自分達が戦っているのは同じ人間、

正義の戦い、地球を守るため謎の侵略者と戦う

皆そう思っていたはずです。

戦争・・・してるんですよね・・・

 

 

 

機動戦艦ナデシコ Re Try 第17話 それは『遅すぎた再開

 

 

 

Yユニットを装備したナデシコは4つの相転移エンジンを搭載した無敵の戦艦。

でも、実際のところかなり不安定な状態。

そこで、ドック艦コスモスに向かっています。

『気をつけよう、無茶な合体怪我の元』って標語、どこかに応募しましょうか?

「あれ?ルリちゃん一人?他の皆は?」

ユリカさんがブリッジに入って来るなり言います。

「ジュンさんとメグミさんはユウタのところ、

プロスさんとエリナさん、ゴートさん、プルセルさんは予算関係のお話中、

提督は・・・」

私は提督の部屋を覗きます。もちろん、プライベート機能をキャンセルして・・・

『先日の機密漏洩・・・失態だな。』

『待って、私は何も喋っていないわ。

それどころか、敵が同じ人間なんて知らなかったんだから!』

『君の任務は何だ?ナデシコクルーの監視だろう?

特に、テンカワ=アキトには細心の注意を払えと言ったはずだが?』

キノコと話しているのは・・・連合宇宙軍のお偉いさんですね。

この人って確か・・・私は、オモイカネのデータを検索します・・・

やっぱり、クリムゾンと繋がっていますね・・・

『あいつは、異常よ!あの戦闘力、情報力・・・

私はあんなのを相手になんか出来ないわ!』

キノコが叫んでいます。

『では、君は降格だ!』

『ええ、降格でも何でもして頂戴!ナデシコクルーの監視でも

本部の便所掃除でも何でもやるわ。

でも、テンカワ=アキトに関わるのだけはイヤよ!』

あれ?キノコが降格と聞いてもうろたえないですね・・・

出世欲があれだけ強かった人が・・・

『まぁ、君には期待していなかったのだが・・・

だからと言う訳ではないが、テンカワ=アキトには恋人が居ると報告にはあったな。

その恋人を人質にとってナデシコを我々のものに・・・』

『やって御覧なさい?痛い目を見るのは多分、あなたよ。』

どうやら、心境の変化があったみたいですね。

まぁ、自分の出世より命を取った・・・と言ったところでしょうか?

