まるで毎日がパーティだった・・・

私たちは忘れていたわけじゃない。

忘れていようとしていたわけじゃない

ただもう少し時間が欲しかっただけ。

夕暮れに、何時までも遊び続ける子供達のように・・・

しかし、宵闇は確実にやってくるのだ・・・

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ Re Try 第21話 いつか走った『草原

 

 

 

 

その日の戦闘は、月の裏側で行なわれました。

相変わらず、軍に冷遇されている私たちは

たった一隻で防衛ラインを任されています。

新型戦艦や月面フレームを揃えている軍はもう、ナデシコに頼る必然が無いとの見解です。

これは、単なる嫌がらせに留まらない、悪質な排除計画でしょう。

それでも、私たちは戦っています。

戦いの先に平和な世界が来ると信じて・・・

「各エステバリス隊収容後、警戒態勢に入ってください。」

何時の間にか戦闘は終わっていたようですね。

ダブルエックス・エステバリスの投入で、私たちのほうが優勢を保ってはいますが

物量で来られると、途端に劣勢になるでしょう。

「了解、エステバリス隊収容します。」

その日の戦闘はそれで幕を閉じました。

 

 

 

「無い!俺のゲキガンガーが無い!」

「あ〜!私の同人誌〜!」

「私の『影武者徳川家康』もありません。」

「僕の万年筆知らないかい?。」

「ワイのバンダナも無いなっとる。」

パイロットの皆さんが騒いでいます。

「ルリ、俺のマント知らないか?」

アキトさんの持ち物まで・・・これは・・・

「プロスさん、艦内で盗難事件が発生しました。」

「判りました、至急対策本部を設置しましょう。」

ナデシコで一旦事件があると、ゴートさんを筆頭に

保安部による捜査が開始されます。

今回被害を受けたのは、ブリッジ要員の一部とパイロットのようです。

私は・・・お気に入りの髪飾りを盗られました。

ブリッジに設置された対策本部には被害者の面々が揃っています。

ミサキさん達は保安部にも籍があるので、捜査員に加わっています。

「それでは、今回の被害状況を教えてくれ。」

ゴートさんがまとめます。

「私は、お気に入りの髪飾りです。」

アキトさんとピースランドに行ったときに身に付けていたものです。

アキトさんが私の為にプレゼントしてくれた大切なものです。

「俺は、マントだ。」

アキトさんはこの世界にやってきて最初に購入したマントです。

愛着があるんでしょうね。マントとバイザーはアキトさんのトレードマークになっていますから。

「僕は・・・兄貴に貰った万年筆だ。」

アカツキさんが何時も大切に使っているものですね。

火星航路の事故で無くなったお兄さんの形見だそうです。

「俺の大切なゲキガンガー!」

ヤマダさん、煩いです。まぁ、あの人形は何時も大切に飾られていましたから・・・

なんでも、ゲキガンガーに染まった時最初に購入したものらしいです。

あれ?もしかして・・・

「私は『影武者・徳川家康』の小説を・・・」

アヤさんが盗られたのは、一番の親友に譲ってもらったと言うハードカバーの小説・・・

今時珍しい、活字の本です。アヤさんがヒマさえあれば読んでいたものです。

何度も、何度も大切に読んでいましたから。

「ワイはバンダナを・・・」

カズマさんが盗られたのは、両親にはじめて買ってもらったトラ縞模様のバンダナだそうです。

「私は、このナデシコで初めて作った同人誌を・・・」

その同人誌、私も手伝ったんですよね。あの時は久しぶりに楽しかったです。

そう言えば、誰にも見せないといっていたヒカルさんでしたが、ヤマダさんの部屋に何故か置いてありましたね。

何時の間にか仲が進展していたのでしょうか。

「俺は、親父に貰ったオルゴールだ。」

古いアンティークのオルゴールで、かなりの値打ち物だと聞いています。

リョーコさんはそのオルゴールを大切にしていましたから。

「私は、指輪を・・・」

イズミさんが婚約していたと言う男性から贈られた指輪ですね。

イズミさんが、その指輪を悲しい目で眺めているのを見たことがあります。

「僕は、ユリカと一緒にピースランドに行ったときに撮った写真だ。」

「私はアキトといっしょに火星で撮った写真よ。」

ジュンさんとユリカさんはそれぞれ写真ですか。

「そう言えば、アキトと自転車で草原を走った時のだよ?覚えてる?」

ユリカさんが言っています。

「私は・・・あの人にプレゼントしようと思っていたブレスレッドです。」

イツキさんは、まだ立ち直っていないようですね・・・

