LOST MIND GET AGAIN
第十二話『ナデシコ……月へ』


AKITO PART

「と、言うわけでネルガルの月ドックに止まってほしいんだよねぇ」
画面の男―――アカツキ=ナガレはそう言いながら彼独特の笑みを浮かべる。
今、俺達は今地球軌道上にいた。
何故か?それは、魔龍の件が有った為である。
そのため、かなりナデシコクル−が本来の目的を忘れていたのだ。
……あの、プロスさんでさえ黙っていたのだ、今回のことは皆かなりショックだったのかもしれない。
しかし、そうこうもしていられず地球前で皆立ち止まっていた。
何故か?魔龍との約束を皆思い出しているんだろう。
『絶対、皆で戻ろうな!!』
その言葉を皆覚えているんだろう……
だから、あえて皆地球には戻れない……いや、戻れなかったのである。
そして、そこにネルガル会長からの直々の命令……と、アカツキは言っていた。
最も、アカツキの正体を知っているものからすれば白々しいにも程があるのだが……
アカツキ……お前何を考えている?
「そこで合流予定のパイロットにあってほしいんだよね」
「合流予定のパイロットォ?誰だよ、それは?」
リョ−コちゃんがぶっきらぼうに言う。
それでも、アカツキは苦笑しながら言った。
「さぁ?誰だろうね、それじゃあ切るよ」

 

「君の言う通りだったよ、まさか、未来からわざわざ来るとはねぇ?」
「これも、罪滅ぼし、かな?あの二人には随分と悪いことをしたからねぇ」
男……二人のアカツキ=ナガレは苦笑しながらそう言うのだった。

 

そして、そんな会話があったのは約30分前……俺達はナデシコ食堂に来ていた。
勿論来たメンバ−は決まっている。
ユリカ、ルリちゃん、リョ−コちゃんにヒカルちゃん、メグミちゃんに………なぜか、黒装束を着たイズミさん(汗)
て、言うか女ばかりやん!!
と、言う個人的な突っ込みはおいとくとして。
「ねぇ、アキトぉ、どうするぅ?」
と、突然ユリカが聞いてくる。
俺は苦笑しながらその問いを聞き返した。
「何がどうするんだよ?ユリカ」
少しぶっきらぼうな声だったがそれに慣れているのか平然とユリカは甘えた声で俺に返してきた。
「もうっ、分かってるくせにぃ。月に着いたらだよ、ゆっくりと休む時間が有るらしいし遊びに行きましょうよ、ルリちゃん(18)とルリちゃん(11)も誘ってさ」
……ふと、一瞬魔龍の顔が浮かぶ。
「でも、魔龍が大変な時に……不謹慎じゃないか?」
俺はユリカに問うように聞いた。
うっ……と、引くユリカ。
「大丈夫ですよ、行ってきても構いません」
そして唐突にその言葉に答えが返ってきた。
後ろを振り向くと金髪金色の瞳の美しい女性……フィセアさんがいた。
「しかし……」
俺は、フィセアさんの言葉を遮るようにいう。
だけど、フィセアさんはあっさりと言い切った。
「いいですよ、逆に魔龍様もそれを望むと思いますよ……だって、あの人が一番テンカワ家の……アキトさん、ユリカさん、ルリさん、ラピスさんの幸せを願っているんですから……」
優しい表情を浮かべて彼女はそう言った。

 