「ねぇ、ルリちゃん・・・コレって犯罪じゃないの?」

そう言えば、ユリカさんが隣に居たんでしたね。

「艦長はクルーの事を知っておくべきでは?」

「そ、そうね・・・はっ!そうなると、私の命が危ない!」

「どうして、そうなるんですか?」

「だって、アキトの恋人って言う事は、私の事じゃない。」

ユリカさんが当然の事のように言います。

この人って何時もマイペースですよね・・・

「こうしちゃ居られないわ!アキトを探さなくては!」

そう言うと、ユリカさんはブリッジから出て行きました。

それと入れ替わりに、エリナさん達がブリッジに入ってきました。

「何があったの?」

エリナさんが扉の方を向きながら言います。

「暴走・・・ですかね?」

私はエリナさん達に言います。

「ところで、艦長に何か用事があったんじゃありませんか?」

私は一緒に入ってきたプルセルさんに問い掛けます。

「・・・呼び止めても無駄だったわ・・・」

「もう少し艦長としての自覚を持って欲しいものなんですが・・・」

プルセルさんとプロスさんが言いました。

「まぁ、あなたにも関係がある話だから・・・」

エリナさんはそう言うと資料を出してくれました。

「ここ最近、整備予算が急激に増えているわ。」

確かに、戦闘被害の割に使用する予算の金額が、かなりのものになっています。

「今までにも、使途不明金が流れるのは大目に見ていたんですが・・・これはちょっと・・・」

「どうして私に?」

エリナさんに素朴な疑問を投げかけます。

「ルビィの一件・・・その時、あなたはウリバタケにお金を渡しているわよね。」

「ええ、でもあれは私のポケットマネーとしてウリバタケさんに渡したものなんですけれど・・・」

「ポケットマネーって・・・」

プルセルさんのコメカミから冷汗が出ています。

まぁ、一国の国家予算並みのポケットマネーでしたから・・・

「そこで、あなたに真相を調べて欲しいと思いまして・・・」

「どうして、プロスさんがやらないんですか?」

「実は、艦内に不穏な動きがありまして・・・」

ああ、先ほどの・・・

「・・・そうですか・・・解りました。」

「じゃぁ、プルにサポートしてもらうから。」

そう言うとエリナさんはブリッジを後にします。

「・・・どうして、エリナが直接聞かないんでしょうか?」

プルセルさんが疑問を口にします。

「プルセルさん、あなたの部屋がいきなり緊急脱出したらどうします?」

「え?」

あなたの使っているテレビがいきなり変形してロボットになったらどうします?」

「あ、あの・・・」

「・・・セイヤさんに関わると、そう言った事を覚悟しなくてはいけないんです。」

プロスさんが端末を操作しながら頷いています。

「そうですな〜。自分でスカウトしておいて言うのも何ですが・・・

性格はともかく腕は一流ってのがナデシコの売りですから・・・」

「プロスさん、それって私も入ってるんですか?」

「ルリさんは一流じゃないですか。」

「性格は?」

「・・・ま、それは後々・・・」

そう言うとプロスさんは端末に向かってしまいました。

「じ、じゃぁ早速ウリバタケさんのところに行きましょう。」

プルセルさんは私に向かって言います。

「そうですね、プロスさんには後ほどゆっくりとお話を伺いましょう。

プロスさんが懐からなにやら取り出しています・・・

アレは・・・胃薬・・・ですね。

ラベルがイネスさんの手書きと言うのが気になりますが・・・

やっぱりストレスが多いんでしょう。

私とプルセルさんはブリッジを後にしました。

 

 

 

プルセルさんと二人っきりになるって言うの・・・初めてじゃないでしょうか・・・

「・・・ねぇ、ルリちゃん・・・」

「何でしょう。」

「・・・この戦争が終わったら・・・どうするの?」

この戦争・・・プルセルさんも、自分なりに結論付けたような感じです。

「そうですね・・・アキトさんと二人で、どこか静かなところで暮らすって言うのも良いですけれど・・・

私たちに普通の暮らしって無理でしょうかね?プルセルさんはどうされるんですか?

ネルガルに戻るんですか?」

「私は・・・アヤさん達と探偵をやるって言うのも良いかなって・・・」

「アカツキさんも優秀な人材を求めていると言うのに・・・」

「私は、エリナに敵わないわ。私は、あそこまで自分を殺す事なんて出来ない。」

「そうでしょうか?」

「ただ・・・何て言うのかな?アキトさんと出会って、ナデシコに来たら

エリナも変わったように見えるわ。」

「ネルガルに居た時って、プルセルさんはどうだったんですか?」

「必死だったわ・・・歩きながら話しましょうか。」

私は頷きました。

 

 

「私はね、ネルガルに入社した当初は営業だったのよ。」

「営業・・・ですか・・・」

ネルガルの人事部って、なんて見る目が無いんでしょうか・・・

「同期で入社したのがエリナだったわ。私自身、エリナを見ていると

うらやましいって思っていたもの。

それでね、ある時エリナが営業部に配属になったわ。」

「エリナさんにピッタリの仕事みたいですけれど・・・」

仕事をこなすキャリアウーマンって感じですね。

「それがね、そうでもなかったの。」

プルセルさんは少し思い出し笑いをしながら言います。

「エリナってほら・・・人に頭を下げたりするのって苦手っぽいでしょう?」

確かに・・・

「一応、頭を下げたりしてはいたんだけれど・・・・そういうのって態度に出るのよね。

運悪く、その時ネルガルの製品がちょっとしたクレーム騒ぎになって・・・

印象って悪い人に向かうでしょう?エリナの態度が悪かったって話が出たの。

それで、その時営業部のお荷物同然だった私とペアを組んだの。」

水と油?

