時ナデ・if
<逆行の艦隊>

第9話 「運命の再会」みたいな・その2






<第3分隊は左翼へ……急げ!>



<被られた! 振り切れない援護を――>



<待ってろ、今 ――― くそ! 炎が…嫌だ、死にたく ―――>



<ダメだ! なぜ当たらない!? ちくしょう! ちくしょう!>



<アロー1より『大鳳』! 『雛鳥』は全機喰われた!

 離脱許可をくれ! もう持たない!>



<偵察機を離脱させろ! ここで食い止める!!>



<敵は上から来るぞ!>



<分隊長! 分隊……>



<散開しろ! 早くッ!>



通信機から溢れるそれらを聞きながらスロットルレバーを押し込む。

きつく噛み締めた唇から錆びた鉄の味と臭いが広がっていく。

これまでも何度となくこんな場面には出くわした。

その中でも今回のこれは極めつけかもしれない。



「『大鳳』より、各機へ。 当機が離脱するまで時間を稼いでくれ。

 繰り返す。 時間を稼ぐんだ! 以上!」



最後は叩きつけるように言って通信を切った。

非情な命令だとは自覚しているが、彼らは護衛なのだ。

死ぬ事も任務の中に含まれている。

しかし、それでも帰還できるかどうかは微妙な所だ。

既に護衛の空戦エステの半数が落とされていた。



もともと戦術偵察機である<シルフィード>に大した武装はない。

現在残っているのは短距離対空ミサイル4発と固定兵装の20mm機関砲が1門。

それでも、相手がバッタだけなら何とかなったかもしれない。

問題は ―――



「最後の一機がやられたよ、少佐」



後部座席の電子戦要員が淡々と告げる。

まるで感情と言うものを感じさせない声。

彼は自分とは違う正規の戦略情報軍の兵士だった。



高度に電子化されたシルフィードだが、その情報を整理し判断するのは人だ。

彼らはシルフィードのもう一つの電子頭脳として機能する。

その判断には感情が入り込む余地すらないということか。



「……悪夢だな」



「残念だが現実だ。 夢は人を殺さない」



確かにそうかもしれない。

だが、それでもこれは悪夢としか言いようがない。

18機のエステバリスがたった1機の機動兵器に全滅させられたなど。



「くっ! このシルフにも追従するのか!?」



スクラムジェットエンジンを搭載し、最高で音速の6倍という超高速で飛行可能なシルフィードだが、

戦闘でその速度を活かす場面は少ない。 むしろ皆無と言っていいかもしれない。

それよりは亜音速領域での機動性能の方が機動兵器同士の戦闘ではものを言う時が多い。

それ故に連合軍のスクラムジェット戦闘機はより低速のバッタにいいようにやられていた。



だが、今は生き残る事が最優先だ。

それ故にシルフの高速性能は敵からの逃走と言う場面ではいかんなく発揮されるはずだった。



「敵機直上!」



後部座席から電子戦要員の警告。

その声に反応してレバーを倒すのと、シルフに影が被さるのとどちらが早かっただろうか?

射撃はその声からきっちり1秒後に来た。



軽い衝撃。

続けてキャノピーが割れ、破片が火星の空へと舞った。

それでも操縦桿を手放さなかったのは自分でも賞賛に値すると思う。



「中尉! 電子妨害を仕掛けてくれ!

