─ 2096年10月10日 航空母艦〈轟天〉艦上 ─

「うーん、さすが新鋭機! たまらないねえ」


広大な航空甲板の上に男の嬉しそうな声が響き渡る。その声も艦の造る合成風力に流され消えていった。

正式名称ナーウィシア海軍第四機動部隊、北の護りを担当する通称“玄武”旗艦、航空母艦〈轟天〉の艦上で攻撃隊長・久保谷大尉は満足気に頷いた。その隣では呆れたようにペアの佐々木少尉が見ている。


「大尉・・・なんか凄く怪しいですよ、嬉しそうに機体に頬ずりしているって」

「馬鹿野郎! 戦艦に予算を取られてなかなか機種改変が出来なかったんだぞ! ここにきてようやく戦艦を沈められそうな機体が手に入ったんだ、これを喜ばずしてどうする!!」


大尉の隣には巨大な猛禽が鎮座していた。優美な姿をもった機体はロービジリティの迷彩を施されており、巨鳥の胴体には巨大な対艦ミサイルが懸架してある。


海軍航空隊を愛する久保谷大尉が拳を振り上げ口から唾を飛ばして主張し、嬉しそうに頬ずりしていたのはナーウィシアが配備をはじめた新鋭戦闘攻撃機・5式戦〈疾風〉だった。

〈疾風〉は艦艇維持費に予算を取られ、航空機開発に金を回せない陸海軍が前機種〈飛燕〉と同じように共同で開発・使用する多目的用途機だった。


この機体、結構な曰く付きで元になっているSu-37Jは〈こんごう〉がいた時点より未来の機体なのだが、どこからともなく現れた“黒衣の男”がもたらしたディスクの中にあったという。

航空機としての基本データは転移艦〈こんごう〉のデータバンクから得られたものを利用しており、基本的には多目的用途機〈飛燕〉の拡大発展型になっている。外観は先に述べたSu-37J、通称〈烈風〉を元にされた。〈烈風〉は転移世界の日本海軍が使用していた艦上戦闘機だったが多用途を考慮し、素材を変更することで外装を強化している。

そのせいで重量が増えた分、オリジナルより速度は遅くなったものの、耐久力はかなり上がっている。トータル性能は転移世界機の8割といったところだった。


ちなみに〈飛燕〉はアフターバーナーを装備していなかったので、速度が遅くなったとはいえ十分に速い機体になっていた。開発時は〈蒼天〉と呼ばれていたが航空母艦〈飛天〉級2番艦がやはり〈蒼天〉なので混同するという意見が出て急遽、〈疾風〉という名前に変更された。

対艦ミサイルも機体と同じように〈こんごう〉に搭載されていた対艦ミサイル・ハープーンを元に艦載機に取り付けられるようにした改造品で、こちらも葛城ラボにおいて超特急で解析された。〈疾風〉と同時に実戦配備されており、〈飛燕〉〈疾風〉の標準装備として採用されている。


「戦艦が撃沈できるって・・・日本海軍が使用している旧式の〈武蔵〉級っていう想定じゃ意味ないんじゃないですか? やっぱり主力になっている51センチ搭載の〈周防〉級が沈められないと」

「おまえなあ、いくら〈武蔵〉級が旧式だからって50口径46センチを12門持っている強力な戦艦だぞ? それに味方艦なんだからあんまり馬鹿にするなよ」


大尉の言葉に意外そうな顔をする佐々木少尉。


「へえ、大尉って戦艦にも理解があったんですね」

「別に理解があるって訳じゃないさ。ただ現状を見るとな・・・俺たちが航空機で戦艦は撃沈出来ると主張したところで実績がない。やっぱり戦艦が主役なのには違いないしな」


久保谷の目は相変わらず〈疾風〉に向けられている。尾翼に描かれている戦艦を食べる悪魔の図は久保谷の、いや航空機乗りの夢をイメージしたものだった。


「何にしてもコイツの開発を繰り上げてくれたのは沖田提督だ。あの人が航空機に理解があって良かったって事だな」

「確かにそうですね、普通なら新型戦艦の最優先開発を叫んでいてもおかしくはないです。ガチガチの大艦巨砲主義者じゃないのは不思議ですよね」

「そうだな。連合最大の兵器開発基地でもある風雅島を預かっているだけの事はあるよ。お、そろそろアラート勤務だ! 行くぞ」


久保谷と佐々木は素早く愛機のチェックを終えると操縦席に乗り込み発艦の準備を始めた。

 

 

連合海軍物語

第25話 連合海軍第一三独立実験艦隊


─ 2096年10月10日 ナーウィシア風雅島 沖田 ─

「・・・分かりました。情報の提供、感謝します」


そう言って沖田は受話器を置いた。

腕を組み壁に貼られている世界地図をじっと見ている。その様子を沖田の隣で控えている副官・月臣中佐は上官が声をかけてくるのを待っていた。

先ほどの電話はナーウィシア情報部第一課、すなわちウィルシアを専門に扱っている部署からの電話なのだ。情報部からの至急連絡、それが意味する事は一つ。かの国に何らかの動きがあった事を指していた。


「中佐、至急メンバーを集める手配をしてくれ」

「はっ!」


月臣は命令を受け敬礼すると駆けだしていく。

沖田は月臣に指示をすると再度、地図を見る。情報部だけでなく、沖田も独自で情報を集めており第一課から連絡を貰う前におおよそ見当をつけていた。


「ウィルシアめ、やる気だな」


沖田の顔には部下たちに見せるいつもの不敵な笑みはなく精彩がなかった。

指揮官が不安や精彩のない顔をしていては部下に自信をなくさせる。なので沖田は部下たちの前では常に自信のある態度を崩さずにいたが、誰もいないこの部屋の中ではそれを装う必要はなかった。

彼の表情が曇っている原因は連合海軍太平洋戦域全ての戦艦を投入してもウィルシアと互角の戦力にならないのが分かっているからだ。仮に同じだったとしても向こうには転移艦(超兵器)の存在がある。数だけではなく性能でも差がついており、この不利を何とかしなければいけない訳だ。


はっきり言ってしまうと今の連合海軍にウィルシアを真っ向から迎え撃ち押し戻すだけの力はない。数と性能で差をつけられているのでは如何ともし難い、沖田の顔に精彩がないのもおかしくはなかった。

数だけなら前線を縮小し、風雅島まで後退してウィルシアを引き込み、その後方・補給活動を潜水艦と航空母艦で遮断すれば決戦など行わなくても敵は飢え自滅する。

当然の事ながらウィルシアにとって補給線の維持は侵攻作戦の肝だ。戦艦や超兵器は攻撃力が絶大な分、資材を大食いする。太平洋戦域の艦ほぼ全ての艦を引き連れ、かつ切り札ともいえる超兵器の戦闘能力を維持する為には相当な数の補給艦や能力が必要になるが、世界の半分を支配しているあの国の力はそれも可能にするだろう。

それゆえに補給線の寸断はウィルシアも折り込み済みと考えるべきで、兵站を軽視して侵攻作戦を行う人間が指揮官などになれるとも思えず、この作戦もそう易々と遮断させてはくれないだろう。そのあたりを何とかできないかと沖田は考えていた。


戦線を縮小する事に関してはナーウィシア本国にいる政治家たちから文句が出そうだが、実際のところそれしか手がないのでは彼らは口を閉じるしかない。その分、現場に対して文句や嫌みを言ってくる事が予想できるが、ナーウィシア海軍長官・佐伯稔大将や沖田が政治家たちのイヤミを我慢すれば済むだけなら楽な物だった。


