機動戦艦ナデシコ

 

皇子と修羅と超能力者と

 

 

第三話

 

〈接触〉

 

 

 


 

 

 人通りの多い道路に一台の車が走る。

 いつもなら車が多いその道路はなぜかその時はその一台以外走っていなかった。

「ふぅ……どうしたものでしょうかねぇ」

 その車の中……ちょび髭に眼鏡をかけた男が難しい顔で考えていた。

 その様子を見て運転手である大柄の男が声をかける。

「例の件かミスター?」

「……そうですよゴートさん。

 もう少しでナデシコが出航するというのに……」

 プロスペクターは数日前の会長室での話を思い出していた。

 

 

 

 

 

 ネルガル会長室

 

 

 ネルガル本社ビルの最上階に位置するそこに三人の人物が集まっていた。

 会長たるアカツキ・ナガレにその秘書エリナ・キンジョウ・ウォン。

 そしてプロスペクターの三人である。

「エリナ君、実に困ったことが発覚したよ」

「はぁ? あなたの女遊びが週刊誌にでもすっぱ抜かれたの?」

「はっはっは、そうなったらそれで困ったことだけどもっと悪いことだよ」

「じゃあ何? クリムゾンのスパイが潜入していたとか?」

 そういいながらエリナはプロスペクターを睨みつける。

 もしそうならプロスペクターの怠慢である。

 彼はネルガルシークレットサービスの長なのだから。

 しかしアカツキの言葉はそれ以上に彼女を驚愕させた。

「いやぁ〜〜、実は社長派の連中がマシンチャイルドの研究所を隠してたみたいでね〜〜」

「…………は?」

 一瞬何を言われたのかわからないエリナは呆けた返事を返す。

 それを見てプロスが話を続ける。

「……まったく困ったものです。 

  マシンチャイルド計画はもう全て潰したと思ったらまだやってたんですから」

「まぁ彼らにしてみればカードの手札を増やしたかったってところじゃないかな?」

 アカツキは軽くいって社長派の動きを推察した。

 しかし机の下では拳が血が出るほど握り締められていた。

 元々アカツキは父の代から進めてきたマシンチャイルド計画を嫌っていた。

 だからこそ自分が会長になってから即行で潰したはずだった。

 しかし、現実にはまだそれは続いていたのである。

「……ちょ、ちょっと何のんきにしてるのよ!

 これがばれたらネルガルの死活問題よ!」

「わかってるよ。 それにクリムゾンやアスカに情報が漏れるのも防がないとね」

 ようやく事態を把握したエリナがいきりたつがアカツキはやんわりとなだめる。

「一応手はうっておりますので」

「でもどっからその情報手に入れたの?」

「それはですな……」

 

 

 

 

 

 プロスによるとその日偶然研究所を離れていた一人の研究員がいたというのだ。

 次の日に連絡を入れてみたがまったく連絡がつかず一人で向かうとそこには変わり果てた研究所があった。

 慌てて上に連絡した結果、すぐに探索班が結成され現場に急行した。

 しかし社長派のあわただしい行動はプロスら会長派に疑念を抱かせるに十分すぎた。

 すぐさま動きを調べ件の研究員の身柄を確保、社長派の手の届かないところに隔離し尋問したのである。

 

 

 

 

 

「……そういうこと」

「さらに尋問した結果、また厄介なことが判明しました」

「……何よそれは?」

「どうやら研究所にはマシンチャイルドが一人いたそうなんですが……見つからなかったそうです」

「……最悪!!」

 眉間に指を当てエリナは呟く。

 見つからなかったということは連れ出されたという公算が大きい。

 マシンチャイルドの成功例はホシノ ルリただ一人。

 そのホシノ ルリはネルガルが取り込んでいたからいいとして他にわたることだけは避けなくてはならない。

「プロス君、シークレットサービスを動かしてマシンチャイルドの捜索に当たってくれないかい?」

「わかりました。

 身体的特徴についてはすでに掴んでおりますのでそれを元に探させます」

「よろしく頼むよ」

 

 

 

 

 

