めでたく?捕らわれの身になった私とミナトさん・・・

ミナトさんと白鳥さんの幸せの為に

人肌・・・じゃなくて一肌脱がさせていただきます。

・・・イズミさんと同じレベルですか?

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ Re Try 第16話 『僕達の戦争』が始まる

 

 

 

 

 

私たちは、脱出ポッドの少ない推進剤で、フラフラと月面を飛んでいます。

「ねぇ、ルリルリ・・・」

「なんですか?ミナトさん。」

「どうして付いて来ちゃったの?」

「ミナトさんを一人にして置けませんし、私も興味がありますから。」

ミナトさんは私のお姉さん代わりですから、ミナトさんの結婚相手は

自動的に私の義兄と言う事になりますね。

「そう・・・それより白鳥さん。」

「は、はい!」

「そんな格好じゃ辛いでしょう?座ったらどう?」

白鳥さんは椅子から腰を浮かして私たちと触れないようにしています。

当然、空気椅子の状態ですから、足がカクカク震えています。

「ふ、婦女子の体に触れるなんて・・・そんな・・・」

「照れてるの?か〜わい〜い。」

そう言うミナトさんは白鳥さんの背中をツンツンと指で突付いています。

「あ、そ、そんな・・・」

そんな時、リョーコさんの顔がドアップで現れました。

『おい!聞こえるか!こんちくしょー!』

何か、ちょっとゆがんだ顔になています。

「な、なんと・・・面妖な男が・・・」

『何だと!このー!』

『まぁまぁ・・・』

画面の端からリョーコさんを諌めたのは・・・

「アキトさん!」

『ルリ・・・』

アキトさんが私を真っ直ぐ見ています。

「アキトさん、私はミナトさんを一人にするなんて出来ません。」

『・・・分った。気をつけろ・・・」

アキトさんは私に任せてくれるようですね。

『アキトさん!連れ戻さなくて良いんですか!』

イツキさんの声が聞こえます

『ああ、ココから先は敵の勢力圏だ。長居は無用だ。』

画面越しにイツキさんがこちら・・・と言うより白鳥さんを見ています。

「この二人は大切な客人として、我々が迎える事になります。ですから、心配は無用です。」

『当然だ。その二人に何かあって見ろ・・・お前を・・・殺す・・・

アキトさんは白鳥さんを睨んでいます。

「・・・心して置く・・・」

アキトさんと白鳥さんは暫く睨み合っていましたが、やがてアキトさんは通信を切りました。

「相変わらずアキト君ってルリルリ一筋ね〜。」

ミナトさんが私を突付いています。

「そ、それにしても・・・イツキさん・・・何故、白鳥さんを見ていたんでしょう?」

「そうね、何だか怖い目をしてたわねぇ〜。」

白鳥さんは、アキトさんの雰囲気に押されたのか、ぐったりしています。

「な・・・なんて底知れない男だ・・・通信越しとはいえプレッシャーを感じた・・・」

「今のがルリルリの恋人よん。」

白鳥さんが、クビをギギイと私のに向け

「こいびと?」

凄く不思議な顔をしています。

「ええ、そうですよ。」

私の言葉で白鳥さんは言葉をなくします。

やがて・・・

「しかし・・・どう見ても君は・・・」

「・・・私、少女ですけれど女性でもあるんですよ。」

まぁ、ミナトさんたちにとって見れば12歳なんて微妙な年だと思っているんでしょうが・・・

私の精神年齢って19歳なんですよね・・・

「まぁ、アキト君は19歳、ルリルリは12歳だから無茶な年齢差じゃないわよね〜。」

「は、はぁ・・・」

「それよりも白鳥さんには、そう言う人っていないの?」

「え?」

「ステディな女性。」

「じ、自分は・・・」

白鳥さんはミナトさんを見ています。

「ハ、ハルカさん・・・」

「ミナトで良いわよ・・・」

二人の距離がゆっくりと近づいていきます。

「着きましたよ?」

・・・ひょっとして私ってお邪魔虫でした?

二人は真っ赤になってそっぽを向いていました。

時々、私がそばに居るって事・・・忘れているんじゃ有りませんか?

 

 

 

白鳥さんが艦長をしている、戦艦ゆめみづきにやってきました。

「お帰りなさい、艦長!」

「お帰りなさい!」

「ありがとう。」

白鳥さんが、出迎えの兵士の人たちに挨拶をしています。

「そちらの方たちは?」

「この二人は客人だ。二人の部屋を用意しておいてくれ。」

「了解しました!」

木連の兵士は、敬礼をすると小走りに走っていきました。

「艦長、先程から月臣少佐と秋山少佐がお待ちです。」

「わかった、すぐに行くと伝えてくれ。」

そう言うと、白鳥さんは私たちを見て

「あなた達はここにいて下さい。すぐに部屋のほうへ案内いたします。」

「白鳥さんは?」

「これから、親友達と話があります。」

「宜しければ、私たちも一緒に行って宜しいですか?」

「あなた達が?・・・しかし・・・」

私の申し出に戸惑っている白鳥さん。

「あなた達の歴史・・・ミナトさんにも知っておいて欲しいんです。」

私はさらりと爆弾を落します。

「君は・・・一体・・・」

「どうせ、話すつもりだったんでしょう?それなら、早いほうが良いじゃ有りませんか。」

こう言えば白鳥さんも折れざるを得ないでしょう。

「あ、そう言えばルリルリって、白鳥さんを見てもあまり驚かなかったわよね?

