Bパート

 

 

 

 

 

「「「「「オオ・・・・・・」」」」」

「あれがコロニーが送り込んだ・・・」

「なんて事だ、信じられんぞ」

モニターに映し出される状況に会議出席者がざわめきだす。

たった2機のMSで200機を越えるリィオー部隊を圧倒しているのだ、目にしていても信じられない状況だ。

その中で、モニターに映し出される様子を嬉しそうに見る者がいた、クリムゾン総帥マキビ・ハリだ。

「これで役者がそろいましたね・・・

 ユキさん、ボク達もそろそろ幕を上げましょう」

「はい♪」

嬉しそうに頷くと、ユキは膝の上に載せていたケースを開け、中のボタンを押した。

 

 

ナイロビ ボンバサ沖上空

「ラピス特尉! 『オペレーション・デイブレイク』開始命令です」

「わかったわ」

オペレーターの報告に頷くと、

「全機、降下開始!!」

ラピスの命令が全輸送機に伝わり、ハッチが開かれ、次々とエアリーズが降下を始めた、目標は地球圏統一

連合軍ナイロビ基地。

 

 

 グァァァァァァァン・・・

振動が議場を揺らす、

「クッ あのモビルスーツのパイロット達に呼びかけろ!!

 我々は、コロニーとの和平を望んでいると!」

『無理です元帥! 敵は猛攻撃をかけてきております!!

 そんな事をしていたら、こちらの損害がっ  ブツッ

基地指令室との回線が切れた、どこかの通信回線が破壊されたようだ。

「元帥、今は避難することが先決なんじゃないんですか」

いつの間にか、グラシス元帥の近くに歩み寄っていたハーリーが提案する。

「マキビ君   だが・・・」

「この状況でまだ、コロニー側との和平がお望みなら・・・

 ここで閣下を失うわけにはいきません」

「・・・皮肉は聞き流そう、

 確かに、無駄死にをするつもりは無い 和平交渉実現のためになっ」

「【閣下、やはり貴方はそう答えるんですね・・・】ならば、我々の高速シャトルを使ってください。

 非常時に備えて、緊急発進が可能です」

そう言って、ハーリーが目配せすると、数人のクリムゾンの兵士が議場に避難誘導の為に入ってきた。

「マキビ君、君がこうまでも我々に便宜をはかってくれるとは」

グラシス元帥はハーリーの行動に意外そうな顔を向ける、彼の頭の中ではハーリーは反和平論者として捉えら

れていたからだ。

「元帥、ボクも地球圏統一連合軍の一員です」

「そうだな、では頼む」

そう言って、グラシスはハーリーに背を向けた。

「ご案内します皆様! シャトルはB−12発着場です」

クリムゾンの兵士に誘導されながら、グラシス元帥をはじめフクベ将軍達が議場から退室していく、

「ムネタケ将軍、こちらへ」

そんな中、同じように退室して行こうとしていたムネタケの肩を月臣特佐が引き留めた。

「何よ? シャトルはあっちじゃないの?」

怪訝そうな顔をしながら、元帥達が出ていた扉を指さす。

「念のために、シャトルを分散させるのが得策です」

「だったら、私よりグラシス元帥の方が・・・」

「F−7発着場にハーリー特佐専用シャトルがあります、そう大勢は乗れませんが

 我が、クリムゾンの最新型です」

最新型と聞いて、ムネタケの表情が変わる。

「あらそうなの? なら同乗させてもらおうかしら」

「では、こちらです」

 

 