本来なら民間に犠牲や負担をかけない為にはグアムあたりで決戦を行い、阻止するのが妥当。それを行うには太平洋戦域の連合海軍全ての参加国が一致団結する必要がある。


ところがこの想定もあの国が足を引っ張る事が予想された。

そう、中国だ。

本来ならアジアには海軍大国の日本がいる。開戦時最大16隻の戦艦と8隻の航空母艦を基幹とする八八八艦隊計画艦を擁していたが対ウィルシア戦で疲弊し、海洋戦力の象徴たる戦艦は新鋭双胴戦艦〈はりま〉を含めても半数の8隻までに落ち込んでいた。航空母艦も4隻にまで討ち減らされた。

8隻のうち2隻は旧式化している46センチ砲搭載艦〈武蔵〉〈日向〉で現在主力となっている51センチ搭載艦には分が悪かった。残っている5隻にしても本土防衛を任務とする第一艦隊所属の〈はりま〉〈きい〉〈かい〉はDF搭載艦として修理・改装中で使用できず、〈ながと〉〈しなの〉〈とさ〉はDF未搭載艦。すでにウィルシアはDFを標準装備にしつつあるので対抗するには難があった。


そういう事情もありかの国は日本の戦力が落ち込んでいるこの隙に〈周防〉級戦艦8隻を揃えアジアの覇者たろうと計画していた。

もしウィルシアの太平洋侵攻作戦が行われた場合、連合海軍参加の義理で保有しているの戦艦のうち2〜3隻しか出してこないと沖田は予測している。参加した艦にしても戦闘に巻き込まれでもしない限り積極的に海戦には参加せず、ただ戦場に居るだけの可能性が高かった。

かの国は連合加盟国として十分な責務を果たしているとはいえない。連合に対して不満たらたらだが、公平に提供される技術が惜しいので加盟を続けている。気に入らないからといって脱退した場合、あっという間に他の国に技術差を付けられ図体が大きなだけの2流、3流国に転落するのが目に見えているからだ。

その為、何だかんだと言い訳をつけほとんど作戦には参加をしてこない。沖田からすれば義務を果たさない国は脱退させるべきだと思っていたがウィルシアに加え、日本の後ろにある中国まで敵にするのは今の段階では得策でなかった。


実際のところ連合海軍と大層な名はついているが決して一枚板とは言えず、身勝手な各国海軍を取りまとめてグアムでウィルシアの太平洋侵攻作戦を阻止する事を考えるとあまりの難事に責務を放り出したいというのが正直な感想だった。だからと言って風雅島最高司令であり、ナーウィシア海軍制服組ナンバー3の地位にいる彼が何もしない訳にもいかなかった。


気が滅入ることばかりだが朗報もあった。御統大将が打診してきた日本との同盟締結がそれだ。戦力の激減した今の日本と同盟を結んでもナーウィシアにはメリットはなかったが、ナーウィシアの成り立ちからくる歴史的対立(日本を見捨てた日本人が建国したのがナーウィシア)の解消や士気の問題から同盟を結ぶ事に沖田は反対ではなかった。

幸い今の日本は非ナーウィシアの田中派が贈収賄で軒並み失脚し、親ナーウィシアの御統提督派が主流になっている。どちらにしろウィルシアを迎え撃つ艦隊が絶対必要なので日本と同盟を結び、まずは強固な艦隊の核を作る必要があった。

ナーウィシア海軍長官・佐伯大将は戦に関してはからきしだが、政治的配慮や軍政には卓越した才能をもつ人間で日本との同盟に反対する事はあまり考えられない。沖田が裏で手を回さなくても佐伯大将自身が判断してゴーサインを出してくれるだろうと考えていた。


それと迎撃艦隊の指揮を執る人間の問題もある。沖田が一番実戦経験が豊富だったが前線を退いてから時間が経っている。現在、一番適任なのはやはり様々な超兵器を相手にし、第一三独立実験艦隊を指揮しているかつての教え子、伊達遙少将しかいない。自分の義理の息子・隼人もいたが少佐では階級が低すぎて艦隊の指揮は任せられなかった。

取りあえずは彼女に迎撃の指揮を執ってもらい、沖田がその後方支援を行うというのが一番理想の形だと思われた。そうなった場合、第一三戦隊司令も兼ねている伊達少将の代わりを見つけなければならない事に思い至った。


(そういえば葛城博士が逸材がいると言っていたが・・・)


沖田は葛城博士が見つけてきたという逸材の事を思い出した。どうせならこの人間に任せてみるのも良いかもしれない。


「それに・・・あの艦たちが切り札にならざるを得ないのか」


この島の最重要区画で艤装が始まった超兵器級戦艦〈零号艦〉。すでに艦の名前が命名され〈和泉〉と名付けられている。自分の義理の息子が基本設計をし幾つかの不備を自分がまとめた艦だ。あの超兵器が使えれば戦闘はかなり楽になるだろう、何しろ超兵器は“1艦で多数の敵を撃沈破する”為に生まれた艦種だからだ。

だが試作艦である〈和泉〉は彼女の後に生まれる妹たちの為に様々な技術が使われているせいで建造速度が遅かった。彼女で使われた技術を検証・改良しより性能の高い艦を造る為ではあったが、ナーウィシア初の超兵器ということもあり今度の侵攻に間に合うかは微妙だった。

沖田は最悪、自分が未完成の〈和泉〉を駆り戦闘に加入する事さえ考えている。総司令が前線で戦う事は忌避すべき事だったが艦の中身を理解し、なおかつ実戦経験がある人間は自分しかいないのでは選択肢はなかった。


〈和泉〉は現在も暁瑠璃という少女が創ったワンマンオペレーションシステムの検証を元にバイタルパート内の改装を行っている。さすがに全部に改装を施そうとすると竣工が1年は遅れてしまうので今のところ重要区画部分の改修にとどまっていた。

ソフトの方はO.O.S.の制作者である少女をこの島に呼び寄せ、優秀なプログラマー群を世界各国から招集しより高性能を発揮させるべくプロジェクトチームを組んでシステムの構築を進めている。


沖田は自分が設計したもう一つの艦を思い浮かべる。

連合海軍一三独立実験艦隊に貸し出している〈高千穂〉級。4隻の準超兵器級戦艦は現在、伊達遙少将の指揮下で現世型超兵器を数隻屠っていた。隼人の指揮する第七戦隊を除けば唯一と言っても良い超兵器に対する戦果だ。

準超兵器と名前はついているが〈高千穂〉級は超兵器ではない。DFを装備している為、“準”とは付いているものの、特殊な技術はほとんど使用しておらず超兵器より既存艦に近い艦なのだ。なるべく安く造れ、なおかつ超兵器を沈められる艦を、というのが〈高千穂〉級のコンセプトとなっている。

1艦で全ての艦種に対抗できる超兵器は単独ないし、ごく少数の護衛艦だけを引き連れて行動しているが(基本的に護衛してもらう必要がないため)、この〈高千穂〉級は2隻ないし4隻の戦隊規模での運用を念頭に設計されている。戦艦としては中サイズの主砲、65口径40センチ砲18門を装備しているが1隻ではDF改修された通常型の戦艦程度しか相手に出来ない。

だが、その艦を集中して使用する事で4隻合計72門という圧倒的な鉄量を叩きつける事が可能になる。強靱な装甲とDFとを装備する超兵器の装甲やDFに負荷を与え突破しダメージを与える。現世型超兵器のDFなら十分破れる威力を持っている。

