〜メビウスの欠片 終章〜

  赤い大地の記憶





 鮮やかな青空。透き通る風の音。開け放たれたベランダからこのリビングに降り注いでくる、この子のための優しい子守唄。
 すやすやと揺り籠の中で夢を見てる、かわいい妹のための子守唄。
 「ん〜〜! いい天気だねラピスちゃん!」
 洗濯物を干し終えたユリカが、そう伸びをしながら言ってきた。
 「ん。そだね」
 眠っているサクラのほっぺたをつんつんとつつきながら、私はそう答えた。答えて、サクラの寝顔にほわんとなる。ユリカがぱたぱたとキッチンへかけていく。
 …今日は私の仕事はお休み。いつもよりちょっとだけ遅く起きた朝は、ちょっとだけ物足りなくて――そしてやっぱり、『幸せ』っていう朝。アキトとルリがいないからちょっとだけ静かで、でもユリカとサクラがいるからやっぱりにぎやかな、そんな朝。
 焼きたてカリカリのトーストが美味しい朝。

 見れば柔らかな太陽が降りそそいでいた。そして穏やかな光が少しずつ、部屋いっぱいに広がっていく。それにつられるようにして、サクラの顔がちょっとだけ…くすりと微笑んだ気がする。
 その幸せな朝の中で、私は秋の陽射しと柔らかいほっぺに包まれていく。


 「ねぇラピスちゃん。お洗濯が終わったから、3人でお出かけしよっか?」
 「うん―――」








 記憶の3 あれからのクルー




 1.〜中華料理店 『日々平穏』にて〜

 「はい、いらっしゃい!」
 威勢のいい女主人があげたそんな声。小ざっぱりとした中華風のその店内には、昼時の時間を反映して多くの客が詰め掛けている。彼らのテーブルの上にはさまざまな香りと彩りを見せる料理たちが並んでいる。
 そしてそれは中華料理だけではない。和食からイタリアン、スパニッシュをはじめとする欧米料理、そして数々のアジア料理……その主人の見識とあくなき向上心を証明するかのような、どれも一級の料理たち。決して華美な雰囲気、派手さはなくても、誰もがその味に心からの歓声を上げることのできる、そのどこか懐かしい味たち。
 その店の看板は、そんな女主人の心意気と信念を表していた。彼女が望む暖かさが表れていた。
 そしてその、彼女なりの想いが込められたこの店の看板…。
 『日々平穏』
 近所ではなかなか評判の、女主人が切り盛りするその小さな中華料理店で。今日もその女主人――ホウメイは、自慢の料理の腕を振るいに振るっていた。

 その右手の中で踊り、鮮やかな色が一つになっていく食材。汗ばむような熱気の中、店内へと奔放に向けられていくその香り。それらを一枚の皿へと凝縮させていく彼女。
 「チキンライスお待たせしました!」
 暖かな湯気と共に完成されたその料理は、愛らしい笑みを浮かべる従業員によって運ばれていく。待ち遠しさに溢れた大切なお客のもとへ。
 「ん?……おや、まぁ」
 と、不意に彼女は店内のテレビに映ったその字幕を見て、そして驚いたような喜んでいるようなそんな声を漏らして。
 ―――メグミ・レイナード、ついに結婚へ!
 店内の客もちらほらとそのニュースに見入っている中、ホウメイだけはそんな彼らとは少し違う…穏やかでいて何かを顧みるような表情を見せる。
 そしてそんな彼女に急に降り注いでくる声。
 「あ〜〜! 店長、手が止まってますよ!! 前は私にあんなに注意してたのにー!!」
 ホウメイの振り向いた先には、可愛らしいエプロンに身を包んだ20歳位の女性。トレイを片手に不機嫌な顔をしているその女の子に、ホウメイは小さく笑みを見せて。
 「ああ、ごめんごめん。ちょっと知り合いのことがニュースでやってたからねぇ」
 「知り合い? …って、まさかさっきのメグミ・レイナードの入籍報道ですか??」
 「まぁ、ちょっとね。昔の知り合いなんだよ」
 ちょっと考え事をしながら、そう従業員の女の子に言う彼女。
 「ふぅん…って、うそ?! ホントにですかっ?!!」
 「あ、こらクミ!! お店でそんなに騒ぐんじゃないよ!」
 「でも、だってだって!」
 そんな二人の会話が店内に響いていく。その賑やかな光景。しかしそれもクミというその従業員が来てからは度々見られることらしく、客はそんな元気な彼女に視線を投げかけながらそれぞれの至福の時間を過ごしていく。
 そしてそんな店の中。入り口近くのレジの側。
 そこにかけられた一つのボード…。