「ええい!! 何をしているんだ!! 出撃可能なモビルスーツは全機出せっ

 敵はたかが2体なんだぞ!」

司令室では、基地指令がマイク片手に怒鳴っていた。

今日の会議に備えて、この基地には通常の10倍以上の戦力が配置されているのだ、それなのに一方的に

押されている、それもたった2機のMSに、誰でも怒鳴りたくなってしまう。

「くそっ」

悪態をつきながら、指令は汗を拭う。

「し、指令!!」

「どうした?」

オペレーターの上擦った声に振り返るが、今以上に状況が悪くなることは無いだろうと開き直ったのか、指令の

声は落ち着いていた。

しかし

「フェアバックス基地から緊急通信!! 反乱ですっ! 兵の一部が反乱を起こしています!」

「なぁっ!」

予想外すぎる報告に指令の頭脳が一瞬停止する。

「指令! 世界各地の連合軍基地で反乱が起こっています!!」

別のオペレーターがモニターに世界地図を表示させ、反乱が起こっている基地を次々をマーキングしていく。

「なんだと・・・ いったい何が起こっているんだ」

襲撃されていることも忘れて、指令はモニターに見入っていた、そこにはニューエドワーズをのぞくほぼ全ての

基地で反乱が起きていることを示していた。

 

 

「くそっ いったい何がどうしたって言うんだ!?」

『知らないわよ!!』

『奴等、クーデターでも起こす気か!?』

いきなり攻撃を仕掛けてきた”敵”に対して反撃しながらも、その相手に混乱していた。

攻撃してくるのは連合軍、それもスペシャルズだ、いつもの過激派ゲリラなんかじゃない。

「同じ連合軍が、スペシャルズが何で攻撃して来るんだ!!」

エアリーズの放ったミサイルを間一髪のところでかわすが、避けきれなかった2機のリィオーが爆炎に包まれる。

「フィー! エリック!! クソォォ!!」

同じ小隊の仲間の名前を叫びながら、がむしゃらにリィオーのライフルをエアリーズに向けて撃ちまくる。

それを避けるようにエアリーズは高度を上げるが、そうそう射程外に出れる筈もない。

「墜ちろぉぉ!!」

エアリーズの1機を捕らえたと思った瞬間。背後から強烈な衝撃を受け、リィオーが吹き飛ばされた。

「グァ・・・ なんだ?」

衝撃でコクピット内のどこかで打ったのか頭から大量の血が流れている、

何が起こったのか視線を巡らすがモニターの殆どが消え、僅かしか外の様子が見えない。

「な・・・るほ、ど  そう言う事か」

その僅かしか見えないモニターから見えたのは、対MS用バズーカを構えたリィオー。

砲身から白煙が上がっている事から、さっきの衝撃は背後からあれに撃たれたんだろうとわかる。

「ま、さか、スペシャル ズだけじゃなく・・・身内に、も、うらぎり・・・のが、いたの、か・・・」

そのリィオーには、彼の乗っていたリィオーと同じ小隊のマークが刻まれていた、それを確認した後意識を失っ

た。

 

 

