大岡裁き〜if〜

 

 

さて、戦争が終わり誰がルリを引き取るかでもめているナデシコ。

そんな騒動をどう治めようか我らがプロスペクターは思案していた。

 

 

「はてさてどうしたものやら・・・

 特に艦長とミナトさん、二人とも頑固ですからねぇ、

 どうしましょうか・・・」

 

大量のウインドウに囲まれながら唸る。

それらのウインドウは全てが喧嘩の仲裁やら、裁判での和解やらの資料だ。

ここ数日、それらの資料を見て、ルリの引き取り先を決めうる手立てはないかと悩んでいる。

ルリの引き取り先にはナデシコクルーの全てが名乗りを上げていた。

その人達を色々と説得して回っていたのだが、艦長であるユリカとミナトだけは決して譲らなかった。

それゆえこうして色々な資料を探して何とか穏便に済ませようとしているのだが・・・

 

 

「いやはや、金銭の問題ならば簡単なのですが、人の気持ちというのは・・・」

 

 

そう簡単にいくはずもなく、現在もこうして資料を探している。

 

 

「プロスさ〜〜ん、います〜〜?」

 

 

そんなプロスペクターの部屋に能天気な、いや、失礼、とても明るい声が響いた。

ホウメイガールズのミカコだ。

 

 

「どうぞ、開いてますから。」

 

 

そう言う前にミカコは入ってきた。

 

 

「はい、プロスさん宛てに小包。

 なんなんですか、それは?」

 

 

「香辛料ですよ。」

 

 

その小包を受け取り、その包装紙を開けながら答える。

 

 

「香辛料?」

 

 

「はい、ホウメイさんに頼まれまして・・・

 うん、間違いないみたいですね。」

 

 

中身を確認して満足そうに頷く。

 

 

「離婚、喧嘩、事故・・・

 これって裁判記録ですか?」

 

 

「ああ、それですか。先達の知恵にすがろうと思いまして・・・」

 

 

勝手にウインドウを覗くミカコに怒る様子もなく答える。

 

 

「うわ〜〜〜、何これ、ペット裁判だって。

 ニョホホホ、変なの。」

 

 

(あなたの笑い方の方がよっぽど変ですよ。)

 

 

そんなことを思いつつも忠告する。

 

 

「見るのは構いませんが、弄らないようお願いしますね。」

 

 

そう言った後、一瞬の沈黙が流れた。

 

 

「え〜〜と・・・手遅れみたい。」

 

 

「何ですとぉ!!」

 

 

慌ててプロスは立ち上がった。

ミカコのほうを見ると、ウインドウに数は数倍に増え、さらにまったく別のものを映し出していた。

 

 

「いや〜ん、戻んない。」

 

 

「いいからどいてください、あとは私がやりますから。」

 

 

自力で直そうとしているミカコを押しのけながらコンピューターの前にプロスは戻った。

 

 

(『プロス丸秘コレクション』にはプロテクトがかけてあるから大丈夫だとは思いますが・・・

もし、あれを見られでもしていたら・・・)

 

 

プロスは青くなりながら、慌てて開いてあるウインドウを確かめた。

しかし、開かれているウインドウはなんてことはないデータベースばかりだった。

ほっとして、これらのウインドウを閉じにかかった。

 

 

「プロスさん、ごめんなさ〜い。」

 

 

「大丈夫ですよ、ただウインドウが開かれていただけで・・・」

 

 

その中の一つのウインドウにプロスの目がとまる。

 

 

「ん?これは・・・」

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

「見つけましたぞ、ナイスアイディア。

 これで万事、間違い無しです。」

 

 

プロスが見つめるさき画面には、時代劇の『大岡越前』の一場面が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、これより、ホシノ・ルリ争奪戦を開始します。」

 

 

『うわぁぁぁああああああ』

 

 

 

 

高らかにプロスが宣言すると、観衆が沸いた。

 

 

「艦長、がんばれ〜〜〜!!」

 

 

「ミナトさ〜〜ん、負けんな〜〜!!」

 

 

二人の応援をする観客達。

 

 

「さあさあ、どっちが勝つか!!

 現在のオッズは3:4で艦長の有利だよ。」

 

 

・・・一応例外もいるみたいだが。

 

 

「さて、勝負方法は簡単です。

 二人にルリさんを引っ張って、勝った方がルリさんを引き取ります。

 いいですね?

 それでは・・・・始め!!」

 

 

 

プロスの声がかかった。

途端に、周りの観客の声が大きくなる。

 

 

「ルリちゃんは私が引き取るんだからぁ!!」

 

 

顔を真っ赤にして、口をへの字に曲げながらユリカが言う。

 

 

「ルリルリは私たちと一緒に暮らすの!!」

 

 

こちらも負けじと、顔を真っ赤にて引っ張り返す。

二人の力は互角のようだ。

しばらくして、今まで一言も声を上げなかったルリがついに悲鳴を上げる。

 

 

「んっ」

 

 

その瞬間にミナトの手がふっと緩む。

ルリはミナトの手をすり抜けてユリカの方に引っ張られていった。

 

 

「やった〜〜〜、勝った勝った〜〜!!

 やっとよ、アキト、私勝ったよ!!」

 

 

ユリカがアキトに報告する。

しかし、そこでプロスからストップの声がかかる。

 

 

「いえ、それは違います、艦長。」

 

 

「ええ〜〜なんでぇ!!」

 

 

「艦長はルリさんが痛がっても手を離さなかった。

 それでは引き取り手としては相応しくありません。」

 

 

「ふみ〜〜ん、そんなぁ。」

 

 

「ということは、家がルリルリを引き取るのね!!」

 

 

がっかりしているユリカを尻目にミナトが言う。

だが、そのミナトにも・・・

 

 

「いえ、あなたも引き取り手に相応しいとはいえません。」

 

 

「何でよ!!

 ルリルリが痛がったから手を離したでしょ。

 それだったらちゃんと『大岡裁き』と一緒じゃない!!」

 

 

 

 

 

「あなたはこの勝負が痛いとわかっていた。

 それでもなおこの勝負を受けた。

 その時点であなたも引き取り手失格なのですよ。」

 

 

起こるミナトにプロスは言う。

その言葉に落ち込んだようだが、ミナトは一つ疑問をプロスにぶつける。

 

 

「じゃあ、誰がルリルリを引き取るのよ?」

 

 

そう、これでは結局誰がルリを引き取るのかが決まらないのだ。

その疑問を解消する為、プロスは答える。

 

 

「そうですね、艦長、ミナトさん、お二人とも引き取り手には相応しくない・・・

ということでルリさんは私が引き取ることにします。」

 

 

 

『ええ〜〜〜〜〜』

 

 

 

こうしてルリは、プロスさんの元に行くことになったのでした。

 

 

ちゃんちゃん

 

 

 

後書き

 

なぜかは知らないけどプロスさんが夢に出てきたので書いてみた。

何でこんな夢見たんだろ?

ちなみにプロスさんも痛いとわかってやってるじゃないかという突っ込みは無しで・・・

 

 

代理人の感想

 

電波です。

これは電波でしょう。

いや、見事に落としてくれました(爆笑)。

 

・・・・「単にプロスさんが自分で引き取りたかっただけじゃないか?」

と言う突っ込みもこの際忘れておいてあげましょう(笑)。