 ――そのどこか切り離された、時間をほんの僅かのあいだだけ止めたような不思議な空間には…たくさんの写真たちが飾られていた。
 どこかの船の厨房で撮られたらしい写真。5人の女の子と1人の男の子に囲まれている彼女の写真。そして、成長したその男の子が、一人の静かな少女と一緒にカウンターに座っている写真。銀の光をちりばめた髪をした少女が、一人の男の子と、優しく微笑む女性と一緒に写っている写真。
 そして…その彼と、彼にとっての大切な人達が。

 その家族が、その4人が一緒になって……暖かな草原の中で微笑っている写真―――








 2.連合軍人の休日

 「ほらぁジュン君、早く早く〜〜!」
 すぐ前を歩くユキナはそう言って、せかすように僕の腕を取る。
 久しぶりの休日。2週間ぶりに直に会った彼女は僕を早速有無を言わせない勢いで振り回し始めてくれる。車を満杯の駐車場に押し込んだのもつかの間、飛び出すようにしてビルの外へと駈けていって。
 「ちょっとはしゃぎすぎだろ、ユキナ」
 「なによ〜、ジュン君がここんところずっと顔見せてくれなかったからじゃない。今日はとことん付き合ってもらうからね!」
 「…はいはい」
 「わかればよろしい!」
 思わず苦笑を漏らす僕に、しかめっ面まじりの笑顔を返してくる彼女。
 ま、どうせ僕がユキナに逆らえないっていうのはここんところの2〜3年でよぉくわかっているから、それはもういいんだけれど。
 「で、まずはどっちからいく?」
 「ん〜〜…今日はジュン君におまかせ! ちゃんと私をエスコートしてねん♪」
 そしてユキナが僕の右腕にしがみついてくる。淡いクリーム色のブラウスに短めのデニムスカート、それにチョコレート色のロングブーツ姿、軽やかに揺れるその栗色の髪。まるで小さなお日様のようなその微笑み…。
 半分そんなユキナに引き摺られるようにしながら、でもずいぶんと慣れてきたその彼女の小さな重みを抱えながら…彼女の絶え間ないおしゃべりとともに街を歩く。
 それが今の僕にとっての、休日の日常になりつつある光景。そう、大切になりつつある光景。
 そんななかでユキナが、不意にさっきまでとは違う調子で声を上げてきた。
 「そういえばルリ、今火星に行ってるんだっけ?」
 交差点のビルにあるスクリーンでは火星紛争のニュースがやっているところだった。それを見上げながらそんなことを言ってきた彼女。
 「ん? ああ、そうだね。早く帰ってこれるといいんだけど…」
 「ていうか私も行きたかったなー。やっぱ木星出身な私としてはさ、一度はあの星に立ってみたいもん。ジュン君は確か行ったことあるんだよね〜」
 「…あのね。僕が行ったときはあくまでも仕事だったんだから―――って、ユキナ聞いてる?」
 信号が変わる。歩き出す僕たち。
 空を見上げながら、言ってくるユキナ。
 「…それに今ならきっと、元さんにも久しぶりに会えたのになぁ」
 そしてその残念そうなユキナの声に、僕はその不意打ちな言葉に。
 「――そっか。そうだね……」
 僕はごまかすようにして同じ空を見上げながら……あの時の、ミナトさんのその言葉を思い出していた。



 『……あの子に本当のことを話すほうが、私にとってはきっと楽だから。だから―――話さないの』
 そう、苦笑しながら言っていたミナトさん。無理をしてテンカワに笑いかけていたあの人。
 あれはテンカワの口から九十九さんのことが、月臣大佐のことが…語られた日だった。
 そう。月臣さんの心にずっとあり続ける後悔を…僕とミナトさんが知ってしまった日。僕らとテンカワと、そしてユリカと。そのほんの一握りのかつてのクルーで飲み明かしたあの日。
 あのときにテンカワが見せた静かな表情。そして僕のミナトさんへの苦い問いかけに…彼女はそう答えて。
 でもそのあとでその罪悪感を認めるように、その迷いに締め付けられるように。あの人はゆっくりとかぶりを振りながら言ってきたんだ。
 『…なーんて言っても、どう言ってもさ。結局はただの言い訳なんだろうけどね。しがない大人になっちゃった…そんな私の言い訳。
 正直に言えば、もう…どっちがいいのかなんて、私にはわからなくなっちゃったもの』