 ズガガガガガガッ   チュドォォォォォンッ!!   ドォォォォォ・・・

数の上では完全に負けているスペシャルズ側だが、完全な奇襲と兵士一人一人の腕の差で、優位に立ってい

た。

いついかなる時でも、単独で行動できる特権を有する、と言うのは伊達ではない。

『も、もう駄目です! 曹長降伏しましょう!!』

連合軍側のリィオーが、隊長機に殆ど泣きつくように言う。

基地を占拠され、友軍の殆どを殲滅され、更にスペシャルズに囲まれてしまっていては仕方ないのかもしれない

が、曹長はそう思っていなかった。

『何を言うか!!    そうか! 貴様も裏切り者だな!!』

言うが早いか、曹長はキャノンでリィオーを撃ち抜く、

『そ、曹長!?』

残ったリィオーが驚きの声をあげる、

『スペシャルズの若造に何ができる!! 何が!!』

かなり、頭に血が上ってしまっているようだ、正確な状況判断が出来なくなっている。

『なに?』

 ガガガガガガガガガッ

牽制するようにリィオーの足下にライフルが撃ち込まれる。

「この基地は、我々が制圧した! 武器を捨てて降伏しろ!!」

エアリーズ・カスタムと2機のエアリーズがリィオーの前に降り立つ、カスタム機から聞こえてきたのはダッシュの

声だ。

『反逆者が何をぬかすっ』

「フッ 革命の気配は、己で察しろ」

『ほざけぇぇぇぇぇ!!』

絶叫と共にリィオーからキャノンが放たれ、ダッシュのカスタム機を直撃する。

「フンッ!」

胸部の装甲が砕けたが、気にすることなく仕返しとばかりに隊長機に向かってライフルを撃ち込む。

 ガッガッガッガッガッガッガッガッ  ドォォォォォオォォ・・・

蜂の巣にされ爆発する隊長機、残ったリィオーが慌ててライフルを捨て降伏の意を示す。

「フゥ・・・ 創り上げる事はすばらしい事、しかし これは血生臭すぎる ・ ・ ・ 」

武装解除するリィオーを見ながら、ダッシュは1人つぶやいた。

 

 

『無益な抵抗はやめなさい』

占拠したナイロビ基地の司令室でラピスはマイク片手をに、今だ抵抗を続ける連合軍兵士に呼びかけていた。

『私達は1人でも多くの同士を必要としている、

 連合の時代はもはや終わりなのよ、真の統一は、クリムゾンがこの手によって生みださなければならない。

 新たな秩序を、共に創りましょう』

どことなく感情が感じられない演説だが、それがとどめとなって次々と連合軍の残党が降伏を始めた。

【新たなる秩序 ・ ・ ・ か、

 我ながら、よくやるわね】

 

 

このクーデターは周到に準備された物であった。

クリムゾンの兵士は、スペシャルズの名に身を隠し各地の連合軍基地に配備されていた。

内部、それも連合の、膨れ上がった軍事組織の行動であったために、連合の首脳部は壊滅的な打撃を受けて

いた。

 

 

ルクセンブルク連合軍本部

「アジア、アフリカ、ヨーロッパ、世界の連合の基地が反乱軍によって占拠されていきます!」

オペレーターの報告に参謀がうめき声を上げる、ほんの1時間前まで平穏だったのが、ニューエドワーズからの

敵襲撃の報告を皮切りに、全世界の基地で反乱が発生、そして制圧させていく。

「グラシス元帥は!?」

「ニューエドワーズとの連絡が途絶えているため、確認できません」

オペレーターからの報告に参謀が、がっくりと肩を落とす、元帥との連絡がつかない以上彼が現状の最高指令

なのだ。

「いったい、何が起こっているんだ」

占領された事を示す表示が増えていくモニターを前に、参謀は現状把握に奔走するのが精一杯だった。

 

 

「くっそう、まだいるのかよ!!」

斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬って斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬っ

ても斬っても斬っても斬っても斬って斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても斬っても

斬って斬っても斬っても、一向に減らないリィオー部隊にリョウコが切れかけていた。

リィオーの数は確実に減っている筈なのだが、そんな気配はまるでない。

「このままだと、逃げられてしまう」

目の前のリィオーを切り伏せながらルリがクリムゾンの首脳陣が居るであろう基地施設の方を見る。

攻撃開始から既にかなりの時間が過ぎている、つまりそれだけ相手に脱出の時間を与えている、一刻も早く

突破したいのだが、流石に数をそろえただけの壁でも、数が数なだけに簡単にはいかない。

実際、幾度かナデシコデスサイズが強引に突破しようとしているが、途中で迎撃され、今だに突破できないでい

る。

「くそぉぉ すっかり囲まれたな〜」

辺りを見回し、リョウコがつぶやく、元々接近戦用のナデシコデスサイズ、飛び道具はあるが3発しか撃てない

(威力が半端ではないが)ウイングナデシコ、となれば攻撃はビームサイズやビームサーベルでの格闘戦が

主体となり、当然そのためには敵に接近しなければならず、気がつけば前後左右敵だらけの状況となってし

まった。

こうなっては、いったん後退して体勢を立て直すこともできない。

「やっぱり、ここは突撃あるのみっ!」

 ピピピピピッピピピピピッ

と、ナデシコデスサイズのコクピットで警報音が響く、

「なにぃぃ!? ミサイルだと 味方ごとかよ!!」

飛来するミサイルに気づき、ナデシコデシサイズは全力回避を始めるが間に合いそうにない。

「しっかり捕まってください!」

「!? おうっ」

ルリの声に慌ててナデシコデスサイズをウイングナデシコに捕まらせる、それを確認したルリは一気にナデシコ

デスサイズごと上空へと退避する。

 

 

2機のナデシコを囲むように密集していたリィオー部隊の、ど真ん中にミサイル群が着弾した。

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、

爆発、爆発、爆発、爆発、爆発、爆発!!

直撃を受け、次々に爆発四散するリィオー部隊、爆発に巻き込まれなかった機体も爆風に煽られ、溜まらず

吹き飛ぶ。

 

 

基地近くの小高い丘の上にナデシコヘビーアームズとナデシコサンドロックが基地を見下ろしていた。

「密集なんかしているから、そうなるのよ」

ナデシコヘビーアームズの両肩、両足のミサイルポットから全弾を放ったエリナが、さめた口調でつぶやく。

スラスターを噴かし基地敷地内に侵入すると、ミサイルの攻撃から何とか逃げ切ったリィオーをビームガトリング

で確実に撃ち抜いていく。

「ごめんなさい、今日は話していられないんです、私の方が不利だから」

両手にヒートショテルを構えたナデシコサンドロックがリィオーを次々と切り裂いていく。

新たな2機の襲撃機に、防衛部隊はあっと言う間にその陣形を崩していく。

最初のミサイル攻撃がかなり効いているようだ。

 

 

「クリムゾンの新型?」

空に退避していたウイングナデシコが、ユリカ達に警戒しながら降りてきた。

「だけどよぉ 連合に仕掛けてるぜ、彼奴ら」

敵か味方かわからない相手にリョウコも少々混乱していた。

「似てるな、俺達のナデシコに」

2機を観察しながらリョウコは、初めてルリのウイングナデシコを見つけた時の事を思い出していた、

 

 

「見て、エリナさん!

 あの機体、私達とそっくりっ もしかして、あれもナデシコなんじゃないかな?」

空から降りてきた、ルリ達の機体を見て、ユリカが嬉しそうな声をあげるが、

「かもしれないわね、だけど味方と決まった理由じゃないのよ、

 邪魔をするなら、戦うわ」

エリナは油断なく構える。

 

 

F−7発着場

「ちょっと、何で直ぐに発進しないのよぉ!!」

ハーリー専用機の中でムネタケが喚いているが、ユキも月臣もまったく気にしていないし、ハーリーは隣の専用

ルームにいるので、ムネタケの喚きは聞こえていない。

「何よ!! 私は連合宇宙軍のムネタケなのよ!! 何か言ったらどうなの!!」

「グラシス元帥達の発進を確認してからです」

流石に煩くなったのかユキがぶっきらぼうに言う。

「あっ   なるほど、それもそうだわね」

元々、権力志向のムネタケ、上官(グラシス元帥)の発進の前にこっちが出るわけにはいかないと、あっさり納得

した。

よくこんなのが宇宙軍のトップになれたものだ。

 

 

 クォオオオオオオオオオオオオ

力強いエンジン音を響かせて、クリムゾンの高速シャトルがニューエドワーズ基地から飛び立った。

 

 

「あれは!?」

互いに相手の出方を見ていたナデシコ達だが、突然響いてきた爆音にその方向を降り仰ぐ、

「データ照合確認! クリムゾンの高速シャトル、あれです!!」

素早くシャトルのデータを照合し、クリムゾンの首脳陣が脱出していると判断したルリは、ウイングナデシコを

バード形態に変形させ空に舞い上がる。

他の3機は飛行できない為に、離陸したシャトルを攻撃する手段はなくウイングナデシコをただ見送った。

 

