アカツキは間抜けだ!カッコよくない!
ハーリーは糞だ!
ジュンってだれ!?
脇役死ね!
と思う人は読まない方が無難です。
それでも構わない人、どうぞ駄文ですが読んでやってください。







波乱万丈な人生


第一話 『〜八ヶ月、とナデシコ〜』










…重苦しい雰囲気。

普段なら多くの人たちが集まり、静けさを知らない場所の食堂で人々は箸を止める。

そして視線は一点に向けられていた。

それは食堂に設けられた大型スクリーン。

誰一人例外なく、ハーリーもまたスクリーンの虜となっていた。

その画面にはこれでもかっというほど仰々しく書かれた文字、『ナデシコ、火星にて撃沈!?』



「正午のニュースです。佐世保から火星に向けて出発したネルガル重工の機動戦艦――通称ナデシコからの連絡が途絶え――」



スピーカーからはニュースキャスターの声が流れ出て、食堂全体に響き渡る。

それと同時に、画面に流れ始める映像。

佐世保ドックから出撃したエステバリスがバッタやジョロを引き連れてる場面だ。

そしてエステバリスが海へ跳びナデシコが現れ、沢山のバッタとジョロをグラビティーブラストが一掃する。

そんな戦闘シーンを映すスクリーン、それからすぐに映像が変わった。



「えー、たった今、情報が入りました。
 ネルガル重工が今回の事について緊急記者会見を一時間後に行うとのことです。」



キャスターの顔が映り、原稿を読む淡々とした声が響く、それに聞き入る人々。

またすぐに映像が変わり、ネルガルの重役達が高級車から出て本社に入っていくところが映されている。



「やっかいな時間にジャンプしたもんだ。
 ルリさんやテンカワさんに連絡が取れないなんて…。早く伝えなきゃいけない事があるのに…」



そんなハーリーの呟きはスピーカーからの音にかき消された。

(さて、どうする?こんな中途半端な時じゃ碌な行動を取れない。やはりここは…ブローディアの完成を急がせるか。一度作った物だから前回より早くできるけど…そんなことしたらテンカワさんは無理するかも。でも…)

これからの行動を悩むハーリー。

(まぁ、まずは充電するか。)

ハーリーはまだほとんど手付かずのご飯を大急ぎで食べ終え、食堂を後にした。















「よっこいせっと…。さぁ、始めるか。」



うろうろと歩き回り、突然芝生の上に禅を組み始めた。

すぐにハーリーは呼吸を整えながら目を瞑り、色々なことを考え始めた。

ここは施設からさほど離れていない公園だ。
そこは仕事に疲れて職員がよく来る所なので見た目がよく、自然にあふれていた。
そして警備もしっかりしていたために、マシンチャイルドのハーリーも簡単にこれる場所なのだ。

(はぁ…めんどくさいな〜。でもやんなきゃまずいよな…テンカワさんや北斗さんがうらやましいや。)

これからハーリーがすることは気の充電である。

そしてこれは凄く時間が掛かたりする。



ハーリーの身体は子供のころにまで戻ってしまったために力、体力、すばやさなど身体に関するものは全て無くなってしまった。

あるのは知識と経験、そして技術のみ。

そこで無くなった物を気の力で補うのだ。

しかし、なぜアキトや北斗が羨ましいのかというと、それは気と昂気の違いである。

気とは体内にある程度存在する物だが自ら生成する事はできない。

だから大気から体内に集める必要がある…、いってみれば充電。

だがアキトや北斗が使う昂気は違う。

昂気は体内で生成可能なのだ!

そのためには体内で変換する物質が必要で、アキトや北斗の場合、それは肉である。

簡単に言えば、二人とハーリーの違いは、まさに発電機と乾電池!

