機動戦艦ナデシコ

 

第2話 旅立つ花

 

 

 

アキトは自分の目の前にいる人物を注意深く観察してみた。

 

恐らくは・・・・・・アイちゃんを救えなかった事に対する後悔の念であろうか・・・・・

 

お世辞にも健康的とは言い難い表情をしていた。

 

この頃の自分は・・・・・弱かった。

 

いや__

 

(今も決して強くはない・・・・・・)

 

大切な人を守れなかった。

 

(結局、この頃から変わってないんだ・・・・・・・)

 

思わず自虐の笑みを浮かべる。

 

「あの・・・・・どうかしたんですか?」

 

こちらを見返している青年・・・・過去の自分が心配そうに問いかけてくる。

 

「いえ・・・・・・何でもない」

 

「それで・・・・・貴女は誰なんですか?俺に一体・・・・」

 

過去の自分の問いかけにしばし考え・・・・

 

「・・・・・・遠い親戚・・・・ってところかな・・・・・・うん」

 

「へ?」

 

驚いてこちらを見つめてくる自分をよそに才蔵さんに向かって言った。

 

「あの・・・・ここで働きたいんですけど・・・・」

 

「え?ああ・・・・・あんたみたいな美人は大歓迎だが・・・・・」

 

「いいんですか!有り難う御座います」

 

こうして、再び雪谷食堂で働くことになった。

 

後ろの方で過去の自分と才蔵さんがあっけにとられていた。

 

それを見て、少し強引だったかも・・・・・・と心の中で反省した。

 

 

「おい・・・・・お前・・・あんな美人の親戚がいたのか・・・・」

 

「いえ・・・・よく分からないっす・・・・・」

 

「・・・・分からないだあ?」

 

「俺、ずっと火星にいましたから・・・・・」

 

「そういや、そうだったな・・・・・まあ、これも何かの縁だろ」

 

 

 

 

「そういえば何て名前なんだい?」

 

才蔵さんの質問にしばし沈黙する。

 

(そういえば・・・・・どうしよう、名前)

 

自分の本名・・・・・・すなわちテンカワ・アキトは使えない。

 

何故だか分からないが・・・・・自分は今、女性で外見がかなり違う。

 

それ以前にここには過去の自分自身もいる。

 

別人に成り済まし、偽名を使う以外に方法はない。

 

「私は・・・・・・・テンスイ・トモヨと言います」

 

これより先、新たな自分としての生活が始まる。

 

 

 

「はい、味噌ラーメン一丁お待ち!」

 

初めは久々の料理ということもあり、不安だったが、元々コックを目指していたので、段々勘が戻ってきた。

 

今ではすっかり女性であることにも慣れて、雪谷食堂の看板娘となっている。

 

だが・・・・・・

 

「そこのお嬢さん〜僕と一緒にお茶でもどう?」

 

「結構です・・・・勤務中ですから」

 

まさか男にナンパされるとは昔なら思いもしなかっただろう。

 

一日に必ずこういった客が何人か来る。

 

今では、自分目当ての客も来るぐらいだ。

 

最初は「何が悲しくて男にナンパされなきゃいけないんだ・・・・・」とか思ったりしてたが、何しろ今の自分は男ではない。

 

段々慣れるにつれてあしらい方も上手くなってきた。

 

自分の知っているとある少女の様に事務的な口調で相手と応対する。

 

「そう言わずにさあ〜僕と一緒に愛を語ろうよ〜」

 

「結構です!」

 

「またまた〜照れちゃって、可愛いねえ〜」

 

「・・・・・・・(怒)」

 

たまにいくら言っても一向に止めない輩がいる。

 

そうなると流石に頭に来てしまう。

 

その結果・・・・・・

 

「はあっ!」

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

気が付くと相手を投げ飛ばしている。

 

店内から外の方まで・・・・・・10メートルはあるが余裕で吹っ飛ぶ。

 

女性の身体とはいえかつて復讐の為にと修行した成果は確実に身体の中に生きている。

 

木蓮式柔を前と殆ど遜色なく使いこなせる。

 

そうなると相手もただでは済まない。

 

全治1ヶ月の怪我を負って病院送りになるのが関の山である。

 

勿論、手加減はしているつもりだが。

 

「トモヨちゃんを守る会」とかいう組織が近頃結成された様だが、果たしてその必要はあるのか・・・・。

 

