地球から巣立った人類は、宇宙コロニーでの生活に新たな希望を求めていた。

しかし、地球連合政府は、正義と平和の名の下に圧倒的な軍事力を持って各コロニーを制圧した・・・

 

隔壁を破壊し、コロニー内に侵入するMSリィオー

 

搭載可能なだけの爆弾を抱え飛ぶMSエアリーズ

 

倒れるビル・・・

                  爆発する民家・・・

                                            逃げまどう人々・・・

 

  全てを踏み潰していくMS・・・

 

 

アフターネルガル(A・N) 195年

作戦名 『オペレーション・メテオ』

 

連合に反目する一部のコロニー居住者達は流星に偽装した新兵器を送り込む行動にでた。

 

  各コロニーから地球へと打ち出される流星

 

だが、これは既に連合本部に察知されていた。

 

 

 

新機動戦記 

ナデシコ W

第02話 「死神と呼ばれるナデシコ」

 

 

 

聖コスモス学園 格技場

 カシュン・・・           カシュッ    カッ!         キンッ

体育のフェンシング授業がおこなわれていた。

「ホシノさんお相手して頂けますか?」

1人の生徒がルリに練習相手を頼んでくる、ルリも断る理由も無いのでそれに応じるが、その生徒の目は

ルリを睨みつけるように見ていた。

プロテクターを着け、互いに剣を構える。

「聞きましたよホシノさん 昨日、ハーリー様の招待状を破り捨てたそうね」

いきなり激しい攻撃が始まる、それは練習と言うより戦いに近いモノだが、ルリは難なくそれらを捌く。

「どうしてそんなことをしたのかしら? 同じクラスメイトとして義憤を感じるわ」

狙っているのに全てをかわされ、少し焦りの色が出てくる。

【なんなの? この人、私の攻撃を全て防ぐなんて! だったら】

「淑女として、恥ずかしいと思わないの! 貴方は!!」

小技が駄目なら、と一気に勝負に出る、

「・・・!」

 ヒュンッ!

が、それを読んでいたのかルリも相手と同軸線上に剣を伸ばす。

 キッ! パキィィン!

正面からぶつかり合った剣が両方とも半ばから折れ飛ぶが、ルリはかまわず残った部分を相手の顔めがけ突き入れる。

 ビキィィ

「ヒィッ!」

相手のマスクに折れ残った剣の先端が突き刺さったところでルリは手を離した、

「次からは、早めに言ってください、破らずに貴方に渡します」

自分のマスクをはずし、ルリはいつもの無表情のままそこから離れた、後には顔面蒼白の生徒と驚愕の

表情でそれを見送る生徒が残った。

 

 

 

 ヴィィィィィィ・・・  バシャァァン         ヴィィィィィ・・・ ドボォォン

 

空母の甲板場から次々と水中用MSが発進していく、その作業をイライラしながら艦長は見ていた。

「・・・何を手間取っておる! さっさと全機発進させろ!!」

不機嫌を絵に描いたような表情で、怒鳴り散らす。

「モビルスーツ専用艦でないため、手間取るのは仕方ありません、全力で作業を行っておりますのでもう暫く

 お待ちください」

副官が申し訳なさそうに報告するが、手間取るのも仕方ない事だ、何せ1機1機ブルドーザで飛行甲板から

海に突き落としているのだから。

「とにかく、積み込んできた水中用モビルスーツを全部出せ!!」

「はっ!」

敬礼で答えると副官は発進の指揮を取るべくアイランドから出ていき、代わりに通信士官が艦長の隣に立った。

「艦長! スペシャルズのラピス特尉から通信が入っていますが」

「? ハーリーの子飼いが何のようだ」

不機嫌な顔が更に不機嫌になるが無視する訳にもいかづ、モニターに繋げる。

『ずいぶん手こずってるね』

「(ムカッ) 貴様には関係ないことだ! 我々は貴様などにかまっている暇など無いのだが」

ラピスの身も蓋もない一言に、艦長が切れかかるがそこは年長者何とか押さえ込む。

『差し出がましい事はわかってるけど、あまり作業がはかどらないと艦長の連合本部からの能力査定に響く・・・』

「五月蠅い! 大きなお世話だ!!」

が、遂に切れた、仕方がないと言えば仕方が無いが・・・

『今、私達は新型潜水母艦で航行中なんだけど、エンジントラブルで困っていて・・・』

真っ赤になっている艦長をおもしろそうに見ながら(とは言ってもバイザーで相手からは見えないが)言葉を続ける。

『もし、よかったら修理させ』

「儂の艦でか!!」

冗談ではない!!と、顔全体で表現するが、

『そう、そのお礼にこちらが搭載している最新鋭水中用モビルスーツ”パイシーズ””キャンサー”を貸すから』

「クヌヌヌヌヌ・・・・・・」

感情的には嫌だが、客観的に考えれば不明機の捜索に新型MSが使えるのなら、その方がいい、そう判断した

艦長はラピスの申し出を受けた。

『新型を貸す代わりに、故障の事を黙っていろっと言うのだな・・・いいだろう、早くこっちに来い!!』

「ハッ!」

形だけの敬礼をするとラピスは通信を切る、通信が終わったのを見計らって、カズシが声をかけてきた、

「ラピス特尉、この潜水母艦は全く正常ですが?」

「ん? ああでも言わないと、こっちの申し出を受けないよ」

「その割には、からかってたような・・・」

「何か言った?」

「い、いいえ! 何も」

慌てて首を振る、

「カズシ特尉、MSの準備を急がせて・・・私達は名よりも実を取るの」

「ハッ!」

 

