『ハーリー、不様だね』

さりげなく、止めを刺すオモイカネ。

ゴイ〜〜〜〜ン!!(ウインド表示・効果音付き)

「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!」

ダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・・・・

「コラ!ハーリー、今は第2種戦闘配置中だぞ〜・・・聞いちゃいないか」

『そうだね』

小さくなっていくハーリーを見送りながらサブロウタとオモイカネは顔(?)を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロニー襲撃中だと言うのに今ひとつ緊張感がない・・・流石ナデシコと言ったところか?

 

 

 

 

 

 

 

機動戦艦 ナデシコ

 

星ノ記憶・・・

 

 

 

 

 

4.

『うわぁぁぁぁ・・・』

『ガッ!・・・なんだ?!なんで動かない!! 動け!動いてくれ!!まだ死にた(ブツッ!)

『我!操舵不能!我、操舵不能!!至急救援を請う!!』

「ククク・・・」

受信のみとなっている通信機から次々と響いてくる兵士達の叫びを、心地よさげに聞きながらパイロットは

口元を歪める。

「まだだ、まだ足りん

 恐怖しろ、叫べ! 藻掻き苦しめ! クックックッ・・・そして我を更に狂気させよ!!」

向かってくる、ステルンクーゲルを次々と破壊しながら、鮮血に染まった機体は舞った。

 

「敵機動兵器、第3防衛ラインまで後退」

「第106機動大隊、及び第051砲戦中隊が追撃中です」

「よ、よし、なんとかなりそうだな・・・」

オペレータからの報告に、副指令は周りに聞こえないようにつぶやく。

敵機動兵器を追い返してはいるが味方の被害が尋常ではない。

それこそ壊れたカウンターのごとく死者が増えていく、既に全戦力の12パーセントが消えていた。

【だが、こちらが押し返したとは思えない・・・ワザと引いたのだろうか?】

こんな時、弱気な所を見せればすぐに部下達に伝染する、たとえ虚勢でも常に強気でいなければならない。

しかし、そんな副指令の気遣いは無用なモノであった。

何故なら・・・

「見たかね!これこそ統合軍の力!新たなる力だ!」

「ア、アズマ准将!?」

いつの間に現れたのか副指令の後ろで仁王立ちになっている基地指令アズマ准将、彼ほど無意味に自信を

まき散らす人物はいないだろう。

「フハハハッ 今日がヤツの命日だ!!!」

「じゅ、准将・・・」

いつもながら、根拠の無い自信をまき散らし叫ぶ准将に辟易しながらも副指令の顔から先程迄の深い焦り感

はある程度消えていた。

「第033機動大隊、第106機動大隊のバックアップへ」

『033リーダー了解』

「第089駆逐戦隊、Nフィールドの負傷者の救助を」

『既に開始、あと15分で終了予定』

そしてそれはオペレータへ伝わり、通信を介して各部隊へ、やはり司令官の闘志は大切なのだ。

そう言う意味においてはアヅマ准将は優秀なのかもしれない。

「今や統合平和維持軍は無敵の軍なのだ!!」

しかし、五月蠅い・・・

「!! 保安部より連絡!第10ブロックにて不信人物を発見、銃撃戦の末 第12ブロック02番格納庫に

 追い込んだそうです!」

「ん?」

それがどうした、とでも言いたそうにオペレータを見る。

「テロリストの工作員の可能性が有り、逮捕の為の増援を要請していています」

「その辺の警備兵で歓迎してやれ」

「は、はい 了解しました・・・第12ブロックの警備兵は侵入者の逮捕に向かえ、繰り返す、侵・・・」

声の大きさに辟易しつつオペレータは館内マイクに向かって指令を伝える、ウインドウ通信は未だに

『OTIKA』の文字が舞っており、全く使えないままなのだ。

 

 

『・・・侵入者の逮捕に向かえ』

「チッ、やはり使えん」

他の通信の中に紛れていたその通信を聴き逃さなかったパイロットは苦々しく顔を歪め、腹いせに接近してき

たステルンクーゲルを錫杖で貫く。

「所詮”あれ”は欠陥品・・・・・・我に自由跳躍の術があれば・・・」

貫いたステルンクーゲルを敵編隊に投げ込み、動きが乱れたところを各個撃破。

「この様に手間取ることは無いものを」

その爆発に紛れ、別の敵編隊に攻撃を仕掛ける。

だが、言葉とは裏腹にその顔には笑みが張り付いていた、これで更に破壊と殺戮を楽しむ事が出来ると・・・

 

