前回と違う歴史を歩んでいる

私とアキトさん。

この先の事はわからないけれど

アキトさんとずっと一緒に進みたいと

最近は思うようになってきたわけで・・・

 

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ Re Try 第11話 気が付けば『お約束』

 

 

 

 

 

 

私たちは今、中央アジアを飛行中です。

「クルスク工業地帯・・・私達が生まれる前には陸戦兵器の生産でにぎわっていたところよ。」

あ・・・なんだか久しぶりに、キノコの声を聞いたような気がします。

そう言えば前回、浜辺に置き去りにしたのですが

クリムゾンより航空便で送りつけられてきました。

流石にクリムゾンも扱いかねたみたいです。

まぁ、クール宅急便で送りつけたのは

ダンボールに要冷蔵と書かれていたからなのでしょうが・・・

よっぽどダンボールが好きなんですね。

「そのクルスク工業地帯を、木星蜥蜴の奴らが占拠したの。

その上奴等と来たら、見た事の無い兵器を配置したわ。」

・・・ナナフシ・・・マイクロブラックホールを形成することが出来る超兵器・・・

「その新兵器を破壊する事が、今回の任務という訳ですね。提督。」

ユリカさんがキノコの台詞を奪います。

「ええ、そうよ。司令部ではナナフシと呼んでいるんだけれど・・・」

私は監視衛星からハッキングして盗み出したナナフシの映像を

ナデシコのメインスクリーンに映し出します。

「今まで軍が行った破壊作戦は3回。

何れも全滅しているわ。」

「なんと不経済な・・・」

プロスさんが何やら計算しています。

この人の考える事って良くわかりません。

「そこで、このナデシコに・・・優秀な私達に命令が下ったのよ!」

この人の頭も出世欲というより親への劣等感でいっぱいなのでしょうね・・・

私はキノコの親を知っていますが、少なくともこんな我侭では有りません。

まぁ、皆さんこう思っているでしょうね。

親の顔が見てみたい・・・

でも、そっくりの顔の割には中々したたかな人物です。

優秀な軍人だと思いますし、尊敬出来る人物だと思います。

その所為でしょうか?キノコがここまで出世に固執するようになったのは・・・

「そこで、グラビティブラストの出番!」

ユリカさんが明るく言います。

「そうか、遠距離射撃か。」

ゴートさんが言います。

確かに有効な手段だと思いますが・・・

「その通り!」

ユリカさんがブイサインを出しています。

「安全策ね。」

エリナさんが言います。

「経済的側面からも賛同します。」

プロスさん・・・また計算してます。

グラビティブラスト使うんだったら経費は掛からないと思うんですけれど・・・

「わざわざエステバリス隊を出す事も無いな。」

ジュンさん・・・恐らく出す事になると思いますよ。

「そうなればパイロットも危険な目にあわなくてすみますね。」

メグミさん・・・それはアキトさんの事を言っているのですか?

「アキト君も危険な目にあわないと言った方が良いんじゃないの?」

ミナトさん・・・焚き付けないで下さいよ。

「じゃあ、グラビティブラストで敵を殲滅しちゃいましょう。」

ユリカさんがあくまでも明るく言います。

「良いんですか?このままで・・・」

私はアキトさんに小声で話し掛けます。

・・・なぜアキトさんがここにいるかと言うと

私とラピスがアキトさんに出前を頼んだからです。

一応、パイロットを兼任しているアキトさんは、ブリーフィングに参加しなくてはならないため

今はブリッジにきていますが、

『どうせブリッジに来るんだったら出前を持っていくよ』

と言うアキトさんの言葉に甘えちゃいました。

隣ではラピスがチキンライスを頬張っています。

「そうだな、一応警告だけはしておくか・・・」

そう言うとアキトさんは、ユリカさんにナナフシの特性を警告しようとしましたが

『ナナフシに高エネルギー体検知。』

ルビィの一言と同時にナデシコが大きく揺れ、

そのまま落ちていきました。

前回より射程が延びているのでしょうか?

「あ、言い忘れていたけれど軍が失敗したのは

強力な対空防衛システムによって迎撃されてたからなの。」

言うのが遅いですよ。

「・・・歴史どおりだな。」

「ええ、ちょっと違いますけれどね。」

私とアキトさんは逆らえない運命と言うものを感じていました。

 

 

 

 

 

 

 