 ……中尉!?」



ウインドウを開いて被弾状況をチェックしながら叫ぶ。

が、後部座席からの反応はない。



……無線機をやられただけ、なんてことはないよな。



後部監視用のウインドウを展開。

そこには破片か銃弾で首の頚動脈をやられたらしい電子戦要員の姿があった。

パイロットスーツを黒く変色させていく血は流れ出すと言うよりは噴出すと言ったほうがあっているかもしれない。

まだ息はあるようだが、手当てしている時間はないし、それ以前に自分の命も危うい。



喰らったのは機関銃弾らしい。

12.7mmか7.7mmクラスだろう。



彼は知らない事だが、その予想は当たっていた。

シルフを捉えたのは敵機動兵器 ――― 零式の頭部に据え付けられた対人用の7.7mm機銃だった。

20mm弾に比べて弾が軽いために弾道特性も良好で狙いは付けやすいし、

速射性能もこちらの方が上だった。

ただし、威力では20mmより大幅に劣る。



もし、これが機関砲弾 ――― 内部に炸薬を仕込まれた20mmや30mmクラスなら、

今の一撃で人体など軽く吹き飛んでしまう。

人体のようなソフトな構造体を貫通した砲弾はその運動エネルギーを多少減じつつも、

内部の炸薬の化学エネルギーもあって、シルフの細い機首など一撃で叩き折る事だろう。

その点では、そのただ一点においては運が良かった。



しかし、その悪運も容赦ない追撃の一撃で吹き飛んだ。

20mm砲弾がエンジンを直撃し、翼を砕き、尾翼をもぎ取る。

炸裂する砲弾が全てを吹き飛ばし、シルフはその翼を完全に失った。

翼を失ったイカロスの様に、あとは重力の腕に絡みとられ、ただ落ちていく。



一般的に墜落というプロセスだ。



「くそっ! 俺は―――!」



脱出はできない。

主翼と尾翼を失った機体はローリングをはじめていた。

レバーを引こうにも、体はシートに押し付けられて動きそうもない。



「俺は ――― !」



地面との衝突が秒単位で迫ってくる。

そして、それが起これば、あとは何もない。

彼は死後の世界など信じてはいなかった。



激突までの僅かな時間。

思い出されるのは、地球の仲間。

そして、遥か昔に別れた『妹』の顔。



「まだ……死ねないんだーーー!」



結論から言うと地面との激突は起こらなかった。

エンジンから出火し、それがタンクに残された航空燃料に引火するのに僅かに1秒。

ミカヅチ・カザマの乗るシルフィードは空中で爆発し、四散した。





○ ● ○ ● ○ ●





彼 ――― 便宜上の呼称ではあるが、彼が撃墜した機体から脱出した者はいなかった。

ただ、その方が幸運かもしれない。



脱出したところで、捕虜になれば待っているのは過酷な拷問による自白の強要。

それに耐えられる人間はごく僅か。

まあ、それに耐えるか、自白したところで最終的にはあのヤマサキラボに送られて実験体にされるのが末路だ。

あの男の辞書に人権や人の尊厳などと言う文字はない。

ある意味で、彼の父親よりよほどたちが悪い。

それを考えるなら、ここで戦士として戦い、死んでいった方がよほどマシだろう。



「敵は全機落としたぞ」



不機嫌さを隠そうともせずに通信機に告げる。



退屈な任務だった。

数だけ多く、大して手ごたえのない敵を落とすのは。



<あはー、ご苦労様でした。

 周囲に敵影はなし。 帰還してください>



能天気ともとれそうな返事が返ってくる。

彼にこんな口を聞ける人間は限られている。

下手な事を言えば、速攻で八つ裂きにされるからだ。



彼に対して不埒な事を考えた中年の男性士官が寝室のベットの上で17分割にされた

『豚野郎自業自得だぜ事件』(琥珀命名)は記憶に新しい。



「どうするつもりだ? こちらは完全に発見されたぞ」



その気になれば敵が救援を要請する前に落とす事もできた。

しかし、指示はあくまで敵にこの場所を教えてから撃墜だった。



<それがいいんですよ。 これは餌ですから>



「……ふん。 どちらにしろ俺はあいつと闘えるならそれでいい」



作戦を考えるのは彼の領分ではないし、

生粋の戦士である彼はこういった謀は好かなかった。



<真紅の羅刹>こと、御影北斗は乱暴に愛機の零式戦闘機装兵を着陸コースに乗せた。

思い出されるのは映像で見せられたあの漆黒のエステバリス。



無人兵器や戦艦ではあいつを仕留める事はできない。

あの親父でさえ仕留めそこなった獲物だ。

あいつは ――― 俺のモノだ。





○ ● ○ ● ○ ●





それは奇妙な光景だった。