最初から知っていたの?」

「ええ、ある程度は・・・」

「何処でそんな・・・」

「後でお話します。それよりも、行きましょう。」

私は白鳥さんを促します。

 

 

私たちは、道場らしい所に連れてこられました。

木連の戦艦には、こう言ったところが必ずあります。

何でも、木連軍人は常に鍛えていなくてはならないから、とか言う理由らしいですが

違う目的で使っている人もいたようです。

酷いのになると、部下をストレス発散の為に、いじめたりしていたらしいですけどね。

「おお、九十九!無事だったか。」

「元一朗!貴様もな!」

白鳥さんと月臣さんが肩を叩いて喜び合っています。

月臣さんはチラリとこちらを見て

「でかしたぞ!九十九!捕虜を連れてくるとはな!

こいつらを尋問して地球側の情報を・・・」

「まて、元一朗。この人たちは客人だ。」

「客人?」

「ああ、俺の脱出を手伝ってもらった。」

白鳥さんがチラリとこちらを見ます。

「始めまして、私はホシノ=ルリ。そして、こちらがハルカ=ミナトさんです。」

「よろしく〜。」

ミナトさんは、いきなりの展開について行っていないのか、白鳥さん達に手を振っています。

「おい、九十九!どう言うことだ!貴様、こんな女とガキに・・・」

ドゲシィ!!

「殴りますよ、それに私・・・少女です。」

私の一撃を受けて月臣さんが吹き飛びます。

「もう殴ってるだろう・・・しかし、油断していたとは言え元一朗を一瞬で・・・」

「この方に逆らわないほうが良い・・・俺達3人がかりでも勝てるかどうか・・・」

秋山さんと白鳥さんは、青ざめています。

月臣さんは・・・まだピクピクと痙攣していますね・・・

 

復活した月臣さんを交えてようやく話が再開しました。

「ところで、この場所にいるのは・・・」

「この5人だけだ。部下達には近寄らないようにしてもらっている。」

「いえ、もう一人いるじゃないですか・・・」

秋山さんの顔が強張ります。

「そこにいるのは判っています・・・出て来て下さい。」

「艦長・・・バレてたみたいですよ。」

そう言いながら天井裏から現れたのは、硬派な高杉さん。

・・・何処をどうやったらあんなに軟派な性格になったんでしょう?

左手には銃を構えていました。

「天井裏ってあったんだ・・・」

ミナトさんが感心しています。

木連では、偉い人たちを護衛する人物は、天井裏に潜むのが決まりらしいです。

・・・木連って・・・妙な所です。

「まぁ、あなたも話に参加していいでしょう。」

「貴様、一体何者なんだ?」

月臣さんがいきり立っています。

「落ち着け、元一朗。九十九の客人だ。」

秋山さんが月臣さんを押さえています。

私はチラリとミナトさんを見て、

「ミナトさんは、この人たちの歴史を知りませんでしたよね?」

「ええ、でもルリルリ・・・あんた、どうしてそんなこと知っているの?」

「軍のコンピューターを覗いていた時、知ったんです。」

「それって犯罪行為だよ?」

ミナトさんは笑いながら言います。

「まぁ、ヒマでしたから・・・では、ミナトさんに説・・・お話しましょう。」

はぁ、はぁ・・・危なかった・・・

迂闊にあの呪文を唱えるとあの人が・・・

白鳥さん達は怪訝な顔をしていますね。

すぐに理由はわかりますよ。木連と地球の和平が成立したら・・・

 

とりあえず、私はミナトさんに木連の歴史を話すことにしました。

何時の間にか、人数分の座布団とお茶が用意されていました。

私たちは輪になり、真中にはお茶菓子が用意してありました。

・・・このお茶・・・美味しいですね・・・煎れ方が上手なんでしょう。

後で、このお茶を煎れた人・・・紹介してもらいましょう。

「100年前・・・月で独立運動が起こりました。

その頃はようやく火星への進出が始まり、テラフォーミングの実験が繰り返されていました。

そして、人間の生活圏が宇宙にまで広がると、それまであった国家間の対立が

地球とそれ以外・・・月を中心としたコロニー群へと移ったんです。

この辺は歴史の教科書にも乗っていますよね?」

ミナトさんは頷きます。

「しかし、月は自治区と言う扱いのため、地球としても独立運動に介入できませんでした。

そこで、地球側は月の独立運動に介入し、月を独立派と共和派に分裂させたのです。

それにより、月の独立運動は内部抗争に発展しました。」

「へぇ、そんな裏事情があったんだ・・・」

ミナトさんはそれほど驚いた様子も無く言いました。

確かに、月の独立運動が内部分裂で瓦解した歴史は、教科書にも載っているみたいです。

内部分裂の背後に、地球の影がちらついているのは、少し頭が回る人であれば容易に想像がつきます。

「内部抗争に敗れたのは独立派でした。

共和派には地球からの援助がありましたから、当然の結果です。」

白鳥さん達は黙って聞いています。

「そして、独立派の人たちは、月から追放されて火星へと逃げ延びました。」

「ちょっと・・・その頃の火星って・・・」

「はい、テラフォーミングが開始された直後です。人間が生活できたのは

一部の実験設備でした。この人たちの祖先は月にも・・・地球にも・・・

コロニーにも見放されたのです。」

「コロニーにも?」

ミナトさんが疑問に思っているようですね。

「コロニーは、月と地球の抗争には不介入を決め込んでいましたから・・・

火星に逃げた独立派は、最早巻き返す力もありませんでした。

そのまま、新たなユートピアとして火星で暮らすつもりだった彼らに・・・」

「あろう事か、連合宇宙軍の奴らは核を撃ち込んだのだ!」

月臣さんが拳を震わせて言います。

「事前に地球側の意図を察した一部の人たちは、辛うじて木星圏に逃れたのだ。」

秋山さんは腕を組みながら言います。

「そして、そこで我々は100年の歳月をかけて国家を建設しました。」

「ちょ、ちょっと待ってよ・・・辛うじて逃げたわりには

簡単に国家が出来たわね・・・資材だって不足していたんでしょう?

