『!  マキビさんいたですの!?(悪気全くなし)』

「え!?

 ウワァァァァアアアァアァァアァアアァアアッ!!

伝家の宝刀、ハーリーダッシュ(笑)!

あっと言う間に、ブリッジから消えるハーリー、まだまだ元気だ。

『あ〜 ・ ・ ・ 悪い事しましたの』

走り去るハーリーに申し訳なさそうに呟くメノウ、

「大丈夫です、ハーリーくんですから」

『そうなのぉ?』

「そうですよ」

『そうなのぉ?』

「そうですよ」

『そうなのぉ?』

「そうですよ」

しばらく、そのやり取りを繰り返してから、

「 ・ ・ ・ クス、クスクスクスクス」

『アハハ、アハハハハハ〜〜〜』

吹き出すようにして2人は笑い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘の緊張がゆっくりと、溶けていく。

 

 

 

 

 

機動戦艦 ナデシコ

 

星ノ記憶

 

 

 

 

 

5. Aパート

 

ぽふっ ・ ・ ・ 

「フゥ・・・」

自分の部屋に入ると、ルリはベットの上に倒れこむようにして横になった、

ナデシコBは今、ナデシコA+と共に『アメノムラクモ』から離脱するコースを取っている、

と言っても、もう『アメノムラクモ』があった宙域にはその欠片すら残っていない。

艦内警戒態勢レベルを通常モードに移行した後、

ルリはサブロウタの進めもあり休息を取るために部屋に戻ってきていた。

本当なら、ナデシコA+のユリカと共に今後の対策を話し合いたいところだが、

肝心のユリカ嬢は、無茶なボソンジャンプを強行した結果疲労でダウンしており、回復までしばらくかかるそうだ。

『チューリップクリスタル1つで、ナデシコA+ジャンプさせたのぉ! ユリカさんは凄いのぉ』

とナデシコA+オペレータ メノウは誇らしげに語ってくれた、相変わらず無茶なコトをする 

そこがユリカらしいと言えば言えるのだが・・・

もっとも、ボソンジャンパー(ミスマル・ユリカ)専用艦として建造されたナデシコA+の各部には、

チューリップクリスタルと同じ材質が埋め込まれており、実際にクリスタル1つでジャンプした訳ではないし、

ジャンプの際にはメノウのナビゲーションも手伝っていた。

現段階では、いくらA級ジャンパーのミスマル・ユリカが頑張ったところで、

チューリップクリスタル1つで戦艦クラスの物をジャンプさせることはできないのだ。

 

「ハァ ・ ・ ・ 」

先程の疲れからのため息とは違う、別の響きを含んだ ため息が漏れる、

「アキトさん ・ ・ ・

生きていた」

ルリの唇から、その名が零れる、

逢いたかった人、もう逢うことができないと思っていた人、一番大切な人 ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「アキトさん・・・ですよね」

「・・・・・・」

「アキトさんどうして・・・・・・」

「・・・・・・」

「生きているなら、どうして連絡してくれなかったんですか?」

「・・・・・・」

「会えないのなら、せめて・・・せめて、生きてるって教えてくれてもよかったじゃないですか!」

「・・・・・・」

「ユリカさんだって、どんなに悲しんで・・・」

「・・・・・・」

「アキトさん! 何か答えてください!」

「・・・何故・・・・・・」

「え?」

「君は   俺達の仲間じゃない・・・なら何故俺の事を知っている?!」

「なか ま?・・・アキトさん   いったい何を?」

 

 

 

 

 

「ホシノ少佐」

「!」

「本来なら、俺を知っている君は殺さなければならないが・・・殺さない」

「ア、キトさん 何を言って・・・」

 

 

 

 

 

『言ったはずだ、邪魔をするなら容赦はしない』

「上等だ、これは死んでも渡すわけにはいかないんだ!」

『ならば、死ね・・・貴様に構っている時間は無い』

「!!」

『アキトさん!! ダメェェェ!!』

『!?』

 

 

 

 

 

 

『この遺跡は頂いていく! 草壁閣下の創られる新たなる秩序のために!』

 

 

 

 

 

 

アキトさん、

この3年間のあいだにいったい何があったんですか?