そんな訳で二人を羨むのだ。




日も傾き、辺りにいた人も殆どいなくなってからやっとハーリーは目を開けた。



「こんなもんかな…」



そう言いながら、手に収まるくらいの石を握りつぶす。

ハーリーは公園にある時計を見上げて時刻を確認した。



「もうこんな時間か。
 今日もラピスに怒られるのか…。嫌だなー。」



(しかもすでにラピスの性格が変わってるし、どうして同じ施設にいるの?やっぱり過去とは違うのか。)

そして、とぼとぼと歩いて帰る後姿は煤けて見え、その姿はラピスの怖さを物語っていた。



















一方、ニュースにまで取り上げられたナデシコを建造したネルガル重工では様々な問題が起こっていた。

記者会見では、民間に支持を得ようと色々と体面の良い事、ナデシコよりもさらに優れた戦艦の事を語っていた。

しかし今、ネルガル内ではスキャパレリプロジェクトの賛成派だった者と反対派だった者が対立している。

会議室には重役会議中と書かれた札が掛けてあり、完全防音なので外には音は漏れないが、中ではもの凄い罵倒しあう言葉の嵐。

その会議室の会長席は空白であり、その事がさらに拍車を掛けていた。



「…会長、よろしいのですか?すでに会議は始まっております。」



会長室で一人のキャリアウーマンを思わせる女性――エリナ・キンジョウ・ウォンが窓の外を見ている男に話しかけた。



「エリナ君は仕事のとき何時も口調が固いねー。
 そんなんじゃ男にもてないよ?」



男が振り返り、エリナに向かって軽い口調で言葉を返す。



「仕事とプライベートの区別くらいつきますので。で、よろしいのですか?」



「あー、あいつらと話してると疲れるんだよねー。同じ事ばっか言うしさぁ…。」



「会長がそのような事を言っては他の社員に示しがつきません。
 まぁ、もう十分示しがつきませんが。」



「相変わらずきついねー。さて、そろそろ行きますか。」



「もう十五分の遅刻です。」



「…分かってますよー。」



そんな会話をして、男は会長室を出て行く。





重役会議中と書かれた札を見もせずにさっきの男が扉を開けて入っていった。

そして重役達は一斉に立ち上がり、男に向かって頭を下げる。



「さて…面倒な会議の始まりかー。」



そう小さく呟いて男は『アカツキ・ナガレ会長』と書かれた札の置いてある席に座った。





「では、それぞれこれからの意見について述べてくれ。」



「それでは私から。スキャパレリプロジェクト措いて使用された予算は――」



(これだから面倒なんだ。

 一々分かりきってる事を…、バカかこいつは。)



「――でありますから、これからは我が社の――」



アカツキは殆ど聞き流しこれからの計画を考えていた。

(ナデシコ級戦艦コスモスをさっさと建造出来れば良いのだけど、どれほどの予算を割けるかはこいつらの発言が関わってくるな。…さぁ、反対派はどこを攻めてくるかな?)


「――故にコスモス建造より支給可能な兵器の方を優先させるべきかと。」



「君の意見は分かった。他にはいるのか?」



その言葉に次々に挙手をする重役達、少しでも予算をっと躍起になって意見を述べる。



「私からの意見としてはナデシコ級戦艦コスモスの建造を早めるべきだ。」



色々な重役達が言い争う。



「何を言うんだ!先ほど散々私が言いた様に『反対意見は後に述べてくれ』…。」



(我慢の限界だ。)

さっきの長々と話していた男がアカツキの一言に黙らされた。

そして話を続け始めた。



「企画されている技術はクリムゾングループよりネルガルの方が有利な立場にいる。兵器等はクリムゾンもネルガルもほとんど変わらない。なら、ナデシコ級戦艦コスモスの方が遥かに良い。」



「意義有!」



黙らされた男が立ち上がりながら主張する。



「…どうぞ。」



アカツキの言葉が促した。



「確かに彼の言う通りクリムゾングループより有利に事を進めれるのは戦艦建造の方です。
 が、それでは我が社の利益はどうなるのですか!?ナデシコだって――」



その発言を聞いたアカツキは思った。

(やはりこいつは本物の馬鹿だな。目先の利益ばかりに気を捕られている。)



「――です。」



勝ち誇った表情で周りの重役達の顔を見る。

説得力のあった発言に、今度はコスモス建造賛成派が苦い顔をして黙ってしまう。

(まずいな…、仕方がないな。)