実際、第一三独立艦隊は現世型とはいえ超兵器を相手に真っ向から砲撃戦を行い、ドリル戦艦〈アラハバキ〉級、高速巡洋戦艦〈ヴィルベルヴィント〉級を沈めていた。


とにかくこの4隻を元にした迎撃作戦を立てねばならかった。


「・・・正直、厳しいな」


沖田十五の漏らした呟きはあまりにも重く、歳相応に見られない彼の顔には深い皺が刻まれていた。



─ 2096年10月11日 太平洋グアム・アプラ軍港 ─


ここはグアムにある連合海軍アプラ基地。連合軍が戦力を湯水のように投入してウィルシアから占領した太平洋の戦略拠点。その戦いで主力となった日本海軍とナーウィシア海軍は甚大な被害を受けたがその被害を容認するほど重要な拠点でもある。

現在は連合軍の最前線基地として要塞化が進んでいた。空軍はウィルシアが使っていたアンダーソン基地を引き続き使い、超兵器〈始祖鳥〉に対抗して数少ない戦略爆撃機〈飛鳥〉を集中し、戦略爆撃兵団(20機)が設立されている。戦闘機は3式戦〈飛燕〉が主体だが5式戦〈疾風〉も導入されて始めている。

地上防衛としては日本海軍の双胴戦艦〈はりま〉奪回に参加した最精鋭・連合海軍グアム第3陸戦隊が主体になり、4式重戦車〈虎狼〉を装備した機械化部隊を常駐させている陸軍も含め5万の兵がこの島を護っている。

さて海軍だが常駐艦隊は日本海軍の周防級戦艦〈とさ〉を旗艦に46センチ搭載艦〈むさし〉〈ひゅうが〉、ナーウィシア海軍の46センチを8門搭載した高速巡洋戦艦〈筑波〉〈鞍馬〉がいる。本当なら中国海軍の周防級戦艦〈魯智深〉〈武松〉もいたが改装を理由に本国に引き上げられていた。

〈とさ〉を除いた4隻の戦艦は堂々たる海の蒙動と呼べる艦だったが51センチが主力となっている今となっては旧式艦の集まりでしかなかった。


さらに防空の要となっている機動部隊は日本海軍航空母艦〈たいほう〉〈はくほう〉の2隻がいる。ナーウィシアは第四機動部隊“玄武”を常駐させていたが5式戦〈疾風〉の機種改変の為、一時後方に下がっている。その代わりに機種改変の済んだ第二機動部隊、通称”朱雀”の大型空母〈瑞天〉、中型空母〈朱龍〉とその護衛艦たちが先程到着したばかりだった。

根城たるアプラ軍港は大拡張を行われ大型艦の修理ドックや小型艦の建造ドックも造られ、多数の大型艦も停泊できハワイの真珠湾と同じ規模の基地になっており連合海軍のパールハーバーと言われていた。


「しっかし、暇だよなあ」


到着したナーウィシア機動部隊で賑わうアプラ軍港の桟橋でぼやいている女性士官が一人。


「ひま・・・身体が痺れるのは・・・まひ」

「・・・おい、出水。ギャグは考えなくても良いぞ」

「でも巴、どうしたの?」


うんざりしたような顔で第九駆逐隊、通称ライオンズシックルを率いる司令・すばるともえは同じ戦隊に所属する駆逐巡洋艦〈蒼〉艦長・まき出水いずみの寒いギャグを阻止した。その様子を毎度の事のように眺めながら僚艦を勤める天野あまのみどりが尋ねた。


「だってよ、せっかく新型艦を貰ったのに大物はみんなアレに食われちまうじゃねえか」


巴は自分の旗艦〈紅〉の隣に防潜ネットで囲われた中に停泊している巨大な艦にあごをしゃくった。3連装6基18門の主砲を持つ〈高千穂〉級のネームシップ〈高千穂〉。マストには連合海軍旗、ナーウィシア海軍旗、そして司令の座乗艦である少将旗が潮風を受けてはためいている。

その後には同じように同型艦の〈剣〉〈高雄〉〈穂高〉が巨体を休めている。巴たちの第九駆逐隊は連合海軍一三独立実験艦隊のエスコートとして抜擢され、新鋭駆逐巡洋艦〈汐海〉級が与えられていた。


「そりゃそうだけど・・・仕方ないんじゃないの? 駆巡で戦艦を沈めるのは難しいし」

「だけどよ、アイツは沈めているんだぜ、俺たちにやれない訳がないだろ!」


巴の頭の中には連合兵科大の同期であり、同じ駆逐艦乗りのライバル・双岳隼人の姿があった。やわっちい外見や優しい性格の癖にやたらと喧嘩が強かった。同期であり隼人の僚艦を勤めている久保田慎也が入学当初ちょかいをかけ壮絶な殴り合いをした。それを間近で見ていた巴は隼人に興味をもち友人となった。そのギャップに巴は隼人のことをライバルというだけではなく、今は男性としても興味を持っている。


「まあ、そうだけどさ。でも双岳少佐の第七駆逐隊は壊滅しているんだよ、それじゃあ勝ったとは言えないんじゃない? 全艦とは言わないまでも艦を残さなきゃ」


碧の言葉に巴は「うっ!」と口篭り、八つ当たりのように足元にあった石を蹴りつけた。その石は綺麗な放物線を描き自分の艦〈紅〉に当たって澄んだ音を鳴らした。


「そ、そりゃそうだけどよ。それに向こうのエスコートが少なすぎるんだよ! 数隻程度じゃ、あっという間に戦闘が終わっちまって俺たちの腕が磨けねえんだよなあ」

「贅沢な悩みを言っているわね、巴。実際、〈汐海〉級を貰えなくて苦戦している部隊は多いのよ? それを考えないといけないわ」


今までギャグを考えて唸っていた出水が急に素面になり巴をたしなめた。


実際のところ通常駆逐艦が駆逐艦サイズの超兵器とも言える汐海級が相手の場合どうなるか?

駆逐艦の弾はレーダー照準とは言えDFでほとんど防がれダメージを与えられないのに対して、汐海級の12.8センチ連装速射砲の射撃は転移技術を使用した5式射撃管制レーダーを装備する事で高精度。まさに鎧袖一触状態になり、戦いになるはずもない。巴が愚痴るのも無理はなかった。



「そうそう、私たちの腕を考慮しても〈汐海〉級は普通の駆逐艦より強力なんだから」

「チッ、贅沢を言っているのは分かっているんだけどよ・・・あ〜〜〜欲求不満だァ! 飲みに行くぞ! 碧、出水、付き合えよ!!」


巴は獅子吼すると拳を振り上げズンズンと歩き出す。


「お〜コワっ。巴は戦闘好きなんだから」


あきれたように頭の後ろで手を組んだ碧が巴を揶揄する。


「ほっとけ! これが俺の生きる道なんだよ!」

「大衆浴場マニアはせんとう・・・」

「だから・・・出水、ギャグはいいって!!」


巴は2人を引き連れ行き着けのバーに向かって歩き出した。


「・・・ううっ、わたしもいるのに」


その後にはすっかり上官に忘れ去られて半泣きになっている黒髪の女性士官。

彼女はライオンズシックル隊に配属されたばかりの新米艦長ではあったが、他の隊に行けば十分ベテランと言われる戦歴を持っていた。ただ巴たちの戦歴が女性としては凄すぎるだけなのだ。

