連合海軍物語

第三話 蒼い疾風


俺たちは敵航空基地がある島に向けて満月の月明かりの中を進軍していた。

本来なら月光のない新月に行うべきところだが、

戦力増強の兆候ありとの事で急遽作戦を早めた。

それが吉と出るか凶と出るかはやってみないと分からないんだが。


照明を全て消された暗い艦橋内に赤い非常灯のみが点いており、

蛍光塗料で塗られた時計の針は午前2時を指していた。

あと30分で敵の滑走路がある島へ辿り着く。

 

− 汐海 −

島に近づき「慶雲」偵察機が撮影した航空写真を元に測距・砲撃準備をする。

「統一射撃」

「了解、統一射撃用意デス。各艦緒元・・・」


1分もたたずに砲撃準備は完了した。


「準備良し」

「撃ぇ!」


1隻8門、6隻合計48門の50口径10センチ速射砲が同時に咆哮した。

小さい砲だが48門もあれば結構な迫力だ。

甲高い砲撃音を立てて連続で斉射を行う。

目標の滑走路に土煙があがり1、2、3・・・6射目で目標に爆発が起こる。

蓄積された燃料か弾薬に引火したみたいだな。


「よし、砲撃ヤメ。各個撃破は時間との勝負だ、次の飛行場へ急ぐぞ」

「了解!」


同じように2つ目の飛行場に向かう。


座礁に注意し慎重に繰艦してギリギリまで岸に寄せる。

島に近づき砲撃準備を始めたところで爆発音が響いた。

 

ズズーン!

 

「「汐雲」、被弾! 魚雷艇がいます!」

「くそっ、島に近づきすぎたか」

「「汐雲」速度低下、このまま取り残されて魚雷艇の餌食になりますヨ!」


隊列の最後尾にいた「汐雲」から黒煙が上がっている。


俺は失敗を悟る。

小さい砲だけになるべく接近して威力と精度をあげようと思ったのだが近づき過ぎたようだ。

 

「「汐雲」より通信【魚雷被弾。我、機関損傷。最大18ノット】」

「「汐雲」は離脱、ポイント256で待てと。ここで1隻も沈める訳にいかない。

各艦、魚雷艇を迎撃、「汐雲」退避の援護を」

「了解、「汐雲」は艦の保持を優先、離脱せよ。各艦は魚雷艇を迎撃、「汐雲」の退避の援護」

 

艦上の機銃で魚雷艇を迎撃、撃ち込まれてくる雷撃を転舵してかわす。

隊列も乱れたか。これでは統制砲撃は無理だな。

 

「各艦は魚雷艇撃破しだい各自で滑走路を砲撃せよ」

 

真っ先に砲撃を始めたのが久保田が艦長をしている「汐音」だ。

相変わらず血の気が多いというか攻撃に関しては素早い。

その分、防御には粘りがないんだが。

 

 

「敵滑走路方面より通信が出てます。たぶん救援要請かと」

「援軍を呼ばれるのはまずいな、魚雷艇は?」

「あらかたカタがついたようですね。まだ高射砲でこっちを狙っているのがいます」

 

副長が状況を確認して報告してくる。

 

「集中砲撃で一気に叩き潰す! 統一射撃。

まず発砲炎を目標に高射砲を破壊、その後敵滑走路」

「了解、統一射撃用意デス。目標・・・」

 

魚雷艇の雷撃をかわす為、バラバラになっていた各艦が集まりはじめる。

 

「準備良し」

「撃ぇ!」

 

「汐雲」が離脱してしまったがそれでも40門の砲を使い砲撃を開始する。

数斉射したところで高射砲に命中したようで爆発が起きた。

後は滑走路を潰せばここも終わりだ。

 

「敵艦確認! 8時の方向、20000m。6隻接近中デス!」

「打ち方ヤメ。敵艦迎撃用意!」

「距離2万か」

「どうします艦長?」

「そうだな、奇襲は・・・こういうのはどうだ?」

 

俺は作戦を説明する。

 

「砲撃に熱中している振りをして雷撃しよう」

「と言いますと?」

「距離10000になったら予想進路に全魚雷を使って雷撃。

直ぐに次発装填して6000になったら気が付いた振りをして敵艦隊を攻撃に向かう」

 

