「・・・もう一度乗るのかいナデシコに?」


「ええ、私の大切な思い出の場所・・・
 そして、アキトさんとユリカさん達に出会った場所ですから。
 それにアキトさんも必ず、このナデシコに来ると信じてましたから・・・」


――――信じる、か・・・

俺は今度こそルリちゃんの期待に、応えられるのだろうか。

いや!! 違う!! 応えなければいけないんだ!!






時の流れにifエピソード
〜漆黒の瑠璃〜







「おめでとうアキト君!」

「この果報者!」

「必ず幸せにしろよ!」

「泣かせたら承知しないんだからな〜」



俺はすべてが終わった後、あの“時”と同じように再びユリカと結婚した。

もちろん俺は自分自身を許せたわけではない。

しかし、あの“時”では俺はユリカを幸せにすることは出来なかった。

ならせめて、この“時”だけでもユリカを幸せにすること、それが俺自身の贖罪になると思ったのだ。

――――それにこのくらいなら、きっと神も許してくれるさ…










「ユリカさん、とっても綺麗ですね。かんちょ・・・じゃなかったルリさん、きっと僕があなたを幸せにして見せますね!
って、あれ?ルリさん?ルリさんどこ言っちゃったんですか〜?
ねえ、ラピス、ルリさんがどこに行ったか知らない?」