ライオンズシックル隊4隻の艦長やメインスタッフは全て女性で成り立っている。連合海軍は基本的に女性を最前線に出さない方針だが彼女たちは自ら志願して最前線に出てきた女性士官たちだった。その為、体面上女性を前線に送れない連合海軍上層部は彼女たちに破格の待遇を与えあとに続く人間を確保しようとしていた。


「おらっ!! 風間しんまい、なにやってんだ、行くぞ!」

「は、はぃいいい! 待ってくださいよ、司令!」


すっかり忘れていた自分を棚にあげている巴が彼女を呼んだ。新米艦長・風間かざま理緒りおは慌てて駆け出していった。



─ 2096年10月12日 太平洋グアム・アプラ軍港 〈高千穂〉司令官室 ─


一方、巴が見ていた戦艦〈高千穂〉内にある司令官室。軍艦故に過度な装飾をされていない、質素なドアが控えめにノックされた。


「どうぞ」

「先任参謀、入ります!」


その声に連合海軍第二種軍装を着こなし参謀飾紐を吊った佐久田久司大佐がドアを開け入室してくる。きびきびした足取りで執務デスクに座っている女性、最年少の女性将官として名を知られる第一三独立実験艦隊司令・伊達遙の前に歩いて行った。


敬礼。


「伊達司令、お呼びにより参りましたが・・・」

「ご苦労様、そこのソファーに座って」

「はっ」


遙は先任参謀をソファーに座らせると自らもデスクを離れた。停泊中なので彼女の制服は防暑用の白い連合海軍第二種軍装の上着にグレーのタイトスカート、形の良い足は色の薄いストッキングに包まれ踵の低い黒いローファーになっている。当番兵を呼びコーヒーをオーダーすると佐久田の対面に座った。


「さっそくだけどね、私と貴方に本国ナーウィシアから招集がかかったわ」

「ですが我々は作戦行動中です、艦隊を離れる訳にはいかないと思いますが・・・」


訝しげな表情を浮かべ佐久田が疑問を呈した。


「慣例ならね。でも今回の招集はその慣例を破るくらい重要な議題なのよ」


遙は頬に手を当て佐久田の疑問に答えた。


「と言いますと?」

「敵の太平洋侵攻作戦」

「え?」


遙のそっけない言葉を理解し絶句する佐久田。想像以上の議題に握りしめた拳がほんの少し震えていた。

その時、ドアがノックされ先ほど当番兵に頼んだコーヒーが来る。その時間を使って佐久田は心を落ち着ける。

当番兵が退室するのを見届けた佐久田は遙が口を付けたのを確認すると自らのカップを取った。カップから立ち上る芳香で少し落ち着いた。


「ウィルシアの侵攻作戦ですか・・・1年以上大規模な作戦がなかったですからね。侵攻準備が整ったという事でしょうか・・・では、いよいよ我々の〈高千穂〉が本格的にお披露目になる訳ですね」

「そうね。でも私たちにその出番はなさそうよ。沖田提督からの私信なんだけどね、おそらく私と貴方が迎撃艦隊の指揮を執る事になるみたい」

「ど、ど、どうして私たちが!」


遙の言葉を聞き佐久田の声は上擦っている。それに彼の言葉は“上官からの命令は絶対”という海軍軍人としてあるまじきものだったが遙は彼の言葉を咎めなかった。彼女自身が彼と同じ思いを持っているからだ。

誰が好きこのんで世界の命運をかけた、少なくとも太平洋戦域の未来を左右する戦の責任を取りたがるのだろう。もし負ければ・・・連合海軍は二度と大規模な反攻作戦は行えない。さらに言えば自分たちはその時点で戦死している可能性が高いが、敗戦をネタに内地にいる家族たちが嫌がらせを受けるという事も充分想像できた。


「今、超兵器を相手に実戦を行い、経験を積んでいるのが私たちだからよ。さまざまな超兵器に遭遇している沖田提督の息子さん、“連合海軍の英雄”もいるけど・・・彼は少佐で階級が低すぎるから」


遙の言葉に“連合海軍の英雄”という称号をもった黒髪の青年の優しそうな顔を思い出した。


「あの連合海軍の英雄が沖田提督の息子さんですか」

「ええ。少佐じゃ特進させても大佐止まりだもの、戦隊はともかく艦隊の総括指揮は執れない。それに生者に二階級特進はないわ。臨時で将官に上げる訳にもいかないでしょ。それこそ人事権の乱用になって艦隊がまとまらなくなる」

「確かにそうですね。では私たちはどのような割り当てになるのでしょう?」

「まず風雅島司令の沖田中将が大将に昇進して私たちの後方支援をしてくれるわ。私は1階級進級で迎撃艦隊総司令で中将、貴方は総参謀長で少将。

連合海軍中将待遇だから指揮するのはナーウィシア以外に環太平洋機構の艦艇ね。少し苦労するわよ」


苦笑を浮かべた遙の言葉に佐久田はどこぞの国を思い出す。また様々な言い訳を作って問題を起こすだろう事が予測できたので彼女と同じように溜息混じりになってしまった。


「それは・・・苦労しそうですね。それに私が提督ですか・・・事情がわかっているだけにあまり喜べないですよ」


佐久田は冗談めかしているがあまり顔色が良くない。有能だが神経の細い佐久田を気遣って遙は同じように冗談口調で言葉を返した。


「ふふふ、そうね。でも海軍軍人なら提督の称号は夢でしょう? 佐久田提督」


遙は大人の魅力満載といった艶やかな笑顔を見せる。38歳で女の盛りを過ぎかけた彼女だったが、長い髪を邪魔にならないようにアップに纏め控えめな化粧をした顔。目元にある泣きほくろが大人の女としての印象を深めている。その顔が魅力的な微笑を浮かべた。

その顔に一瞬見とれた佐久田だったが慌てて視線を逸らすと彼らの後方を支援してくれる大将の事を聞くことにした。


「私は沖田大将の下で働いた事がないのでどのような性格されているのか知らないのですが。司令はご存じですか?」

「沖田提督が大佐で戦艦〈常陸〉の艦長をしている時に副長をやっていたの。それと連合兵科大で教鞭をとっている頃、進級試験でね、教官だったわ」


遙は少し遠い目をし、懐かしむような顔をして沖田との関係を説明する。


「では良く知っておられるんですね、どういった方なんですか?」

「そうね、沖田提督は・・・一言で言えば狸、いえ狐かな」

「狐、ですか」

「それも人使いの荒い狐ね。あの人、化かし合いが好きだから」


遙は沖田の細面の顔を思い出したのかおかしそうにくすっと笑う。


「・・・はぁ」


上官を捕まえて狐と言って笑っている遙に佐久田は呆れ顔になってしまう。


「あの、司令。そんな事を言うと上官侮辱罪が・・・」

「大丈夫よ、こんな事でいちいち目くじらをたてる人じゃないわ。きっと笑い飛ばすでしょうね。それどころか逆にこっちがやりこめられるかもしれないわよ」

「・・・なんとなく性格が掴めたような気がします」


遙の言葉と説明で佐久田は沖田という人間の性格が何となく理解できた。軍人としては軽い言葉使いや態度をする遙は性格もあるとは思うが、この中将の影響を強く受けているんではと感じた。彼のそんな思いをよそに今度は真面目な表情を作った遙が説明を続けた。


「沖田提督はね、有能な人間は抜擢して適材適所を実行、どんどん使っていくわ。ナーウィシアの“有能な人間は教育しどんどん使え”という国是を体現しているような人なのよ。人材収集癖も持っているし。