 

 ピッ カタカタカタ・・・・      ピピピッ カタカタッ

誰も居ないコンピュータルームで、1台のパソコンが起動していた。

 ッピピッ・・・     ピッ カタカタカタカタ・・・

画面は忙しく入れ替わり、それに合わせてキーボードを打つ音も早くなる、

 ピッ・・・

そしてある画面でを表示して、音が止まった。

「これなら破壊できますね・・・」

表示されているデータにざっと目を通し、ルリはつぶやいた。

「対深海用新型魚雷、誘導追尾指示可能、一番近いのは056海軍武器貯蔵基地・・・」

そこに表示されているのは連合の武器管理データ、一般の人間が見ることは出来ない類のモノだ、事実ページ

のTopにはTop Secretの文字が見える。

それをルリは学園のパソコンから事も成しげに、自由に見ている、もちろん形跡などを残さずに。

「連合は・・・いえ、クリムゾンはもう動き出している、急がないと・・・それから」

武器管理データをおもむろに閉じると、今度は別の処にアクセスする。

 ピピッ・・・

「細かい調整をしないと」

次に画面に表示されたのは、先程までの重々しいデータではなく、この学園の生徒の個人データであった。

「ホシノ・ルリ 入学金   未納・・・・・・クリア

        授業料   未納・・・・・・クリア

        学園援助金 未納・・・・・・クリア

 

 ホシノ・ルリ 資産調査・・・・・・・・・・No Problrm

 ・・・クスッ ドクターの作ったプログラムは本当に便利ですね」

自分のデータを書き直しアクセスを切ろうとしたが、ふと手を止めてしばらく考えると、再びキーボードに手を

伸ばした。

 ピピッ ガーー、ガーー、ガーー・・・

何かのデータをプリントアウトしているのか、しばらくプリンターが起動していた・・・

 

 

 カーン、カーン、カーン、カーン・・・

終業を告げる鐘の中、大型のリムジンが正門前に止まっている、ハーリー特佐の出迎え用だ、

「それではハーリー様、後でお邪魔させていただきます」

車に乗ったハーリーを数人の女生徒達が見送りに来ていた。

「ハーリー様?」

いつもなら笑顔で答えるのだが、何かを考えるかのように沈んでいるハーリーに不思議そうに、声をかける。

「えっ あ・・・いえ、何でもありません」

ハッとしたように顔を上げて、慌てて笑顔を見送りに来ていた女生徒達に向ける。

「ハーリー様、どうなされたんです?」

「せっかくのお誕生日なんですから、沈んだお顔は似合いませんわ」

「さあ 笑ってください、ハーリー様」

流石に、普段からハーリーの側にいるだけに女生徒達はそれが作り笑いである事に気づいた。

「ありがとう皆さん、それではパーティー会場でお待ちしてます」

それに答えるように、ハーリーはもう一度笑顔を見せたが、やはり弱々しい。

 ブロォォォォォ・・・

ゆっくりと車は走り出し、単調なエンジン音が響きハーリーは再び考え込む・・・

「ホシノ・ルリ   秘密のある人・・・」

昨日からハーリーの頭の中にはルリのあの言葉が巡っていた。

あれから、彼女のデータを調べてみたが、別に怪しいところは出てこなかった、どこにでもある普通の家庭の

普通の子(少々裕福だが)。

だが、それがかえって不自然に思えた、

「秘密が多い・・・だから?」

彼女が持つ雰囲気は、普通の家庭に育った子供のモノではない。

それどころか、彼女には軍人に似たモノを感じる、

「ボクが秘密に気づきそう・・・だから?」

かなり、飛躍した考えだがあり得ない事ではない。

「だから・・・ ボクは殺される!?」

「!!」

 キキキッキキ〜〜〜

いきなりのハーリーの声に驚いた運転手が、思いっきりブレーキを踏み込んだ、

「お、脅かさないでください、ハーリー様」

なんとか車を停止させた運転手が、目を白黒させてハーリーを見る。

何か考え込んでいると思っていたら、いきなり『殺される!?』なんて叫んだのだ、誰でも驚く、

「す、すみません・・・」

決まりが悪そうにハーリーは謝った、クリムゾンの総帥がこれでいいのだろうか?

 

 

同時刻、アジアエリア第056海軍武器貯蔵基地

「はぁ〜、暇だ」

「おいおいシャキッとしろよ、まだ巡回中だぞ」

あくびをかみ殺している同僚を、もう1人が注意する。

「まあ そうなんだけどな・・・」

「だったら我慢しろ、これが終われば明日から休暇だろ」

「ヘイヘイ」

やる気の無い返事に、ヤレヤレと溜息をつくがそれ以上は何も言わなかった、確かに巡回警備中だが

別に敵が攻めて来る訳でもなく、別に問題無いだろうと考えたからだ。

「だれるのもいいけど、上官に見つかるなよな」

「わかってるって・・・ん?」

と、何かが視界の端で動いた。

「どうした?」

「いや、今何かが動いたような気がしたんだが?」

と、小銃を構えゆっくりと何かが見えた方へと近づいていく、

「・・・? 気のせいだったのか?」

辺りをきょろきょろと見回すが、別に変わったモノは見えない。

「何かいるのか?」

後ろからもう1人も油断無く小銃を構え声をかける、

「・・・スマン、どうやら気のせいだったみたいだ」

「フゥ ならいいや、さっさと行こう」

「ああ」

フッと兵士が見上げると、そこには武器庫が静かにそびえていた。

【まぁ 何かあったら警報装置が作動するだろ】

そんなことを考えながら兵士はその場から離れていった。

 スッ タン・・・

警備兵が十分に離れたのを確認してから、武器庫の前にルリは降り立った。

「こうも簡単に、侵入を許すなんて・・・連合は平和に馴れきってますね」

黒い戦闘服に身を包み、普段はツインテールにしている髪の毛を動きやすいようにポニーテールにしている、

「ここですね、  パスワードは・・・」

武器庫の電子ロックを簡単に解除して、内部に侵入する。

「・・・あった」

内部の警報システムをダウンして、捜し物を見つけだす。

「対深海用新型魚雷これを3発も直撃させれば、ナデシコの自爆装置を誘発させる事が出来る・・・

 ナデシコがクリムゾンに奪われる前に私が破壊しないと・・・」

 

