火星の大地に花がある。黒い花と白い花。
 どちらも同じ百合の花で、どちらも同じ機械の華。
 女性的な流美な曲線。
Wホワイトサレナだとても言うのか!」
 黒い百合、Bブラックサレナに乗るアキトはそう毒づいた。
 向こうの性能はこちらとほぼ同じに思えた。
「同じものならば、とでも思ったか。ふざけるなッ」
 明らかな機械的制御。こちらの動きを解析してプログラムされた動き。
 それゆえに癪に障る。思いを汚された。意思を侮辱された。決意に唾を吐きかけられた。
「違いってヤツを見せてやるよ」
 Bサレナに、そしてアキトに火がともる。


 武装はテールにハンドガン。それはどちらも同じ。故にとりうる選択は一つ。すくなくとも自身ならば一つ。
 それはヒット&アウェイ。散って、咲いて。そのささやかな繰り返し。
 最大級の加速を持って相手に対して突撃する。その速度は同じ。平面にディストーションフィールドDFが歪み黒と白の百合とが近づき会う。その赤い眼が合った。
 振り払うようにその場で回る。
 鏡写し。違うのは色だけ。DFの反発を利用し、離れるとハンドガンを撃つ。
 何度も軌跡が交わる。
 より高く。より速く。相手の死角へ。回る。回る。
「糞ッ」
 相手などいない。鏡に向って対するように、ただあるのは自分だけ。だからこそ腹立たしい。同じものはいらない、人も花もそれは変わらない。
 距離が離れた。ハンドガンを一時収める。無論相手も同じ動き。
「デッドコピーが、すぐに黙らせてやるよ」
 ハンドガンに加速を乗せ、さらに自身を持って相手のDFを突き破る。
 一瞬。こちらの動きを解析てから動くゆえかの隙。そこを突く。
 にらみ合う。DFがたゆたった。それだけで十分。スラスターがうなりを上げ、Bサレナをトップまで引き上げる。
 距離が縮まる。Bサレナが動く。
 刹那。白い百合の花が揺れた。存在が消えうせる。
 後ろで音が鳴った。根底を手で捕まれる嫌悪感。振り向こうとしたBサレナが軋みをあげる。回り込んだWサレナ。同じだと思っていたことが敗因か。
 花を手折るより簡単に、Bサレナは詰まれていた。


 地上に落ちたBサレナめがけ白い百合がとどめとばかりに落ちてくる。
 システムレッド。それがBサレナの回答。振ってくる百合を受け止めるように前だけを向いてもう動けない。
 アキトには走馬灯も何もない。ただ黙って前だけを見ている。
 白と黒のサレナが肉薄する。歪んだDFが黒のサレナに触れようとした。
 その瞬間、サレナのハンドガンが火を噴いて、白い花びらが舞う。
 そして花が咲き産まれた。羊水は海よりも蒼い色。
「あぁっ」
 Bサレナの装甲をパージする。コクピットのドアも蹴破る。
 花束ブーケならば受け止めて。けっして花を散らさぬように。
 そうしてアキトは這い出す。花束ブーケを受け取った。
「俺は……」
 戦いの最中あったのは嫌悪感だけ。他の感情を差し挟む余地もなかった。
 白いドレスにくるまれた一輪の白い百合。青い葉が潤いなくアキトの腕に絡んだ。その茎は折れそうなほどに細い。
「俺はッ」
 花は散っていこうとしている。それでもなお再び綻びようとしている。
「一体何のためにっ」
 涙が落ちた。
 花はもう手折られている。もう根はない。それでもその水分を糧に花は最後に咲き誇ろうとした。
「戦っているんだあッ!!」
 少し咲いたそれだけ。それでもう百合の花は枯れてしまった。



<後書きあるいは独白はたまた懺悔もしくは後悔>

久方ぶりに書いたナデシコSSはこんなのです。
こんなのって言ったらこんなのです。
珍しく書き始めから終わりまで一日で終わった作品。いやぁ書こうと思えば書けるものだなぁと、しみじみと思うわけで。
つまりは勢いだ! 特攻あるのみ。玉砕あるのみ。
砕けたらまたつなげばいい。そういうわけで。
では、また。何らかの作品で。

モトネタのツッコミは野暮ってもんですよ、兄さん。

追記
タイトルを決める際のイメージソースとしてGoogleイメージ検索にて百合と検索。
あなた、検索の仕方がゆがんでいてよ。


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 ゴールドアームの感想。

 ゴールドアームです。
 まずは一言。

懺悔せよ! 後悔せよ! 玉砕せよ!

というのは冗談として。

 雰囲気はともかく、暗示が多すぎて、言いたいこと、伝えたいことがなんにも伝わってこないのがちょっと気になりますね。
 敢えて謎を明示しないことによって想像力を刺激する手法なのかも知れませんが、だとしたら材料が足りませんし。
 後、抽象と具象の区別が曖昧です。そのため、暗示したい象徴がぼけてしまっている感じを受けました。
 もう少し表現力を磨いた方がいいと思います。



 暗示の技法は、『悟らせる』か『惑わす』のが基本です。『迷わす』ではいけません。
 『きっとあれのことなんだろう』『あれかな? それともこっち?』というように、直接書かなくてもある程度一意で意味が通じるくらいにははっきりとさせるべきです。
 ただでさえ、暗示は『読者に前提としての知識を要求する』技法なのですから、短編で多用するべき手法とはいえません。自分だけが判る文章に酔っていては、『痛い人』になってしまいます。
 二次創作においても、原作にないファクターを使うときには、ギリギリまで露出する位の心がけをお願いいたします。



 最後に、気になった表現を。


>スラスターがうなりを上げ、Bサレナをトップまで引き上げる。

 言いたいことは想像出来ますが、文脈的に明らかに変です。
 Bサレナの『何』をトップまで引き上げるのかを、明確にしないとおかしい文章です。
 もっとも、馬鹿正直に『Bサレナの速度を』なんて書くと文の雰囲気そのものが壊れますから、ここはもう少し表現を工夫すべき所かと。

>花を手折るより簡単に、Bサレナは詰まれていた。

 誤字だとは思うのですが、花を『摘む』と将棋の『詰み』を掛けた表現の可能性もあると思って、敢えて修正しませんでした。ただ、引っかけ表現だとしても、やっぱりこれではまずいです。将棋の『詰み』は、状態を表す語句ですので、動詞の『詰める』や『詰まる』とはややニュアンスが異なりますので。



 それでは、この辺で。ゴールドアームでした。