北斗の零式が滑走路に降り立つ。

ハンガーに機体が固定されるのを待って整備班がそこに駆け寄っていく。

それ自体は大して珍しくはない。

問題は、その全てが女性だということだ。



「うーん、零式じゃこれが限界かなー」



優華部隊の空 飛厘は手元のディスプレイに表示されたデータを見ながらぼやいた。

北斗の操縦に対して、零式の反応は明らかに遅れている。

北辰がサツキミドリ二号で戦った時の戦訓から、かなり改造を施したカスタム機ではあるのだが。



北斗が使っていたのは正式には零式戦闘機装兵52型と言う。

十の桁が機体改装の回数、一の桁がエンジンの変更回数を示し、何の改装も施していない場合だと11型となる。

北辰が使っていたのは、機体改装を1回施した21型。

北斗機の隣に並ぶ零式は優華部隊用の機体で、21型にさらに1回の機体改装とエンジン換装を施した32型。



ちなみに北斗専用の52型では11型から機体改装3回、エンジン換装1回が行われていた。

『5〜型なら機体改装は4回では?』と思うかもしれないが、『4』は『死』を連想させるために欠番である。



「うーん、これは仕方ないか。

 忍! 悪いけどちょっとこっちきて!」



「かなりスラスターの方にガタがきてる。 取替えが必要ね。

 それと、OSの方も少し変えないと……ああ、あとは駆動モードのレスポンスをもう少し……」



しばらくそのデータとにらめっこをしていた飛厘だったが、思い立って一人の少女に声をかけた。

呼ばれた少女の方は軽く手を上げて少し待てと合図すると矢継ぎ早に指示を出したあと、飛厘の元に来た。



彼女の名は月村忍。 優華部隊所属の技術大尉だった。

艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、少し釣り上がった目は髪と同色の黒。

ややきつめの印象を与えなくもないが、話してみれば気さくな人物だとわかる。

まだ18歳になったばかりだが、ロケットパンチ付きのメイド型アンドロイドを自作するほどの腕だ。

ちなみに、ロケットパンチは浪漫らしい。



「何かあった?」



「うん、ちょっとこれを見て。

 北斗殿の今の戦闘記録のデータ。

 北斗殿の反応に零式の駆動系が追従できてないのよ」



「これは、OSの書き換えとかで何とかなるレベルじゃないね。

 もっと上等な電磁筋肉を使えれば反応速度も上がるんだけど……」



そう言って溜息をつく。

その気持ちは飛厘にもわかる。



『もっと上等なものが使えれば……!』



それはいつの時代でも技術者の悩みだった。

忍は技術士官だからなおさらその思いは強い事だろう。



「せめて現状でベストな状態に持っていくことしかできないよ。

 北斗さんはヤル気満々なんでしょ?」



「ええ、それはもう」



舞歌から火星宙域でのナデシコの戦闘映像を見せられた北斗の反応は

周囲が予想した通りのものだった。

新しいオモチャを見せられた子供のようにはしゃぎ、

すぐにでも火星まで飛んで行きそうな勢いだった。

まあ、北斗の方向音痴を考えるなら飛び出したところで迷子になるのは目に見えているが。



本人もそれを自覚していたのか、舞歌の指示に大人しく従ってここに居る。

この、ネルガルの極冠研究所に。



「せめて一式戦が完成していれば……」



「飛厘、悪いけどそれはないわよ」



「どうして?」



問い返す飛厘に、忍は地球人のやるように肩を竦めて見せた。



「軍の技術屋やってる私が言うのもなんだけど、一式戦を私は評価してない。

 確かに零式を原型にしてるだけにバランスが取れた機体に仕上がるでしょうけど、

 その代わりにいじり甲斐のない機体になると思う」



「つまり、小さくまとまり過ぎってこと?」



「そう。 並のパイロットが使うにはいいと思うけど、

 北斗さんみたいなパイロットに合わせてカスタムするには不都合ってこと。

 かと言って、零式でも限界は見えてきたし……」



「いっそ、もう一つの……何とかスノーを改造した方がいいかな?」



「スノーランド。 あれの正式版もナデシコは積んでるみたいね。

 でも、その意見は同感。

 あれは無駄が多い分、拡張性や発展性も確保されてる。

 次に地球側が新型を出してくるとしたら、スノー系の後継機だと思う」



「はぁ……でも、今話してもどうしようもないことも確かね」



「そうだね、この話はここまで。

 さあ、お仕事、お仕事!」



2人はそこで話を打ち切って再び仕事に戻った。

この2人がこの会話の重大性に気付くのにあと半年以上の時間があった。