 

 ピコーーン、ピコーーン、ピコーーン、

ソナーの眠くなるような反響音を響かせつつ、ラピスの乗る潜水母艦は深海を進んでいた。

「! ラピス特尉、深度5500で金属反応はあります」

「よし、パイシーズとキャンサーを出して」

聴音手からの報告にラピスは出撃命令を出す、既にパイシーズ2機、キャンサー1機の発進準備が整っていた。

「ラピス特尉」

「? どうしたのカズシ?」

「自分に出撃させてくれませんか?」

意外な申し出にラピスが驚いたようにカズシを見る。

「大丈夫? 深海と宇宙では勝手がかなり違うわ」

今まで無重力空間でしかMSを操縦したことのないカズシに心配の思いがある。

「わかてます、お任せください」

自信満々に答えるカズシをしばらく見てから、

「それじゃぁ、お願い」

「ハッ!」

ラピスに敬礼をすると、カズシはMSに搭乗するべく走って行った。

 

 

 ヴィィィィン・・・        ヴィィィィン・・・

潜水母艦の水密ハッチが開き、パイシーズが発進位置に着く、

「パイシーズに続きキャンサーの発進用意、指揮は私が取る!」

『『了解!』』

やる気十分のカズシに部下の2人の声が返ってくる。

 ガゴォォン・・・    ガゴォォン・・・     ヴィィィィン、ガゴォォン・・・

鈍い金属音を響かせて、3機のMSが深海の闇に向かって発進していった。

 

 

 ピィン・・・ ピィン・・・ ピィン・・・

カズシ達が発進してからしばらくして、接近してくるMS大部隊の影を捕らえた。

「ラピス特尉、空母のモビツスーツ部隊が接近してきます」

「あの艦長がこちらの動きに気づいたの? 以外に感がいいみたいね」

あの艦長が聞いたら、即爆発するような事をサラリと言いながらどう対応しようかと頭を巡らせ始めたとき、

「! こ、これは?!」

「どうしたの?」

レーダ手の驚きの声に慌てて、レーダ画面をのぞき込む。

「!?」

そこに映っていたのは、次々と画面から消えていく空母のMSであった。

「ラピス特尉! 我々と同じ深度でMSが次々と破壊されています!!」

一瞬、水中レーダの故障かと思ったが聴音手の報告がそれを否定する、

 ドォォォォン・・・   ドォォォォン・・・

そして遅ればせながら、無数爆発音がラピスの耳にも聞こえてきた

「艦を停止させて! 状況がわからない」

「キャンサーとパイシーズは?」

「構わない、先行させる・・・

 いったい何が起こってるの?」

 ドゥオオオオオン・・・

 

 

「な、なんだ? 何が起こっているんだぁぁ!!」

 ドガァァァァン!!

近くで僚機が破壊されたのか、その爆圧で機体が吹き飛ばされる、

 ズバッ!    ドシュ!   ズガァァァン!!

次々と破壊されていく仲間のMS、敵を確認しようにもモニターは爆発の影響で視界はほとんど0、レーダにも何も映っていない。

「こ、こちらブルークロス02! 敵の襲撃を受けています!! 救援を・・・ガッ」

機体に鈍い衝撃が走り、何かに掴まれたと感じた。

「ヒィィィ!!」

パイロットの顔が引きつる、一瞬だけ映像を取り戻したモニターで見えたのは鎌を振り下ろす死神の姿であった。

 

 

 ビーーーッ ビーーーッ ビーーーッ ビーーーッ

海上では、オペレータ達が状況を確認しようと、必死で情報を集めていたが、

「! 艦長 全てのモビルスーツの反応が消えました!!」

「クソッ いたい何が起こっているのだ! かまわん!その海域に向けて全艦爆雷発射!!」

遂に切れた艦長が攻撃命令を出す。

「ですが、その深度にはラピス特尉の潜水母艦が・・・」

「かまわん!! 敵はあの小娘かもしれんのだ!! 撃てっっっっっ!!」

 

 

 ドンッ ドンッ ドンッ      ヒュ〜〜〜〜〜 ヒュ〜〜〜〜 ヒュ〜〜〜〜

空母を中心に、護衛艦隊からも一斉に爆雷が敵がいると思われる深度へ向けて投下された。

 

 

「ダウントリム45 ベント弁開いて! 急速潜行!!」

ラピスの指示が矢継ぎ早に出される。

「! 特尉、本艦直上に着水音! 艦隊が爆雷攻撃を開始いました!!」

「無能な艦長! だけどその分、行動が読めたけど・・・」

空母の艦長の無能さを呪いながらも、自分の判断が正しかった事に胸をなで下ろす。

「みんな衝撃に注意して!」

 ドォォォォォン!   ドォォォォォン!   ドォォォォォン!

