連合海軍物語
第二話
前回の作戦直前に一切連絡が取れなくなった作戦司令部。
さまざまチャンネルを使いようやくナーウィシア本国の作戦司令部との連絡に成功した。
それによると敵国ウィルシアが保有している「空飛ぶ信じられないくらいの性能をもった」兵器に
ナーウィシア本国にある作戦司令部が強襲・攻撃をうけてほぼ壊滅。
現在懸命に建て直しをおこなっているがしばらくは機能しないという状況になっていた。
こちらも敵に包囲され孤立しているため、援軍を要請したのだが返ってきた返事は・・・
「基地・艦隊ごとに独自に作戦を立案・遂行せよ」
という実に素っ気ない返答だった。
− 第７駆逐隊根拠地・作戦会議室 −
第７駆逐隊の主立った人間、汐海からは俺、副長、瑞葉クン、
駆逐隊の僚艦、
「汐騒」ニュー・マトリクス艦長、
「汐風」ウィーバー・アレス艦長、
「汐音」久保田慎也艦長、
根拠地隊司令の真田少将が集まり現在の状況と今後の作戦について話しあっていた。
「やれやれ艦隊独自に作戦を立案・実行する事になった訳か。
援軍がない代わりに作戦のフリーハンドを得たのは幸いなのかな？」
俺はこの電文を見て溜め息をつきつつ副長に聞いてみる。
「難しいところですね。
こっちとしては援軍も欲しいですが、補給が滞れば干上がってしまいますし。
最低補給だけは送って欲しいものですが。
瑞葉クン現在の状況を説明してくれ」
「ハイ、副長。
現在ですが、敵の前線がさらに進出してきました。
敵航空戦力の基幹となる陸上基地が３カ所あります。
この航空施設を排除しない限り、この根拠地は慢性的に航空攻撃を受けます。
他に基地防衛用と思われる軽巡を旗艦とする一個水雷戦隊規模の水上艦艇がいるようです」
「とすれば、敵の航空兵力が増強される前に叩きつぶす方が楽で良いな。
こちらの存在を敵に知られたとはいえウィルシアは全面攻勢をしている、
すぐに対応は取れないだろうけど早いにこした事はない」
「そうですね、下手に時間をおいて増強されたらやっかいです。
こちらの航空戦力はこの根拠地域で見ても弱体です」
「なら艦長、先手必勝ですネ！」
「そうだな、まず航空機の活動できない夜間に艦砲射撃で敵基地の滑走路と航空機材を破壊する。
その後防衛している艦艇を各個撃破、敵の脅威を排除して補給路を確立しよう」
うなづく皆。
「戦略はそれで良いとして」と手を挙げたのは「汐騒」ニュー艦長。
「艦砲射撃が駆逐艦４隻で大丈夫でしょうか？」
「本当なら戦艦、最低でも軽巡は欲しいところだが、無いモノねだりしてもしょうがない」
「汐騒級は10センチ45口径連装主砲を４基8門、３隻で24門ですか。
陸軍の大砲として見ればそこそこ大きな砲ですが」
汐海副長が汐騒級の主兵装の確認をする。
「汐海は汐騒級後期型で10センチ50口径連装主砲が同じく４基8門・・・幸い工作艦「碓氷」もいる。
近くの基地に50口径砲塔の予備がないか聞いてみるか」
「そうしてもらえると助かります。ただでさえ味方が少ないですからね。
これから敵中突破なども起こりそうだし艦の攻撃力自体も上げたいです」
とニューがうなずく。
「汐音」久保田艦長、「汐風」ウィーバー艦長も同感といった感じでうなづいている。
「それと他の根拠地に残っている艦艇も参加してもらい、
兵力を集中して手数を増やし損害を与えるしかないな。
補給さえ続けば他の基地もかなり作戦行動に余裕が出るだろうし」
「そうですね、では他の基地に連絡して協力体制を取ります。
真田司令、他の根拠地とのすり合わせをお願いします」
「分かった、まかせておけ」
重々しくうなずく真田司令。
「では各艦艇、出撃準備願います」
汐海副長がそう締めくくり作戦会議は終了した。
− 汐海 −
「双岳クン、大丈夫だと思う？」
そう声をかけてきたのは愛さんだ。
「たぶん、大丈夫だと思いますよ。何か問題でもありそうですか？」
「いえ、とくにはないんだけど・・・何となく、ね」
「先行で出した「慶雲」偵察機からも夜間戦闘が可能な航空戦力はなし、
戦力の変化もないと報告を受けてますから」
「でも、油断は禁物よ」
「もちろんですよ、この作戦を成功させて補給路を確立させないと干上がっちゃいますからね」