「最初は、誰も期待していなかったの。私たちも、途方にくれたわ。

当然、取引なんて取れるわけ無く、面会すら出来ない事も会ったわ。

次第に、会社から営業に出て、そのまま喫茶店で時間を潰して・・・そんな日が続いたわ。

もうやめようかなって思ったその時ね、エリナが言ったの。

『これから行く取引先で、何も契約してもらわなければ、会社を辞めない?』って。

今にして思えば、彼女にしては珍しく弱気な発言だったわ。私も止め時かな?って考えていたから

彼女の誘いに乗ったの。しかも、その取引先ってエリナの態度が悪いって真っ先に言ってきた会社だったの。」

あのエリナさんが、そこまで弱気な発言をするって事自体、信じられないですけれど・・・

「結果は?」

「もちろん、今私がこうしていることが結果よ。

その日は、エリナの体調が悪くて、最初私が対応していたの。

取引先も最初は義理で付き合ってくれている・・・みたいな感じだったんだけれど

エリナがあまりにもおとなしいので、向こうが勘違いしちゃったみたいで・・・」

「十分反省しているって?」

「ええ。それに、私っておとなしいイメージがあるでしょう?」

まぁ、エリナさんを引き合いに出せば・・・

「私が話した内容にエリナがサポートしてくれたの。

エリナにしてみれば、体調も悪くあまり話をしていられないので

要点だけ説明したの。後の事は私に任せてね。

エリナってこの頃から誰かのサポート役をしていたんだと思うわ。

私は押しが足らないだけだって言われてきたから、エリナとペアを組んだのは

正解だったと思うわ。お互いを補完する形で仕事をしたの。」

プルセルさんは一息つき、私を見ます。

「それからというもの、何時もエリナと二人で仕事をして・・・

やがて、上にも認められて秘書課に配属になったの。

でも、駄目だった・・・エリナは会長の、私は社長の秘書になったんだけれど

最後まで社長を理解できなかった・・・」

「でも、そのお陰で私たちに会えたんじゃ有りませんか。」

「そうね、アキトさんやアヤにカズマ、ラピスにルリちゃん・・・皆に会えた。

不思議なところよね、ナデシコって・・・

普通じゃ絶対出会う事の無い人たちが集まって・・・自然に皆集まって

自然に騒動が起きて・・・でも、不安でもあるの。」

「不安・・・ですか?」

「そう、何時までもこの時間が続けば良いと思っていた・・・

でも、戦争が終わるって事はこの生活が終わってしまう・・・

その事に皆気が付いているのかなって・・・」

「皆で旅行にでも行っている・・・そんな感じですからね。」

「そうね・・・確かにナデシコって何だか学校の修学旅行って感じがするのよね〜。

以前アキトさんに言った事があるの。

アヤさんとカズマとラピスちゃんと・・・アキトさんを中心にしてずっとこのままでいたら良いって・・・

でも、アキトさんはそんな事は不可能だって・・・」

プルセルさんは不安そうな顔をしています。

「アキトさんの言いたい事はわかります・・・私も・・・」

次の言葉は・・・言いたくありませんでした・・・

アキトさんとユリカさんの結婚式、そして・・・あの飛行機事故・・・

私たちが強制的にナデシコから『卒業』した時・・・

「でもね、思い出は残る・・・ルリちゃんもそう思っているんでしょう?」

「はい。大切な思いの為に今を生きてる・・・」

私とプルセルさんは二人で笑っていました。

何時しか、私たちはセイヤさんのいる格納庫にやってきました。

 

 

 

セイヤさんは・・・周りの整備員に尋ねながら探します。

でも、セイヤさん・・・仕事ちゃんとしてるんでしょうか?

忙しく動き回っている整備員をほったらかして・・・

やがて、コンテナの後ろから声が聞こえてきます。

「おお、アキト・・・中々うめぇな。」

「少しかじった事があるんですよ。ガイには負けますけれど。」

「ふっふっふっ・・・俺様に掛かればこんなもの・・・」

「何や、天才のワイを差し置いて、そないな事言うてからに・・・」

「ホント、上手いわね・・・あっそこ・・・」

「ヒカルちゃん、君も中々・・・」

「ああ、凄くいい感じだよ。」

「ヒカルに掛かれば、アキトも形無しだな。」

・・・会話を聞いていると・・・プルセルさんも頬に手を当てて赤くなっています・・・

何時から、このお話は18禁になったんでしょうか?

「あ、凄く良い!」

ヒカルさんの声があがります。

「何をやっているんです?」

私は、我慢できずにコンテナの裏に飛び出します。

もちろん、プルセルさんを突き出して・・・

「ルリ・・・どうしてこんな所に・・・」

アキトさんは手に・・・エステバリスの模型?

