしろその命を奪う方向で浪費していた。

「砲撃じゃない……ミサイル?」

艦内の空気だけではアレだけ派手に燃えない。
ミサイルの推進剤に含まれる大量の酸化剤、消費されずに残ったそれが命中後の損害を拡大する。

「バカな……機動母艦を」

そう、ツモレアは艦隊で唯一の機動兵器運用能力を持っていた。
だから真っ先に狙われたとも言える。

「そんな……探知できなかった……」

戦術的な奇襲でさえ探知手段の発達で困難になっている昨今だと言うのに、
まさか最新の電子作戦艦が潜んでいた敵をまったく察知できなかったという現実にハリは呆然と呟いた。
そして呆然とする一同を嘲笑うかのように、今度は左舷に派手な火柱が上がる。
その数は2。 巡洋艦の船体を流用して作られた中型機動母艦に過ぎないツモレアにとって、それは致命傷となった。
推進系か、または指揮系統がやられたのか、ツモレアは慣性に任せて蛇行するだけの存在となった。
艦同士の距離は開いているから衝突の危険はないにせよ、これでは危なっかしくて救助にも向かえない。
それ以上に敵艦が潜んでいる状況で悠長に救助させてもらえるとも思えないが。
機動兵器の燃料か弾薬にでも引火したのか、連鎖する爆発が漆黒の闇に潜んだ陰を一瞬、
ほんとうにわずかな時間だけ浮かび上がらせる。

海洋性哺乳類……鯨を連想させるような丸みを帯びた艦首、そこから伸びる船体は極端に凹凸が少なく、なめらかだ。
艦艇というよりもどこか生物的で、最も近いというなら潜水艦を思わせる形状。
しかし、仔細に観察することはできなかった。
わずか数秒後にはそれは漆黒の闇の中へ再び埋没してしまったからだ。

「いまの……」

ハリが確認するように口を開きかけたそのとき、ツモレアはついに限界を迎えた。
計4発のミサイルの命中は手のつけようがないほどの火災を引き起こし、
それに対処すべき人員の大半は着弾衝撃と爆発によって死傷していた。
構造材には難燃性の素材が使われているとは言え、燃えるものが絶無なはずはない。
火災は弾薬庫にまで及び、電気系統が壊滅したせいもあって消火装置は働かず、
ミサイル筐体に収められた爆薬や推進剤もついに膨大な熱に負けてそのエネルギーを外部へ解き放った。

純粋なエネルギーの暴風はもっとも弱いハッチを吹き飛ばし、船体を駆け巡り、途中にあったすべて ―――
その中には艦の構造材、操作制御機器、それを使うべき人間も含まれる ――― を一緒くたに飲み込んでいった。

――― 爆発

そして、それはもっともわかりやすい破局として具現化した。
閃光と共に火球が膨れ上がり、収束して、消える。
その後には何も残らない。
真空ゆえに音は伝播せず、それはあまりに静かな破局だった。

静かな、静かな破局の幕開けだった。





<続く>






あとがき:

深く静かに「戦闘」せよ!のネタをここで使ってしまうことにしました。
対潜戦闘って地味だけど緊迫感があって好きです。
戦艦同士のガチの殴り合いとかも熱いですけどね。
対空戦闘の弾幕っぷりとかも萌える。

弾幕といえば東方ですが、シューティング苦手な自分はどうすれば…(でも同人誌は買う)。
それでは次回また。



 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

実は私、ロバート・ミッチャムの大ファンなんです。

でもそれはまぁどうでもいいんで感想。

 

ハーリー君、随分と鍛えられてますね。

割と素養があったのかもしれませんが、それが一気に開花した感じですね。

北辰相手に口八丁で渡りあって、何か開眼したのかもしれません。

ゆけゆけハーリードンと行け。

 

・・・このさい、洒落にならないピンチのほうはとりあえず置いとく方向で(爆)。