機動戦艦ナデシコ

 

第3話 二次三角関係

STORY 3 〜the 2nd eternal triangle〜

 

 

 

 

ブリッジに入った途端、怒濤のようなスピードでユリカがアキトに詰め寄って来た。

 

「アキトアキトアキトアキトぉ〜」

 

「うわっ・・・・どうしたんですか?」

 

少し怯えながら、アキトがユリカに尋ねる。

 

「もう、なんでさっき知らんぷりしてたの?あっ、そうか・・・・・相変わらず照れ屋さんなんだね」

 

「ちょ、ちょっとユリカ知り合いなの?」

 

恐る恐る聞いてみるジュン。

 

「うん、アキトは私の王子様なの!」

 

その台詞にジュンの表情が固まった。

 

「お、王子様って・・・・・」

 

かなり狼狽した様子のアキトだが、不意にユリカの持っている写真に気が付く。

 

「その写真は・・・・・・?」

 

「これ?ほら!私とアキトの小さい頃の写真!」

 

それには確かに幼い頃の自分が写っていた。

 

(何で俺が・・・・・確かにこれは俺だ・・・・・待てよ・・・・・ユリカ・・・・・ミスマル・ユリカ!)

 

パッと脳裏に昔の記憶が甦る。

 

「ユリカ・・・・・何でお前がこんな所に・・・・・?」

 

「彼女はこのナデシコの艦長なんです」

 

代わりに答えたのは、プロスだった。

 

「艦長・・・・?こいつが!」

 

驚きで言葉も出ないアキト。

 

「そうなんだよ!私はナデシコの艦長さんなんだぞ、えっへん!」

 

腰に手を当てて、どこか誇らしげに語るユリカ。

 

「でも・・・・アキトが無事で良かった・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

 

 

「それで、俺・・・・どうなるんですか?」

 

「確かに問題行動ですが・・・・・結果的にナデシコを救った訳ですし・・・・・それに、私達は軍人ではありません」

 

「うむ・・・・」

 

トモヨの言葉にゴートが重々しく頷いた。

 

「てめえ!俺のゲキガンガーを返しやがれ!」

 

まだ怒っていたのか、ガイがそうまくし立てた。

 

「・・・・あ、コックピットの中に・・・」

 

「コックピットの中だな?よし!」

 

そう言って怪我した足を引きずりながら、とても怪我人とは思えないほどのスピードで、向こうに行ってしまった。

 

「・・・・・とにかく、暫くの間はパイロットとしても働いてもらうことになる。ヤマダがああではな」

 

性格の事を言っているのかそれとも怪我の事を言っているのか分からないが、ゴートがそう言う。

 

「給料の方は・・・・・これぐらいでどうでしょう?」

 

アキトに値段を提示するプロスを見て、トモヨは言い得ぬ不安を感じていた。

 

 

 

「御免ね・・・・私のせいでこんなことに巻き込んでしまって」

 

「いや、俺が勝手に追ってきた訳だから・・・・・」

 

話をする二人のところに、怒りの業火を背負ったユリカがやって来た。

 

「ちょっと二人とも近づき過ぎ、プンプン!」

 

「なっ、何だよ」

 

その勢いに押されるアキト。

 

「それじゃ、私は・・・・・」

 

かつての出来事もあり、あまりまともにはユリカと顔が合わせられないトモヨはそそくさと離れていってしまった。

 

「あっ・・・・・」

 

「まあ、アキトも男の子ですから、一度や二度の浮気は許してあげます」

 

「何だよそれ・・・・・」

 

多少げんなりするアキト。

 

「ねえ、地球には何時来たの?」

 

「一年前ぐらいかな・・・・・」

 

ふと、アキトの顔つきが厳しいものになった。

 

どうしたの?」

 

「なあ、ユリカ。お前に一つ聞きたいことがあるんだが・・・・・」

 

「何?」

 