 …そう。僕の片隅にあったその願望じみた希望と重なるように、あの人はやりきれないような眼差しをしながら言ってきたんだった。

 『……でも、もしかしたらホントは――ホントは月臣さんからちゃんとユキナに話してほしいって、私…思ってるのかな―――』



 そんなあの時の言葉を飲み込むように彼女へと顔を向ける。不思議そうな顔をしてくるユキナ。
 そんなときだった。

 「―――おい、お前。ちょっとそこから降りろ」
 「……?」
 ふと横手から聞こえてきたその声。
 その声に思わず道路脇を向いてみると、そこにはバイクにまたがって何やら話し込んでたらしい二人の少年に声をかけている男が一人。
 その男…濃いブラウンのジャケットと黒地のジーンズに身を包んだ、短髪黒髪を無造作に逆立てている男ははっきりとした命令口調で、どっかりと座っているそのハーレーの上からさらに言ってくる。
 「聞こえなかったか? ちょっと降りてそこに並べ」
 「「…………あ?」」
 …ま、いうまでもなくその二人の返答は険悪だった。そりゃいきなりバイクを横付けされてそんなことを言われれば、誰だってカチンと来るだろうしね。
 その茶髪とドレッドの二人組は手にしていたタバコを投げ捨てると、剣呑な動作で男へと向き直る。ハーレーのエンジンが奏でる規則的な低重音の中、あたりに彼らと野次馬(僕らも含むけど)のあいだからもれる緊張感が広がっていく。
 「なんだろ、ケンカかな」
 僕の左隣で同じように立ち止まっていたユキナが、僕にそっと言ってくる。
 「…どうだろう? あの人、子供連れみたいだし」
 でもそう言いながら小さく首を傾げる僕。何を考えているのかそのハーレー男――しかもサイドカー付――は、女性と子供を連れているし。そんな状況で目の前の二人に明らかにケンカを吹っかけているのが、正直よくわからない。
 と、二人組のドレッドのほうが口を開いて。
 「なんだ、てめぇ」
 そのドスの聞いた声を耳にして、サイドカーに乗っていた男の子が怖がるように顔を上げた。ハーレーの後部にいた女性が、その子の手を引いて男から離れていく。男に小さな言葉を残しながら。
 「イチロウさん、なるべく穏便にね」
 「…ああ」
 聞こえてくる短い返事。そしてハーレーの男はあいも変わらずのその怒ったような顔で、その精悍な表情で男たちに言ってきた。
 「お前ら、さっきそこの信号無視しただろ?」
 「「…………はあ?」」
 途端、不思議な沈黙があたりに訪れて。
 そしてその言葉に男たちは顔を見合わせた。その口元が次第にゆがんでいった。
 「くっ…くくく」
 「――ッハ!」
 「…………」
 二人して笑い声を漏らす。小ばかにしたような顔で彼を見やり…そして次第にその表情を怒りに歪ませていく。
 …まずいくらいに、剣呑な雰囲気が広がっていく。
 「失せろ、バカ」
 そして不意に男の一人がハーレーの横面に蹴りを入れた。サイドカーのシートに唾を吐き捨て、男をねめ上げるようにして睨みつけた。
 息を呑む野次馬たち。僕のすぐ横でむかっとした顔をしているユキナ。
 僕は小さなため息とともに、隣の彼女が暴れだす前に――その場に強引に割り込もうかと思い…。
 でも、事態は思わぬ方向へと移っていって。