それが今では地球側と戦争してる・・・どう考えてもわずか100年で・・・」

さすがミナトさんですね。

「我々が木星に逃げた時には資材はほとんど無くこのままでは全滅と言うところでした。

しかし、木星のヘリウムと水素の奥にアレを発見したのです。」

「アレ?」

「我々は単に『遺跡』と呼んでいます。人類以外の古代文明が残した遺跡です。」

「その文明については我々は何も解っていません。

しかし、その遺跡を調査・研究する事により次元跳躍の技術を手に入れたのです。」

「次元跳躍?」

「ボソンジャンプの事ですよ。」

私はミナトさんに耳打ちします。

「遺跡に残された技術は、オーバーテクノロジーと言っても過言では有りませんでした。

しかし、その技術によってガニメデやエウロパのテラフォーミングや食糧生産、

惑星間航行・・・そして、次元跳躍門や重力波砲・・・遺跡によって手に入れた技術です。」

「この技術を使って我々は、卑劣な地球の奸物に正義の鉄槌を下すため

日夜、戦いつづけているのです。」

高杉さん・・・やっぱり未来の姿が想像できません・・・

あの人は道楽の間に戦いをしているような人でしたから・・・

「卑劣って・・・言い方があまりにも酷くない?」

ミナトさんが文句を言っています。

「無理もありませんよ、ミナトさん・・・そもそも、この戦争が始まったきっかけは

この人たちの使者を暗殺した事から始まったんですから。」

「え?」

「・・・何処でそれを・・・いや・・・何も聞くまい・・・

我々は100年の禍根を断つべく、地球側に和平交渉の使者を送った。

過去の事は水に流し、我々を国家として認識して欲しいと・・・

しかし、交渉は決裂に終わったどころか、使者の乗ったシャトルが謎の爆発を起こしたのだ。」

秋山さんがミナトさんに事情を話します。

「そ・・・そんな事・・・」

「出来ますよ。企業にとって戦争は金のなる木ですからね。

交渉に参加していたのは、軍の一部高官とクリムゾングループです。

ネルガルには、この話は最初から無かった事にされていたようです。」

「じゃぁ、火星の人たちは・・・」

「犠牲になったのです。さて、ここまでは木連の人たちなら誰でも知っている話です。

ここから先は私たちが独自に調査した事です、」

私はそう前置きすると、白鳥さんたちを見ます。

「さて、最初にどうして火星に逃げ延びた人たちの一部は

地球側が核攻撃を準備している事を知ったのでしょう?」

「それは・・・」

白鳥さん達が言葉を詰まらせます。

「木連では、この事はあまり知られていないようですね。

火星に逃げ延びた人たちの中にも色々な派閥がありました。

このまま火星に永住して、自分達の国家を作ろうとする穏健派の人たちと

地球側に対してテロ行為を持って報復しようとする急進派の人たちです。

穏健派の人たちにとって見れば、急進派の意見はせっかく得た安住の土地を

再び奪われかねない、と思ったはずです。

そこで、穏健派は連合宇宙軍に何とかしてもらおうとしましたが、地球側は核を使って歴史の裏を知る者達ごと

葬り去ろうとしました。その事を知った穏健派の人達は火星から逃げ延びたのです。」

白鳥さん達はビックリした顔をしています。

無理もありませんね。この事は、ナデシコCでアキトさんを追いかけている時に、偶然手に入れた情報ですから・・・

「そして、その生き残りの人達が今の木連を作り上げたのです。

当然、急進派の人達は国家を作り上げる上で犠牲になったのです。」

「犠牲?」

ミナトさんが良く判らないといった顔をしています。

「はい、地球側は自分達を月から追い出し、せっかく逃げ込んだ火星に対し

核で攻撃、逃げ延びた人達を虐殺した。自分達はこの事を忘れてはならない・・・

てな感じで情報操作をしたのでしょう。」

「それって・・・」

「ええ、復讐は人を良くも悪くも生きる目的にする事が出来ます。

とても悲しいことですけれどね・・・」

私はアキトさんを思い出します。

「その事は我々の調査でも明らかになった。今更、公表は出来んがな・・・

そこで、過去の事は水に流して共存していこう、と言う事で和平の使者を

地球側に送ったのだ。」

秋山さんが言います。

