連合海軍物語

第一話 第七駆逐隊


俺は双岳隼人、海軍中尉で駆逐艦「汐海」の艦長をしている。

俺はつい今しがた第7駆逐隊の指揮官に任命され、「汐海」艦長と兼任になった。

先の海戦で先任の指揮官が負傷し、次席の俺が指揮を執る事になったわけだ。

やれやれ、いくら兵大学校短期コースを出て戦時特例で駆逐艦の艦長をしているとはいえ23歳で駆逐司令とは。

戦争が長引き人材が枯渇しかかっている訳だが、こんな若造がやる職ではないと思うんだがなあ。

 


平凡な人生を送れなかった男が平凡な艦の群を率いて戦場へ向かっている。

 

− 駆逐艦「汐海」艦橋 −

そんな事を考えつつ、さすがの俺もはじめての艦隊指揮官という立場に戸惑いを感じていた。

島を迂回して敵レーダーを無効化し側面から敵艦隊を奇襲、敵駆逐艦2隻を撃沈させたところで迷っている。


敵が増援を呼び挟み撃ちにされるギリギリといった状況で、
増援の軽巡洋艦か最初からいる駆逐艦、どちらを先に攻撃するか迷ってしまったんだ。


下手な判断をすれば仲間を失ってしまう。

その恐れがいつもの果断さを奪っていた。



いつもの俺なら真っ先に

「突撃。我に続け!」

を発信しているだろう。

だが指令となった今、艦にだけ責任をもてば良い艦長と違い、残り3隻の僚艦や作戦の完遂についても責任がある。



「艦長! いつも通りの行動で良いんです、自信を持ってください」



俺を叱咤しているのは「汐海」副長の暁 泰山

現場の叩き上げから旗艦副長を務めるまでになった苦労人だ。

経験でいえば俺よりよほど部隊の指揮が取れるだろうに。

「汐海」の艦長を拝命して以来、この副長が経験の少ない俺の補佐をしてきてくれた。

「敵は増援を呼んでます。確かに合流されると我々より強力です。

ですが今の時点ではわが軍の方が艦数が多い、各個撃破のチャンスです。

幸い先の戦闘でこちら側には被害がありません」

俺はレーダーと状況表示板を見る。

 

指令:敵レーダー施設の破壊とそれを防衛する駆逐艦の撃破。

 

俺に与えられたのはこの「汐海」と同型艦の3隻、1個駆逐隊だ。

そして敵は我々の存在を知らない。


ならそれほど難しい指令ではない。

突然連絡の途絶えた司令部からの最後の指令がこの作戦、

まずはやれる事から片づけていかなきゃ先に進めないか。

 

「そうだな、副長。何を迷っていたんだろう、俺は」

「はっはっは、艦長! いつもの勢いでいきましょう! それが貴方の持ち味です」

「よし、瑞葉クン、全艦に「突撃! 我に続け」を」

「了解しましたぁ〜、全艦突撃、我に続けデス」

 

気の抜けるような声色で俺の命令を復唱するのは御劔 瑞葉(みつるぎ みずは)

俺と同時に「汐海」配置された女性で「汐海」の通信士をしている。

ちょっと癖のあるしゃべり方とノンビリした口調がボケ具合(バキっ)

・・・いや、お気楽な性格をしている(痛)。


そんな外観とは裏腹に通信士としては優秀。

できれば女性を軍艦に乗せたくはないんだが、この人材状況では仕方ない。

優秀なら未成年でも乗せてしまえといった所まできている。



なんせ俺が駆逐司令になってしまうくらいだし。



俺は敵駆逐艦隊に向け突撃を開始した。

 

− 3時間後 −

「敵港湾施設の破壊に成功しました」

瑞葉クンから報告が上がってくる。

「よし、撤退する」

「これで先の海戦も含め我々の存在が敵に知られてしまったと思って良いでしょうね」

「そうだな、さすがにあれだけ暴れればな(笑)」



戦果:敵レーダー施設を完全に破壊
   魚雷艇を全撃破
   駆逐艦2隻撃沈、2隻大破
   輸送船2隻撃沈
   増援の軽巡2隻を撃退

被害:旗艦「汐海」小破、3隻の僚艦のうち2隻が小破、1隻が中破


大勝利と言って良い戦果だが、各個撃破が成功したのとこちらの存在が知られてなかった故。

もし知られていればここまでの軽微な損害では済まなかったろう。

 