「キャッ!」

上方から爆発音が響き、激しい衝撃が艦を揺さぶる。

『随分と騒がしいですが、何か有ったのですか?』

パイシーズを率いて先行していたカズシが爆雷の音に、通信を開いた、カズシ達のいる深度まで

爆圧は届いてはいないようだ、

「注意して、敵がいるみたい」

『敵? まさかあのナデシコがまだ生きていたのですか?!』

「それは無いと思うけど・・・とにかく注意して!」

『了解です』

ラピスに敬礼すると、通信を切った。

「・・・まさかね」

 

 

「ハッハッハッ!! どうだこれだけの爆雷を受ければひとたまりもあるまい!!」

爆雷の爆発で泡立つ海面を見ながら、艦長は会心の笑みを浮かべる。

しかし

 グワァァァァァァァ!!!!

いきなり、1隻の護衛艦が爆発した!

「な、なんだぁ!!」

続けて、残りの護衛艦に光の筋が立てつづけに入り、

 ドガァァァァァァ!!  グワァァァァァァァ!!

残っていた、2隻の護衛艦も爆炎をあげて沈んでいく。

「バカな・・・いたい何が起こっていると言うんだ!?」

呆然と、沈んでいく護衛艦を見ながらつぶやく。

「か、艦長!!」

「なんだ・・・!」

副官の叫びに振り返ると、空母のすぐ側の海面が盛り上がっている、そして、

 ゴォウッ

死神が舞い降りた・・・

「う、うわぁぁぁ・・・」

ビームサイズが一閃し空母の艦橋を切り裂く、

 ザシュッ・・・ ドゴォォォォォン

艦長以下、艦橋要員はこれで全滅した、同時にそれはこの艦隊の戦闘継続能力を奪った事を意味した。

バタバタバタバタ・・・

飛行甲板から1機のヘリコプターが慌てて逃げ出す、がそれを見逃す筈もなく、

 ヴゥン! ゴォウゥゥ・・・

左腕に装備しているバスターシールドが唸りをあげて、ヘリに向かって飛んでいく。

 ドォォォォォォン・・・

避ける間もなく砕け散る。

「死ぬぜ、 オレの姿を見たヤツはみんな死んじまうぞ」

炎の照り返しを受け、その表情はまさに死神のごとくであった・・・

 

 

 ブロロロロロォォォォ・・・

1台の車が快調に海岸道路を走っていく、

「ハァ〜、思ったより早く終わたな」

その車の後部座席で大きく伸びをしながら、アキトは仕事からの開放感に浸っていた。

「やっぱりオレに外務次官秘書なんて向いてないんだよな〜」

馴れないネクタイを弛めながらぼやく、

「ハッハッ そんなことはありませんよ、アキトさん」

ぼやいているアキトに運転手のプロスペクターが笑いならが答える、

「そうですか? オレには荷が重いような・・・」

「それは仕方ありませんな、それだけ才蔵さんがアキトさんに期待していると言うところでしょうか」

「期待・・・ですか?」

自分にそんな能力があるのだろうかと、懐疑の視線を向ける。

「そうです。それともアキトさんは才蔵さんが”自分の息子”と、言うことだけで秘書にしていると思って

 いらっしゃるのですか?」

一瞬だけ鋭い視線でアキトをミラー越しに見るが、すぐにいつものニコ目に戻る。

「・・・それはない、才蔵さんは仕事に対して私情を入れる人じゃない」

キッパリと言い切るアキト、

「そう言うことです、アキトさん

  貴方はもう少し自分に自信を持った方がいいんじゃ無いでしょうか?」

「そう言われてもな〜」

と、やっぱり弱気なアキト、

「ヤレヤレ、仕方ないですな〜」

【それではこれから先、やっていけませんよ・・・】

心の中で付け加えるプロスペクター。

『それでは、ニュースの時間です・・・』

カーステレオから、定時のニュースが流れる。

『軍の発表によりますと、世界の5カ所に落下すると見られていた隕石ですが、全て大気圏で燃え尽き、

 地上への被害は無かったとの事です』

「!」

そのニュースにアキトが反応する、

『・・・また、いろいろ噂されてたコロニーサイドの人的なモノでは無かったとの事です、それでは次に・・・』

【そんなはずは無い・・・】

ニュースを聞きながらアキトはそれを否定した、アキトの脳裏に大気圏突入時に見たカプセルが浮かんだ。

【あれはコロニーから送り込まれたモノ・・・そして、あれにはルリちゃんが乗っていた】

確認した訳ではないが、アキトはそう確信していた。

【それじゃルリちゃんは・・・星のお姫様?】

 ブォォォォォォォォォォォ・・・

「おや?」

後ろから、1台の軍用輸送車が重いエンジン音を響かせ追い上げてくるのを見て、プロスペクターは車を脇に

よせる。

 ゴォォォォォォ・・・

まるで、こちらが見えていないかのように、軍用輸送車は脇を猛スピードで走り抜けていく。

「まったく、最近の軍人さんと言うのはどうも乱暴でいけませんな〜」

軽い批判めいた事をつぶやきながら、プロスペクターは車をスタートさせた。

「プロスさん!!」

「は、はい?! なんでしょう」

「今の車、追ってください!!」

「ヘ? 今のって、先程の軍用輸送車でしょうか?」

「そうです!」

「それは、別にかまいませんが・・・でもどうしてです?」

「いいから! 早く!!」

「は、はい!!」

アキトの剣幕に押され、プロスペクターはアクセルを踏み込んだ。

一瞬だがアキトにははっきりと見えていた、運転している人物が誰なのか。

 