 「―――てめぇ、いい度胸してんな……!」
 突然怒気いっぱいの男の声が響く。男のそのこめかみに、明らかに青筋らしきものが浮かんでいる。
 端的に言えば――――男は完全にキレていた。
 そしてユキナの口から漏れたその間の抜けた呟き。バイクの上から躍り出る影。
 「…………うそ」
 次の瞬間。茶髪の男の身体は、すがすがしい秋空へと高く飛んでいって。
 「げぇっ!」
 なんとも言いようのないその叫び声を残して、茶髪の身体が2,3メートルは軽くぶっ飛ぶ。その早業に、一瞬の出来事にドレッドの顔が唖然となる。
 「な…てめぇっ?!」
 倒れこんだ茶髪のほうを呆然と見下ろし…また振り向けばすぐそこにはハーレー男の顔。拳を振るう間もなく殴り倒される。そして男を怒り覚めやらぬ顔で見下ろす彼。
 「俺の愛車をキズモノにするヤツは、何人たりとも絶対に許さん」
 問答無用な、その早業。
 「う……」
 と、茶髪の男がふらふらと立ち上がった。でも顎に強力な跳び蹴りを受けたせいで、足元が危なっかしく揺れている。いっぽうでドレッド男は顔を抑えてうずくまったまま。
 そしてそろそろ突然の乱闘…いや、一方的なその喧嘩に、あたりの皆がはっきりとざわつき始めていて。
 「あ、ジュン君?!」
 僕は今度こそため息をつくと、男のもとへと駆けていって。
 「――ちょっと貴方、何やってんですか!!」
 「ん?」
 「そっちの事情は知りませんけど、こんな場所でいきなり暴れたら駄目じゃないですか! 一歩間違えば警察沙汰ですよ?!」
 もうすでに警察沙汰だと内心思いながら…後ろのユキナが気になりながらも一気にまくし立てる僕。僕の言葉に気まずそうな顔をする男。と思うと彼は、ジャケットの内側に片手を突っ込んで言ってくる。
 「いや…実は私、こういうものなんだが」
 そして男が見せてきたのは、黒革に金字で『神奈川県警察』とかかれた小さな手帳。一般人だとドラマとかでしか目にすることのない、あれだ。そう、警察手帳。
 「…え? 警察官??」
 「恥ずかしながら、まぁ」
 僕の驚いた声に苦笑いを返しながら答えてくる彼。今になって自分のやらかしたことを自覚したのか、気まずそうに連れの二人のほうを見て。
 「………ちっ、マジかよ!」
 「む?」
 と、ふとその舌打ちに振り向けば。ちょっと目を離したうちにまだ余力のあったドレッド男が逃げ出そうと走り出していた。
 人ごみの中から小さな声があがる。ふらつきながらもその中へ向かう彼。そしてその彼の先には、びっくりした顔をして立ち止まっているユキナの姿があって――――
 「―――!!」
 次の瞬間、僕は一気に駆け出していた。ただ真っ直ぐに男の先だけを見て、ほとんど何も考えずに男の肩へと手を伸ばしていた。
 ねじる手首。払う足元。男の身体が大きく弧を描き、刹那の空白のあと地面へと一気に叩きつける。
 …呻き声を漏らしながら歩道にのびるドレッド男。静かに息を吐き出していく僕。
 彼女の肩に手をかけて、特に怪我がないことを確認しながら僕は声をかける。
 「…ふう、まったく。大丈夫かいユキナ」
 「―――え……うん、うん!」
 と、ユキナは僕を見上げながら、そんな嬉しさいっぱいな感じの声をあげてきて。その顔にも満面の笑顔を浮かべていて、なんだか今にも飛びついてきそうだった。…そんなユキナの様子に、ちょっと照れる僕。
 そして問題のその男の人は僕のほうへと駆け寄ってきて。
 「いやぁ、すまない。もう少しで一般の方に被害が及ぶところだった! 助かったよ綺麗なお兄さん」
 「いえ。どうも…………って、はい?」
 その男の言葉に苦笑を返しかけ、思わず固まってしまう僕。続いてとことこと、目を輝かせながら男の子が僕の側にやってくる。少し長めの黒髪をワイルドにカットした、彼の連れていたその男の子。
 「兄ちゃん、女みたいな顔してんのに強えなー! なんかクールって感じがするし、まるで“海燕ジョー”みたいだぜ」
 そしてそんなときだった。向こうからその女性が、男の子の名前を呼ぶのが聞こえてきたのは。

 「―――こらっ、“ガイ”!! 失礼なこと言うんじゃないの!」





 3.ラピス、街中で

 街を3人歩く。ユリカと私とサクラの3人。
 海からの風がそよいでくる公園沿いの道、ユリカはベビーカーを押しながら。私はそんなユリカのすぐ横を歩きながら。サクラはきょろきょろと周りの景色を興味いっぱいに眺めながら。
 …道行く人とすれ違って、私の髪がそっと揺れる。ユリカとアキトとおそろいの色にした私の髪が揺れる。その黒く染めた私の髪先を気にしながら――あの時のことをふと思い出す。


 『……そうだラピスちゃん、髪染めてみよっか? きっと黒髪もすごくかわいいと思うよ』

 そうユリカに進められて、黒く染めてみた私の髪。ユリカに染めてもらった黒い髪。
 私がアキトやユリカとぜんぜん違うこの髪を気にしてるのに気づいて…そう言ってくれたユリカ。
 おかげでユリカやアキトと一緒に歩いていても、前よりはまわりの人にじろじろ見られることはなくなった。まだ私の瞳の色は金色がかった鳶色のままだけれど、それでも前よりはずっと街を歩きやすくなった。
 そんなことをふと思いながら…私はルリの言葉も思い出していた。
 『――ラピスはちょっと気にしすぎなんですよ』
 ルリは事も無げにそう言う。確かにルリは自分の容姿を気にしているような素振りをみせたことはほとんどない。街へ出ればたいてい決まって皆からの視線を集めていても、それを当たり前のように受け止めている。そんな風に見える。
 …でも、私はそうはいかなかったから。
 ユリカと一緒に街を歩くようになってから気づくようになった、その視線は……ちょっと、ううん。どうしようもなく冷たく私を射抜いていったから。だから―――


 「…どうしたの? ラピスちゃん」
 と、ぼおっと並木道の先を眺めながら歩いていた私にユリカが話しかけてくる。
 「そろそろお腹すいたね。なんか食べよっか」
 そう言って、私の顔を見て微笑んでくる。ユリカを見上げながら答える私。
 「じゃあ、クレープがいい。ソナチネの特製クレープにしよう?」
 そして私は少しだけ、頬が緩むのを感じていた。ユリカはそんな私を見て、もう一度微笑んで。サクラが小さな可愛らしいあくびを漏らして。
 そんな陽だまりの中で、私はふとアキトの顔を心に浮かべる。遠い星にいるアキトのことを、ふと思う。

 …アキト。あの火星にいるアキトは、今頃なにをしているんだろ―――?