− 第7駆逐隊根拠地 −

「それにしても今回は戦死・負傷者が少なくて良かったわね」

「そうですね、うまい具合に作戦が進んでくれましたし」

 

俺は基地の病院へ愛さんと一緒に来ていた。

先の戦闘で負傷した者のお見舞いと戦死した者の名前を知りに。

戦死した者の家族へ弔辞の手紙を書くのはその兵の上官や艦長の務めだ。

できれば1通も書きたくないが戦死者を出さずに勝てるほど甘い戦場や戦況ではない。

 

「ほらほら、双岳クン。顔が暗くなっているわよ?」

 

俺の隣をあるいているのは医務室長の久遠 愛(くおんまなみ)女史。

医学博士号を持つ才媛。柔らかな茶髪巻毛の美人でいつも白衣を着ていているのがポイントだ。

少し説明がくどいのとちょっとマッド(汗)が入っているのが玉に瑕だが根は良い人・・・・・・多分(汗)。

ま、マッドはともかく?

このような才媛がなぜ一駆逐艦に乗っているのかは謎だが、

腕の良い医者はどこでも大歓迎。

おかげで「汐海」乗組員は大助かりだ。

「え? そうですか。俺が暗くなっても死んだ皆は返ってこないのは分かっているんですけどね」

俺は溜息をつきつつそう言う。

「なら頑張って早く平和を取り戻すしかないわね。今は戦死した彼らのことは忘れなさい。

1人1人のことを考えていては司令官や艦長は務まらないわ。

嫌な言い方だけど兵士をコマとして考えていかに少ない被害で敵に大打撃を与えるかが仕事なんだから」




俺は少しだけむっとしたが愛さんが言っているのは正論だ。




「分かってはいるんですけどね。いい加減艦長をやってきて心構えは出来たと思っていたんだけど」




俺の理想論など現実ではクソの役にもたたない。そんなものは実際に飛んでくる砲弾を防ぎはしない。




「ね、双岳クン、私も手伝おうか? 手紙書くの」

「いえ、艦長の職分ですから。でもありがとう、心配してくれて」




俺は心配してくれている愛さんを安心させるように微笑する。

彼女に心配をかけるようではまだまだなんだよな。



「ううん、大した事は言ってないわ(赤)」

「あれ、愛さんの方こそ顔が赤いですね、風邪じゃないですか?
少し休んだ方が良いと思いますけど」

「え? 大丈夫よ」

「せっかく基地に戻ってきているんですから気晴らしでもしてくれば・・・って聞いてないか(苦笑)」



なにやら思い込んでいるようなので愛さんを残し俺は病室を出た。

この時返事を聞かずに病室を出た事をこのあと猛烈に後悔する事になる(涙)。

 

− 愛 −

「ね、双岳クン、私も手伝おうか? 手紙書くの」

この子抱え込むから心配なのよね。一生懸命なのは分かるんだけど。

艦長としての才能があるとはいえ、まだまだ駆け出しだし。


「いえ艦長の職分ですから。でも、ありがとう心配してくれて」

「ううん、大した事は言ってないわ(赤)」




こっちの任務もあるからしばらくは彼についていくしかないんだけど。

それにしても沖田提督、なんで双岳クンについていくように命令したんだろう?

あの提督が親馬鹿とも思えないし。

それとなく探ってみた方が良いかもしれないわね。



「あれ、愛さんの方こそ顔が赤いですね、風邪じゃないですか?少し休んだ方が良いと思いますけど」

「え? 大丈夫よ。」




まったくニブちんなんだから。

でもそのニブさが助かるって場合もあるし微妙なトコよねえ。


「そうですか? せっかく基地に戻ってきているんですから気晴らしでも・・・」


・・・(思案中)。

はっ! 今の言葉はお誘いよね? そうよね?
女として受けない訳にはいかないわ。



「じゃあ双岳クンに付き合ってもら・・・・・・っていないじゃない(怒)」



私は自分の間の悪さに怒りを覚えてしまった。

でも、人にあたっちゃいけないわよね。



「双岳クン、人の返事も聞かずに出て行くし、おまけに私まで置いていって・・・・・・お仕置き確定ね」



病室の兵たちが怯えていたのはナイショよ(笑)