さて、そう言うわけで俺達は今月にいた。
今回の目的は買い物……である。
しかし、個人的に言わせてもらえば買うものなんて何もないのだが……
女性陣は違ったらしい、すでに両手に紙袋が一杯(汗)
もう一つおまけで言ってしまえば、ユリカとルリちゃんの荷物は俺が持っている。
すでに両手一杯だったりする(汗)
いと哀れ(;;)(自分で言うな!!)
ま、それはともかく……月面基地か……
ちょっとだけ遠くを見ながら俺は思った……
あの時、守れなかった少女のことを……だが、そのための要因(白鳥九十九、月臣源一郎)は木連側にすでにいない。
九十九に至ってはすでにナデシコに乗艦している。
ちなみにその九十九だが、ミナトさんと一緒に俺達とは別行動で買い物に出ていたりするのだった。
……日本語変……
ま、まぁ、それはともかく!!今回は気楽にやってOKて言うわけでショッピングにきていたりするわけだ。
「ねぇ、アキトぉ!あれ見てみよう!!」
「テンカワさん、私もいいですか?」
「あ、ああ……(泣)」
俺は心の中でこれ以上荷物が増えるのか……と、泣きながら思ったりしているのだが敢えて口には出さなかった。
ナデシコでの魔龍のあれを繰り返したくないしね(汗)
「え〜と……これもいいかなぁ、こっちも……あ、そう言えば近々水着も必要だよね、アキトはどれがいいと思う?」
ユリかが、水着を俺に見せながら言う。
しかし……
「はぁ……」
「テンカワさん、これ似合うと思いますか?魔龍さんに見てもらったとき恥ずかしくないように……」
ポッと頬を染めながら言うルリちゃん、だけど俺は……
「ふう……」
「テンカワさん?」「アキト?」
二人がハテナ顔で言うが俺の耳にははいっていない。
「テンカワさん!!」「アキト!!」
「わっ!?二人ともどうしたの?」
突然の大声に俺は驚きながらも聞き返した。
ユリカは頬を膨らませながら……ルリちゃんは、少しだけむっとしたような表情で言った。
「アキト!きちんと私の話しを聞いてよね!!」
「テンカワさん、きちんと選んでもらわなきゃ私が後で恥をかくんですから」
「いや、でもそれって……」
いくらなんでもそれは俺のせいじゃないと言おうと思ったが俺には次の言葉を紡ぐ度胸がなかった。
なぜなら、あの北辰との戦いの時にすら感じなかった恐怖……だが、今はこの二人の少女に対して俺は間違えなく恐怖を感じているからである。
「テンカワさん……!」「アキトぉ……!」
「は、はい!!」
冷や汗だらだらで俺は答えた。
その時、俺は改めて思った……
魔龍、早く帰ってきてくれと……それも、切実に……
とりあえず、魔龍が帰ってくればこの苦労が半分にはなるからなぁ……
この二人の相手をしていたら神経が磨り減りきってしまいそうだ。(泣)

 

SYUKAN

「ほぉ〜これは実に興味深い」
「いえ、こんなもので驚かれても困りますよ!」
「ふっふっふっ……その通りだ!!このウリバタケ様とニュ−の共同開発したものに比べればこんなものは玩具だぜ!!」
シタンの言葉にかなり怖い笑みをもってニュ−とウリバタケは答えた。
事実、少しだけシタンは後ろに引いている。
……今まで表ざたにしなかったが、ニュ−は機械関係のことになると全く性格が変わる。
むしろ、ウリバタケと同ランクかもしれない……いや、そんなウリバタケが二人に増えた(しかも、経済力と政権ついでに施設を確保している)なんて恐ろしい事考えるのは止めよう。
最も、そうは言ってもニュ−も魔龍同様美青年なのでウリバタケともてる比率が違うが……
そう言えば、ここではニュ−の容姿について公開していなかったので公開しましょう。
ニュ−は深い青色をした髪の色をし髪の毛は随分と長く首の辺りで一つに纏め下にたらしている。
魔龍がカッコイイお兄さんタイプの美形に対して、ニュ−……倒魔ニュ−は知的で多少童顔な美少年タイプの顔をしている。
……お前等、容姿がパ−フェクト過ぎ……
それはともかく、ニュ−達が扱っているのはなんかの機械、どうやらバ−チャルル−ムのシステムらしい。
ちなみに、彼らの前には『EASY』『POTAL』『NORMAL』『HARD』『ADALT』と書かれた五タイプがあった。
……おい待てお前等、『ADULT』……て……(汗)
「ふふふ、安心してください作者さん。この『ADULT』と言う設定は18歳未満……………禁止ではありませんから!?」
ありませんから!?って……(汗)
その前にその沈黙はなんだ、おい。
「嘘付け」「嘘ですね」
しかも、ニュ−の言った言葉をあっさり否定しているし。
「で、ですが、二人の気持ちが一定値以上でないと出ませんから」
「ちなみに、俺達は創った人間だからこの設定を簡単に引き出せる」
……ユリカとアキトのために作ったな?ニュ−?
「ははは、気のせいですよ(滝汗)」