「では、本題に入ります。その使者ですが・・・現在の木連最高責任者は誰です?」

「草壁中将閣下だ。・・・まさか!」

白鳥さんがハッとなります。

「お気づきですか・・・使者に立ったのは草壁と反目している人ではありませんか?」

「・・・確かに・・・だが、草壁中将閣下ともあろう方がそんな・・・」

月臣さんが呆然と呟きます。

「考えても見てください、いかに和平交渉だからといって

護衛を付けないと言うのは、おかしくありませんか?」

「・・・言われてみれば・・・」

高杉さんも、思い当たるふしがあるのでしょう。考え事をしています。

「地球側が破壊工作をしたのは確かです。

でも、それはクリムゾングループと一部の軍高官が行ったことです。

証拠は既につかんでいますから後は、あなた方との和平交渉が成立した後に

公表すれば良いだけになっています。」

秋山さんは腕組みをして目を閉じていましたが、やがて

「ルリ殿・・・この話は聞かなかった事にして頂きたい・・・」

「どうしてだ?源八郎。」

白鳥さんが秋山さんを見ています。

「九十九・・・この話は口外無用だ。だが、心には留めておく。

草壁閣下が本当に正義かどうか・・・見極めてから行動したい。」

「はい、でも時間は余りありませんよ。

地球側は既に相転移エンジン搭載型の戦艦を次々に投入しています。

木連にとって脅威ではありませんか?」

「確かに・・・当初は我々が優勢だった・・・」

「何を言うか!九十九!我々の正義の心が負けるはず無いだろう!」

月臣さんが白鳥さんを叱咤します。

「木連の正義って何ですか?」

「先程も話した通り、卑劣なる奸物どもを地球から駆逐して・・・」

「駆逐した後どうすんの?戦争やってるのよ!罪も無い人たちが・・・

大勢苦しんで・・・それでも戦争やるの?」

ミナトさんの言葉が冷たいものになっています。

「ミ、ミナトさん・・・」

白鳥さんが狼狽しています。

「ミナトさん、白鳥さん達にも考える時間が必要です。

今すぐ何とかなる問題ではありません。」

「・・・そうね。ゴメン、ルリルリ。」

私の言葉に普段の冷静さを取り戻したミナトさん。

どうやら、大丈夫みたいですね。

「でも、ミナトさんが言っている事も事実です。

罪の無い人たちが、これ以上苦しむのであれば私とアキトさんは、容赦しません。」

「心しておく。」

秋山さんの一言でその場は解散となりました。

 

 

私達は、高杉さんによって艦内を見学しています。

「女の人は居ないんですね。」

「婦女子は、銃後に居るべき者です。」

「あら?男女差別?」

ミナトさんが少し刺のある言い方をします。

「い、いえ・・・そんなつもりは・・・」

「ミナトさん、この方たちと私達の考え方は、根本的に違います。」

「そうみたいね。」

高杉さんは、ブリッジまで案内してくれました。

ブリッジには白鳥さん、月臣さん、秋山さんが揃っていました。

私の姿を確認すると、秋山さんが近づいてきて言います。

「結論から言おう。我々はルリ殿の話す言葉を100%信じるわけには行かない。」

「そうでしょうね。」

しれっと言う私に苦虫を噛み潰したような顔をする月臣さん。

「しかし、九十九・・・俺達の親友を助けてくれた事には感謝をする。」

「良いんですよ。」

「そうよ、困った時はお互い様ってね・・・あ、私たち戦争しているんだったわね。」

ミナトさんが舌をペロッと出して笑います。

周りの皆も、ミナトさんにつられて笑っています。ミナトさんの笑顔って皆を幸せにする事が出来るみたいです。

この人たちと戦争してるって気分にさせません。

「艦長、コピー完了しました。」

ブリッジに若い士官が入ってきました。手にはディスクを持って・・・

「どうだ?」

「それが、大変綺麗な画像で・・・」

白鳥さんの部下が喜んでいます。

「九十九・・・何の事だ?」

秋山さんが不思議な眼で見ています。

月臣さんは何か察したのか、急に

「まさか・・・そいつは・・・」

「ああ、イネスさんが白鳥さんに渡したゲキガンガーのディスクですね。」

「あ、あの時の・・・」

白鳥さんを助け出す時に、イネスさんが渡してくれたゲキガンガーのディスクです。

でも、何でイネスさんがゲキガンガーのディスクを?