「お前の一家が火星を離れた時、俺の両親は殺された・・・・・何か知らないか?」

 

「殺された・・・・?」

 

 

 

そして・・・・・

 

 

 

(もうすぐムネタケ副提督の叛乱が始まる頃ね・・・・・)

 

トモヨはそう思うと、食堂を後にした。

 

 

 

「あれ、トモヨちゃん何処行くんだろ?」

 

自分と同じくコック兼パイロットで、顔見知りという事もあり、アキトは何かとトモヨを気に掛けていた。

 

「こら、テンカワ、料理に集中!」

 

「あ、はい!」

 

 

 

「ぐべぎゃ!」

 

妙な悲鳴を上げつつ男は倒れた。

 

「お、お前は・・・・」

 

男の台詞が途中で止まった。

 

それらを一瞬で倒したのはこの愛くるしい少女だと言えば、誰もが耳を疑っただろう。

 

だが、決して作り話などではない。

 

今現在、起こっている事実なのである。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

この場にいる人間では誰一人としてこの少女・・・・・テンスイ・トモヨに傷一つつけられない。

 

圧倒的・・・・・・と言うほかにないぐらい圧倒的な強さだった。

 

 

 

「流石だな・・・・」

 

後ろからかかって来る声に、トモヨは振り返りもしなかった。

 

「あなたこそ・・・・・大したものです」

 

昔と大差ない強さです・・・・・その台詞をトモヨは喉の奥にしまい込んだ。

 

「・・・・・そこまで強いと謙遜しても嫌みにしか聞こえんな・・・・・

 ハッキリ言って俺では君に勝てないだろう」

 

ゴートは改めて少女を見返した。

 

全く隙が見えてこない。

 

全く呼吸に乱れた様子がない。

 

一つも勝因が見つからない。

 

「君は・・・・何者だ?」

 

「ただの・・・・コックですよ」

 

とてもそうは思えなかったが、取り敢えず頷くことしたゴート。

 

「ところで・・・・何でこの人達は胸に薔薇の花なんか・・・・」

 

倒した男達の共通点は、胸に薔薇の花を一輪さしていることだった。

 

「・・・・・副提督の趣味だろう」

 

「え?」

 

「先程・・・・・艦内に花束を飾ることを提案していたからな」

 

トモヨは最初は冗談を言っているかとも思ったが、ゴートが嘘を言っているようには思えなかった。

 

 

 

「と、言うわけでこの艦を頂くわ。華麗かつ鮮やかにね!」

 

ブリッジに銃を持った数名を引き連れて入ってきたムネタケに、誰もが絶句した。

 

なんと・・・・・全員身体の何処かに花をつけている。

 

ハッキリ言って、恥ずかしいことこの上ない。

 

だが、ムネタケだけは、恥じる様子もなく堂々としていた。

 

「だから嫌だったんだ・・・・・・・こんな仕事・・・・・」

 

「耐えろ・・・・・辛いのはみんな一緒さ・・・・・・・」

 

心なしか涙目になっている者もいるようではあるが・・・・・

 

「ム、ムネタケ・・・・・遂に血迷ったか・・・・・」

 

艦をジャックしたことか・・・・・あるいは花のことか・・・・・・フクベはそう呟いた。

 

「困りましたなあ〜連合軍との話はとうの昔についている筈ですが・・・・・」

 

「軍としては、木星蜥蜴と確実に渡り合える戦力を無視する訳にはいかないのよ・・・・・

 ああ、なんて悲劇・・・・」

 

完全に自分に酔っているムネタケを見て、言葉も出ないクルー達・・・・・

 

「それでは仕方ありませんねえ・・・・・」

 

プロスがそう言うと、いくつものウィンドウが表示された。

 

「な、何ということ・・・・・・」

 

絶句するムネタケ。

 

そこには、拘束されたムネタケの部下達が写っていた。

 

