逆行者+突破者

 

 

「おおお〜〜〜〜〜!!!」

 

 格納庫に歓声が響く。

 ついに個別の専用機体が到着したのだ。

 

 今はちょうど僕の専用機体をセイヤさんが解説している。

 

「アヤトの機体、パーソナルカラーは紅白。

 実はこの機体だけは他とは違い単式戦闘タイプなんだ。

 アヤトは条件付きとはいえDFSが使えるし、

 アキト程では無いが能力が特出している。

 なので思い切って単独戦闘用に仕上げてみた。

 メイン武器は右手のスケアクロウ(エステ版)!!

 DFSの刃を纏わせる事が出来る為、近距離では抜群の威力を誇る。

 さらにリクエストでちょっとした仕掛けも内蔵されている」

 

 さすがセイヤさん。あの無茶なお願いも聞いてくれたんだ。

 

「しかしあの中に入っているAI、アヤトがプログラミングしたのか?」

 

「ええ、そうですけど。どうかしました?」

 

「いや、AIっていうとオモイカネとかを想像してたから、

 なんか妙に、らしいというかなんというか」

 

 セイヤさんが非常に説明しにくそうにしている。

 

「まあ、僕がプログラミングしましたから、

 妙に変なのは仕方ないと思ってください」

 

「そうか、それもそうだな」

 

 ………そんなにあっさり納得されるのも、なんか寂しいです(泣)

 

 

 

 

 

 そして、事件が起きる。

 

 ムネタケ提督の暴走。

 

 そこに現れた北斗。

 

 逃げようとしない提督を必死に守っていたアキトさん。

 

 そして…………その提督の銃弾が、

 

 アキトさんを貫いた。

 

 その場にいた全ての人の時間が止まる。

 

 その止まった時間の中で、僕は………

 

 

 僕は……………

 

 

 

 

 

 木偶の棒になったアヤトを殺し、

 俺は皆に通信を入れる。

 

「おーい、今から俺が北斗を止めてくる。

 そっちの方は任せたからな」

 

 北斗はアキトを殺したムネタケを殺そうとしている。

 だが、ムネタケを殺させるわけにはいかない。

 死んで償える罪なんてありゃしないんだ。

 

『そんなっ!?一人でなんて無茶だ!!

 それだったら、俺とアリサで……』

 

 リョーコさんから反論が来る……しかし、

 

「俺がいなかったらそれがベストかもな。

 けどどっちにしろ、同じくらい無茶だよ。

 それに、俺の機体は単独戦闘用だ。

 こういうときに働かないでどうする?」

 

 単独戦闘…………その意味は、

 アキトクラスの奴と単独で戦闘できるって意味だ。

 

『……………………』

 

「……リョーコさん達には悪いですが、

 こういうことが俺の役割だと思っている」

 

『……………わかった、まかせるぜ』

 

「ああ、そっちもな」

 

 通信を切る。

 さあ、ここからだ。

 今にもムネタケに切りかかろうとした北斗にレールガンを放つ。

 

 ドゥゥゥンン!!

 

 ……北斗の注意がこっちに向いた。

 

 

『……なぜ止める?』

 

「止める理由があるんでね。

 悪いがそいつは引き取らせてもらう」

 

『ならば俺から力づくで奪って見せろ!』

 

 通信で送られてくる激しいプレッシャー………だが、

 

「初めからそのつもりだ。なんだったら………、

 お前を殺して奪ってやるよ!!」

 

『ふっ、良くぞ言ったっ!!』

 

 突如、北斗のダリアが凄まじいスピードでこっちに迫る!!

 

 バチィィィンン!!!

 

 間一髪、DFSの刃をスケアクロウで受け止めるが、

 俺は力負けして弾かれる。

 

『ほう、DFSと同じフィールドを纏った爪か、

 面白い武器だが………パイロットの力が伴っていないな』

 

 へっ、いってくれるじゃないか。

 なら、切り札を見せてやるよ!!