敵の速度が38ノット、こっちの雷速が48ノット、

相対速度は86ノットだから10000mで発射した場合、約3分半で魚雷と敵が交差する。

交差間際で敵に気づいたようにする事でこっちの雷撃を悟らせないようにする訳だ。

 

「その前に撃たれた場合は?」

「右往左往だ」

「はぁ?」

 

訳が分からないといった感じで副長が首を捻る。

 

「練度が低いように見せかけて敵を侮らせる」

「ナ〜ルホド、向こうを騙してこちらの雷撃を気づかせないようにするって事ですか?」

 

瑞葉クンが相づちをうってくる。

 

「そういう事。ちょうどその頃には最初の雷撃が襲いかかる。

その結果を見て・・・」

「旗艦を叩き潰す訳ですね」

「ああ、軽巡を集中的に狙う」

 

話しているうちにモニタで艦種を確認していたオペレーターの佐賀一曹が報告してきた。

 

「艦種確認、軽巡はウィル級、駆逐艦はハザード級です」

「2種とも最新鋭ではないですが新しい艦ですね」

「そりゃ最前線に旧式はもってこないだろ」

「違いないです」

 

■軽巡洋艦ウィル級
全長168m
6200トン
15センチ連装主砲4基8門
対艦ミサイル(無誘導型)
5連装魚雷発射管×2
40ミリ機銃×10

■駆逐艦ハザード級
全長113m
2000トン
50口径10センチ連装速射砲3基6門
5連装魚雷発射管
爆雷投射装置
40ミリ機銃×6

 

「ウィル級ですか、魚雷戦を想定した重雷装艦ですね。
片舷10射線の魚雷は要注意ですよ、艦長」

「相変わらず詳しいね、副長」

「まあ趣味みたいなもんなので(笑)」

 

「副長、ダメージコントロールの準備は?」

「ぬかりはありません、終わってます」

 

さすが古強者、用意が早い。

 

「よし、砲雷撃戦用意! 目標は敵軽巡。

10000で敵艦隊の予想進路に全魚雷を使用して雷撃。

距離6000までは島を砲撃、その後敵に向かって突撃だ」

「了解!」

 

「距離10000です」

「雷速48ノット、撃ぇ!」

 

「汐海」の5連装発射管から魚雷が海に躍り込む。

続いて僚艦が予想進路に向けて雷撃をし計30本が海中を進んでいく。

 

「さて仕掛けは上手くいくかな」

「いって欲しいですよねえ」

 

距離7000で敵軽巡が発砲を開始した。

僚艦たちはわざと艦列を乱し慌てた振りをして敵を侮らせている。

 

もう少し・・・もう少しだ。

俺はストップウォッチを見る。そろそろあの海域に魚雷が到達するはずだ。

 

「距離6000!」

「進路、敵艦隊!」

進路を敵艦隊に向けて進み始めた直後。

 

ズズン、ドーン!

 

先頭を走っていた軽巡に2本の水柱が立った。

さらに後続の駆逐艦に3本の命中を確認。

後続は魚雷をかわす為、慌てて進路を変え隊列が崩れる。

 

「成功ですよ、艦長!」

「ああ、上手くいって良かったよ」

 

先頭の軽巡は黒煙を吹いて傾いて止まっており戦闘力を喪失しているようだ。

駆逐艦は5隻中3隻を確認。1隻は姿が見えず、もう1隻は沈没しかかっていた。

 

「よし、無傷の艦を集中して狙うぞ」

「全艦突撃!」

 

先手を取られ動揺した敵は隊列を戻す暇もなく汐騒級5隻の統制射撃で戦闘力を消失し、

1隻を撃沈、2隻は大破漂流せしめた。

だがこちらも敵の反撃を受け「汐風」「汐騒」が小破状態になった。

使える砲はは34門になってしまったが引き続き作戦を実行しないと。

 

「艦長、どうされます?」

「大破している艦は放っておいても沈むだろう。

敵兵を救助をしたいところだが、まだ滑走路が残っている。

彼らには申し訳ないが自軍に救助してもらうしかない」

「そうですね、まだ作戦中ですし」

「よし、ここの滑走路を破壊後、島の反対側にある最後の滑走路に向かう」

 

手早く基地を砲撃し滑走路を破壊する。

あとは島の反対側にある最後にして最大の滑走路の破壊に向かう。

ここは重爆の発進基地でもあるので確実に潰しておかないと。

 