 

「今回のことは偶然なのだ、私はこれを和平への障害だとは思わない!」

シャトルの中で、グラシス元帥は硬い決意で言い切った。

しかし、今回の事は偶然では無く、全てがクリムゾンの計画に基づくものなのだが、グラシス元帥にそれを

知る術はない。

「げ、元帥!!」

「どうした!   なに!?」

恐怖に引きつった部下の声に振り返ると、部下が窓の外を指さして震えている、その顔からは血の気が完全

に消えていた。

そして、グラシス元帥が窓の外を見、硬直した、

「な、ナデシコ!?」

シャトルを猛然と追撃してくる白い機体。

 クォォォォォォォ・・・

一気にシャトルを追い抜くと、ウイングナデシコはバード形態からMSにへと変形、その手にはビームサーベル

が握られている。

「早まるな ・ ・ ・ 若者よ」

グラシス元帥の喉から、うめき声が上がる そしてそれがグラシス元帥が発した最後の言葉となった。

 ズシャァァ!   ドゴォォォォォォォォ・・・

胴体の中程から切り裂かれ、次の瞬間シャトルは爆炎に包まれた。

「・・・任務完了です」

炎に包まれながら墜落していくシャトルを確認して、ルリはつぶやいた。

 

 

「な、なんて事・・・ なんて事なのぉ!!」

グラシス元帥の乗るシャトルが、ウイングナデシコに撃墜されるのを、シャトル内のモニターでハッキリと見た

(見せられた)ムネタケは、思わず絶叫した。

「グラシス元帥・・・ フクベ将軍・・・」

がっくりと肩を落とすムネタケを尻目に、ユキはパイロットに発進命令を出した。

 

 

「おーし これで任務完了だな、となれば」

爆発炎上して墜落していくシャトルを確認すると、リョウコはエリナのナデシコヘビーアームズに視線を向けると。

「さて、さっきはミサイルの挨拶どうも、

 今度は、こっちから行くぜぇぇぇ!!!」

ビームサイズを構え、突撃してくるっ

「まだまだねっ」

エリナはその攻撃をかわすと、右手のアーミーナイフで逆に斬りかかる、

「おっと!」

ビームサイズの柄の部分でアーミーナイフを受け止め、膝蹴りを放ちナデシコヘビーアームズとの距離を取る。

「やるわね!」

蹴り飛ばされながらも、ビームガトリングでナデシコデスサイズの動きを封じ込める、

 ドッドドドドドッドッ「やめて!! 2人ともやめてください!!」ドドドドッドッドッドッドッ!!

ユリカの声が響くが、ビームガトリングの射撃音に掻き消される。

「だわわわわわわっ!! こなくそぉぉ!」

ビームガトリングの銃撃を避けながらも、リョウコはナデシコヘビーアームズとの距離を一気に詰める。

「はぁぁぁっ!!」

接近してきたナデシコデスサイズに向かってアーミーナイフを振り下ろす。

 ガキィィィン!!

火花を散らしながら、激しい鍔迫り合いを繰り返す2機のナデシコ、

いつまでも続くかと思われた戦いだが、それは唐突に終わった。

 ガキィィッ! キィィィィン!!    バキャッ

幾度目かの激突を繰り返し、再び斬り結ぼうとした時、

 ピピピピピッピピピピピッ

「なに?」

「え!?」

ナデシコデスサイズとナデシコヘビーアームズのコクピット内で警報音が鳴り響き。

 ゴォォォォオォォォォオオォォォォオォォ・・・

2機の間に、凄まじい火炎の帯が走った。

少々強引な方法だが2機の戦闘を終わらせた機体が姿を現した。

『貴方達、まだ無意味な戦いを続けるの!?』

5機目のナデシコ、シェンロンナデシコから沈んだ怒りを含んだ舞歌の声が響いてくる。

「え?」

「何ぃ? 無意味だと!?」

「??????」

シャトルを撃墜したウイングナデシコが静かに降り立つ、

「・・・無意味とはどう言うことですか」

 シュンッ

コクピットのハッチを開き、4人の前に舞歌は姿を現す。

「まだ気がつかないの?