「悔しい〜〜〜!!!本当ならあたしがあそこにいるはずなのに〜!」

――――ダメだこりゃ。でも本当にどこに行ったんだろ?迷っているのかもしれないし探しに行かなきゃな。










「二人ともおめでとう〜〜〜」

「末永くお幸せに〜〜〜」



一人の少女がその喧騒の最中、いずこかへ消えていった。

その時そのことに気付いたのは奇しくも、彼女に思いを寄せる一人の少年ただ一人だけであった。










何が起ころうとも必ず時は流れる、誰の上にも等しく平等に・・・

そうしてルリちゃん達がいないまま三年の月日が流れた。

「ルリちゃんとハーリー君はどこに行っちゃたんだろうね?」

「わからない。クソっ、どうして俺はあの時ルリちゃんたちがいなくなったことに気付かなかったんだ。」

「アキトのせいじゃないよ。それにそんなこと言ったら私も同罪だよ。」

「すまないユリカ、でも本当にルリちゃんたちはどこに行ったんだ?」

――――思えばルリちゃんもこんな気持ちでいたんだな・・・










同じ頃、連合軍基地。

「ジュ、ジュン少佐!」

「なんだ!?」

「最近起こっている連続コロニー破壊犯の映像を捉えることが出来ました。」

「なに!? 本当か? すぐに映像に出せ!」

「は、ハイ! ただいま。」

スクリーンに映し出された映像、そこにはコロニーの残骸の中から、虹色の光に包まれて消える、漆黒の機体があった。

「馬鹿な!?これは・・・ブラックサレナ!? どういうことだ? だけど…、おい、すぐに、これがマスコミ等に漏れないようにしろ!」

「は、ハイ!」

「でも、何故サレナなんだ? これはアカツキに連絡をとる必要があるかもな。」



Tellllll… Tellllll…

「やあ、ジュン君かい? どうだい? 最近ユキナちゃんと仲良くやっているかい?」

「アカツキ、そんな話をしている場合じゃない。おまえも知っているだろう、最近噂のコロニー破壊犯のことを」

「まあ、人並み程度にね。それがどうかしたのかい?」

「コロニー破壊犯の映像を捕らえた、そしてそこに信じられないものが写っていた。サレナだ、あの時見たあの歴史と同じようにサレナがコロニーを破壊していたんだ。」

「そんな馬鹿な。第一、そんなことをして何になる? あの歴史でそのことをしていたアキト君は、今静かに暮らしてるんだろう。」

「だが、あれは間違いなくサレナだった。そのことだけは頭の留めておいてくれ。」

「ああ、わかった。じゃ、切るね。こっちも何かと忙しい身なんでね。」

「ああ、じゃあ何かわかったら連絡をくれ、アカツキ。じゃあな。」

ツーツーツー・・・

「そうか、やはり歴史はどこかで修正されてしまうのか・・・?」



Tellllll… Tellllll…

「なんだ? アカツキ、こんな時間に?」

「ああ、君に伝えておきたいことがあってね。ルリ君のことなんだが・・・」

「ルリちゃんの行方がわかったのか? アカツキ、一体なんだ。」

「最近、コロニー連続破壊事件があるだろ。」

「コロニー破壊か・・・、俺があの時破壊していったコロニーが被害にあってるんだったよな? 俺は単なる偶然かと思っていたんだが…何かあるのか?」

「実は、それにルリ君がかかわっている可能性がある。」

「なんだと? どういうことだ?」

僕はアキトくんに事の事情を説明してやった、もちろんサレナのことも含めて。

「つまり、少なくともあの歴史を知るものが関わっているということだなアカツキ?」

「そう、それもよっぽど細かいことまで知っている人がね。現在のところその条件に当てはまるのはルリ君だけ。ハーリー君という可能性はあるけど、彼がそんなに詳しく知ってるとは思えないし。」

「でも、ルリちゃんが関わっているとしても一体どうして?」

「さあ、僕には恋する女の気持ちはわからないね。意外と君へのあてつけかもしれないよ。」

「冗談は止せ、アカツキ。だが、このことは感謝する。」

「別にいいよ。君と僕の仲じゃないか。それじゃあね。」

「ああ。」

俺はそう言ってアカツキとの会話を止めた。

もしルリちゃんがコロニーの破壊に関わっているのならば、俺は彼女を止めなくてはならない。
そしてあいつには冗談だといったが、もしこのことが俺へのあてつけであるというのならば俺には一つ心当たりがあった。

――――それにしても、やはり俺は幸せにはなれないのか?










――――きっとここに来ると、信じていた。

あの歴史で俺が再びルリちゃんと対面したあの場所。そして俺がルリちゃんにラーメンのレシピを手渡した場所・・・
あの時の俺と同じように彼女はやってきた。ただし俺の記憶とはかけ離れた姿で・・・。

「ルリ、ちゃん・・・?」

そこにはあの時の俺と同じに黒い衣で身を包んだ一人の少女――いや、もはや女性というべきだろうか――が立っていた。
俺は自分の記憶の中にいる少女と目の前の女性とのギャップを埋めるためにこう尋ねた。