「あのナナフシにはディストーションフィールドを簡単に貫通する威力を持っている

マイクロブラックホールを利用したレールカノンを装備しているみたいね。」

いきなり説明を始めたのはイネスさん。

パイロットとブリッジ要員が集められたナデシコの会議室。

普段使う事が無かったのですが、イネスさんがどうしてもここを使いたいと言って

無理やり皆を集めました。

・・・こういう所で説明がしたいだけでしょう・・・

ちなみに私達は今、不時着したナデシコを修理中。

『こっちだって忙しいんだから余計な仕事を造らないでくれ!』

そう愚痴をこぼしたのはセイヤさん。

でも忙しいって・・・

「は〜い、しつも〜ん!」

ヒカルさんが手を上げます。

「なに?」

「どうして、パイロット全員が呼ばれたのか、そろそろ説明してくださ〜い。」

ヒカルさん・・・元気ですね。

「ナナフシの移動能力は皆無、若しくは極小って所ね。

でも、特筆すべきはその攻撃力。

マイクロブラックホールを利用したレールガンの威力は

ナデシコのディストーションフィールドを一瞬で無力化したわ。

それに、第一撃目は空に向かって撃ち出したから実害はほとんど無いけれど

もしこれが地上に向かって発射されたら・・・」

「一瞬でおじゃん、と言うわけやな。」

「どんなに厚い装甲を持っていても無意味だねぇ。」

「どうするのよ?」

カズマさんとアカツキさんの会話を聞いたアヤさんがイネスさんに尋ねます。

「先程も言った通りナナフシの移動能力は皆無、若しくは極小よ。」

「そこで、エステバリスによる強襲作戦を提案します。」

ユリカさんがイネスさんの後の言葉を取ります。

イネスさん・・・台詞が取られたからっていじけないで下さい。

「ナデシコの重力波が届かなくなるんじゃねぇか?」

流石にリョーコさんです。エステバリスの事をよく理解しています。

「お兄ちゃんのブラックサレナだったら、最後までバッテリーが持つんだけれど

他のエステバリスだとバッテリーがもたないわ。」

・・・もう、何も言いません。イネスさん、復活・・・早いんですね。

「私としてもアキトに全てを任せたいんだけど

万が一失敗したときを考えると

より確率の高い作戦を提案せざるを得ません。」

「どうするんです?」

ミサキさんが更に尋ねます。

・・・イネスさん、幾ら説明のやり放題だって言っても喜びすぎです。

説明に命かけてますね。

「エステバリス隊を2手に分けて、ナナフシの攻撃とナデシコの防衛を担当してもらうわ。

当然、ナナフシの攻撃には最も攻撃能力がある

お兄ちゃんのブラックサレナに参加してもらうわ。」

「となると、ナデシコの防衛は誰がやるかだな。」

アキトさんが皆を見回します。

「ここは男性陣が攻撃で、女性陣が防御と言う事でどうだい?」

アカツキさんが提案します。

「何でだよ!俺達が信用なら無いって言うのか!」

リョーコさんがアカツキさんに抗議しています。

「そうよ、アカツキ君。私達がそんなに信じられないの?」

「そうね、私達だってリョーコにはまだ及ばないけれどそれなりに訓練してきたのよ。」

アヤさんとミサキさんがアカツキさんを責めています。

「・・・単刀直入に言おう。この作戦では1昼夜テンカワ君と同じ時間を過ごすことになる。

そうなるとリョーコ君やミサキ君はどうするつもりだい?」

アカツキさん・・・単刀直入に言いすぎです。

それに二人とも・・・何だか変な妄想モードに突入していませんか?

顔を紅くさせて遠い目をしています。

「せやな、アカツキの言う通りや。ま、ここはワイらに任せとき。」

「あんたが一番信用できないのよ。」

アヤさんが少し拳を震わせています。

「どうやら決まりみたいね。お兄ちゃんについていくのは

アカツキ君とヤマダ君とカズマ君ね。

荷物持ちはカズマ君で良いかしら?」

イネスさんがテキパキと決めいきます。

「あぁん?荷物持ちって何や?」

カズマさんが不審な顔をしています。

「大事な任務だよ。」

アカツキさんがカズマさんの肩を叩いて言います。

・・・バッテリーを持ち歩くんだから

確かに大切な任務では有るんですけれどね。

 

 

 

 

 

ナナフシ攻撃準備が進むナデシコの格納庫。

むせるような油の匂いとセイヤさんの怒鳴り声。

ホウメイガールズがパイロットに戦闘食を配っています。

私はアキトさんに決して見栄えは良くないですが

私が握ったおにぎりを渡します。

「じゃあ、行って来るから。」

「はい、気をつけてください。」

私とアキトさんは軽くキスをすると

アキトさんはブラックサレナに向かっていきました。

「あ、アキトは?」

ユリカさんが何やら怪しい風呂敷に入ったものを持って私に尋ねます。

「たった今出撃しましたけれど?」

「え〜!折角お弁当作ったのにぃ。」

・・・ユリカさん・・・さっき少しでも成功する確率を取ろうって言っていた人が・・・

自ら確率を下げてどうするんです!

「ユリカさん・・・ホウメイさんの許可は得たんですか?」

「うん、ホウメイさんは艦長に教える事は何も無いって・・・」

・・・さじを投げたって事ですね・・・

さすがのホウメイさんもユリカさんに料理を教える事は出来なかったようです。

「あら、ここにいたの。」

そう言いながら現れたのはエリナさんとプルセルさん。

「どうしたんです?」

私はとりあえずプルセルさんに尋ねます。

この人が私に用事があるなんてよっぽどの事だと思ったからです。

以前、私とアキトさんが恋人同士だと知ったときは結構落ち込んでいたようですが

それなりに結論付けたようです。

・・・愛人としてなんて事は無いですよね・・・

「実は・・・PFNって言葉に心当たりある?」

・・・PFN・・・ですか・・・

私はしばらく考えますが思い当たる事がありません。

「いいえ、解りません。」

「私も〜。」

私とユリカさんが否定するとエリナさんは私達から目線をそらし何事か

考えていたようですけれど、やがて意を決したように話し始めました。

「実は、艦内でこのPFNって言葉が飛び交っているのよ。」

エリナさんが言います。

「それに伴って大量の資金が流れているようなの。」

プルセルさんが私に資料を見せてくれます。

「・・・資金の流れを詳しく調べないと解りませんが・・・」

「どうやら、ウリバタケを中心としているみたいなのよね。」

・・・あれ?どこかで聞いた事の有るような・・・

「そし、私達が入手した情報によるとこのPFNの次には

RとかYと言う言葉が付いて来るんです。

つまり、PFNRとかPFNYって感じに・・・」

はて?何でしょう?この心に引っかかるもやもやは・・・

「う〜ん、わからないわねぇ。

ルリちゃんは何か知っているの?」

「どうしてそう思うんですか?」

「だってルリちゃんはナデシコのシステムを管理しているんだよ?

