皆がナデシコに帰ってきた。

でも、招かれざる敵もやってきた。

アヤさんは、医務室で療養中。

ラピスやユウタも医務室でアヤさんの看病中。

でも・・・

あなた達、何処からナース服と白衣を持ってきたんですか!

「ウリバタケの部屋から。ルリ姉もアキトが怪我をしたら、この服を着るんでしょう?」

・・・言い返せませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ Re Try 第24話 どこにでもある『正義

 

 

 

 

 

 

 

私達はアキトさんの指示に従い、月の裏側に向かっています。

ここはまだ、木連と軍の勢力が拮抗しているところです。

そして、私達は・・・

「あ、ルリルリ・・・そのシャンプーとって。」

「はい、ミナトさん。」

大浴場に来ていました。私・・・一ヶ月間、簡易シャワーで過ごしましたから

大きなお風呂に入りたかったんですよね。

ここに居るのは、私とミナトさん、ユリカさん、メグミさん、ユキナさん、リョーコさん、ヒカルさん、イズミさんです。

一応、警戒態勢なので交代で入る事になっています。

「へぇ、ユキナちゃんってお兄ちゃんと二人暮しだったんだ。

私も、兄弟が欲しかったなぁ。」

ユリカさんが湯船の中から言います。

「そうでもないよ、いっつも私に小言は言うし、何かと言えば勉強しろって・・・」

「クスッ・・・それだけ、心配してるんですよ。」

メグミさんが私の隣で言います。

・・・メグミさん・・・このメンバーの中でその行動は・・・露骨ですね。

何だか、ユキナさんもこれから成長しそうな感じですし、ユリカさんとミナトさんは・・・

それに、リョーコさんやヒカルさん、イズミさんも中々・・・

「俺も、一人っ子だったから兄弟が欲しいと思った事あるぜ。」

「あ、私も。」

「鏡が置いてある台・・・鏡台・・・ヘヘッ」

リョーコさん達が言います。リョーコさん達も逃亡生活をしていたのですから、

お風呂にゆっくり入ると言う事が無かったんでしょうね。

「ところでさぁ・・・チャプチャプ」

ユキナさんが私に近づいてきます。

擬音を口で表現するのって、ユキナさんの専売特許ですね。

「ミナトさんに聞いたんだけど・・・あんたってテンカワ=アキトの恋人って本当?」

「ええ、そうですけど・・・」

ギン!!

あ・・・皆さんが睨んでいます・・・

「ちょっと、ユキナちゃん・・・ ゆっくり話しましょうか?」

ユリカさんのコメカミに青筋が浮かんでいます。

「私は前にも言ったように、お兄ちゃんの愛人で良いわよ。」

「うわぁ!」

いきなり背後に現れたイネスさんにビックリするユキナさん。

何時の間にか、イネスさんの他にエリナさんとプルセルさんも入ってきています。

・・・はぁ・・・牛乳・・・毎日飲んでみようかな・・・

それより、警戒態勢はどうなっているんでしょうか?

ブリッジの様子をオモイカネに映してもらうと

艦長の代理は副艦長のアオイさん、操舵士はゴートさん

通信士はプロスさんが勤めています。

私の代わりはルビィがしっかりとやってくれていますが・・・

こうしてみると、凄い光景ですね・・・

普段は女性しか居ないのに・・・

プロスさんが通信士だと、通信相手に商売しそうですし

ゴートさんの操舵士と言うのも、普段ミナトさんやエリナさんが座っている席だけあって

普段よりもゴートさんが大きく見えます。

「それでは、ユキナちゃんの為にお兄ちゃんを中心とした人物相関図を、優しくコンパクトに説明してあげるわ。」

・・・イネスさん・・・浴場の中までホワイトボードを持ち込まないで下さい!

それより、そのホワイトボードは一体何処から出てくるんですか?