 

【クリムゾンはもう動き出してしまっている・・・間に合うの?】

アキトに目撃されているとは気づかないルリは、任務を遂行するべくアクセルを更に踏み込んだ、目的地は

海軍港。

【早くしなければ・・・あれが、クリムゾンの手に渡る前に】

荷台では3発の対深海用新型魚雷が揺れていた・・・

 

 

 

 

 

ヨーロッパ地区 某都市の移動サーカス団

「「「「「ワァーーーーーーーーーーー」」」」」

ステージからは観客の歓声が響いてくる、かなり盛況のようだ、

そのステージ裏で1人の女性が団長と交渉をしていた。

「ウチに入りたい? 経験はあるのか?」

厳つい顔、デカイ身体、サーカス団長と言うより軍人と言った方が納得できる風貌のゴート団長が、疑いの目を

その女性に向ける。

「あら、見くびらないでほしいわね」

と、エリナは履歴書を差し出すが、

「こんなのでは何もわからないがな・・・オイ、何をしている!」

ゴートがざっと履歴書に目を通し、もう一度エリナの方を見た時、ライオンの檻に手を伸ばしていた。

「黙ってみてなさい・・・これからよろしく」

エリナに向かって吼えるライオンに躊躇することなく、手を伸ばす。

「やめろ! そいつは・・・何!?」

慌てて止めようとゴートが腕を延ばしたが、すぐに驚きで動きが止まった。

「フフッ いい子ね・・・」

先程まで、噛みつきそうな勢いだったライオンが、エリナに身体をすり寄せ猫のようになついている、

「これは・・・いったいどうなっているんだ?」

呆然としながらも、ゴートは頭の片隅で採用決定だなと判断していた。

「敵では無い者には、牙をむけない・・・動物は正直ね」

エリナは身体をすり寄せてくるライオンの頭を、優しく撫で続けた。

「不思議な人ね・・・」

少し離れた位置からそれを見ていたレイナがつぶやいた・・・

 

 

中東 砂漠地帯の名もないオアシス

「ユリカ、お茶を持ってきたよ」

「あっ ありがとうジュンくん、そこに置いといてくれる?」

一心不乱に天幕から外の風景を見ながらユリカは答えた。

「どうだい? 地球は」

そんなユリカの様子を面白そうに見ながらジュンが問いかける、

「うんっ すっごくステキ! 想像してたのよりももっと!」

体全部で感動を表現するユリカに、ジュンの顔もほころぶ、

「地球は、自然はこんなにステキなのに・・・」

一瞬、ユリカの表情が曇る、

【どうして、人は解り合えないのかな・・・】

 

 

中国 山中

 ブロロロロロォォォ・・・キキッ

周りに何もない場所で大型トラックがブレーキ音を立てて止まった、その隣では1人の女性と輸送員が

書類を交わしている。

「物資はどこに運ぶんです?」

運転席からもう1人の輸送員が顔を出すが、

「ここでいい」

書類を受け取った輸送員は事もなしげに言い返した。

「え!? こんなところで女性1人に大量の火薬を渡してどうするんです?」

「何も聞くな! トラックの代金も貰ってある!

 それでは、ご武運を」

「すみません」

輸送員の敬礼に、舞歌は素直に答えた。

 

 

「リィオーだ、だがナデシコは、ナデシコはどこだ?」

金属反応が出た深度に到達したカズシは早速その反応もとを見つけだした。

だが深海の闇の中、サーチライトに照らし出されたのはラピスの乗り捨てたリィオーだけであった。

墜落の衝撃か、腕は千切れ飛び装甲のあちこちはめくれ上がり無惨な姿をさらしている。

しかし、リィオーと一緒に沈んだナデシコの姿はサーチライトの照らし出す範囲には見えなかった。

「いったい、どういうことだ!? 他に金属反応が出ていない!?」

【やはり、あのナデシコは生きていたのか!?】

嫌な考えがカズシの中に生まれてくる、今にもあのナデシコが背後から襲いかかってくるような・・・

『見つけました! 肉眼で確認できます!!』

「おぉ」

散開して捜索していたパイシーズの1機から連絡が入り、カズシはひとまず安心した。

連絡を受けた地点までいくと確かにそこにはあのナデシコがうつ伏せになって沈んでいた。

「よし、ラピス特尉に報告だ」

 

 

「そう、見つけたんだ」

『はい ですが驚きました、ナデシコは全くの無傷です』

興奮したように報告してくるカズシを見ながら、ラピスは少し笑みを浮かべた。

「私達の敵は、とんでもない化け物を造ったのね・・・

 でも、その化け物を回収する事で私達も、怪物になれる・・・」

【あの、機体なら怪物より天使かな?】

戦った時の、白い翼を持ったナデシコの姿を思い出しながら心の中でつぶやく。

「海流に気をつけて、私達はこの深度で待機しているから」

『ハッ 了解しました』

ラピスに敬礼を返すと、カズシは回収作業に入るため通信を切った。

「シュン 上の様子、何か解った?」

「はい、レーダ、聴音からのデータを総合的に分析した結果・・・モビルスーツ部隊、空母、護衛艦隊は全滅したと

 見て間違いないでしょう」

データの束と格闘しながら、シュンが報告する。

「そう・・・ナデシコは海底にあった、なら何が上の艦隊を襲ったの?・・・」

ラピスが考え込むが、実際のところ既に答えは出ていた。

僅かな時間で艦隊を殲滅する戦闘能力、レーダに反応しない敵、そして連合に対して敵対するもの、

【他の4機のナデシコの内の1機が近くに来ている・・・】

 