「ルリちゃんなんだろ?」

「あなたの知っているホシノルリは死にました。」





――――きっと私の残した無言のメッセージに気付いてここに来てくれると信じていました。

「ルリ、ちゃん…?」

かつて、あの人がしていたように黒い衣を纏い、黒いバイザーで顔を隠した私がそこにいました。

「ルリちゃんなんだろ?」

そう聞いてきたあの人に、私はかつて言われたようにある言葉を返しました。

「あなたの知っているホシノルリは死にました。」





「どういうことだい? ルリちゃん。」

俺にはわからなかった。ルリちゃんが一体何を考え、何を思っていたのか・・・

「そのままの意味ですが。それが?」

「違う! 何故、こんな無意味なことをしているのかって聞いてるんだ。」

「無意味なこと…ですか? そんな事はありませんよ。現にあなたがこうして私の前に現れたじゃないですか。」

「まさか君はそんなことのためだけに、罪のない人を巻き込んだのかい!?」

「はい。」





「はい。」

私はそう、低くつぶやきました。

「あなたと同じです。私も愛する人をこの手に取り戻すために、あえて悪鬼の道に踏み込んだんです。」

「・・・」

「あなたもあの時ユリカさんを取り戻すために、同じ事をしたじゃないですか。なら私もアキトさんを取り戻すために同じ事をしてもいいはずです!」

「それは違うよ、ルリちゃん。」





「それは違うよ、ルリちゃん。」

確かに俺はあの時ユリカを助けるため同じ様な事をした。

でも今のこれは、それとはまったく別なものだ。

「何が違うっていうんですか! 私はあなたの為に。」

「どこが俺のためだい!? ルリちゃんはただ自分の為だけに行動しているだけじゃないのか?」

「自分の為・・・? そう、自分の為? その為に私は血を吐くような思いをしたというのですか?それは違う、そんなことない!」

「ルリちゃん・・・」

俺がルリちゃんをここまで追い詰めてしまったのか?
ならば俺が・・・

「ルリちゃん、こんなことはもう止めるんだ。」

「・・・そんなことの為に私はハーリー君を巻きこみ、遺跡のナノマシンを自らに注入したというのですか? そんなのってないですよ!」

「遺跡のナノマシンだと?」

「・・・それは違う、それは違う、それは違う! それは違う!!

ルリちゃん・・・どうしてこうなってしまったんだ?

「僕がその問いに答えましょう、アキトさん。」

俺がその声がした方を見ると、

「ハーリー君!?」





「ハーリー君!?」

そう言ってルリさんを壊した咎人が僕の方を向く。

「ルリさんは自分の体に遺跡のナノマシンを入れました。それによってルリさんは常人では考えられないような力を手に入れました。」

「なぜそんな危険なことをしてしまったんだ。」

咎人がそんな無意味なことを聞いてくる。それを聞いてどうしようと言うんだ。

「さあ、僕にはわかりません。」

「君はなぜそれを止めなかったんだ? 君には止めることができただろうに?」

「あなたにそんなことを言う資格があるんですか? それに僕はルリさんが望むことならなんだってやります。
何故なら僕は彼女を愛しているから。」

――――ルリさんが壊れているように、僕も壊れているのかもしれない。でも構わない、それであの人のそばにいられるのなら。

「ルリさん、もう大丈夫そうですね。では、帰りましょうか。」

「・・・ええ、そうですね、ハーリー君。ではアキトさんあの時と同じように、火星のあの場所で会いましょう。」

「あの場所でだと?」

「ええ、そうです、あなたがかつて北辰と戦った場所。」





そう言い残すと彼らは虹色の光に包まれて消えていった。

「クソっ、ジャンプ能力までも身につけているというのか。
しかし火星か・・・、どこまで人の神経を逆撫ですれば気がすむんだ。」

――――いや、もしかすると俺が死ぬまで気がすまないのかもしれないな・・・










いやはや、突然アキト君が来た時には驚いたね。

「で、ブローディアを改造しろって言うのかい?」

「ああ、ディアとブロスを降ろしてもらいたい。」

「正気かい? そんなことをすれば逆にブローディアはパワーダウンするよ。」

「それでも結構だ。もしかしたら、俺はルリちゃんをこの手にかけるかもしれない。そんなことになったら、その罪を被るのは俺一人で十分だ。」

「もしかして、死ぬ気じゃないだろうね?」

「そんなことはないさ、きっと俺は二人を連れ戻してみせる。」

「わかったよ、アキト君。それに今回のことは僕にも原因があるみたいだしね。」

「どういうことだ、アカツキ?」

「実はふと気になったんで、生産の方面を見直させてみたんだけど、発注元が不明でサレナとユーチャリスらしきものが生産されていた。おそらくルリ君とハーリー君の手に渡っているんだろう。」