 4.夢跡

 …その男の人はヤマダ・イチロウと名乗った。
 何でも家族と一緒にアオヤマまで買い物に来たところ、さっきの二人組の交通違反を見るに見かねて追いかけてきたらしい。
 「――ちょうど横断歩道を、妊婦の方が歩いてたんです。そこをあの男の子たちがバイクで走り抜けていって、その方が転んでしまって。
 それでイチロウさん、いえ…主人が怒ってしまいまして―――」
 「…そうだったんですか」
 そしてその女性、ナナコさんがそんな事情を説明してくれる中、当のイチロウさんは捕まえた二人組に鉄拳交じりの『説教』を加えているところだった。
 その光景を視界の隅に眺めながら、彼の顔を遠く横目に見ながら。ふと僕はユキナの様子が少しだけ変なことに気づく。ユキナは彼女と他愛のないおしゃべりをしながらも、時々ちらりちらりとイチロウさんのほうへと目をやっている。
 と、それまでずっと得意げな顔をしていたその男の子…ガイ君が口を開いて。
 「へっへ〜、凄いだろウチの父ちゃんは!」
 「まぁ凄いっちゃ凄いかもね。いろんな意味でだけど」
 そんなガイ君に素で返すユキナ。小さく苦笑するナナコさん。向こうではイチロウさんの熱い説教がまだまだ続いてる。…何をどう説教したのかは知らないけれど、男二人がイチロウさんを見る表情がなんだかやけに輝いている。
 いっぽうガイ君はガイ君でユキナのそんな言葉に納得がいかなかったのか、口を尖らせながらさらに言葉を続けてきて。
 「あー! 姉ちゃんぜんぜん感心してねーな!! だったらとっておきを教えてやるから、今度こそ吠え面かくなよっ!」
 「ん〜、なぁに?」
 ガイ君の顔を覗き込みながらそんな口調で聞き返すユキナ。自慢げに僕らに言ってくるガイ君。
 「聞いて驚け! なんと俺の叔父さんはなぁ、あのナデシコのエースパイロットだったんだぞ?!」

 「「……え?」」

 …そして僕とユキナの言葉が重なった。二人顔を見合わせ、そしてもう一度ガイ君を見る。そんな僕たちの様子に、最初は満足そうな顔をしていたガイ君も不思議そうに首をかしげる。
 「どうしたんだよ、姉ちゃんたち。…なんか普通に驚いてるのとは違うみたいだけれど」
 そのガイ君の言葉を聞きながら、僕はもう一度イチロウさんのほうへと顔を向けていた。
 どこか見たことがあるような気がしていた、その彼の姿を遠い記憶に確認するようにして。そしてはっきりとその名前を思い出して―――
 「……ヤマダ・イチロウ? じゃあパイロットって、もしかしてあのゲキガンガーマニアのヤマダのことか?」
 その僕の不意の呟きに、驚きに溢れた表情でナナコさんは声を上げてきて。
 「え、もしかして……もしかしてジロウちゃんのことを知ってるんですか?」
 「ジロウ…? ああ、本名はヤマダ・ジロウだったっけ。いつもテンカワのやつが『ガイ』って呼んでいたから…」
 「そうです! あの子、いつもその名前で自分のことを呼んでました! じゃあやっぱり……!!」
 感極まったように言ってくる彼女。掠れるようなその声。僕はその強い声に、息を呑んだ。
 …そしてその沈黙のなか、ユキナはただじっと僕のほうをじっと見上げてくる。ナナコさんは何かを期待するような、それでいて、とても悲しげな瞳で僕を強く貫いてくる。一人状況が把握できていない様子で、不安そうに彼女の手を握りしめるガイ君。
 そして、僕は。
 「―――ええ。僕もヤマダと同じ…ナデシコAのクルーでしたから」
 …僕はただそんなふうに、苦味の微かに混じった笑みを彼女へと返していて。



 それからしばらく彼やナデシコの話なんかをして。…でも結局そのまま、ヤマダさん達とはその場で別れた。
 ユキナはそれから目に見えて元気がなかった。やっぱりヤマダ・ジロウが九十九さんと同じように、あの戦争の中で命を失っていった人間の一人だったということが。そしてイチロウさんのあの優しすぎた微笑みが、ユキナには少しこたえたのかも知れない――――

 『……この子の名前も、ガイっていうんですね』
 そんな僕の呟きに、優しくガイ君の頭に手を置いていたイチロウさん。そしてあの人が心を抑えつけるように語った、その形にしきれなかった思い。
 『アイツが、ジロウが火星へと旅立っていって…そして小さな箱と写真になって帰ってきたその半年後に、こいつが生まれました』
 ナナコさんが口元を抑えて俯き、そんな彼女を心配そうに見上げるガイ君。……そう。イチロウさんの掠れた声が、僕らの耳へと届いていく。
 『…俺は――私は、アイツが火星に行くことに賛成してやれなかったんです。何も言わずに帰ってきたときは…気がつけばアイツの笑ってる遺影を殴りつけていました』
 あの人の握り締められた拳は、そのとき確かに小さく震えていて。
 そしてあの人は、震えそうな顔で笑っていて。
 『……でも、この子が生まれたあのときに。この子にはアイツがずっと目指していた――その名前をつけてやろうって…何故かそう思って。そのときになってやっと初めて、アイツの目指してたものを認めてやれた気がしたんです。
 だからこそこの子には、アイツが目指したその姿をどうしても知っていてほしいって。――もう…あいつにとっては遅すぎたのに』
 『父ちゃん……』