 

「よし、回収作業に入るぞ」

『『了解』』

カズシの命令で、2機のパイシーズが巡航形態からMS形態に変形する。

「ワイヤーとフロートを用意しろ」

 ウィィィィィィ・・・

パイシーズから作業用アームがナデシコに向かって伸びていく、と

 ビィーーーッ ビィーーーッ ビィーーーッ・・・

「な、なんだ?」

ナデシコから警報音が響きだし、それと同時に装甲の隙間から赤い光が漏れ出す。

『カズシ特尉、これは?』

その、音と光に戸惑うようにパイシーズは作業アームを止めた。

「・・・まさか・・・・・・自爆装置か!!」

その音と光が何を意味しているのかカズシが気づいたとき、

 パァァァァァァァァァ・・・!

「なにっ!!」

凄まじい量の閃光が深海の闇を切り裂き、パイシーズとキャンサーはそのセンサーとモニターを封じられた。

 ズンッ・・・

そして、その閃光の中で死神が舞い降りた・・・

『なんなんだこの光は!!』

状況がわからず、オタオタしていたパイシーズがまず犠牲になる。

『て、敵襲! 敵襲!!』

もう1機のパイシーズが離脱しながら魚雷を放つが、センサー類が回復してないため全てあらぬ方向へと

向かっていく。

 ゴォウッ

水中用MSであるパイシーズを上回る速度で、追い上げると手にしたビームサイズを一閃、

「バカな!! 水中で熱エネルギーの武器が使えるだと!?」

ようやく正常に戻ったモニターに映し出された状況を見て、カズシは自分の目を疑った。

水中では熱エネルギーつまりビーム兵器は使えない、また使ってもそれは正常には作用しない、と言うのが

今までの常識だ、実際最新型であるキャンサーにもビーム兵器は装備されていない。

「ふざけるなぁっっ!!」

カズシは敵MSに向かってキャンサーを突撃させる。

 ガゴォォォン

敵MSがキャンサーに対して迎撃体勢を整える前に体当たりで、突き飛ばす。

「このぉ!!」

体勢を崩した敵MSに更に追い打ちをかける、キャンサーの腕を伸ばし相手の頭部を挟み込み、

「ナデシコがいくら頑強でも、この距離からの攻撃なら!!」

ほとんど、いやまったくのゼロ距離攻撃、ありったけの魚雷を撃ち込む。

 ドガァァン ドガァァン ドガァァン ドガァァン ドガァァン ドガァァン・・・

もちろんこの至近距離、キャンサーも無事にすむ訳が無く、衝撃で腕が吹き飛ぶ、

「これで・・・どうだ!!」

腕が吹き飛ぶのと同時にナデシコはキャンサーから解放されるが、間髪入れず残った腕から魚雷を叩き込む。

 ドガァァァァァァン!!

直撃を受け弾き飛ばされるナデシコ、その手からビームサイズが落ちる。

「やった! やりましたよ! ラピス特尉!」

ゆっくりと海底に沈んでいくナデシコにカズシは歓喜をあげる、

が、カズシは気づいていなかった、ナデシコの左腕がキャンサーに向けられていることに。

 ヴゥン! ゴォウゥゥゥゥゥ・・・

「なに!?  ガァァッ!!」

左腕から放たれたバスターシールドがキャンサーの胴体に突き刺さる、

「グァァァァァァ・・・!!」

 ドガァァァァァァァァ!!

砕け散るキャンサーを確認しながら、ナデシコデスサイズがゆっくりと起きあがった。

「テテテテ・・・流石クリムゾンの新型、手強かったぜ」

頭を押さえながら、リョウコはシステムをチェックする、

「あちゃ〜結構やられたな〜」

頭部カメラアイとセンサー類が破損して、右肩のジョイント部が少々動きづらくなっていたが、気にする程の

損傷では無い。

「さてと・・・連合の捜し物は、アレか」

未だに警報音と光を発しているナデシコに近づく、

「さ〜て・・・・・・って、なんだこいつ? オレのデスサイズとそっくりじゃないか!?」

大まかにスキャンした情報を見て、目を丸くする。

「自爆装置作動中か、それもオレのと同じ位置・・・」

ビームサイズを拾い上げ、刃の部分を少しだけ伸ばす。

「ヘヘッ  なにも壊すことは無いな、オレのデスサイズのパーツ機として貰ってくぜ」

ナデシコの腰の部分を突き自爆回路を遮断する。

「それじゃ、いきますか」

静かになったナデシコを担ぎ上げると、デスサイズはその場から離脱していった。

 

 

 

 

 

 ドガァァァァン・・・   バガァァァァン・・・

立て続けのの爆発が起こり、平和な海軍基地が一転惨劇の現場と変わる。

「テロリストの襲撃か?! 何をしている!負傷者を運び出せ!」

燃え上がる倉庫を前に、下士官が周りの兵に矢継ぎ早に指示を出す。

「まだ、どこかに爆発物が仕掛けられてるかもしれん! 慎重に行動しろ 衛生兵まだか?!」

「基地内の通信が妨害されて連絡が取れません!」

「だったら、走っていけ!! なんのために普段訓練しているんだ!!」

「ハッ!!」

踵を返して兵士はその場を離れ、近くに止まっていたジープに飛び乗りエンジンをスタートさせる。

が、次の瞬間ジープが爆発した、エンジンをスタートさせると爆発するように爆発物が仕掛けられていたのだ。

「うわぁぁぁぁ・・・」

火だるまになった、兵士が転がり出る。

「クソッ いったいどうなっているんだ!!」

近くにあった消化器を抱え、駆け寄りながら下士官は空を仰いだ、馬鹿のようにきれいな夕焼けが見えた。

 