「どないしたんや?プルも一緒に・・・」

カズマさんも戦車・・・でしょうか?手に模型をもっています。

「それって・・・」

私は精一杯の言葉をセイヤさんに掛けます。

「おお、最初はちょっとした遊びのつもりだったんだがな、アキトの奴が俺も混ぜてくれって言うから・・・

そしたら、ヤマダとヒカルちゃんとカズマも加わってな。見てくれよ、この作品を!」

セイヤさんが指した先にはエステバリスの模型が戦闘シーンを演出しています。

「凄いですね、これ・・・皆さんが作ったんですか?」

「プルもやってみる?面白いよ、ほら!セーラーバリス〜。」

ヒカルさんが青と白にペイントされたエステバリスを見せます。

「へぇ、ヒカルさん器用ですね。」

プルセルさんが感心しています。

「ところで、セイヤさん。最近、使途不明金が増えてるみたいですがって、プロスさん達が言っていましたよ?」

私はセイヤさんに予算の事を尋ねてみます。

「その模型って訳じゃ有りませんよね?」

プルセルさんも本来の目的を思い出したかのように、セイヤさんを問い詰めています。

「そ、そんなに問題になってる?」

「ちょっと使いすぎですね。」

私はセイヤさんに近寄ります。

「ルビィの件もありますし・・・ゆっくり伺う事にしましょうか。」

「わかったよ・・・付いて来な・・・」

私たちは、セイヤさんに案内されるままに、格納庫の奥のシャッターを開けました。

「こ・・・これは・・・」

「すげぇ・・・」

「カッコええなぁ・・・」

「何時の間に・・・」

そこには、普通のエステバリスより一回り大きいエステバリスが居ました。

「どうだい、俺っちの自信作。月面フレームの相転移エンジンを搭載、

グラビティカノンを肩に2丁装備。ダブルレールカノンをバックアップウエポンとして

攻撃力に特化させている。その名も・・・エックスエステバリスをアキトの提案でさらに強化させた

ダブルエックスエステバリス・・・略してダブルエックスバリスだ!」

・・・前回と違うところはどうやらジェネレーターのフィードバックを強化したところみたいですね。

って・・・

「アキトさん、知っていたんですか?」

「ああ、みんなのエステバリスカスタムは、限界に近づいていたからな。

前からウリバタケさんに相談して進めていたプロジェクトだ。」

「と言う事は、私たちが乗るって事なの?」

ヒカルさんが目を輝かせています。

「新たな敵に対抗するため新しい機体・・・くぅ〜!燃える〜!」

「そして、リーダー機に欠かせない存在が・・・」

セイヤさんが長方形の箱を指差します。・・・カンオケ?

ふたがゆっくりと開き、中から出てきたのは・・・

「ルビィ!」

「ルリ・・・会いたかった。」

まさしく、ルビィです。その、赤い髪・・・赤い瞳・・・全てが・・・嬉しいです。

「ルリ、泣かないで。」

「良かったな、ルリ。」

ルビィとアキトさんが慰めてくれます。

「リーダー機にはルビィが乗れるスペースがある。

まぁ、エステバリスにオモイカネが乗っかったようなもんだな。」

「せやったら、アキトの機体に乗るんか?」

「いや、アカツキ機になる。俺には、ブラックサレナがあるからな。」

アキトさんの戦い方はチームを組んでと言うのは難しいでしょう。

「ダブルエックスバリスはみんなの分が用意されている。

これらは、IFSを専用に登録する必要があるんだ。

それぞれが得意な武器を用意している。

肩のグラビティカノンを外してディストーションブレードを装備可能だ。」

「ちゅう事は、攻撃か防御かを選択できるっちゅう訳やな?」

カズマさんがワクワクしながら言っています。

「ああ、コスモスにはすでに皆の分が用意されている。」

「じゃぁ、使途不明金というのは?」

「あれ?会長さんから何も聞いてないのか?」

セイヤさんが惚けたように言います。

「え?」

「だから〜、おたくの会長さんに許可は得ていたんだが・・・聞いてなかったか?」

プルセルさんは呆然としています。やがて・・・

「あ・・・んの・・・ゴ・ク・ラ・ク・トンボ〜!!!」

プルセルさん・・・怖いです・・・

「あ、あの・・・プルセルさん?」

「プ・・・プル?」

皆・・・怖がって居ますよ・・・

プルセルさんは物凄い顔をして去っていきました。

「か・・・可哀想だな・・・」

「ええ・・・予言・・・します・・・1ヶ月の缶詰状態ですね・・・」

私とアキトさんはアカツキさんの無事を祈りました。

 

 

 