「まず、お兄ちゃんね。」

いつぞやの時と同じく、ホワイトボードにデフォルメ化したアキトさんを書きます。

絵を書いているのはヒカルさん。さすが、漫画家です・・・

「それから、お兄ちゃんの恋人がルリちゃん。」

そう言うと、ヒカルさんは私の絵を書きます。特徴をしっかり捕らえています。

以前、イネスさんが書いた私は目つきが凶暴でしたから・・・

「そして、お兄ちゃんの幼馴染である艦長。」

・・・ヒカルさん・・・ユリカさんの胸・・・大きいですね・・・まぁ・・・事実ですから・・・

「ここからは、ナデシコに乗ってからの女性ね。」

そう言うと、ヒカルさんは手早くメグミさん、リョーコさん、ミサキさんを書きます。

「そして、お兄ちゃんがジャンプして、イケブクロにいた時の女性・・・」

エリナさん、プルセルさんをヒカルさんが書きます。

・・・ヒカルさんに絵を書かせた理由がわかりましたよ・・・イネスさん・・・

忠実に再現しすぎです・・・

「で、私がお兄ちゃんの愛人と言う事で・・・」

最後にヒカルさんはイネスさんを書きます。

「あ、後ラピスちゃんも入れておかないとね。」

「・・・なんか・・・凄いわね・・・」

ユキナさんが、呟いています。

「アキト君って女性限定の人間磁石みたいよ。」

ミナトさん・・・『みたい』じゃなくて『そのもの』だと思うんですけれど・・・

「まぁ、これだけ女性に想われているお兄ちゃんだけど、恋人はルリちゃんだけよ。」

「ちょっと待ってください!アキトは私の王子様なんですよ!」

「そんなの関係ありません、アキトさんは私と一緒になるんですから!」

イネスさんに抗議するユリカさんにメグミさんが対抗しています。

「ねぇ、リョーコはどうなの?アキト君と・・・」

「ばっ・・・な・・・何言ってるんだよ!」

「おーおー・・・照れてる、照れてる。」

「その反応だけで判るわよね。」

リョーコさん達が言い合っています。

「エリナはどう思っているの?」

「プルと一緒よ。そうね、大人の魅力で迫ってみるのも良いわね。」

エリナさんとプルセルさんまで・・・

「ねぇ・・・その・・・恋人なら・・・キスとか・・・」

ユキナさんが少し恥らいながら聞いてきます。

「ええ、してますよ。」

あ・・・嫉妬の炎がユリカさん達を包んでいます。

「じゃぁ・・・夜とかは・・・」

さらに赤くなるユキナさん・・・

「一緒に寝ています。」

その一言でユキナさんの全身が赤くなります。

まぁ、一緒に寝ているだけですけどね・・・その先は・・・

「ユ、ユキナちゃん・・・その位にしておいた方が・・・ルリルリも・・・」

ミナトさんが顔を引きつらせながら言います。

「そうですね、ミナトさん。

そう言えば、ミナトさんも白鳥さんに会えるんで嬉しそうですね。」

「え〜そんな事・・・」

ミナトさん・・・顔を赤くしておいて何を言っているんですか。

「それに、お兄ちゃんから貰った指輪を大事に持っているしぃ。」

ユキナさんがミナトさんに言います。

「え〜、それじゃぁミナトさん・・・結婚するんですか?

えーっと、艦内の冠婚葬祭は艦長の私が取り仕切るんだから・・・」

「ミナトさん、私が司会をしましょうか?何度か、司会のお仕事した事ありますから。」

「結婚式に参列する時の衣装って、経費で落ちるのかしら?」

「エリナ・・・密かに新しい服、買おうと思っているでしょう。」

「ねぇねぇ、ウェディングドレスにするの?」

「俺は和装も似合うと思うぜ。」

「結婚・・・けっこんなことで・・・」

もう、みんな好きなこと言っています。

「ちょ、ちょっとみんな・・・」

「無駄ね。今までのパターンだと、このまま突っ走るわ。

で?本人の気持ちはどうなの?」

イネスさんがミナトさんに尋ねています。

「え・・・まぁ・・・その・・・白鳥さんの事・・・まだあまり知らないし・・・」

「でも、好きなんですよね?」

私はミナトさんに尋ねます。

ミナトさんはコクリと頷きました。

本当に、ナデシコで結婚式をするかもしれませんね・・・

 

 

 

1ヶ月ぶりに入った大浴場は、気持ちよかったです。

あれ?メグミさん・・・何してるんでしょう?