ちなみに、その設定は後日ルリによって無理やりブロッキングされたらしい(笑)
……データをラピスがコピーしていたのはまた別の話し(笑)(翌日、ルリが全力を持って破壊した、おかげでラピスがぶー垂れたのも別の話し)

 

AKITO

「ただいま戻りました〜〜!!」
「テンカワ=アキト、ナデシコに戻りました」
「………」
上から、ユリカ、俺、ルリ(11歳)である。
先程買った荷物を全部自分達の部屋に置いた後、俺達は戻ってきた。
ちなみに、買ったものを言うと、服、アクセサリ、化粧道具、鍋、鏡……等々。それぞれ、店は三軒ぐらい回っている。
……魔龍、お前は一体これからどういう目にあうようになるんだろうな……?
ちょっぴり哀愁に浸ってみたりする。
……ただ、問題があった。
魔龍は今現在ナデシコ医療室にいる。
お飾りとは言え(皆忘れてないかな?)彼は、副提督である。
しかも、エ−スパイロットといっても過言ではない男が抜けたのだ。
言ってしまえば、ナデシコは戦力が大幅にダウンしたことになる。
このままでは非常にまずいことにはなりかねない。
第一、ニュ−さんから聞いた『デスピア−』とか言う人が来たらどうしようもない。
つまり、ナデシコは今決定的な戦力不足に陥っているのだ。
まぁ……Yユニットを付けているから問題はなくなってきているのだが……それでも、プラズマ・キャノンの使えるガ−ベラには足元にも及ばない。
と、いうよりもの考えて欲しい魔龍の艦は未来のネルガルの最新鋭の艦よりもテクが進んでいるのだ、今のナデシコでは話にもならない。
プラズマとは言うが、あれは精神的な法則でも有るらしいし……ちなみに、現状では精神だけに作用する武器って言う物は存在していない。
ちなみに、『グラビティ・ブラスト』では魔族という敵には勝てないらしい。
どうやら、物理法則から成り立っている存在ではなく、精神的な法則の存在らしい。
つまり、重力波はあくまで『物理法則』に位置するものであって、精神的なものには作用しないらしい。
これによって、対抗手段は必然的に魔龍、ニュー、フィセアさん……そう言えば、フェイさん達も気功等で精神的な作用を及ぼすことができたっけ……
後は、ゲートキーパーズ隊の人々……
とは言え、正直に言えばもう少し戦力がほしいところである。

 

「やぁっぱり、あなたが来たんですね。アカツキ=ナガレさん」
「妙に他人行儀じゃないか、テンカワ君。ブラック・サレナは役立ったかい?」
「「「!!!」」」
意外なそのアカツキの言葉に、俺は眉を潜め、ルリちゃん(17歳)は目を見開き、ユリカは相変わらずニコニコしているが目を心なしか鋭くさせている。
それほど、今の言動は意外だったのだ。
「アカツキ……お前……!」
「おっと、それはとりあえず秘密だよ?ボクだって変えたい事くらいあるからねぇ。悪いけど、あのゲートを使わせてもらったから」
「OVER GERT……まだ開いていたんですか?」
オーバーゲート?
「説明しましょう!」