恋人の事は詳しく聞いていません。皆にも話していないそうです。

「ふむ・・・こうして整理すると・・・何の繋がりも無いな。」

ゴートさんが頭を捻っています。

「いえ、繋がりならありますよ。」

「ルリ君、どう言う事だね。」

「それは「説明しましょう!」・・・」

やっぱり現れましたね。イネスさん・・・

「・・・ドクターも何か盗まれたのですか?」

プロスさんが尋ねます。

「ええ、私はお兄ちゃんに買ってもらったクマさんよ。」

こっちの世界に戻ってきた時、イネスさんにねだられて買ったクマのキーホルダーですね。

「益々繋がりが無いじゃないか。」

ジュンさんが言います。

「それがあるのよ。被害にあったのはパイロット全員と私たちは全員ナノマシンに関連しているって事が。」

「だって、私やイネスさんはナノマシン処理を受けていませんよ?」

「私の研究によると、火星で生まれた人間にはナノマシン処理を受けたのと同じ体質を持った人が多いという事がわかったわ。」

イネスさんが得意のホワイトボードで説明しています。

・・・ホント・・・そのホワイトボードは何処から持ってきてるんだろう?

「へ〜・・・そうなんですかぁ。」

「以前言っていたボソンジャンプに適合した体質・・・という事かな?」

アカツキさんがイネスさんに質問しています。

・・・だからイネスさん・・・質問を受けるたびに恍惚とした表情を浮かべるのは止めてください。

「ええ、ボソンジャンプが可能な人間には2種類あって、A級とB級にランクされるわ。

その中でも、火星生まれの艦長やお兄ちゃん、私はA級というのは前説明したわね。」

皆が頷きます。以前アキトさんが月にジャンプした時に説明していましたからね。

「一連の事件でナノマシン処理を受けた人間で、しかも自身にとって大切な物、

あるいは思い出深い物が盗まれている事が共通項よ。」

イネスさんはホワイトボードに色々と書き込んでいますが、私とアキトさんは二人で話しています。

「アキトさん、これって・・・」

「ああ、以前と違うが共通で何かの事をしている・・・という事になるな。」

アキトさんは皆を注意深く見ています。

「記憶マージャンではその人の過去が繋がって見えましたが・・・今回は?」

「まだ判らない・・・だが、大切な物が盗まれているという現実は解決しないとな。」

「ええ。」

私とアキトさんは皆の行動を見ていましたが、特に怪しい動きはありませんでした。

「・・・ラピスは何も盗られていないのでしょうか?」

私は、ずっと心に引っかかっていた事をアキトさんに尋ねます。

「そう言えば・・・来ていないな。被害が無かったとでも言うのか?」

私はオモイカネにラピスの所在を確かめます。

『Yユニット先端部・・・』

まさか・・・私とアキトさんはオモイカネの表示を見て顔を見合わせます。

「ラピス、ラピス・・・返事をしてください・・・ラピス!」

私はコミュニケで呼びかけますが返事がありません。

『おい!ブリッジ!何かあったのか!Yユニットに近づけねぇぞ!』

セイヤさんからの報告は、Yユニットの整備をしようとしたところ、

重力制御が利かなくなっていたり、高電流が床に流れているというものでした。

「サルタヒコへのアクセスは!」

ゴートさんが叫んでいますが・・・

「ダメです。全てキャンセルされてしまいます。」

完全に自閉モードになっているみたいですね・・・

「直接行くしかないか・・・」

アキトさんが呟きます。私は、ユウタの居所を確認しました。

あの二人はいつも一緒にいますから・・・

どうやら、医務室で寝ているようですね。

「サルタヒコに行くメンバーは・・・アキトと、アカツキさんと、イズミさんと、アヤさんと、カズマさん。

それから、ヤマダさんと、ヒカルさんと、リョーコさんと、イツキさんと、ミサキさんでお願いします。」

「私たちも行きます。」

『私かルリのどちらかが居なければサルタヒコの説得は無理です。』

私とルビィが言います。

「それに、ラピスを救出しないと・・・」

私の言葉で、プロスさんが

「・・・良いでしょう。ルリさんはテンカワさんたちのチームに、ルビィはヤマダさんたちのチームに入ってください。」

「はい。」

『了解しました。』

本当はイネスさんやユリカさんも行きたいのでしょうが

イネスさんには医務室での仕事が、ユリカさんは艦長として残る事になりました。

私とルビィはシステム管理者として、サルタヒコの異常を見逃すわけには行きませんから・・・

「では、10分後に第38通路入り口に集合。」

ゴートさんが締めます。

ラピス・・・無事で居てくれるといいのですが・・・

 