能力主義者だから年齢やハンモックナンバーに囚われないで高い地位をくれるけど、その地位に相応しい責任もくれるわね。おかげで彼に見初められた私は小娘の分際で将官になって偉そうに実験艦隊の司令なんて仕事をやっているけど」


その言葉に佐久田は内心で40歳近い女性は小娘って言うのだろうかと結構失礼な事を考えた。平常なら将官は50〜60代が平均なのを事を考えると40歳に満たない遙は確かに小娘扱いだろう。

その思考を読んだように彼女が悪戯っぽく笑いながら突っ込みを入れた。


「あ、いい歳した女が小娘でもないだろうとか思わなかった?」

「いいいい、いえ! そんな事は」


いかにも図星ですといわんばかりに佐久田はどもってしまう。そのことを怒りもせず佐久田の慌てぶりを楽しみ、にこやかに笑って遙は話題を変えた。


「でね、私たちの後任、第一三戦隊の司令だけど・・・」


出航する輸送船の汽笛で伊達の声がかき消された。


「───さんが新しい戦隊司令よ」

「え? それは本当ですか!?」


伊達から名前を聞かされた佐久田は驚き、ついで首を捻った。確かに知っている名字だったがその人物が最新鋭の〈高千穂〉級を擁するこの艦隊の指揮を執れるとは思えなかった。


「ええ。最低でも戦隊の作戦指揮は一任するつもり。私たちはより大局にたって作戦を遂行しなければならないから、戦隊規模の作戦まで見てられないわ。それに〈高千穂〉は独自の作戦に投入されるようだし」

「独自の作戦ですか?」

「ええ、また沖田提督か葛城博士が仕込んでいるみたいね、相変わらず狐の本領発揮よ」


楽しそうに遙は笑い佐久田を再度呆れさせた。


「その方の着任は何時ですか?」

「明後日ね、彼女に引継ぎをしてからここを発つわ。それまでに私物と資料の整理をしておいて。ナーウィシアへはアンダーソン基地にある空軍の〈飛鳥〉で行くわ」


遙は最後に残ったコーヒーを飲み干し名残惜しそうにカップをテーブルに戻した。


「それはまた急ですね。新しい司令は大丈夫なんですかね、少し心配ですよ」


佐久田は腹のあたりをさすっている。持病の胃痛をもっているのでそれが疼いているのかもしれない。


「ここの人間は丸ごと残していくわ。新司令は彼らがフォローしてくれるから大丈夫。この一三艦隊のスタッフ、特に第一三戦隊4隻の乗組員は連合海軍の生え抜きばかりを集めたのよ、自分の部下たちを信じなさい、先任参謀」

「そうですね、部下を信用しなくて何が上官ですか」


軽率な事を言った自分を戒めるように佐久田は言葉をもらす。


「そういう事。それに・・・思い切った人事をやると思わない?」

「確かに思い切った人事でしょうけど・・・なんか胃が痛くなりますよ」


佐久田は再度腹を撫でると遙に断りポケットから胃薬の瓶を取り出してコーヒーで飲み干した。




─ 2096年10月12日 グアム・アプラ軍港 〈高千穂〉遙の自室 ─

「はぁ・・・久しぶりに沖田提督、いえ十五さんの下で戦う事になるのね」


佐久田が退室し、勤務時間を終えた遙は自室の片付けを終えた後、ソファーに寝転がり自分の上官の顔を思い出していた。

遙にとって沖田十五という人間は憧れの軍人、いや男性だった。


学生の時は単に怖いけど面倒見の良い教官だったが戦艦〈常陸〉で副長を務めている時、初めて戦場での彼の姿を見た。

長身痩躯に真っ白な第二種軍装を着た彼はどんなピンチになろうと不敵な笑みを絶やさず毅然とした態度を崩さなかった。数多の実戦を潜り抜け、戦慣れした古参の戦艦艦長、そんな沖田に彼女は自分の理想の艦長像を見たのだ。彼は有能な艦長、それだけにとどまらなかった。戦略・戦術発想も素晴らしく、近くにいるだけで自分の戦歴が上がるような気すらしたのだ。

遙は沖田に教えを乞い、沖田も彼女に才能を見出したのか自分の知っている戦略・戦術を惜しげもなく披露し、彼女はそれを学んだ。そのおかげもあり一三艦隊を任せられるかどうかのテスト、数人の候補者と共に戦略・戦術シミュレーションで無敗を誇るという連合兵科大創設以来の天才を相手に戦った。引き分けに持ち込めたのは遙、ただ一人だった。その結果もあり彼女は一三実験艦隊の指揮を任された。

もし沖田がその天才と戦えば遙は間違いなく彼が勝つと思っている。別に贔屓している訳ではなく彼の実戦経験は自分と比べても桁違いだからだ。航空戦、護衛戦、砲撃戦、雷撃戦など様々な戦を潜り抜けてきた彼。幾ら天才であっても経験がないのではゲームと変わらない。そして幾らゲームで強くても実戦を経験した人間の先読みする機微には敵わない。それは凡人、良くて型にはまった秀才レベルの自分がシミュレーションで天才を相手に引き分けに持ち込めた事で実証できている。さらに第一三艦隊を任された時に余計に実感できた事だった。


自分の戦略戦術の師匠とも言える沖田と2人で作戦を考える時間は至福だった。自分と沖田2人で造り上げた作戦が見事に成功した時、彼女の心は高鳴った。作戦後、上陸した時は杯を掲げ、生き残ったことを共に喜び、戦死した部下たちを悼んだ。

沖田と一緒にいる時間は遙にとってますます貴重な物になっていく。そんな遙が沖田を上官としてだけではなく男性として見るのに時間はかからなかった。


作戦が終わり泊地に帰島した上陸の日、遙は意を決して沖田に告白、あまつさえ自分の身体を使って彼を得ようとした。彼女にとって身体を使うことは恥ではなかった。“本当にそれ(勝利)を望むなら自分の持つ全ての能力を使え”という沖田の教えがあったから。

遙の切なる想いを聞いた沖田は自分の上着を裸の彼女にかけた。


「君の事は人間として好きだし能力も尊敬する。だが女性としてみることはできない、許して欲しい。それに俺には故郷に待っている女性がいるんだ」


遙は苦しそうに言った沖田の顔に言葉にこそ出なかったが自分の事が異性としても好きという感情がある事を女の直感で見てとった。なのに傍にいない沖田の故郷にいる女性に負けた。その事が負けず嫌いの遙に悔し涙を流させた。今までどんなに辛い事があっても他人の前では泣かなかった。仮にあの天才に戦略シミュレーションで負けたとしてもここまで悔しくはなかっただろう。

遙は泣き続け、沖田は傍で彼女を少しでも落ち着けようと頭を優しく撫でてくれた。遙からすれば自分をふった以上、部屋を出て行ってくれた方が良かったのだが、子供のように泣く遙に困った顔をした沖田が頭を撫でる手の暖かさに不器用な優しさを感じ救われる思いだった。部屋を出て行く沖田にねだって最後にしてもらった1回だけのキス。


それ以来、遙は沖田とある程度の距離を置き自分を精進させる事に努めた。自分を故郷の彼女に負けない、彼に相応しい女になってみせる。それが遙の誓いとがむしゃらな努力の原動力になった。戦艦の艦長を経て女性としては初の将官として出世もした。公的だけでなく私的でも幾つか恋愛を経ており女性として十分成熟している。求婚者も何人か現れたが遙にとって本当の男性は沖田一人になっており、公務を理由に全て断っていた。