 

 ヴィィィィン・・・  ガゴッ

基地の救援にに向かったのか、ほとんど人の残っていなかった潜水艦はあっさりとルリに制圧され、ルリは

その甲板で魚雷の発射準備をしていた。

「ターゲット設定・・・よし」

 カタカタカタカタ・・・

魚雷の誘導コンピューターにナデシコのデータを入力する。

【急がないと、もう時間がない・・・】

焦りのためにルリは周りが見えていたかった、そのため背後に迫っていた人物に気づかなかった。

「ルリちゃん」

「え!?」

こんなところで聞こえる筈のない声を聞いて、信じられないと言った表情でルリが振り返る。

「やっぱりルリちゃんだね」

「アキト・・・さん?」

そこには海軍基地には不似合いな背広を着たアキトが立っていた、そしてそれは今ルリが一番見たくない、

見られたくない人物でもあった。

「アキトさん・・・どうして?」

「輸送車に乗っていたルリちゃんが見えたからだよ」

クレーンに吊されている魚雷に目をやり、再びルリに戻す。

「ルリちゃん、何をしているんだい? 教えてくれないか?

 そして君は何者なんだ・・・」

ゆっくりとアキトはルリに歩み寄る。

「ダメです・・・お願いですアキトさん、それ以上なにも聞かないでください・・・」

アキトに背を向け再びデータ入力の為にキーボードを叩く。

「その魚雷で何をするつもりなんだ? 答えるんだルリちゃん!

 君の事が心配なんだ!!」

しかし、アキトは更に詰め寄る。

「・・・アキトさん、どうしてそこまで私の事を気にするんですか?」

「え?」

ルリの唐突な質問にアキトは一瞬戸惑ったが、気を取り直し。

「・・・何故かな?」

少し考えてから、アキトは答えた。

「強いてあげるなら、なんとなく・・・だと思う」

「何となく・・・ですか?」

手元では休みなくキーボードを叩きながらルリが問い返す。

「うん、何となく・・・側にいてあげないといけない・・・そう思ったんだ」

「エ?」

驚いたようにルリが顔を上げる。

「いつも、何か張りつめていて・・・側にいてあげないと・・・何かの弾みで壊れてしまいそうな、そんな気がする

から」

「アキトさん・・・」

そんな言葉が出てくると思っていなかったルリはマジマジとアキトの顔を凝視する、アキトは照れて顔を背けた。

「!」

と、偶然アキトの視界に動く影が見えた、

「ルリちゃん!!」

「え!?」

いきなりアキトがルリを抱きしめる、ルリは何が起こったかわからず呆然とする、次の瞬間、

 ガァァン!!

「ぐぁっ」

銃声が響き、アキトの体が甲板場に倒れ込む。

「アキトさん!!」

慌ててアキトの体を支えようとしたルリの手に、ぬるっとしたなま暖かい感触が・・・

ルリを庇ってアキトが撃たれたのだ。

「テ、テロリストめ、思い知ったか・・・」

ルリが視線を走らすと潜水艦のハッチからボロボロになった兵士が身を乗り出し銃を構えていた。

「まだ動ける兵士が残っていた!?」

ルリは腰の後ろの銃を抜こうとしたが、アキトの体を支えているため思うように動けない。

「し、死ねぇぇぇ」

兵士が再び銃を構える、

【ダメ、間に合わない!】

ルリがアキトの体を庇うように覆い被さる、

 ガァァン!!