「ふん・・・・・」

 

ふと店内を見渡すと、皆一様に顔が引きつっている。

 

「あはははは・・・・・・」

 

周りの様子を見て、乾いた笑い声を上げた。

 

こうした光景は日常茶飯事である。

 

 

 

「トモヨちゃん・・・・またっすか?」

 

自分に声を掛けられるのももう慣れた。

 

「だって・・・・・しつこかったんだもの・・・・・」

 

振り返りながら、後ろの人物に向かって言う。

 

「あの人・・・・10メートルは軽く吹っ飛んでたような・・・・・」

 

「きっと気のせいよ」

 

「・・・・・・」

 

過去の自分が何かを諦めたような顔になって押し黙った。

 

「ほら、ぼさっとしてんな二人とも!」

 

才蔵さんの声が烈火の如く響き渡る。

 

『はい!』

 

息のあった返事をする二人。

 

同一人物なのだから当たり前だが・・・・・・

 

 

 

ようやく店じまいの時間がやって来る。

 

「お疲れさま」

 

「あっ、お疲れさまっす。・・・・・・・にしてもトモヨちゃん体力あるな〜何かの格闘技でもやってたの?」

 

「そう?昔・・・・にね」

 

ほんの少しの変化ではあるが、目の前の少女が暗い表情になったことにアキトは気付いた。

 

「あ・・・・ゴメン、聞いちゃまずい事だった?」

 

「ううん・・・・・いいの」

 

二人の間に気まずい空気が流れる。

 

その時、外から何かの物音が聞こえたような気がした。

 

「・・・・・何だろ?」

 

外に出て、物音の正体を確かめようとする。

 

と__

 

「!!」

 

眼前にいたのはあまりにも巨大な昆虫だった。

 

木星蜥蜴・・・・・・その単語が頭に浮かぶ。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

思わず悲鳴を上げてしまった。

 

 

 

「・・・・・っ!!」

 

悲鳴を聞いてすぐに駆け出すと、そこには過去の自分と・・・・・・バッタがいた。

 

(素手で勝てるかな・・・・・・・?)

 

自分は今、銃すら所持していない。

 

下手をすると丸腰で戦わなければならない。

 

(何か武器になる物は・・・・・・)

 

目の前にあった鉄パイプに眼が止まる。

 

(これを使うか・・・・・・・)

 

瞬時に鉄パイプを持ち、バッタ目掛けて走り出す。

 

「逃げて!早く!」

 

声を掛けるが、過去の自分は動かない。

 

いや、動けないのだ。

 

不意に、この頃の自分は木連の無人兵器・・・・・バッタやジョロ等にトラウマを持っていた事が頭をよぎった。

 

「くっ!」

 

バッタ目掛け鉄パイプを振り下ろす。

 

だが、流石にそれだけでは壊れない。

 

なるべく早く倒さないと被害が出てしまう。

 

一撃必殺・・・・・・それしかない・・・・

 

 

 

アキトは自分の不甲斐なさに苛立っていた。

 

(トモヨちゃんは必死でバッタと戦っている・・・・・なのに俺は・・・・・・)

 

だが、動こうにも身体が動いてくれない。

 

恐怖が頭の中を支配していた。

 

(怖い・・・・・けど・・・・・)

 

守らなきゃ。

 

(あの時と同じ思いは・・・・もう御免だ!)

 

そう思うと無意識のうちに身体が動いていた。

 

 

 

「うわああああああっ!」

 

「!?」

 

突然、過去の自分がバッタに向かって突進していった。

 

無論、素手でかなうはずがない。

 

あっさりとバッタに弾き飛ばされる。

 

だが、バッタの注意が過去の自分に向けられた事により隙が出来た。

 

その隙を逃す理由はない。

 

鉄パイプを比較的装甲の薄そうな所に突き刺す。

 

ガタン

 

バッタの動きが止まった。

 

辺りは先程までの騒ぎが嘘のように静まりかえっていた。

 

 

「ハアハアハアハア・・・・・・」

 

「有り難う・・・・・・お陰で助かったわ」

 

「いえ・・・・・・トモヨちゃんこそ大丈夫だった?」

 

そう言って過去の自分が優しげな笑みを浮かべた。

 

「ええ・・・・・・私の方は・・・・」

 