「……しかしどこがやったのだろうな?」

「そんなことを言ってもわかりませんよ。

 それに私達にはスキャパレリプロジェクトの方を優先しなければならないんですよ。

 とりあえずSSには最優先命令をだしておきましたから結果待ちですね」

「ふむ……そうなるか」

 ゴートはプロスが促すとすぐに思考を切り替え運転に集中する。

 プロスもそれで話を終わりとばかりに視線を外に向ける。

 流れる景色をしばらく見ていたがあるものを見たときに驚愕した。

「止めてくださいゴートさん!」

 ゴートは驚きながらもブレーキを入れ車を停止させる。

 けたたましい急ブレーキの音が辺りに響き渡る。

 何事かと周りに人が集まる。

 幸い後ろには車はなく事故となることも無かった。

「ミスターどうしたんです?」

「…………あれをみてください」

「む…………なっ!?」

 プロスが指を指した方向に目を向ける。

 そこには桃色の髪に金の瞳の少女がソフトクリームを手に二人の少年と歩いていた。

 

 

 

 

 

「へへ〜〜♪」

「おいおい、そんなに急いで食べると口の周りが汚れるぞ」

「まぁそういわないで、ラピスは甘いものが好きだからしかたないよ」

 自販機で買ったコーヒーを飲みながらラピスの隣を歩くシンとリョウト。

 ラピスはリョウトからソフトクリームを買ってもらいご機嫌である。

「……やっぱり女性の買い物は時間がかかるんだね」

「そうなのか?」

「まぁね」

 そういいながらリョウトは自分の姉達のことを思い出していた。

(荷物持ちに何回付き合わされたことやら……しかも時々女性用下着売り場にまで行く始末……)

 眉間を押さえながら遠い目をする。

「どうしたの?」

「いや、昔を思い出してただけだよ」

 そういってリョウトはぽんぽんとラピスの頭を軽くなでる。

 猫のように目を細め微笑むラピス。

 この頭をなでてもらうのがラピスのお気に入りだ。

 最初にやったのはシンでそれからは四人ともこうしてなでている。

 余談であるがラピスはなぜかシンに一番懐いている。

 そのことを知ったアキトが落ち込みルリが慰めていた。

「もう戻ってきてるかな…………ってまだみたいだね」

 公園に入り三人は辺りを見回して手ごろなベンチに向かう。

 入ると同時にシンの方に好奇の視線が向けられる。

 フード付きパーカーとという服装は普通でも顔にまで刺青が入っているのでやはり目立つようだ。

 シンはその視線を無視してベンチに座った。

「そういえばナデシコとやらの出航まであとどのくらいだっけ?」

「えーと……たしか一週間後ぐらいだったと思うけど……」

「もうすぐだな。 

 ところでホテルとかの料金やこれからの資金は大丈夫なのか?」

「うん、そっちはホシノさんに任せてある」

 リョウトたちはあの洞窟付近からホテルに移っていた。

 それまでは洞窟付近で寝泊りしていたがラピスが来たのに洞窟ではかわいそうだとアキトが考えたのだ。

 そのことをアキトが言うとルリがあからさまに落胆した声で呟いた。

『私のことはかわいそうと思わなかったんですか……』

 アキトはすぐさまフォローしようとしたがなかなかいい言葉が思いつかない。

 その後、あの手この手でなだめたが結局ルリが機嫌を直した頃には次の日の朝となっていた。

 まぁその日の一日中ルリの機嫌が良かったが。

「それにしても長いな、カラーコンタクトを買いに行っただけだろ?」

「そのはずだけど……ん?」

 公園の外からけたたましい音が響いてくる。

 何事かと思い目を向けてみるとそこには一台の車が止まっていた。

「なんだ? 事故か?」

「さぁ……事故ではないようだけど」

 ラピスはそんなことも気にしないでソフトクリームに夢中だった。

「なにかあったんですか?」

「さぁ……って戻ってきたんだ」

 後ろを振り向くとアキトとルリの二人が立っていた。

「……これはまた変わったな?」

 ルリの瞳はマシンチャイルドの証たる金ではなく青い目だった。

 またツインテールにしていた髪がポニーテールになっていた。

「……しかし落ち着かないな」

「またなんで?」

「いつもあの格好だったからなぁ」

 アキトはアキトでいつものプロテクターと黒マントから黒のスラックスと黒のジャケットを着ていた。

 バイザーもはずしてどこにでもいるような青年の姿だ。

 尤も黒ずくめということには変わりないが。

「やっぱりまだ違和感があるな……五感が治ったのはうれしいが」

 

 

 

 

 

 そうアキトはすでに五感を取り戻している。

 話はラピスをつれてきた日まで遡る……

 

 

 

 

 

 ラピスを連れてきた後四人はホテルに移動していた。

 

 

