LOST MIND GET AGAIN
第十三話『敗北の記憶……もう一度立ち上がれ騎士と王子よ!!』
THE PRINCE OF DARKNESS編



ズガァァァァン!!
格納庫の一角の地面がすさまじい音を鳴らした。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
俺は、叫んだ力の限り……余りにも圧倒的な敗北だった。
もし、九十九の助けがなければ俺は死んで居ただろう……
俺はまだ……全然駄目だった。
結局は仲間を傷つけさせてしまった……情けない……
ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!
何度もうでを打ち付ける……右腕には既に血が滲みその手から血が溢れんばかりに出ている……
悔しかった……情けなかった……惨めだった……
「お、おいっ……テンカワ……!」
セイヤさんが話しかけてくるが、俺の耳にはその声は聞こえてこなかった……
ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!
何度も、そう、何度も拳を地面に打ちつける……!
「くそぉっ!くそぉっ!くそぉぉぉぉぉぉっ!」
ガァン!ガァン!ガァン!
すでに拳で割った地面の場所には血がこべりついていた……
振り上げるたびに血が辺りに散乱する。
俺は……俺は……北辰に負けてしまった……!
一度は勝ったのに……
何故だっ!?何故だっ!?何故だっ!?
心の中で何度も叫ぶ……その言葉はなんて虚しいんだろう。
「アキトッ!?」
「テンカワさんっ!?」
ユリカとルリちゃんが急いで駆けつけてくるが俺の目には入らなかった……
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺は、拳を振り上げ渾身の力で拳を打ちつけようとした。
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
グッとユリカが体全体で俺の腕を抱き締めた。
俺の腕がそこで制止する……
「駄目だよ……アキト……自分を……虐めちゃ……自分に……負けちゃ……」
ユリカが途切れ途切れ言う言葉……その言葉にはなんという重みがかかっているのだろう……
死海を何度も俺もユリカも彷徨った……いや、死にさえした。
そうだ……俺には……まだ、負けられない理由があるんだ……そうだ、命さえあれば、まだチャンスはあるはずなんだ……
「ユリカ……すまない」
俺は、静かに謝った、先ほどまで取り乱していた自分はいない。
ようやっと、冷静になれた。
そうだ……まだまだ俺は強くなればいい……そう、皆を守れるほど……
けど……俺に出来るのだろうか……?本当に……?

 

 

 

 

MARYU


「う〜〜〜ん、ここはどうやら違うみたいだね」
「……そう」
俺と雪乃は当たりを見回しながらなんだか良く分からない会話を交わした。
なんかよく分からないけど、記憶の森のようなところに俺達は居た。
目的は、雪乃の記憶を見つけること。
それと……ここから出る方法を見つけること。
しかし、なんだか空振りばかりを拾うのだ、何故か……
まぁ……俺の記憶と雪乃の記憶がごっちゃになっている場所だし……しかも、ここら辺一体の場所の説明(ピクッ)もないし。
ちなみに、某所で某撫子医療班担当が説……明?と囁いたのはまた別の話し。
「行くか」
「……ん」
俺の言葉に、雪のは静かに頷くとまた歩き始めた。
記憶を探すために……
ただし、面白いくらい今の俺はナデシコの面々の事を忘れていた(笑)










AKITO


ジュッジュッジュッ!!
俺は、チャーハンをフライパンで返しながら思案していた。
……料理中にこんな事を考えるのも不謹慎だけど……
俺が考えていたはの、北辰との戦いの事だった……やはり、復讐人から元に戻ってしまったのが……敗因なんだろうか……
自分の考えが果てしなく情けない事はわかっていた……けどっ!!
「……何故だ……」
負けた理由は分かっていた……いや、自分の中で整理が付いていた……
俺が負けたのは……
「弱くなったから……!」
そう、なのかもしれない。
ナデシコと言う環境は、復讐人になった俺には余りにも魅力的だった。
……失った時をあまりにも満喫しすぎたのだ、俺は。
だから……故にこそ、俺は甘えすぎてしまったのかもしれない。
それに、今の俺には頼れる者が多すぎる……
「どうしたんだい、テンカワ!腕に鈍りがあるよっ!!そんな不完全品をお客様に出すのかい!?」
「あっ!すいません、ホウメイさん」
そうだ、今はこんな事を考えている暇じゃなかった……料理に集中しなければ。
そう思うが、一向に料理に身が入らなかった……
くそっ!!
「はぁ……テンカワ、今日はもう上がりな。そんな状態でやっても何の成果もないしね」
「す、すいません……ホウメイさん」
俺は火を消して、チャーハンがある鍋を置いた。
……悔しかった、今の俺には……チャーハン一つ作れないのだ。
「このチャーハンは今のお前だよ……それを、よぉ〜く覚えておきな」
そう言い、自分の仕事に戻って行った。
……このチャーハンは、今の……俺?
俺は、まじまじとチャーハンを見てみた。
見た目は全く変哲のないチャーハン匂いだって良いし、見かけも抜群だ。
「……………」
その料理を無言で口に運んでみる……!!!!
「……これは……」
これは、俺の……テンカワ特製チャーハンでは、ない……
ただ、どこにでもある普通のチャーハンだ……
「そうか……俺は、俺はっ!!」
ホウメイさんの言った意味が俺の心にはまるで染み付くように広がって行った。