「ま・・・まさか・・・マボロシの・・・」

「ああ、しかも全話完全版で、劇場版もあるぞ!」

「すっげ〜!」

「マジかよ!」

ブリッジでは歓声が上がっています。

まるで子供みたいです。

「よーし、皆!配置につけ!」

「どうしたの?いきなり・・・」

ミナトさんが白鳥さんに聞きます。

「済みませんが、我々の任務は月で極秘に建造中の、相転移炉式戦艦の破壊です。」

「でも、あそこにはまだナデシコが!」

「慙愧に耐えません・・・しかし、任務を果たさないと我々が粛清されます。」

「でも!」

ミナトさんが白鳥さんに尚も食い下がります。

「いいですよ、攻撃しても。」

皆がえっという顔で私を見ます。

「どう言う事だ?」

「簡単なことです。あなた達ではアキトさんの居るナデシコを落とすなんて事、出来ません。」

「何だと!」

高杉さんが私に掴み掛かろうとしましたが、私は一瞬で高杉さんの懐に入り

高杉さん直伝の巴投げをします。

「ぐぇ・・・」

高杉さんは白目をむいています・・・自分の技で眠っていてください。

「い・・・今のは・・・」

「木連式柔・・・『巴』・・・」

白鳥さん達が驚いています。

「敵相転移式戦艦、射程に入りました。」

「攻撃準備だ!」

月臣さんが怒鳴ります。

「今のは・・・何処で教えてもらった・・・」

秋山さんが睨んでいます。

「秘密です。」

「先程から秘密が多いな・・・」

「秘密は女を美しくするんですよ。」

私は秋山さんをはぐらかします。

「無限砲・・・準備完了です!」

オペレーターが言うと同時に白鳥さんは攻撃開始を命じました。

「やめて!」

ミナトさんは、どうして私が止めないのか不思議に思っているでしょうね・・・

もうすぐ解りますよ・・・

「敵、人型機動兵器一機接近中!画面に出ます!」

そこには最大望遠で、はっきりとした姿は判りませんでしたが

間違いなく、アキトさんのブラックサレナです。

「ダイマジン!用意急げ!無限砲は一時待機だ!対空砲開け!」

「ミナトさん、あなた達は・・・」

「シャトルを貸して・・・私たちが居ると邪魔でしょう・・・」

ミナトさんは疲れたように言います。

無理もありません、今日一日で色んな事が起きましたからね・・・

白鳥さんは、私達のためにシャトルを用意してくれました。

「ミナトさん、自分が安全な空域まで護衛します。」

「あら、頼もしいわね。」

「ミナトさん・・・」

「白鳥さん・・・」

あ・・・いい雰囲気ですね・・・

邪魔するのも何だか・・・

二人の距離が近づいていきます・・・

このまま行けば・・・

「何をしてるんだ!九十九!出撃だぞ!」

月臣さんが苛立つような声で怒鳴っています。

「あ、高杉さん!」

私は近くを走っていった高杉さんを呼び止めます。

「な・・・なんでしょう?」

先程の『巴』が効果を発揮したのか凄く素直です。

私は一枚のディスクを高杉さんに渡します。

「何だ?これは・・・」

「後でちゃんと見ておいてください。」

そう言うと、高杉さんは不思議な顔をしながらダイマジンまで歩いていきました。

これで良かったんですね?アキトさん・・・

 

 

 

私たちはミナトさんの操縦でゆめみずきから脱出しました。

「・・・ち・・・ら・・・ル所属・・・D−001・・・ナデシコ・・・」

あ・・・メグミさんの声ですね。

「メグちゃん!聞こえる?」

「ミ・・・ミナトさん・・・無・・・だった・・・ね。・・・」

「メグちゃん!メグちゃん!」

ミナトさんが慣れない木連のパネルを操作しています。

「ああ!もぅ!言う事を聞きなさい!」

まるで、幼い我が子を叱っているかのようです。

私もあんな風になるのかな?

『ルリ・・・』

アキトさんの顔が、私の前に現れます。

シャトルと併走するように、ブラックサレナが飛んでいます。

「アキトさん・・・」

『彼らには・・・』

「ええ、伝えました。アキトさんの方も・・・」

アキトさんは私の言葉を肯定するように頷きます。

『下がっていろ・・・』

アキトさんの言葉で私とミナトさんはナデシコに向かいます。

チラリとアキトさんの様子をモニターで見ると・・・アキトさんが4機のダイマジンに囲まれています。

・・・遊んでいるのはアキトさん?

そんな思いをするような戦い振りです。

格納庫に降りた私たちは急いでブリッジに向かいます。

「ゴメン!」

「ラピス、代わりましょう。」

私とミナトさんはラピスとエリナさんと交代します。

「シャクヤクが!」

エリナさんが叫んでいます。

質量弾が発射されたみたいです・・・

ナデシコは、ディストーションフィールドがありますから被害はありませんでしたが・・・

「艦長、あれ・・・使えませんかね?」

プロスさんが、シャクヤクに取り付けようとしていたYユニットを指差します。

「無茶よ!電装系がまるで違うのよ!」

エリナさんが叫んでいます。

「そうですね、使えるものは使っちゃいましょう。ウリバタケさん。」

ユリカさんの目の前にセイヤさんのウィンドウが現れます。

『何だ?』

「Yユニットをナデシコに取り付けられませんか?」

『電装系がまるで違うし・・・』

「信じていますから。」

ユリカさんがニコリと微笑みます。

セイヤさんが少し顔を紅くして

『さ、三分待てぃ!』

そう言うと、セイヤさんのウィンドウは消えました。

「どうしてあなたは、人を簡単に信じられるの?」

「仲間を信じていないと、戦う事なんて出来ません。」

ユリカさんはきっぱりと言います。

そう言えば私たちがブリッジに入ってきた時、みんな何も言いませんでしたね。

「そう言えば、ルリちゃんたちは敵の戦艦に行ってたんだよね?お土産は?」

・・・ユリカさん・・・旅行に行った訳ではないんですけれど・・・

「その話は後でするわ、今は頭が混乱していて・・・」

ミナトさんが言います。

「何があったの?ルリ姉?」

ラピスが代表して聞いてきます。

「判りました、向こうで起きた事をお話します。」

私は白鳥さんたちのことを話しました。同じ人間同士である事、

考え方、戦う理由・・・

「艦長、これからは本当の戦争です。みんなには戦う理由は有りますか?」

私の問いかけにみんな考え込んでいます。

『私には有るわ・・・』

そう言ってスクリーンに現れたのはイツキさん・・・

心なしかミナトさんと私を睨んでいるようです。

『私は、ヨコスカで恋人を失ったわ!あいつの所為で!』

あいつと言うのは・・・白鳥さん?じゃあ恋人と言うのは・・・

『彼女の恋人は、ゲキガンタイプのボソンジャンプに巻き込まれたらしい・・・』

続いて現れたのはリョーコさんのウィンドウ・・・

「そんな・・・」

『復讐の為に戦うわ!』

「復讐は何も生み出しませんよ。」

私はイツキさんを諌めます。

『どうして!あなた達だってアキトさんが殺されたらどうするの!』

その言葉にハッとなります・・・ユリカさんも、メグミさんも、プルセルさんも、ラピスも・・・

エリナさんですらその言葉に動揺しているようです。

「それでも、復讐は身を滅ぼします・・・」

かつてのアキトさんがそうであったように・・・

『たいした自信ね・・・それとも信じているのかしら?

アキトさんは絶対大丈夫だって。』

私は少し首を振り

「私には、アキトさんが戦うのを止められない・・・

なら、私はアキトさんが帰ってくる場所を守るだけ・・・

アキトさんが安心して戦いに行けるように・・・」

『・・・それでも、私は彼の敵を討つまで戦いを止めないわ!』

「ふ・・・ざけ・・・ないで・・・」

ミナトさんが少し怒っているようです。

「同じ人間同士なのよ!もう、あの人たちと戦う理由は何処にも無いのよ!