最後の滑走路を破壊に向かう途中、離脱した汐雲から緊急通信が入ってきた。

 

 

− アレス −

【なんだぁ、ありゃあ! 凄いスピードだ。撃ってきたぞ! こちら汐雲、救援求む、救援もと・・・ガン!】

「汐雲、応答してください、汐雲!」

【ザー】

「汐雲、通信切れました」

「アレス艦長、一体何がおきたんでしょう?」

「とてもマズイ事がおきているようですね」

「どうします?」

「今のうちに負傷者の治療と交換要員の入れ替えをしてください。それと魚雷の次発装填を」

「了解」

 

さて、鬼や蛇でもなければ一体何が出てくるんでしょうね?

 

− ニュー −

「レーダー波確認! 捕まりました。

不明艦変進、こちらに向かってきます。速度は・・・!」

「どうました? 報告を続けなさい」

「速度・・・80ノット超です」

「!」

 

艦橋にいた人間が声にならない声をあげる。

 

「・・・80ノット? 信じられないスピードね(汗)」

 

− 隼人 −

次々と入る情報に驚きを隠せない。

80ノット?

「不明艦発砲!」

 

ドン!ドン!ドン!

 

艦の周囲に水柱が上がる。

上がった水柱はそれほど大きくなかったが、重巡くらいの砲の口径を積んでいる。おそらく20センチ砲。

だがまともに食らえばブリキ缶と渾名される駆逐艦だけに洒落にならない。

 

こちらも反撃するが先ほどまでの敵艦と比べ、あまりのスピード差に全て敵艦の後方に水柱が立った。

 

敵艦が近づきその姿が見える。

陳腐な表現だが直線を主体とした近未来的な艦型は昔のTVアニメの宇宙戦艦と言われても不思議じゃない。

月明かりの中、ダークシーブルーに塗られた大型巡洋艦は蒼い疾風となって左舷を駆け抜けていく。

その艦の後尾には排気炎こそ出てないが赤く輝くジェットエンジンのような物が2つあった。

 

「あれがウィルシアの「信じられないくらいの性能を持った兵器」か。

どんなモノを載せればあれだけのスピードが出るんだか」

 

俺は呆れて独語する。

 

「呆れたモノ作りますね」

 

副長も同じ意見のようで呆れて独語している。

普通ならあんな事までして速度を上げないだろう。

 

見た感じだと原子炉かガスタービンを通常動力にして、

あの補助ロケットのような物で速度を上げているのか?

あるいは未知の機関か。

 

大きく回頭し再度こちらに向かってくる。

敵艦は優速を最大に生かすべく一撃離脱の繰り返しを狙っているみたいだな。

 

ガン!ガン!ガン!

 

小口径の機銃弾が汐海をなめていく。

「被害報告!」

「40ミリ機銃2座破損、戦死3名、負傷5名です」

「くそっ、せめて機銃弾程度は防御できる物があればな」

「そうですね。機銃座まで防弾にすると艦が重くなり速度が落ちますから難しいですね」

 

こちらも反撃すべく速度を全速にし追いかけるが2倍の速度差があっては話しにならない。

クソっ、速度が違い過ぎて同航戦じゃ追いつかない。

 

汐海最強の武器、53センチ魚雷は最大で48ノットだ、同航戦じゃ完璧に振り切られる。

誘導モードにしても燃料切れか振り切られて海没ってのがオチだろう。

 

なら反航戦に持ち込んで相対速度で魚雷のスピードを上げ、

敵速を計算して前方に網を投げかけるように広げて撃つしかない。

集中被雷にはならないだろうが、速度さえ殺してしまえば・・・。

 

艦の進路をあの超高速巡洋艦に相対するように舵を切る。

 

ん、速度が速い分、ずいぶん旋回半径が大きいな。

速度と引き替えに繰艦性は良くないか、この欠点を上手く使わないとな。

 

後ろを確認すると後続の艦も全く同一の航跡を辿ってくる。

よし、きちんとついてきている。これなら練度も問題ない、やれる。

 

「統一魚雷戦! 各艦に連絡、一斉にやるぞ」

「了解デス、統一魚雷戦用意!」

 

瑞葉クンが各艦に通信を送る。

 

「接近して仕掛ける」

 

「突撃、我に続け!」

 

 