「そうね、こんな綺麗な海で餓死はごめんこうむるわ」
俺と愛さんが立ち話をしていると副長がやってきた。
「あ、艦長！ 真田指令から連絡がありました。
50口径砲塔の予備ですが３隻分あったそうですよ。
本国の方も在庫分を今回の補給に付けてくれたようです。
それと他の根拠地から汐騒級が２隻きてくれるそうです」
「そいつは幸先良い情報だな、あいつらも喜ぶ」
ニューやアレス、久保田は俺の大学校時代の同期だ。
その為公式な場を除けば「俺お前」で通じる。
「そうですね」
「砲塔の交換はどのくらいでできる？」
「1隻あたり2日といったところです。なので6日ですか」
「汐騒級は砲塔の載せ替えを考慮して建造されているから早いね」
汐騒級は本来65口径10センチ砲連装４基を搭載できるように設計された強武装駆逐艦だった。
戦争が長引き予算が圧迫された結果、コストダウンを図り数を揃えるため
今まで製造されていた45口径・50口径砲が搭載されている。
船体は砲口兵器を搭載する部分をユニット化しており、45口径〜65口径までを自由に載せ替える事ができる。
皮肉な結果だが砲身長が短くなって軽くなったぶん若干速度も上がり、
65口径砲を搭載を考えていた艦の頑丈さもあって他級駆逐艦より生存率が高い。
平凡な性能ながらも信頼性の高い艦となったのだ。
ようやく45・50口径砲を使い切り65口径砲の製造工場も完成して、
設計通り65口径砲が搭載された三型（本来はこれが一型）が順次供給される事になっている。
いずれこのエリアにも新しい船体ごとは無理だろうが、最低でも65口径砲塔のみは供給されるはずだ。
「じゃあ急いでやってもらってくれ」
「わかってます、艦長。「碓氷」の齋藤さんもはりきってますよ、乾坤一擲の戦いだ！って」
「確かに今回の攻撃で敵基地を撃破できなければいずれ艦・人間とも日干しだからな。
負ける訳にはいかないよ」
「ですね、頑張りましょう！」
− 久保田 −
砲塔の載せ替えが終わったため、一時的に暇になったオレは出航準備を副長にまかせ基地内をブラついていた。
目的もないので飲みにでも行くかと考えていたらニューを見かけた。
「ニュー、なにしてんだ？」
「あ、久保田。「汐騒」改装後の見回りをしてきたところよ」
「そうかご苦労さんだな」
ニューもこういうトコはマメなんだよな。
ま、自分の命を預ける艦だから当たり前なんだが。
「そういうアンタはなにしてんの？」
「ただウロついていただけだ」
少し呆れた顔をするニュー。
本来なら艦長はいろいろ忙しい訳だが。
「あんた艦長の仕事ちゃんとやっているの？」
「もちろんやっているに決まっているだろ」
「本当かなあ？」
疑いのまなざしでオレを見ている。
居心地が悪いんで話を逸らそうか（笑）
「そういえば隼人もちょっと雰囲気変わったんじゃねえか？」
「・・・逃げたわね。
ま、責任が重くなったからしょうがないんじゃない？」
「一艦だけだったのが駆逐隊全艦になるわけだしな。
あいつが先に司令になっちまって同期として悔しくないか？」
「べっつに〜、私は自分の器量くらい分かるつもりよ？
それは久保田の方じゃないの？ライバル心燃やしまくりで」
「確かに悔しいがな。今はアイツが先行しているがいずれ俺も提督さまになるさ！ がはははははっ」
「おーおー、凄い自信ね」
そのぐらいの気持ちでいなきゃやってらんねえだろ、いろいろとあるんだよ、こっちにも。
「アレスのやつはどうした」
「このあと「汐風」が改装に入るからその準備で忙しいみたい」
「そんなの副長にまかせれば良いんだよ、俺みたいに」
「はぁ、アンタんトコの副長は泣いてそうね」
溜息をついてウチの副長に同情している。
別にいじめている訳じゃねえし最低限の艦長の仕事は終わらせているんだが。
「なに言ってんだ、目立たない副長が不幸なのはもはや伝統だぜ？（笑）
出番がない赤城副長に出番を譲ってやっているだけだ」
俺は胸を張って答える。
「あのね、目立たないから不幸ってなによ？ それに出番ってなんの出番？」
「出番なんてないじゃないですか、久保田艦長！」
という幻聴が聞こえたのは久保田だけの秘密だ。
「ま、まあ、それは言えねえな（汗）」
「バカだわね、アンタ」
「どうしました？」