聞いたんでしょう!アキト君から!悪いのは地球?木連?ネルガル?クリムゾングループ?

彼らは普通の人たちだったわ!」

戦う理由・・・皆どう考えているんでしょう?

『ブリッジ!Yユニットの取り付け完了したぜ!

但し、何が起こるか解らないからな!』

セイヤさんの言葉で皆一様に動き始めます。

ナデシコの戦う理由・・・本当は皆わかり始めているんじゃないかな?

「ルリ姉、私はアキトとルリ姉とプルとアヤと・・・皆がいるナデシコが好きだから

ここに居るの・・・それじゃ駄目?」

ラピスが私に言います。精一杯の言葉で私に訴えるように言います。

「ラピス、今はそれで良いです。ここに居る事が大切な思い出になるのですから。」

「うん・・・」

私は、ラピスを戦いに引きずり込みたくない、と言ったアキトさんの言葉を思い出しました。

確かに、ラピスは前回アキトさんの復讐に付き合って、女の子らしい事が出来ませんでした。

でも、今回は私も、ミナトさんも、プルセルさんも、アヤさんも・・・みんなラピスに愛情を注いでくれます。

アキトさんも、ナデシコに連れてきた事を最初は後悔していましたが

ラピスの姿を見て、それが杞憂である事を感じたそうです。

「ルリちゃん、ナデシコ発進!」

ユリカさんの声で私はナデシコの発進ルートを算出し、ミナトさんに教えます。

「ミナトさん、今は戦わなければ私たちが生き残れません。

白鳥さんを信じてみましょう。」

「そう・・・ね。」

ミナトさんも少し落ち着いたみたいです。ナデシコを月面に向けて発進させます。

 

 

月面にナデシコが出ると3機のゲキガンタイプが行動不能になっていました。

メグミさんはアキトさんと白鳥さんの会話をスクリーンに映し出しました。

『そいつらを連れて、立ち去れ・・・』

『・・・すまない・・・テンカワ・・・アキトだな・・・』

『そうだ。』

『再び戦場で会う日がくる事を願う。』

『戦場以外だったら友人になれたかもな。』

アキトさんの言葉で白鳥さんは少し笑顔になり

『死ぬなよ・・・ルリ殿のためにも・・・ルリ殿に伝えてくれ、

俺はあなたの話を信じると・・・そして、何を成すべきか考えると・・・』

『了解した。ミナトさんには何も無いのか?』

アキトさんの言葉で真っ赤になる白鳥さん・・・

『ミ、ミナトさんには平和になったら会いましょうと伝えてくれ。』

『ああ、解った・・・行けよ。』

アキトさんの言葉で白鳥さんは秋山さんたちの脱出ポットを回収して

ジャンプしていきました。

『ルリ・・・後で話がある。格納庫に来てくれ。』

アキトさんが言います。

「解りました。」

アキトさんの話・・・何でしょう?

 

 

 

格納庫に降りた私はブラックサレナから出てくるアキトさんに近寄りました。

「アキトさん、話って・・・」

パシィ!

・・・え?アキトさん?私の頬はジンジンとしています。

少し経って私は平手打ちをされた事に気が付きました。

「・・・ルリ・・・心配掛けるな・・・」

そう言うとアキトさんが私を抱きしめます。

「・・・ゴメン・・・なさい・・・」

私はしばらくアキトさんに抱かれていました。

「もう良い・・・それより、謝らなくてはならない事がある。」

「何でしょう?」

私はアキトさんを見上げます。

「実は、ルリからもらったマフラーだけど・・・

無くしてしまったんだ・・・すまない。」

「良いんですよ・・・また作ればいいだけですから・・・」

「本当に、すまなかった・・・」

「良いって言っているじゃないですか。」

「痛かっただろう?」

私の頬を優しくなでてくれるアキトさん。

「いえ・・・アキトさんの気持ちは・・・わかります。」

そう言うと、私はアキトさんの顔を両手に持ち、私の方に引き寄せます。

私とアキトさんの顔が近づいて・・・クス・・・そう言えば、アキトさんとキスするのも久しぶりですね・・・

「アキトさん!」

・・・せっかく良い雰囲気だったのに・・・誰でしょう?邪魔するのは・・・

私が声のしたほうを見ると、イツキさんが睨んでいます。

「どうして逃がしたんですか!再び捕虜にすれば!」

「あいつらは、ルリ達を客人としてもてなしてくれた。

その礼を返したまでだ。」

「では、次に会った時には容赦しないんですね!」

イツキさんの眼が光ります。

「ああ、戦場であった時には容赦しない。だが、復讐を考えるのは止めろ。」

「どうしてですか!アキトさんも、ルリちゃんが殺されたらあいつ等を殺すって・・・」

「ああ、だが死よりも辛い人生を味わってもらうさ。」

アキトさんの目がイツキさんを貫きます。

「死と言うのは一番楽な逃げ道です。アキトさんは・・・死ぬ事なんて出来ない人ですから・・・」

多分、アキトさんが一番辛いでしょうね・・・たとえ戦争が終わっても・・・私たちに普通の生活なんて出来ないでしょうから・・・

「解らない!どうしてそんな風に言えるの!」

「罪の償いは死をもって、というのは短絡的だろう?」

アカツキさんが近寄ってきています。頭に巻かれた包帯は、少し痛々しいですね。

・・・私の所為ですけど・・・

「ルリ君、今回の事は不問と言う事で。」

「あ、アカツキさんに例のディスクを・・・」

私はアキトさんに尋ねます。アキトさんはゆっくりと頷き

「利害関係が一致した・・・ネルガルは俺達の案に賛成してくれた。」

小声で私に言ってくれました。

「さて、イツキくん・・・ナデシコを降りるのなら今の内だよ?