・ ・ ・ わからない

私は、どうすればいいんですか?

・ ・ ・ わからない

・ ・ ・ ・ ・ ・ わからない

 ・

 ・

 ・

でも

生きていてくれた

アキトさん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・リ!、ル・・・ルリ!」

・・・? 誰です 私を呼んでいるのは・・・

「ルリルリ!! ルリルリッてば!」

「あ ミナトさん」

気がつくと、心配そうに私を覗き込んでいるミナトさんの顔が視界を覆っていました。

「大丈夫? ルリルリ」

「・・・はい、大丈夫です」

「う〜ん、ちょっと顔色悪いわよ」

「そうでしょうか? 自分では良くわかりません」

そう言えば、少し胸のあたりがモヤモヤしていますね でも問題ないでしょう。

「大丈夫です、問題ありません」

「そう? ならいいんだけど」

何か言いたそうな顔をしていましたが、ミナトさんはそのまま操舵席に戻っていきました。

 

今、ナデシコは艦橋部だけとなって地球に向けて航行中です。

こんな処を木連の艦隊に襲われたら一溜まりもありませんが、

とてもこちらに戦力を向けられる状態ではありません、今は火星で統合軍の人達と睨み合いの真っ最中です。

どちらも目的である火星極冠遺跡を、ナデシコの本体ごとボソンジャンプで跳ばされてしまって

戦う意味が無くなっています(但し、上層部の人達が、ですけど)、かと言って互いを前に振り上げた拳を

戻すことが出来ない、結果 睨み合いです。

建前やホンネやら、オトナって大変ですね、

ま、しばらくは睨み合いが続くでしょうけど、もうすぐ月臣さんを中心とした若手将校達の『熱血クーデター』が

始まってこの戦争も・・・

あれ? 何でそんなこと知っているんだろ?

「そう言えば、もうすぐ地球ですよね」

メグミさんが読んでいた雑誌から顔を上げって、今勤務中ですよ・・・もう馴れましたけど。

「そうですね・・・後5日ほどです」

記憶しているスケジュールを思い出してメグミさんに答える、

もう地球もかなり大きくなって見える筈ですから気に ・ ・ ・ なりませんね、

まだ、硬貨より小さいです。

考えてみれば、200年以上前のアポロ宇宙船でも月まで2日だったそうですから、当然ですね。

「そっか〜 後5日でナデシコともお別れなんだ」

ミナトさんがどことなく感慨深げにブリッヂを見回してます。

「そうですね〜 そう思うとなんか・・・名残惜しい感じですね」

メグミさんも同じように、あたりを見ています。

ナデシコに乗っているのも後5日ですが、統合軍やらなんやらの取り調べとかで一ヶ月は軟禁されますけど、

そう言えば・・・

「ナデシコを降りてからはどうするんですか?」

ふと、思いついたのでとりあえずメグミさんに聞いてみました。

「え? エヘヘ、実はもう決まってるんだ」

「「「?」」」

私、ミナトさん、艦長がそれぞれに?を浮かべてます。

「私、声優に復帰しようと思っているんですよ、前に居た事務所に連絡したら二つ返事でOKだったんです」

笑顔で答える。

「メグちゃん人気あったもんねっ」

「? どうして艦長がそんなこと知っているんですか?」

「え゛ えっと ・ ・ ・ アハハハハ〜」

・・・艦長、20歳の軍人さんがアニメってのはどうかと思いますよ。

「へー メグちゃん声優に戻るんだ」

ミナトさんが、やっぱりと言った感じでメグミさんに話しかけてます。

「はい やっぱり私、声優ってお仕事好きですから」

嬉しそうです、メグミさん。本当に声優のお仕事が好きなんですね。

「艦長は〜って 聞くまでもないわね、ルリルリはこれからどうするの?」

艦長が「どうしてユリカは聞いてくれないの〜!」と騒いでいますが、取り敢えず無視です、

「私ですか?