「そうか・・・、やはり俺のせいで・・・」

「あまり気に病むなよ、それからかならず三人で生きて戻って来るんだぞ。ナデシコに乗っていた身としては三人合同の葬儀にはあまり参列したくないからね。」

「わかってるよ、アカツキ。」

――――そう俺はきっと無事に戻ってくる。あの二人と一緒に。










――――火星・・・かつての俺の故郷。そしてここでは幾度となく大きな争いが繰り広げられた。

そして今俺の目の前にいるのは、かつての俺――復讐の炎に身を焦がしていた頃の俺――と同じ様に黒き鎧で身を包んだ彼女と白亜の城に乗った少年がいた。

「二人とも、いいかげんに帰って来い。俺やユリカやみんなも二人が戻ってくるのを心待ちにしているんだ。」

「もう遅いんですよ、アキトさん。何もかももう遅いんですよ!」

――――あの頃のルリちゃんも、今の俺と同じ様な気持ちだったんだな。今になっていた痛いほどよくわかる。

「ルリちゃん、君の気持ちは良くわかる。だから早く戻ってくるんだ。」

「あなたに私の気持ちがわかる? そんな嘘をつかないで下さい。私はいつもあなたのそばにいたのに、私の本当の気持ちなんていつだって気づいてくれたことはなかったじゃないですか。」

そう言って、彼女はすべてを切り裂く白き刃を持った剣――D.F.S――を掲げた。

「なぜ、君がそれを使える!?」

俺は彼女が斬りかかってくるのを避けながら、そう尋ねた。

「そんなこと、どうだっていいじゃないですか。私はいつだってあなたのことを見ていたのに、結局あなたはまた、ユリカさんを選んだ。だから・・・、だから私は!」

――――ルリちゃん・・・俺が君をそこまで追い詰めてしまったんだね。

――――なら、俺が止める!

「ブローディア、バースト・モード」

――――今のブローディアの出力ならうまくいくかもしれん。

「喰らえ!八皇竜が『封』の一竜、『封竜襲翼陣』

俺のD.F.Sに力が宿る。そこから放たれた四匹の白竜があの黒き鎧――ブラックサレナ――に絡みつく。

「やはり、出力不足だったな・・・」

本来の『封竜襲翼陣』はフェザーを纏った八匹の黒竜が敵を取り囲み、切り刻みズタボロに破壊する技だが・・・

「まあ、フェザーが使用不可で、出力の落ちた今の状態なら、ただ単純に敵を束縛するだけの技になるしな。」

後は、ユーチャリスを戦闘不能な状態にすれば二人を連れて帰れる。
ルリちゃんのことは後々何とかすればいいし。

俺がそう思っていたときだった。

「『黒虎天臨』」

その言葉とともに、漆黒の四翼を持った堕天使が降臨した。





「『黒虎天臨』」

私のその言葉と共に、私の乗る機体に絡み付いていた四匹の白竜が弾け飛び、黒き神聖な四翼を持った天使が降臨しました。

「なに!?」

あの人が驚いています。まあ、無理もありませんが。

「あなたのブローディアと対するのに普通のブラックサレナで来ると思いますか? これはブラックサレナ・ルリspecial。通称サレナRです。
そして『黒虎天臨』、この機体のフル・バースト・モードです。」

「そ、そんな馬鹿な!?」

「まあ、信じられないのも無理はありませんが。ところでアキトさん、あなたが本当に愛しているのは誰ですか? 私ですか? ユリカさんですか? それとも他の誰か?」

「俺が愛しているのはユリカだけだ!ルリちゃん、君のことは確かに好きだけど・・・」

「やはりそうですよね・・・」

「ごめん、君の気持ちにはやはり答えることは出来ない。」

「・・・」






「・・・」

ルリちゃんはわかってくれたのかな?

「ルリちゃん、帰ろう、みんなの所へ」

「アキトさん・・・」

「なんだい?」

「・・・あなたが私のものにならないというのなら、私はあなたを殺して、あなたを私だけの永遠のものにします!」

――――今のルリちゃんには何を言っても無駄なのか?いや、そんな事はない!