僕達としてもテンカワ君の提案を飲んだほうが良いと思うんだけどな?」

「・・・降りないわ・・・あなたたちが見る未来を・・・

この目で見届けてやるわ!でも、あいつが戦場に現れたら・・・

私は容赦なく攻撃するわ。」

「おっけぃ、テンカワ君もそれで良いね?」

「ああ、戦場での出来事だ。生き残れない奴は、未来など見ることが出来ないからな。」

そうです、生きていれば・・・高杉さんに渡したディスク・・・アレが上手くいけば・・・

私はアキトさんの腕の中でそう願っていました。

 

 

 

おまけ

 

今度こそ・・・アキトさんに私は顔を向け、目をそっと閉じます。

アキトさんの顔が近づいてくるのを感じます。

「お兄ちゃん!」

・・・イネスさん・・・あくまでも邪魔をするんですね・・・

私は首をイネスさんのほうに向け、

「何事ですか・・・イネスさん・・・」

アキトさんの体がピシリと固まります。私の体からは殺気があふれ出ています・・・

「や、やぁねぇ・・・ルリちゃん・・・あの子の意識が回復したって言いに来たんじゃない。」

「え?あの子って・・・ヨコスカで助けた・・・」

私とアキトさんは顔を見合わせます。

「今、メグちゃんたちが面倒を見ているわ。」

「ルリ、行って見よう。」

「はい。」

「ちょっと待って。」

イネスさんが私たちを引き止めます。

「あの子・・・母親が死んだって解っていないみたいなの。」

「記憶の封印・・・ですか・・・」

私の言葉にイネスさんは頷きます。

「それだけじゃないんだけどね・・・」

「とにかく、あの子をどうするか決めよう。」

私たちは、医務室に向かいます。

そこには、ユリカさん、メグミさん、リョーコさん、ヒカルさん、イズミさん、ミサキさん、カズマさん、アヤさん、プロスさんが居ました。

「プロスさん、この子の身元・・・解りましたか?」

「はい、オカクラ=ユウタ、現在5歳・・・住所はヨコスカシティ。

オカクラ=ケイジとオカクラ=ツキコの子供です。

オカクラ=ケイジは軍人でしたが2ヶ月前、オセアニア戦線でバッタと交戦中に死亡。

母親のツキコは・・・ルリさんのお話どおりです。」

プロスさんは、最後の言葉を言う事が出来ませんでした。

私が助けた時にはすでに・・・

ユウタがムクリと起き上がります。

「あ、ユウタ君。私はミスマル=ユリカ。君、倒れてたんだぞ?」

ユウタは辺りをキョロキョロと見回し、何か言おうとしていますが

言葉が出てきません・・・まさか・・・

「失語症・・・精神的なショックで言葉を発しなくなる症状・・・

回復の見込みは本人次第・・・」

シリアスモードのイズミさんが言います。

「あ、そう言えば・・・イズミちゃんって失語症だったんだよね。」

「・・・古い話よ。」

え?・・・ヒカルさんの言葉に皆、口をパクパクさせています。

「・・・あ・・・イズミさんの事はとりあえず置いといて・・・

問題はこの子をどうするか・・・だな。」

アキトさんが何とか回復して言います。

「施設に預けるっちゅうんはどうや?ワイの知合いがやっとるで?」

「カズマ、あんたもたまには役に立つのね?」

「せやろ?」

「駄目ね。」

カズマさんとアヤさんの言葉をミサキさんが否定します。

「その子は敵の姿を見ているわ。今回はアキトさんが居たから手出ししなかったでしょうが

もし、この子が一人で居たら真っ先に狙われるわ。」

「そうですね〜、そうした時のテンカワさんへの精神的ダメージは大きいでしょうからねぇ。」

プロスさんが眼鏡を直しながら言います。

確かに、ユウタをアキトさんの目の前で殺せばアキトさんは・・・

「は〜い!ナデシコで育てるのがいいと思いま〜す!」

「私も、ユリカさんと同じ意見です。」

ユリカさんの発言に同意するメグミさん。

「だけどよ〜、この艦・・・戦争してるんだぜ?

そんな所に・・・」

リョーコさんがユウタを見ながら言います。

ユウタは先程から母親を探しているのでしょうか?キョロキョロと何かを捜し求めています。

私はユウタの側に行き、ユウタを抱きしめます。

「・・・私は・・・この子を連れてきた責任があります。

・・・プロスさん、この子を保護してもらえないでしょうか?」

「・・・困りましたな〜・・・ナデシコは託児所ではないんですけどね〜。」

「でも、このまま放り出す訳にもいかないでしょう?

医者として、この子を連れ出す事は、許可できません。」

イネスさんが毅然とした態度で、プロスさんに意見しています。

頑張ってください、イネスさん!

「ですが〜・・・」

「じゃぁ、入院しているってことにしたら?」

メグミさん、ナイスアイデアです。

他の人も、納得しています。

入院費は、私たちの給料を少しづつ出す事でプロスさんは納得しました。

でも、プロスさんの出した金額って他の人よりも多いんですよね。

その事をプロスさんに尋ねると

「まぁ、私も木の股から生まれてきたわけでは有りませんから。」

と、言っていました。

 

それまでは、医務室はイネスさんの個室状態だったのですが

ユウタの相手をするため、皆が空き時間にユウタの様子を見に行っています。

・・・皆さん、急に母性本能が目覚めたのでしょうか?