私はルビィを連れて医務室にやってきました。

「イネスさん、ユウタの容態はどうですか?」

「あら、ルリちゃん・・・そっちはルビィね。」

「はい、ドクターイネス。お久しぶりです。」

ルビィはペコリと挨拶します。

「ユウタはやっぱり失語症みたいね。

さっきまでラピスちゃんとアヤが色々試していたけれど・・・

やっぱり駄目みたいね。」

珍しく弱気なイネスさんを見ます。

「今はどうしているんです?」

「時々、絵を書いているけれど・・・」

そう言ってイネスさんはユウタの書いた絵を見せてくれます。

「これ・・・」

「ええ、他の色も有るけれどこの色しか使わなかったの・・・」

その絵は全て赤色しか使われていませんでした。

「血の色・・・でしょうか?」

「両親の死を表現しているのかもしれないわ。

・・・ナデシコが何とかしてくれるかもしれないわね。」

「そうですね・・・」

私とイネスさんは漠然とそう思っていました。

ナデシコなら・・・

 

 

プシュ・・・

医務室の扉が開き、入ってきたのはキノコ・・・

「あら、提督。何か?」

キノコは私たちを見ると

「ふん・・・そこの娘は消去されたんじゃないの?」

ルビィを指差して言います。

「ええ、ですから作り変えたんですよ。」

「まぁいいわ。・・・ところであんた・・・まだ生きてたの?」

私を指差して言います。

「何の事ですか?」

「とぼけないで。私の部屋覗いてたんでしょう?」

「ええ、それが何か?」

「だったら、何故テンカワ=アキトの所に行かないの!

殺されるかもしれないのよ!」

「信じて・・・ますから・・・」

キノコは首を振り

「判んないのよ!あんた達が・・・一体何者なの!」

「少女ですけれど・・・」

「っ!あのねぇ!」

キノコが切れかけたところで再び医務室の扉が開きます。

「動くな!おとなしくしていれば危害は加えない!」

小銃を持った男が3人・・・これは油断しすぎましたか?

「ルリちゃん、この事態は予測していたの?」

「いえ、プロスさん達が動いていましたから・・・でもこの3人はノーマークでしたね。」

「あ・・・あたしは関係ないんだから・・・」

キノコはあたふたしています。

「ルリ・・・アキト達も制圧作戦中で来れない・・・」

ルビィがそっと私に教えてくれます。

銃を持った相手が3人・・・ちょっとまずいですね・・・

その時、カーテンの向こうからユウタが・・・

相手のうちの一人がユウタに銃を向けます。

「危ない!」

私はとっさにユウタを抱きかかえて庇います。

だぁん!

銃声が・・・聞こえ・・・撃たれた・・・

・・・痛みが・・・有りません・・・

「ぐっ・・・」

私は後ろを振り向きます。そこには・・・

「て、提督・・・」

銃を向けてきた相手は、一瞬隙を作ります。

その隙に私は、アキトさんから習った神速の歩法『旋駆け』で

相手との間合いを一瞬で詰め、なぎ倒します。

「ぐっ・・・」

「イネスさん、提督は!」

イネスさんはゆっくりと首を振ります。

「そんな・・・」

「・・・いいのよ・・・あんた達を見てると・・・歯がゆいのよ・・・」

「喋らないで!」

イネスさんは必死に治療をしています。

「ドクター、心拍数低下、血圧低下・・・」

「あたしにも・・・正義を信じている時が・・・あった・・・のよ・・・」

「喋らないで下さい!」

私はイネスさんの手伝いをしながら言います。

「・・・あんた達・・・の・・・正体・・・は・・・」

「私たちは、未来からやってきました。最悪の未来を回避するため・・・」

「・・・そ・・・う・・・それで・・・」

この人も救いたかったのに・・・

ユウタがキノコのところにやってきます。

この構図・・・ユウタを助けた時と一緒・・・

「・・・あ・・・んたも・・・生き・・・なさい・・・」

キノコが優しくユウタの頬をなでています。

「ぅ・・・ぅ・・・ぅぁあああああああん」

ユウタが・・・声を出して・・・

「・・・あ・・・んた・・・達と・・・一緒に・・・過ごした・・・時間は・・・たの・・・し・・・」

そう言うと、キノコは息を引き取りました。

辺りには、ユウタの泣き声が響いていました。

ルビィに抱かれながら・・・

 

 

 