俺は不完全な状態で奥義を撃ったために、思うように動けないブローディアを駆り、必死にルリちゃんの攻撃をかわしていた。

「ルリちゃん、聞け! こんなことをしても何にもならないぞ。」

「あなたさえ私の前に現れなければ、あなたが私に優しくさえしてくれなければ、私はこんなにも苦しむことなんてなかったのに。」

――――やはり俺の存在がルリちゃんをここまで苦しめてしまっていたんだな。
なら俺に出来ることは・・・

「ユリカ…すまない・・・」

「あなたの口から他の女性の名前なんて聞きたくありません!
あなたは私だけを見て、私の名前だけを呼んで、私だけを抱きしめていればそれでいいんです。」

――――ルリちゃん、そんなのは本当の愛じゃない。本当の愛って言うものはお互いのことをもっと考えたもの、少なくとも俺はそう思う・・・

――――だけど今の俺に出来ることはもうほとんどない。今のブローディアの状態ではルリちゃんのサレナRを無理やりにでも止めることさえも出来ないだろう。

――――本当にすまない、ユリカ。俺に出来ることはこれしかないんだ。

「ルリちゃん、俺を殺せ!」





「ルリちゃん、俺を殺せ!」

「突然何を言い出すのですか、アキトさん?」

私は突然のことに攻撃する手を止めて、アキトさんに聞き返しました。

「だから、俺を殺して君の気がすむのであれば、いくらでも俺を殺せといってるんだ。」

――――アキトさん、昔から変りませんね。でもその優しさが時に人を傷つけることもあるんですよ。

「どうしてあなたはそんなに優しいんですか?私はあなたを殺そうとしているんですよ。あなたがそんなに優しいから私は、私は・・・」

私の頬を温かい粒が流れ落ちていきました。

――――まだ、私は泣けたのですね。涙なんて自分の体に遺跡のナノマシンを入れたときに時に無くしたはずだったんですが・・・

「アキト…さん、アキトさん!」

その時、私の中で張り詰めていた何かがぷつんと音を立てて切れたようでした。

そして、私は堰を切ったように泣き出しました。

「・・・ルリちゃん、君はまだ泣けるじゃないか。だから、きっと帰ってこられる。みんなの所に戻ってこられるよ!」

「ごめんなさい、アキトさん。私はもうみんなの所へ戻る資格なんてありません。だって私の手はもう、罪のない人の血でこんなにも汚れているんだから。」

――――今なら、私あの時アキトさんが何も言わずに私たちの元から去っていった理由が痛いほどよくわかります。

「そんなことはない。現に俺もみんなの所へ帰ってこられた。だからきっとルリちゃんも帰ってこられる。」

「いえ、私はもう・・・」

「ルリちゃん!」

――――あの人の声が深く心に突き刺さります。どうして私はこんなに馬鹿なことをしたのでしょうか?なぜ私はあの人の娘でも良いと思えなかったのでしょうか?

「ルリちゃん、頼む、戻ってきてくれ!」

「ごめんなさい、アキトさん。本当に・・・ごめんなさい。」





その言葉の直後サレナRのコクピットから炎が吹き上がった。

「本当に愛していました、アキトさん。狂ってしまうほどに。」

「一体何をしたんだ、ルリちゃん?」

「コクピットブロックを爆破させました。これなら最小限の爆発で終わるはずです。」

「どうしてそんなことを? そんなことをする必要はないだろう?」

「いいえ、どちらにしろ私はもう長くは生きられません。あとは遺跡のナノマシンに喰われるだけでしたから。」

――――それでもいい、だから頼むから脱出してくれ。

「ルリちゃん早く脱出するんだ。今ならまだ間に合う。早くジャンプするんだ、出来るんだろう?」

「いいえ、もう良いんです。ごめんなさい。出来ることならせめて我侭な娘がいたって事を憶えて置いてください。」

「わかった、だから早く脱出するんだ。」

動け、動いてくれブローディア。頼む、動いてくれ。でないとルリちゃんが死んでしまう。頼む、動けーー!

ドッカーン!!