MARYU


「YOU GET TO BURNING 君らしく誇らしく 笑ってよ♪(汗)」
「……………」
この間が……辛い(汗)
いやね、唐突に歌を何で歌うの?とか、突っ込んでくれればいいんだけどね……雪乃の場合それすらもないからな……(泣)
ぽつぽつと記憶の森の中を歩きながら俺は、余りにも喋らない雪乃に手を焼いていた、つうか、むしろ居心地が悪かった。
記憶の森にはいって数時間、不思議と二人とも疲れていなかった。
ただ……転々と、森の中を歩いていた。
と、言うか見つからないんだよね目的の記憶が……
彼女も、多少は話してくれれば何とかなるんだけどね……なにも言わないからさ。
……愚痴だな、本当に。
「……あれ……」
と、雪乃が唐突に手をあげ何かを指差した。
……!もしかして、あれが雪乃の探していた記憶……?










「あれ……は……」
それは、俺と雪乃だった。
冬の大雪山……その洞窟の中。
俺は、大きな怪我を負っておりそれを雪乃が介抱しているところだった。
雪乃の白い手が俺の傷の一つ一つを治していく……
「あなたは……やっぱり……」
言葉は少ないが雪乃が言おうとしている事をはっきりと分かっていた。
「そう……多分、当たってるよ」
「あっ……」
初めて彼女が嬉しそうに微笑んだ。
「私と……同じ?」
それは、自分と同じ永遠の中に縛られてしまった者か?と、いう意味だった。
そして……その答えは……
「その、通りだよ……雪乃」
性質こそ違えど、確かに俺も永遠を持っているものの一人である。
……そして、俺も、彼女も……永遠を望んでいたわけではなかった……
彼女の場合はおそらく、そのゲートの能力のせいだと思う……そう、彼女の氷雪のゲートの……
そのゲートの力がこもってしまった彼女の心に反響し彼女自身の時をとめてしまったのだ……
そして……俺は……
俺は、百年に一度人生の終わりを必ず向かえ、その次の日には感情が半分以上リセットされて転生される……故に、俺は死ぬことを誰よりも恐れていた。
……無論、転生した時には力と魔力、記憶と魂がそのまま引き継がれるのだ。
これ以上に虚しい事はない……前世の記憶を持っていながら愛した者を愛せなくなるのだから……
「同じ……」
じっと俺を見つめながら雪乃は目を細めて俺を見つめた。
そして……その身体が光に包まれていく。
「っ!!雪乃!?」
「あっ……」
何かを言おうとするが雪乃はこの場から消えてしまった。
……この世界に残されたのは、俺一人になった。










AKITO


今、俺は自分の部屋にいた。
静かに瞳を閉じて心を落ち着かせていた。
……えっ?ガイ?ガイはどうしたかって?
まぁ、プロスさんに部屋の事を頼んだら一発OKが出たんだよ、これが。
おかげで今は、個人部屋に住んでいる。
その個人部屋で、俺は、静かに一人たたずみ心を落ち着かせていた。
まさに、明鏡止水の如く……
ぷしゅーと、言ういい音を立ててドアが開く。勿論俺はドアを閉めていた。
しかも、だ、俺は明鏡止水……て、言うか無心の状態に入っていたためかその事に気付けなかった……
気づいていれば……あんな事にはならなかっただろう。
「アーキート♪あのね、アキトー!御夜食をねアキトのために作ってきたの食べてみて♪」
そして、明鏡止水……もとい、無心の状態の俺のもとに近付きその物体を全く気付いていない俺の口の中に入れる。
「………………」
瞳を閉じたまま静かにたたずむ俺……
ちなみに、口から出たスプーンは何故か分からないけど拉【ひしゃ】げていた(汗)
「どう?アキト……」
俺から帰ってくる反響を楽しみにしながらユリカは俺の顔を覗き込もうとした。
ちなみに俺は……
「………………」
既に意識がなかった……最も暗い闇の中のためユリカには分からないだろうが……俺の顔は白くなっていた……
(あっ、父さん、母さん……久しぶり。えっ?こっちに着ちゃ駄目だって?周りはすごく綺麗なお花畑だけど……一体ここはどこ?)