 ・ ・ ・ 多分、このまま軍に残るか、ネルガルの研究室じゃないでしょうか」

  我ながら冷めていますね でも、なんか ・ ・ ・

「な、何言ってるのルリルリっ」

ミナトさんが驚いたように詰め寄ってきます、あ 艦長とメグミさんもです。

「私には、他に行くところも有りませんから」

あらら、3人とも黙ってしまいましたね、

 

 

 ・ ・ ・ これからの私の居場所、

ピースランドのチチとハハの所に戻る?

違う あそこは私の居る場所じゃない。

軍やネルガルは・・・

これも私のいる場所じゃ無い。

なら、私のいる場所は     どこ?

私はどこに行きたいのだろう?

 

 

「フゥ ・ ・ ・ 」

ほとんど人影のない食堂で遅めの昼食、あまり食が進まない。

別にテンカワさんのチキンライスがおいしくない訳ではありません、むしろとてもおいしいです、

原因はブリッヂでの事。

「行くところがない ・ ・ ・ か」

さっき自分が言った言葉 ・ ・ ・

今までは考えることが無かったこと、考えたくなかったこと、以前の私ならこんな事で悩んだりしなかった。

『このまま軍に残るか、ネルガルの研究室じゃないでしょう』

この答えでもなんの疑問も持たなかった、でも今の私は ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

だけど私には やりたい事も、しなければならない事もない。

でも ・ ・ ・ 

 

 

?          『でも』?  何が『でも』なんだろう ・ ・ ・

 

 

「どうかしたのルリちゃん?」

「あ、テンカワさん」

呼ばれて顔を上げると、テンカワさんの心配そうな顔が目に入りました、

「いいえ、別にどうもしません」

「本当に?」

疑っていますね、私そんなに思い詰めたような表情をしていたのでしょうか?

多分、そうなんでしょうね、テンカワさんが気づいているくらいですから・・・

「はい、本当に何でもありません」

「? ならいいんだけど」

そう言ってテンカワさんは私の横に座りました、どうやらテンカワさんも遅めの昼食・・・

ラーメンいつもと違いますね、テンカワ特製ラーメンの試作でしょうか?・・・のようです。

「そう言えば、もうすぐ地球だね」

テンカワさんの何気ない一言、やっぱりテンカワさんはテンカワさんなんですね ・ ・ ・      そう言えば。

「テンカワさんは、地球に戻ったらどうするんですか?」

テンカワさんは軍人ではないし、ネルガルの社員でもない、ナデシコが地球に戻れば確実に降ろされてしまう、

実際以前にナデシコから降ろされた事もありましたし。

「俺? あっそうか、地球に戻ったらナデシコから降ろされるんだっけ?」

 ・ ・ ・ 今頃気づいたんですか(汗)

「考えていなかったんですか?」

「全然」

いや、あの・・・ そうきっぱり言い切られても、

「テンカワさんって、意外とのんきだったんですね」

「あははは、自分でもそう思ったよ、今」

フゥ 

まあ仕方ないですね、この前までいろいろと大変でしたから。

「そうだね、すぐには思いつかないけど ・ ・ ・ コックの修行かな?」

「修行 ・ ・ ・ ですか?」

「うん いろいろあったけど、やっぱり一人前のコックになりたいからね、それが子供の頃からの夢だから」

「 ・ ・ ・ 大丈夫です、テンカワさんならできますよ」

「ありがとう、お世辞でもルリちゃんにそう言ってもらえると自信がでてくるよ」(ニコッ)

ドキッ

「お、お世辞じゃないです」

テンカワさんの笑顔が直視できない ・ ・ ・ 

「そう言えば、ルリちゃんはどうするんだい?」

「っ ・ ・ ・ 私も、何も考えていません」

一瞬、詰まりそうになりましたが、何とかいつもの私のように答えられました?

少し、いえ かなり自信が無いですが。

「へ? そうなんだ、ルリちゃんも結構のんきなんだね」

どうやらテンカワさんは、気づかなかったみたいですね。

「私は、 

 私はこれから、自分が何をしたいのかよくわかりません、それに行くところもありませんから」

ミナトさんたちにも言ったセリフ『行くところがない』

だけど本当はどこに行きたいのかが、わからない、自分の事なのに、自分が一番わからない ・ ・ ・ 

「そっか ・ ・ ・ 」

? ミナトさん達みたいに詰め寄ってくるかと思いましたが、テンカワさん何か考え込んでますね、

あ、何か思いついたみたいです。

「だったら、しばらく一緒に暮らしてみない? 今後の行き先が決まっていない者同士さ」

「そうですね ・ ・ ・ え?」

 ・ ・ ・ えっと

                              ??       あれ 今なんか ・ ・ ・ 

                      えっと、確か ・ ・ ・

テンカワさんは ・ ・ ・   一緒に暮らそうって

                             え え   ええっ!?