そのルリちゃんが知らないって言うのは・・・」

そうですね、私に掛かればナデシコクルーのプライバシーなんて

有って無いような物ですから・・・

でもユリカさん・・・本当に知らないんです。

「ゴメンなさい、本当にわからないんです。

さっき、オモイカネに検索させたのですが少なくとも

システム上にはそのような単語はありませんでした。」

エリナさん達は少し肩を落しました。

当然、ナデシコのシステムを管理している私と

ナデシコでの最高責任者であるユリカさんがわからないと言っているのですから

エリナさん達にしても他に頼るべき人物がいないっと言った心境でしょう。

「あ、イネスさんには聞いたの?」

「ええ、真っ先に聞いたわ。

でも、あの人も知らないって言っていたわ。」

・・・イネスさんが知らないと言う事は私達の歴史とは違う出来事が

ナデシコの艦内で起こっているということですか・・・

アキトさんがいない今、私しか居ないじゃないですか。

「エリナさん、私もお手伝いします。」

「え、いいの?」

「はい、私は今、ラピスと交代していますのでヒマなんです。」

私はエリナさん達に向かい言います。

「じゃあ、私はこのまま他のクルーに聞き込むわ。

プルはもう一度PFNの意味を調べて。

ホシノ=ルリは艦内のデータを全てチェックして。」

そのくらいなら1時間も有れば終わります。

「解りました。」

「後、艦長はブリッジに居なさい。」

エリナさんがコメカミに青筋を立てながら言います。

「え〜っ。どうして〜?」

・・・この人は艦長としての自覚ってあるんでしょうか?

「あんたしか、あの提督の相手が出来る人っていないでしょう?

プロスペクターとゴートはどっか行っちゃってるし。」

「は〜い。」

確かにあのキノコが相手では

ジュンさんやメグミさんにミナトさん、ラピスが可哀想ですね。

ユリカさんはトボトボとブリッジに向かっていきました。

 

 

 

 

 

 

 

「ルビィ。」

私はエリナさん達と別れた後、自分の部屋に入り

ルビィを呼び出します。

『なに?ルリ。』

ルビィは赤い光と共に表れます。

・・・今回はチャイナ服を着ていますね・・・

白い布地に青龍が描かれています。

「PFNと言う項目について各個人のプライベートフォルダを検索してください。」

『了解。』

ルビィはその瞳をさらに紅く光らせ

その髪はゆらゆらと虚空を漂っています。

私がナデシコCで火星を掌握したときのように

ルビィの周りには紅い光が漂っています。

・・・他人から見れば、私もこんな風に見えるんですね・・・

私はしばらくルビィの姿に見とれていました。

『ルリ、検索完了。』

「どう?」

『主に男性クルーが使用しているみたいです。』

「・・・その意味なんかは解りますか?」

『いえ、そこまでは・・・』

ふむ、ルビィでも解らないとなると・・・

「ルビィ、ウリバタケさんのファイルは全て検索しましたか?」

『はい、しかしPFNが何であるかを示したものは有りませんでした。』

・・・ウリバタケさんじゃないのですか・・・

「ありがとう、エリナさん達にいったん食堂に集まりましょうと伝えてください。」

『了解。』

・・・それにしても、PFN・・・何でしょうか?

 

 

 

 

 

 

食事時を過ぎ、閑散としているナデシコ食堂・・・

ここにはエリナさん、プルセルさん、ユリカさん、アヤさんが集まっています。

「私達が集めた情報によると

女性のクルーはPFNの事を何も知らなかったわ。」

エリナさんが言います。

「私もルビィに調べてもらいましたが男性クルーしか

このPFNと言う単語を扱っていませんでした。」

私も報告します。

「資金の流れをもう一度洗いなおしたところ

ウリバタケさんの使途不明金がこの所

増大しています。無論、許容範囲内ですので

今まで問題視されていませんでしたが・・・」

プルセルさんも資料を出して説明します。

「私もジュン君に聞いてみたんだけれど

露骨に避けるのよねぇ。」

ユリカさんも困った顔をしています。

「そうですか。アヤさんは何か知りませんか?」

プルセルさんがアヤさんに尋ねます。

「解らないわね。あのバカだったら思い出すまで

小突き回すんだけれど、他のクルーでやったら死んでしまうでしょうから。」

・・・確かに・・・ゴートさんであれば、その防御力で何とか耐えれるかもしれませんが

他のクルーにアヤさんが襲い掛かれば瞬殺されてしまうでしょうね。

『艦長、至急ブリッジにきてください。』

その時、メグミさんから通信が入りました。

「どうしたの?メグちゃん。」

ユリカさんが尋ねるとメグミさんは短く

『敵が迫っています』

とだけ答えました。

「艦長、今は目の前の敵に対応する事を考えましょう。」

私はユリカさんと一緒にブリッジに向かい走り出しました。

後ろからはエリナさんとプルセルさんも一緒に走ってきています。

アヤさんは格納庫に向かい走っていきました。

 

 

 

 

 

 