 

 

 

 

「ところで、ルリ・・・自転車乗れるのか?」

「・・・忘れていました・・・乗れません・・・」

「時間が無いな・・・」

私とアキトさんは、二人で途方にくれていました。

 

 

 

 

 

第38通路・・・Yユニットへの入り口です。

「Yユニットにはサルタヒコが管理するメインコンピューターと、非常時に使う

サブコンピューターがあります。私たちはメインコンピューターに向かい

サルタヒコの説得をします。ヤマダさんたちはルビィをサブコンピューターのところに連れて行って下さい。

後の事は私とルビィが何とかします。」

「おう!任せとけ!」

ヤマダさんが力強く返事をします。

「ほな、行こか。」

「こっちも出発しよう。」

こうして、私たちはサルタヒコの元に向かいました。

当然、私は自転車に乗れないのでアキトさんの背中にしがみ付いています。

「ルリ、振り落とされるなよ。」

「はい、アキトさん。」

アキトさんは力強く自転車を走らせます。

後に続く、アカツキさんや、カズマさんたちも負けじと付いて来ます。

「ルリちゃん・・・計画的犯行ね・・・」

アヤさん、何を言っているんですか。

自転車なんかに乗ったこと無いんですから、当然の権利です。

まぁ、補助輪を付ければ良いじゃないかと言う意見もありましたが・・・

当然、却下しました。

だって、アキトさんの背中を感じられていられるんですから。

自転車はぐんぐん進んでいます。

自転車って良いですね。風を感じます。

 

 

 

 

 

前回のように死者が私たちの前に現れる事はありませんでした。

その代わり・・・

「ドアが開かない・・・」

「サルタヒコがロックをかけているのか。」

「ルリちゃんでも駄目?」

「ええ、こちらからのアクセスは相変わらず受け付けてくれません。」

「そんなん、昔っからこうすればええんや!」

カズマさんは持っていた小銃でドアのロック部分を撃ち破ります。

「な。」

「まったく、強引なんだから。」

カズマさんの笑みにアヤさんは呆れ顔で答えます。

「開けるわよ。」

イズミさんがドアに手をかけようとします。

「ちょっと待ってください。素手で触らないほうがいいですよ。」

私は、持っていたかばんの中から高電圧用の絶縁手袋を用意します。

それを、アキトさんに渡すと、アキトさんは手袋をはめてドアを開けます。

部屋の中には・・・ラピスが立っていました。

「ラピス、無事だったのですね。」

私はラピスのほうに近づこうとしましたが、肩口を掴まれました。

「まて、様子がおかしい・・・」

アキトさんに言われて、私はあらためてラピスを見ました。

ラピスの金色の瞳にナノマシンが走る光が見えます。

「どないしたんや?ラピス。」

「・・・が無いの・・・」

かすれた声でラピスが言います。

「ラピス?」

「私には・・・大切な思い出が無いの!」

ラピスの瞳からは涙が零れ落ちています。

「アキトにも、ルリにも、アカツキにも・・・皆、大切な思い出が有るのに、私には無い。」

「ラピス・・・」

私は、言葉を失いました。

「ラピス、俺達と一緒にいるのは楽しくないのか?」

アキトさんの言葉にラピスは首を振ります。

「楽しくない訳は無い・・・でも、心に秘めた大切な思いでは・・・私には無い・・」

確かに、無くなったものは私たちの大切な思い出の品・・・

でもそれは・・・

「ラピス、あなたにも大切な思い出があるはずです。

気付かないだけかもしれませんが・・・」

「そんなの・・・無い!」

「ええか、ラピス。ワイらが大切にしていたのは確かに物だったかも知れへん。

けんどなぁ、己が大切にしとる思いっちゅうんは何も物だけや無いんちゃうか?」

カズマさんが言います。

「でも・・・でも・・・私も大切なものが欲しいの!」

っ・・・ラピスの力が暴走しています。

「大変です、オモイカネがラピスによりハッキングを受けています。」

オモイカネにハッキングを仕掛けたラピスの潜在能力は、かなりのものです。

艦内のいたるところで重力制御が異常を起こしています。

「何やて!」

しかし、オモイカネは私が育て上げてますから、ラピスでは完全にハッキングする事は出来ないでしょう。

でも、このままではラピスが危険です。自分の能力以上の事をしているのですから・・・

「アキトさん、ラピスを止めてください!」

「判った。」

しかし、私たちがラピスを止めようとした時、重力制御の異常は私たちを襲いました。

「な、なんだ・・・体が・・・急に重く・・・」

「くっ・・・これもラピスの力なのか・・・」

私たちは動きたくても動けないでいました。でも・・・

パァン!