 

「・・・弱ったな〜、ここには無いぞ」

アキトは自分が侵入した格納庫を見回して、思案に暮れていた。

作戦UHAは、格納庫に忍び込み格納されている機動兵器を強奪、敵が混乱している間に目的のモノを奪うと

言うものなのだが・・・

『アキト、ここ違う ここは艦艇用の物資格納庫、機動兵器は隣の格納庫だよ』

ウインドが開きラピスが注意する、

「はぁ、引き返すか   !?」

俄に格納庫の扉の外が五月蠅くなってきた、警備兵達が集まってきているのだろう。

「強行突破、か・・・」

覚悟を決め、ブラスターの弾倉を確認する、少々 いやかなり心許ない。

『アキト 待って』

「? どうしたラピス」

『これ、見て』

数メートル先迄進んでウインドのラピスがある方向を示した。

「何かあるの?」

【重火器でも有るのかな】

ラピスの指さす方向をのぞき込んでみると、

「・・・これは」

『どう? アキト』

ラピスが少し誇らしげにアキトを見上げる。

「ラピス、えらいぞ!」

「エヘヘ・・・」

アキトにほめられて満面の笑みを浮かべるラピス。

『アキトの役に立てた?』

「ああ、もちろん」

『じゃあ、この作戦が終わったらご褒美・・・欲しい』

「ヘッ?!」

そう言ってラピスはウインドウを閉じ、先程とは違う事で途方に暮れるアキトが残った。

 

 

『隊長、各隊配置に就きました』

「よし、これから30秒後に突入する! 目的は不信人物の逮捕だ、間違っても殺すなよ」

無線機を片手に警備隊長が指示を出す、

【なんとかしないと・・・でも、何を?

 ここは宇宙軍の管轄では無いから、私が出るわけには・・・

 でも・・・何かしないとアキトさんが・・・】

警備兵と一緒に追いかけてきたが、何も出来ないでいる自分に怒りと焦りを感じつつ様子を見ている。

普段のルリなら解決策の1つや2つ考えつくのだろうが、依然とまだ混乱したままで上手く考えがまとまらない。

「4.3.2.1.・・・」

 ドガァァァ!!

爆発音が響き、格納庫の扉が爆破された、   内側から。

「な、なに?!」

少し下がっていたため爆発に巻き込まれなかったルリがいち早く格納庫の方を見ると。

「・・・あれは、『サレナ』?!」

爆煙の中ゆっくりと出てくる白銀の巨人、それはここ『アメノムラクモ』でナデシコBから降ろしたばかりの

テスト機『サレナ』だった。

『どけっ! 俺の邪魔をするなら容赦はしない』

その『サレナ』から響いてくるのは、アキトの声。

【確か『サレナ』はナデシコが停泊しているブロックのすぐ近くの格納庫に入れられた筈、言うことは・・・

 ナデシコはこの近くに?】

 ズガァァッ!!

ルリが考えている間に、『サレナ』は隔壁を破壊してそこから外に飛び出した。

「アキトさん! 待って!!

 サブロウタさん」

『はい、どうしました艦長?』

ルリの呼びかけにすぐにサブロウタのウインドウが開く。

「コロニー内に侵入した敵が『サレナ』を奪って逃亡中です」

『なッ !? 了解、スバル中尉に追ってもらいましょう』

「お願いします、私もすぐに戻ります」

ウインドをいったん閉じ今度はオモイカネを呼び出す。

「オモイカネ、ナデシコまでの最短ルートを」

『ルリ、焦らなくても大丈夫です、『サレナ』が破壊した壁を見てください』

「?」

言われるまま覗いてみると。

「!? ナデシコ」

壁の向こう、すぐそこにナデシコの白い艦体があった。

視線を巡らすと、『サレナ』の機体とそれを追うためにナデシコからマニュアル発進するリョウコの赤い

カスタム・エステバリス以下、部下達のステルンクーゲルが見えた。

【リョウコさん、統合軍より先にアキトさんを捕まえてください・・・】

迎えに来たステルンクーゲルの手に飛び乗りながら、ルリはそう祈った。

 

 