「状況は?」

ユリカさんはブリッジに駆け込むなり言います。

「ラピス、メインスクリーンに投影。」

私もブリッジに入ると同時にラピスに言いました。

「状況投影。周囲は敵でいっぱい。」

見るとそこには戦車が大量に迫ってきています。

「ミナトさん、相転移エンジンの調子は?」

「まだ無理よぅ。」

ミナトさんがお手上げのポーズを取ります。

「エステバリス各機にナデシコの防御をお願いしてください。」

ユリカさんが言うと

『もうやってるよ。』

と言う声と共にリョーコさんの顔がアップで現れました。

「リョーコさん、敵戦車のデータを転送します。

それからユリカさん。」

私はリョーコさん達が相手をしている戦車のデータをリョーコさん達に送ると

ユリカさんの方を向きます。

「どうしたの?ルリちゃん。」

「私が今から敵にハッキングを仕掛けます。

少しでもリョーコさん達の負担を減らします。」

「出来るの?」

私はコクリと頷きます。

「ただし、オモイカネの全能力を使用しますから

どんな影響があるか判りませんけれど・・・」

電子戦に特化したナデシコCであれば

これだけの敵は容易に掌握できるのですが

現在のオモイカネの能力では一部分しかハッキング出来ないでしょう。

それに・・・

「判ったわ。」

「ラピス、サポートしてください。」

私はラピスにサポートをお願いします。

「うん。」

ラピスは短く答えます。

私はオモイカネにアクセスすると

そのまま敵戦車隊に取り付いているバッタにハッキングを開始しました。

・・・まあ、非常時ですしコミュニケが使えなくなったり

イネスさんがエレベーターに閉じ込められたり

ウリバタケさんの乗っていたリフターが突然暴走したのは

あくまでも事故です。

私のハッキングにより戦車隊の一部が、私達の味方になってくれたお陰で

リョーコさん達は大して苦労せずに残りの戦車隊を撃破し、

最後は私が味方になった戦車隊を同士討ちさせることで

戦闘は終了しました。

「大丈夫?ルリルリ?」

ミナトさんが声をかけてきます。

私の額にはビッシリと汗が吹き出ています。

「ええ、大丈夫です。

ラピス、後は頼みます。

私は少し休みますから・・・」

「うん、わかった。」

私はふらつく足元を気にしつつ、自室へ戻っていきました。

そして、部屋に入ると倒れ込むようにベットに横たわりました。

 

 

 

 

う・・・ここは・・・ブリッジ・・・ですか?

確か・・・私は部屋で休んでいたはずですが・・・

「PHR・・・ですか?」

ユリカさんが言っています。

え?なんでしょう・・・

「私は艦内の流通を管理していますので・・・」

プロスさんまで・・・どうしたんでしょう?

何があったんですか?

私はそう声をかけようとしましたが声になりません。

「え〜!これ、ジュン君が作ったの?」

ミナトさんが驚いています。

これは・・・

「あ、やっぱりウリピーが作ったんだね?これ。」

ヒカルさんが私を指差しています。

・・・もしかして・・・

「どうだい、キャストの魔術師ウリバタケ=セイヤ作。」

自慢げに話している、セイヤさん・・・・

これは・・・夢・・・ですね。

私もいます。

「それでですか。お風呂場に隠しカメラが仕掛けてあったのは。」

夢の中の私が言います。

・・・はっきり思い出しました。

PHRはパーフェクト・ホシノ・ルリの略号。

セイヤさんが作り出した私の1/1フィギアです。

 

 

 

 

 