「・・・う・・・」

メグミさんの顔に青いものが走っていますね・・・

「ルリちゃん・・・」

「なんですか?」

私はメグミさんの側にいきます。

「これ・・・壊れてるんじゃないの?」

そう言ってメグミさんが指差したのは・・・

「2196年式の最新型体重計ですね・・・でも、壊れてませんよ。」

私が言うと、メグミさんはガクリと膝を付き深くため息をつきます。

「あれ?メグちゃん・・・太った?」

ザク・・・

ユリカさんの言葉がメグミさんを貫きます。

そう言えば、私も最近運動していませんでしたから、少し太ったかも・・・

「グス・・・だって、声優のお仕事再開してから不規則な生活になって・・・

どうしても外食が多くなるし、お菓子も現場に置いてあるし・・・」

「メグミさん・・・ダイエットしますか。」

私の言葉でメグミさんはゆらゆらと立ち上がり

「そうね、ルリちゃん・・・ダイエットしかないわ!」

「でも、太る時はお腹から太って、やせる時は胸からやせるって言ってましたよ。」

「ルリちゃん・・・それ地雷踏んでるよ・・・」

メグミさんが呟きます。

「でも、私の場合食べたら食べるだけ、胸ばかり大きくなるような気がするけどな。」

グサリ

ユリカさんの言葉に私とメグミさんは大ダメージを受けます。

「やせる薬ならあるわよ。」

「遠慮しておきます」

メグミさんは、イネスさんの申し出を一瞬で断りました。

イネスさんの薬ですよ・・・メグミさんも、まだ人間でいたいでしょうから・・・

「メグちゃん、ホウメイさんに頼んでダイエット食を用意してもらったら?」

「サウナで汗をたっぷりかくのも一つの手よ。」

ミナトさんとエリナさんがメグミさんに提案します。

「そ、そうですね・・・まだ間に合いますよね・・・」

「じゃぁ、サウナに行きますか。」

私は、牛乳を一気に飲み干してから言います。

「ええ、行きましょう。」

メグミさんの頭は、すでにダイエットしかありませんね。

「私たちも行く?」

「さすがに、これ以上ミスター達に代わって貰う訳には行かないでしょう。」

エリナさんとプルセルさんは戻るようです。

「私も、手の掛かる患者をベッドに寝かせてあるから。」

「クロロフォルムで眠らせたんですね。」

「何言ってるのかしら?」

私の突っ込みに、出来る限りの平静を保って答えるイネスさん。

「俺達も戻るぜ。アキト達にも休憩が必要だからな。」

「さりげなく、アキト君の事気にかけてるわね。」

「お〜、熱い熱い。」

「てめぇら!」

リョーコさん達は服を着替えると、口喧嘩しながら出て行きました。

「私とユキナちゃんは食堂に行っているわ。

一応、ユキナちゃんの監視があるから。」

「ミナトさんが、美味しいもの食べさせてくれるって言ってるから。」

そう言いながら浴場を後にしました。

 

 

 

サウナには、私とメグミさんとユリカさんが居ます。

「ルリちゃん・・・この戦争が終わったら、どうするつもりなの?」

ユリカさんが尋ねてきます。

「多分・・・アキトさんと一緒に暮らすと思います。

もう二度と、離れ離れになりたくないですから・・・」

「そっか・・・メグちゃんは?」

「声優のお仕事・・・放り出してきたんですよね・・・

許されるんだったら、もう一度声優にチャレンジしようかなって・・・」

「ユリカさんは、どうするんですか?」

「私は・・・アキトと一緒に屋台を引いて、小さなアパートで暮らして・・・

そんな事思っていたんだけど・・・」

「そんな事は私がさせません。」

「そうだよね〜、ルリちゃんがいるもんね〜。

そうだ!ルリちゃんも一緒に暮らそうよ!」

あの時の再来ですか・・・

「私は構いませんが、アキトさんは渡しませんよ?」

「う〜・・・ルリちゃんのいけず〜。」

でも・・・あの時私達は・・・家族でした・・・

ナデシコを降りても、ナデシコにいた時と同じ感覚・・・

ふと、懐かしいアパートの暮らしを思い出してしまいました。

「本当に戦争は終わるんでしょうか?」

メグミさんが不安そうに話しています。

「終わると信じています。同じ人間なんですよ。」

「そうですね、私達はそのためにココに居るんですよ。」

「そう・・・よね。」

それにしても・・・

「そろそろ上がりませんか?私はもう限界です。」

「そうね・・・メグちゃん、上がろうか?」

「ええ。」

私達はサウナを出ます。

軽く汗を流して、脱衣場に向かいます。

そこに・・・

『艦長、ブリッジまでお願いします。』

プルセルさんから通信が入ります。

「どうしたの?」

ユリカさんは制服を着ながら言います。

『まもなく、予定宙域に到達します。』

「わかりました。」

ユリカさんは通信を切ると、私を見て

「ルリちゃん、本当にこれで良かったのかな?」

「何が、ですか?」

「木星蜥蜴に家族を失った人達もいるんだよね?