「ウアァァ・・・」

銃声が響き、ゆっくりと兵士の体がハッチの中に落ちていった。

「なに!?」

「危ない、危ない、大丈夫か? お2人さん」

声がした方に目を向けると、黒のつなぎを着て帽子を目深にかぶった女性が銃を構えて立っていた、

その雰囲気から軍人ではない、第一軍人なら兵士ではなくルリ達を狙うはずだ。

が、ルリにとってそんなことは二の次だ、慌ててアキトの手当を始める。

「・・・つぅぅ、ルリちゃん大丈夫?」

「アキトさん動かないでください・・・よかった、弾は貫通していますね」

傷口を確認して胸をなで下ろす、弾はアキトの左腕に当たっていたがそれほど酷い傷じゃない、

「どうして、こんな事を・・・一歩間違っていたら死んでいたんですよ」

「さぁ・・・気がついたら体が動いていたから・・・でもルリちゃんが無事でよかった」

心底安心したような笑みを浮かべる、

「アキトさん・・・」

不謹慎だと思いつつも、その笑顔に見とれてしまうルリ、

「・・・って、オレは無視か?」

2人の世界に入ってしまっているアキトとルリをおもしろくなさそうに見るリョウコ、ここが軍港でしかも襲撃を受け

ている最中である事は、既に忘れ去られていた。

 ピピッピピッピピッピピッ・・・

「おっと、もう近くまで来たのか? 潮の計算間違えたかな・・・」

リョウコの腕時計らしきものがアラームを鳴らし、何かを伝える、それを見てリョウコが表情を曇らす。

「あれは!?」

「? なんだ」

水平線の方から何かが近づいてくるのに気づいたルリとアキトが、それが何か確認しようと目を凝らす、

「コラコラコラコラッ 見るんじゃねえ」

リョウコが、強力なライトをつけ視界を塞ぐ、

「さぁて お2人さん、なんか訳有りみてぇだが、ここからすぐに立ち去った方がいいぜ、それが身のためだ」

ドスを効かせた、低めの声で退場を促すが、

「!!」

ルリが跳躍し魚雷の影に身を隠す、ここ位置ならライトに邪魔されず接近してくるのが何か確認できる。

「なに!」

ルリの予想外の行動に、リョウコが銃を向けるが引き金は引けなかった、下手に魚雷に当てて誘爆されたら

目も当てられない状況になる。

「・・・やはり、私のナデシコ・・・」

先程迄の少女の顔から戦士の顔へと戻ったルリは、接近してくるのが自分の乗っていたナデシコと

それとよく似た形のMSであるのを確認すると。

 ダンッ

躊躇する事なく魚雷の手動点火装置を作動させる。

 コォォォォォォォ・・・ ドォォォォォ!!

1つに束ねられた魚雷のロケットブースターが作動して、拘束していた鎖を断ち切り海中へと飛び出した。

「!? なにしやがるんだ!! このヤロー!!」

一直線にナデシコに向かっていく魚雷を見て、リョウコが叫ぶがもはや手遅れだ、オートコントロールになって

いるナデシコデスサイズにこの魚雷を避ける事は出来ない。

「・・・これで、全て終わりです・・・任務終了」

ロケットブースターの反動で潜水艦の装甲に叩き付けられたルリは朦朧とした意識の中でナデシコに向かって

いく魚雷を確認すると、それを最後に意識を失った。

 ゴォォォォォォォォ・・・

海中をナデシコに向かい一直線で突き進み。

 グアァァァァァァァァン!!!!

巨大な火球が生まれ、為す術もなく吹き飛ばされ海中に沈んでいく2機のナデシコ、しかし、ルリ狙ったような

自爆装置の誘爆は起こらなかった。

「ア゛ア゛ア゛・・・やっちまったよ・・・」

水平線近くに生まれた爆発を見てリョウコは頭を抱えたが、同時に、

【あいつ、ナデシニウムの破壊数値を知っているのか・・・

  じゃぁ、あいつがあのモビルスーツのパイロットなのか?】

振り返ると、アキトが気絶しているルリを抱き起こそうとしているのが見えた。

 

 

「ラピス特尉!!」

潜水母艦のMSデッキでキャンサーを見上げていたラピスのところにシュンが駆け寄ってくる。

「やはり キャンサー、パイシーズ共に連絡がつきません!」

「そう・・・」

バイザーに隠れてラピスの表情は見えない、

「ナデシコを一度見た者は生きて戦場から戻れない・・・嫌なジンクスにならないといいんだけど・・・」

そうつぶやくラピスの声がどことなく悲しそうに聞こえたのは、シュンの気のせいだったのだろうか・・・

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

次回予告

 

ルリは今、連合軍の特別治療室に拘束されている、そんなルリの脱出を計画するリョウコ、

その一方でラピスは、連合の地中海基地に大量配備されたエアリーズを狙いナデシコが現れると予測していた。

そこでラピスは新兵器を確認する・・・

 

次回 新機動戦記 ナデシコ W

 第03話  「ナデシコ、5機確認」

 

 

 

 

 

おまけ

 

「さてと、今日のアキトおに〜ちゃん(は〜と)チェ〜クッは、と・・・」

自分の部屋に入るとラピスは早速日課である、アキト身辺情報をチェック(いったい誰が調べているんでしょう?)

する為にシークレットラインにアクセスする。

「え〜と、何々・・・・・・」

しばらくニコニコしながら、読んでいたがだんだん不機嫌になっていく・・・

「・・・なに? なんなの? このホシノ・ルリって!!!!!(怒怒怒怒怒怒怒怒)」

いつ撮影したのか、アキトに抱きしめられているルリ(出会った時)や、放課後一緒に下校している(1話おまけ)

写真などが一緒に表示されている。

【ナニ、コノオンナ・・・ワタシノあきとニテヲダスナンテ!!

 あきとモあきとダヨ、コンナオンナニヒッカカルナンテ(怒)、

 コレモ、らぴすガイッショニイテアゲレナイカラ? あきとゴメン ワタシマダソバニイケナイ(泣)

 ソレモコレモ、メンドウナコトヲミンナらぴすニオシツケルはーりーガワルイ!!

 ソノセイデあきとニアイニイケナイ

 はーりーノメモリーニ ウイルスシカケテオコウ・・・】

 

「はっくしゅん!!」

どこかで、誰かのくしゃみが響いた・・・

(さて、誰でしょう?)

 

 

 

 

 

Benさん、御免なさいぃぃカズシ、死んでしまいました。

 

って、これシリーズ化したらシュンもそのうち死ぬんじゃ・・・(汗)

 

 

 

で、続きです。

 

 

 

管理人っす。

 

めるう゛ぃるさん!! 第二話投稿有難!!

おう・・・カズシ戦死っすか?

・・・まあ、原作通りだとそうなるしね〜

でもプロスは爺さんだし、ゴートは髭の団長になってるし(爆笑)

しかも、エリナ・・・姉弟じゃなくて姉妹っすか?

まあ、ユリカとジュンは何時もの配役ですがね(笑)

ハーリー君、段々と追い詰められてますね〜、さてレディ・アンは誰ぞや?

でもBenが一番気にしているのは〜♪

 

・・・ドロシー・カタロニア嬢っすね!!

これは誰がなるんでせう?

個人的にはメグミちゃんが希望(笑)

 

では、次回を期待して待ってます!!

 

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