「説……明?」
どこかの医療室で誰かがそう囁いたのは必然的だろう。


『ぬわぁ!?』
にゅっと、現れたのは意外にもニューさん。
さ、流石魔龍の相棒……まさか、イネスさんとまったく同じことをするとはっ
「オーバーゲート……まさに、時間を行き来するゲートです。論理的にいえば、人間個人のデータを圧縮させて、直接過去にメールを送るみたいなもの。ボソンジャンプとの違いは常人でも使えるし、演算機無しで自動解凍してもらえるってことね?まぁ、ゆういつの欠点は片道切符って事ね」
片道切符!?
じゃあ、ルリちゃんは……ニュー、魔龍、フィセアは!?
「おそらく、私たちのことを考えているんでしょうけど大丈夫です。私達は素で戻れますから」
「時間移動は結構辛いんですけどね」
そう言い苦笑するニューさんとフィセアさん。
そ、そう言えばこの人達を一般人と同じように考えてはいけなかったんだ……(汗)
勿論、それに便乗すればルリちゃんも戻れるだろう。
なるほどなるほど。
「さて、それはともかくとして……私はいったんもとの時代に戻らせてもらいます」
その言葉に、全員が驚愕の表情を見せた。
「ちょっ……」
「だめですよぉ?あんな物があればまた誰かが使うかもしれませんし……最悪の場合、悪用されるかもしれませんしね」
最初は少しふざけた調子で……後半は本気の顔になってニューはこたえた。
不思議と彼がそう言うと妙なくらい説得力がある。
「それでは、行ってきますよ」
そう言ってニューは手を振りかざした、光が彼を包み……次の瞬間には彼の姿はそこにはなかった。
「では」
フィセアさんもそう言いながら光に包まれて、消えた。

 

「い、行っちゃった」
「……さすがあいつの周りの人間……(汗)」
俺は、妙なところで納得しつつため息を吐いた。
そうだった……魔龍の周りの人間を普通の単位で計ってはいけないんだったな……
等と馬鹿げた事を考えつつ同時にもうそろそろ修行の時間だなぁ……とか、考えていたりした。
日々の鍛錬は大事だからな……
「……よし!」
俺は、気合を入れるとブリッジを出ようとする。
だが、その行為はユリカ達によって引き止められた。
「ちょっ!アキト、駄目だよ!」
「??どうしたんだ、ユリカ?」
俺は突然のユリカの制止の言葉に戸惑いながらも後ろを振り返る。
何なんだと思うと……
「午後はユリカと一緒に食堂でお茶する約束でしょ!!ぷ〜んぷ〜ん!」
ズガガガガァァァン!!!
ブリッジの人間全員が思いっきりこける。
「は、はれ……?」
「か、艦長……そうじゃないでしょ!?」
メグミちゃんがユリカにそう言う。
ちなみに、ユリカはあいからわらずぽけぽけとでも良いそうな雰囲気を漂わせている。
俺は、立ち上がりながらユリカに言った。
「ゆ……ユリカ……分かったから……行こう……」
余りの事に疲れてしまっている俺……対するユリカはその言葉を聞きうれうれとした表情で答えた。
「は〜〜〜い!」

 

 

「て、そうじゃないでしょがぁぁぁぁぁぁ!!」
余りの艦長ミスマル=ユリカのボケぶりに遂にメグミ=レイナード嬢がキレた。
叫びながらユリカに顔を突きつけている。
彼女……実は切れるとかなり怖いんだな(怯)
「ほ、ほえ?」
その証拠にユリカが涙目になりながら後退している。
ブリッジ総員が怯えた表情でその二人を見ていた。(汗)
「これから緊急会議でしょ!?艦長!?」
「ふ、ふえ……でも、アキトとお茶……」
「後にしなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」
「は、はひ(怯)」
涙目のユリカが怖がりながらも不承不承に頷く……
この時ブリッジ総員は思った、メグミ=レイナード嬢は絶対に怒らせないよう……もとい、切れさせないようにしよう、と。

 

「そ、それで……肝心の緊急会議のほうですが……」
プロスさんが珍しく顔を引き攣らせながら本題に入ろうとした。
ユリカは今だに……「アキトとのティータイム……アキトとのティータイム……」とぶつぶつ言っている。
……とりあえず、ブリッジメンバーは無視していた、おそらく命が惜しいからだろう(笑)
「それは僕から説明するよ、プロス君」
そう言い前に出る落ち目の女たらし……もとい、アカツキ。
アカツキはにやりと笑いながら一指し指を立てた。
そして、口から出るとてつもない一言……
「ナデシコには新しいエンジン……Yユニットをつけてもらおうと思っているんだよね〜」
『!!!!!!』
俺とユリカとルリちゃんとラピスの眼が見開かれる!!
な……Yユニット……だと……?
「ま、待て!アカツキ……ナデシコ級四番艦…シャクヤクの方はどうなるんだ!?」
「(にやり)……偽造建築さ、どうせもうすぐ月臣君が来るだろう?」
なっ!そのためだけに……
「じゃあ、シャクヤクは……?」
「蛻の殻【もぬけのから】さ。これもぜ〜んぶ、今は眠っている漆黒の騎士の入れ知恵、さ」
苦笑と共にそう言うアカツキ、どうやら彼は今、現在役者として踊っているらしい……
そして、そのシナリオを書いたのは当然……
全ては……予定通りだということか……
俺達はどうやら考えが甘かったようだ……魔龍 銀……とんでもない、策士だ。
「ふふふふ……アキトさん、どうやら私達はまだ甘かったみたいですね」
「ああ……漆黒の騎士……侮れないな」
「目がさめたらお仕置き、ですね。皆さんに伝えましょう」
どうやら、メインブリッジでこれを聞いていた全員が同じ考えだったようだ。
でも……例えどんな事だろうがしばらくはあいつのシナリオの役者として踊らなくてはいけないみたいだ。