− 久保田 −

「旗艦より信号来ました! 突撃、我に続けです」

「よっしゃ! 旗艦に遅れるなよ。ダメコンは?」

「終わってます!」

「いいぞ!」

 

さーて、隼人のお手並み拝見だ。

 

− 汐海 −

40ノットの速力を出し激しく転舵を繰り返しながら敵の砲弾をかわしていく。

敵の砲撃は散布界が広く常に機動していればそれほど恐ろしいものではないことが分かった。

 

「距離10000」

 

だが距離が縮まるにつれ被弾する艦が出始める。

魚雷は20000mから撃てるが遠くから撃ってもかわされてしまう。まだ遠い。

 

「汐風被弾!」

 

アレス!

アレスが心配だが今は我慢だ。

まずはあの艦に魚雷を当てる事だけ考えろ。

 

「距離8000」

 

 

ドガン!

 

「後部甲板に被弾!」

 

ちぃ、直撃か!

命中の衝撃で艦橋が大きく揺れる。

 

「ダメコン急げ! 各部被害状況知らせ」

 

副長が指示を出し被弾対応する。

 

「火災発生・・・鎮火!」

「4番砲塔電路破損、旋回不能!」

「機関全力発揮可能!」

 

主砲が1基使えないのは辛いな。

だが機関室からの報告に安堵した。

こんな状況で機関が損傷したら一巻の終わりだからな。

 

「距離6000!」

 

ようやくここまできたか。

俺は裂帛の気合いを込め発射命令を出す。

 

「魚雷、撃ぇ!」

 

次々と圧搾空気の抜ける音がし魚雷が海中に躍り込む。

旗艦の発射を見て後続艦が微妙に角度をずらしながら続けて撃つ。

 

撃ち終えると同時に転舵し、主砲を撃ちながら離れる。

汐海のそうした行動で雷撃を悟ったのか急激に速度落とし、

魚雷に対して艦首を向け衝突面積を減らしてかわそうする。

 

だがスピードのある分あの艦は操艦性が悪い、間に合うものか。

 

ところが巡洋艦は後部にあった推進機を側方に向きを変更、

噴射して強引に艦の向きを変えた。

 

驚く暇もなく汐海にコーンという微妙な振動がくる。

 

これは・・・アクティブソナーか?

 

「ピンガーですヨ!」

さっきのソナーで調べたのか主砲を魚雷が進んでくる方向に向けて発砲、その衝撃で複数の魚雷を誘爆させる。

さらに後部推進機をこまめに使って艦の向きを変化させ艦上の機銃を海に向けて乱射、次々と魚雷が爆発していく。

確実に命中しそうな物を排除し生き残った魚雷を回避した。

 

「あの艦はあんな事までできるのか!」

 

副長が驚いた声をあげる。

浅めに深度調整をしたのが仇になったか。

 

あれを防がれたとなるとこっちには打つ手がないぞ。

どうする? 全滅覚悟で更に接近して撃ち込むか?

そんな思案をしていると瑞葉クンから報告が上がる。

 

「さらに不明艦確認、反応大きいです。速度50ノット超!」

 

「おいおい、これ以上なにかいるのか?」


ウィルシアの大盤振舞いに俺は苦笑してしまう。

いくらこのエリアが最前線とは言えそんなに余裕があるのか?

アチラさんが羨ましいぞ。

 

「艦長、9時の方向です」

 

俺は言われた方向を見る。

そこには闇に溶け込むような漆黒の艦がいた。

満月を背にしているため逆光で細部は分からない。

 

だが、かすかに浮かび上がる輪郭が小山のように大きい事だけは分かった。

その戦艦の周りは静寂が支配している。

 

ドドドッ!

 

その静寂を破るように艦上から盛大な煙と共に垂直に何かが飛び出し上昇途中から進路を変えた!

 

「なんだ?」

 

グワァァン!