その人たちの気持ちを考えると・・・」

「でも、これ以上の戦火はさらに多くの人を苦しめます。

それは木連の人達も同じです。」

「そうですよ、ユリカさん。」

私とメグミさんがユリカさんを励まします。

ユリカさんは意を決したように

「そうだね、私たちが頑張らないといけないんだよね。」

制服を着たユリカさんは先に行くからと言って出て行きました。

「メグミさん、私たちも急ぎましょう。」

「ええ・・・よしっ。

・・・メグミさん・・・小さくガッツポーズをしています・・・

ほんのちょっとでも、やせる事が出来たみたいですね。

 

 

 

 

 

ブリッジに戻ると、私はルビィと交代します。

白鳥さん達との合流点は、この辺りなんですけれど・・・

「ジュン君、各エステバリス隊を発進させてください。

ルリちゃんは・・・」

ユリカさんが言いかけたその時でした。

「前方に大型艦らしき反応2。」

「前方の大型艦より緊急通信です!

至急救援を請う・・・白鳥 九十九・・・です。」

スクリーンに拡大した映像には攻撃を受けている

ゆめみづきとかんなづきが映し出されています。

ダイマジンも数体出ているみたいです。

「ミナトさん、最大戦速!エステバリス隊緊急発進!」

ナデシコは全速力で白鳥さん達の所に向かいます。

アキトさん達は一斉に発進します。

「お兄ちゃん・・・」

「大丈夫だ。テンカワ達に任せるんだ。」

ジュンさんが、不安がるユキナさんに言います。

ユキナさんも小さく頷きます。

ナデシコが到着した時には・・・

機関部から爆発が起こり始めているゆめみづきと

脱出カプセルを、懸命に回収しているダイマジンとエステバリスの姿が見えます。

「何が・・・あったの?」

「だまし討ちでもされたのか?」

回収作業をしているダイマジンが一機、ナデシコに向かってきます。

『こちら、木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ・及び多衛星国家間反地球共同連合体優人部隊所属