「ヘッ、行くぜ野郎ども!!」

『『『『オオッ!!』』』』

リョウコの声に、一斉に部下達の叫びが返ってきた、但し今回はサブロウタの隊に所属している連中だ、

リョウコの隊は全員医務室で出撃不可のため臨時でこうなっている。

【オレの乗ってたテスト機を奪うたぁ、いい度胸だ!! 絶対捕まえてやる!】

しかし、臨時と言っても全員がエースクラス、直ぐにフォーメーションを組むとサレナの追撃に入る。

 

 

「 チッ こんなところにナデシコBが停泊していたとは」

ウインドに表示されるデータに目を走らせながらアキトは舌打ちする。

先の戦争で、木連の・・・草壁中将の理想をうち砕くきっかけを作った相転移動力炉戦艦ナデシコ、その後継艦。

当時のナデシコでオペレータをしていたホシノ・ルリが艦長を務める、優先破壊ランクAの敵だ。

「 ツッ・・・ なんなんだこの頭痛は」

不意に軽い頭痛に襲われ顔をしかめる、今までこんな頭痛を感じたことが無く原因はわからないが、無視できる

レベルだから問題ないだろう。

【この場で破壊できればいいが、今は先にやることがある・・・】

ナデシコBに一瞬視線を送ると、アキトはサレナのスラスターを噴かした。

 

 

「遅い!!」

一瞬サレナの動きが遅くなったのを見逃さずリョウコが大型レールカノンを放つが、サレナの厚いディストー

ションフィールドに阻まれ効果がない。

「チッキショウ! 誰だあんなの創ったのは!」

だが、毒づいたところで状況がよくなる筈もない。

「飛び道具が駄目なら、直接ぶん殴る!!」

それにコロニー内で重火器をそんなに使う訳にはいかない、どっちみち捕獲するには近接格闘するしかない

のだ。

 

 

「クソッ 時間がないのに!」

迫ってくる追撃部隊を確認してアキトは顔をしかめた、どうやらコロニー在中の部隊ではなくナデシコBの

機動部隊のようだ。

ドック内の限られた空間では振り切るのは難しい、ならついてこられない状況を造り出せばいい、あつらえ向き

のモノもあることだし。

 ヴゥゥゥゥゥン・・・

アキトの顔に光の軌跡が走る。

『アキト! ダメッ』

アキトの様子の変化を感じ取ったラピスが、いきなりウインド通信を開く。

「・・・ 大丈夫、無茶をする気はない」

ラピスを見てアキトの顔に現れていた光が消える。

『だけど・・・』

「大丈夫」

『・・・・・・ うん、わかった。

 でも ”ダイブ”の準備はしておくね』

アキトの言葉に安心したのか、ラピスは通信を切る。

「そう・・・ こんな任務で失敗する理由にはいかないんだ!  俺達は!!」

再びアキトの顔に光が奔る。

視界を巡らせ、サレナを包囲するように展開している赤いエステバリス・カスタムとステルンクーゲルを睨む。

「俺を捕らえる気か・・・ まぁ妥当な判断だ」

1機のステルンクーゲルが背後から来るが、軽くそれをかわす。

「だが ・・・もう少し現実を見た方がよかったな」

その動きを見ながらアキトはつぶやく、この程度なら自分を捕らえることなど出来ない。

 

 

「オラァッ 行くぜ!!」

リョウコの声を合図に一斉にサレナ目掛けて飛びかかる、テスト機の為武装はついていないが、エステバリス

やステルンクーゲルが単機で挑んで勝てるほどサレナの格闘能力は甘くない。

もっともそれはサレナの性能を十分に引き出せたらの話だが。

「どこの誰だか知らないが、その機体を奪ったのが運の尽きだ!!」

サレナに乗っている敵パイロットにそう言い捨てながらリョウコが真っ先に飛びかかった。

「ナニィィ!!」

次の瞬間サレナが消えた、いやリョウコですら消えたと思えるような速さロールしていた。

 ガゴォォ!!

「ウワァァッ!」

リョウコが機体を立て直すよりも速くサレナは圧縮したディストーション・フィールドでエステバリスを吹き飛ばす。

背後から来たステルンクーゲルの頭部をテールバインダーで破壊し振り返りざまに蹴りつける、その反動で別

のステルンクーゲルに迫り、腕を掴むと別のステルンクーゲルに向かって投げ飛ばす、更に細かいロールを

繰り返しステルンクーゲルの攻撃をかわし、避けるついでとばかりに殴りつける。

「な、何だと!?」

近くの輸送船の外装にめり込んだ機体を引き剥がしながら、リョウコが信じられないとサレナを見る。

【そんな・・・ あの機体を乗りこなしている!?】

テストパイロットの性質上、ナデシコBのパイロット達はリョウコを筆頭に皆エースクラスの腕前だ、そのテストパ

イロットが誰1人として操作することの出来なかったサレナを敵パイロットは乗りこなしている。

「冗談じゃねぇぞ!」

体勢を整えるとリョウコは再びサレナに機体を向かわせた。

 