 そして静かに、静かにあの人は言ったんだった。

 『…ホント、男って…どうしようもないくらいにバカですよね――――』




 ――傾きかけた太陽。肩を並べ歩く僕ら。
 言葉少なく街を歩く足音。
 「……あの男の人、お兄ちゃんにちょっと似てたね」
 ポツリと、ユキナがそんな声を漏らす。
 ユキナのその言葉にどきりとしながら、僕は彼女にやるせない笑みを返す。
 …でも僕は、あの時のイチロウさんの姿に月臣大佐を見ていたんだと思う。僕は彼のことをほとんど知らなくても、でもユキナをとおしての彼と九十九さんを知っていたからこそ――だからこそその姿を見ていたんだと思う。
 そして僕は黙ったままだった。ただ頭の中で九十九さんのことが、月臣大佐のことが…それにイチロウさんのあの時の言葉がずっと駆け巡っていた。今の僕にはもうわからなくなってしまった…彼らのその不器用にも思える姿を悲しく思い起こしていた。

 「…ジュン君はさ」
 「―――…?」
 と、不意に聞こえてくるユキナの小さな声。
 彼女は前を向いたままポツリと口を開いた。僕に聞こえないくらいの小さな声で。
 「ジュン君は、お兄ちゃんみたいなカッコ良さとかなくってもいいから…だから、これからもずっと―――」
 そう何かを言いかけて。ふと一瞬だけ青空を見上げて…でもその先は空の先に吸い込まれるようにして消えていった。代わりに彼女はくるりと振り向いて、僕に真っ直ぐな瞳を向けてきた。
 「ね、キスして」
 そして突然、彼女はそんなことを言ってくる。じっと僕を見上げてくる。
 「ユキナ…? いきなり何」
 「別になんでもいいじゃない。たまにはジュン君からカッコよく私にキスしてみせてよ」
 わずかに漏れる、僕の苦笑。
 「…さっき言いかけたことと微妙に矛盾してない?」
 「いいの! 人間なんて矛盾してるんだから!!」
 そしてユキナは気恥ずかしさを隠すように、大声でそう言ってきた。そんな姿に思わず微笑まずにはいられなかった僕。目の前で拗ねた顔をしているユキナ。
 「――はぁ…全く我侭なお嬢様だよね。でも結局はそこに惹かれたんだけどさ」
 「何よ、いきな―――」
 …だから彼女の声はそこで止んで。僕が強引にふさいでいって。

 不意打ち気味に唇が重なる。ちょっとだけあわただしく、そして可愛らしげに身体を傾けてくる。
 あとはまぁ、その…………ね?








 5.〜夕日と思い出とハーリー君と〜

 …一時のあいだ大地を覆っていた、軋むような喧騒と鉄の匂いは既に消え失せていた。火星の空には今あの見慣れていた虹色と、そして薄いオレンジ色の光が横たわっている。あの頃のようなその夕日が広がっている。
 そしてナデシコCのデッキに湿り気のない風が訪れてくる。静かに、そよぐように。
 空の穏やかさと大地の静謐さを受け継ぐようにその風は流れている。優しく頬を撫でていく。
 ……でも、それは今の俺の心とは裏腹なもので。
 それはわけのわからない怒りと、そして理由の見えてこない罪悪感とが混じり合ったもの――