「ル、ルリーーーー!!」





「ル、ルリーーーー!!」

あの人の声が聞こえます。

――――多分、これがこの世で聞く最後のあの人の言葉なんだな。

我侭な娘でごめんなさい。本当にごめんなさい、アキトさん。

――――気にすることはないよ、ルリちゃん。

「えっ、この声はユリカさん? でもどうして?」

――――そう私はユリカ、でも私はあなたの思っているユリカじゃない。

「なら、まさか! あちらのユリカさんですか!?」

――――うん、正解。でもまさかこんな所でルリちゃんに会うとは思ってなかったな〜。

「私のセリフですよ、それは。ではここは一体?」

――――ん? 私もよく知らないけど、たぶん霊界みたいなものじゃないの?

「霊界ですか・・・」

――――でもルリちゃんこんなところにきたらダメじゃないの。あなたはまだ若いんだから。あ、でも今じゃそんなに歳は離れてないか。

「あ、本当そうですね。でもハーリー君に謝らなきゃいけないな。こんなことに巻き込んでしまって」

――――うん、そうかもね。

「今のハーリー君なら私の後を追って来かねないですからね。」

――――・・・そう・・・かもね。





「ル、ルリーーーー!!」

あの人の叫ぶ声が聞こえる。

最初僕は何が起こったのかわからなかった。いや、わかっていたのかもしれない、だけど心がそれを認めたくなかったのかもしれない。

「決して、私とあの人の戦いに手を出さないで下さい。」

ルリさんが僕にかけた最後の言葉が僕の頭の中に浮かんで消えた。

「どうして? どうして? どうして? どうして? 一体何故ルリさんが死ななくちゃいけないんだ!」

認めたくはなかった。でも認めてしまった。ルリさんは僕のすべてだった。僕が生きていた理由はルリさんの為だけだった。

「いっそ、ルリさんの後を追おうか・・・」

「聞こえるかハーリー君、ルリちゃんの後を追うのだけはやめろ。彼女はきっとそんなことを望んじゃいない」

ルリさんを殺した男が僕に話し掛けてきた。ルリさんを殺した男? そうだ、こいつはルリさんを殺したんだ。

「ハハハハハハハハッ、ハハハハハハハハッ、ハハハハハハハハハ・・・」

「ハーリー君!?」

そうだ、こいつはルリさんを殺したんだ。コイツハルリサンヲコロシタンダ。ルリさんを殺した。ルリサンヲコロシタ。ころした。殺した。コロシタ。殺した。コロシタ。ころした。殺した。コロシタ!

「こいつはルリさんを殺したんだ。」

「ハーリー君? さっきから何を言ってるんだ?」

そうこいつはルリさんを殺したんだ! だったら僕がこいつを殺してもいいんだ! そうだ。殺せ! ころせ! コロセ! ころせ! 殺せ!

「グラビティ・ブラスト発射。」





ユーチャリスから放たれたグラビティ・ブラストに俺の意識は飲み込まれていった。

――――アキトさん、アキトさん。目を覚ましてください。

――――アキト、アキト。目を覚まして。

どこからか声が聞こえる。俺の心を震わせる声が。

目を開けるとそこには・・・

「ユリカ? ルリちゃん? どうしてここに? それにここは?」

――――わかりません。でもあの世界ではないことは確かです。

――――アキト〜、アキト〜。本当に久しぶりだね〜。

「何言ってるんだユリカ。ほんの数時間前にあったばかりじゃないか。」

――――違います、アキトさん。このユリカさんは私達がもといた世界のユリカさんです。

もといた世界のユリカだと?もう二度と会うこともないだろうと思っていた、あのユリカなのか?