皆、戦争と言う時間を忘れたいために、医務室に来ているのかもしれません。

ユウタみたいな子を・・・二度と作らせません・・・

私は小さくなっていく月を展望台で見ながら心に誓うのでした。

 

・・・隣にはアキトさんが居ますけどね・・・

 

 

おまけ2

 

ブリッジでオペレーターの仕事をしていると、突然ヤマダさんが入ってきました。

「おい!俺の宝物はどうした!」

いきなり私の隣で叫んでいます。

「宝物?なんです?それ・・・」

「イネス先生に貸していたゲキガンガーのディスクだ!」

そう言われると・・・

「ねぇ、ルリルリ・・・あの時イネスさんが私たちに渡した・・・」

「ええ、でもアレはミナトさんが受け取ったんじゃ・・・」

「え〜?私はルリルリが持っているものと・・・」

私とミナトさんはお互いに罪を擦り合っています。

だって・・・ヤマダさんの体から瘴気みたいなのが出ているんですもの・・・

「・・・つまり、忘れた・・・と言う事だな・・・」

「そうなります。」

こうなれば開き直った方が良いですね。

「・・・許さん・・・許さんぞ〜!」

やばい!ヤマダさんが・・・キれる・・・

そう思った時でした。

「やっほー!ヤマダ君来てない?」

ヒカルさんの明るい声がブリッジに響きます。

「ヒカル!こいつらが・・・こいつらがゲキガンガーのディスクを!!」

「ディスク?」

「ああ!ゲキガンガーTVシリーズ全話と劇場版のディスクを・・・

よりにもよって、敵の戦艦に置き忘れたんだと!」

ヤマダさん・・・涙を流しています。

「ふ〜ん・・・要は、ゲキガンガーが見たいのよね?」

ヒカルさんが言うと、ヤマダさんがブンブンと首を縦に振っています。

「じゃぁ、見に行こうか?」

「え?」

「ディスクを持っているの、私。」

「そうか!よ〜し、見に行こう!すぐ見よう!」

そう言いながらヤマダさんは上機嫌でヒカルさんとブリッジを出て行きました。

それにしても、ヒカルさん・・・中々の策士ですね・・・

相手の興味あるものを自分も揃えて置く・・・

まぁ、ヒカルさんの場合、同人誌作る資料なんでしょうがね。

「た、助かった・・・の?」

ミナトさんがため息と共に言います。

「そう・・・みたいですね。」

「・・・私も見てみようかな〜。」

ミナトさんが遠い目で言います。

確かに、木連の戦艦内にはゲキガンガーの映像が至る所で放映されていましたから・・・

「白鳥さん達が見ているから・・・ですか?」

「・・・そ、そう言うんじゃないけれど・・・ルリルリも見てみる?」

「・・・見たこと・・・有りますから・・・」

未来と言う過去で・・・その言葉を私は飲み込みました。

 

 

 


 

 

ルリ:木連三羽烏登場ですね。

作者:最初は原作通り九十九と月臣だけのつもりだったけれど・・・

ルリ:その場のノリで出しちゃいましたね。

作者:さすがにユキナまでは出なかったけれどね。

ルリ:高杉さんの評価って・・・

作者:気が付いた?

ルリ:よくもまぁ、こんな小ネタを・・・

作者:某究極超人に出てくる人・・・と言うより、社会人の理想かな?息抜きの間に仕事をするって・・・

ルリ:それに、Wのあの台詞まで・・・あなたが殺されますよ?

作者:あははははは・・・今回は至る所に小ネタがちりばめられているから・・・

ルリ:それと、イツキさん・・・登場した時から不幸ですね。

作者:イツキをボソンジャンプに巻き込まなかった代わりに不幸になった・・・

ルリ:しかも、外伝に飛ぶ前に出てきた子供を無理やり登場させて・・・

作者:そんな事無いぞ!感想メールの中にあの子はどうなりましたか?と書いてあったからとかそんなんじゃないぞ!

ルリ:思いっきり語っているじゃないですか!

作者:うぅ〜本当に闇に葬り去るつもりだったのに〜

ルリ:そんな事したら、一気に外道に落ちてしまいますよ。

作者:それにしても、登場キャラが多いな。

ルリ:食堂系のキャラクターに至っては、ほとんど台詞がありませんし・・・

作者:まぁ、今回はミナトさんがメインだから・・・

ルリ:そうなると、次回はアレがメインですよ?

作者:・・・はう!今回台詞どころか登場すらしていない人物か!

ルリ:それでは次回 機動戦艦ナデシコ Re Try 第17話 それは『遅すぎた再開』 です。

作者:君は、生き残る事(登場する事)が出来るか?

ルリ:それは、あなた次第でしょう。

 

・・・また、余計な伏線を張ってしまった・・・

 

 

 

代理人の感想

気に入らない奴は即・鉄拳制裁!

邪魔者はスカートで巴投げ!

ああ、暴力少女ルリよどこへ行く!

 

という話になってきてません、これ?(爆)

それともあの巴投げは読者サービスだったんだろーか(核爆)。

 

 

真面目な話、少々ダブルスタンダードが目につきますね。

ルリはミナトさんには「木連と地球の考えは違う」と言っておきながら、ガキ呼ばわりされるとすぐに手を出すし、

アキトは「復讐するな」と言っておきながら自分が復讐する事は肯定しているし。

それとも、殺すのがいけないだけで

イツキが九十九に「死よりも辛い人生」を送らせるのは可なのでしょうか?