 

「クゥッ!」

サレナの中でアキトは呻いていた、

このサレナと言う機体、アキトが普段使用している夜天光と同等の性能を持っているようだが、体にかかる重圧

が倍近くある、慣性中和装置がまだ不完全なようだ。

「まずいな・・・」

襲ってきたステルンクーゲルを近くの輸送艦に叩き付けながらアキトは1人つぶやく、この程度の重圧なら耐え

られないレベルではないが、長時間だと”アレ”が始まってしまう。

もし”アレ”が始まれば、任務どころの話ではない。

「鬱陶しいんだよっ!! 貴様等は!!」

サレナを包んでいたディストーション・フィールドを一気に周囲に向けて解放する、敵機を破壊するだけの威力は

無いが、周囲を囲んでいたステルンクーゲルを弾き飛ばすくらいのことなら出来る。

ステルンクーゲル達が体勢を直している間に、アキトはサレナの腰のアタッチメントにセットしていた大型ランチ

ャーを取り出した。

 

 

「? なんだ」

ディストーション・フィールドで弾き飛ばされた機体を何とか立て直しながら、リョウコはサレナが構えている

ランチャーを訝しげに見る。

ナデシコBから降ろす時にサレナの武装は外していた筈、それにあんな武装はこの2週間のサレナテストの

間一度も見たことがない、が見覚えはあった。

「!!  ありゃ 新型のグラビティー・ランチャーじゃねえか!!」

見覚えがあるのも当たり前、あれは次にリョウコのチームがテストする予定で、ここで受け取る筈だったクリムゾ

ン製の機動兵器用のグラビティー・ブラスト。

おそらくサレナが格納されていた格納庫から持ち出してきたのだろうが、

「冗談じゃないっ あんなのコロニー内で撃たれたら・・・

 全機なんとしても撃たせるなっ!!」

慌てて命令を出す、あれがスペック通りの性能を出せば戦艦の主砲並のグラビティー・ブラストが来る。

リョウコの命令を受け、ステルンクーゲルが再びサレナに向かおうとするが、

それより速く、サレナがグラビティー・ランチャーのトリガーを引いた。

 

 クォォォォォ・・・

 

ランチャーの砲身が鳴動し、一斉に重力波の奔流を放った。

グァァァアァァァアァァァァン!!

直撃を受けたドック内の輸送艦が爆炎を上げる。

「な!?」

てっきり自分達に向けられると思っていたリョウコが間抜けな声を上げるが、次の瞬間エステバリスに緊急回避

をさせる。

サレナがトリガーを引いたままランチャーを振り回した。

当然、重力波の帯もランチャーに合わせてムチのように撓りながら、ドック内をなぎ払う。

グァアアァァアン!

          ゴカァァアアァ!!

                   バガァッァァァアァァ!

停泊していた、輸送艦、貨物船、戦艦が次々と爆発を起こす。

「な、なんて事考えてんだ!」

爆発の余波に機体を煽られながらもリョウコは何とか激突しないように操作するが、ステルンクーゲルは全機

爆発の余波で互いに、ドック内壁に、艦艇に叩き付けられ行動不能に陥っていく。

 

 

 ジジジッ  バチッ・・・ ギギギッギギ・・・

試射すらしていなかった物を最大出力で使ったせいか、グラビティー・ランチャーは火花を散らし悲鳴を上げて

いる。

「フン・・・」

使い物にならなくなった、グラビティー・ランチャーを投げ捨てるとアキトはサレナをドックから更にコロニー

内部に向かわせた。

「・・・予定より時間を食い過ぎている、”アノ男”が統合軍程度に墜されるとは思わないが」

戦艦や輸送艦の爆発もサレナのディストーション・フィールドとアキトの腕で、なんの影響も受けずに行動して

いる。

「・・・ ラピス、データを」

『うん、送るね』

アキトの呼びかけにラピスがウインドを開きデータを表示する。

『ハッキングの結果、『アメノムラクモ』には非公式なブロックと、メインとは別に独立したシステムを確認、

 ”あれ”は・・・アキトの居る所からコロニー中心方向直線で約780メートル先の、隔離区画だよ』

ラピスが表示するデータに素早く目を通す、

「わかった、時間をかけすぎた 10分でカタをつける」

『・・・・・・』

「大丈夫だ、心配ない」

『・ ・ ・ アキト、みんなで待ってるから』

「ああ」

頷くと、アキトはサレナを発進させた。

 