そんな彼女を沖田は眩しそうに見ていた。彼女にとって癪なのは逢う度に「早く嫁に行け」という彼の言葉だった。それに対し「貴方がもらってくれるなら今すぐにでも」と切り返すのが常。そう挨拶のように言った後、2人は笑いあう。遙にとって身体こそ交えていないが沖田と気持ちが通じ合っていると感じる瞬間だった。


その事を支えに今まで前線勤務をしてきたのだ。この迎撃艦隊司令を終えた後は陸に上がりナーウィシア本国で軍務を行う事になっていた。沖田と逢える時間が増えることがわかっており、遙にとって次の戦は何が何でも負けられなかった。彼女は自分の望みの為に全力を尽くす事を決めている。もちろん軍人としての責務は彼女にとって当たり前すぎて意識していない。


「例え超兵器が相手だろうと私と十五さんの時間を邪魔する奴らは許さない」


遙の低い呟き。そして両手でパンパン! と頬を張った彼女は勢い良くソファーから跳ね起きるとデスクに向かい迎撃作戦の骨子を練り始めた。




─ 2096年10月12日 グアム・アンダーソン飛行場 遙 ─

新司令官に一三艦隊の引継ぎを済ませた遙と佐久田はアンダーソン基地に向かい、戦略爆撃機〈飛鳥〉に乗り込んだ。

〈飛鳥〉は全長60m、全幅55mという巨人機でターボファンジェットエンジン(ABは未搭載)を6基持っており、最大速度は高高度が1800km/h、海面高度は840km/h、航続距離は12000km(最大爆装時10000km)、爆弾搭載量は8t。古くなった前機種、4発機の〈富嶽〉の代替機として開発された。

ウィルシアが使うという超兵器〈始祖鳥〉に対抗して急遽分厚い装甲を施され、40ミリの対空機銃、空対空ミサイルを搭載した新鋭機だった。もちろん他聞に漏れず多用途機で爆撃機の他に対重爆迎撃機としても使えるようになっている。


遙は久しぶりに沖田の顔が見られる事に胸を躍らせている。


(逢った時はどんな話をしよう、どんな顔をしようか? あ、その前に今の現況を説明しなくちゃ、軍務が優先、そっち優先なんだから・・・しっかりしなさい遙)


まるで十代の小娘のように遙の心は華やぐ。この数日は嬉しくて寝つきが悪く、化粧のノリがイマイチだったのが不満だったが、どうせ彼の顔を見ればそんな事は忘れてしまうだろう。


「司令、嬉しそうですね」


佐久田は華やぐ遙の雰囲気を察し、声をかけた。


「え? そう? 久しぶりの本国だし。向こうに着いたら先任参謀はどうするの?」


遙は自分の気持ちを悟られないように笑い、誤魔化すように佐久田に予定を聞いた。


「そうですね・・・会議の後、自宅に戻って家族の顔を見ますよ」

「そうなんだ、羨ましいなあ」


本気で羨ましそうな顔をして佐久田を見る遙。その表情を見て佐久田は余計なお世話だと思いつつも結婚を勧めた。


「司令は美人なんですから結婚なされば良いのに、もったいない」

「うーん、褒めてくれるのは嬉しいけど何も出ないわよ? 先任参謀」


遙は苦笑し、そう言ったところで乗務員の少尉が声をかけてきた。


「お話中、失礼します。伊達少将、〈飛鳥〉005号機はこれから離陸します。シートベルトをお願いいたします」

「はい、了解。ほら、先任も早く」

「は、はい。ちょっと待ってくださいよ司令」


あっさり装着した彼女はわたわたとシートベルトを付けようとする佐久田を手伝った。その様子を確認した少尉は失礼します、と言って離れていった。


遙は窓の外を見た。エンジンの推力を上げた〈飛鳥〉が離陸を開始する。凄まじい轟音も与圧キャビンをになっている内部にまで届かない。

子供のように窓に張り付いて離陸を見ている遙を佐久田は子供っぽいと感じた。自分が見ている遙の横顔は知的好奇心に溢れ瞳がキラキラと輝いていた。佐久田は自分の上司が時々見せる子供っぽさ、作戦指揮を執っている時の冷静さ、そして先日自分を気遣ってくれた優しさ、遙が子供と大人の要素を兼ね備えた魅力的な女性だという事を改めて認識した。

はっきり言えば佐久田は遙の事を好ましく思っている。自分が結婚してなければ真っ先に遙にお付き合いを申し込んでいただろう。まあ、受けてくれるかは別問題としてだ。そして自分はずっとこのジャジャ馬な司令の補佐をしていきたいと思っている。そう思うと佐久田の顔には自然に笑みが浮んだ。


「ん? どうしたの? 先任」


佐久田の視線に気づいた遙は窓の外から顔を彼に向ける。その顔は窓に張り付いて離陸を見ていたという子供ぽい行動を恥じているのか少し頬が赤らんでいた。


「司令、小官はずっと貴方についていきます」


いきなり宣言を始めた佐久田に吃驚した遙だったが彼の顔にあった表情、信頼と憧れという物に気づいた。きっと自分も沖田の前では浮かべているであろう表情。遙は彼の気持ちを嬉しく思い最高の笑顔を浮かべた。


(十五さんが言っていたっけ、司令官の喜びは勝利する事はもちろん、本当に自分を信頼してくれる部下を得て憧れの表情を見る事だって。その表情を見るとどんなことをしてでも彼らの期待に応えてやりたいって)


「なに言っているの。ずっと前から私は先任に期待しているのよ。今度の作戦、頑張ろうね」


(こんな表情を浮かべてくれるこの先任になら・・・きっと先任と私のペアなら作戦は上手くいくわ。彼の期待に応えられるように頑張らなくちゃ!!)


「も、もちろんですよ! 不肖、佐久田久司、全身全霊をもって作戦に望みます」


遙の優しい笑みを見て佐久田の心は浮き足だった。


だが、その喜びは長くは続かなかった。遙の傍にある窓の外にキラリと光る物を見たのだ。


(なんだ? 今、光ったような気がしたが・・・)


佐久田は目を凝らし光ったものを確認しようとした。夕闇に紛れて黒い物体が銃のような物を構えこちらを狙っているのを確認した。


(・・・なんだ、あれは! 人型・・・だと!?)