そこへ疲れた顔をしたアレスがやってきた。
「おう、アレス！ 準備は終わったのか」
「ええ、明日から載せ替えに入れます」
「オメーももうちょっと他人にまかせれば良いのによ」
「あまり他人まかせは好きじゃないんですよ（苦笑）」
肩をすくめ仕方なさそうに苦笑するアレス。
「ま、オメーの性格じゃあ仕方ねえか。あんまり根つめるなよ？ 胃に穴が開くからな」
「アンタには縁のなさそうな出来事ね（笑）」
「うっせーよ、ほっとけ！ んじゃあ、揃ったところで景気づけに飲みに行くか！」
「もちろん言いだしっぺのアンタの奢りでしょうね？」
「うっ！ ま〜あ言いだしっぺだしな、いいぜ」
「まぁ！ さすが太っ腹！ じゃ、隼人も呼びましょう」
「・・・おい（汗）。
隼人は自腹だな、オレらより給料高いし、この場にいなかったからな。
いや給料が高いんだからあいつに奢らせるか」
「久保田くん、なにか姑息ですね」
「うっせーよ、アレス」
「はいはい、全員久保田の奢りで決定ね。じゃ、隼人を呼んでくる」
嬉しそうに隼人を呼びに行くニュー。
オレはいろいろ複雑な心境で見送るしかないわけだが（溜息）。
「久保田くん、良いのか？」
「ああん？良いんだよ、俺らはいつ死ぬかわからねえからな、好きにさせてやりてえんだ」
「相変わらず不器用ですね」
「ちっ、余計な事言うなよ、アレス」
「承知」
「じゃ寂しい男同士、先に行くか！」
「別に僕は寂しくないですよ？ ちゃんと彼女いますから」
「な！なにぃ〜！ じゃあオメー、補給部の桜子ちゃんと」
「ええ」
「チクショー！ どいつもこいつも！」
南海の空に不器用男の絶叫が木霊するのだった。
− あとがきという名の戯言 −
瑞葉：という事で第２話デス。読んでくれた方ありがとうございました（ぺこり）
隼人：作者が多忙な為、戯れ言代理で出てきました。
瑞葉：でも、随分２話が遅れましたネェ？ 確か５話までは書きあがっていたハズですケド？
隼人：アップが遅れたのは冗談抜きで多忙だったのとあまりにもナデシコＳＳらしくないんでプロットの見直しを行っていたって言っていたよ
瑞葉：確かに何処が「ナデシコ？」って感じデスし
隼人：なので関連する事柄を当初より早く登場させようと思って色々と変更しているそうだ
瑞葉：へぇ〜色々苦労してマスね。自分の実力に見合わない風呂敷を広げるから。
隼人：まあ、そう言うなよ。実力がないっていうのは本人が一番自覚しているんだし。
瑞葉：ま、作者には今後の努力を期待するとして。
ねえねえ、艦〜長。アタシがヒロインだって知ってました？
隼人：なんだ？ 藪から棒に。
瑞葉：へっへっへ〜、コレですよ！
瑞葉クンが懐から取り出したのは１冊のノート。
隼人：なにこれ？
瑞葉：作者のプロットノート。チョット借りてきたんですヨ
隼人：へぇ。良くそんなネタばらしのような物を貸してくれたね。
瑞葉：ええ、それはそれは心良く。手近にあったバインダーの角でちょこッと作者の頭を撫でたんですよ、エライね〜って。
そしたらパタっと倒れて寝てしまったんでそのまま借りてきたんデス。
隼人：・・・・・・（作者が出て来れなかったのは多忙じゃなくコレが原因じゃないのか？（汗）
瑞葉：どうしたんデスか、艦長？ 黙り込んじゃって
隼人：いや、別に（汗）。で、瑞葉クンがヒロインだって根拠は？
瑞葉：ホラ、ここです。御劔瑞葉（ミスマルユリカ？）って書いてあるでショ。
隼人：確かに。俺は・・・お約束のテンカワアキトか。
瑞葉：漢字は違がえど作者のペンネームも貰っているし。作者に愛されているんデスよ、ワタシ（笑）
俺はキャラ設定が書かれた頁をペラペラと見ていく。
隼人：でもさ、俺や愛さん、副長、○○はオリキャラとは言え、各ナデシコキャラがベースになっているけど瑞葉クンの場合は別っぽいんだけど？
瑞葉：どこデスか？
隼人：ホラ、もしユリカだった場合、天真爛漫とか黒髪とか殺人料理（笑）とかの属性がつくんじゃないのかな。
でも、そういった属性がないだろ？
瑞葉：殺人料理って・・・・・・アタシ、料理は普通にできマスよ？
隼人：だろ？ むしろユリカよりはメグミ・レイナードの方がより近いんじゃないか？
通信士って役割や策謀好き（ＳＳ ver.）とかナイチチとか。
ドばきぃ!!