――――アキト〜。私ね、アキト達がいなくなった後、アキト達がいない中で死んで、本当に淋しかったの。でもこうして死んだ後にとはいえ、アキト達に出会えて本当に良かった。

「ユリカ・・・」

――――アキト達が死んじゃったことは残念だけど、また会えて嬉しいよ。

「そうだな、ユリカ。」

――――アキトさんここでやり直しましょうね、必ず。

「ああ。」

ここが何なのかも俺にはわからない。でも死んだ後とはいえこうして二人とやり直すチャンスが与えられたんだ。俺はきっと今度こそ幸せになってみせる!





時の流れにifエピソード
〜漆黒の瑠璃〜
Fin




あとがき(俗に駄書きとも言う)

        
 てへっ、殺っちゃいました(爆)。

とりあえずまずは、自己紹介から。
始めましてLion(リオン)といいます。スパロボからナデシコにはまり友人に紹介されてここのHPを知ったという風な経歴を持ってます。

終わり


 最初にこの作品を書こうと思ったのは、ここのHPにある投稿作品の代理人様の感想の中に「ルリを綺麗でいさせるために、ユリカを悪役にする。果たしてそれで本当にいいのか?」といった感じの感想がありました。だからあえてその禁忌に私が挑戦してみよう、そう思ってキーボードを叩いた訳です。まあ、当初の目的を果たせたかは、甚だ疑問ですが・・・。また、ルリ至上主義のみなさま、このような文章を書いてしまって本当にすみませんでした。

 とりあえず最初考えていたラストでは、
アキト説得→ルリ逆上→アキト殺害→後悔&自爆
といったものも考えていたのですがそこまでくるとあまりにもダークすぎるかなーと思いまして現在のラストになったわけです。(それでも十分ダークだ、なんていうツッコミはもちろんなしで)

 言いわけめいて聞こえるかもしれませんが、もちろんアキトもルリもユリカもハーリー君もみんな好きですよ。でも書き始めるとだんだんと指が勝手に動きだしまして・・・あれよあれよという間にこんなダークな作品に(笑)。

 原作のユリカはともかく、時ナデのほうのユリカはどうなったの?といわれそうですのであらかじめ言っておきます。忘れてます!(爆)も、もちろんアキトの方が。決して作者がどうするか考えつかなくてほおって置いた。等という事はありませんのであしからず。

 ちなみにハーリー君は生かしてあります。すべてが終わった後に来たアカツキたちに保護されて。でももちろん精神は崩壊して何もわからなくなってるわけです。

 あとはBen様、勝手に八皇竜の奥義追加してしまってすみません。でも「八皇竜が一竜」と本編でもかかれていましたので、後7つはあるものだと思ったら妄想が爆発しまいまして・・・。

 ルリの遺跡ナノマシンによるパワーアップのアイディアはゴールドアーム様の作品を参考にさせていただきました。

 最後にこのような駄文(+駄書き)を最後まで読んでくださりありがとうございました。それでは、縁があったらまた会いましょう。


 

管理人の感想

 

ふふふふふ、なかなかやりますね〜Lionさん。

見事に最後の最後まで、ルリが悪役(?)でしたねぇ

ハーリー君も良い具合に壊れてましたし(苦笑)

代理人の言葉を真正面から捉えた、力作だと思います。

こういう形で、新しい投稿作家の方が現れるのは凄く面白い事ですね。

 

でも、確かにこのパターンも考えられるんですよね。

私の作品では、まだ書かれていないエピローグの一つの形ですが、一部似通ってる部分もあります。

まぁ、どの部分が似ているのか、は・・・この際は今後のお楽しみとして。

あのジュンにさえ、台詞の数で負けたユリカが何故か笑えます(爆)

ついでに言えば、ラピスはやっぱりテンカワ夫婦の元にいたのでしょうか?

・・・そうだとしたら、ハーリーとルリのハッキングに気が付いても不思議じゃないんですけどね。

もしかして、失恋の痛手から武者修行にでも出たのか(苦笑)

 

では、Lionさん、素晴らしい作品を投稿していただき有り難うございました!!

もし宜しければ、今後の作品も、楽しみにして待っていますね!!