え?・・・私とアキトさんはラピスの方を見ます。

ラピスの頬をアヤさんが平手打ちしています。

アヤさんは、この重力にも負けなかったようです・・・

よく見ると、アヤさんの目から涙が出ています。

「ラピス、そんな事言わないで・・・私たちはあなたを受け入れたわ。

あなた自身がその事を不幸せに思っているのだったら謝らせて頂戴。

でもね、私はそんな事思っていない。もちろん、カズマだって、プルだって

ミサキだって・・・皆あなたのことを家族と思っているのよ。」

「か・・・ぞく・・・」

「せや、ワイらはラピスを助けた時に思ったんや。

こんな可愛い家族が増えるんは、神さんがワイらにご褒美をくれたんやってな。」

「私たちは、あなたが幸せになるのを見たいのよ。

だから、大切な思い出が無いなんて言わないで。私たちは、あなたが笑っているのを見ていたいのだから・・・」

アヤさんが、ラピスを抱きしめています。

「ヤマダさん、サブルームはどうなりました?」

私はもう一つのチームに連絡をとります。

『おう、今から突入するぜ!』

サブチームの目的はYユニットの制御コンピューターであるサルタヒコにルビィをコンタクトさせて

暴走を食い止めるのが目的でしたが・・・

『何だ!こいつは!』

リョーコさんが叫んでいます。

「どうしたんですか?リョーコさん?」

『ルリ・・・なんなんだよコレは・・・』

私はルビィが見ている映像をウィンドウに出します。

そこには、コンピューターに取り付いているバッタの姿が確認されました。

『このぉ!』:

ミサキさんの一撃でバッタはコンピューターから離れ、ヤマダさんの銃撃で完全に機能を停止します。

それと同時に、ラピスの暴走も収まりました。ラピスは、アヤさんの胸に抱かれて眠っています。

その寝顔はまるで・・・天使のようでした。

その後、ラピスの立っていた後ろには私たちの思い出の品々が置かれていました。

私たちは無言でその品々を回収しました。

アヤさんに抱かれて眠るラピスを起こさないように・・・

 

 

 

 

 

 