隼人：あろは！?
瑞葉：ナイチチは関係ないデス！ まったく・・・セクハラですよ？ 艦長。
それにそんな事言ったら某天才美少女艦長はどうするんデス？ ヒロインだけどアタシ以上にナイチチですヨ？
両手で胸を押さえて隠し俺を睨みつけている。
その手にはすでに紅く染まったバインダーが。
隼人：いててて、バインダーの角で殴るなって（涙）
ひゅん・・・ドガン！
瑞葉：余計なことをい・・・あうっ！
ぱたりこ
隼人：み、瑞葉クン？ 大丈夫か？
倒れた瑞葉クンの側には不○家ぺ○ちゃん（一部赤色）が転がっている。
これが瑞葉クンを直撃したみたいだな。
俺は恐る恐るぺ○ちゃんがが飛んできた方向に顔を向ける。
そこには・・・髪をツインテールにした少女がにっこりと笑っていた。
そして悠然と歩き去っていく姿だった。
隼人：あれが某天才美少女艦長か、正確な攻撃だ、侮れないな
瑞葉：ちょ〜おっと艦〜長、アタシの心配をしてくださいよぉ〜
隼人：あ、スマン。あまりにも見事な奇襲だったんで、さすが某天才美少女艦長と感心していた
瑞葉：まったく。アタシ怒っちゃうぞ、プンプン
隼人：そういう部分だけはユリカを受け継いでいるみたいだね
瑞葉：みたいデスねぇ、でもヒロインの座は譲りませんよ？
隼人：わかったわかった、そのうち登場する○○や●●、○○○、×××に負けないようにな
瑞葉：ナンですか？ その○○や●●、○○○、×××って
隼人：なんだノートを最後まで見てなかったのか？
瑞葉：ええ、だって御劔瑞葉（ミスマルユリカ？）って書いてあったからアタシがヒロインだと思って。
それ以降は見てないデスよ。ちょっと貸してください
俺からノートを受け取りぺらぺらと見ていく。
次第に形相が変わっていく瑞葉クンを見て俺は余計な事を言ったのだと気づいた。
隼人：さ、あまり長いと読者も飽きるんでこの辺りで（汗）
瑞葉：ちょ〜っと艦長？ どうしてこんなに女性キャラが出てくるんデスか？
隼人：さ、さぁ？ 俺に言われたって・・・（滝汗）
瑞葉クンに襟首を捕まれ引きずられていく。
俺が一体ナニをしたっていうんだ！（ナニをしたからです（作者）
隼人：瑞葉クン、落ち着けって！
瑞葉：ふふふふふ、いつもの場所へ逝きましょうネ、艦長（は〜と）
隼人：俺の話を聞け〜〜〜〜〜っ！
代理人の感想
一体全体どこがナデシコだ？
と、作者さんも期待してるみたいなんで一応突っ込んでおきました。
それはさておき、「１０センチが割と大口径」っていつの時代の話ですか(爆)。
ひょっとして戦車の主砲が88mmだったりするのかなぁ（爆散）。
というか、ここがどう言う世界なのか読んでてよくわかりません。
どう言う服を着て、どう言う飯を食って、どう言う兵器を使って、どう言う戦争をしてるのか。
最低限そのくらいは読んでて自然に頭に入るようにお願いしたく。