「テ、テンカワさん、今なんて!?」

「えっ?あっ?・・・俺なんか、まずいこと言った?」

いきなり詰め寄ったせいか、テンカワさん逃げ腰になってます、でも逃がしませんっ

「テンカワさん、いまなんていいました?」

「え? いや ・ ・ ・ ルリちゃんさえよければ しばらく一緒に暮らさないかって、言ったんだけど ・ ・ ・ 」

聞き間違いじゃあないのですね? 本当なんですねテンカワさん、

「 ・ ・ ・ はい」

「ヘ?」

「テンカワさんがいいなら、私はそれで   かまいませんよ」

自分でも顔が真っ赤になっていくのがよくわかります、なんか恥ずかしい。

「う、うん じゃあ決まりだね」

そう言って、テンカワさんはいつもの笑顔を見せてくれ ・ ・ ・    (真っ赤)

 

 

食堂で私とテンカワさんが一緒に暮らす相談をしていた頃ブリッヂでは、

『ルリルリ保護権争奪戦』がナデシコ乗組員の大半を巻き込んで開催されていたそうです。

そのせいで、食堂が空いていたんですね。

ホント バカばっか  (クスッ)

 

 

 

 

 

 

 

パタンッ

「それじゃぁ、今日はここまでにしておきましょう」

持っていた厚い参考書を閉じて、『生徒』達を振り返りました。

「え〜と    わかりました」

「ハイなの」

はい いい返事です、2人共。

この二人は、最近はじめた『IFS強化体質者によるオペレーション』訓練の講師で、私が受け持っている生徒。

もちろん依頼してきたのはアカツキさん、

今のところIFS強化体質者のオペレーションが必要な『オモイカネ』級コンピューターが有るのは

ネルガルぐらいですから。

それにしても、私が教育を受けていた頃は一日中カンヅメにされていたのに、

今は一日数時間の講義と実習だけでいいとは、技術も進歩しましたね

っと、これでは私が年寄りみたいですねまだ13歳の少女なのに。

「? ルリさんどうかしたのぉ」

「えっ いえ、なんでもないですよ」

不思議そうな顔で生徒の1人、コウゲツ・メノウちゃんが私の顔をのぞき込んでいます、

私ってそんなに妙な表情していたのでしょうか?

「ルリさん、ちゃんとねてますのぉ? すいみんぶそくはびよーのてんてきなのぉ!」

「ア、アハハハ・・・(汗)」

10歳の娘に言われてしまいました、コウゲツ夫妻(メノウの養父母・もちろんネルガル研究員)

ってどんなこと教えているのでしょうか?

「え、え〜と ・ ・ ・ その〜」

もう1人の生徒、マキビ・ハリくん(8歳)通称ハーリーくんは、

どう対応したらいいのかわからずにオロオロして困っていますね、

それでも昔の私よりも(感情が表に出る事に関しては)数段ましですが。

「大丈夫ですよメノウちゃん、それよりもこの後も何か予定が有るのじゃないですか?」

私の講義と実習以外にも2人はかなり忙しかった筈です、何せIFS強化体質者は数が少ないですから、

以前のように人権擁護団体が卒倒しそうな扱いはもう受けていませんが。

「う〜 私はとくにないの だから『ぷらす』とお話するのぉ」

ニコニコと満面の笑みを浮かべて、手足をバタつかせて全身で表現してくれます、

少し鬱陶しい気もしますがメノウちゃんらしくて可愛らしいです。

ちなみに『ぷらす』というのは、『オモイカネ+(プラス)』の事でオモイカネの複製、

と言っては少し語弊がありますね、まぁ子供みたいなモノです 

そして、メノウちゃんとハーリーくんのパートナー(に、なる予定)。

「ハーリーくんは?」

「え、え〜と ・ ・ ・ ドクターの所で、ナノマシンの調整が、あ、あります」

メノウちゃんとは対照的に、オドオドしながらハーリーくんは答えてくれます、

いくら人見知りだからと言ってもこれはひどすぎます、どうにかならないものでしょうか?