 

− 駆逐艦「汐海」通路 −

艦長室へ向かっていると急に背筋が寒くなった(汗)。

訳もわからず寒気の元凶を探し辺りを見まわしていると瑞葉クンに呼び止められる。


「あ、艦〜長。副長が今後の作戦行動について話がしたいそうです。作戦室まで来てください」

「わかった」

「今回の作戦は上手くいって良かったですよねえ、被害も最小でしたし」

「そうだね、いつもこのくらいの結果が出せると良いんだけど」




そういって俺はにっこり笑った。



「・・・ええ、ホントそう思います(赤)」

「ん、瑞葉クンも風邪?

俺もさっき寒気がしたし、愛さんも赤い顔していたが風邪が流行っているのかな?」


「ちっ、違いますよ! 風邪じゃあないデス!」

「なに怒っているんだ?」

俺は瑞葉クンがなぜ怒っているのかサッパリ検討がつかないんだが。

「もういいです!」

そう言い捨て足音高く去っていく瑞葉クン。一体どうしたんだろう?

「おっと、作戦会議だったな」

俺は慌てて作戦室へ向かった。

 


− 瑞葉 −

まったく艦長ときたら人の気も知らないで。

アタシ怒っちゃうぞ、ぷんぷーん

あ、マズイ。キャラが違った(あわわわ)

でも艦長の「天然」なんとかならないのかなあ。

女性のそういう誘いとかにはからっきしなのにそのくせ戦の戦機や駆け引きは上手いんだよね。

本当に「天然」なのかと疑うちゃうよ。

 

でも惚れた方が負けなのよねえ、結局。

 

アタシは溜息をつきつつ上甲板に上がり、手すりにもたれて満天の星空を眺める。

「星の煌きは人の想い」って何かに書いてあったけど・・・もしそうならアタシの想いはあの中にあるのかな。

 

「たぁすけてくれええぇ・・・」

 

ん? 遠くから叫び声が聞こえる。

やれやれ、艦長またお仕置きされているのね。

自業自得な事多いから同情はしないケド(笑)

 

「さ、明日もがんばろっと」

 

明日からまた新しい作戦が始まるし。

 


− あとがきという名の戯言 −

まずは最後まで読んでくださった方々、ありがとうございます。

まずは話の前に釈明をm(__)m

通信士として登場している御劔瑞葉の名前ですが、

キャラ原案:マルよ氏の御剣 万葉パクりではないので(^^;。

プロローグをアップしたあと「時の流れに」人名辞典(作者非公認)を読んでいて、

万葉の苗字が「みつるぎ」だった事に気づいてしまいました(汗)。

万葉という名前は覚えてましたが、さすがに苗字までは・・・・・・。

SS内でも名前だけでしか書かれていない事が多いので失念です。

漢字は違いますが同じ「(みつるぎ)」で、名前も一文字しか違わないんでは誤解されそうなので。

もし不愉快に思われていたら申し訳ないですm(__)m

 

さて第一話ですがプロローグと比べていきなり地味になっちゃいました(汗)。

長くなりすぎないように戦闘シーンも限りなく省略してしまいましたし、

今回は見所って物がないような・・・・・・ではなくないですね。

とりあえず帰還後の日常話となっていますが、キャラの書き込みも薄いしまだまだです。

これじゃあ代理人さんの言っていた「知らない読者を引っ張れるか」がまったくできてないです(T-T

もっと頑張って鋼鉄の咆哮を知らない人でも引き込めるような展開と文を考えないと。

エンディングまでのイベントプロットと各キャラの補強用ショートストーリーは、

書きあがっているので戦闘で繋げていくだけなんですが難しいですねえ。

 

それと最後に出てきた隼人へのお仕置きですが「時ナデ」ばりに普通におこなわれています(笑)。

彼女たち曰く、

「愛情表現」

という主張をしてますが果たしてホントかどうかは・・・・・(汗)

 

 

 

代理人の感想

あー、時ナデの場合は一応ギャグなんですが>オシオキ

軽軽しく真似るのはやめておいたほうが良かろうかと。