 

「アズマ准将!!」

「どうした!」

襲撃機の迎撃指揮をしていた(怒鳴っているだけ)アズマがオペレータを見る。

「第12ブロックのベイエリアで大規模な爆発です!!」

「なにぃ?」

意外な報告にアズマの顔が引きつる、敵機はコロニーから離れた位置で戦闘中だそんな所に戦闘の被害が

出る筈もない。

「保安部より緊急! 敵工作員が格納庫の機動兵器を強奪!! 第12ブロックのベイエリアを破壊し

 コロニー内を逃走中!」

別のオペレータの報告に一気に准将の頭に血が昇る。

「コロニー内の警備部隊は何をしているんだ!!」

「ヒィッ  12ブロック在中の部隊が迎撃に出ましたが爆発に巻き込まれ壊滅しました」

アズマの怒声に身を竦ませながらもオペレータは答える、至近距離で直撃を受けた副指令は耳を押さえて

倒れてる。

「現在、その場に居合わせたナデシコBの機動部隊(この時点でリョウコ以外全滅)が追跡中です」

「コロニー内での火器の使用を許可する!

 コロニー内のありったけの部隊を向かわせろ!!」

ナデシコBの言葉に対抗意識を丸出しにして怒鳴る、

「りょ、了解」

声の大きさに辟易しながらもオペレーターは命令を伝える為にマイクに向かう。

まだ、ウインドウは復旧していない。

「統合平和維持軍の名にかけて、絶対に逃がすな!!」

その時、背後で復活した副指令が部下に何か耳打ちしたにアズマ准将は気がついていなかった。

 

 

「各部、損傷を報告してください」

艦長席についたルリがウインドウを開き、艦内様子をチェックしていく。

ナデシコBはルリのとっさの判断でグラビティー・ランチャーが撃たれる寸前にディストーション・フィールドを

展開し、難を逃れていた。

「各部、どこにも異常はありません、いつでもでれます」

表示されるデータの見てハーリーがルリに報告する、サブロウタはルリが戻ってきたため今はアルストロメリア

で待機中。

「わかりました、本艦はこれより『アメノムラクモ』から離脱します、各員第一種戦闘配置に移行してください」

「了解」

ルリの命令を受けナデシコB内が慌ただしくなる。

外は未だに爆発が続いているがディストーション・フィールドに護られたナデシコBには影響がない、多少は揺

れるが。

「艦長、ステルンクーゲルの回収終わりました、スバル中尉はまだですけど」

「心配いりません、リョウコさんならまだサレナを追っている筈です」

そう返しながらルリはハーリーの方を見て、

「ハーリーくん、『アメノムラクモ』にハッキング」

「え! もう一度ですか!?」

「そ 」

驚いたようにルリを見るハーリーに繰り返すと、艦長席を戦闘モードへと変える。

「キーワードは・・・ 『AKITO』です」

『OTIKA』と表示されたウインドウを一回転させて『AKITO』にするとハーリーに向かって飛ばした。

「? 『AKITO』って、 何なんです? あ、艦長艦長〜」

送られたウインドウを片手に混乱気味のハーリーを尻目に、ルリはウインドウボールを展開する。

「IFSのフィードバック、レベル10までアップ、艦内は警戒パターンA

 取り敢えず、ドック内の負傷者の救助です」

いったん港の外にナデシコBを停泊させると、救助の為にエステバリス部隊を出す。

サブロウタの部隊(一応全員生きていた)が全滅したため、急遽入院していたリョウコの部隊が救助に出ている、

戦闘は無理だがこの程度なら問題はない。

【・ ・ ・ アキトさん、あの人は生きていた、

 でも・・・ この3年間に何があったんですか?】

3年前一緒に屋台を引いていた頃のアキトを思い浮かべ、頬を赤らめたが、直ぐに先程の銃を構えたアキトの

姿がルリの脳裏に浮かぶ。

「アキトさん・ ・ ・」

ルリの唇からこぼれた言葉は、誰に聞かれることなく騒然とするブリッヂに消えた。

 

 

 

 

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