 「――あ、こんなところにいたんですかテンカワさん」
 「…ハーリー君」
 ふと視線を夕日と反対側に向けると、そこにはオレンジ色に染まったハーリー君の姿があった。小さく微笑を浮かべながら俺は彼に声をかける。
 「ルリちゃんたちはまだマクファーソン大使達とミーティングかい?」
 「あ、はい。まだまだ時間がかかるみたいです」
 慌てたようにそう返事を返し、それから少しだけ戸惑った様子を見せながら、小走りに俺の前に彼はやってくる。
 続いてハーリー君はちらりと俺の顔を見て、それからその視線を目の前の夕日へと移した。
 「…久しぶりの火星の夕日だったからね。ちょっとゆっくり見たくなったんだ」
 同じようにして視線を空へと向けた俺の口から、そんな言葉が漏れた。ふたり手摺に手をかけながら、風の中で少しの間…その風景に釘付けになる。
 意を決したように口を開いたのは、ハーリー君だった。
 「…あのう、アキトさん」
 「なんだい?」
 「その、あまり無理とかしないでくださいね。艦長も僕も、それにサブロウタさんも、何かあったら相談に乗りますから」
 「――――」
 …思わず、彼のほうを向き直っていた。
 「え、いえ! そりゃあ僕なんかじゃ大したこともできないですけど、でも艦長だってすごく心配してましたし、それにやっぱり話してもらうだけでもちょっとくらいは何かお役にたてるかなぁって…」
 そしてそう、困ったように言って口ごもるハーリー君。彼はそれからごまかすようにして、目の前の夕日へとまた目を移す。
 少しの間だけそんな彼を見ていた俺だったけれど、気がつけば口元には苦笑が浮かんでいて。
 「…そうだな。ありがとうハーリー君」
 そう言って、ゆっくりとグラスを外す。
 無言のまま俺の表情を見やってくる彼。目に飛び込んでくる光の全てが、先ほどまでとはまったく違って感じられて。
 「テンカワさん、光…大丈夫なんですか?」
 「ああ、このくらいだったらね」
 目を細めて夕日を眺める俺にハーリー君はそう尋ねてきた。彼は俺がいつもこのグラスをしている理由を聞いているから、心配してくれたのだろう。だから本当は少し眩しすぎたけれども、そう軽く笑いながら答える。

 ――これも、あの日以来ずっと続いていること。もう戻ることのない感覚の一つ。
 過剰なまでの量のナノ・マシンによって灼かれた俺の瞳は、以前と比べてずっと光に弱い。そのために光の量を調節するこの特製のグラスは、俺にとって片時も放すことのできない必需品となっている。
 そう。3年以上の時間をかけて治療を続けているこの身体は、以前とは比べてずっとマシはなってくれたといえ…常人から見ればまだまだ欠陥だらけ。
 そしてなにより、俺にとって一番大切だったその感覚は、その夢と現実は―――
 …そんなことを思いかけ、でも心の中で小さく首を横に振った。そしてその眩しい光を眺め、かつてのあの風景を心に思い浮かべようとしてみる。
 と、そんなときだった。もう一度背中に声をかけられたのは。

 「隣、いいですか?」
 七条さんだった。
 「…ええ。七条さんも夕日を見に来たんですか?」
 月臣大佐とともにナデシコCを訪れていた彼女だが、途中で席を外してきたのだろうか。俺の問いかけに彼女はただ静かに微笑むと、紫色の絹の髪留めで結ばれたその黒髪を揺らせながら、俺の隣へとやってくる。
 「テンカワさんとマキビさんのお姿が見えましたので」
 そしてそうとだけ言って、どこか物憂げな表情で空を見やる彼女。その右手が手摺の上へと置かれ、微かに甘い香りが届いてくる。彼女の感傷的な言葉がそっと聞こえてくる。
 「……綺麗な夕日ですね。本当に、いつ見ても」
 その七条さんの言葉は、何か言葉以上の意味を持っているように感じられた。いっぽうでまた、彼女の姿は俺達に何かを謝ろうとしているようにも見えた。
 でも彼女は別のところでわかっているんだろう、それを口にする必要はないことを。…いや、彼女の立場はそれを口にできないことを。
 だから俺はただ静かに笑みを作り、どこか遠い目をしている彼女と同じ太陽を眺める。ハーリー君が手摺に身体を預け、ふと小さく声を漏らした。
 「…昔は、もっと綺麗な星だったんですか?」
 彼の言葉は、あの時のあの男と七条さんとの会話にそっと触れるように、でも決して触れすぎないようにして投げかけられた。そう、優しく投げかけられて。
 ハーリー君と七条さんを交互に見、そして。俺は彼女のその悲しそうな横顔を少しでも和らげてあげたいとでも思ったのだろうか――――ただ、空へと顔を上げながら言っていた。
 「…空はあの頃と変わらないよ。あの虹色の輝きと、それと…いつか子供の頃に見た、あの夕日とね」
 「――――」
 「…あの、七条さん?」
 ふとあがるハーリー君の声。
 その声につられるようにして顔を横に向ければ、そこにはどこか驚いたような…そして、いや…俺にもなんて表現すればいいのか分からない、でも何故か覚えがあるその表情をした彼女がいた。
 彼女はぼうっとした様子で、でも食い入るようにその夕日の先を見つめているようだった。
 そして彼女は微笑んだ。
 ハーリー君と、俺とを見やりながら静かに微笑んだ。まるで寂しく苦笑するように。
 「…私もできることなら、いつかの火星の夕日―――見てみたかったです」
 彼女のその笑顔の向こう側に、その夕日の向こう側に。何があるかを俺が知らないままに―――