「まだ目が覚めないのか」

 ベッドで寝ているラピスの前でアキトは呟く。

 すでに正午を越えたがラピスはいまだ目覚めず眠り続けていた。

「ふぁ〜〜ぁ……っとまだ起きてたのか……変わるか?」

 目をこすりながらシンは部屋に入ってくる。

 アキトは一晩中ラピスのそばから離れていなかった。

「いやラピスが目覚めるまでそばにいる」

「んなこといったってお前全然寝てないだろが……それに……ほれ」

 シンはついと入り口に目を向ける。

 つられてそちらに目を向けるとルリが入り口に立っていた。

「なんか話があるみたいだぞ」

「そうなのか?」

「というわけだから言ってこい。 その子は俺が見てるから」

 そういってシンはベッドの脇にあるイスにゆっくりと座る。

 アキトは少し迷ったがラピスの頭をなでるとルリの方に向かう。

 ルリはアキトに耳打ちするとアキトをつれて部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 アキトはルリについていき隣の部屋に入る。

 ルリは部屋に入るとダッシュボードの上に置いてある一つの包みを手に取った。

 それと同時に入り口の扉がノックされる。

「アキト、ちょっといいかな?」

「……ちょっとまってくれ」

 リョウトに待つように言うとルリの方に向きなおす。

 ルリはアキトに小走りで駆け寄ると包みを手渡す。

 手渡された包みを解いてみると中からあるものが出てくる。

 それは……

「…………IFS」

 手にしたIFSをじっと見つめる。

 ルリはそれを見ると懐からあるものを取り出す。

「アキトさん……これを」

「ルリちゃん……それは……」

 懐から取り出したもの……それはリョウトからもらったアンチナノマシンであった。

 アキトは二つを見比べるとため息をつく。

「ルリちゃん……悪いけどやっぱり俺には……」

「なんですか!?

 あの時約束したじゃないですか! 元の世界に戻れたらこれを使うって!」

「……やっぱり駄目だよ……俺にはそれを使うことは……」

「……そうですか……わかりました」

 あっさりひきさがったルリを不思議に思いながらもアキトは部屋の入り口に向かう。

「……アキトさん」

「ん?」

 やはりまだ何かあるのかと思いルリの方を向こうとするアキト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えい♪」

 

 

 

 

 プシュー

 

 

 

 ドタッ!

 

 

 突如目の前に何かが噴射され抵抗するまもなくアキトは倒れた。

 いつの間にかルリの手にはスプレー缶が握られていた。

「ああ! アキトさん!?」

 ものすごくわざとらしく声を上げるルリ。

 それを聞いてリョウトが慌ててドアを開ける。

「どうしたん……アキト!?」

「なんか知らないけど倒れちゃって……済みませんがそっちを持ってくれますか?」

「わ、わかった」

 倒れているアキトを見て慌てるリョウトだったがすぐに気を取り直す。

 とりあえずルリに言われたとおりアキトに近寄り腋の下に手を入れる。

 ルリも足の方に移動すると膝の裏に腕を回そうと屈む。

 

 

 

 ゴト

 

 

 

 屈んだ拍子にルリの懐からさっきのスプレー缶が転がり落ちる。

 一瞬『あ』という表情で止まったルリだったが気をとりなおすと速攻でスプレーを拾い懐にしまう。

「……ホシノさん、今のは何?」

「ただの整髪料ですよ」

「……もしかして睡眠スプレーみたいなもの?」

「……そんなことはありませんよ。 ええ決して」

「…………ふ〜ん……とりあえず話すときは相手を見ようよ」

 疑惑の眼差しを向けるリョウトから目どころか顔ごとそらすルリ。

 怪しさ120%である。

「ま、まぁまずはアキトさんをベッドに寝かせないと」

「……まぁいいけど」

 

 

 

 

 