 ……っと、その前に、

 スリープ状態のままだったAIを起こす。

 

「いよっす、起きたか?」

 

『………肯定』

 

「そうか、寝起きで悪いがいきなり働いてもらうぞ」

 

『………………了解』

 

 俺はあるレバーを倒し、さらに細かい操作をする。

 

「よっし、準備完了。

 セーフティ解除!!解除コード『ヒース』!!」

 

『了解!!』

 

「フルバースト!!」

 

 俺の機体が白い閃光に包まれ、

 光翼を携えて現れた。

 

「………天使と言うには、ちょっと無理があるよな」

 

『…肯定』

 

 まあ、いいか。

 さて、ここからが本番だ!!

 

 

 俺は北斗に向かって突っ込んでいく。

 

『くっ!!』

 

 DFSで迎え撃とうとするが……甘い!!

 切り札その二!!

 

「スケアクロウ、変形!!」

 

『了解!』

 

 スケアクロウの爪先の部分が割れ、

 そこから新たに赤い爪が創り出される。

 

 バチバキィィィン!!!

 

 北斗のDFSの刃と俺の爪が交錯する。

 

『その爪………DFSそのものか!?』

 

「ご名答。この爪、スケアクロウは、

 五指、全ての指がDFSの刃を作る機能を兼ね備えている。

 もっとも、さすがに一人で制御するのは骨だから、

 補佐のAIはいるんだがな」

 

 それがこのAI、機体名と同じ『ヒース』なんだがな。

 

 

 

 

 ガキィィィン!!

 

 バチィィィィンン!!

 

 俺は中距離で北斗の攻撃をさばきながらじっと待った。

 基本的に俺は遠距離の攻撃方法は無いし、

 かといって近距離では確実に相手の方が上だ。

 基本的な技量が俺はアキトに及ばないのだ。

 ならば北斗にも及ばないだろう。

 

『しかし、お前は本当にアイツが生きてると思っているのか?』

 

 いきなり、北斗から通信が入る。

 時間稼ぎか………いや、こいつはそんな事をする奴じゃない。

 

「さあな、生きていたらいいと思うが、

 死んでいても別にどうという事は無い。

 お前だってそうだろう?」

 

『そうだな………だが、お前らはもっと感情的かと思っていた』

 

「感情的さ、じゃなかったらお前とは戦わない。

 ただ………死に関してはシビアでね、俺は」

 

 そう、死んだら、全て終わりなんだ。

 

「さて、そろそろ俺は限界だ。

 この一撃に全てをかけさせてもらう!!」

 

 意識を集中させて、フィールドを収束していく。

 赤い爪が伸び、通常のDFSの刃と同じぐらいの長さにまでなる。

 

『ほう………いくら補佐がいるとはいえ、

 五本のDFSを同時に操るとは………』

 

「これでも……DFSの制御なら、アキトにもお前にも負けない自信が有るよ」

 

『………否定』

 

 なんだよヒース、お前のおかげだって言いたいのか。

 まったく、シリアスな所でちゃちゃを入れるなよ。

 維持するの結構疲れるんだからな。

 

「じゃあ………いくぜっ!!」

 

 五本のDFSの爪を一気に振り下ろすっ!!

 

「切り裂け!!ショットガン・エッジ!!!」

 

 五条の赤い刃が北斗に向かって進む。 

 

 かわすか………いや、あいつならかわさないだろう。

 北斗なら、真っ向から立ち向かう。

 

『……『羅刹招来』!!!』

 

 ………ほらな。

 

 

 

 二対の真紅の光翼を纏ったダリアは、

 三条の刃を切り払い、

 二条の刃を左腕で受け止めた。

 ………結果は、左腕を半ばまで切り裂いただけか。

 

『死ぬ覚悟は出来たか?』

 

 死ぬ覚悟ね………そんなのとっくに出来てるよ。

 さて、最後まで足掻くかな。

 

「ヒース、『アレ』………やるか?」

 

『却下!!!』

 

 凄まじく否定された。

 

「だがこのままだと殺されるぞ」

 

『………………………却下』

 

 そうか………まっ、しかたない。

 

『そういえば………まだ名前を聞いてなかったな』

 

 北斗がそんな事をいってくる。

 別に隠すような事でもないしな。

 

「ツバキ アヤト。ついでに搭載されているAIはヒース」

 

『ツバキ アヤト?………そうか、

 お前が、あの『鬼』か』

 

 ………なぜ、あのって付いているのかが非常に気になるがな。

 

『まあ、なかなか楽しかったぞ』

 

 そういって、こちらに真紅の刃を放つ。

 

 だがっ!!