 貴方達はクリムゾンに利用されたのよ!!」

「そんなっ!?」

ユリカが悲鳴に似た声を上げる、

「連合の広報回線を開いて見なさい 貴方達が撃墜したシャトルに乗っていたのはクリムゾンの首脳ではない

 わ!!

 乗っていたのは連合の平和論者よ!! これで連合の和平派は一掃されたわ」

「まさか!?」

慌ててルリは広報回線を開く、ルリだけではないリョウコもエリナ、ユリカもだ。

『これはコロニー側の宣戦布告なのよぉ!!』

回線ではクリムゾン以外で唯一生き残った連合の幹部、ムネタケがヒステリックに叫んでいた。

『私達は今日っ ニューエドワーズ基地でコロニーとの和平のについて話し合っていた!!

 だけどっ その中心人物であるグラシス元帥はもうこの世にはいないわ!!

 コロニー側から送り込まれた侵略モビルスーツに、殺されたのよ!!』

 

 

「エ!?」

TVから聞こえてきた言葉にアキトは我が耳を疑った、コロニーから送り込まれたMS アキトが知っている限り、

それはルリしかいない。

だが、ルリが和平論者を殺すなんてあり得ない何かの間違いだと思いつつTVに見るが、アキトの希望的観測

は簡単に打ち砕かれた。

『繰り返す!! これは残虐な殺戮行為よ!!』

画面が切り替わり、ゲラシス元帥が乗るシャトルをルリのウイングナデシコが斬り裂く映像が、TV画面に映し

出される。

「そんな ・ ・ ・ ルリちゃん」

アキトは呆然とつぶやいた ・ ・ ・

 

 

「私達はコロニーに屈したりしないわ!! 私達は断じて戦い抜くのよっ」

飛行するシャトルの中で、カメラに向かって檄を飛ばしていたムネタケは、放送が終わりがっくりと椅子に座り

込んでいた。

 パチ パチ パチ

「ご苦労様でしたムネタケ将軍、すばらしい歴史に残る名演技でした」

ぐったりしているムネタケにユキが拍手しながら、近づいてきた。

「大変残念ですが、貴方の出番はこれで終わりです」

「? 出番ってなんのことよ」

いきなり妙なことを言うユキに、疑惑の視線を向けるムネタケ、

「迫真の演技でした、退場してもらうには惜しいとのことですが・・・」

そう言いながら、ユキは何かのスイッチを押す。

 ガコンッ   ヴィイィィィィイィィ・・・

「え? ええ?!  えええええええっ!!!!」

ムネタケの座っていた辺りの床が開き、飛行中のシャトルからムネタケの体は虚空へと舞った。

「あんた達! 私を利用したのね!!」

「正解ですわ、ですが気がつくのが少し遅かったようですね」

 ガァァァン!!

そのムネタケに向かってトリガーを引く。

寸分違わず、ユキの放った弾丸はムネタケの頭部を撃ち抜いた。

大人しくなったムネタケは静かに大地に向かって落下していく・・・

「ハーリーさまの足下を血で汚すわけにはいかない」

 

 

「第2幕の始まりです」

シートに身を沈ませながらハーリーがつぶやく、

「・・・・・・忙しくなしますね」

月臣の言葉にハーリーは軽く頷くと、目を閉じた。

 

 

「全ては、クリムゾンの仕掛けたことだったのよ、私達はマキビ・ハリの手の上で踊らされた・・・」

戦いには参加しなかったが、情報にだまされ接近していた舞歌が悔しそうに言う、

「そ、そんなぁ・・・」

弱々しくつぶやくユリカ、

「クソッ!」

コクピット内を思いっきり殴りつけるリョウコ、

「・・・・・・」

沈黙するエリナ、

「私は・・・ 私は・・・」

自分のしたことの大きさに、呆然とするルリ、

 