「さて……これでいいはずですけど」

 ベッドの上ではアキトが穏やかな顔で眠っている。

 その傍らには空となったアンチナノマシンの容器が転がっていた。

 ルリはアキトが眠っていることを確認するとアキトの腕にアンチナノマシンとIFSを注射していた。

「……勝手にやって良かったの?」

「いいんですよ。

 アキトさんって優柔不断ですし、誰かが後ろを押してあげないと」

「でも……」

「……知ってます?」

 反論しようとするリョウトを制するルリ。

 急に暗い声になり俯いて喋り始める。

「アキトさんいつも深夜にこれを手に取ってたんですよ」

 そのルリの手には使い終わった注射器が握られていた。

 もちろんそれはアンチナノマシンである。

「……自分にはその資格がないとか呟いて……

 体を治すことに資格なんてあるんですか?」

「…………」

「……一緒にいて一回も笑ってくれないんです。

 昔はあんなに笑っていたのに……だから……だから私はあれを使ったんです。

 五感……せめて味覚と嗅覚が戻ってくれればアキトさんがまた笑ってくれると思って……」

 ルリの顔から雫が一つベッドに落ちる。

 容器を握るもう片方の手はアキトの頬に添えられていた。

「……ホシノさん、僕には君がしたことをこれ以上どうこう言う気は無い。

 そのことはアキトと二人で話し合うべきだと思う。

 でも……これだけは言わせてほしいんだけど……」

「……なんでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よだれ……でてるよ……」

「へっ……あっ!?」

 リョウトに指摘され慌てて口元をぬぐう。

 どうやら先ほど落ちた雫はよだれだったようだ。

「それにもう一つ言わせてもらうとにやけながらアキトの頬を撫でるのはどうかと……」

「うっ……」

 寝ている男の頬を撫でながらにやけ面をしてよだれをたらす女性。

 傍から見るとかなり危険人物である。

「し、仕方ないじゃないですかっ!

 アキトさんの寝顔をこんなに近くで見てるんですからっ!

 そりゃよだれの一つも垂らすってもんでしょう!」

「いやわけわかりませんよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんというか色々と台無しであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アキトは目覚めると五感が治っていることに驚いた。

 すぐさまルリを問い詰めようとしたがリョウトに止められた。

 かなり興奮していたがリョウトにルリの心情を話されると落ち着いて問い詰めるのをやめた。

 決して視界の隅に入ったルリが例のスプレー缶を握り締めていたのを見たからではない念のため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でどうやってナデシコに乗るんですか?」

 ベンチに座りながらリョウトが尋ねる。

 あごに手を当て少し考えた後にアキトが口を開く。

「……アカツキと接触するしかないか」

「はぁ……それしかありませんか……」

「ナデシコの出航前におしかけても乗せてくれるかわからないしな」

 溜息をつくルリに苦笑しながら答える。

「……おいアキト」

「ん?」

「なんか見られてないか……たぶんあそこらへんだと思うが」

 シンが指差した先を見てみると先ほどの車が止まっていた。

 中の様子はスモークフィルムが貼ってあるみたいで見えなかったが。

「あれってなんだろうな?」

「わからん……少し様子を見るか……ああ!?」

「どうしたんですかアキトさん……!?」

 突如アキトが素っ頓狂な声を上げる。

 つられてルリもそちらを向くと目を見開いた。

 二人につられてリョウトが目を向けるとその車のドアが開き人が降りてきた。

「すみませんちょっとよろしいでしょうか?」

 そういってこちらに来た男……プロスペクターは笑いながら話しかけてきた。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 作者:皆様お久しぶ……「遅いわっ!!」 ……でふぅ!?

 

 ドゴォ!!

 

 作者:い……いきなり跳び蹴りとはなんばすっとね!?

    おもっくそ壁に衝突したぞ!? しかも顔面から!

 シン:どやかましい。 投稿すんのもっと早いはずだったろうがああ?

 作者:……すみませんごめんなさい本当は半月前には上げるつもりでした。

 シン:ったく今更ゲームにはまりおって。

 作者:うう……やられちまったようおまえさん……

 シン:誰だよおまえさんって……

 作者:ふっ私にもわからん。

     ところで何でおまえがここにいる? 確かアキトが来るはずだったんだが。

 シン:……あれ見てみろ。

 作者:ん?

 

 

 アキト:……ルリちゃんがルリちゃんがルリちゃんがルリちゃんが…………

 

 

 

 作者:あ……あ〜〜アキトの奴どうしたんだ?

 シン:あの時のホシノの反応を知ったらしくてな……

 作者:……そりゃ……つらいな。

 シン:ままぁ次回までには持ち直してるだろう。

 作者:そそう願うところだな。

 シン:ところで次回までにはナデシコに乗れんのか?

 作者:うむようやく乗船することになる。

     詳しい話はまた次回!!

 シン:では読者の皆様また次回お会いしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アキト:……にやけてよだれを……あの子があの子があの子が…………(以下エンドレス)

 

 

 

 

 

 

感想代理人プロフィール

戻る

 

 

 

 

代理人の感想

壊れたか(笑)。

しかし、ヘタレの尻を蹴っ飛ばすキャラというのは見ていて中々気分がいいです。

例えその行動が多少危険域に入っていても(爆)。

がんばれ、もっとがんばれ。w