 

 

 バシュゥゥゥゥ!!

 

「………遅い。マジ遅い。

 生きてるんならさっさと来いよな!」

 

『すまん、ちょっと手間取ってな』

 

 漆黒の機体に乗ったアキトに愚痴をこぼす。

 ほんと、美味しいとこだけ取りやがって。

 

『とりあえず、ブロスにブースターで運ばせるから』

 

『久し振り〜、ツバキさ〜ん』

 

「おう、頼むぞ。いやほんと、疲れまくりでめちゃくちゃ眠い」

 

『肯定』

 

 ヒースも初陣で無茶してかなり疲れたようだ。

 

 そうこうしているうちに、一気に俺は深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 暗過ぎる闇の中で、俺はアイツと対峙する。

 

「………アキトが撃たれた時、お前は何を考えた?」

 

「……………………」

 

「悲しみか?怒りか?後悔か?それとも……絶望か?」

 

「……………………」

 

「違うだろ、そんなんで驚いていたわけじゃないだろ」

 

「……………………」

 

「お前は…………何も感じなかった」

 

「………………!!」

 

「そして、何も感じなかったと言う事実に、驚愕していたんだ。

 …………違うか?」

 

「……………………」

 

 かたくななコイツに溜息をつく。

 

「あきらめな、おまえはそういう…」

 

 瞬間、首を切り飛ばされた。

 

 

 

「予想はしていたよ、ただ……、

 予想が本当に当たって、びっくりしただけだよ」

 

 

 

 

 

 僕の見ている画面の中で、

 真紅と紅白の機体が縦横無尽に駆け回る。

 

「すごいですよね〜、お二人とも。

 北斗さんも凄いですが、互角に戦うツバキさんも凄い」

 

「別にお世辞は言わなくていいわよ」

 

 舞歌さんが冷たく切り捨てる。

 僕の素直な気持ちなんだけどな〜。

 

「聞きたいのはあなたの意見よ、天狼 深雪君」

 

「そうですね〜」

 

 僕の声色が、若干変化する。

 

「正直に言うと優華部隊だけでは荷が重いでしょう。

 なんといっても、ツバキさんの力も十分異常な部類ですからね。

 比べる対象がさらに異常なだけであって」

 

「なるほど………で、あなたなら勝てると?」

 

 舞歌さんが試すように聞いてくる。

 

「勝てるかどうかはわかりませんが、

 ツバキさんが僕にとって勝たなくちゃいけない人だというのはわかります」

 

 真剣味を持った色を帯びて、僕の声が響く。

 

「………そう、ではあなたを優華部隊とともに北斗の下に配属します」

 

「はい、了解しました」

 

 そう、返事をして、僕は部屋から退出した。

 

 

 誰かが始めた人形劇。

 容赦無く進む喜劇と悲劇。

 そろそろ、僕も踊りだすのかな?

 

 

 

 

 

 

 力を持つという意味………

 それは死に抗うという意味………

 己が死なないために………

 ……なにかを殺す………

 

 

 

 

 

 

後書き

無識:今回は北斗との戦闘シーンで苦労しました。

ツバキ:本質は北ちゃん好きな作者が、魂で書いた北斗。

    いかがだったでしょうか?

無:機動戦では効果音をいっぱい使ってみました。

深雪:そして、次回はある意味いろんな山場、舞踏(武闘?)会!!

無:色々変えまくりつつ、はたしてシナリオ通り進むのか!?

 

 

 

 

代理人の感想

 

肯定。(笑)