「では言おうか、今軍の需要は兵器の方が多い。
 それは建造時間も戦艦より遥かに短く使い勝手が良いから。」



アカツキが突然話し始めた。
  


「だが今我々の最大の顧客の地球連合宇宙軍はすでに火星を追いやらた。
 月も、もう時間の問題になっている。
 その状況を覆すには、何か決定的な力がいるのだよ。」



そう言いながら相手を目で威圧し、お茶を飲む。

お茶を飲む事で間を取り、アカツキは流れを自分の物にした。



「その決定的な力にコスモスがなれば…君達にも分かるだろう、軍に貸しが出来きる。
 それに技術提供を早めることが出来ればそれだけ民間人の支持も上がりクリムゾングループに差を作れる。」



コスモス建造反対派は苦い顔をするが、その表情はまだ抵抗するつもりがあるようだ。



「…目先ばかりに気を捕られていては駄目なんだよ。」



アカツキは自分の意見の欠点を巧妙に隠しながら重役達を黙らせ、そして立ち上がる。

ゆっくり後ろを向きながら厚さ20cmの強化ガラスから外を眺めた。

(このときのポイントは微妙に上を見上げて、後ろに手を組むのがポイントだ。)

そんなアカツキの思考を他所にして、アカツキは後姿を魅せつけた。

文字通り魅せつけたのだ。

その姿は雲を見ていて、まるで未来を見通してる様にも見える。

(さらに止めの一発!!喰らえ!)



「分かったかね?」



その最後の駄目押しに、



「…はい。」



と、反対派の重役達は頷くことしか出来なかった。






「…ふぅ、なんとか予算は取れたよ。」



「お見事です会長。」



「いやな〜に、これくらいチョロいもんさ。」



歯を光らせながらなかなかの微笑みを浮かべてエリナを見る。



「詐欺し顔負けですよ。もし職を失っても詐欺師でやっていけるんじゃないですか?」



しかし、それに動じないエリナの一言。



「あー、エリナ君ひどー。」



そんなふうに言うがまんざらでない様子のアカツキであった。









そんなこんなで、ハーリーはラピスと一緒に計画を急ぎ、ネルガルはコスモスを建造する。

あっと言う間に八ヶ月が過ぎてしまった。





――――ナデシコブリッジ



(…ここは…ブリッジ?あ、そうでした、チュウリップに入って…

 そんな事より!アキトさん!?)

ルリはオモイカネに命じてすぐにアキトを探した。

そしてまもなくルリの目に映る映像。

(やっぱり展望室ですか。このまま寝顔を眺めているのも良いのですが…ここは秘蔵の○秘テープに保存しときましょう♪)

ルリの目にはユリカとイネスの両名は映っていなかった。



「おはようございます。アキトさん。」



すこし大きめのボリュームで優しく起こすルリ、まるで夫を起こすように…。



「ああ、おはようルリちゃん。」



そうアキトはルリに挨拶を返し、眠気を吹き飛ばすように頭を左右に振る。

(可愛いです、これもチェキです♪)

軽いトリップをするルリに



「状況はどうなってるのかな?」



と、アキトがルリに尋ねた。



「…あ!はい、今は…戦闘の真っ只中ですね。過去と一緒です。」



「そうか、なら早く起こさなきゃ不味いな。」



その言葉にルリはユリカとイネスがアキトの傍にいるのに気がついた。

(なんかムカつきますね…お仕置きしますか?)

ルリは明らかに不可抗力な出来事に腹を立てている。



「おい!ユリカ起きろ!!」



ユリカを覚醒させるためにアキトは身体を強く揺さぶった。

そんな状況をルリは眺めて羨ましがる。



「えっ!! アキト!!…そんな駄目よ、まだ正式に付き合ってる訳じゃ無いし。
 でもでも、私、アキトなら…いやん!いやん!ナに言ってるの私!?。」



ユリカの寝言らしき?言葉がルリを刺激した。



「…で、どうするんですかアキトさん?」



声は優しいが顔は冷たさを感じさせた。

そこにしばらく間ができる。



「よし、強行手段に出る。」



その言葉が更にルリを刺激した。



「…目覚めの口付でもしますか?」



もはや声も冷たい。

そして、アキトは冗談でも言ってはいけない事を言ってしまう。



「…じゃあ、お言葉に甘えて。ついでにその先も、やっちゃおうか?」



(お仕置き決定!)