「軍の人間が密かにナデシコに乗り込んでいたのは・・・・・・

 我が社としても見過ごす訳にはいきませんでしたので、はい」

 

そして、ドアが開き、中からゴートとトモヨが出てきた。

 

「ガッテーム!」

 

ムネタケのよく分からない悲鳴が木霊した・・・・・・

 

こうして・・・・・叛乱は失敗した。

 

 

 

「こちらは、宇宙連合第三艦隊提督、ミスマルである!」

 

カイゼル髭の、厳めしい顔つきをした男がどアップで写る。

 

「お父様・・・・・」

 

『え?』

 

ユリカの呟いた言葉に、驚きの声があがる。

 

「おお〜ユリカ〜元気だったかい?」

 

視界にユリカが入った途端に男の顔が緩んだ。

 

「もう、お父様ったら、この間、会ったばかりじゃないですか」

 

「おお、そうだったか?」

 

親子の会話に、終始和やかな雰囲気に包まれるブリッジ。

 

「それで、ミスマル提督・・・・・本日はどの様な御用で?」

 

その雰囲気に終止符を打ったのは、プロスの一言だった。

 

「うむ・・・・即刻、ナデシコを停船させるよう、命令を受けてきたのだ」

 

「ですが・・・・ナデシコはネルガルが私的に運用する・・・・・と交渉は成立している筈です」

 

「・・・・・叛乱は失敗したようだな」

 

「はい・・・・民間企業をなめてもらっては困ります」

 

人の良い笑みを浮かべるプロス。

 

「それでは交渉に参りましょうか」

 

 

 

(どうにか、一段落ついたわね・・・・これで、少なくともガイが撃たれる危険性は無い・・・)

 

気絶したムネタケ及びその部下達を向こうに引き渡して、トモヨは一息ついた。

 

もっとも、以前とは性格がかなり違う分、ガイを撃つかどうかは分からないが。

 

(まだチューリップが活動するまで時間がある・・・・・・)

 

そう思い、厨房に戻ってきた。

 

前の世界では、艦が占拠されていた為に、皆が集まっていたせいもあって、妙に静かに感じる。

 

「あれっ、ルリちゃん?」

 

そこに、瑠璃色の髪をした11歳ぐらいの少女を発見して、トモヨは多少驚いた。

 

「・・・・テンスイさん、こんにちは」

 

事務的な口調で、挨拶するルリ。

 

感情の起伏があまり感じられない。

 

(この頃はまだあまりナデシコに溶け込んでないわね・・・・・・そうだ!)

 

不意に、トモヨはあることを思いつく。

 

「ねえ、ルリちゃん、お腹空いてない?」

 

「・・・え?」

 

「私の料理の味見をしてくれない?」

 

 

 

トモヨの思いつきは、料理を作ってルリとコミュニケーションを図ろうというものだった。

 

(流石に安直だとは思うけど・・・・・私にはこれしか思いつかないし・・・・・)

 

早速、厨房を借りて、調理を始める。

 

(さあ、頑張って作らなきゃね)

 

何にせよ大切な人の為に料理を作ることは、トモヨにとって、とても喜ばしいことだった。

 

 

 

「お待ちどうさま」

 

ルリの前に、丼が置かれた。

 

香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。

 

「食べてみて」

 

底抜けの笑顔で勧めるトモヨ。

 

その笑顔に押されて、一口含んでみるルリ。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・どう?」

 

「・・・・・・・美味しい・・・です」

 

「そう!良かった」

 

本当に嬉しそうな表情をするトモヨに、ルリは不思議と暖かい気持ちになった。

 

「また、お腹が空いたら言ってね」

 

「・・・・・はい」

 

消え入りそうな声でルリは返答した。

 

 

 

そして、チューリップが活動を開始した。

 

 

 

(今回はカタパルトが使えるから、マニュアル発進しなくて済むわね・・・・・・・)

 

流石に、あれをまたするのは少々気が重い。

 