「ムネタケ提督に・・・敬礼!」

ユリカさんが号令をかけると皆が習います。

キノコの遺体を乗せたカプセルが宇宙に射出されます。

「提督の要望は・・・守れませんでしたなぁ。」

キノコがネルガルと交わした契約では、葬式なんて勘弁して欲しいとの事でした。

でも、私たちは・・・

「嫌な奴でも・・・居なくなるとさびしいわね・・・」

「ホントだねぇ。」

エリナさんとアカツキさんが話しています。

「ところで・・・こいつらどうするの?」

ミサキさんが襲撃してきた人たちを指します。

「背後関係を調べるなら今のうちです。」

「ゴートさん、こいつら・・・知っています・・・」

イツキさんが言います。

「ホントかよ!」

「リョーコにボコボコにされた奴って、喋る事が出来ないものね〜。」

「だって、こいつら俺が着替えてる時にやってきたんだ!」

「それで、近くにあった椅子を振り回して、ボコボコにしたんだよね〜。」

「記憶が飛んでしまうぐらいにね。」

「アキト君だったら見せたんでしょう?」

「なっ!」

「「照れてる、照れてる。」」

「待ちやがれ!」

リョーコさん達が追いかけっこを始めてしまいました。

まったく・・・

「お話願いますか?」

「こいつらは、ウェルナー中将の部下です。」

「ウェルナー?知っているか?」

アキトさんがジュンさんに尋ねます。

「ああ、ウェルナー中将は軍の中で力をつけてきた人物だ。

色々と、悪い噂は絶えないけれどね。」

「こんな人ですか?」

私はキノコと話していた人物を映像に出します。

「そうです。」

決定的・・・ですね。

「こいつらの目的は?」

「ナデシコを乗っ取る事みたいですね。

提督との会話で人質をとってでもナデシコを乗っ取れと言っていましたから。」

「どうするんです?」

メグミさんがアキトさんに尋ねます。

「この子達の前で人殺しはさせないわよ。」

アヤさんがラピスとユウタを背に言います。

二人は・・・特にラピスにとってユウタは弟のような存在になっているのでしょう。

「アヤさん、処刑なんてマネはしませんよ。ユリカ・・・艦長の判断に任せる。」

「アキト・・・判ったわ。お父様に連絡して引き取ってもらいます。

軍事法廷でしっかり裁いてもらうわ。ルリちゃん、プライベートを覗いたので

謹慎2日間です。私も見て見ぬ振りをしていたから同罪よ。」

「ユリカ。」

「ジュン君、後はお願いね。」

ユリカさんはジュンさんに後の事を任せます。

「ルビィ、後は頼みます。」

「はい。」

こうして私とユリカさんは2日間の謹慎処分を受けたのでした。

 

ナデシコがコスモスとドッキングしたのはそれから30分後の事でした・・・

 


 

ルリ:キノコ・・・死んじゃいましたね・・・

作者:生き返るなんて事は無いから。

ルリ:かなり悩んだみたいね。

作者:個人的にはキノコの死は避けたかったんだけれど・・・

ルリ:ルビィを復活させたのは?

作者:これは最初から思っていた話。復活させるのならこの話かなって思っていたんだ。

ルリ:さすがに目からビームとかは無いみたいですね。

作者:え・・・

ルリ:なんですか?そのリアクションは・・・

作者:いや・・・いろいろ考えた事があって・・・

ルリ:まぁ、良いでしょう。さて、次は・・・

作者:いやな予感・・・

ルリ:次回、機動戦艦ナデシコ Re Try 第18話 水の音は『私』の音 アキトさんとデートです。

作者:普通のデートで済むだろうか・・・

ルリ:どう言うことです?

作者:いや・・・ユリカ達が黙ってみているだろうかと・・・

ルリ:それは心配無用です。

作者:どうして?

ルリ:ナデシコは私が掌握しているんですよ。ちょっとドアロックをいじれば・・・

作者:ラピスもルビィも居るんだから・・・

ルリ:そうでした!次なる対策を・・・

 

・・・そのうちエステバリスゼロカスタムとかΖエステバリスとか出て来たりして・・・

 

 

 

代理人の感想

キノコに黙祷。

まぁ、これはルリのミスかなって気もします。

自分のミスで死んだキノコの存在は多分、彼女の成長の糧になってくれることでしょう。

 

 

後、お約束ですがガイ用に手が唸って光って轟き叫ぶ奴を希望(爆)。