 

「こ……これは!!」
「…………クソッ!!」
フィセアが驚愕の声を上げ、ニューがそれに答えるようにいまいましそうに言った。
ここはニューの研究室……つまり、オーバーゲートがある場所。
幸い、オーバーゲートに関する資料諸々はもとからニューが持っていたので無事だが……しかし、オーバーゲート自体は……?
「やってくれたなぁぁ!!火星の後継者ぁぁぁ!!!」
初めてニューが本気でキレた瞬間だった。
だが……後悔後先たたず……すでに、もう、遅かった。
間違えなく……すでにもう何人か送られていると見てもかまわないだろう。
そして……その結果が以前のナデシコ級……何千隻……
ニューは表情を見えないように隠れているように思えた。
「緊急ですね、これは早く魔龍様に目覚めてもらわないと……」
「ああ……早くしないと遺跡が取られてしまうかもしれないからな……」
ニューが顔を上げた時、彼の瞳の中には一つの意思が宿っていた。
そして、フィセアにはニューの言ったその一言が妙に頭の中に残った。
「絶対に後悔させてやる!!火星の後継者めぇ!!」
ナデシコに乗ってから始めてみせた彼の最大級の怒りだった。




科学者として……それを作った者として、自分が作った物が悪用される事は彼にとっては許せないと言う単位ですむ物ではなかった。

 

「ルリちゃん、調子はどうかな?」
「とりあえず問題はないです」
「う〜〜ん!やっぱりナデシコ級艦につけるものだったから問題はないみたいだね♪」
ユリカのおき楽な声に俺は苦笑を漏らしながらも楽しい気分だった。
ナデシコはやっぱりこうでなくちゃ……
だが、忘れていた事が俺にはあった……そう、あの忌まわしい襲撃の事を!!
ドガアァァァァァァアン!!
急に月全体が揺れたような衝撃がナデシコを襲う!!
そして、俺は思い出す……月臣元一朗が今回襲撃してくる事を!!
先程アカツキが言っていたにもかかわらず!!
「アキト君!!」
「九十九さん!?」
右手にIFSをつけた九十九さんが俺の前にコミュニケを開いた!!
どうやら既にエステバリスカスタムM2【エステバリスカスタムマーク2】に乗り込んでいるみたいだ。
それと、彼の格好も木連優人部隊の格好ではなかった、アキトが着ているのようなナデシコの服の青いやつだ。
「出動許可をくれ!!元一朗は私が止める!!」
「そんなっ!!」
ミナトさんが悲痛な声を上げる。
何故彼が行かなくてはならないのか……
そんな疑問が彼女の中に生まれているのだろう。
だが、俺とユリカにはその理由も全て理解できていた。
「……悪いが、そう言うのはユリカに聞いてくれ……」
……おそらく九十九は止めるつもりなのだろう命がけで。自らを撃った……元一朗を……
彼を、今だに親友と信じて……
「……分かりました、出動を……許可します」
彼の意思を汲み取ったのだろう。いつものノリではなく、重い口調と重いノリで口を開いたユリカが出動の許可を出す。
その言葉に、九十九は敬礼した……
「ありがとう……」
そう言って……




九十九が飛び立ったあと俺はすぐにガーベラに連絡をとった。
映ったのはルリちゃん(大)だった。
彼女も既にどうして交信して来たのかを理解しているようだ。
「ルリちゃん……そちらの……」
「言わなくても分かっています、フェイさんお願いしますね」
「ああ……分かったぜ!!」