「これから、艦長が戻ってくるまで、エステバリスでチューリップを引き付けます」

 

黒いエステバリスがカタパルトから鮮やかに飛び立つ。

 

「・・・・・・流石にエステ単体で落とすのは難しいわね・・・・・」

 

今トモヨが乗っているのは、アカツキとの交渉で手に入れたカスタム機である。

 

普通のエステを凌駕するスペックではあるが、かつての愛機、ブラックサレナ程の出力ではない。

 

チューリップから繰り出される触手を巧みに回避しつつ、トモヨは一本一本確実に切断していく。

 

その動きは傍目から見ても、隙の無い動作であった。

 

 

 

「おお、ディストーションフィールドによる高速度攻撃ですなあ」

 

「あらまあ、ヒョイヒョイとよく避けるわね〜」

 

説明するプロスも操舵士のミナトも感心した様子だった。

 

「ナデシコ、全速全身します!」

 

ユリカの指示に、ナデシコの船体がチューリップに向かって進んで行った。

 

 

 

だんだんチューリップに吸い込まれていくナデシコ。

 

それは、かつて見た光景だった。

 

内部からグラビティブラストを発射し、チューリップの影も形も消え失せる。

 

そして・・・・・

 

跡形も無く消え失せてしまった。

 

・・・・・・ナデシコごと。

 

(・・・・・・ナデシコごと?)

 

流石にトモヨは我が目を疑った。

 

改めてかつてナデシコの吸い込まれた辺りを見てみるが、やはり何もない。

 

いや、良く目を凝らさないと分からないが、ぼんやりと穴のようなものが見えるのを

トモヨは身逃さなかった。

 

(まさか・・・・・チューリップを通ってボソンジャンプしたというの?)

 

そうこうしている内にも穴はだんだん消え失せていく。

 

考えている時間は無い。

 

(ああもう!・・・・行くしかないわね)

 

覚悟を決めて、トモヨはナデシコの消えた方向にエステを向けた。

 

 

 

 

 

<次回予告>

 

チューリップと共に消えたナデシコ。

 

ナデシコを追いかけ、ボソンジャンプするトモヨ。

 

果たしてナデシコのジャンプ先は一体・・・・・・

 

次回 第4話 門の先に

 

 

 

 

 

後書きらしきもの(爆)

 

・・・・・・なんかやたら前話との開きがありますねえ(苦笑)

ここしばらくお休みモード(爆)だったものですから。

というか、今でも結構忙しかったりします(爆)

さて・・・・こんな調子で続けられるんでしょうか?

って、そんなこと言ってどうする自分!

「命の鐘の森田正義」の名が泣くぞ!

・・・・・・なんか毎回毎回瀬戸際ですね(苦笑)

4話はあるのでしょうか?(聞いてどうする自分)

そんなこんなで・・・・・

ここまで見て下さって、有難う御座いました(ぺこり)

 

 

 

 

 

<気紛れ人物紹介>

 

ムネタケ・サダアキ

 

何故かオカマ口調の、きのこヘアー(爆)の軍人。

前回の世界で、ガイに銃口を向けて、殺害してしまった人物。

この世界では、花と美を愛するイカレた人物(核爆)である。

立派過ぎる父親がおり、コンプレックスとなっていたが、ある日花を愛することに目覚め、

コンプレックスを払拭。

 

趣味は生け花(爆)、ガーデニング(水爆)

 

・・・・・・無茶苦茶な設定ですね(汗)

 

 

 

管理人の感想

 

 

森田正義さんから投稿小説の続編です!!

むう、アキトとトモヨを切り離しましたか(笑)

その代わりに、ルリルリをターゲッティング(爆)

そして、いきなりナデシコは失踪!!(核爆)

 

・・・何処に行ったんでしょうかね?

 

この展開は思いっきり予想外でしたよ。

さてさて、次の話はどうなるのでしょうか?

 

では、森田正義さん!! 投稿有難うございました!!

 

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