私はそこで目がさめました。

ベットに置いてあった時計を見ると眠りについてから

すでに3時間が経過しています。

私は少しべとつく汗を流すため・・・

そして、夢に出てきた事を確認するために

お風呂場に向かいました。

たしか・・・

有りますね。

物凄く巧妙に隠されていますが隠しカメラです。

「ルビィ。」

私はルビィを呼び出すと、この監視カメラの画像データの落とし先を調べてもらいました。

『・・・ルリ、落ち着いて聞いて。』

「なんです?」

『この画像データの行き先はウリバタケ氏のシークレットフォルダと

アキトの個人フォルダに落とされてる。』

・・・アキトさん・・・

『ルリ?ルリ?』

・・・どういう事・・・ですか・・・

『あのね、ルリ。』

・・・帰ってきたら・・・

『ルリ?お願い、最後まで・・・』

「ルビィ。」

『はい!』

ルビィは私の鬼気迫る勢いに押されたのか

少し画像が乱れています。

「この画像データを全て消去して。あと、ウリバタケさんの

シークレットフォルダ内のデータも全て消去して。」

『すべてですか?』

「そうです。」

『未視聴の映画や編集途中のプログラムなどもありますが・・・』

「す・べ・て。」

私は一音ずつ区切って言いました。

『は、はい。』

「それから、ユリカさん、メグミさん、ミナトさん、エリナさん、プルセルさん

アヤさん、リョーコさん、ヒカルさん、イズミさん、イネスさん、ミサキさん

ラピスに大至急ここに来るように連絡してください。」

『了解。』

そう言うと一瞬で消えていきました。

全てを確信しました。

セイヤさんは1/1スケールのフィギアを作っています。

以前、私が送ったナデシコ女性クルーの身体データと

ルビィのデータのみならず、お風呂場に隠しカメラを仕掛けて・・・

以前、セイヤさんに送ったデータには

エリナさんやミサキさんのデータは含まれていませんでしたから

その隠しカメラでデータを取って、フィギアを作ったんですね。

そして、それを販売しているのがプロスさん。

制服はジュンさんが作成している・・・

私はセイヤさんの部屋を検索して、それらしい物体を発見しました。

「どうしたの?ホシノ=ルリ。」

「皆さんに真実をお伝えしようと思いまして。」

エリナさんが尋ねてくると私は先程から考えていた事

そして、それを裏付けるセイヤさんの部屋の様子を説明しました。

・・・イネスさん、なに拗ねているんですか。

「・・・このことが事実だとすると・・・」

ユリカさんは頬を膨らませています。

この人が怒っているときの癖ですね。

「確かに許せないわね。」

ミナトさんも少し怒っています。

「それで?俺達にどうしろと?」

「そうだよ、少なくともアキト君たちが帰って来ない限り

どうしようもないよ。」

「同じ思想を持つものもいない・・・同士もない・・・くくっ。」

イズミさん・・・最早何も言いません。

「所でこの隠しカメラのデータはどうしたの?」

ミサキさんが尋ねてきます。

「真っ先に消去しました。

幸いな事に、盗み撮りした映像は流通していなかったようです。」

「良かったぁ。」

メグミさん、何ホッとしているんですか。

「良くないわ。ルリちゃんの話が本当だとすると確実に一人は

私達を見ていたと言う事になるわ。

まぁ、お兄ちゃんに見られたのは別に構わないけどね。」

イネスさんの一言で皆さんハッとなります。

「そうです、フィギアを作った本人は確実に私達の入浴シーンを見ているのです。

・・・アキトさんは・・・多分見ていないでしょうけれど・・・」

私が少し冷静になって考えて、そう結論付けました。

「アキトは端末の操作をあまりしないから・・・

ルリ姉の所に操作方法を聞きに来る位だものね。」

ラピスが補足説明します。

皆が頷いています。

「と、なると残るは・・・」

「ウリピーだね。」

シリアスイズミさんとヒカルさんが言います。

「・・・アヤさん・・・殺っちゃって下さい。」

ユリカさんが拳を握り締めながら言います。

「そうね、確実に悪だわね。」

アヤさんはその手にもっている朱鞘の日本刀を目の前に持ってきます。

なんてカッコいいんでしょう。同性の私から見てもカッコいいです。

「ちょっと待ってください。一応、あれでもナデシコの整備班班長です。

居なくなっては私達が困ります。」

「泣き寝入りするの?」

・・・ラピス・・・何処でそんな言葉を覚えてきたんですか・・・

「いいえ、ここは一つ・・・」

私は皆さんに有る事を提案しました。

「そうね、それだったら私達も納得するわ。」

エリナさんが代表して言います。

「では早速・・・」

私達は行動を開始しました。

 

 

 

 

 

