あの飛ぶ鳥たちは何処へ行くのだろう…






私は今道を歩いている


学校から帰る途中だ


隣には誰もいない


いつも私を見守ってくれていたあの人はもういない


だって、死んでしまったのだから・・・




あの人が死んだ時、私は初めて泣いた


そして、初めて大切な痛みを知った


大切な人がいなくなるという痛みを




あの人は死ぬまで、私のことを案じてくれた


あの人ぐらいしか縋るものがなかった私のことを


今ならよくわかる


あの人が私を遠ざけようとしていた理由が


結局のところ、私は危うかったのだろう


彼に自分の全てを預け、あの人しか自分の世界に存在を認めなかったのだから


あの人が死んだ時、私が壊れないように気を使っていたのだろう


つまりのところ、私はあの人のことを助けているようで、その実、助けられていたのだ


そのことが、今でも私を苛む


もっとしっかりしていれば、彼は私のことで煩わされずにすんだのにと


しかし、それと同時に、あの人の優しさが自分に向けられていたことが嬉しくもある


そのようなことを想うたび、自分のことがとてつもなく憎くなる


そして、それはこれから一生消えないのだろう









少し寄り道をする


いつもの帰り道ではなく、少し郊外の方へと足を運ぶ


丘に着いた


初めてここに来た時は、オレンジ色に染まるこの街並みに


世界の広さに驚いた


あの人と一緒に、もっと広い宇宙にいたのに、それとは比べ物にならないほどこの街並みは広く感じた


そして、これはあの人が憧れていた世界なのだろう


そして、私にも見せたがっていた世界だ






私は、あの人の死に目に会っていない


あの人がそれを隠していたからだ


ただ、あの人と最後に出会ったときのことはよく覚えている


目を閉じてもその光景が目に浮かぶ


私の頭を撫でながら、寂しげに笑うあの人の笑顔を


あの人は、もうそれが最後になるとわかっていたのだろう


だが、それを伝えれば、私が壊れることを知っていた


そして、そのまま私たちは別れた


さよならも言えずに・・・






少し暗くなってきた


もうそろそろ帰らないと、私の家族たちが心配するだろう


あの家は暖かい


私のことを案じてくれているのがよくわかる


・・・あの人によく似ている


あの人たちも、私と同じ悲しみを受けたはずだ


だが、それを私には見せずに、私には笑顔を見せる


そんなとこもあの人によく似ている


あの人たちにはまだ甘えられない


私自身がまだそれを許せていないから


けどいつかあの人たちに甘えられる日が来ると思う


それまでは、迷えば立ち止まり、ここへ来よう


あの人の時間は迷うことすらも許されなかったのだから


そして、ここに来たら、あの人のことを思い出そう


そうすれば、また歩いていけるだろうから





本当にそろそろ帰らないといけない


空が暗くなってきた


空に手を伸ばしてみる


特に意味はない


ただ、空に輝いてる一番星に、手が届きそうな気がしただけだ


さあ、帰ろう私の家族が待つあの家へと

























あれから十数年の時が流れた


私はまたここに来ている


ここは、昔と同じように、オレンジ色に染まる街並みがよく見える


それにしても、今日は冷える


もう少し厚着をしてくればと少し後悔している


明日は大切な日なのだ


風邪を引くわけにはいかない


ただ、私の世界が広がったここに来るのをやめることもできないけれど


ここに来たのは、あの人にある報告をするためだ


私は明日結婚する


そのことを伝えにここに来たのだ


あの人にはお墓がない


だから、私があの人に伝えるのに一番ふさわしいこの場所にわざわざやってきたのだ


相手の名前は、マキビ・ハリという男性だ


昔は私に何かとかまってきて煩わしかった


だが、それが、私の中のあの人に対する想いを少しずつ変えていったのだ


もちろん、あの人のことは今でも大切に想っている


いや、むしろ昔よりも大切に想っているだろう


それは、彼が傍にいてくれるからだ


彼が、あの人に対する負い目を少しずつ溶かしていった


何か特別なことをしてくれたわけじゃない


ただ、傍にいてくれただけ


そして、きっとそれが一番大切なことなのだろう




ふと空を見上げてみる


私の視界に、空を飛ぶ鳥の群れが見えた


あの人と一緒にいた頃の私は、そんなことはどうでも良かった


あの人が死んですぐの私は、何処へ行くのかわからなかった


だけど、今なら少しだけ見える気がする・・・










今までずっと言えなかった言葉がある



アキト・・・・ありがとう・・・・・


あなたに逢えて・・・本当に良かった・・・・・・・




謝罪の言葉ではなく、お礼の言葉を言い、私はその丘を後にする


そして、昔と同じように空に向かって手を伸ばしてみる


ようやく捕まえた


私の一番星・・・・








後書き

俺が書くとハーリーはよく不幸になるので、幸せにしてみました。

そして、前回アキトが死んでからのを書いたら不幸になったので、今回は幸せになりました。

破壊神対策のためではないですよ(爆)

あと、ラピスの家族は言うまでもないですね。

それでは。

 

 

代理人の感想

「業」と同じく、これも私の命名です。

まぁ、野暮な解説は要らないでしょう。

 

ちなみにファイル名に対するツッコミは不可(笑)。

 

追伸

ふと、思いついたのですがハーリー×ラピスが実現してるとすれば、

ルリはサブロウタとくっついてたりするのでしょうか(笑)?