「どうしたの? 先任参謀って・・・きゃあッ!!」


佐久田が突然浮かべた訝しげな表情に遙は不審に思い聞いた。その途端、佐久田は遙の腕を取り引っ張って、床に押し倒すと自分の身体を彼女の上に被せた。刹那、幾つもの轟音とともに重装甲を施された〈飛鳥〉の機体が爆発し、盛大な火災と煙を引きずりながら海面に向けて落下していった。




─ 2096年同日夕刻 太平洋上 ─

「やれやれ、つまらん仕事だなあ。連合の将官を一人、始末しろと言われたが。ま、この機体に乗せてくれるなら文句を言っちゃあ罰が当たるか。あの重爆みたいにな、天罰覿面、ジーザスおれさまも照覧あれだぁ! はっはっはあ!!」


中にいるパイロット、海兵隊狙撃手だった過去を持つジーザス・ヤングは狂ったような哄笑を上げる。彼はこの世界で補充された一二神将が一人、矢を持つ闘神と言われている額爾羅あにらと呼ばれている。海兵隊で狙撃手を努める程なのでジーザスの腕は超一流だったが、押さえのきかない凶暴な性格と婦女暴行という不名誉な事件を起こし、海兵隊を罷免されていたのを相馬が拾ったのだ。

ウィルシアが苦戦している第一三独立艦隊の司令が航空機で本国に移動するという情報を得たウィルシア情報部と相馬が協議した結果、この暗殺作戦を考案・実行したのだった。本当はクルーガーに呼び出されたハイラ・シェファードが行うはずだったが暗殺という性格上、武人の彼には向かないという事を相馬が考慮し、その結果狙撃の腕を買われたジーザスが派遣されたのだった。


一二神将型と言われる白い機動兵器エステバリス・カスタムは物干し竿と呼ばれる長いレールカノンを振り回すようにして向きを変えると浮上した母艦に向け全速力で帰還する。その背後に黒い幽鬼が現れ追っていった。




─ 2096年10月13日 ナーウィシア・風雅島 沖田 ─

沖田は風雅島での仕事を終え、迎撃作戦の会議を行う為に本国に移動するだけになっていた。その移動前の一時をコーヒーを片手にくつろいでいた。


「沖田提督!! 大変です、伊達司令と佐久田大佐の乗った〈飛鳥〉が撃墜されました!」


そう言って沖田の副官を勤める月臣中佐がオフィスに駆け込んできた。

月臣の言葉を意味を理解した沖田の手からコーヒーカップが落ちた。このカップは遙が彼に誕生日のプレゼントとして送った物だった。床に落ちて割れたカップとこぼれたコーヒーを呆然として見ていた沖田は我に返ると月臣に向けて2人の安否を怒鳴るように聞いた。


「なんだと・・・伊達は! 佐久田は無事なのかッ!!」

「現在お二人は本国の病院に搬送されています。伊達司令は重傷で意識不明、佐久田大佐は残念ながら死亡が確認されています!」


(遙が・・・意識不明で重傷だと、それに佐久田が死んだ? なんてことだ! ワシの・・・俺の見込みの甘さが招いたんだ、これは! 〈飛鳥〉の重装甲を信じ、連合の制空圏内だからと護衛を付けていなかったのが裏目に出た、畜生ッ!!)




ガン!!







月臣中佐は自分の上司がデスクを殴りつける音にビクリとした。






「・・・遙、すまない」





そして彼の口から出た小さな呟きを聞いた。俯けていた顔を上げ言葉を荒げることも少ない明るい上司の顔を見た時、彼は固まった。俯いた顔には憤怒という感情が煮えたぎるマグマのように溢れているのを初めて見たから。沖田はきっと顔を上げると月臣を睨みつけるように命令を下した。


「中佐、風雅島の警戒態勢を上げるんだ、特にテロには注意しろ、急げ! それと本国に行く、至急便を手配してくれ、護衛戦闘機の準備も忘れるな!」

「はっ!!」


沖田の命令を受けた月臣は彼から逃げるように駆け出していく。沖田はその姿を確認すると床に落ちて割れたカップをそっと取り上げた。



遙がようやく泣き止んだのを確認した沖田は部屋を出ようとする。その彼の袖を掴んで1度だけキスをして欲しいと彼女は我侭を言った。あの時の遙の涙を浮かべた切なそうな顔が目に浮ぶ。その懇願と真摯な気持ちに負け、一度だけ彼女にキスをした。

それ以来、沖田にとって彼女は単なる戦略・戦術の弟子や連合兵科大時代の教え子だけはなくなっていた。いや、それ以前からかもしれない。故郷で彼の事を待つ彼女に申し訳ないとは思いつつも自分の行動に歯止めがきかなかった。

遙の視線が一途に、常に自分だけに向いている事がなおさら故郷の彼女を思い出させ、それ以上遙に踏み込む事を沖田に躊躇わせた。そして今は遙以外に興味のある女性に出会ってしまった。自分が多情だと思っていないが彼女だけは沖田という男にとって特別な存在だった。

それでも沖田は遙の事を愛しているし、心配もしている。



「・・・遙、死なないでくれ」




カップを持つ沖田の視界が滲み、キスをして嬉しそうに微笑んだ遙の顔が歪んで消えた。




─ 2096年10月13日 ナーウィシア第一海軍病院 沖田 ─

沖田は病院のベンチで一睡もしないで遙が目を覚ますのを待っていた。それでもなお自分の責任を放棄せず、副官の月臣を呼び寄せ、あれこれと指示を出しながらひたすら彼女の意識が戻るのを待っていた。そして彼女が意識を取り戻したと聞くと慌てて病室に向かった。

昨夜のうちに先に戦死している佐久田や〈飛鳥〉のクルーに顔通しをし、遺族に慰めの言葉をかけていた。

病室に飛び込むと蒼白な顔をした遙がゆっくりと首を傾け沖田を見た。


「十五さん・・・私、役立たずになっちゃった」


遙は寂しそうに沖田に向け呟くように声をかけた。


「なに馬鹿な事を言っているんだ、遙。早く傷を治すんだ、元気になったら俺の副官としてコキ使ってやるから」

「本当? 嬉しいなあ」


遙は目を瞑る、涙が一筋流れた。沖田はその涙にドキリとした。彼はすでに医者に遙の診断を聞いている、彼女の下半身は脊椎に負った傷と腹部の怪我のせいで二度と動かず子供も生めないと診断されていた。それは生きていればという前提だった、彼女の生命自体は・・・。


「嬉しいなあ、十五さん。私の為に泣いてくれるんだ」


沖田の目から涙が溢れポタポタと遙の顔に落ちていた。


「ああ、そうだな。お前の為に泣いてる」


沖田は蒼白になっている遙の頬を優しく撫でた。それは恋人にするのと同じくらい優しく愛しい気持ちがこもっている。


「ん・・・暖かいし、くすぐったいよ。えっちな気分に・・・なっちゃうじゃない」


遙は小さく恥ずかしそうな声で呟いた。


「今度はきちんと抱く、だから・・・」

「そういう事を・・・言っちゃ駄目、貴方には・・・本当に好きな・・・女性がいるんでしょ」


沖田の口を遙の震える指先が塞いだ。


「でも・・・そう言って・・・くれて嬉しいな。はぁ・・・十五さんの顔を・・・見て安心したせいか・・・眠くなってきちゃ・・・った」

「馬鹿! 寝るな、遙」


沖田は遙の手を力強く握り意識を保たせようとする。薄く目を開けた遙はあの時と同じセリフを沖田に言った。


「ねぇ・・・十・・・五さん、キスして」


沖田は遙の余命が幾許もなく、本当に最後の我侭を言っているのが分かっていたので躊躇わなかった。初めて遙にキスをした時のように優しく、傷を負いかさぶたになっている唇に触れた。


「あり・・・が・・・と」


伊達遙の色褪せた唇は小さくそう動いたきり二度と動く事はなかった。



「おい、遙! 起きるんだ! 遙っ・・・はるかァ!!」






病室に沖田の絶叫が響きわたった。



2096年10月13日10:43

連合海軍/ナーウィシア海軍少将、元連合海軍第一三独立実験艦隊司令・伊達 遙は本土への移動中、ウィルシアの新兵器により乗機を撃墜、重症を負い入院先のナーウィシア第一海軍病院にて死亡。享年38歳。