「ちょっと、あんた達何処に行って・・・い・・・た・・・のよ・・・」

ブリッジに戻ってきた私達は早速喚きたてるキノコを黙らせると

真っ直ぐにジュンさんとプロスさん、ゴートさんに詰め寄りました。

「な、何ですか?おそろいで・・・」

「今は戦闘配置中だぞ。」

プロスさんとゴートさんが私達を見て言いますが

私達の発している気に押され気味です。

「プロスさん、PFN・・・どれだけ売れましたか?」

「・・・何の事でしょう?」

あくまでもしらをきると言うのですね・・・

「証拠はすでに挙がっています。」

プルセルさんがプロスさんにナデシコ内の資金流通データを提示します。

私達はセイヤさんの部屋から完成品と思われる1体を持ってきました。

・・・私のですけれどね・・・

「・・・全て知っている・・・そう言うことですか。」

「はい。」

「ふう、わかりました。」

「問題の品は全てこちらで処分させていただきます。」

エリナさんがプロスさんに言います。

「仕方有りませんな。」

・・・これでプロスさんは落ちましたね。

次はジュンさんですか。

「ジュン君、一体どういう事なの?」

ユリカさんが問い詰めます。

「い、いや・・・制服を作ってくれたら一体、好きなのをやるって言われて・・・」

「え〜!じゃあ、ジュン君があの制服を作ったの〜?」

ミナトさんが驚いています。

「ジュン君は昔っからお裁縫上手だったよね。

ユリカのお裁縫の宿題をジュン君がやってくれたんだよね。」

・・・ユリカさん・・・そこまで家事全般の能力値はゼロに近かったのですか。

「ゴートさんはプロスさんとの仲介をしていたのね。」

ミサキさんが問い詰めます。

一応、ミサキさんの上司にあたるわけですよね。

でも、格闘能力で言えばゴートさんの実力は

ミサキさんやアヤさん、私には及びません。

まぁ、ゴートさんは格闘家というより諜報員としての能力が

優れていますから・・・

「い、いや・・・その・・・すまん。」

「へ〜、ミスターが謝るなんて珍しいわねぇ〜。」

ミナトさんが、からかいます。

そう言えばこの時はこの二人付き合っていたんですね。

・・・ミナトさんの趣味を疑います・・・

「後はウリバタケの身柄を確保するのよ。」

エリナさんが言います。

ちなみにキノコは私達の一睨みで完全にあっちの世界に旅立ちました。

『お〜い、ブリッジ。相転移エンジンの修理が終わったぞ〜。』

丁度そのとき、セイヤさんの通信がブリッジに入りました。

「ご苦労様です。」

メグミさんが普段は見せないような笑顔でセイヤさんに言葉を返します。

『お、メグミちゃん。今日は一段と笑顔が綺麗だねぇ。』

「あ、解りますぅ?」

『おう、で?何があったんだい?』

セイヤさん・・・すでに死刑執行書にサインをしているんですよ。

「それはですねぇ・・・」

メグミさんがその言葉を発すると

セイヤさんの後ろにリョーコさん、ヒカルさん、イズミさん、アヤさんの4人が立っていました。

『ウリバタケ・・・てめぇ・・・』

『ウリピー、お風呂覗いてたって本当?』

『男らしくないわね・・・』

『斬られたときは痛みは感じないわ。』

リョーコさん達がセイヤさんに近寄ります。

アヤさんに至っては抜刀術の構えを見せています。

『な、何の事だ?お、俺は知らないぞ!』

『問答無用!』

アヤさんの放った一撃はセイヤさんには届きませんでした。

しかし、その剣に氣を篭めていたのでしょう。

セイヤさんはガクリと倒れこみました。

『はい、ご苦労様。ここからは私に任せて頂戴。』

そう言いながらセイヤさんを医務室に運ぶイネスさん。

『おう、後は頼んだぜ。それにしてもアヤ、おめぇの腕はすげぇな。』

リョーコさんがアヤさんを誉めています。

確かに、アキトさんが一目置いているだけあります。

 

 

 

「エステバリス攻撃隊の機影確認。」

プルセルさんが報告します。

「ナナフシ、予定通り撃破されている。」

ラピスの報告でナデシコをアキトさん達の所に向かわせるミナトさん。

見ると、アキトさんの機体は無傷。

アカツキさんの機体は左腕が取れています。

ヤマダさんとカズマさんは共にエステバリスに乗っていません。

相当、激しい戦闘があったみたいですね。

それでも皆さん無事だったとは。

「アキト達を回収後、この空域から離脱。」

「了解。」

私達はアキトさんを回収しました。

「アキトさん。」

私はアキトさんに通信を入れます。

『なんだ?』

「医務室に・・・来て頂けますか?」

『医務室?ああ、良いけど。』

・・・私達は無言で医務室に向かいます。

その間、ナデシコはオモイカネによる

自動運転になっています。

 

 

 

 

 

「ルリ、何かあった・・・の・・・か・・・」

医務室に入ってきたアキトさんは私たちを見て

半歩ほど後退りしました。

「アキトさん、こちらに来て下さい。」

医務室に居るのは主な女性クルー。

「あ、ああ。」

アキトさんは医務室中央にある椅子に座り

その周りを私たちが囲みます。

「さて、アキトさん。PFNって知っていますか?」

「いや、知らない。」

「本当に?」

「ああ。」

「イネスさん。」

「ええ、お兄ちゃん。これを見て。」

そう言ってイネスさんが見せたのは

セイヤさんが作ったPFNシリーズ。

・・・ユリカさんと私のですね・・・

セイヤさん・・・忠実に再現しすぎです!

もうちょっとこう・・・胸を・・・

「こ、これは・・・」

「本当に知らなかったの?」

エリナさんが問い掛けます。

「ああ。」

ふむ・・・やはりアキトさんはシロみたいですね。

「ところでアキトさん。お風呂場に隠しカメラが仕掛けてあったんですけれど・・・」

「え?」

「その隠しカメラの映像は全てアキトさんのフォルダに落とし込まれています。」

「ど、どういう事だ?」

アキトさんは明らかに驚いています。

アキトさんの性格からして隠し事をするような人では有りません。

本当に何も知らなかったようですね。

「ルリちゃん、アキトは何も知らなかったようだね。」

「ええ、そうみたいですね。」

ユリカさんの言葉に私は答えます。

「でもお兄ちゃん、言えば私と一緒にお風呂に入る事なんて出来たのに。」

「な、何を言っているんだ!」

「あ〜ら、昔はよく一緒に入ったじゃない。」

・・・どういう事ですか?

私はアキトさんをギロリと睨みます。

「い、いや・・・その・・・」

「む〜、私もアキトと一緒にお風呂に入る〜!」

「そうですよ、アキトさん。一緒にお風呂に入りましょう。」

「お、俺は別にいいけどな。」

「ユリカさんたちは一緒にお風呂に入りたいと言っていますし

ここは私達と一緒にお風呂に入らないと収集がつきませんよ。」

私はアキトさんに言います。

アキトさんは訳もわからず頷いていました。

皆の氣に押されたみたいですね。

 

 

結局、私とユリカさん、メグミさん、リョーコさん、イネスさん

エリナさん、プルセルさん、ラピスがアキトさんと一緒にお風呂に入りました。

まぁ、水着を着けていましたけれどね。

今度は二人っきりで温泉なんていいですね。アキトさん。

 

 

 

 

ちなみに、第三者の視点では

『なんや、まるで強制連行されるみたいに連れて行かれおって・・・

恐ろしゅうて、近寄れんかったしアキトの奴に声も掛けれんかったわ。』

とはカズマさんの言です。

 

 

 

 