 

ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
九十九の軽い射撃のあと、元一朗のゲキガンタイプ……いや、ダイマジンはゲキガンパンチを放った
そのゲキガンパンチは迷うことなく九十九のエステバM2に向かう!!
九十九のエステは木連式抜刀術の格好を取った。
「九十九さん!!」
「木連式抜刀術 真牙!!」
ミナトさんが悲鳴をあげるが九十九のエステは腰のブレードを抜くとゲキガンパンチを居合の要領でたたっ切った!!
爆発するゲキガンパンチ……そのパンチをきった瞬間、間違いなく元一朗は動揺していた。
そして……
「そのロボットのパイロット!何者だ!?」
元一朗から九十九へと通信が入る。
そう、彼にはこの技に覚えがあったのだろう。
秘密だが、ルリちゃんに頼んで俺にはエステバリス内で何が起こっているのかを中継してもらっている。
勿論、ミナトさん以外は気付いていない。
「元一朗!無駄な戦いは止めるんだ!!」
九十九さんが叫ぶように言う、その声に驚いたような調子で元一朗が答える!!
「その声は……まさか、九十九なのか!?」
「ああ、そうだ……元一朗無駄な争いは止めるんだ!!」
だが、今の九十九の一言は彼……元一朗にとっては裏切りの一言以外なんでもなかった。
「貴様……地球に寝返ったのか!?」
「違う!!草壁中将のやり方が気に食わないだけだ!!あの人は、ゲキガンガーを……正義を振り回し、私利私欲のために動いているだけだ!!」
九十九にとってはゲキガンガーはもうどうでも良いことの一つになっている……それは、間違えたやり方だと気付いたから……
だから、彼はあえてこう言った……正義を振り回している、と。
「では、地球側が正義だと言うのか!?」
「違う!!正義は振り回す物ではない!!自分の中で作り上げる物なんだ!!それは……漆黒の騎士が俺に教えてくれたんだ!!」
……そう、漆黒の騎士・魔龍 銀は常にこう言っていた……“俺は正義でも悪でもない!!俺は……自分の中の信じる物を守るため……大切な人たちのために戦うだけだ!!”……と。
今の九十九には彼の言葉の重さが分かっているだろう……今のナデシコにあるのは、この論理だった……
だから、俺達は今正義とか悪とかの考えは一切合財捨てている。
なぜなら、俺達の戦う理由は自分達が守りたい者の為に戦う、だからだ。
「九十九さん……」
ミナトさんが感動した面持ちで九十九を見ていた。
彼が向けた言葉の確答者は間違えなくミナトさんなのだから……
だが、今の元一朗がこの程度の言葉でゲキガンガーを捨てるはずが無い。
「クッ……ならば九十九!!その言葉を証明して見せろ!!」
「おうっ!!」
元一朗の一言に九十九は力いっぱい答えた。