そして、その影響が現れるのはさらに後の話である。





○ ● ○ ● ○ ●





薄暗い照明の中、先程の戦闘を記録した映像がスクリーンに投影されていた。

その中では北斗の零式が地球の戦闘機を落している。



「とても初の実戦とは思えませんねー。

 見事なものです」



研究所の最奥に設置されたコントロールルームに4人はいた。

木連では屈指の作戦家と言われる東舞歌と、たぶん一番の謀略家であろうと思われる琥珀。

そして一番の苦労人であると断言できる各務千沙、そして一番ある意味底が知れない翡翠。



「さて、これで撒餌は完了しましたね」



「はい。 撃墜されるまでに4回、通信をしていますから。

 暗号化されていて内容まではわかりませんでしたけど、こちらの存在は確実に知られたはずです」

 しかし、わざわざ撫子は脅威があるであろうこの場所に来ますか?」



「普通なら来ないでしょうねー」



千沙の言葉をあっさりと琥珀は認めた。

心なしか、舞歌の表情が引きつる。



「でも、撫子の目的は資源と人材の回収です。

 人命救助が名目上のものだとしても、救難信号を発しているここを見棄てるわけにはいきませんよね?」



「そのためにわざわざ優華部隊でこの研究所に押しかけたんだから、

 ここまで来て無視されたらたまったもんじゃないわ」



琥珀の説明に対して舞歌も端的な感想を述べる。



もし木連で男女雇用機会均等法が成立しなかったら、案外と優華部隊は優人部隊の一部の特殊部門で終わったかもしれないが、

南雲が苦心の末に通したその法案は、女性の社会進出を推し進め、結果として軍の編成にも影響を及ぼした。

最初は後方勤務として少数を雇うだけだった軍も人手不足という現実には勝てず、

さらに舞歌の存在もあって優華部隊の設立を認めた。

今では優人部隊より規模は小さいとは言え軍の一部門として立派に独立している。

総人数は後方勤務の人間も含めれば3000人以上に上るだろう。



今回の任務で来たのは舞歌や千沙をはじめとする幹部クラスの万葉、百華、三姫、飛厘、零夜に加え、

諸般の事情で舞歌のところに預けられていた北斗、更には整備班や一般の隊員まで200名ほどである。



「でも、今の機動兵器と戦闘機は撫子の艦載機じゃないわよ?」



「どういうことです舞歌様?」



「いい事、千沙。 今までの戦闘記録を見ても撫子に確認された艦載機は人型が9機のみ。

 火星近くで艦隊を相手にしての戦闘ですらそれだけって事は、逆に言えばそれ以上は積んでないってことよ」



「いくらあの黒いエステバリスが凄くても、あれば出した方が楽になりますからね。

 実際、虫型の相手は他の人型が8機でやっていましたから」



舞歌の説明に琥珀が捕捉する。

それでも、千沙はまだ腑に落ちない様子だった。



「でも、それで凌がれましたよね。

 撫子の艦長はあれだけで十分って思ったのでは?」



「それはないと思うわ。 あの状況で出し惜しみする理由がないもの。

 それに、今のが撫子の艦載機じゃないって理由はもう一つある」



舞歌の説明にあわせるように翡翠がキーボードを操作。

地図上では現在位置である研究所を中心に円が描かれる。



「敵の人型機動兵器はエンジンを積んでいない。

 基本的には母艦からのエネルギー供給を受けつつ戦うしかないわ。

 それはいい?」



千沙が頷くのを確認して舞歌は続ける。



「今回の敵の目的は偵察ね。

 活動可能時間を延ばすために増槽をつけていたから、ある程度は母艦から離れて行動できたはず。 

 この円はそのことを計算に入れた上での敵の航続距離から逆算した敵母艦の推定位置の範囲。

 この円の中のどこかに敵母艦がいて、部隊はそこから発進したと考えられるの」



「……質問です。 その範囲が間違っている可能性は?」



それまで黙っていた翡翠が手を上げた。

その質問には琥珀が答えた。



「いい疑問ですよ、翡翠ちゃん。

 この数字は零式のものを使ってますから、誤差はあると思います。

 ただ、原型が同じ機体ですから、そう変わらないでしょう」



「現在の撫子の位置は把握しています。

 仮に撫子から発艦したものだとすると、航続距離はこの4倍必要になるわ。

 増槽を増やして片道出撃すればできないこともないでしょうけど……

 偵察にそこまで無謀な真似をするような相手だとは思いたくないわね」



「……火星まで単艦で来る時点で十分無茶だとは思います」



「うっ。 鋭いツッコミね、千沙。

 でも、撫子の艦長は無茶ではあっても無謀ではないはずよ。