「さて、アキトさん。」

「何だ?」

私の部屋にはアキトさんとイネスさんが居ます。

「先程の事です。」

「ああ、一緒にお風呂に入ったって事ね?」

イネスさん・・・よく分っていますね。

「そうです、納得のいく説明をしてください。」

この言葉をイネスさんに言うと、本人の意思とは関係なく

懇切丁寧に教えてくれます。

こういう時は便利ですね。

「いいでしょう、説明しましょう。」

イネスさん・・・嬉しそうですね。

「あれは、お兄ちゃんがシャトル事故の後

救出作戦が成功して私が看病していた時の事よ。」

前の歴史での事ですね。

「そのときのお兄ちゃんは目も見えず耳も聞こえず

・・・五感の全てを奪い去られていたわ。

私は先ずお兄ちゃんと話をするために、耳の治療に取り掛かったの。

幸いにもすぐに回復の兆しが見え始めていたから

治療自体は簡単だったわ。」

そう言えばアキトさんがラピスとリンクするまで、どうしていたのか聞いた事はありません。

それに、聞きたくありません。

時が来ればアキトさんが話してくれると思っていたからです。

「そのときにお兄ちゃんと一緒に、お風呂に入ったの。」

・・・そうだったんですか・・・アキトさんが治療をしている途中で・・・

「・・・ちょっと待ってください。」

「なぁに?」

「と言う事はイネスさんは、アキトさんの体に触り放題だったと言う事になりますよね。」

「そう言えば・・・ごそごそと音は聞こえていたな。

そのときはまだ感覚が戻っていなかったから・・・」

私とアキトさんがイネスさんに問い詰めます。

「え、え〜っと・・・あ、私ウリバタケさんの治療があるから

じゃあ・・・」

そう言うと一瞬で私の部屋から居なくなりました。

「・・・もしかして・・・」

イネスさんは治療と言いました・・・

「か、考えるのはよそう・・・」

アキトさんも同じ結論のようです。

「「人体実験なんて事は無いよな(ですよね)」」

私とアキトさんはしばらく恐ろしい考えで頭がいっぱいでした。

 

 

「・・・アキトさん。アヤさんから伝言です。

稽古に付き合って欲しいと。」

イネスさんが謎の言葉を発して去っていった後、私はアキトさんに言います。

「・・・アヤさんが?」

「ええ、それからヒカルさんはベタ塗りを手伝って欲しいと。

イズミさんは稽古に付き合ってくれとそれぞれ伝言がありました。」

アキトさんは少し青い顔をして

「・・・イズミさんの稽古って・・・」

「・・・私はあまり考えたくありません。」

「・・・キャンセルは・・・」

「出来ないと思ってください。

たとえアキトさんが、私達の入浴シーンを見ていないと言い張っても

証拠としてアキトさんのフォルダに、データが入っていたのですから。」

「ウリバタケさんとアカツキの仕業だろうな。」

「ええ、ですからセイヤさんはイネスさんの実験室に行きましたし

アカツキさんにはエリナさんからのプレゼントが

それぞれ用意してあります。」

アキトさんは少し顔をヒクつかせながら

「・・・あの二人・・・良い奴だったな・・・」

「まだ死んでいませんよ。」

すでにアキトさんの中では、二人は遠いお星様になっているのでしょう。

「じゃあ、行ってくるよ。」

「誰の要望から聞きますか?」

どれをとってもただでは済まないと思いますけれど・・・

アヤさんの稽古は最早、稽古ではなく死合と言った感じですし

ヒカルさんの手伝いをすると間違いなく徹夜になりますし

イズミさんは・・・何も考えないようにしたいですね・・・

「・・・どれをとっても酷い目にあうような・・・」

「頑張ってください。」

アキトさんは意を決したように立ち上がり

私の部屋を後にしました。

 

 

・・・その後1週間ほどアキトさんは再起不能になりました。

 

 

 

おまけ

 

 

『え、エリナ君・・・この仕事の山は・・・』

『あら、あなたが望んでいると思っていたんだけれど?』

『・・・何があったんだい?』

『PFN・・・あなたの悪巧み・・・

全て露見しているわ。』

アカツキさんはがっくりと項垂れます。

「どうやら、後二週間は缶詰ですね。」

「エリナ・・・楽しそう・・・」

ラピスもしっかりアカツキさんの部屋をモニターしています。

「ねぇ、ルリルリ。ウリバタケさんはどうなったの?」

「あ、見てみます?」

そう言うと私はイネスさんの実験室を映し出します。

『さて、今日はどんな薬を使おうかしら。』

『・・・ら・・・らめれるれ・・・ろう・・・』

・・・ベットに固定されたセイヤさんに

イネスさんは嬉しそうに注射器を構えています。

セイヤさんはすでに呂律が廻らなくなっています。

「す、凄い事になっているような・・・」

「ああ見えてもイネスさんは優秀な医者です。

ちゃんと死なない程度に押さえてありますよ。」

「そ、そう。・・・ほ、程ほどにね・・・」

そう言うとミナトさんは自分の仕事に戻りました。

ちなみに

アカツキさん・・・2週間分の仕事

セイヤさん・・・イネスさんの実験室行き

ジュンさん・・・一週間の洗濯係り

プロスさん・・・経費で私達の服を買ってもらう

(結局経費を使うことを拒んだプロスさんの自腹で服を買ってもらいました。)

ゴートさん・・・壊れたリフターの代り

カズマさん・・・アヤさんの練習台

もちろん皆さんPFNに関わった人たちばかりです。

『ちょー待てぃ!ワイは無実や!』

『あんたが何もしていないなんて事は無いわ!』

・・・カズマさん・・・ご冥福をお祈りします。

 

 

 

 

おまけ2

 

 