「・・・・・・良かった・・・・・」

 

そう呟いて倒れ込んだ過去の自分を見て、思わず笑みがこぼれた。

 

「トモヨちゃんを助けようとバッタに向かっていったとき・・・・・・・怖くなかった・・・・・・何でだろう?」

 

「え?・・・・・」

 

「でも、結局俺は助けようとしたけど助けられたね・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「いつもそうなんだ・・・・・・・助けようとしても、目の前の人を救う事が出来ない・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「火星でね・・・・・小さな・・・・・・女の子と出会ったんだ・・・・・・でも・・・・・俺は・・・・その子を・・・・・守れなかった・・・・・・」

 

知っている・・・・・自分も同じ体験をした・・・・・・

 

「あ・・・・・御免。こんな話しちゃって・・・・・」

 

「いい・・・・・・私もその気持ち・・・・・・分かるから・・・・・・」

 

そう、痛いほどよく分かる・・・・・

 

いくらか落ち着いた所で今回の事件について考えてみる。

 

こんなことは過去には無かった。

 

何故このような事が起きたのか・・・・・・・

 

(この世界は完全に私の過去の世界という訳ではないの・・・・・・?)

 

いくら考えてもその疑問を解決する事は出来なかった。

 

 

 

店に戻ると、才蔵さんが私たちを捜していた。

 

「お前ら・・・・・無事だったか?」

 

「はい・・・・・・何とか・・・・」

 

「そうか・・・・・あんまり心配かけさせんじゃねえぞ・・・・」

 

そう言いながらも才蔵さんはどこかほっとした様子だった。

 

 

(とにかく・・・・・・自分の知っている歴史とどの様に違うのかしっかり見極めないと・・・・・・)

 

そう思い立って、色々調べてみたが、前の歴史との違いを見つけることが出来なかった。

 

(でも・・・・・必ずしも私の知っている通りに歴史が進むとは限らない・・・・)

 

(早いうちに、アカツキにコンタクトをとる必要がある・・・・・)

 

 

 

「それで、ボソンジャンプに関する重大な話って何だい?」

 

アカツキは眼前の少女を値踏みするような眼で見ながら、慎重に言葉を選びだす。

 

ハッキリ言ってアカツキの記憶の中でも一、二を争う美女だった。

 

(可愛い・・・・・)

 

最初に見たとき思わずそう思って思わず見とれてしまったほどだ。

 

「・・・・・・単刀直入に言います。私は、生体ボソンジャンプが可能です・・・・」

 

流石に内心少し動揺したが、少なくとも表面上は平静を保つ。

 

「何処で・・・・・ボソンジャンプの事について知ったんだい?」

 

「・・・・あまり詳しくは話せませんが・・・・・・私はCCがあればジャンプが可能です・・・・・・」

 

「・・・・・分かった。エリナ君、この子にCCを」

 

アカツキは自分の秘書に向かって言指示した。

 

訝りながらも、エリナがCCを少女に渡す。

 

「・・・・・・ジャンプ・・・・・」

 

そう少女が呟いた瞬間、目の前にいる少女が輝き、消え失せた。

 

「!!」

 

驚いて周りを見てみても、確かにいない。

 

そしてやや離れた所から少女が現れた。

 

「そんな・・・・・生体ジャンプ・・・・・」

 

今まで半信半疑だったエリナも声が出ないようだ。

 

「いや〜素晴らしいね!うん。君のような人材は是非我が社に欲しいなあ」

 

拍手をしながらアカツキが言い放つ。

 

「・・・・・・私がネルガルの実験に協力するにあたって条件があります・・・・・・」

 

「僕とのデートならいつでもつき合うけど?」

 

アカツキの発言に少女が少しむっとしたような表情になる。

 

「条件はまず第一に私をナデシコに乗せる事です」

 

「ナデシコの事まで知っているなんてねえ・・・・・・・・・君、何者だい?」

 

「それはまだ言えません」

 

「冷たいなあ〜」

 

おどけたように言うアカツキだが・・・・・・・眼は鋭さを保っている。

 

「次の条件は・・・・・・・・・」

 

 

 

(とにかく、今の所は上手く進んでいるようね・・・・・・・)

 

アカツキとの交渉が意外にスムーズにいったことに安堵しつつ・・・・・・・

 

ふと、カレンダーを見て、気付く。

 