月臣 元一朗少佐です。白鳥 ユキナちゃんは居ますか?』

どくん・・・

私の脳裏に、時々白鳥さんの写真を見て泣いているミナトさんの姿がよぎります。

「元一朗!お兄ちゃんに何かあったの!」

ユキナさんが月臣さんに問い掛けます。

『詳しい状況は後で説明する。九十九なら、とりあえずは無事だ。

それよりも、こちらの乗員を収容できないだろうか?』

月臣さんは険しい表情で言います。

「ナデシコはこの宙域に固定、救助活動の支援を行ってください。

イネスさん、お願いします。ウリバタケさんも格納庫を開放して、木連の人たちの収容を。」

『わかったわ、何人か手伝いを寄越して。』

『了解したぜ。』

イネスさんとセイヤさんが言います。

『感謝する。』

月臣さんが言います。

「メグちゃん、ミナトさん、ユキナちゃんはイネスさんの手伝いをしてください。」

その言葉でミナトさん達はブリッジを飛び出します。

「ゆめみづき、爆発します。」

「各員、衝撃に備えてください!」

その言葉の直後・・・ゆめみづきは大爆発を起こしました。

かなりの衝撃がナデシコを襲います。

揺れが収まると私達は各所のチェックに追われます。

『ユリカ、白鳥さんをそちらに運び込む。最優先で治療してくれ。』

え・・・治療って・・・

一つのカプセルがナデシコに到着します。

格納庫の映像では、診療台に移された白鳥さんが見えます。

・・・映像では詳しい事はわかりませんが・・・

右足は変な方向に曲がっていますし、左腕も・・・

頭のどこかを打ち付けたのでしょうか?血を流しています。

かなりの重体ですね。イネスさんとメグミさんが一言、二言、言葉を交わすと

手術室に運ばれていきました。

『こちら、アカツキ・・・かんなづきもかなりやばい状況だ・・・』

「かんなづきの人員まで収容できないよ」

ジュンさんが悲鳴を挙げます。

確かに、その通りです。プロスさんも頭を抱えています。

「でも、見捨てる事なんて出来ません。

全員収容してください!」

「ですが・・・艦長・・・」

こんな事態になるなんて・・・

『そこで・・・利用できるものは利用しようか。』

アカツキさんが意地悪く言います。

「まさか・・・アレを使うの?」

エリナさんが言います。ひょっとして・・・

『そう、ナデシコ4番艦・・・カキツバタ・・・ネルガルの月ドッグで最終調整中のはずだ。』

「でも、どうやって?」

ジュンさんが尋ねます。

『カキツバタは最低限の人間でも動かせるようになっている。

行くのは、テンカワ君とルリ君の二人で大丈夫だろう。』

「でも、マスターキーが・・・」

『これの事かい?』

アカツキさんが取り出したのはまさしくマスターキーです。

『カキツバタは、まだ生まれたてだから艦長も決まっていない。

これに艦長を誰にするか登録すれば・・・』

アカツキさんが私を見ます。

「私でも動かせる・・・

それって、ワンマンオペレーションシステムを前提として作ってあるみたいです。」

『鋭いねぇ、確かにその通りだよ。』

「善は急げです。ルリちゃん、大至急カキツバタを持ってきてください。」

「わかりました。」

「プルセルさん、今の話をアキトに伝えて。」

「了解。」

後の事はルビィに任せましょう。

私は格納庫に急ぎます。

格納庫にはブラックサレナが待機しています。

「ルリ、急ぐぞ・・・秋山さんも総員退艦命令を出したところだ。」

「はい。」

私はブラックサレナのコックピットに入ります。

このコックピットってちょっと狭いんですよね。

ですから、アキトさんの膝の上に座ります。

「行くぞ、アカツキの話だと俺達が前に使っていたところらしい。」

ユーチャリスの事ですね。だったら、アキトさんにもイメージ可能です。

「イメージはアキトさんに任せます。」

「じゃあ、行くぞ。」

私とアキトさんの体が光ります。そして・・・

 

 

 

 

ジャンプした先にはカキツバタが見えます。

「アキトさん、大丈夫ですか?」

「ああ、それより急ごう。」

「はい。」

私とアキトさんは、カキツバタに侵入します。

その時になって、ようやく警備システムが作動したようです。

けたたましい警報音が、ドッグ内に響き渡っています。

私達はブリッジに向かい、走っています。

でも・・・

「アキトさん、このお面って何時用意したんですか?」

「備えあれば憂い無しってね。それに、俺達は泥棒だからな。」

「確かに、そうですけれど・・・」

私とアキトさんは、セルロイドで作られたお面をかぶっています。

そのお面は・・・女好きで有名な大泥棒の3代目と

ナイスボディの持ち主でその3代目を虜にしている女性です。

正体を隠すためって言っても、ブラックサレナで来たんですから

バレバレじゃないでしょうか?

まぁ、後で警備システムに侵入して、今の映像を消去すれば良いだけなんですけどね・・・

途中で無人警備機が数回襲ってきましたが、アキトさんが銃で撃ち抜いて行きます。

「白鳥さんは如何してあんな怪我をしたんですか?」

「乗組員の退艦を指揮していたら、爆発に巻き込まれたんだ。」

「助かるでしょうか?」

「イネスを信じよう。」

そうですね・・・イネスさんなら・・・

「見えたぞ!」

アキトさんと私はブリッジにたどり着きました。

ブリッジ内は、新品のにおいがします。

シートにもまだビニールがかぶせてあります。

「ルリ、起動するぞ!」

アキトさんがマスターキーを差します。

「はい、カキツバタ起動。補助エンジン、始動開始。」

システムが次々に立ち上がっていきます。

「IFS伝達率をレベル10に上昇。警報システム・・・解除。

繋留策・・・解除。隔壁開放確認。」

「カキツバタ、発進。」

アキトさんの指示でカキツバタが発進します。

私は、艦内の全てをチェックします。

乗員・・・2名。

エステバリス32機

補給物資もかなりあります。

「ルリ、ジャンプするぞ。」

「でも、アキトさんの体に負担が・・・」

「大丈夫だ。俺を信じろ。」

「・・・はい。サポートします。」

私はカキツバタのシステムをフル回転させます。

オモイカネと違って、ちょっとゴツゴツしていますね。

「各ブロック、正常。相転移エンジン、異常なし。

ディストーションフィールド、出力全開。

光学障壁展開完了。

CC展開完了、ジャンプフィールド活性化。

全て準備完了です。アキトさん。」

「ジャンプ!」

私達は再び光に包まれました。

 

 

 

 