「あれ?ガイは今回何もしなかったのか?」

「おぉ!アキト!見てくれよ!」

そう言うとアキトさんを自分の部屋に連れて行きます。

私も気になったので付いて行きました。

「見てくれよ!ウリバタケの旦那が材料を分けてくれたんで

作ってみたんだ!」

そう言うと私たちに見せたのはゲキガンガーのジオラマ。

「すごいな。ガイにこんな特技があったなんて。」

「いやぁ、そうでもないさ。

どうだ?アキトにも何か作ってやるぞ?」

・・・確かに素人の私が見てもたいした腕です。

あ、これなんかは海燕ジョーが夕日の中死んでいった時の

ゲキガンガーのジオラマですね。

ホントは死んでいなかったってお話でしたけれど・・・

「お、そいつが気に入ったのか?」

ヤマダさんは私に向かって言います。

「いえ、それにしてもヤマダさん。

大した腕前ですね。」

「ああ、ゲキガンガーの世界を忠実に再現した博物館でも

作ってみたいよなぁ。」

ヤマダさん・・・遠い目をしています。

「そ、そうか・・・そうだ、ガイ。

ナナコさんのフィギアは作れるか?」

「あ、ああ。お安い御用だけれど・・・

ついでにアクアマリンも作ろうか?」

「頼むよ。」

アキトさん、子供みたいです。

あれ?ヤマダさんの部屋の隅に・・・

これって・・・私がヒカルさんの手伝いをした同人誌じゃ・・・

「ヤマダさん、これ・・・」

「おお、ヒカルの奴が持ってきて感想を聞かせてくれって・・・

タッチがすばらしいんだよな。ヒカルの奴、将来漫画家になれるぜ。」

そうです、よくわかりますね。

「ただ、ベタが少し荒いんだよな。そこさえ直せば・・・」

「それ、私です。」

気まずい沈黙があたりを包みます。

「・・・ほ、ほら。ルリも久しぶりにベタ塗り手伝った奴だろ?」

「久しぶり?以前もこんな事やってたのか?」

「い、いえ。私の知り合いが売れない漫画家だったんで・・・」

私達は慌ててその場を取り繕うと、逃げるようにヤマダさんの部屋を後にしました。

「あ、危なかったですよ。アキトさん。」

「す、すまない。ゲキガンガーを見て懐かしい気持ちがあったから・・・つい。」

「ふう、でもあの同人誌・・・ヒカルさんは

誰にも見せるつもりは無いからって言っていたんですけれど・・・」

どういう事なのか判らないまま、私とアキトさんはその場を後にしました。

 

 

 

おまけ3

 

 

「で、ミナトさんがお願いしたのがこれですか。」

私はミナトさんに、食堂まで来て欲しいと言われ食堂にやってきました。

そこにはテーブルに並べられた料理の数々。

テーブルの横にはアキトさんが立っています。

「そう、一度アキト君の料理を思いっきり食べてみたかったんだよね。

しかも、アキト君のおごりで。」

ミナトさんはアキトさんにウィンクします。

「そうですか。それで、私を呼んだ理由は・・・」

「もちろん、一緒に食べるためよ。」

そう言うとミナトさんはワイングラスを傾けます。

ミナトさんにワインを注いでいるのはアキトさんです。

「ほら、そんな所に突っ立っていないで座りなさいよ。」

「はい。」

そう言うと私はミナトさんの対面に座ります。

「じゃ、いただきま〜す。」

ミナトさんが明るく言います。

「アキトさん、頂きます。」

「ああ、ゆっくりして行ってくれ。」

そう言うとアキトさんは厨房に消えていきました。

私達はアキトさんが作った料理を心行くまで味わい

楽しい食事をしました。

たまには、ミナトさんと一緒と言うのも良いですね。

私の・・・頼れるお姉さんですから・・・

 

数日後、ラピスとアヤさんがアキトさんに私たちと同じように料理を頼んでいました。

その後も、色んな人がアキトさんに料理を頼んだので結局、アキトさんは皆に料理を作ってあげたそうです。

 

 


 

 

ルリ:こう来ましたか。

作者:PHRのネタがわからない人は小説版ナデシコを読もう。

ルリ:思い余って私だけでなく他のメンバーまで作っちゃいましたか。

作者:以前、ウリバタケに渡したデータがどうなったかの続編みたいなものだから・・・

ルリ:最近ではジュンさんよりアカツキさんやカズマさんが不幸になっているような気がするのですが

作者:気のせい。

ルリ:それに某同盟のやり口を思い起こさせるのですが・・・

作者:それも気のせい。

ルリ:そうですか。では、アキトさんはPHRをもちろん手に入れていますよね。

作者:いや、本文でもあるようにアキト君はPFNシリーズの存在を知らなかったから・・・

ルリ:そうですよね。実物があるんですからアキトさんもPHRに頼る事は有りませんね。

作者:さりげなくR指定な発言をしないで・・・

ルリ:では次回、機動戦艦ナデシコ Re Try 第12話 あの『忘れ得ぬ日々』 私が大活躍する話ですね。

作者:TV版でもルリちゃんサーガ第2段だったからな。

ルリ:世間一般ではオモイカネの反乱と言われていますが

作者:そうだよな〜。ルビィがすでにオモイカネの自我として動いているからなぁ

ルリ:どうするんです?

作者:今回の話に続いて大ピンチって所かな。

ルリ:まぁ、私の一人称を使っている限り私の出番がなくなるなんて事は・・・

作者:・・・

ルリ:有るのですね。

作者:い、いや・・・ルリ様を出さない事は無いと思うけれど・・・

ルリ:けど?

作者:犠牲になるキャラは過去最高だろうなって・・・

ルリ:すでに台詞どころか存在すら忘れ去られているホウメイガールズよりましです。

作者:何とかしたいんだけれどね・・・

 

・・・少ない犠牲で大が生きるんだ!・・・って訳には行かないよね・・・

 

 

 

代理人の感想

kitaさんの作品もそうだったけど、ガイって時々器用ですよね(笑)。

あっちではコスプレの衣装、こっちではフィギュアとジオラマ。(これはガイらしいと言えなくもないですが)

 

 

>存在すら忘れ去られているホウメイガールズ

……まぁ、彼女達はキャラというよりは書割に近い存在ですし。(核爆)