 

進路を変えた棒のようなモノが飛んできて再度スピードを上げ移動している高速巡洋艦に当たる。

 

「え? なんで巡洋艦を攻撃しているんだ?」

「味方なのか!」

 

兵たちが騒いでいる。

 

「今のは何だと思う? 副長」

「私には噴進弾のように見えましたが」

「俺にもそう見えた。普通噴進弾はまっすぐ飛んでいくだけだ。

真上に上がってから変進している所をみると誘導装置が付いているな」

「確か、わが軍でも開発中と噂で聞いた事がありますが」

「ああ、完成までもう少し時間がかかるそうだが」

 

あれだけ高速で複雑に移動している物体に当てるには打ちっ放しの噴進弾では無理だからな。

誘導装置か先読みできる高速演算装置が必要だ。

 

じゃなきゃ本当のマグレか。

 

「だとすればあの黒い戦艦もウィルシアの?」

「たぶんな」

「仲間割れでもしているんですかネェ?」

それはあの2隻に聞いてみないと分からないよ」

「それもそうですネ」

 

機関をやられたのか高速巡洋艦の速度はかなり落ちていた。

艦上の所々から火災が発生し、その艦体を赤く不気味に照らしている。

 

「艦長、もう1つの不明艦がレーダーから消えました! 捉えられません!

時々小さいなノイズは出ますが瞬時に消ます」

 

 

まずいな。

万が一に備え俺は敵巡洋艦からさらに距離をとり島の岩陰に艦を移動させる。

遠雷のようなドーンという音が聞こえ、何かが飛来してくる音がここまで伝わってきた。

 

 

 

ドドーン!

 

 

「なんだ、ありゃ!」

「すご〜い、滝みたいデスよ!」

 

俺たちは呆気にとられた。

 

高速巡洋艦の周りに立ち上がった水柱は俺が今まで見た中で最大の物だった。

演習の時に1度だけ周防級戦艦の50口径51センチ砲の斉射を見たことがあるがあそこまででかい水柱じゃなかった。

 

おまけに初弾から挟差だと?

先の攻撃と合わせると本当にマグレなんかじゃない。

 

「レーダーから消えた? レンジ外じゃないのか?」

「いえ、主砲弾の弾道はレンジ内から出ています」

 

さらに闇の中に9つの発砲炎が閃き次々に高速巡洋艦に命中した。

艦橋を軽々と吹き飛ばして海に叩き込み、艦首が食いちぎられたように消失。

 

完全に行き足が止まり傾いた高速巡洋艦に3度目の斉射が命中、

火薬庫を突き破ったのか大爆発する。

 

真っ二つに折れ海に沈むその一瞬、高速巡洋艦の向こう側に黒い戦艦の姿が現れたがすぐに闇に溶けた。

 

爆発光が消えた後には何も浮かんでなかった。

1万トンいや2万トン近い大型巡洋艦が実質2斉射で轟沈。

 

いくら数が多いといっても駆逐艦5隻ではあの黒い戦艦に掠り傷も負わせられないだろう。

唯一の勝機は接近して魚雷を撃ち込む事だが、積んでいる砲が51センチ以上なので防御もそれに応じた装甲を持っているはず。

たかが2〜3発の魚雷では傷は付けられても沈没などしない。

おまけにあの斉射スピードや対艦誘導弾の存在を考えると夢の中ですら実現しない出来事のように思える。

 

「瑞葉クン、あの艦に通信を入れてくれ」

「ダメです、反応ありません!」

 

黒い戦艦は再び姿を現し今の通信で場所を割り出したのか進路を変えこちらに向かってくる。

 

しまった、なにやってんだ。

俺は迂闊なことをしたと今更気づいた。

 

近づいてくるその圧倒的な質量に恐怖を憶える。

隠れているはずなのにあのバカでかい主砲がこちらに向けられた。

 

「あんな化け物を相手にするんですか? 艦長(汗)」

「艦長、ちょ〜っとまずいんじゃないですか?(汗)」

 

そんな事言われなくても分かっている。

だが味方かどうかすら確認できないのでは。

 

「微速で移動、さらに島影に隠れて向こうのレーダーを誤魔化す。

間違ってもこっちから手を出す事はするな」

「あの攻撃を見てやりあおうって馬鹿な艦長はウチにはいないと思いますが」

「そうだと良いんだがな」

 

俺はその馬鹿な事をしそうなヤツの顔を思い浮かべる。

さすがにアイツでもここまで圧倒的な差があればそんな事はしないと思うが・・・でもちょっと心配なんだが。

 

微速で場所を移動しさらに島よりに進路を向ける。

これで島と一体化しているからレーダーを使った精密射撃はできないだろう。

 

− 久保田 −

「へぶしゅん!」

 

盛大なクシャミが出やがったな。

ちっ、隼人あたりが心配してんな、ったく。

 