再び、ナデシコの元に戻った私達は

カキツバタに木連の人たちを収容すると、ナデシコに戻りました。

ナデシコでは、白鳥さんの手術がまだ続いていました。

会議室には、私たちと、秋山さん、月臣さん、高杉さんが居ます。

「話していただけますか?何があったのか・・・」

ユリカさんは秋山さんに言います。

「・・・私達は、クーデターを起こそうと計画していました。

ルリさんが、サブロウタに渡したディスクの内容もさる事ながら

もう一つの計画が納得できなかったからです。

その内容は、地球にコロニーを落す計画です。」

・・・コロニー落し・・・そんな事をすれば・・・

「地球に核の冬がくる・・・」

ジュンさんは青い顔をして言います。

「でも、そんな計画に我々は納得できませんでした。

そこで、クーデターを起こしてでも阻止しようとしました。

そこに居られるテンカワ殿にも協力していただきました。」

秋山さんがアキトさんをチラリと見ます。

「そして、クーデター決行の前です。

私達は演習と称してそれぞれの戦艦に乗り込み、

後は時を待つばかりでした。その時・・・」

秋山さんは、出されたお茶を飲みます。

「・・・草壁閣下の直属部隊が、我々を攻撃してきました。

我々を反逆者として抹殺するため・・・」

草壁の・・・直属部隊・・・まさか・・・

「奴らの戦闘力は異常でした。

同じ機体に乗っているはずなのに、機動力や反応速度が

けた違いなのです・・・」

サブロウタさんが悔しそうに言っています。

「何とか、緊急跳躍で難を逃れたのですが、見てのありさまです。」

秋山さんも悔しそうです。

・・・まさか、この短期間でそこまで進んでいたとは・・・

「ルリさん、お話しても宜しいでしょうか?」

プロスさんが私に言います。

私は、アキトさんを見るとアキトさんはゆっくりと頷きました。

「ええ、真実を話してください。」

「では、お話しましょう。

サツキミドリで、ミサキさん達が襲われたのは覚えていますか?」

「俺達がナデシコに乗り込んだときだろう?覚えてるぜ。」

プロスさんの問いかけにリョーコさんが答えます。

「その時、ネルガルの研究施設が襲われました。

大量の実験データと共に襲撃者は逃亡。

その時の実験データは、あるモノを作り出す実験でした。」

アカツキさんは嫌悪感たっぷりと言った表情で

「アレは表に出すべき技術ではないモノだ。

僕は何度も中止命令を送ったけれど、無視されつづけたんだ。」

「何を研究していたんです?」

ジュンさんが尋ねます。

「・・・ルリさんやラピスさんに代表されるように

マシンチャイルドの研究をしていたんです。

そして、サツキミドリにはルリさんの遺伝子情報と、細胞の一部が保管されていました。」

「そして、それを使って奴らはとんでもない事を考えついた。

・・・ルリの・・・能力を利用する事・・・」

アキトさんが私の肩を抱きながら言います。

「何のために?それに、どうやって?」

ヒカルさんが尋ねてきました。

「・・・我々はソフトウェアにおいて地球側に遅れをとっています。

そこで、考えついたのが地球側に存在する技術を利用する事・・・

たとえそれが、異端の技術でも・・・」

高杉さんが嫌悪感をあらわに話します。

「ネルガルは先代の時代に様々な研究をしていた。

マシンチャイルド、相転移エンジン、ボソンジャンプ・・・

その中で異端とも言うべき研究が一つあったんだ・・・」

アカツキさんが皆に話します。それは、ネルガルの闇の部分・・・

「ここからは私がお話しましょう。

現在のエステバリスに搭載されている火器管制システムなどの

ナビゲートシステム・・・これは、あくまでも人間が操作する事が前提です。

ですから、IFSという媒介を通してエステバリスに伝えていますが

パイロットの動態視力や反応速度で、機体性能が左右されます。

そこで、全てをナビシステム自体が考えて行動する・・・

そうすれば、人間が乗るよりも高機動の兵器が実現できる。

先代は、この話に飛びつきました。」

「そりゃぁ、パイロットを養成するより安上がりだからな。」

リョーコさんが言います。

「そうです、ところが一つ問題があった・・・

ナビシステムが思ったほどの性能を発揮しないのです。

理由は、あくまでもプログラムにそった動きしか出来ないので

熟練のパイロットとの模擬戦闘で、それは見事に負けてしまったのです。

先代はそれは激怒して、こんなガラクタに金をかけるのは止めだといって

その研究は打ち切りになったのですが・・・あきらめられない研究者は

ナビシステムそのものを根本的に見直し、有機物を利用した

バイオコンピューターを使ったナビシステムの研究を始めました。

そして、彼らの出した結論は・・・人間の脳を利用する事・・・

しかも、若ければ若いほど、そして優秀であればその能力を十分発揮できる・・・」

「そ、それって・・・」

ヒカルさんが恐る恐るプロスさんに次の言葉を促します。

「はい、子供の脳を使うのです。実際に何人か行方不明になった子供も居ます。

ですが、何度も子供を誘拐する事が出来なくなった研究者達は

当時、ネルガルが力を入れていたマシンチャイルドの研究に目をつけた。

そして、何者かによって、能力開発研究所が放火されました。