(もうすぐナデシコ出航の日・・・・・・・)

 

 

 

__そして、その時が来た・・・・・・・

 

 

 

「今までお世話になりました」

 

「おう、元気でな!」

 

二人の姿が遠く離れて見えなくなっていく

 

(この方が絶対にいい・・・・・・ナデシコに行かなければユリカを不幸にさせることもない・・・・・・)

 

未来のような惨劇は絶対に避けたい・・・・・・・

 

 

「アキト・・・・・お前クビだ」

 

「え?」

 

突然、声を掛けられて、アキトが驚く。

 

「さっさと追い掛けに行けよ・・・・・・・本当は一緒に行ってやりたかったんだろう?折角訪ねてきた親戚なんだからな」

 

「でも・・・・・店の方が・・・・」

 

「馬鹿野郎!お前に心配されるほど俺は落ちぶれちゃいねえ!!おら、同じ事何回も言わすな!」

 

「はっ・・・・・はい!」

 

 

猛スピードで隣を通りすぎる車。

 

トランクが開き、中からスーツケースが飛び出てくる。

 

それはある意味懐かしい光景でもあった。

 

(ここから・・・・・・始まったんだ・・・・・・)

 

何となくそう思いながらもスーツケースをいとも簡単に避ける。

 

昔は思い切りぶつかって痛い思いをしたが、今は・・・・・・違う。

 

自分は未来を知っている。

 

これから起こることも全て・・・・・・

 

「済みません!済みません!!あの・・・・・どこか痛いところとかありませんか?」

 

車から降りてきた女性が申し訳なさそうに謝ってきた。

 

自分はこの女性・・・・・ミスマル・ユリカを知っている。

 

かつて愛し・・・・・将来を誓い合った人。

 

「いえ・・・・・別に・・・」

 

だが・・・・・今は見るのも辛い。

 

かつての悲劇が走馬燈の様に頭に浮かぶからだ。

 

「くっ・・・・・う・・・」

 

ジュンが車のトランクに必死でスーツケースを収めようとしたが、入りきらない。

 

「ユリカ・・・・今更だけど荷物減らした方が・・・・・・」

 

「駄目よ!全部ユリカが三日かけて選んだお気に入りグッズばかりなんだもん!」

 

困り果てた表情をするジュン。

 

(この頃から苦労・・・・・してるわね)

 

不憫に思い少し同情してしまった。

 

「あの・・・・・手伝いましょうか?」

 

これ以上二人を遅らせないようにと、助けを申し出た。

 

 

「本当に済みません、手伝ってもらって助かりました」

 

「いえ・・・・・急いでる様でしたし・・・・」

 

「・・・・あの・・・・・」

 

「え・・・・・・?」

 

「あの・・・・・何処かでお会いしませんでした?」

 

かつても言われたその一言に、かなりの衝撃を受けた。

 

「私は覚えが無いですが・・・・・・人違いでは?」

 

震えそうになる声を必死で押さえながら自然に振る舞う。

 

「そうですか・・・・・」

 

(まさか・・・・・気付いたの?いえ・・・・・でも、昔から妙に鋭かったし・・・・・)

 

「それでは、ご協力感謝します!」

 

ユリカが車の中に入って、去っていく。

 

ふと気付くと下に写真が落ちていた。

 

「また・・・・・・落としたのね」

 

その写真には小さな男の子と女の子が写っていた。

 

 

 

「というわけで、入り口の方で騒いでいた不審人物を拘束しました」

 

「・・・・・ほう、パイロットですか」

 

プロスの言葉に、アキトは思わず手の甲にあるナノマシン処理の証を隠した。

 

「違う・・・・・俺はコックだ!トモヨちゃんは何処にいるんですか?!」

 

「と、この様に先程から訳の分からないことを・・・・・」

 

「ふむ・・・・」

 

「痛てっ」

 

遺伝子データを見るプロスが思わず驚いた。

 

「全滅したユートピアコロニーからどうやってこの地球に・・・・・・?」

 

「よく分からない・・・・・・あの時のことは・・・・・気が付いたら地球に・・・・・」

 

「ふむ・・・・・・あなたも大変ですなあ・・・・・ところで・・・・・あなたは先程トモヨさんの名前を言っていた様ですが・・・・

トモヨさんは現在我が社のあるプロジェクトに参加されますのでそう簡単にお会いする事は出来ません・・・・・

しかしネルガルの社員であればその限りではありません・・・・・・・コックさん・・・・でしたね?