 でなければ、火星に辿り着くことすらできなかったでしょうから」



無茶ではあっても無謀ではない。

その言葉の意味を考えて、千沙は納得した。

それは自分の上司である舞歌も同様だからだ。



「以上の理由から、あれは別のところから発進したと考えられるわけ。

 で、私が気になっているのはそれがどこか、ってことなのよ」



「そうですねー。

 でも、舞歌さんも見当が付いているんじゃないですか?」



「なぜそう思うの、琥珀?」



「さっき『敵母艦の推定位置』って言ってましたから」



あっさりと言い切る。

その様子に舞歌は諦めたように言う。



「よく聞いてるのね。

 そうよ、私はあれが艦載機だと思ってる。

 それも例の相転移炉式機動母艦」



「えっと、確か跳躍門をくぐって火星に来たあれですね。

 でも護衛艦は生体跳躍に失敗したとか」



記憶を探る千沙だが、さすがにちらりと噂話で聞いた程度なので

詳しくは思い出せなかった。



「暗号解読で判明した艦名は<アルバ>。

 火星に来て半年近く行方をくらましていたはずです」



しかし、琥珀の方はそうではないらしい。

相転移炉を2基搭載し、艦載機も50機以上運用可能なはずだなど、詳しいスペックを羅列していく。



「各所に配置した偵察用虫型機動兵器が時々思い出したように姿を捉えていました。

 目的は不明ながら、各コロニー跡を回っていたようです」



翡翠の言葉と同時にウインドウに箱型の艦が映し出された。

どれも望遠レンズを用いての映像らしく、少し画像が粗い。



「この航跡を辿ることで法則性を発見し、現在位置を予想してみました」



その言葉が終わると同時に、あるコロニーと周辺地図が表示される。

そして、同時に撫子の現在の進路も。



「……ユートピアコロニー。

 アルバは現在ここを拠点にしていると思われます。

 そして、これはリアルタイムの映像です」



そう言ってもう一つのウインドウに表示されるのは、

地面を疾走する人型機動兵器の一群。



その数、4機。

先頭を行くのは件の漆黒のエステバリス。



「現在、この部隊はユートピアコロニーへ向かっています。

 さて、これは偶然なんでしょうかね?」



翡翠の説明が終わると、琥珀はにこやかに告げる。



結論から言うとこれは半ば偶然だった。

ナデシコはアルバの存在を知らない。

アルバの方はまた別だが、そういう意図はこの時点ではなかった。



だが、それを知るすべは彼女たちにはない。

従って、ごくまっとうにこう判断した。



「ユートピアコロニーで合流しようってことね。

 それからここを叩きに来る」



「そうされると困ったことになりますねー。

 戦術の基本は、できれば各個撃破ですから」



彼女たちにとっては合流される前に叩くのがベストだ。

だが、どちらを先に叩くかでまた違う。



「……アルバの方を、ユートピアコロニーの方を先に叩くべきね」



「同意しますよ。 撫子の方は北斗さんが居る時でないと一方的な展開になりかねませんから」



こうして無人艦隊のユートピアコロニーへの派遣が決定した。

これは後の展開における明暗を分ける決定となるのだが、

そのことに現時点で気付くものはいなかった。







<続く>






あとがき:

はい、某犬の名前を付けられた男が再登場でした。
そしてさようならの回でした(嘘です)
次は某キノコの番かなー(ニヤソ

今回はもっぱら木連編。 時ナデでお馴染みの優華部隊と北ちゃんです。
北斗の代名詞が『彼』なのは都合です。
『彼女』と書くのも何か違和感あったので。

北ちゃん専用の零式も用意しました。
史実のゼロ戦も52型までなので、
やっぱり零式も52型まで出したかったのです。

……後半で千沙さんが『知っているのか雷電!?』の役になってたなー。

それでは、次回でまたお会いしましょう。

 

 

代理人の個人的感想

これで死んだら詐欺ですよねぇ、ミカヅチ。(爆)

火星出身ってこの作品では明言されてるし。

しかしシルフィードですか。

それにあっさりと追い付くなんて、零式にどーゆーチューンしたんだか。

 

 

ちなみに北斗の呼称は「彼」でオッケイ(笑)。

 

 

>52型

大学時代、サークルの先輩から三時間ほど「講義」を受けたのを思い出します(笑)。

その人の御蔭で色々と染まりましたねぇ・・・。(遠い目)

 

ちなみにその人の前で「ゼロ戦」などと言おうものなら正座で御説教を聞く羽目になります(爆)。

(正式には「れいせん」と言うんですね〜)