「艦長」

「なんだ?」

「まさか・・・あの戦艦とやりあうなんて事言わないですよ・・・ねっ?」

「・・・ふっ」

 

オレ獰猛な笑みを浮かべ赤城副長を見返す。

 

「ま、まさか」

 

副長の後ろでは乗組員が泣きそうな顔してオレを見ているし。

やれやれ、オレってそんなに信用ねえのかな。

 

「心配すんなって、そこまで馬鹿じゃねえよ」

「良かったです! 艦長に理性があって」

「・・・おい。取りあえず司令の指示待ちだ」

「指示ですか」

「ああ」

 

たぶん向こうのレーダーに捕捉されないようにしばらく動かないか微速で少しづつ移動するつもりだろう。

 

「それで向こうを騙せるんですかね」

「たぶん無理だろうな」

「え?」

 

赤城副長が慌てて艦の周りを見回している。

 

「向こうが本気ならとっくに吊光弾を撃つなりして見つけようとするだろ。

こっちは島陰に入ったまま一歩も動いてねえ。

当然その時以降、離脱するレーダーの反応がねえんだ。

向こうのレーダーマンが余程間抜けじゃない限り、島影にオレらがいる事は分かっているはずだ」

「じゃあ」

「心配すんな、たぶんだが今は敵にならねえよ、アレは」

「ホントですかねえ」


納得がいかないといった感じで首を捻っている。

 

「ま、しばらくたてば分かる。

少し暇になるぜ。さっきの戦闘の情報をまとめておけよ、いつかやり合う事になるかもしれないんだからな。

それと逆探作動させておけ」

「了解」

 

− 赤城副長 −

30分ほど逆探を作動させ息を殺していたがあれっきり反応がなくなった。

司令から命令が届き作戦再開をしたが久保田艦長の言った通りあの黒い戦艦は消えていた。

敵の敵は味方というが本当に味方なら劣勢の我が軍にはありがたい事なんだが。

 

− 隼人 −

島影に息を潜めてからすでに30分が経過した。

 

 

「それにしても待つというのは辛い事ですね」

副長がそう言ってハンカチで額の汗をぬぐう。

「そうだな。この場合、焦りが死に直結するからな」

俺の白い第二種軍装(妨暑用)も冷や汗で濡れている。

「こんな短時間でも胃が痛くなっちゃいますヨ」

お気楽な瑞葉クンらしくなくお腹に手を当ててさすっている。

「俺だってそうさ、あの馬鹿でかい砲弾が飛んできたらと思うと気が気じゃないよ」

 

俺は窓から艦の外を見る。

だが真っ暗な闇が見えるだけであの艦は見えない。

日が上がりきってしまうと航空母艦の攻撃も受けかねないのであまり時間がない。

 

「あと15分だ、それまでに反応がなければ作戦を再開する」

「了解」

「レーダー、見逃すなよ?」

「わ、分かってます」

 

レーダーマンも緊張のせいか顔が蒼白になり強ばっている。

責任重大だからな。

 

レーダー、逆探だけではなく目視による監視も含め総動員して警戒に当たっている。

いきなり奇襲されるのを避けるためだ。

 

さらに15分たち周囲に黒い戦艦がいない事を確認してゆっくり移動を開始する。

 

最後に残った滑走路のある島へ行き統制射撃で破壊した。

さすがに防衛艦隊が敗北した事を知ってか大した抵抗もなく砲撃は終了した。

 

俺は作戦目標の滑走路3つとほとんどの航空機材を破壊。

防衛していた軽巡と駆逐艦を撃破したので撤退を開始する。

 

今回の作戦の成功を見極めるべく払暁に「慶雲」偵察機を飛ばし被害状況を確認。

必要があればこのまま第二次攻撃をするという2段構えの作戦だ。

 

一旦引き上げたかに見せかけ敵を安心させたところで再度の強襲。

これなら滑走路の破壊は完遂できる。

 

しばらくすると「慶雲」から

 

【滑走路・航空機材の完全破壊を確認。作戦成功、2次攻撃の要なし】

 

という報告がきた。やれやれ、ようやく安心して帰還できるな。

 

 


− あとがきという名の戯言 −



隼人:あれ、今回は愛さんですか?