幸いにも、怪我人が出なかったのですが、紛失していたものがあります。

それが、ネルガルに引き取られて間もないルリさんの細胞でした。」

「そして、彼らはルリ君のクローンを作り出すことに成功した・・・

まさに、執念だねぇ。当然、その手の研究は僕が会長になった時から

中止している。でも、全てを僕らが把握していたわけではない。

実際、この研究はネルガルで行っていたものではないから

僕らはその存在自体を知らなかったんだ。」

アカツキさんは、身内の恥を全てさらしましたね。

「ネルガルじゃない・・・まさか・・・」

イズミさんは気が付いたようです。

「クリムゾングループだ。彼らもまた、ネルガルに対抗するために

新兵器の開発に余念が無かったのだろう。」

ゴートさんが資料を映し出します。

そこには、機動兵器の実験状況が映し出されました。

「て、事は・・・」

リョーコさんがハッと私を見ます。

「奴らがルリのクローンを作り出し、その脳をナビシステムに利用している。」

「しかも、大量に・・・」

ヤマダさんが青い顔をしています。

「そして、それらが実戦配備され始めた・・・そう見るべきだろう。」

ゴートさんが、まじめな顔をして言います。

「じゃあ、スメラギって奴は・・・」

「ナビシステムのオリジナルであるルリを狙っている。」

私の肩を抱くアキトさんに力が入ります。

「どちらにしても、ルリとラピスが狙われているのは間違いない。」

アキトさんが言います。

「どうするの?ユリカ・・・」

ジュンさんに尋ねられたユリカさんは、少し考えて

「とりあえず、今はコロニー落しを阻止するのが最優先事項です。

ルリちゃんとアキトは、木連の人たちと一緒にカキツバタに乗り込んでください。」

「了解しました。」

「カキツバタの艦長は秋山さんになってもらう。

それから、ウリバタケさんにカキツバタに搭載されている

エステバリスの改造を頼んでくれ。」

アキトさんが秋山さんに言います。秋山さんはゆっくりと頷きました。

「改造ならもうやってます。」

私は、カキツバタの格納庫に群がっている整備員の人たちを映し出します。

「・・・ウリバタケさんらしいな・・・じゃぁ、秋山さん達にナノマシン処理を。」

アキトさんがそう言うと、秋山さん達は

「か、体を改造するのか?」

「い、いや・・・まだ俺は人間でいたいし・・・」

「こ、ここは年の順と言う事で・・・せ、先輩方から・・・」

顔を真っ青にしています。しかも、順番を譲り合っています。

まぁ、地球の人たちですらナノマシン処理を嫌がる人が多いですからね。

「大丈夫ですよ、痛いのは一瞬ですから。」

私を筆頭にアキトさん、アカツキさん、ヤマダさんが注入器を持って迫っています。

その後・・・秋山さん達に、ナノマシン処理を受けてもらうのに1時間掛かってしまいました。

特に、サブロウタさん・・・散々逃げ回って捕まえるのに苦労しましたよ・・・

まぁ、逃げ込んだ先が女子更衣室だった、と言うのが運のつきでしたね。

この頃のサブロウタさんってまだ硬派でしたから・・・

鼻血を出して倒れていました。プルセルさんの着替えを見て・・・

 

 

 

 

 

「カキツバタ、発進。」

秋山さんの声がカキツバタのブリッジに響きます。

隣には、ティッシュを鼻に詰めたサブロウタさんと月臣さんが居ます。

「ナデシコの発進を確認。これより、我々はナデシコとの共同戦線を行う。

いかに、戦争とは言えルールはある。

民間人を無差別に攻撃するコロニー落しなど、もってのほかである!」

「我々には、我々の正義がある!我々の戦いは正義であったはずだ!

しかし、その正義を曲解した草壁閣下・・・いや、草壁に徳など無い!」

秋山さんと月臣さんがカキツバタ艦内に放送をしています。

結局、未だに手術が続けられている白鳥さんを除いて

重傷の人は月に送られました。

アカツキさんの紹介で《アルギュロス》付属の病院に送られました。

こうしてみると、結構大きい組織なのかな?

『秋山さん、白鳥さんの手術は無事成功したそうです。』

ユリカさんが通信に現れます。

「そうですか・・・感謝します。我々には、あの怪我を治せるだけの技術を持っていませんから。」

『ええ・・・それが・・・』

ユリカさんの表情が曇ります。

「どうしたのですか?一命は取り留めたのでしょう?」

『私から説明しましょう。』

「出ましたね、説明好き。」

イネスさんは、説明が出来るのが嬉しいのでしょうか?ニコニコしています。

『ルリちゃん、その事は後でゆっくり話すとして、先ず右足・・・

大腿骨が砕けてたわ。あと、膝から下が全て炭化していたわ。

左腕は肩口から肘にかけて全ての筋が断裂、

骨折も数十箇所・・・頭に裂傷・・・腹部に破片が突き刺さってたけど

こっちはたいした事無かったわ。

でも、回復の見込みが無い右足と左腕は切断させてもらったわ。』

「そ、そこまで酷い怪我だったんですか?」

サブロウタさんが言います。

『ええ、でも義手と義足は私とウリバタケ氏が、全力を挙げて製作させてもらうわ。』

『と言うわけで・・・白鳥さん・・・正真正銘の改造人間になります。』

『ちょっと艦長?その言い方は無いんじゃないの?