「ほ、本当!?アキト!! でも、あの、その先って!! あ…!」



「…馬鹿。」



ルリとアキトの冷たい眼差しがユリカに向けられる。

だがアキトにも向けられている、が、アキトは気づいていない。

ユリカは視線に気づき、目に見える程の冷や汗を掻きはじめた。



「ルル、ルリちゃん!状況は!?」



(仕方ありませんね…でもお仕置きは受けてもらいますよ。フッフッフ…)



「ナデシコは通常空間に復帰しました。…現在通常空間では連合宇宙軍と木星蜥蜴の戦闘中です。」



混乱し始めるユリカ。



「え、え?なんで、どうして!?しかも私どうして展望室いる!?」



「見ますか?」



ルリは返事を待たずにモニターに戦闘を映しユリカに見せる。



「のええええええええ!!!」



「ど、どーなってるの、これ!?」



ドアップのバッタにビックリした。

そして傍にアキトがいるのに、はしたなく叫ぶユリカ。

(いい気味です。)

ルリは更に混乱させるために報告した。



「本艦は現在月付近を航行中、木星蜥蜴の軍の真っ只中です。艦長、指示を。」



ルリの報告はアキトにも情報を与えるが、ユリカには情報だけでなく混乱を与えた。



「グ、グラビティ・ブラスト広域放射。直後にフィールドを張って後退!!」



ユリカの指示が下る。



「…了解しました…。」



「ル、ルリちゃん、ちょっとその命令…あ!」



アキトは呼びかけたが遅かった。

遅くなくてもルリは聞かなかったかもしれない。




    ゴワァァァァァァァァァァ!!!

ズズズ、ジーーー!

  バガガガガガッ!



モニターにはグラビティ・ブラストの広域放射で破壊される無人兵器が映し出されるだけでなく、ついでに破
壊される、連合宇宙軍の艦隊までも映し出された。



「ルリちゃん…」



アキトの呟きは小さかった。

聞こえていたかどうか分からないルリから一言、アキトに向けてかユリカに向けてかは分からないが。



「大丈夫です、奇跡的にも連合宇宙軍に死人は出てません。」



「後、艦長宛ての巻き込まれた連合宇宙軍の司令から、苦情の連絡が入ってます。」



「え、ええええええええええ!!!」



ユリカ絶叫!





それから急いでユリカはブリッジに戻ってきた。

戦闘中なのに、そんなユリカには色々な説教や小言がまっていた。



「御免で済んだら戦争なんておきないよ、ユリカ。」



それはジュンの一言から始まり



「せめてブリッジにいれば、状況は見えた筈だ。」



これは不可抗力なのだか、知らないゴートはお構いなしに言う。



「こんなんで大丈夫かしら。」



アキトとユリカが一緒に居た事が気に食わないメグミの愚痴。



「先が思いやられるわね〜。」



そんな場面を傍観者のように言うミナト。



最後にルリが一言、



「……馬鹿ばっか。」














――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき


こんにちは!

今回はハーリー、アカツキ、そしてルリの三人にスポットを当ててみました。

ルリは脇役って感じじゃないのですが、ナデシコを見る目として十分な要素を持ってるのがルリだったからです。

あと、アカツキを会議に出してしまいましたが、これは私の勝手な想像です。

気に入らなかったらごめんなさい。

それと『管理人.Ben「Actionへの投稿に限り、設定その他は御自由にお使いください」』と書いてありましたが、どうしても書きたくて勝手に『昂気』の設定を書いてしまいました。

もしよろしければお許しください。

駄目でしたらお手数ですがその部分を削除してください。

『しかし、なぜアキトや〜』から『〜そんな訳で二人を羨むのだ。』の部分です。

本当に申し訳ありません。




次回はナデシコの戦闘シーンです。

ここからオリジナルが結構入ってきますので気に入らない方が続出するかも…(読んでる人が居たらの話ですが



ここまで読んでください真にありがとうございます。

 

 

管理人の感想

桃次郎さんからの投稿です。

う〜ん、昴気についてはまた後日に真相が暴かれると思いますので、どうぞ独自の設定で突っ走って下さいw

それにしても、どうんなに年を重ねてもラピスには頭が上がらないんだなぁ、ハーリーは(苦笑)

アカツキの活躍する場面が意外でしたが、展開的には悪くないと思いますよ。