どうでしょう、このナデシコのコックさんになってみてはいかがでしょうか?」

 

「ナデシコ・・・・・・?」

 

「そう・・・・・・ナデシコです!」

 

 

「皆さ〜ん。私がこの船の艦長でぇ〜す!ぶい!!」

 

突然ブリッジに響き渡った明るく脳天気な声にブリッジ内の時間が止まった。

 

後ろの方でジュンが恥ずかしそうな表情をしている。

 

・・・・・と、そこに一人の少女が現れた。

 

「あ、あなたは・・・・」

 

「これ、落としたでしょう?」

 

そう言ってユリカに写真を渡す。

 

「これを届けるためにわざわざ?」

 

「ええ・・・・まあ・・・・別の用事もありましたし」

 

「別の用事?」

 

「私はトモヨと言います」

 

「君が・・・・会長の言っていた」

 

その少女の名前を知っていたのかゴートが驚きの声をあげた。

 

 

「・・・・・ここにもいない」

 

先程よりあちこち捜し回っているが、今だ成果は無かった。

 

「はあ〜」

 

溜息をつきながら、視線をなんとなしに空に向ける。

 

と__

 

大きな物音と共にロボットが倒れた。

 

中からそのパイロットらしき人物が出てきた。

 

どうやら落ちた衝撃で怪我をしたらしい。

 

「お〜い、そこの少年!」

 

「え?」

 

「あのロボットの中には俺の大切な宝物が入っているんだ!取ってきてくれ!」

 

そう言って男は何処かに運ばれていった。

 

 

 

「ゲキガンガーか・・・・・懐かしいな」

 

コクピットの人形に手を伸ばす。

 

__その時。

 

ドガァァァァン!

 

「うわっ!」

 

突然の爆発音とそれに伴う衝撃で、コクピットの中に転がり込む形になってしまった。

 

「・・・・・何だってんだ・・・・・・敵襲?・・・・・来るのか・・・・・」

 

 

(・・・・少し遅れをとったわね)

 

格納庫に入ると、既にエステバリスが倒れていた。

 

(もう木連軍の攻撃が始まっている・・・・・・)

 

多少の時間のロスはあれどもやることは決まっていた。

 

(過去と同じくナデシコを守る・・・・・・って動いてる?)

 

ガイが負傷し、誰も乗っていない筈だが確かに動いていた。

 

(嘘・・・・一体誰が・・・・・・まさか!)

 

そう思ううちに、エステバリスが上に上がっていく。

 

戦場へと続くエレベーターに乗って・・・・・・・・

 

 

 

「誰だ君は?パイロットか?所属と名前を言いたまえ」

 

アキトは突如目の前に現れたウィンドウから聞こえてきた声に問いつめられて、答えた。

 

「テンカワ・アキト。コックです」

 

「何でコックが俺のロボットにぃ!」

 

自分のロボットを奪われた、と憤りを感じるガイ。

 

その怒りは収まりそうに無い。

 

プロスにくってかかり、文句をつける。

 

「彼は火星出身で、先程コックで採用しました」

 

「だから、何でコックがぁ!」

 

「・・・・そう言われましてもねえ」

 

ガイを宥めつつ、困り果てるプロス。

 

「テンカワ・・・・・・テンカワ・アキト・・・・・アキト・・・・う〜ん」

 

「どうしたのユリカ?」

 

「・・・・え〜と、何処かで聞き覚えがあるような気がするんだけど・・・・・・」

 

そうこうしつつもエレベーターはどんどん上に登っていく。

 

「とにかく、テンカワさん、囮になって欲しいんです!」

 

「へ?」

 

「ナデシコと皆の命はあなたに預けます。必ず無事で帰ってきて下さいね」

 

「え?、ちょっ・・・・ちょっと」

 

「エレベーター停止。地上に出ます」

 

「頑張って下さいね♪」

 

「後で必ずゲキガンガー返せよ!」

 

ガタン

 

エレベーターが地上に到着した。

 

「作戦は今から10分間。とにかく敵を引きつけろ。後から他のパイロットも行く」

 

作戦__開始

 

 

「うおおおお!」

 

大量の無人兵器相手にアキトはかなり善戦していた。

 