愛:そうみたいね。第3話を最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

物体X:・・・・・・ぶつぶつ

隼人:瑞葉クンはどうしたんですか?

愛:部屋に籠もって何かやっているわよ?

隼人:・・・・(また
ろくでもない事考えてなきゃいいけど)

愛:ようやく今回から本格的な海戦の話になったわね。

物体X:・・・・・・ぶつぶつ

隼人:ええ、1・2話は俺の周りにいるキャラと状況の説明をするのが目的だったみたいです

愛:ナデシコキャラと世界観をそのままを使っていればこんな事せずに済むのに。

全部オリキャラだし、私が
「説明」しないと駄目かしらね

隼人:いや、今は戯言を進めましょう! 説・・・紹介はおいおいやりますから、今は愛さんがせ・・・紹介しなくても(汗)

愛:そう? 残念だわ。

物体X:・・・・・・ぶつぶつ


ここで説明されたら5M分のテキスト量になりかねないしな(汗)


愛:それと代理人さんからツッコミきているわよ?「兵器体系や世界観がわからん」って。

隼人:まず兵器だけどゲーム中の武器体系は
二次大戦直前から始まっているんで

代理人さんの言っている
戦車の口径が88mmっていうのは合っているんです。けど・・・

愛:けど?

隼人:失敗したなと思ったのはプロローグで2100年として年代を出したこと。

どう考えても2000年を超えていて「50口径連装10センチ砲」では古過ぎる。

愛:そうよねえ

隼人:それと第一話だからといって律儀に
兵器レベルまで「1」にする必要はなかった。

どうしても乗っている艦と超兵器との対比になるので
弱い程都合が良いって部分があるんですよ。

だけど年代を考えると少なくても作者世界の護衛艦が使っている速射砲、

VLSは無理でもミサイルランチャー、誘導度の低い魚雷程度は搭載していないと釣りあわない。

愛:確かにそのくらいは必要かも。で、世界観に関しては?

隼人:4話でナーウィシア本国と世界状況を書く予定だったんだけど、その前に突っ込みがきてしまったという(汗)

あ、砲口兵器の名称を変えた改訂版1・2話をそのうち送りますので更新をお願いしますm(__)m>
代理人さま

物体X:・・・・・・ぶつぶつ

愛:ところで、あの物体Xはなに? ぶつぶつうるさいし

隼人:作者・・・のようですね。

愛:鬱陶しいわね、解剖しちゃいましょうか?

作者:(びくっ)

隼人:今ナデシコ関連を書いているようですが無茶苦茶
シリアスな話みたいですよ。

笑うところが全くなくて
「血塗れ」「死」とかいう単語ばかり出てくるんで気が滅入っているみたいです

愛:黒アキト君が出てきそうなシチュエーションね、それは。

隼人:書けば書くほど
になるみたいですし

愛:なるほどね・・・2話の戯言がオチャラケ満載だったのは現実逃避していると見て良いわ

隼人:なるほど、精神の向きがシリアスの正反対になっていると

愛:そう

作者:・・・・ぶつぶつ・・・エグザバイト、エステバリス、ブラックオセラリス・・・

隼人:・・・?

愛:エグザバイト、エステバリス、ブラックオセラリス?

隼人:なんでしょうか?

愛:前2つは機動兵器の名前ね。エグザバイトは漫画版、エステはTV版、

ブラックオセラリスはブラック〜ってあるから映画版サレナの代替機かしら。

隼人:しかし・・・ナデシコらしくないこの話にどうやったら機動兵器が出てくるんでしょう?

愛:さぁ? この作者の事だから普通には出てこないんじゃない?

どうせ
捻りまくって取り返しがつかなくなっているとかね

作者:(ぎくっ!)

隼人:どうも・・・
図星みたいですね

愛:救いようのないバカ

作者:・・・しくしく(泣)

愛:という事で

隼人:第4話の戯言でお逢いしましょう!

 

愛:あ、隼人クン、その物体Xは医務室に運んでおいて。解剖するから。

隼人:は、はい(・・・解剖って(汗)

作者:おたすけ〜〜〜〜〜!

 

 

 

代理人の感想

後書き読まなきゃー訳がわからん、ってのは減点10ですな。

 

作者道大原則ひとーつ!

必要な説明は全て作中で行うべし!

 

読みづらくても何でも、最低限作品の理解に必要な説明は作中でやってしまいましょう。