そりゃぁ、ロケットパンチとかウリバタケ氏なら作りそうだけど

私はそこまでマッドじゃないわ。ただ、開発中の最新型IFSを注入するだけだから。』

・・・イネスさん・・・白鳥さんで人体実験ですか・・・

『と言う訳だから、たとえ怪我しても息さえしていれば直して見せるから

安心して戦って頂戴。』

そう言うと、イネスさんは通信を切りました。

『あは、あははははは・・・』

ユリカさんも笑って誤魔化して通信を切ります。

「・・・とりあえず、ロケットパンチは実現しそうな感じですね・・・」

「・・・ああ・・・」

私とアキトさんは深くため息をつくのでした。

木連の人たちは、イネスさんとユリカさんの会話を聞いて、さめざめと泣いています。

「白鳥・・・尊い犠牲に黙祷。」

「九十九・・・俺はお前の事を忘れない!

「白鳥さん・・・ゴメンなさい・・・成仏してください・・・」

・・・結構薄情ですね・・・まったく・・・

「・・・バカばっか。」

でも、良かった・・・

ミナトさんの悲しむ姿を見たくありませんでしたから・・・

「ルリ、良かったな。」

「ええ、アキトさん・・・」

「何だ?」

「私・・・アキトさんの側にいて良いんですか?」

私は、アキトさんの胸に顔を埋めます。

「いまさら、何を言ってるんだ。

俺は、ルリと一緒だ。これからも、ずっとな。

俺がルリを護る・・・」

「・・・はい・・・」

コロニー落し・・・何としてでも阻止しなくては・・・

ナデシコとカキツバタは、戦場へと向かっていきました。

 

 

 

 


 

ルリ:ごくごく・・・

作者:牛乳飲んでるよ・・・

ルリ:少しでも、アキトさんを喜ばせたいですから。

作者:そう言えば、アキト君の周りって巨乳が多いよね。

ルリ:・・・死にたいですか?

作者:え、遠慮しておきます。

ルリ:白鳥さんもついに改造人間ですか・・・

作者:い、いや・・・そうと決まったわけでは・・・

ルリ:ルビィを出した時にも、色々な改造案があった見たいですね。

作者:ああ、結局メモ帳の片隅に設定資料が残っているけれど・・・

ルリ:没にしたんですよね。

作者:だって、目からビームが出て小型のディストーションフィールドを展開して・・・

ルリ:そこまで行くとサイ○ーグ009の世界ですね。

作者:でも、今回はやっちゃいそうな気がする・・・

ルリ:義手でディストーションアタックとか?

作者:さすがにそこまでは・・・フィンガーランチャーとか・・・

ルリ:本当にやりそうですね。

作者:で、出来るだけ穏便に済まそうかと・・・

ルリ:それは出来ないでしょう。

作者:でも、話の流れから行くと白鳥は最後までベッドの上だと思う・・・

ルリ:そうですね・・・いくらご都合主義とは言え、1日2日じゃ義足なんて出来ないでしょうから。

作者:そう言うこと。それでは、次回 機動戦艦ナデシコ Re Try 第25話 『私らしく』自分らしく です。

ルリ:コロニー落しですか・・・どうやって阻止するんですか?

作者:・・・考えてない・・・

ルリ:・・・まぁ、何時もの事ですからね・・・

 

 

・・・九十九が生身でゲキガンパ〜ンチ!ウリピーなら男のロマンだって言って付けるだろうな・・・

 

 

 

代理人の感想

損傷部位からすると左腕に電磁ナイフ、右足にミサイルランチャー、とどめに腹部の

内蔵ヒ□シマ型原爆、というのがオーソドックスなところでしょう(爆)。←ナニが

 

それはさておき、優人部隊の人たちは既に「B級ジャンパー手術」を受けているはずなので

改造人間ネタならそこらへんについても一言欲しかったところですね。

 

後、九十九の艦の名前は「ゆめみずき」ではなく「ゆめみづき(夢見月)」です。(修正済み)

 

>言い返せませんでした

言い返せよ(爆)。

 

 

 

>ルリクローンによるナビシステム

・・・・グ○ミーの量産NT部隊(爆)?

いや、そうするとオリジナルであるところのルリは「ルリルリルリルリルリルリルリルリルリルリ〜♪」

と走り回らなければいけなくなるか(爆)