「ふう……あれが俗に言う臨死体験という奴なんですね……イネスさん(苦笑)」
「そ、そう(汗)」
俺は、冷や汗を掻きながら、なぜかさわやかな笑みを浮かべイネスさんに言葉を返した。
……いやぁ、死んだ両親が必死にこっちに来てはいけない!!って、叫んでるんだもんなぁ〜。
いや、本当に驚いた驚いた。
「それで、調子はどう?」
「死ぬ気分です」
「(汗)とりあえず、艦長の料理による作用を説明しておくわね」
とりあえず、無茶苦茶長くなるのでここで、一通りどのような作用が起こったかを追記しておこう。
まず、幻覚症状、次に発熱、胃痛、胸焼け、コブラと同質だが、コブラすら五分で殺す毒。
……ついでに、脳細胞の死滅と肺、心臓等各種器官の一時停止……
……よく生きてたな俺。(滝汗)
「どうやら、アキト君には脳細胞の死滅は起こらなかったようね。だから、生きてたみたいよ♪」
「……イネスさん、嬉しそうな顔で言わないでください(泣)」
ユリカの作った料理を、ニコニコ見ながらイネスさんは言った。
……ニューさん辺りに見せても同じ反応をするんだろう。
「あら、だってステキなサンプルが手に入ったのよ♪喜ぶしかないじゃない♪」
イネスさん……あんた……
この世界でもマッドだったんだな……なるほど、
作者の中ではすでにイネス=マッドという構図が出来ているらしい(爆)
「と、ともかく!!失礼しましたッ!!」
これ以上いたら、何されるかわからないからな。










さて……俺は、イネスさんのラボ(笑)から逃げ出して、宛もなくナデシコ内を彷徨っていた。
理由なんて得にない……
なにか、なにか……俺の中で何かが足りないと言っていた。
「ふう……あいつの所に行ってみるか」
イメージ……ガーベラ……医療室……ベッドの前……
……ジャンプ……










ブンッ!!
ボソンジャンプでナデシコからガーベラに飛び、魔龍の病室に入った俺はそこに一人の少女がいることに気付いた。
年のころは16・7……長いツインテールの銀髪がたなびく。
金色の瞳にあるのは憂いと悲しみと……怒り。
そして、その更におくにあるのは祈りだった。
「ルリちゃん?」
俺は少女の名前を呼んだ。
そうするとルリちゃんは俺の方に振り返った。
横顔の時には気づかなかったが……ルリちゃんは……泣いていた。
「アキト……さん?」
「どうしたんだい?ルリちゃん……」
「……怒っているんです、皆が苦労している時に一人だけ寝ているなんて……不謹慎です」
ルリちゃんは確かに瞳に怒りを宿して今だに眠っている魔龍に言った。
そして、このときに気づく……魔龍の意図のうちの一つを。
俺たちは知らぬ内に魔龍という存在そのものに甘えていたのだ。
彼がいればなんとかしてくれる、彼がいればなんとでもなる、彼がいれば……皆が幸せになれる。
しかし、違うのだ、それは大きく間違っていたのだ。
そして、それは余りにも愚かだったのだ。
今、たった一つナデシコ内の力のある存在が居なくなっただけで皆が不安になってしまっている。
……そして、俺は自分の実力を出し切れなくなってしまっていた。
それが……北辰への敗北へと繋がった。
「……ルリちゃん……駄目だよ、そんなこと言っちゃ……」
「分かってます!!でもっ!でもっ!!」
そのまま、顔を手で覆い泣き出してしまう……
「んん……」
かすかに……そう、僅かにこのベッドの隣の部屋から声が聞こえた。
そう、この病室に居るもう一人の存在……
「雪乃ちゃん?」
「あっ……」
ルリちゃんも俺の声を聞き隣のベッドを見る。
そこには確かに、北条雪乃がベッドから出てきていた。
「……あなた達は……」










次回、漆黒の騎士編に続く




座談会IN前回のお仕置きの続き(笑)



前回、張り付けにされていた作者は奇跡的に一命を取りとめ、今尚張り付けにされているのだった(笑)

銀:はぁはぁ……ふふふふふ……俺は、
電磁棒スタンガン、毒物を投与されたくらいでは死なないぞ!!!
ルリ(12:以下ルリ):くっ……中々やりますね……
ユリカ:そんなっ!イネスラボ特製の薬が効かないなんてっ!!
瑠璃(17:以下瑠璃):うかつでした……この作者……意外とタフですね。
銀:ふははははははははっ!!なぜなら、今のお仕置きなど、
カインの竜界大破弾断に比べれば物理的に弱いし、悠久メンバーのお仕置きに比べて生ぬるいからだ!!第一、某緑の髪の毛の血を見ただけで気絶する医者の卵に比べれば……今回の毒物なんて……!
マリア:(にやり)実はここにユリカさん、リョーコさん、メグミさんの調理してもらった料理があるんです(にやり)
銀:なっ……!
雪乃:今回はこれを試す……
ルリ:そういえば、そんな隠し玉がありましたね(にやり)
ユリカ:う〜〜〜
瑠璃:投与しましょうか
マリア:はい、それじゃあ……覚悟してくださいね?
銀:いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!死にたくないぃぃぃぃぃ!!



銀:ぎゃああああああああああああああああああああっ!!!




終劇(笑)