連合海軍屈指の名提督になるはずだった女性はウィルシア、いや“蜃気楼”の放った凶弾に倒れ好きな男に看取られながら逝った。


補足:話中で遙が自分を凡人、良くて型にはまった秀才と評価しているが彼女は天才と言われた人間に匹敵する程の才能を秘めていた。それは一三独立艦隊を指揮し、超兵器を相手に無傷で戦果を挙げ続けた事で証明されている。そしてその戦果ゆえに個人としてウィルシアに狙われる事になった。遙の才が自身に幸福か不幸か、どちらかをもたらしたのかは本人しか分からない。

連合海軍は彼女の没後、異例の三階級特進を行い元帥の称号を贈った。非業の死を遂げた彼女は惜しまれ連合海軍の新たな英雄として長く名が残る事になる。




─ 2096年10月13日 ナーウィシア第一海軍病院 沖田 ─

沖田は遙の最後を看取ると病室を出た。数歩歩くと壁を殴りつけた。1回、2回、3回と殴りつける度に彼の右手に嵌めている白手袋に真紅の染みが広がっていく。通りかかった医者が慌てて沖田を止めようとするが、彼の行動は止まらなかった。

沖田の心は灼熱を帯びている。遙を始めとする戦死した人間に対する愛惜と、油断し彼女たちを死に追いやるきっかけを作った自分に向けた怒りで自身を壊しかねなかった。

沖田は自分が身勝手なのを知っている。遙の想いを知っていながら応えず、かといって故郷の彼女の元にも戻らない。指揮官として数万人の部下を平気な顔で死地に送りこむ人間がたった一人の、身近な存在・遙が死んだだけで心を乱されているという矛盾。

そう、彼は身勝手な自分が許せず、自分を痛めつけている。そんな事をしても無駄であり自己満足でしかないという事を知りながら。それでも壁を殴りつける手は止まらなかった、右手の先からくる鋭い痛みさえ愚者の自分には生温い。



───そして出来る事なら自分で遙の仇を取りたかった。




「オヤジ・・・止めてくれよ」



自分自身に向けた暴力を止めたのは自分の義理の息子の声だった。沖田は憔悴した顔をゆっくり振りむけると隼人と通信士の瑞葉、暁副長が心配そうに彼を見つめていた。隼人はここまで荒れた義父を見た事がなかった。だからそれ以上、声をかける事ができなかった。


「沖田提督、手・・・怪我をしているじゃないデスか!」


沖田の右手が血に塗れているのを見た瑞葉が慌てて駆け寄り、持っていたハンカチで右手を包んだ。だがそれを拒絶するように沖田の声は聞いたことがないくらい冷たく、突き放すように瑞葉の身体をゆっくり押しやった。


「すまん、御劔君。一人にしておいてくれないか?」

「え?」


沖田は隼人たちに顔を見られたくないとでも言うように背け、背を向けて歩き出し、3人の視界から消えていった。沖田の冷たい声色に呆然とした瑞葉やこの状態に呆気に取られている暁副長を横目に隼人はそっと目を瞑り沖田の気持ちを慮った。



沖田は階段を降り、病院の出口に向かう。その出口の壁に背を預け、サングラスをかけた黒衣の男が傍を通り過ぎようとする沖田にボソリと低い声色で声をかけた。その男の隣には銀色の髪をした美しい少女が寄り添うように立っている。


「伊達少将を殺った奴を見つけた。〈エステバリス〉という機動兵器だ」

「それで?」


沖田は正面を見据えたままほんの少し足を止め、感情を押し殺した低い、殺意すら籠もっている声で黒衣の男に聞いた。


「殺った」

「・・・礼を言う」


沖田は短くそう言うと黒衣の男、桜樹明人と銀の少女、リース・プセウド-ナルシスに背を向け去っていった。


「沖田提督、アンタは変わったな」


明人は侮蔑を込め、吐き捨てるように呟くと沖田の背中を見送った。リースは心配そうに明人と沖田の背中を見比べた。


「いくぞ、リース」


明人は壁から背を離すと病院の出口に向かって歩きだす。リースは数歩遅れて明人の後に続いた。大事な人を失った人間の顔を見る度に彼女の心は痛みがぶり返す。かつての想いが溢れ出て涙がこぼれそうになった。リースはぎゅっと目を瞑ってこぼれそうな涙を我慢すると明人の後を追った。



− あとがきという名の戯言 −

瑞葉:ハイ、お馴染みのご挨拶デスけど、最後まで読んでいただきありがとうございます!

隼人:ありがとうございます。

瑞葉:あの〜、今回のお話ですけど遙さん、可愛そうすぎませんか?

隼人:そうだね、でもある程度満足して死ねたんだから幸せなんじゃないかな・・・ほら向こうの世界の瑞葉クンとか考えるとさ。

瑞葉:そんなのちっとも慰めになってませんヨ!! 遙さんは古都さんと並んで作者のお気に入りじゃなかったんですか?!

隼人:・・・作者も泣いてたもの、お気に入りのキャラを殺すんだから。

瑞葉:そ、そうなんデスか。でも・・・でも、こんな結末じゃなくても良かったじゃないデスか。

隼人:作者は理由があるから遙さんを殺す必要があったんだって。

瑞葉:ひどい。

隼人:うっ!

瑞葉:
ひどすぎマス、理由があればアタシや副長、最終的には艦長も殺すって事ですよネ、ソレって。

隼人:結論から言えばそうだね。今回の話は腹案として重症を負った遙さんを〈エグザバイト〉の中にある遺伝子治療機を使って怪我をした部分のクローニング(プリムローズの分子生物学の応用)、失われた身体のリペアをするっていうのを考えてたらしいけど。

瑞葉:
だったらそれで良いじゃないデスか!

隼人:じゃあ、はっきり言うけど遙さんが生きていると俺や第一三艦隊の新司令が活躍できず、今後の、特に最終話に影響を与える事になるから。それほどまでに遙さんの能力は高くて沖田提督への思慕か強く自由に動かれると扱いに困るって。それに遙さんだけじゃなくて優秀な佐久田先任参謀も亡くなっているんだよ? 彼女だけを特別扱いはできないんだ。

瑞葉:それでも・・・戦列復帰できないだけで良いじゃないデスか。

隼人:瑞葉クン。もうこの話はここまでだ。

瑞葉:・・・分かりました。

隼人:今回は沖田提督が風雅島司令就任前の前線時代の話も混じっている。インターミッションの名はついてないけど、それに相当する話になっているよ。

瑞葉:・・・そうデスか。

隼人:それと第九駆逐隊の昴司令の名前を変えた。キャラ紹介ではナデシコの通りの亮子だったけど、副長や瑠璃ちゃんと同じご先祖様扱いでスバルリョーコ=昴“巴”、アマノヒカル=天野“碧”、なぜかこの人だけは変わらないマキイズミ=槇“出水”、そしてカザマイツキ=風間“理緒”。

瑞葉:理緒って・・・この名前って・・・もしかして「スットコターイム!!」って叫んでいるアノ人ですか?

隼人:しっ! それは内緒だ。

瑞葉:まったく、ヲタな作者はこれだから。

隼人:まあそう言うなって。じゃ、時間なんでいつものよろしく。

瑞葉:了解。次回連合海軍物語二十六話「出会い」でお会いしましょう。

 

 

 

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代理人の感想

ん〜〜〜〜。ちょっと中途半端かなぁ?

読んでる方からすると「いきなり出てきていきなり死んだ」としか思えませんね。

お涙頂戴の展開をやるならもっと時間を掛けてキャラクターを印象付けるべきだし、

「有能な将官の死」だけならもう少しドライに演出した方がいいかなぁと。