 

 

「ルリさん、またあ〜し〜た〜なのぉ!」

「さよなら ・ ・ ・ 」

千切れるぐらい、と言う表現がぴったりなほど手を振るメノウちゃんと、

それに完全に押されて存在感すら希薄になっているハーリーくん。

 ・ ・ ・ 今度、イネスさんに頼んでハーリーくんの性格改造してもらいましょうか? 

あっ 改造ならウリバタケさんでもいいですね(くすっ)

軽く手を振って2人に答えてからカバンを持ち直し、そのまま回れ右 

私の仕事はこれで終わりなので今日はもうお帰りです。

「 あ ・ ・ ・ 」

廊下を歩いていると不意目に付いた、淡いピンク色の人影、

「こんにちは、ラピス」

「? ルリ」

薄桃色の髪をなびかせ、琥珀の瞳が不思議そうに私を振り返りました、

ラピス・ラズリ、私と同年齢のIFS強化体質の少女、何でも2年前ナデシコのオペレーターを

私と争っていたそうです、

もちろん私もラピスも、そんなこと知りませんでしたし、そのころは互いに面識もありませんでした。

「今、帰りですか?」

「(コクッ)」

軽くうなずくと、

「オモイカネ、気むずかしいから今日も徹夜だった」

「そうですか、あの子も相変わらずなんですね」

ラピスの言葉に思わず苦笑、そう言えば目の下にクマができています、

今、ラピスがやっているのは、ネルガルが計画している次世代戦艦のメインコンピューターのプログラミング。

と言っても、一から組み直すのではなくナデシコに搭載されていた SVC2027 通称『オモイカネ』 

をヴァージョンアップして使用する事になり、プログラムの書き換えが始まりましたが、ここで問題が発生。

 

オモイカネが嫌がった。

 

プログラムの書き換えを嫌がるコンピューターなんて昔のSFですが、

それが現実になってしまったんですね、これが。

どんなに宥め賺しても言うことを聞いてくれない、下手に書き換えようとすれば反撃を受けて研究室内の

コンピューターと言うコンピューターを暴走させてしまう始末。

私が手伝えばオモイカネも言うことを聞いてくれるのですが、今の私はただの部外者、

アカツキさんやエリナさんは何も言わないでしょうが、やっぱりいい顔をしない人は居ますし、

私もネルガルに戻る気はありません(今やっている仕事は、ただのアルバイト)。

と言うことで、私の替わりにとラピスが引っ張りだされたみたいです。

ところがその苦肉の策が功を奏したのかラピスとオモイカネの相性はよく、

その後はあまりトラブルは起きていないようですが ・ ・ ・ 

「でも、楽しいから気にならない」

「駄目ですよ、徹夜は美容の天敵です、オモイカネが駄々をこねるならかまいませんから、しかってやってください」

「 ・ ・ ・ ?」

あれ、ラピスが不思議そうに私を見てる? 何か変な事言いましたか。

「どうしました?」

「オモイカネ、いい子」

「 ・ ・ ・ はい、そうでしたね」

いけません、ラピスに怒られました。

「それに、オモイカネが気難しくなってるの ルリのせい」

「え?」

はて? 私何かしたのでしょうか、

「オモイカネ、ルリに会いたがっている」

「 ・ ・ ・ そう言えば、最近会っていませんでした」

と言うか、部外者がそう簡単にオモイカネが居るトップシークレット扱いの研究室に、行くわけには行けませんし。

「だから、たまには会ってあげて」

「わかりました、機会をみて会いに行くとオモイカネに伝えてください」

「うん、わかった」

簡単に請け合ってしまいましたが、   まぁ大丈夫でしょう。

「ラピスはこのまま、宿舎に帰るのですか?」

「(ふるふる)、昨日から何も食べてないから ・ ・ ・ 」

「これから食堂?」

「(こくっ)」

これから食事、あっなら、

「それなら、私と一緒に外に食べに行きませんか?」

「 ? 」

「たまには外での食事もいいものですよ」

「でも ・ ・ ・ 」

「私もこれから食事に行く予定でしたから、どうですか?」

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ (こくんっ)」

少し考え込んでからラピスは頷きました。

 