「今回の事件は、サルタヒコに取り付いてデータ収集を行っていたバッタによって引き起こされたものと推定されるわ。」

会議室でイネスさんが説明しています。

「敵は、ナデシコのどんなデータが欲しかったんでしょう?」

「不明です。」

ユリカさんの質問にイネスさんが即答します。

確かに、ナデシコのデータを盗んで得する人たちは居るでしょうが、どんなデータが欲しいかまでは判りません。

「ラピスの暴走の原因は?」

アヤさんが尋ねます。

「サルタヒコに接触したバッタは、ラピスちゃんに『憑いた』という表現が正しいのでしょうね。

サルタヒコからコミュニケを経由して、ラピスちゃんに接触、そこで普段は抑圧されていたラピスちゃんの思いが、

私たちの思い出の品を盗むという行為に走ったものと思われるわ。

私たちにも、コミュニケを通じてそれぞれの思い出の品を知った。私たちはラピスちゃんから一方的に接触を受けたようね。

でも、ラピスちゃん本人には暴走している間の記憶はなくなっているわ。」

「それにしても、ラピスちゃんの力は強いものがあるねぇ。」

アカツキさんはやれやれといった感じで話しています。

ネルガルの実験施設で生まれた被害者という事もあり、ラピスには多大な保障をしているアカツキさんです。

もちろん、この事をカズマさん達は知りません。アカツキさんなりの謝罪でしょうね。

「イネス・・・ラピスの力を封印してくれ。」

アキトさんが言います。

「そんな事出来るの?」

エリナさんが言います。

「出来るわ。ナノマシンが暴走したり、異常を起こした時に注入するナノマシンは以前から開発していたから・・・」

イネスさんは悲しい顔をしています。それは、アキトさんの失われた5感を取り戻すために研究していたものだったから・・・

「待って、それじゃぁラピスはナデシコに居られないじゃないの!」

「せや、仕事がのうなればナデシコには居られへん。また一人ぼっちにせいっちゅうんかい!」

カズマさんとアヤさんがアキトさんに抗議をしています。

「そうよ!あんな可愛い子を一人でなんて行かせないわ。」

ユリカさん・・・温かい言葉です。

ユリカさんにとってナデシコで暮らしている人は皆家族だと思っているようですから・・・

相手が同じ人間だってわかっても、前回と違ってあまり脱落者が出ないのはユリカさんの性格に助けられている所為もあります。

「プロスさん、例のものは・・・」

私はプロスさんに前から頼んでいたものを確認します。

「はい、ご両親にはすでに了承済みですよ。」

皆は何が何だかわからないといった表情をしています。

「カズマさん、アヤさん・・・妹達を宜しくお願いします。」

「え?」

アヤさんは混乱しているようですね。

プロスさんは懐から封筒を取り出しています。

「これは、あなたたちの戸籍です。」

そう言うとプロスさんはアヤさんに封筒の中身を渡します。

「いやぁ、苦労しましたよ。形だけでも体裁を整えるというのは。」

アヤさんは、封筒の中身を見て・・・涙が零れ落ちています。

「どないしたんや・・・どれどれ・・・こ、これは・・・」

「はい、ラピス=ラズリとオカクラ=ユウタは、あなた方の義妹弟となります。

この二人は、身元引受人となる親族が居ませんでしたから。

あと、ご両親はお忙しいため、ラピスさん達の世話はあなた方に一任すると申されまして・・・」

「ほな、ラピスはナデシコに居てもええんやな!」

「はい、会長に特別の許可をいただいて、扶養家族ということで承認していただきました。」

アカツキさんは少し照れたようにそっぽを向いています。

「って・・・ちょー待てぃ!オヤジ達の許可って・・・」

「はい、ご両親はコスモスでお二人をお待ちしていますよ。」

何でも、アヤさんたちのご両親は世界的に有名な人らしく父親が探偵、母親は科学者だそうです。

母親の方は国際特許を幾つも持っていて、イネスさんも面識があるそうです。

カズマさん達が使っていた探偵事務所は父親のお下がりなんだそうです。

「よかったわね、アヤ。」

ミサキさんは、アヤさんの肩をそっと抱き、言います。

アヤさんは、何度も頷いていました。

「お兄ちゃん、ラピスちゃんのハッキング能力は後3年は目覚めないわ。」

3年後なら・・・ラピスも色々な思い出を手に入れているでしょうから・・・

「すまない。」

アキトさんは、イネスさんに礼を言うとアカツキさんの肩を軽く叩き、一言何かを言うとそのまま会議室を後にしました。

「後3年もすれば、ラピスにも大切な思い出ができるでしょうね。」

「そうね・・・戦いの道具なんかじゃなく一人の人間としてね。」

私とイネスさんは、遠い将来・・・ラピスが素敵な女性になっている事を願うのでした。

戦いの無い世界で・・・

 

 

 


 

ルリ:うぅ・・・泣けますね。

作者:今回のテーマはラピスの暴走、クサナギ家の秘密って事で・・・

ルリ:毎回思うのですが、タイトルと内容が一致しなくなっているのでは・・・

作者:そんな事は無い。今回だって自転車が出てきただろう?

ルリ:結局、私たちの過去は・・・

作者:バラさなかった。その方が良いだろうから。

ルリ:しかも、今回は自転車二人乗りが出来ましたし。

作者:補助輪つきでの良かったんじゃぁ

ゲシィ!

ルリ:野暮な事は言わないで下さい。恋人の特権です。

作者:ま、まぁ良いけどね・・・

ルリ:それでは、次回機動戦艦ナデシコ Re Try 第22話 『来訪者』を守りぬけ です。

作者:ついに、白鳥ユキナ登場だね。

ルリ:ジュンさんの飼い主ですね。

作者:じゃなくて、

ルリ:じゃぁ、ご主人と召使?

作者:い、いや・・・それはあまりにもジュンが不幸な気が・・・

 

―結局、マージャンは無しという事で・・・

 

 

 

 

代理人の感想

「クサナギ家の秘密」って、両親の話が出てきただけやンけっ! と取合えずツッコミ。

 

それはともかくとしてラピスの説得ですが、

ラピスにとってはみんな「自分の持っていないものを持っている」人間な訳で、

「持たざるもの」ラピスを説得するのに「持てるもの」であるアヤのセリフがアレでは

ちょっと不充分だったように感じました。

とゆーより、ラピスの主張とアヤの説得がすれ違っていて論旨が噛み合ってません(苦笑)。

 

言いたい事はわかるんですが、せめてもう一歩進めて

「思い出はこれから作ればいい」なり、「今まで過ごした時間がそのまま思い出」なり

言わせておいたほうが良かったかとは思います。