素人、ということも考慮すれば尚更だ。

 

「!?」

 

(どうしたんだ?急に動きが鈍くなったぞ・・・・・)

 

先程の空中のアクロバィックな動きで、少々ガタがきてしまった様だ。

 

その隙に無人兵器に囲まれる。

 

「くそっ・・・・・俺は・・・・また・・・」

 

過去の忌まわしい記憶がフラッシュバックしてくる。

 

絶望が絡みついてくる。

 

(もう、駄目か・・・・・)

 

バッタが何体か何の前触れも無く爆発した。

 

「えっ・・・・・?」

 

「大丈夫?」

 

駆け付けたのは漆黒・・・・・・何者にも勝る純粋な黒。

 

その姿だけで見る者を震え上がらせる威圧感を醸し出していた。

 

だが・・・・・・アキトは別段怖いとは思わなかった。

 

その機体に乗っているのは・・・・・・

 

 

「大丈夫?」

 

その問いかけに2,3秒遅れて返事が来た。

 

「ええ・・・・・何とか・・・・・」

 

「海に飛び降りるのよ、早く!」

 

言われるままにピンク色の機体が海の方に向かう。

 

自分もその後に続く。

 

「これは・・・・・・」

 

「ナデシコよ・・・・・」

 

海面から浮上する物をそう評してみせた。

 

 

そして・・・・・グラビティプラスト発射。

 

 

「凄い・・・・」

 

グラビティプラストの威力に感嘆の声を漏らすアキト。

 

「ところで・・・・どうしてここに来たの?」

 

「俺は・・・・君を守りたい。君は・・・・・俺にとって大事な存在なんだって気付いたから・・・」

 

「・・・・・・」

 

トモヨは過去の自分の言葉に沈黙するしかなかった。

 

 

 

 

<次回予告>

 

トモヨを追い掛けてナデシコの乗組員になったアキト。

 

だが、トモヨはアキトとどう接したらよいか分からない。

 

途中でアキトを思い出し、猛烈にアタックを仕掛けるユリカ。

 

ナデシコの戦闘能力に眼をつけた連合軍。

 

何処か過去とは違う展開に、戸惑うトモヨ。

 

そして・・・・世界が違う・・・・

 

次回 第3話 二次三角関係

 

 

 

後書きらしきもの

 

ふう〜疲れた・・・・・・

 

やっと名前が決まりました・・・・・・

 

おっ、完全突発型気紛れ小説(爆)なのに続いた。

 

でも、本当に遅筆です(苦笑)

 

Benさんや他の投稿作家の皆さんと比べると明らかに遅いです(笑)

 

取り敢えず今後の目標(というか夢)としては他の方のオリジナルキャラを出してみたいです(死)

 

枝織(ちなみに私は北ちゃんより枝織派(水爆)))とか、サラとかアリサとかテツヤ(何ぃ!)とかバール少将(おい!)とか・・・・

・・・・・その前に話を進めなきゃ駄目か(爆)

 

さあ、果たして第3話はあるのか?(核爆)

 

・・・・・それはともかく

 

読んで下さって有り難う御座いました(ぺこり)

 

 

<気紛れ人物紹介>

 

テンスイ・トモヨ(テンカワ・アキト)

 

一応、この話の主人公(笑)

 

劇場版終了以降のアキトが過去にボソンジャンプ。

が、ジャンプフィールドの暴走により、女性の身体にリメイク(謎爆)

こんなのアキトじゃないやい・・・・・・と思った人は私だけでは無いはずです(爆)

ちなみに漢字で書くと天水人萌となります(なんか思いっきり無理があるような・・・・・)

アキトとトモヨをラブラブにするのだけは避けたいところです(爆)

名前の由来は某ビデオマニア少女です(核爆)

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

森田正義さんから投稿小説の続編です!!

何か、アキトとトモヨが良い感じ(爆)

まあ、森田さん自身は有り得ないと言ってますが。

・・・トモヨ、お前環境に慣れるの早すぎ!!(苦笑)

普通、男から女に転換されたらもっと戸惑うだろうが(笑)

それとも悟りを開いてるのか、元テンカワアキトよ!!

でも・・・面白いからいいか(笑)

 

では、森田正義さん!! 投稿有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この 森田正義さん の名前をクリックして下さいね!!

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