 

カラカラカラ〜

今時珍しく引き戸の扉を開けると。

「いらっしゃいませ〜〜」

元気な女性の声が私達を出迎えてくれます、ここはホウメイさんの『日々平穏』です。

「こんにちは」

「あ、ホシノさんいらっしゃい」

私に気づいて、出迎えてくれた女性が業務用とは違うふつうの笑顔を浮かべました。

シラクモさん、少しウェーブのかかった黒い髪を動きやすいように一つにまとめている、

どことなく知的な雰囲気を持つ女性、

何でも、ホウメイさんが募集した店員兼コックお手伝いのアルバイトだそうです、本業は大学生。

こう言ってはなんですが、ホウメイさんのお店よりファミリーレストランのウェイトレスの方が

似合いそうな人なのですが ・ ・ ・ 

もちろん、アルバイトと言ってもホウメイさんが選んだのですから、料理の腕前は確かです。

「えっと、知り合いの娘?」

私の後ろに立っているラピスに気づいたシラクモさんが、私に尋ねてきました、

「はい、同じところで働いている人です」

「そっか、2名様ですね、こちらへどうぞ」

そう言っていつもの席に案内してくれました、

ってシラクモさんここにくる前にファミレスか何かで働いていませんでしたか?

「あ、ルリちゃんいらっしゃい ・ ・ ・ って、そっちの娘は ・ ・ ・ ルリちゃんの知り合いかな?」

「こんにちはアキトさん、こちらはラピス、ラピス・ラズリ 今オモイカネのプログラミングを担当している人です」

「ヘー そうなんだ、 初めましてラピスちゃん」

「(ペコッ)」

「それで、こちらが ・ ・ ・ 」

「知ってる、テンカワ・アキト ナデシコのコック兼パイロット」

ラピスにアキトさんの事を紹介する前に答えられてしまいました、

「よく知ってるね、だけど今はただのコック見習いのテンカワ・アキトなんだ、よろしくラピスちゃん」

「オモイカネに聞いたから、よろしく」

あ、なるほど 確かにオモイカネはナデシコで起こったことを全て記憶していますから、

それを見れば何があったかわかりますね。

 ・ ・ ・ 確かあれは許可無く見ることは出来なかった筈では?

オモイカネ、今度会ったらお仕置きです。

「それでは ご注文はなんですか?」

水の入ったコップを2つ持ってきたシラクモさんがラピスにメニューを差し出します、私ですか?

私は決まっていますから。

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ チャーハン」

しばらくメニューを見つめてから、ラピスがシラクモさんに答えました、

多分こんな処での食事は初めてなのでしょう、どことなく緊張していますね。

「はい、チャーハン1つに、ホシノさんは聞くまでも無いわね」

「はい、いつものお願いします」

「かしこまりました、テンカワくんオーダー、チャーハン1、いつもの1」

「りょ〜解っ」

さっそく調理にかかるアキトさん、今はお昼時が終わった後で、空いていますからすぐに出てくるでしょう、

「今日はホウメイさん 居ないんですか?」

いつもなら必ず声をかけてくるホウメイさんですが、今日はまだでてきません、

「店長さんなら、さっき用事があるからって出ていったわ、忙しくなる前には戻ってくるって言っていたけど」

「そうなんですか?」

珍しいこともありますね、あのホウメイさんが開業中に留守なんて。

「はい、チャーハンと、いつものチキンライスっ! あがりっ」

ほら、速い。

「いただきます」

「 ・ ・ ・ いただきます」

自分でも単純だと思いますが、この瞬間が幸せです、以前の私なら決して思わなかった事、

きっと今日ラピスを誘った理由は、彼女にも同じ気持ちを感じて欲しかったからなんでしょう。もぐもぐ

「おいしい ・ ・ ・ 」

ほら、ラピス嬉しそう。

 

 

 

 

 

Bパート ヘ