「俺は今、猛烈に熱血しているぅ!!」
九十九はそう言いながら両手持ちにした日本刀(九十九機カスタムバージョン専用武器)を木連式抜刀術の構えをしながら持つ。
それに答えるように、ゲキガンタイプが九十九のエステの前に立つ。
一瞬、時が凍りついたかのような錯覚が起こる。
先に動いたのは元一朗だった。
ゲキガンビーム……小型のグラビティ・ブラスト九十九の隣を通り過ぎていく。
それを、右ステップでかわし一瞬でゲキガンタイプに近づく!!
「はぁぁぁぁぁ!!木連式抜刀術 虎崩斬・一之太刀!!」
九十九は大きく冗談の構えを取りディストーション・フィールドを大きな掛け声と共に切り裂く!!
ずばぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
流石九十九……見事なまでにディストーション・フィールドを切り裂いた……
そのまま、ディストーション・フィールド発生装置はあまりの過負荷のために壊れてしまった。
九十九は一気にけりをつけようとゲキガンタイプの背部に剣を突きつけるためにすさまじい加速と共にジャンプした!!
だが、流石にこれはたまらなかったのか元一朗は強硬手段に出る。
「跳躍!!」
その言葉と共に、ボソンジャンプする元一朗。
目標を見失った九十九の刃は空を切る。
……しばし、不気味な沈黙が起きる……
ブワァン……
淡い発光と共に九十九の真後ろに唐突にゲキガンタイプが現れた!!
ゲキガンパンチが、九十九のエステに向けられた。
だが、忘れてはいけない、彼は木蓮式柔術免許皆伝の腕前、そんな攻撃は当に見切っていた。
はっきり言ってしまえば、ゲキガンタイプはスピードが無い。
いくら攻撃が強くとも、機動力ではエステの方が圧倒的に上なのだ。
故に、元一朗の攻撃はあっさりとかわされてしまった。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
九十九が吼えた!
そして、かわした勢いのまま相手に向かって行く。
ゲキガンタイプはかわしきれないと分かったのか逆にそこから動かなかった。
そう、すでにボソンジャンプも間に合わないよう位置にいたのだ九十九は。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
そして、元一朗もまた吼えた!!おのれの正義を証明するために!!
九十九は、剣を捨て己のエステの拳を使い元一朗にぶつかったのだ!!
二つの機体の拳が……いや!魂がぶつかった!!
ズガガガガガガガガガガガガッ!!
二つの拳がぶつかり合い、すさまじい波動を起こす!!
そして、打ち勝ったのは……
ボガァンッ!!
九十九のエステの拳が……今、元一朗のダイマジンの腹にぶつかった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ズガァァァァァァァン……
静かにダイマジンが落ちていく……元一朗の悲鳴と共に。
「元一朗!!」
九十九は慌てて元一朗のダイマジンの傍に向かった。
ダイマジンは、爆発した、頭部の脱出ポットを吐き出して。
「九十九……か」
緊急回線をつなげると、元一朗の姿が映った。
元一朗は頭から血を流していた。
「元一朗!しっかりしろっ、まだ、まだ……死ぬなっ元一朗ぉ!!」
九十九が必死になって呼びかける。
だが、元一朗から返ってきた言葉は……
「すまない九十九……すまない、ナナコさん……海にはいけそうも無い…ぜ……」
自らの最後の言葉を飾る元一朗。
「元一朗……!?元一朗ぉーーー!!」
九十九は叫んだ、力の限り。
ブリッジの中にも嗚咽が聞こえる……
ピッ、と……唐突に九十九の機体に緊急回線が開かれた。
映っていたのはルリちゃんだった。
「ちなみに、生命反応は在るので」
ピッ……
それだけを言って、コミュニケを切るルリちゃん。
ブリッジの間に妙な沈黙が起きた。
「(汗)えっと……白鳥九十九!元一朗と共に帰還します!!」




シャランッ!
九十九の後ろからいきなりシャクジョウが首筋に当てられた。
後ろを慌てて見てみると、そこには真っ黒なエステクラスのサイズのマシンが居た。
「そうは行かぬぞ、白鳥九十九よ」
そして、中から声が聞こえてきた。
その男の声を忘れるはずが無い、否、忘れるはずが無い。
そのエステに乗っている男は……あいつに間違えない!!
「北辰ッ!!」
怒りを込めた口調で俺は北辰の名を叫んだ!!
そして、オペレーター席ではラピスがブルブルと震えていた。
「いや……いやぁ……」
自らの体を抱きしめながらラピスは何かにすがるため周りを探す……が、本来守ってくれるべき男がいなかった。
「クッ!……ユリカっ!」
俺は、慌ててユリカの方に振り向く!!
ユリカは渋い顔をしていたが、コクリと頷いた。
そして……思いをこめて彼女は静かに囁くように言った……
「生きて帰ってきてね……アキト」
「大丈夫だ、分かっている!テンカワ=アキト、E=アースで……出るッ!!」

 