 6.BAR『花目子』にて

 そして青い星の夜に。霞んだ空の下の世界、光に溢れたその街の夜に。
 ……その、小さなバーの中で。

 「―――いらっしゃいませ」
 バーテンダーの低く通る声がカウンターからドアへと届いていく。店に入ってきた男は店内を二度三度と見回し、カウンターに知己の女性を見つけると、彼女のすぐ近くへと足を進めていく。
 もう50に近い年齢にも見える、温和な表情をした――しかしそれもまたどこか1つの仮面のような、眼鏡の男性。彼はその笑みを崩すことなく席へと腰掛け、静かに声を漏らした。
 「…いやぁ、おひさしぶりですね。ヒカルさん」
 「プロスさん遅いですよ〜!」
 「すみません、急な雑用が入ってしまいましてね。あ、マスター。水割りをお願いします」
 二人の会話がカウンターに消えていく。薄い明かり。錆びたオレンジ色の明かりが二人を照らす。
 「しかしこうして一緒に飲むのも半年ぶりですか。…最近お仕事のほうはどうです?」
 「……いきなりソレからきますかプロスさん」
 グラスを置いて小さく微笑う彼女。静かに置かれたその液体を掲げ、プロスの言葉がその中へと溶けていく。
 「お誘いの言葉がちょっと気になりましたから」
 「あはは、まぁぶっちゃけかなり詰まっちゃってるんですけどね〜。だからちょっと気分転換したくなったんですよ」
 ヒカルは彼に合わせるようにしてその手の内の赤色をもう一度顔の前に寄せ、そして二人静かにその味を飲み干していく。明かりに揺れる店内、薄く伸びたその影たち。
 と、プロスは店の雰囲気が以前とは少し違うことに気づいた。横目で店内をくるりと見回し…そしてその理由に思い当たった。
 「ところでマスター、イズミさん――ママは今日お休みで?」
 それに答えたのはヒカルだった。手にしたグラスをくるくると小さく回しながら、それもまた小さな苦笑いを見せながら言ってきた。
 「イズミなら…2ヶ月くらい前にまた外国に行っちゃいましたよ」
 そしてマスターがボトルと空のグラスを手にプロスの前へとやってくる。彼も同じように、その口元に小さな寂しそうな笑みを浮かべながら。
 「…今度はいつ日本に帰ってくるか、わからないそうです。できればまた…ここに戻ってきてほしいんですけどね」
 「―――そうですか…皆さんも色々、あるんですねぇ」
 プロスはグラスを掲げ、くいっとその縁を傾けた。天井を見上げるヒカル。洗い立てのグラスに手をかけるマスター。
 静かに流れる時間の中で、彼らは残り香に包まれた夜を共有していく。

 …そして向かいの壁に飾られたウクレレが一人、そっと。その静かな思い出を懐かしむように佇んでいて……。








 7.南の国

 「―――今頃、あの二人はなにしてるのかしらね」
 その太陽と深緑とに包まれながら彼女は呟いた。
 琥珀色の大河を抱くアマゾンの大地のなかで、その岸に一人腰掛けて地平を眺めている。素足の先には砂が暖かく、流れる黒髪にはその風が小さく包むように…そうやって彼女をこの場所に留めている。
 いつになく優しい、その表情のままに。

 …河を眺め、過去を――想う。
 大切な光景と悲しみの情景とを繰り返しながら、その流れを飲み込んでいく未来を見つめる彼女。そっと見続けていく彼女。
 そして彼女はもう一度、今度は確かに呟いた。

 「……やっぱり、ウクレレ持ってくればよかったかな―――」



 ふと顔を上げる。陽射しの先には青い空。
 なんとなしに微笑んだ彼女の白い肌にその太陽が照りかえる。緑の葉に包まれた景色の片隅で、一人の子供が駆けてくる。
 …褐色の肌、くっきりとした顔立ち。その両手いっぱいに溢れた黄金色の輝きを持って、彼女のもとに走ってくる。
 そしてその男の子の元気な声が、空いっぱいに届いていく。

 「イズミー! 見て見て、おっきなアロワナ取れたよー!!」




 (
記憶の4へ




 …後書きはもう最後にまとめて書こうかなと思ってたんですけれど、今回に限ってちょっとだけ。
 記憶の3は終章の本筋からは少し外れて、幕間というかちょっと一息つく感じでした。2201年のあの出来事から数年たった後のラピスやユキナ、ジュン、それにイズミといった面々を私なりにちょこちょこっと書いてみて。
 それから…実はちょっとだけ予定外だったイチロウ兄さん。
 けっこうベタな登場というか設定というか、そんな人になってしまいましたけれども、でも…息子のガイ君も一緒に、ここから先のクライマックスの前に書くことができてよかったかなぁ…なんてちょっと勝手に思ってます。

 サレナの『記憶』の秘密まで、シェリエと、彼女と――そしてアキトとの繋がりの話まであと少し。長かったこの話も、やっと佳境です。
 では、モデレでした。



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代理人の感想

う・・・・イチロウ兄さんの下りで、ちょっとジンときてしまいました。

不甲斐ない。でもこう言うの、弱いんだよなぁ(ちーん)。