 

ニューエドワーズの日が暮れていく、多くの犠牲と共に ・ ・ ・

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

 次回予告

 

歴史の主導権はハーリーが握った。

クリムゾンに踊らされたナデシコは、ムネタケ将軍と同じようにユキ・キクノに仕留められようとしている。

ニューエドワーズの爆破阻止に奔る、ルリ、リョウコ、ユリカ。

そして、ハーリーに迫る、舞歌、エリナ。

舞歌がハーリーを追いつめる ・ ・ ・

 

 

次回 新機動戦記 ナデシコ W

 第08話 「ハーリー、暗殺」

 

 

 

 

 

 あ(と)がき

めるう゛ぃる:お久しぶりのめるう゛ぃるです、前回のおちゃらけた状況からいきなり真面目に変わり、ギャップに

        苦しんでます。

        と、言うか ハーリーが別人・・・ラピス、ダッシュも(汗汗汗汗汗)

アキト:それは、お前の腕の無さだろう

め:ぐはぁ! いや まあそうなんだけど・・・ 

ア:グラシスさんに、フクベ提督、ムネタケ、それから才蔵さん、結構死んだな今回、

め:まぁ   本編からして死にまくってるし、仕方ないんじゃ、

  ちなみに、才蔵さんについての補足、いつクリムゾンの攻撃を受けたかというと、前回の聖コスモス学園襲撃

  の時に、襲撃には第1小隊と第2小隊が出てまして、第1小隊は学園を、第2小隊は才蔵さんが入院していた

  病院を襲っていたと言うことです。

  その後、学園側に援軍で向かったけど、ルリちゃんに殲滅されてます。

ア:せっかく生き残ってたのに 何で殺したんだ?

め:う〜ん、簡単に言うと後々への布石

ア:ほう?

め:の、筈だった

ア:はぁ!?

め:いや、只でさえ50話以上あるのに下手にオリジナル混ぜたら、自爆ものだからなぁ〜

ア:つまり、オリジナルの布石の為に才蔵さんに生きてもらってたけど、書いている途中で面倒になったから元

  に戻した、と?

め:まっ そう言う事、だけど書き直すのも面倒だったから、才蔵さんの死亡はそのままにしていたんだ。

ア:相変わらず、行き当たりばったりの構成の仕方だな〜

め:そんなに誉めても何も出ないぞ(テレテレ)

ア:誉めとらん!! おまけに貴様が照れても気持ち悪いだけだぞ!!

め:そんな事言う人、嫌いです〜

ア:やめんかぁぁ!!(ゴスッ!

 

 

で、続きです。

 

 

 

管理人です。

 

めるう゛ぃるさん!! 第七話投稿有難!!

いやはや・・・盛大にお亡くなりになりましたな(汗)

まあ、グラ爺は仕方がないですけどね。

・・・才蔵さん(チーン)

ムネタケは本編より後腐れなく、お亡くなりになりましたね。

ここまであっさり舞台を降りると、後が楽だよな〜(苦笑)

でも、ハーリーが渋いぞ・・・これは認められない!!

ハーリー君の人気の秘密は、不屈の闘志と不死身の身体!!

渋いのと、ハードボイルドは似合わないっす!!

俺はもっと壊れたハーリーを要求する!!(爆)

 

あ、嘘ですからねめるう゛ぃるさん。

本気にしないで下さいね(汗)

では、次回を期待して待ってますね!!

 

感想のメールを出す時には、この めるう゛ぃるさん の名前をクリックして下さいね!!

もし、メールが出来ない方とかはこの掲示板に出来れば一言でも感想を書き込んで下さいね!!

感想は作者の原動力ですから!!

 

ナデシコのページに戻る