「死ね、九十九よ」
そう言いながら、シャクジョウを振るう北辰。
ズガァン!!
そして、九十九のエステはあっさりと……貫かれてしまった。
「いやああああああああああっ!!」
ズガァ……と、静かな音がしエステが崩れ落ちた。
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺は、叫びながらE=アース改め……グランドマスター【G・M】を操作する!!
「チッ!!」
北辰が舌打ちしながら俺の攻撃をかわした。
ドガァァァァァン……!ズズゥン……!
こちらの戦いに集中していて気付かなかったが、よく見てみると空中でも戦いが行われていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
俺の怒りの一撃は更に北辰に猛然と襲い掛かる。
その攻撃を紙一重でかわしきる北辰。
そして、奴は俺にシークレット回線を開いてきた。
「未熟なり……テンカワ=アキトよ」
「なっ!?」
思わぬ言葉に一瞬唖然としてしまう俺……だが、戦場の中では一瞬の油断が命取りになる。
俺が唖然とした一瞬に猛然と攻撃を返し始める北辰!!
「ハッ!ハッ!ハァッ!!」
目にもとまらぬ早業で攻撃を仕掛ける北辰。
ズガッ!ガキィ!ボガァ!
致命傷には至らなかった物の大ダメージを受けてしまった……コクピットまですさまじい衝撃が伝わってくる!!
吹き飛ばされた俺のG・Mは地面を転がった。
「ぐ……ぅ……」
うめき声をあげながら、立ち上がろうと俺はした。
だが、北辰はその隙を逃さないように更にシャクジョウを振るう!!
グゴォン!ブゴォン!ズガァァァァァ!!
腕を砕かれ、足を突き刺され、頭部を破壊された。
今の俺は満身創痍と言っても良いような状態になっていた。
「く……くそぉ……」
うめくように言葉を紡ぐが、この絶望的な状況がどうにかなるわけではない。
「クックックッ……未熟なり、テンカワ=アキト……己の未熟さを呪い……死ぬが良い!!」
カッと、北辰の目が開かれる!!
その手にもつシャクジョウが闇色に輝いた!!
そして……俺は、その死を受け入れざるを得なかった……
瞳を閉じる……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、いつまで経っても俺に来るはずの死の制裁はやってこなかった。
「くっ……白鳥九十九……貴様生きて……!」
ずがぁ……ぁん……
振り上げられたシャクジョウは月面に落ちていた。
その拳を九十九の剣に切り落とされ腕を抱えて後ずさっていた。
「はぁはぁはぁはぁ……」
九十九は体を傷つけながらも瞳には闘志が沸いていた。
その闘志の強さは漆黒の騎士に近いが遠い気迫が見えていた。
「クッ……この場は引いてやろう……しかし、テンカワ=アキトの実力おそるに足らず!!ふはははははははっ!」
そう言い残し、北辰は消えていった……
後に残ったのは……傷ついたエステに乗り込む二人の男とダイマジンに乗る男だった……




あとがき

長かった……これを書き上げるのに何でこんなに時間がかかったんだおろう?
等と自問したら、多方面から殺されそうなので止めておく。
どうも、魔龍 銀です……こんなに遅くなったのには……理由がつけられません。
実は、各方面とまっていて(汗)
でも、一応連載は続けていくのでよろしくお願いしてます。
ではっ!

 

座談会(おまけ)


銀:………………
どこかの部屋で、彼は縛り付けにされていた。(笑)
ルリ:言い残す事はありますか?
銀:いやだぁぁぁぁぁっ!まだ死にたくないィィ!!
ユリカ:大丈夫!死にはしないからね!物理的には(笑)
ルリちゃん:そうですよ、イネスさんの新作のこの全身麻痺麻酔(強力な副作用あり)の効果を試すだけですから。
銀:いぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!どうせ、全身麻痺が副作用で、メインは別なんだろう!?
マリア:あ、気づかれましたか?じゃっ、ルリさん、雪乃さん、ルリちゃん、ユリカさん。
ルリ:魔龍さんを眠らせ……
ユリカ:アキトを傷つけ……
マリア:お二人を満身創痍な状態にした事は……
ルリちゃん:万死に値します!!
雪乃:……………
全員:お仕置き始まり〜〜!!
銀;ぎゃあああああああああああああああああっ!!!!

理緒奈:お〜い、生きておけよ〜。(笑)←!?

 

 

 

代理人のお悔やみ

 

このたびはどうも、おかしい人を亡くしまして。

心よりお悔やみ申し上げます。

魔龍さん・・・・幽霊になっても成仏せずに続きは書いてくれるんですよね?(核爆)